衆議院

メインへスキップ



答弁本文情報

経過へ | 質問本文(HTML)へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(PDF)へ
昭和四十五年四月二十四日受領
答弁第三号
(質問の 三)

  内閣衆質六三第三号
    昭和四十五年四月二十四日
内閣総理大臣 佐藤榮作

         衆議院議長 (注)田 中 殿

衆議院議員春日一幸君提出宗教団体の政治的中立性の確保等に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員春日一幸君提出宗教団体の政治的中立性の確保等に関する再質問に対する答弁書



一および二 さきの答弁書においても述べたとおり、政府としては、憲法の定める政教分離の原則は、憲法第二十条第一項前段に規定する信教の自由の保障を実質的なものにするため、国その他の公の機関が、国権行使の場面において、宗教に介入し、または関与することを排除する趣旨であつて、それをこえて、宗教団体または宗教団体が事実上支配する団体が、政治的活動をすることをも排除している趣旨であるとは考えていない(さきの答弁書一(2))。また、主意書は、「宗教団体が………政権獲得をめざす政治的活動をすること………は、宗教団体が現在の議会政治機構を利用して政権を獲得することに道を開き、その結果として、宗教団体にその教義に基づく政治上の権力の行使を認めることになるものであるから、これは憲法の政教分離の根本精神に反し、断じて許されるべきことではない」と述べているが、宗教団体が政権を獲得するというのは、宗教団体が、公職の候補者を推薦し、または支持した結果、これらの者が公職に就任して国政を担当するにいたることを指すものと解されるところ、仮りに、このような状態が生じたとしても、当該宗教団体と国政を担当することとなつた者とは、法律的には、別個の存在であるばかりでなく、また、前述のように、当該国政を担当することとなつた者が、国権行使の面において、当該宗教団体の教義に基づく宗教的活動を行なう等宗教に介入し、または関与することは、憲法が厳に禁止しているところであるから、前述の状態が生じたからといつて、直ちに憲法が定める政教分離の原則にもとる事態が現出するものではなく、したがつて、前述の状態が生ずることそれ自体が、憲法に抵触するものとは解されない。とすれば、前述の意味における政権獲得をめざす政治的活動が憲法上許されないとされるべきはずがなく、その政治的活動の自由は、憲法第二十一条第一項が「集会、結社及び言論………その他一切の表現の自由」を保障している趣旨にかんがみ、尊重されるべきものと解する。

三 憲法で定める政教分離の原則の趣旨については、一および二に述べたとおりであること、また、宗教法人については、さきの答弁書においても述べたとおり、宗教法人法第二条に規定する宗教団体の目的を著しく逸脱するような場合には、所定の手続を経て、裁判所が解散を命ずることができることにかんがみ(同法第八十一条)、さらに、憲法第二十一条第一項が「集会、結社及び言論………その他一切の表現の自由」を保障している趣旨にかんがみ、宗教法人の行なう政治活動を規制する立法措置をとることには、賛成しがたい。

四 宗教法人を含め公益法人等がその設立された目的に即して活動する場合には、それに附随して収益事業を行なわない限り、法人税を課税することは適当でないであろう。
  ところで、宗教法人がお布施等を収得する行為は、宗教法人本来の行為と不可分のものと考えられ、非収益事業といわざるをえない。この非収益事業の所得を政治活動または政治献金に充当した場合にかりにそれが宗教法人の設立された目的を逸脱したものとしてこれに法人税を課税することとするときは、前回の答弁書で述べたように、まず、具体的な支出が目的外の支出であるかどうかの判定がかなり困難であるとともに、ひいては課税当局が宗教法人の活動が設立目的を逸脱しているかどうか判断することを余儀なくされることになるおそれがある。したがつて、これを法人税の課税対象とするか否かについては、なお慎重な検討を要するものと考える。

五および七 今国会の予算委員会において提示された事案に関しては、捜査機関および人権擁護機関において、資材、情報の収集検討等を行ない、また、関係国会議員等に対する脅迫事件については、警察においてその捜査につとめているところであるが、右事件をのぞき、いまだ刑事事件または人権侵犯事件として立件するに至るまでの端緒をは握していない。

六 「言論、出板、その他一切の表現の自由」は、民主主義社会の基本をなすものであり、かりにも、いわれのない圧迫が加えられるようなことがあつてならないことは申すまでもないところである。ご指摘の事案において権利侵害の事実ありとすれば、その被害者については民事的救済の方途があるので、現在において、特に現行法令の改正またはあらたな立法措置を講ずる必要はないと考える。

 右答弁する。




経過へ | 質問本文(HTML)へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.