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昭和五十四年六月一日受領
答弁第二五号
(質問の 二五)

  内閣衆質八七第二五号
    昭和五十四年六月一日
内閣総理大臣 大平正芳

         衆議院議長 (注)尾弘吉 殿

衆議院議員島本虎三君提出合成洗剤の安全性等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員島本虎三君提出合成洗剤の安全性等に関する質問に対する答弁書



一について

1 合成洗剤の安全性については、内外で行われた急性毒性、慢性毒性等各種の毒性に関する試験の成績、使用実態等に基づき総合的に評価している。
  合成洗剤の安全性に関しては多数の研究成果が発表されており、御指摘の著作等における急性毒性及び慢性毒性に関するデータのみから合成洗剤の人体に対する有害性を導くことはできない。

2(1) 肝障害が発現しないことの根拠は、「昭和四十八年度特別研究促進調整費等による合成洗剤に関する研究成果報告書」(試験内容は、ラット、ウサギを用いた慢性毒性試験である。)等である。

 (2) 昭和五十年に実施されたLASの催奇形性に関する研究は、京都大学等四大学の研究者で研究班を組織し、実験条件を統一して、それぞれ実験を行い、その結果を班員が集まつて検討し、その結論を班長が取りまとめた合同研究である。
     胎仔末梢血液中に白血病細胞を確認したとされている実験については、学術報告において一般に必要とされる最低限度の実験条件の記載がなく、またその検体の投与方法は合成洗剤を皮下投与したものであり、通常の合成洗剤の使用方法と著しくかい離しているので、合成洗剤の人体に対する有害性を判定する上において適切なものとは考えられない。

 (3) 化学物質の人体に対する毒性の評価は、人体への曝露条件を考慮して行われた一般毒性、特殊毒性等の動物実験(原則としてほ乳動物を用いる)の結果に基づき、その使用実態を勘案し、行われるものである。
     合成洗剤の人体に対する毒性については、既にほ乳動物による実験によつてその安全性が確認されており、御指摘の論文における微生物に対する作用は、人体に対する毒性の評価の指標としての意味を有しない。

 (4) (3)に述べたほ乳動物による実験によつて既に合成洗剤の安全性は確認されており、御指摘の論文における精子に対する致死作用は人体に対する毒性の評価とは無関係と考えている。
     また、御指摘の皮膚塗布試験においては、精子に対する有害性を判断するために必要な実験条件等の記載がなく、評価をすることはできない。

 (5)@ 御指摘の映画においては、合成洗剤による赤血球の溶解作用を判断するために必要な実験条件が示されていないため、評価をすることはできない。
    A 御指摘の著作の関係部分に記載されているデータから、御指摘のような警告が得られるとは考えられない。

 (6) 「昭和三十七年度特別研究促進調整費中性洗剤特別研究報告」、「昭和四十八年度特別研究促進調整費等による合成洗剤に関する研究成果報告書」等においては、ABS等によるコレステロール値の上昇作用は認められていない。
     なお、御指摘に係る柳沢文徳氏ほかの実験結果は学会における口頭報告の概要を記載したものであり、また、モジャエフ氏ほかの論文はいわゆる合成界面活性剤についての総説であり、いずれも実験条件等の詳細な内容が明らかでなく、評価をすることはできない。

 (7) 高濃度下での化学物質の吸収促進は必ずしも低濃度下での吸収を証明するものではないものと考える。
     なお、医薬品に界面活性剤を添加するのは、薬物を溶液中に均等に混合する等によつて製剤中の有効成分の分散又は放出を調整するための溶解補助剤又は乳化剤等として用いるためであつて、吸収促進剤としての添加を認めたものではない。

 (8) 川崎病の原因については学界の意見が分かれており、いまだ定説がない。
     政府は、昭和四十五年度から研究班を組織し、原因の究明と治療法の確立、特にいわゆる川崎病突然死の予防と治療に関して積極的に取り組んできており、今後とも、専門学者等の協力を得ながら、研究の推進に努めてまいりたい。
     なお、調査研究班の調査研究結果では、ウイルス説、リケッチァ説その他の説についても確証を得るデータを得るに至つていない。

 (9) 御指摘の論文でも指摘されているように、実験上、合成洗剤による卵稚仔の発育及びえら呼吸機能に対する阻害作用等が知られているので、自然界における影響についても調査研究を行うこととしている。

 (10) 食品衛生の観点から洗浄剤の品質を確保し、その適正な使用を確保するため、営業者等を対象としてその成分規格及び使用基準を定めているものである。

 (11) 乳児寄生菌性紅斑の発症要因については、一般には、おむつの交換が十分でない等のため、排尿、排便後の汚物が乳児の肛囲又は陰股部に付着するなど、不衛生かつカンジダ菌の増殖に好適な環境条件が作り出されることが同疾患の発症要因と考えられている。
      御指摘の論文からは、合成洗剤が同疾患の発症要因であるとの結論が得られるとは考えられない。

二について

1 「内外の実験結果」とは、「昭和四十八年度特別研究促進調整費等による合成洗剤に関する研究成果報告書」等であり、「総合的判断」とは、一般毒性、特殊毒性、その他吸収、代謝等の実験結果に基づき、性差、個体差等を勘案して毒性を評価し、かつ、当該物質の使用の実態を勘案し、判断したことを指している。
  また、「通常の使用方法」は、食品衛生法に基づく洗浄剤の使用基準等に従つた使用を想定してのものである。

2 御指摘の合成洗剤に関する研究結果は、既に昭和五十三年十月、科学技術庁が公表している。

三について

1 おむつかぶれの発症要因は、一般に、乳児の肛囲又は陰股部の不衛生に起因するものであり、合成洗剤に起因するものではないと考えられている。したがつて、実態調査を行う考えはない。

2 安全性の再確認が必要と認められた成分については、急性毒性、慢性毒性、皮膚刺激性等の毒性試験を行つている。

3(1) 野菜若しくは果物又は飲食器への残留量は、通常の使用方法では微量であり、動物実験の結果等から誤飲等洗浄の目的を著しく逸脱した場合以外は、人体に対する安全性について問題はないと考えている。

 (2) 台所用合成洗剤の使用を推奨しているという事実はないが、台所用合成洗剤は、生鮮野菜に付着する細菌の除去等の効果はあると考えている。

 (3) 御指摘の著作に収載されているアンケートは、その集計方法等が明らかではないので、当該アンケートの結果について評価することはできない。

 (4) 台所用合成洗剤については、家庭用品品質表示法に基づき、標準的な使用方法、使用上の注意等に関する具体的な表示を義務付けることにより、この表示に従つて適切に使用されるよう努めているところである。

 (5) 以上のことから、台所用合成洗剤については、使用禁止等の措置を講ずる考えはない。また、御質問のような補償を行う考えもない。

4 一について2(6)において述べたとおり、ABS等によるコレステロール値の上昇作用は認められないことなどから、コレステロールが多量に吸収されるとは考えられないと判断したものである。

5(1) シャンプーを使用しての洗髪の場合、通常、シャンプー原液は薄められ、短時間のうちに洗い流されるものである。
     したがつて、シャンプー原液を七日間塗布し続け、皮膚障害を観察した御指摘の実験報告をもつて、シャンプーが通常の使用により皮膚障害を起こすものとは考えられない。
     なお、同報告によれば、シャンプーの十倍希釈液を用いた実験では皮膚障害がなく、逆に発毛が促進されたとされている。

 (2) シャンプーは、通常の使用において皮膚障害を生ずることはないと考えており、シャンプーの使用により脱毛の増加を招くとは考えられない。

 (3) 御指摘の報告からは、シャンプーと赤毛との因果関係について評価することはできない。
     なお、シャンプーにより赤毛に変わつたとする事例は承知していない。

 (4) 乳幼児の頭髪が以前に比べて細く、赤毛が増えているという事例は承知していない。

 (5)及び7(4) シャンプー及び歯みがきに配合される高級アルコール系界面活性剤の安全性に関する主な研究報告には、次のものがある。

   (ア) Olson, K.J.et al. : J.Soc.Cosmetic Chemists,
       13 : 469 ― 476, 1962

   (イ) 大石真之ほか : 東京衛研年報 , 25 : 669 ― 675, 1974

   (ウ) Fogelson, S.J.et al. : Archives of Internal
       Medicine, 73 : 212 ― 216, 1944

   (エ) Howes, D. : International Federation of
       Societies of Cosmetic Chemists VIIIth 
       International Congress, B8, 1974

6 リンスは、通常の使用においては、毛髪に短時間使用し直ちに洗い流すものであるので、皮膚刺激性並びに皮下浸透及び経口侵入による毒性については、問題ないと考えている。

7(1) 歯みがきの使用後に感じることがある若干の味覚変化については、使用後、間もなく消失する一過性のものであり、問題となるものではない。
     なお、御指摘の論文からは、歯みがき中の界面活性剤と味覚変化との関連性を評価できない。
 (2) 歯みがきの一回使用量に含まれる界面活性剤の分量は極めてわずかであり、かつ、通常、使用開始後長くても三分間程度で、口腔中の歯みがきは水で洗口除去されるものである。
     したがつて、界面活性剤が口腔粘膜から吸収されることは、ほとんどないものと考えられるが、吸収されたとしても極めて徴量であり、また、界面活性剤は、吸収されても排泄されやすく、蓄積性はないことが知られているので、安全性に問題はないと考えている。
 (3) むし歯の予防のためには、歯及び口腔の汚れを除去することが基本とされているが、界面活性剤は、練歯みがき中に配合することにより歯及び口腔を清浄にする作用を有するので、練歯みがきへの界面活性剤の配合は理由のあることと考えている。

8 柔軟剤は、繊維の柔軟性を保持するためのものであり、現在のところその安全性に問題はないと考えている。したがつて、柔軟剤の使用等の規制を行う考えはない。

9 合成洗剤の使用により、繊維に刺激性、アレルギー性その他の毒性が懸念される化学物質が吸着、残留するとの事例は承知していない。
  増白剤、青味剤の安全性についても現在のところ問題はないと考えている。したがつて、使用禁止等の措置を採ることは考えていない。

10(1)から(3)まで

 (一) 螢光剤の洗剤への添加及び衣料品の加工処理への使用については、現在のところその安全性につき問題はなく、したがつて、使用禁止等の措置を講ずる考えはない。

 (二) 現在使用されている螢光剤に発癌性は認められていない。

 (三) ガーゼ及び脱脂綿並びに食品等への螢光剤の使用については、それぞれ、医薬品の品質確保及び食品衛生の観点から規制が行われているものであり、また、乳幼児製品への螢光剤の使用の抑制について行政指導を行つたのは、これらの製品については、螢光剤による加工の必要性が認められないからである。

 (四) 現在のところ、合成洗剤を使用して洗たくした後のふきん等に残留する螢光剤によつて人の健康に害が及ぶとは考えられない。

11 御指摘のフロンガスに関する米国内の一部の学者の理論については、我が国を含め各国で調査研究が行われているが、その因果関係を含め結論を得るに至つていない。
   また、御指摘の苦情については承知しているが、当該皮膚障害が、スプレー洗剤によるものとは考えられない。
   したがつて、現在のところスプレー洗剤の販売禁止の措置を講ずる考えはない。

12 合成洗剤及び石けんの生産者は多数存在し、またその大部分を中小企業者が占めるため、正確なは握は困難であるが、現在までの調査では、石けんと合成洗剤を同一の設備で製造している企業は数社存在している。

13 家庭用合成洗剤の表示に関する公正競争規約の設定については、公正取引委員会において、消費者等の意見を聴取しつつ、規約案を検討している段階であり、この規約案では、合成洗剤の品質、効能等に関する不適切な表示を禁止することとしている。

四について

1 合成洗剤が衣類に残留するかどうか及び残留の程度は、洗たくの方法により異なると考えられる。

2 食品衛生法に基づく使用基準に従つて合成洗剤を使用した場合、その野菜等への残留量は微量である。
  レストラン、食堂等の営業施設については、都道府県等の食品衛生監視員が、当該施設の衛生状態、食品の取扱い等について監視・指導を行つており、その際台所用合成洗剤の使用基準が遵守されているかどうかについても必要に応じ監視・指導を行つている。

3 陰イオン界面活性剤に関する各種知見から、飲料水として毒性が問題となる陰イオン界面活性剤の濃度は、水道水の水質基準に定める濃度に比べはるかに高く、現行の水道水の水質基準の安全性は十分確認されている。
  その他の界面活性剤についても各種知見から特に問題はないと考えている。

4(1)及び(2) 小学校の家庭科、中学校の技術・家庭科等で洗剤の種類、特徴、成分、用法等を指導することとしており、合成洗剤については使用する液の濃度、浸漬時間、すすぎの方法等に留意して使用するように指導している。その際、合成洗剤の適切な使用が安全性の確保や環境の保全につながるものであることを理解させることとしている。

 (3) 教科書では、洗剤の種類として合成洗剤と石けんの両者を挙げてその性質、用途、使用方法などを説明している。

 (4) 学校教育では生活の実態に即した指導が必要であり、石けん及び合成洗剤のそれぞれについて指導するようにしている。

5 学校給食における合成洗剤の使用については、適正に行うよう指導の徹底を図つており、これを著しく逸脱して使用した場合以外は、人体に対する安全性について問題はないと考えている。
  また、給食調理作業に従事したために皮膚炎等が生じたことが明らかな場合は、関係法令の規定により所定の措置が行われる。

6 御指摘の化学薬品は、接着剤、乳化剤、シャンプー等に広範に使用されている。
  衣料品における化学薬品の残留量の実態については、商品の試買テスト、苦情処理テスト等によりそのは握に努めているところである。
  また、厚生省において、繊維の加工処理に際して使用する化学薬品については、事前にその安全性を確認した上で使用するよう従前から必要に応じ指導しているところであり、更に有害と判明した化学物質については、所要の規制を実施しているところである。

7 医薬品、化粧品及び食品添加物については、その安全性について最新の学問水準に立脚した評価を行うよう努めているところであり、常に学問の進歩に対応した知見の収集とその評価検討を行い、その評価結果に基づき所要の対策を講じているものである。
  医薬品及び化粧品に配合される界面活性剤については、従来から安全性が十分に確立されたものに限定して使用を認めているところである。界面活性剤は、広く諸外国においても、薬局方等に収載され、医薬品及び化粧品の配合成分として繁用されており、安全性について問題とされていない。
  食品添加物として使用を認められている界面活性剤については、各種毒性試験等の結果が、我が国のみならず国際専門機関等においても評価されており、その安全性は確認されている。
  なお、AF ― 2による被害は生じていない。

8(1)及び(2) 合成洗剤中に含まれる燐酸塩は、合成洗剤の助剤として硬水を軟水化する等の機能を有する有用な成分の一つであるが、合成洗剤の洗浄力を低下させない範囲で極力燐酸塩の低減化を図るよう自主規制値の遵守を指導しているところであり、自主規制が開始された昭和五十年以降に製造されたものについては、自主規制値は十分遵守されていると承知している。

 (3) 燐に係る調査については、昭和五十年度から、瀬戸内海、伊勢湾等を対象水域として、排出源の実態、排出水の水質レベル、処理技術の実態、規制の効果等に関し、実施しているところである。

 (4) 燐は赤潮発生条件の一つとされている富栄養化の要因物質の一つであるといわれているが、赤潮については、その発生機構が必ずしも十分解明されていないこともあり、その被害の救済に係る費用を特定の者に負担させることは考えていない。

 (5) これまで、合成洗剤に含まれる燐酸塩が海域の富栄養化の一要因といわれているが、御指摘の論文は、合成洗剤に含まれるLASが一定の濃度(〇・〇三〜〇・一ppm)の範囲内で赤潮プランクトンの増殖を促進する作用があることを指摘したものである。
     合成洗剤と赤潮の発生との関係については、今後とも調査研究を進める必要がある。

9 御質問の場合を含め、生活排水等の都市汚水による農業被害を防止するためには、下水道又は地域し尿処理施設の整備促進等を図ることが肝要であると考える。
  LASによる農業被害が生じているかどうかについては、他の汚染物質による窒素過多や土壌条件等の影響が大きいことから、判断を下すことは困難である。
  稲の収量に及ぼす合成洗剤及び石けんの影響に関する御指摘の実験の結果については、この実験データのみから合成洗剤及び石けんの影響によるものと一がいに断定することは早計である。
  このようなことから、直ちに合成洗剤の使用を規制することが必要であるとは考えていない。

10(1) 石けんの排水が大量に環境中に排出された場合の分解性については明らかにされていない。

  (2) 合成洗剤中のLAS、燐酸塩等による環境汚染の状況は、十分には解明されておらず、一方、合成洗剤に替わる石けんの大量使用が環境にいかなる影響を与えるかについても必ずしも明らかにされていない。

  (3) 石けんの原料となる動植物油脂の供給には限界があり、今後ともその大幅な伸びは期待できず、また、自然条件に左右される等安定性を欠く面もある。
      したがつて、合成洗剤の原料である石油に比較し動植物油脂の方が原料供給面で安定的であるとはいえない。

  (4)及び(5) 政府として特に粉石けんの使用を促進することは考えていないが、消費者が石けんを円滑に入手し得るよう石けんの需給状況についてはかねてから注意を払つているところである。
      また、給湯式洗たく機は、通常の洗たく機と比較して高価となり、かつ、電力消費量も増加するという面も考慮する必要があり、特にその普及を促進することは考えていない。

11 石けん原料としての家庭廃油の再資源化については、これを工業的規模で行う場合には、回収、精製等に多額の費用が必要となるため、極めて困難な状況にあると聞いている。

12 動植物油脂が一般に直ちに石けんの原料として使用されるものではないが、現在、主として牛脂及びやし油は石けんの原料として使用されている。動植物油脂については、石けん原料用等工業向け用途も含め、その需要に見合つた供給が行われているところであるが、今後とも、これら油脂原料の安定的確保に努めてまいる所存である。

 右答弁する。




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