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昭和四十二年三月二十八日受領
答弁第二号
(質問の 二)

  内閣衆質五五第二号
    昭和四十二年三月二十八日
内閣総理大臣 佐藤榮作

         衆議院議長 石井光次郎 殿

衆議院議員春日一幸君提出台湾産バナナ輸入取引に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員春日一幸君提出台湾産バナナ輸入取引に関する質問に対する答弁書



一、生鮮バナナについては、すでに昭和三八年四月自由化に踏み切つた次第であるが

(イ) 主たる供給地である台湾の輸出が、供給力は大巾に増大したにもかゝわらず、依然としてわが国の輸入需要に追い付かず、
(ロ) 加えて、台湾側が対日輸出について規制を強化し、
(ハ) また、台湾以外の地域、特に中南米からのバナナの輸入は、品質、輸送上の不利、船賃の高騰等のため伸びなやみとなり、
   その結果、輸入業者が台湾に殺到して激しい競争が現出し、外貨損失、不公正競争の発生などの弊害が生ずるに至つた。
   かかる弊害を是正し、輸入秩序の維持をはかるため、政府としては、業界の自主調整によらしむべく輸入組合の設立を指導するとともに、台湾産バナナについて、昭和四十年七月以降過去の実績に基づく輸入割当てを実施した次第である。
   その結果、輸入秩序は急速に改善せられ、輸入組合と台湾側との交渉によつて、価格その他の取引条件も漸次改善されてきている現状である。
   しかしながら、取引条件の改善とともにバナナ輸入が終戦後ほどではないにしても、再び、かなりの高利益をあげることができるようになり、その結果、一方において輸入割当ての取得をめぐる争いが激しくなるとともに、他方、輸入割当てを受けながら自ら輸入業務を行なわず、単に割当てを転売する等の方法によつて不当な利益を取得するものが生ずる等、いわゆるぺーパー業者ないしダミー業者による輸入割当の利権化の傾向が指摘された。

二、以上のような問題について考えるに、まず問題の起る基本は、過去において抑圧されていたバナナ需要が、自由化以後急激に増大し、台湾産バナナの如きは、三年間に八倍に達する輸入の増大をみたにもかかわらず、なお国内の需要に追い付けず、依然として供給不足の状態にある。
  このため、政府としては、今後、国内果樹産業への影響を考慮しつゝ、各種の方策により、出来る限り輸入の増大をはかることによつて、問題の基本的解決をはかることが正道であると考えている。
  この点に関し、現に昨年十一月、バナナの浜相場は輸入原価以下に低下した事実もあり、また、フイリピン等台湾以外の諸地域からの輸入増大の可能性も伝えられるので、おそらく、来年以降は、バナナの需給状況に関しても、相当の緩和をみるものと予想される。

三、しかしながら、なおしばらくの間は、海外からの供給が国内需要の増大に追い付かず、相対的供給不足の状態が残る可能性があり、加うるに、現在なおバナナ業界内部の利害の対立は、依然として著しいものがあり、激しい過当競争がいつでも顕在化する可能性を持つているので、もし割当てをはずせば、直ちに、二年前の混乱に戻ることは必定であり、これは業者間のみならず、国家的損失であると考えられる。
  従つて、かかる損失を防止するためには、輸入組合を中心とする業界の自主的な努力によつて輸入秩序の確立をはかるとともに、当分の間、現在の割当制度による輸入秩序維持策を堅持する必要があるものと考える。

四、上記の如き方針に基づき、輸入組合の健全な発展をはかり、輸入割当てにともなう弊害を除去するためには、まず、輸入業者自体の自主的な努力によつて積極的にその体質の改善がはかられ、健全な輸入業者が維持育成されることが望ましく、輸入組合内部においても、現在、任意の企業合併、あるいは営業譲渡等の方法によつて、いわゆるペーパー業者ないしダミー業者の整理とともに、それぞれの企業自体の体質改善のために格段の努力が払われつつある現状である。
  これと併行し、政府においても、輸入業者の体質改善と割当てにともなう弊害の除去を目的として、ペーパー業者ないしダミー業者を排除する方針をとり、昨年十二月、台湾産バナナの全輸入業者から企業の実態、輸入の形態等に関する詳細な報告を徴し、目下その実態に関し慎重に調査検討中である。

御質問の第一点(少量割当輸入業者の保護育成)については

(1) 政府としては、健全な輸入業者を育成するため、割当てを取得しながら自主的な経営体として自らの責任と計算において輸入業務を行なわない、いわゆるペーパー業者またはダミー業者については、極力これを排除すべきものと考えるが、健全なる輸入業者については、これを育成すべきものであり、その輸入割当量が少量なるが故をもつて整理することは適当でないと考える。
    また、業界を育成指導することは政府の当然の責務であり、業界の自主的努力による体質改善の成果は極力これを尊重する考えであり、これを中心として、今後バナナ輸入業界の健全化をはかるとともに、他方、業界の自主的努力のみによつては十分な成果をあげ得ないものについては、積極的指導を行ない、なお改善の実をあげないものについては、毅然たる態度で対処すべきものと考える。
    なお、現在輸入組合において、体質改善のために、営業の規模として年間輸入数量おおむね一万カゴ以上がのぞましい旨のべているおもむきであるが、その趣旨は国内取引と異なり、およそ海外との取引きを業とする輸入業者としては、少なくともこの程度以上の規模を有することが望ましい旨の一応の目途を与えて、その自主的な体質改善の努力をすすめているものと思われる。
    さらに、貿易業においても規模の利益が全くないということではなく、今後も輸出入取引法に基づく貿易連合の活用など検討して行きたい。

(2) 輸入割当がその企業経営にとつて大きな影響を与えることは御指摘のとおりであり、その公平妥当な運用について十分配慮して行く考えである。

(3) ペーパー業者の識別については企業の実態、輸入の形態等各種の観点を考慮し、御指摘のとおり総合的判断を行なう所存である。
    なお、現在の輸入業者の体質改善は、先に述べたとおり業界の自主的努力によつて急速に進められつつあり、政府としてもかかる業界の自主的努力の成果を充分勘案しつつ、体質の改善をすすめたい考えである。

御質問の第二点(営業の規模及び輸入割当て)については

 現在、輸入業者間においてその体質改善、ぺーパー業者、ダミー業者の整理を目的として、自主的な努力により任意的整理統合が行なわれつつあり、その結果、近い将来において輸入業者の数は相当程度減少するものと思われる。しかしながら、バナナ輸入業界は、昭和三八、三九年の自由化時代においてその数が激増して七〇〇社にも及び、その過当競争の弊害が現在の如き台湾産バナナ割当制度への復帰を余儀なくせしめた状況であり、現在においても、先に述べた如く、むしろ数が多すぎるために業界内部には、依然として過当競争の危険性が潜在する実情であり、今回の整理統合が行なわれた後においても、単にペーパー業者、ダミー業者が整理されるにとどまり、輸入業者数の減少によつて市場における価格支配が特に著しく強まるおそれはないものと考えられる。
 さらにまた、現在台湾以外の地域からのバナナの輸入は自由化されており、先にのべた如く、将来フイリピン、中南米等からの供給力の増大も予想され、かかる観点からも、現状において価格独占のおそれはないものと思われるが、政府としては、今後とも一部輸入業者による価格支配的弊害が出ないよう十分市場の状況および国産果実の動向を注視しつつ、輸入総量の増大と流通機構の改善をあわせ進めることによつて価格の引下げに努力いたしたい。

御質問の第三点(ダミー業者の整理)については

 ダミー業者については、輸入業界の体質改善のために、御指摘のとおり極力これを排除すべきものと考えられ、健全な輸入業者として望ましくないダミー業者であることが明確なものについては、先に述べたとおり、業界自体の自主的努力と政府の指導によつて、すみやかにこれが整理を促進したい考えである。

御質問の第四点(不良業者の排除)については、

 台湾産バナナの輸入にあたつて、外国為替及び外国貿易管理法および関税法等に違反し、判決等によつて、その事実が確定したものについては、その違反の内容、性質等に応じ輸入割当てを行なうことが不適当と思料される場合は、所要の措置を講ずることとする考えである。

  右答弁する。




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