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昭和四十六年十二月二十四日受領
答弁第六号
(質問の 六)

  内閣衆質六七第六号
    昭和四十六年十二月二十四日
内閣総理大臣 佐藤榮作

         衆議院議長 (注)田 中 殿

衆議院議員原茂君提出中小企業に対する税制並びに金融対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員原茂君提出中小企業に対する税制並びに金融対策に関する質問に対する答弁書



一 本年六、七月頃から景気回復のきざしが見られたところ、八月に米国の輸入課徴金制度の実施、為替変動幅の制限の暫定的停止が重なり、さらに今回の十か国蔵相会議の結果、輸入課徴金制度は撤廃されるものの、米ドルに対して十六・八八パーセントという円の切上げが決定されるなど、現在中小企業をめぐる環境はきわめて厳しい。
  このため昭和四十六年度においては、まず五月に対米繊維輸出自主規制の実施により影響を受ける繊維業者に六〇〇億円の特別の融資を行なうことを決定し、次に七月に景気浮揚策の一環として政府関係中小企業金融三機関からの融資枠を二六五億円追加し、さらに九月には、輸出関連中小企業に対し一、五〇〇億円の特別の緊急融資を行なうこととした。
  また、恒例の年末追加として、去る十一月一、八八〇億円の融資枠の追加を行ない、さらに十二月に入り対米繊維輸出規制の影響を受ける繊維業者に対し六五〇億円の融資を行なうことを決定している。
  これらのうち、特に繊維産業及び輸出関連中小企業に対する特別融資は、関係業界の置かれた環境に鑑み、一定の範囲内で六・五パーセントという特別低利な条件で融資することとし、負担の軽減を図つている。
  以上のように、政府としては中小企業をめぐる環境の大きな変化に積極的に対処し、できうる限りの施策を講じているところであるが、今後とも事態の推移に、積極的弾力的に対応した施策を講じて参りたいと考えている。
  次に、民間金融機関の融資に関する指導については、金融行政上常に配慮しているところであるが、本年八月以来の情勢に鑑み、特に影響の大きい中小企業に対する金融が円滑に行なわれるよう、十分指導を行なつているところである。特に、本年八月末、各財務局長に対して、輸出関連産業を中心とする中小企業に対し、金融機関が特別の配慮をするよう指導する旨の大蔵省銀行局長通達を出すとともに、九月初め、中小企業庁長官からも各金融団体に同趣旨の要請を行なつた。これに伴い、その後全国銀行協会連合会をはじめ、各金融団体がそれぞれ傘下の金融機関に対して、いわゆるドルショック対策として、輸出関連中小企業に対してキメ細かい金融措置を行なうよう呼びかけを行なつており、これに応じ、個別金融機関も特別融資枠の設定など積極的に対処している状況である。
  なお、このたび国際通貨調整の決着に伴い、今後中小企業については、さらに問題が出てくることも考えられるので、金融面においても前記のような従来の対策を一層充実させるとともに、状況に応じてさらに積極的かつキメ細かい措置をとつて参りたい。

二(一) 中小企業の体質の強化及び近代化等に資するため、税制上、所得税の専従者控除、中小法人の軽減税率のほか、次のような特別措置を講じている。これによる減税額は昭和四十六年度予算で平年度約一、五六〇億円にのぼる。

(1) 中小企業用合理化機械及び協同事業用合理化機械の特別償却
(2) 中小企業者の機械等の割増償却及び合併又は現物出資に係る課税の特例
(3) 中小企業構造改善計画を実施する商工組合等の組合員の機械等の割増償却及び合併又は現物出資に係る課税の特例
(4) 中小企業構造改善事業用共同施設及び下請中小企業振興事業用共同施設の特別償却
(5) 中小企業の貸倒引当金の特例
(6) 事業協同組合等の留保所得の特別控除
(7) 協業のため現物出資をした場合の納期限の延長及び圧縮記帳の特例
(8) 商工組合中央金庫の融資に係る抵当権の設定登記等の登録免許税の税率の軽減措置

 (二) 昭和四十六年度の税制改正においては、中小企業対策をさらにおし進め、新たに次の措置を講じている。これによる減税額は昭和四十六年度予算で平年度約一六〇億円にのぼる。

(1) 所得税の青色申告者について、事業主特別経費準備金制度を創設し、毎年事業所得の五パーセント相当額(最高十万円)の必要経費算入を認める。
(2) 所得税の白色申告者の専従者控除を十七万円(従来十五万円)に引き上げる。
(3) 中小企業特恵対策臨時措置法の制定に伴い、特恵の影響を受けた事業転換者について、転換施設につき加速度償却を認める。
(4) 公害防止施設について、特別償却率を二分の一に引き上げるとともに、三年間均等償却との選択を認める。
(5) 海外市場開拓準備金制度について中小企業者の積立率を引き上げる。
(6) 信用保証協会の債務保証に係る抵当権の設定登記等の登録免許税の税率の軽減措置(本則一、〇〇〇分の四を一、〇〇〇分の一に軽減)を新設する。

 (三) さらに、昭和四十六年十二月には、租税特別措置法の改正により、米国の輸入課徴金制度の実施等に伴う当面の緊急中小企業対策として、国際経済上の調整措置の実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律により、調整措置で影響を受けた旨都道府県知事の認定を受けた中小企業者等に対し、次の措置を講じている。これによる減税額は、平年度約五〇億円にのぼる。

(1) 純損失又は欠損金の繰戻しによる還付制度について、繰戻しのできる期間を三年間(本則一年間)とする。
(2) 都道府県知事の認定を受けた転換計画にしたがい事業を転換する中小企業者について、計画にしたがい処分する機械装置等の償却が処分時までに終るよう加速度償却を認める。

 (四) 以上のように中小企業の育成強化については、政府は税制上各般の配慮を行なつており、これらの措置による減税額は昭和四十六年度において平年度合計約一、七七〇億円に達する。
    なお、今後においても、中小企業に対しては、税制上可能な限り配慮していきたいと考えているが、来年度の税制改正については、税制調査会の結論をまつて検討することとしたい。

三 政府は、担保力の乏しい中小企業者の金融の円滑化を図るため、従来から、中小企業者のための信用補完制度の充実に努めてきているが、特に本年は、中小企業信用保険法の改正等により中小企業信用保険制度の拡充を図り、中小企業者の信用補完制度に対する要望に積極的に応えてきたところである。
  まず、昭和四十六年四月の中小企業信用保険法の改正によつて、普通保険とともに無担保、無保証人の保証に係る特別小口保険の一中小企業者あたりの保険限度額をそれぞれ一、五〇〇万円から二、五〇〇万円、五〇万円から八〇万円に引き上げ、あわせて公害防止保険制度を創設したところである。
  さらに、今回国際経済上の調整措置の実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律により、輸出関連中小企業者については、特に中小企業信用保険制度上特例措置を新設し、普通保険、無担保保険及び特別小口保険の保険限度額について、それぞれ現行の限度額(無担保保険は、三〇〇万円)のほか、それと同額を別枠で利用できることとしている。
  以上のように政府としては、信用補完制度の拡充に十分配慮しているところであるが、さらに最近の信用保証協会の保証承諾額の急増に対処するため中小企業信用保険公庫の保険引受限度額を五、〇〇〇億円引き上げ、信用補完の面から中小企業金融の円滑化を推進してきているところであり、今後とも、信用補完制度を充実する方向で対処して参りたい。

 右答弁する。




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