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答弁本文情報

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昭和五十九年八月二十八日受領
答弁第四一号

  内閣衆質一〇一第四一号
    昭和五十九年八月二十八日
内閣総理大臣 中曽根康弘

         衆議院議長 (注)永健司 殿

衆議院議員稲葉誠一君提出株式会社の監査制度等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員稲葉誠一君提出株式会社の監査制度等に関する質問に対する答弁書



一について

 アメリカの株式会社には、代表取締役の制度がなく、業務の執行は、取締役会の選任する社長、副社長等の役員によつて行われること、取締役会の決議によつて利益処分をすることができること等我が国の制度と異なる点もあるが、我が国の株式会社に関する法制度は、戦後、アメリカのそれにならつて大幅な改正が行われたので、両者の間に基本的な差異はない。

二について

1 アメリカの証券取引に関する規制は、元来、州法により各州別に行われていたが、千九百二十九年の株価大暴落の経験を踏まえ、州間にまたがる証券取引について連邦レベルでの規制が必要であるとの観点から、アメリカ連邦議会は、千九百三十三年に証券の募集・売出しに際しての企業内容開示等について定めた「千九百三十三年証券法」を、千九百三十四年に証券取引所や証券業者の監督、違法行為の禁止等について定めた「千九百三十四年証券取引所法」を、それぞれ制定した。
  アメリカの証券取引委員会(SEC)は、この「千九百三十四年証券取引所法」に基づき設置され、これら二法の執行に関する権限を与えられた。
2 SECは、一般の行政機構から独立した行政委員会である。委員会は、五人の委員によつて構成されるが、これらの委員は、上院の勧告及び同意に基づき大統領が任命する。
3 機構面からみると、前記のとおり、SECが一般の行政機構から独立した機構であるのに対し、大蔵省証券局は、金融・証券市場に関する行政を一体的に遂行するため、大蔵省の一部局とされている。人員は、アメリカSEC事務局が約千九百名(地方部局を含む。)、大蔵省証券局が百二十九名(他に、財務局等にも証券事務担当者が配置されている。)である。

三について

1 株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律(以下「商法特例法」という。)第二条に規定する株式会社にあつては、その支出は、公認会計士又は監査法人による監査の対象となつている。また、証券取引法の適用を受ける会社にあつては、投資家保護の観点から、財務諸表が全体として企業の財務内容を適正に表示しているかどうかにつき、公認会計士又は監査法人の監査を受けるものとされている。
  なお、政党又は政治資金団体にあつては、会計帳簿等について、当該政党又は政治資金団体の党則、規約等に基づいて設けられた会計監査を行うべき者の監査を受けるものとされている。
2 アメリカにおいては、連邦選挙運動法により、会社及び労働組合が、大統領選挙及び連邦上下両院議員等の選挙に関連して寄附又は支出をすることは禁止されている。ただし、会社及び労働組合が分離基金(いわゆる政治活動委員会)を設立・運営するための支出は認められている。

四について

 御指摘の法人が株式会社であれば、商法の規定するところにより企業内容の開示が義務付けられる。すなわち、その会社は、貸借対照表(商法特例法第二条に規定する株式会社にあつては、貸借対照表及び損益計算書)又はその要旨を公告しなければならない(商法第二百八十三条第三項、商法特例法第十六条第二項)。また、株主のほか、会社の債権者も、会社が本店又は支店に備え置いた貸借対照表、損益計算書、営業報告書等の閲覧又は謄抄本の交付(商法第二百八十二条第二項)、同じく株主名簿又は株主総会議事録の閲覧又は謄写(商法第二百六十三条第二項、第二百四十四条第四項)を請求することができる。更に、債権者は、裁判所の許可を得て取締役会議事録の閲覧又は謄写を求めることができる(商法第二百六十条ノ四第四項、第五項)。
 他方、証券取引法は、投資者保護を目的としており、有価証券報告書の提出により企業内容開示が義務付けられているのは、証券取引所に上場されている有価証券、店頭売買有価証券又はこれら以外で募集若しくは売出しに際し有価証券届出書が提出された有価証券の発行者である会社等である(証券取引法第二十四条第一項、第二十七条)。また、御指摘の法人がこれらの要件を満たしていない場合には、証券取引法上、企業内容の開示は義務付けられていない。

五について

1 警察では、改正商法施行前、約六千八百人の者を総会屋等として把握していたが、法施行後、そのうちの約四百人が転廃業し、現在は、約六千四百人とみている。
  なお、いわゆる単位株を取得している者は、約千七百人とみられる。
  このうちの一部の活動的な総会屋がグループ化して、昭和五十八年一月に開催された株主総会あたりから、いわゆる質問権を行使して株主総会を長時間にわたらせる傾向が見られ、現在も続いている。
  警察としては、こうした動きのねらいは、株主総会を舞台に自己の勢力を誇示して、企業側に脅威を与え、裏で何らかの不正な利益を得ようとするところにあるものとみて、引き続き、違法事犯の検挙と企業への指導を強化しているところである。
2 外国にも総会屋というものが存在するか否かについては、把握していない。ただ、一般的には、我が国特有の現象であると言われている。
  総会屋の起こりは、我が国における株式会社制度の発展の歴史と深くかかわつており、古くは明治時代にさかのぼるものと理解している。
  総会屋の存在理由としては、経営者の姿勢、一般株主の会社運営に対する関心の希薄さ等がその要因として挙げられる。

 右答弁する。




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