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答弁本文情報

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昭和五十三年一月二十四日受領
答弁第六号
(質問の 六)

  内閣衆質八四第六号
    昭和五十三年一月二十四日
内閣総理大臣 福田赳夫

         衆議院議長 保利 茂 殿

衆議院議員村山喜一君提出川内原子力発電所にかかわる安全審査に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員村山喜一君提出川内原子力発電所にかかわる安全審査に関する質問に対する答弁書



一について

1 「秩父帯」の用語の意味は、平凡社刊「地学事典」(昭和四十五年)及び古今書院刊「新版 地学辞典III」(昭和四十八年)に記載されているところと同様である。
  また、「秩父帯」における「帯」は、地体構造上の区分を表わす用語である。

2 「帯」の区分は、化石のみで決められるものではない。ある地層が「秩父帯」又は「四万十帯」のいずれに属するものであるかについては、化石による地質年代の検討の外、岩質、層序、地質構造などについての地質学的検討の結果、総合的に判断されるものである。

3 「変化程度」は、「地層の変形の程度」の意味である。

4 橋本勇氏等の九州大学教養部地学研究報告第十七号においては、久見崎層から産出した化石のみに基づき同層を秩父帯に属するものとしたものではなく、久見崎層が、南部九州における同層と同時代で秩父帯に属する地層(日奈久層、八代層)と層序、岩質の点でよく類似していることを考慮して、同層を秩父帯に属するものと判断したものである。
  また、原子炉安全専門審査会(以下「審査会」という。)としては、前記文献を検討し、更に現地調査結果等を総合して、敷地付近の基盤岩類が秩父帯に属するものと判断したものである。

5 前述の橋本氏等の文献によると、久見崎層C部層上部から、数種の白亜紀軟体動物化石が産出されており、これらの化石内容を検討した結果として「上記の事実を総合すると、この化石群は、宮古層群のそれに共通又は比較される種を多く含んでいるといえる。」と結論づけている。
  すなわち、同文献も質問のような見解はとつておらず、むしろ、この化石群が九州の秩父帯中の白亜系宮古統の化石とも類似していること及び岩質等の検討結果により、同層が秩父帯に属することを推定している。

6 「阿久根・川内古生層」は、従来から阿久根、川内地方に小範囲に点々と露出する古生層の総称として用いられている。
  このような「阿久根・川内古生層」は、古生代末から中生代初めの地層と考えられるが、審査会としては、川内川左岸の久見崎層と判断される地層を除き、この地方の地層を従来の用語の例に倣い、「阿久根・川内古生層」としたものである。

7 敷地付近の基盤岩類が秩父帯に属するという判断は、一について4で述べたとおりであり、「阿久根・川内古生層」という地層名を使用した理由は、一について6で述べたとおりである。

8 川内原子力発電所原子炉設置許可申請書(以下「申請書」という。)には、敷地を構成する地層は、主として秩父中生層に属するとする考えは示されていない。

9 同一のものである。

10 審査会は、久見崎の古生層を阿久根市及び月屋山に見られる古生層と厳密に同一層準であるとしているわけではない。一について6で述べたとおり阿久根・川内地方に小範囲に点々と露出する古生層を一括して「阿久根・川内古生層」としているものであり、この意味において「ほぼ相当するもの」と述べたものである。

11 地質調査所は、昭和四十七年以来行つている縮尺百万分の一日本地質図の編さん作業の一環として、川内原子力発電所原子炉が設置される鹿児島県川内市久見崎地区付近の地質についても調査検討を行つており、これまでのところこれを秩父帯に属するとすることがより適切であるとみられるデータも得ており、既に発表された文献等も参考としつつ、編さんを進めることとしている。

12及び13 (1) 審査会は、少なくとも第四紀以降、敷地及びその周辺には褶曲や断層を伴う顕著な地穀変動はなかつたこと、基礎岩盤は主として礫岩類からなり、しかも原子炉を設置する上において、良好な分布状態であること、同基礎岩盤中の破砕帯はいずれも連続性に乏しく局所的なものであること等を示す意味で安定した基礎岩盤という表現を用いたものである。

 (2) 一般にボーリングにおいて採取されたコアの長短の差は、主にその地点の岩盤の亀裂によるものであるが、施工業者の技術の差にも関連するところが大きい。
     基礎岩盤の性状は、一について14で述べる岩盤及び岩石物性の試験結果等により判断されるものであり、審査会は、これらの結果等に基づく検討により原子炉施設の基盤としての安全性を確認しているものである。
     なお、岩盤の亀裂については、申請書添付書類六「第3・4表岩石と岩盤の動弾性係数よりみた岩盤の良好度」において亀裂係数及び良好度で示されているとおりであり、審査会においてもこのことは承知しているところである。

 (3) 原子炉施設の基盤のほとんど大部分がC級に属することは、審査会でも認めているところであるが、本地盤の原子炉施設の基盤としての安全性に関しては、岩盤等級のみにより判断するものではなく、(2)で述べたとおりの検討によつて判断したものである。

14 岩盤及び岩石物性の試験としては、主に次のものを実施した。

 (イ) 試掘坑内における岩盤せん断試験、岩盤変形試験及び弾性波試験。

 (ロ) 試掘坑内より採取した供試体の密度及び吸水率測定、一軸圧縮試験、引張試験並びに三軸圧縮試験。

15 基礎岩盤の安定性に関しては、一について12及び13で述べたとおりである。なお、御質問にある測定値のバラツキに関する評価については、川内原子力発電所の原子炉の設置に係る安全審査報告書(以下「安全審査報告書」という。)において述べたとおり、岩石としては原子炉建家基礎部全体にわたつて堅硬の部類に属するものと判断したものである。
   また、御質問にある測定値のバラツキの状態は、申請書添付書類六「第5・1図 岩石試験結果一軸表示図」が実態を示しているので、同図を参照されたい。

二について

(一)1 審査会は、新第三紀火山岩類を切る断層で、敷地に影響を与えるようなものは存在しないと判断したが、安全審査上、問題とならない小規模な断層の存在までを否定しているわけではない。

   2 審査会は、地質調査所の地質図幅「羽島」(五万分の一)に記載のある断層の存在を否定しているわけではなく、より詳細な調査、すなわち敷地東部のトレンチ調査等で確認された断層を、地質図幅「羽島」に記載のある断層に同定したものである。しかし、この断層は、阿久根・川内古生層と久見崎層とを境するものであつて、同断層の南方に分布する新第三紀の角閃石安山岩類(地質図幅「羽島」に記載のある天狗鼻角閃石安山岩)を切るものではないことを確認しているところである。

   3 審査会は、串木野鉱山における串木野輝石安山岩に断層が認められていることを承知している。しかし、南九州地方において、新第三紀の火山岩類に影響を及ぼした断層が顕著に発達しているとは判断していない。

(二)1 審査会は、トレンチ、ボーリング等を含む詳細な地質調査結果を基に示された敷地東部の久見崎層と古生層とを境する断層について、その位置・方向を実地に確認しており、その結果、位置・方向が地質図幅「羽島」に記載のある断層とほぼ同様であつたため、同断層に同定したものである。

   2 阿久根・川内古生層と久見崎層とを境するとした断層の位置は申請書添付書類六「第3・4・1図 敷地付近地質概要図」(最終版)に示されたとおりであり、審査会も現地調査等において、これを確認している。
     また、この断層は、二について(二)3で述べるように、その最近の活動はないので、落差について確認していない。

   3 御質問にある断層の構造地質学的意義を軽視しているわけではないが、安全審査は、この断層が、基礎岩盤の安定性を損うか否か、将来において再活動するか否かの見地から行われるものである。この断層のトレンチ調査等においては、断層角礫や断層粘土も顕著なものは認められず、かつ、固結度も高く、また、同断層の南方に分布する新第三紀の角閃石安山岩類には変位が認められていない。したがつて、審査会は、この断層の活動は、少なくとも新第三紀以前に終えんしたものと判断し、この断層の存在によつて原子炉の安全性がおびやかされるものではないと判断したものである。

(三)1 審査会は、川内川右岸の月屋山に分布する地層と川内川左岸の地層との間に構造上の差があり、かつ、年代の相違が見られること等から、川内川に沿う断層の存在を推定したが、安全審査報告書に記載したとおり、その断層の活動性はないものと判断したものである。

   2 川内川左岸の地層とは久見崎層、川内川右岸の地層とは阿久根・川内古生層としている地層を指しているものである。

   3 御質問にあるような判断は、特に示していない。
     なお、新第三紀火山岩類に想定されている断層がいかなる機構で生じたとしても、その規模は小さく、かつ、第四紀以降に活動したとは考えられない。

(四)1 審査会は、敷地及びその周辺地域の基礎岩類が秩父帯に属すると判断しているところである。仏像線は、秩父帯と四万十帯とを境する構造線であることから、敷地付近が秩父帯である以上、仏像線はこれよりも東方に位置することになり、したがつて、仏像線は敷地の西方海域にはあり得ないことになる。

   2 一について4で述べたとおり、審査会は、久見崎層が秩父帯に属するものであると判断しており、阿久根・川内古生層と久見崎層とを境する断層が仏像線の南端部の一部であるという可能性はあり得ない。

   3 審査会の判断は、久見崎層、久見崎層と断層で接する古生層並びに他地域の秩父帯及び四万十帯の地質に関する資料等に基づいている。
     また、直接参考とした主な文献は、次の表のとおりである。

直接参考とした主な文献

 右答弁する。




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