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答弁本文情報

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昭和五十二年五月二十四日受領
答弁第二三号
(質問の 二三)

  内閣衆質八〇第二三号
    昭和五十二年五月二十四日
内閣総理大臣 福田赳夫

         衆議院議長 保利 茂 殿

衆議院議員鈴木強君提出弁護士会及び弁護士に対する登録免許税の不当課税の是正に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員鈴木強君提出弁護士会及び弁護士に対する登録免許税の不当課税の是正に関する再質問に対する答弁書



第一について

一 日本弁護士連合会及び弁護士会(以下「日弁連等」という。)が国から独立した自治行政機関であるとは解されない。

二 政府として国民の基本的人権を尊重すべきことはいうまでもない。なお、弁護士法は、人権擁護のため政府と日弁連等が常に協力しなければならないことを定めているわけではないと考える。

三 弁護士法が、立法、行政、司法の三権のほかに、これと並立する職能公共団体自治権又は弁護士自治権という権限を創設したものとは解されない。


(一) 日本国憲法が立法、行政、司法の三権に対立するものとしての弁護士制度を設けることを予定していたものとは解されない。

(二) 現行弁護士法は旧弁護士法の全面改正によるものであるが、右改正法律案がいわゆる政府提案とならなかつた理由及び同法律案の作成の経緯については、現時点で十分に事実関係を明らかにすることは困難である。

(三) 司法修習生の制度は、法曹三者がいずれも司法の適正、円滑な運営のため重要な寄与をするものであることにかんがみ、国の機関において統一的に法曹を養成することが相当であるとの考えの下に創設されたものであつて、これを主権在民の原理と直接に結び付けて考えるのは、必ずしも適切でないと考える。

(四) 弁護士会が司法研修所長の委託を受けて弁護実務修習を担当するものとされているのは、弁護士会の目的に照らして、司法修習生の弁護実務修習を担当するものとしては弁護士会が最も適切であると考えられるからである。
    なお、費用の点に関しては、後記(一〇)及び(一一)を参照されたい。

(五) 現行の司法修習生に関する制度及び判・検事の任用制度を直接主権在民の原理と結び付けて考えるのは、必ずしも適切でないと考える。

(六) 御質問のような慣行が確立しているか否かは別として、下級裁判所裁判官も含めて弁護土から裁判官を任命するのは、広く裁判官としてふさわしい人材を求めることにあり、御質問のように考えるのは、必ずしも適切でないと考える。

(七) 司法研修所出身の弁護士の人数がおおむね御質問のような数字となつたことは、司法研修所制度発足以来の約三〇年間の法曹養成の成果と考える。

(八) 日本国憲法が御指摘のような四権分立制度を採つているとは考えないし、また、弁護士の人数及び学識経験と行政・司法機関の職員のそれとを比較して論ずることが適切であるとは考えない。

(九) 昭和五〇年度において、裁判所から弁護士会が担当する実務修習に対し、司法修習生研修委託費として九三四万円余が、そのほか旅費及び謝金が支出されていることは承知しているが、その他の事実については承知していない。

(一〇)及び(一一) 弁護士会は、国からの委託に基づき、司法修習生研修委託費の支給を受けて司法修習生の実務修習を担当しているのであり、右委託費のほかに、更に補償をする必要があるとは考えない。

五 弁護士法が、日弁連等及び弁護士に対し、団体自治権及び弁護士自治権という国家統治権を付与したものと解すべきではないから、かかる権限の存在を前提として、日弁連等及び弁護士につき、国民主権の原理との関係、国民に対する責任及び国民による監督を考えることはできない。なお、弁護士と依頼者との間の法律関係を根拠として御質問の意味での弁護士自治権の存在を考えることはできず、また、弁護士と依頼者との法律関係が現行弁護士法の施行によつて変化したものとは考えられない。
  政府は、日弁連等に対する指揮監督権を有しないから、日弁連等の行為につき、国会に対して責任を負うことはない。また、国は、日弁連等の行為について、国家賠償責任を負うものではなく、日弁連等は、日本国憲法第一七条の公共団体に該当するものでもない。
  政府は、日弁連等を税法上公益法人等と取り扱つているが、これは国が受ける利益を勘案してしたものではない。

六 弁護士法は、弁護士自治権という第四権を創設したものではない。また、日弁連等は、政府と対等の地位にあるものではなく、政府と並立する行政機関ないしは行政庁又は弁護士自治を行う国家機関でもない。なお、弁護士法が「第四権を創設したものと解すべきでない。」とする理由及び同法が弁護士の登録、資格審査、懲戒等の事務を日弁連等に行わせている趣旨については、前回の答弁書第一についての一において述べたとおりである。

七 御質問は、日弁連等が職能公共団体であることを前提としているが、我が国においては、職能公共団体というものは存在しないから、御質問のように考えることはできない。

八 職能公共団体については、御指摘の書物にも何ら記載がなく、我が国においてはかかるものは存在しない。

九及び一〇 前回の答弁書第一についての二において述べたとおりである。

一一 前回答弁したとおり、法人税法の別表第一の公共法人は、国又は地方公共団体が全額出資する法人に限ることを原則としており、日弁連等を公共法人に追加することは適当でない。

一二 地方税について日弁連等を地方公共団体と同一に取り扱うべきものとは考えない。なお、弁護士会に対して不動産取得税及び固定資産税の減免が行われたケースがあるとしても、それは、地方税法第七三条の三一又は第三六七条の規定に基づく条例により、それぞれの地方公共団体がそれぞれの事情の下に減免措置を講じたものであると考える。

一三 前回の答弁書第一についての七において述べたとおりである。なお、(三)に御指摘のような事実の有無については国が承知すべきことでもないし、現に承知していない。

第二について

一、四、七及び一〇 弁護士登録に対する登録免許税が国税として登録免許税法に定められている以上、課税権限が国にあることは論をまたない。

二及び三 御質問は、日弁連等が職能公共団体であることを前提としているが、我が国においては、職能公共団体というものは存在しないから、御質問のように考えることはできない。
  なお、前回の答弁書第二についての六(二)は、「二級建築士のような地方公共団体の長の免許等に係るものについては、国の行政機関が資格を与えるものではないので、登録免許税は課税しないこととしている。」と答弁しており御指摘のような答弁ではない。

五 日本弁護士連合会の会長には、登録免許税の徴収を命じているのではなく、他の登記機関に対すると同様に、納付の確認等を義務付けているにすぎない。

六 登録免許税は租税であり、弁護士の登録手数料は租税でないことが明白である以上、二重課税になるものではない。

八 登記機関とは、「登記官又は登記以外の登記等をする官庁若しくは団体の長」(登録免許税法第五条第二号)と定義されており、弁護士登録を行う日本弁護士連合会の会長は、登記機関に該当する。したがつて、弁護士登録をするときは、登録免許税の納付の事実を確認し、印紙に消印し、また、大蔵大臣に対し登録免許税の納付額を通知する義務がある。

九 政府の日弁連等に対する監督権限の有無と登録免許税法中の弁護士の登録に関する規定の改正案の提出をどの機関が行うかという問題とは、関係がない。

 右答弁する。




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