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答弁本文情報

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昭和四十九年四月二十六日受領
答弁第一九号
(質問の 一九)

  内閣衆質七二第一九号
    昭和四十九年四月二十六日
内閣総理大臣 田中(注)榮

         衆議院議長 前尾繁三郎 殿

衆議院議員久保三郎君提出新東京国際空港公団が犯した農地法に係る違法行為に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員久保三郎君提出新東京国際空港公団が犯した農地法に係る違法行為に関する質問に対する答弁書



一について

(1)及び(2) 暫定輸送計画の方針が決定されてから着工まで一年以上も要したのは、次のような事情によるものである。

  (一) 新東京国際空港公団(以下「公団」という。)では、当初成田市土屋から新東京国際空港(以下「新空港」という。)までの間の輸送手段はタンクローリーによることを考えていたが、その後、成田市長からの要望もあつて暫定パイプラインに変更したこと。

  (二) 暫定パイプラインにより輸送することに決定してからルート設定及びこれに基づく設計作業のための時間が必要であつたこと。

  (三) 暫定パイプライン敷設のために必要な関係地権者との交渉がはかどらなかつたこと。

(3) 公団は、暫定パイプライン敷設予定地の地権者全員から昭和四十八年九月十一日に起工承諾を得、その後地元に対し説明会を行い、昭和四十八年十月一日測量作業に入つたものである。

(4)から(7)まで 公団においては、適材を適所に配置し有機的な組織体として機能するよう配慮しており、新空港の建設工事については従来から農地法手続担当部局と建設工事担当部局間において連絡調整を図りつつ進めてきたところであるが、本件のごとき農地法の手続が遅れたまま暫定パイプラインの準備工事に着手するという事態を生じたことはまことに遺憾である。

二について

(1)及び(2) 成田市農業委員会は、公団が暫定パイプライン施設の建設工事の一環として農地法の転用許可を受けずに農地を農地以外にするための工事に着手していたので、千葉県の指示により昭和四十八年十月二十四日に当該工事を中止するよう公団に対し口頭で勧告を行つたものと承知している。この勧告に従つて公団は当該工事を中止したものである。

(3)から(9)まで 公団では、成田市農業委員会に対し農地法の転用許可を受けずに暫定パイプライン敷設のための準備工事に着手した経緯を述べた書面を提出したところ、同委員会から始末書の形式で提出するようにとの指示があつたため、改めて書面を提出したものである。
    始末書は、昭和四十八年十一月一日付けで公団総裁から千葉県知事及び成田市農業委員会長あてに提出したもので、その要旨は、農地転用の許可前に暫定パイプライン敷設のための準備工事に着手し、多大の迷惑をかけたことに対する陳謝の意を表明したものである。
    なお、公団副総裁が成田市農業委員会において陳謝したことは、御指摘のとおりである。

三について

(1)から(3)まで 千葉県知事から農地転用の許可を受けたのは、昭和四十八年十一月十七日である。
    許可の対象件数は、十九件、ほかに届出で済むもの二件である。この二十一件のうち、農地転用の許可前に農地を農地以外の目的に用いたところは、寺台地区九件、山の作地区六件である。

(4) 成田市農業委員会の勧告があつた段階から運輸省は逐次経緯の報告を受けている。

四について

 本格パイプラインの建設工事に関して、農地転用の許可を受けないで工事に着手した件数は、成田市東和田地区七件、同吉倉地区二件の計九件である。
 本件については、公団総裁から成田市農業委員会長あて、昭和四十八年十月二十六日付けで農地転用の許可前に工事に着手したことに対する陳謝の意を表明した始末書を提出した。
 なお、公団が行つた本格パイプライン工事及び暫定パイプライン工事の一部について、農地転用の許可前に着工しており農地法に違反するとの指摘が成田市農業委員会からあつたが、かかる指摘を受けるような事態を生じたことはまことに遺憾である。

五について

(1)及び(2) 緊急を要する公共事業であつても、法手続を無視してよいとする理由はなく、法手続の簡略化については明文の規定が必要であることはいうまでもない。

(3) 農地法違反行為の罪は、刑事訴訟法第二百五十条及び第二百五十三条第一項の規定により、違反行為が終わつた時から三年を経過することによつて公訴時効が完成すると考えている。

(4) 刑事訴訟法第二百三十九条第二項の告発義務が認められる場合には、それぞれの者が独立してこれを行うこととなるのであつて、運輸省又は農林省のいずれが、これを行うのが適当であるかというような問題は生じないと考える。

(5) 公団が農地転用の許可前にパイプライン工事に着手した件については、公団は、成田市農業委員会において厳しい批判を受け、成田市農業委員会及び千葉県に対し、陳謝の意を表し、千葉県知事は事後的にパイプライン用地に係る農地転用の許可をしたという経緯があること及び運輸大臣及び千葉県知事が本件につき公団総裁に対し厳重な注意を行つたことでもあり、また、刑事訴訟法第二百三十九条第二項に定める公務員の告発義務の趣旨にもかんがみ、本件につき告発を行わせることは考えていない。

六について

(1) 公団総裁が関係役職員に対してかかる事態を起こしたことについて遺憾の意を表するとともに再度このような事態を起こさないよう厳重に注意した。

(2) 当時の運輸大臣が、公団総裁に対し、公団が農地転用の許可前にパイプライン工事に着手した件について、口頭で遺憾の意を表するとともに今後このような事態を起こさぬよう厳重な注意を行つた。

七について

(1) 新空港の開港は当初の予定より大幅に遅れており、また本格パイプラインの完成には相当長期間を要する見込みなので、新空港を早期に開港するため暫定パイプラインを一日も早く完成する必要がある。

(2) 農地転用の許可を受けていなかつたことにより暫定パイプラインの準備工事を一時中止したこと等を契機に、建設工事の技術的細目について見直しを行うとともに、これに関し関係行政機関となお一層慎重な協議を行つたため、工事再開までに時間を要したものである。

(3) 成田市農業委員会及び千葉県農業会議の審議は、所定の手続に従つて定例日に行われたものであると承知している。

八及び九について

 公団は、新東京国際空港公団法に基づいて新空港の設置・運営を行うものとして設立されたものであり、適材を適所に配置し、これが適切に運営されるよう配慮してきたところであるが、御指摘のような事態を生じたことはまことに遺憾である。政府としては、公団が再びこのような事態を起こすことのないよう厳に指導・監督していく所存である。

 右答弁する。




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