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昭和五十四年五月十八日受領
答弁第二四号
(質問の 二四)

  内閣衆質八七第二四号
    昭和五十四年五月十八日
内閣総理大臣 大平正芳

         衆議院議長 (注)尾弘吉 殿

衆議院議員山花貞夫君提出日産自動車株式会社の労使紛争に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員山花貞夫君提出日産自動車株式会社の労使紛争に関する質問に対する答弁書



一及び二について

1 日産自動車株式会社(以下「日産」という。)においては、昭和四十年五月、日産とプリンス自動車工業株式会社(以下「プリンス」という。)との合併計画を公表した。
  右合併計画の公表後、総評全国金属労働組合東京地方本部プリンス自動車工業支部(以下「全金プリンス支部」という。)においては、右合併をめぐり組合員間の意見の対立が表面化し、昭和四十一年三月に臨時大会を開催して、総評全国金属労働組合(以下「全金」という。)及び総評全国金属労働組合東京地方本部(以下「全金東京地本」という。)を脱退するとともにその名称をプリンス自動車工業労働組合(以下「プリンス労組」という。)と変更する旨決定したが、これに反対するグループは、右の臨時大会は無効であるとして、全金プリンス支部の存続を主張し、その結果、同年四月以降、プリンスにおいては事実上二つの労働組合が存在することとなり、同年八月の合併とともに日産においては、前記二労組(プリンス労組は合併と同時に「日産自動車プリンス部門労働組合」と名称変更)と全日産自動車労働組合(以下「日産労組」という。)の三つの労働組合が存在することとなつた。その後、日産自動車プリンス部門労働組合は、昭和四十二年六月に日産労組と組織統合したため、これ以後日産においては、日産労組と全金プリンス支部の二つの組合が存在している。
  昭和四十年以降、右のような動きを経て、全金、全金東京地本及び全金プリンス支部と日産及びプリンス(昭和四十一年八月の両社の合併以後は、日産)との間に、組合活動、団体交渉、配置転換、時間外労働、賃金等の問題を巡り労使紛争が続いている。
  政府としては、以上のとおりであると聞いている。

2 昭和四十年以降、全金プリンス支部等から東京都地方労働委員会(以下「東京地労委」という。)に対し、日産を被申立人として、組合活動に対する支配介入、団体交渉、配置転換、時間外・休日労働、昇給・昇格、懲戒処分、組合事務所等の貸与等の問題に関し計十五件の不当労働行為救済申立てが行われ、このうち、五件については申立ての全部又は一部を認容する旨の命令が出され、三件については申立てが取り下げられ、残りの七件については現在東京地労委に係属中であり、審問又は審問前の手続が進められている。
  右の東京地労委の五件の命令のうち四件については使用者側又は労働組合側から中央労働委員会(以下「中労委」という。)に再審査の申立てがなされ、このうち、二件については申立てを棄却する旨の命令が出され、一件については申立てが取り下げられ、残りの一件については現在中労委に係属中であり、審問前の手続が進められている。
  東京地労委の命令のうち一件及び中労委の命令のうち一件については使用者側から東京地方裁判所(以下「東京地裁」という。)に対して行政訴訟が提起され、このうち、中労委の命令に対する行政訴訟については、東京地裁から右命令を取り消す旨の判決が出され、これに対し中労委から東京高等裁判所(以下「東京高裁」という。)に控訴がなされた結果、東京高裁から右東京地裁の判決を取り消す旨の判決が出され、更に、これに対して使用者側から最高裁判所(以下「最高裁」という。)に上告がなされ、現在最高裁に係属中であり、また、東京地労委の命令に対する行政訴訟については、現在東京地裁に係属中である。なお、東京地労委及び中労委において取り下げられた四件については、昇給・昇格の問題に関し使用者は従業員を労働組合の所属いかんによつて差別しない、配置転換を命ぜられた一定数の組合員を原職又は原職相当職に復帰させる等の旨の和解が労使間に成立したことにより取り下げられたものである。
  政府としては、以上のとおりであると聞いている。

3 昭和四十年以降、全金プリンス支部等から東京地裁に対して、組合事務所への立入り、団体交渉、整理解雇、男女別定年制、損害賠償、退職金等の問題に関し計十五件の訴訟(昭和二十四年に提起され昭和四十年以降なお東京地裁に係属中の整理解雇、男女別定年制等の問題に関する一件の訴訟を含み、前記2の二件の行政訴訟を除く。)が提起され、このうち、三件については申請又は請求の全部又は一部を認容する旨の判決又は決定が出され、四件については申請又は請求を棄却し、又は却下する旨の判決又は決定が出され、五件については申請又は請求が取り下げられ、残りの三件については現在東京地裁に係属中である。
  右の東京地裁の七件の判決又は決定のうち、一件については使用者側から東京地裁に異議申立てがなされたが、その後取り下げられ、四件については労使双方又は労働組合側から東京高裁に控訴又は抗告がなされ、このうち、一件については請求の一部を認容する旨の判決が出され、二件については申請を棄却する旨の判決又は決定が出され、残りの一件については取り下げられている。
  また、右の東京高裁の三件の判決又は決定については、そのすべてについて労使双方又は労働組合側から最高裁に上告及び特別抗告がなされ、このうち、二件については取り下げられ、残りの一件については現在最高裁に係属中である。
  なお、右の東京地裁、東京高裁及び最高裁において取り下げられた九件の訴訟のうち三件については、損害賠償の請求等につき使用者が一定の額の金銭を支払う旨の和解が労使間に成立したことにより取り下げられたものである。
  政府としては、以上のとおりであると聞いている。

4 昭和四十年以降、日産を被審人とする一件の労働委員会命令違反の過料事件が横浜地方裁判所に係属し、同裁判所において日産に対し過料を課する旨の決定が出され、これに対し、日産から東京高裁、更に最高裁に上訴がなされたが、いずれも棄却されている。
  政府としては、以上のとおりであると聞いている。

5 昭和四十年以降、東京法務局が受理した人権侵犯事件は二件あり、これら事件の内容は、日産に勤務している全金プリンス支部組合員が、会社側職員あるいは同僚から暴行、脅迫等の人権侵害を受けたとするものである。
  これら事件については、調査の結果、いずれも、会社側職員による人権侵犯行為は認められなかつたので「非該当」として処理し、同僚間における人権侵犯の事実は認められたが、諸般の事情を考慮し「処置猶予」として処理した。

6 警視庁荻窪警察署、同三鷹警察署及び同立川警察署に係る告訴については、次のとおりである。

 (一) 警視庁荻窪警察署は、昭和四十二年一月二十五日発生の日産荻窪工場における傷害、暴力行為、逮捕監禁、侮辱、強要、強要未遂事件の告訴を受け、被疑者二十九名を取り調べ、同年九月七日東京地方検察庁へ事件を送付した。

 (二) 警視庁三鷹警察署は、(1)昭和四十二年一月十四日発生の日産三鷹工場における傷害事件の告訴を受け、被疑者二名を取り調べ、(2)同年一月十九日発生の同工場における暴行事件の告訴を受け、被疑者一名を取り調べ、(3)同年一月二十一日発生の同工場における暴行事件の告訴を受け、被疑者二名を取り調べ、これら事件を、いずれも同年五月十二日東京地方検察庁八王子支部へ送付した。

 (三) 警視庁立川警察署は、(1)昭和四十二年一月十七日発生の日産村山工場における傷害事件の告訴を受け、被疑者二名を取り調べ、(2)同年一月二十三日発生の同工場における傷害事件の告訴を受け、被疑者一名を取り調べ、これら事件を、いずれも同年二月二十五日東京地方検察庁八王子支部へ送付し、(3)同年二月二十四日発生の同工場における傷害、暴力行為、逮捕監禁、侮辱、強要、強要未遂事件の告訴を受け、被疑者二十八名を取り調べ、同年四月十二日東京地方検察庁八王子支部へ事件を送付した。

  政府としては、以上のとおりであると聞いている。

7 東京地方検察庁が受理した事件は次のとおりであり、いずれも処分済みである。

 (一) 昭和四十一年七月二十六日に告訴を受けた被告訴人二名に係る横領事件については、同年十二月九日付けで、罪とならずとの理由によりこれを不起訴処分に付している。

 (二) 昭和四十二年九月七日、警視庁荻窪警察署から送付を受けた被告訴人二十九名に係る傷害、暴力行為等処罰ニ関スル法律違反、逮捕監禁、侮辱、強要、強要未遂事件については、昭和四十四年十一月二十四日付けで、嫌疑不十分との理由によりこれを不起訴処分に付している。

 (三) 昭和四十二年五月十二日、警視庁三鷹警察署から送付を受けた被告訴人五名に係る暴行、傷害事件については、昭和四十三年五月十四日付けで、嫌疑不十分との理由によりこれを不起訴処分に付している。

 (四) 昭和四十二年二月二十五日、警視庁立川警察署から送付を受けた被告訴人三名に係る傷害事件については、昭和四十三年六月二十八日付けで二名を嫌疑不十分との理由により、同年十月十九日付けで一名を起訴猶予相当との理由により、それぞれ不起訴処分に付している。

 (五) 昭和四十二年四月十二日、警視庁立川警察署から送付を受けた被告訴人二十八名に係る傷害、暴力行為等処罰ニ関スル法律違反、逮捕監禁、侮辱、強要、強要未遂事件については、昭和四十三年十月十九日付けで、嫌疑不十分との理由によりこれを不起訴処分に付している。

  なお、事案の内容は、記録が廃棄されているため、明らかでない。

8 昭和四十九年以降、全金プリンス支部等から所轄労働基準監督署に対し、労働基準法違反として、思想信条を理由とする労働条件の差別的取扱いがあること、女子であることを理由とする賃金の差別的取扱いがあること等の問題について計十二件の申告が行われているが、これらの申告については、東京労働基準局及び所轄労働基準監督署において、実情調査を実施し、不適当と認められたものについては改善するよう指導を行い、これに対し日産から所要の改善措置を講じた旨の報告を受けている。
  右の申告のうち、思想信条を理由とする労働条件の差別的取扱いがある旨の申告については、労働基準法第三条違反とするに足る証拠は認められなかつた。また、女子定年延長者について女子であることを理由とする賃金の差別的取扱いがある旨の申告については、現在所轄労働基準監督署において調査中である。

9 昭和四十年以降、全金プリンス支部の組合員一名から労働保険審査会に対し、労働者災害補償保険の休業補償給付について立川労働基準監督署長が行つた不支給処分を不服として一件の再審査請求がなされ、これについては現在同審査会において審理を終えたところであると聞いている。

三について

1 男女差別的定年制については、政府は、昭和五十二年に策定した「年次計画」に基づき、その解消について行政指導を積極的に行つているところであるが、日産の男女別定年制については、現在最高裁に係属中であり、その推移を見守りたい。また、日産における賃金に関する男女差別の問題については、前記一及び二についての8で述べたとおりである。

2 昭和五十一年六月十八日全金プリンス支部より中野労働基準監督署に対し、同支部所属の労働者が兵器生産反対の信条を持つていることを理由として仕事に就かせない等の取扱いを受けている旨の申告がなされたが、申告を受けた同署において、日産に対する臨検監督の実施を含め必要な調査を行つたところ、昭和四十二年に右労働者についてその勤務態度、言動等を理由として職務内容の変更が行われた事実はあるが、労働基準法第三条違反とするに足る証拠は認められなかつた。また、法務省においても、信条を理由に仕事を与えないなどといつた差別の事実については、承知していない。

四について

1 日産の昭和五十三年三月期の有価証券報告書における労働組合の状況に関する記載は次のとおりである。

  「(イ) 当社従業員の労働組合は全日産自動車労働組合の主体をなし、日本自動車労働組合連合会を上部団体として同盟に加盟している。

   (ロ) 労使関係は善意に基づく相互信頼を基調として非常に安定し、昭和五十三年三月末現在の組合員総数は五万一千五百十名である。

   (ハ) 会社は総評全国金属労働組合プリンス自工支部(昭和五十三年三月末現在会社在籍者八十一名)とも交渉を行つている。」

2 前期記載が労働法規上どのように評価されるかについては、大蔵省は見解を述べる立場にない。

五について

 使用者が労働関係諸法規を尊重すべきことは当然のことであり、政府としては、かねてから、労働関係諸法規の周知徹底を図る等の努力をしてきたところであるが、日産に対しては、これに加えて、関係者から労使紛争に関して事情を聴取し、必要な助言等を行つてきたほか、労働基準監督機関において監督指導を実施してきたところである。
 政府としては、関係労働委員会、労働保険審査会及び裁判所に係属中の問題についてはとかくの見解を述べるべき立場にないが、本件労使紛争については、労使当事者の自主的解決への努力を期待しつつ、労使の話し合いを促進する等紛争の円満な解決のために努力してまいりたい。

 右答弁する。




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