答弁本文情報
平成十年五月十二日受領答弁第二九号
内閣衆質一四二第二九号
平成十年五月十二日
衆議院議長 伊※(注)宗一郎 殿
衆議院議員保坂展人君提出大蔵省の調査及び処分などに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員保坂展人君提出大蔵省の調査及び処分などに関する質問に対する答弁書
一の(1)について
過去五年にさかのぼって行われた今回の大蔵省の調査においては、資料や調査対象者の記憶等の制約から、一件一件の事実関係を正確に調べることが困難であったため、調査対象者各人の調査期間中の行為全体を総合的に勘案して行き過ぎがあったかどうかを判断することにその主眼が置かれており、一件一件の会食等のすべてについて、日時、相手方等を正確に把握しているものではない。また、会食等の金額については、ほとんどの場合において相手方が負担していたため把握することができなかった。なお、国家公務員法上の懲戒処分を受けた三十二名の処分事由は、別添一のとおりである。
内規による処分を受けた八十名については、会食等の行われた時期、相手方、回数、反復継続度合いや職員の地位等にかんがみて、国家公務員法上の制裁措置である懲戒処分ではなく、職員の職務履行の姿勢を正し、将来の職務の改善向上を図るための監督上の具体的措置としての矯正措置を受けたものであり、職員の意欲やその家族に対する配慮の必要性も踏まえ、各人の受けた会食等の内容を開示することは差し控えたい。
今回の調査において、会食等に関連して職務に関する具体的な依頼を受けた者や相手方に便宜を図った者があったとの確認は得られなかった。
大蔵省は、今回の調査において、調査対象者各人の調査期間中の行為全体を総合的に勘案して行き過ぎがあったかどうかを判断することに主眼を置き、調査対象者との個別面談、諸資料間の相互確認、相手方民間金融機関等に対する問い合わせ等を必要に応じて並行的に行うことにより、可能な限り事実関係の確認に努めたところであるが、この過程で、御指摘の刑法各条に規定する犯罪を構成すると思料するに足る事実は確認されなかった。
大蔵省は、捜査当局に対して情報交換を求め得る立場にはなく、今回の調査は、大蔵省が独自に行ったものである。また、今後いかなる事項について捜査が行われるかについては、捜査当局の活動内容にかかわる事柄であり、大蔵省としては、これを知り得る立場にはなく、何らの予見も持っていない。
大蔵省としては、昨年来、金融行政に関連する部局の職員について種々の疑惑が指摘され、さらに、大臣官房金融検査部等に在籍していた職員が逮捕されたこと等により、金融行政そのものに対する不信感も高まりかねない状況にあったことから、大臣官房金融検査部、証券局、銀行局等の金融行政に関連する部局の課長補佐以上に相当する職に在職したことのある職員に対して、銀行、証券会社、保険会社等の民間金融機関等との間における会食等について調査を行ったものである。したがって、民間金融機関等以外の者との関係については調査を行っておらず、また、今回のような広範にわたる一般的な調査を行わなければならない状況にあるとは考えていない。仮に、今後新たに具体的な事実が判明した場合などには、当該職員について調査の上、厳正な処分を行う所存である。
それぞれの通達が発出された時点において、その背景となった事件について職員一同反省し、綱紀の保持に努めたところであるが、時の経過とともに一部に緊張感に緩みが生じていたのではないかと考えている。
御指摘の懲戒処分を受けた職員の処分後の経歴は、別添二のとおりである。
懲戒処分を受けた職員の処遇については、その処分の内容とその後の勤務成績等を総合的に勘案し、判断することとしている。
また、特殊法人等の役員は、それぞれの役職にふさわしい能力、識見等を有する者として、それぞれの任命権者が選任しているものである。
なお、大蔵省としては、退職した職員が再就職先の民間企業等において受けた処遇の理由等については承知していない。
紀律保持委員会は、大蔵省職員の紀律保持を徹底し、その状況を監視するとともに、問題点、改善すべき点等があればこれについて検討を行うことを主たる目的とした組織であり、大蔵省職員全体の紀律の保持を図るという点で一定の役割を果たしていると考えるが、個々の職員の不祥事を防止するということについては、おのずから限界があると考える。
大蔵省においては、様々な会議が開催されているが、部内の会議について議事録を作成しなければならないこととはされておらず、紀律保持委員会についても議事録は作成していない。
最近の不祥事を契機として、厚生省に「施設整備業務等の再点検のための調査委員会」が、通商産業省に「服務管理委員会」がそれぞれ設けられている。
いずれの組織についても議事録は作成されていない。
四月二十七日に、大蔵大臣が職員に対して、「処分を受けなかった職員も、綱紀の緩みがなかったかどうか自ら問い直し、正すべき点は正していかなければならない。国家公務員は『国民全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない』という基本原則に対する自覚を新たにして、一層の倫理観と使命感をもって職務に邁進しなければならない。」との訓示を行ったところである。
今後とも、紀律保持委員会等を通じて職員一人一人の自覚を促し、綱紀の保持の徹底に努めてまいる所存である。
今回の調査は、千五十名を超える者に対して過去五年にさかのぼって行われ、資料や調査対象者の記憶等の制約から、一件一件の事実関係の内容を正確に調べることが困難であったため、調査対象者各人の調査期間中の行為全体を総合的に勘案して行き過ぎがあったかどうかを判断することに調査の主眼が置かれた。このような調査の性格上、通常の非行事件とは異なり、非違行為を特定してその時の監督者の責任を追及することは困難である。このため、各局の局長や服務管理官である総務課長等を含め省内の紀律保持の任に当たる幹部職員は、多くの職員に行き過ぎがあったことを深く反省するとともに、綱紀の厳正な保持を図り信頼回復に向けて職務に邁進することを決意し、給与の一部を国庫に返納することとしたところである。
なお、懲戒処分の対象とはならないものの辞職した職員一名については、特定の期間に会食等を集中反復して行っており、その時の監督者に責任を問うことが可能であったため、監督責任を含めた処分を二名に対して行ったところである。
今回の大蔵省の事案も踏まえ、現在、与党においていわゆる公務員倫理法案の作成作業が進められているところであり、政府としては答弁を差し控えたい。
別添1
































別添2
長岡 實 | |||||
昭 | 54. | 10 | 大蔵事務次官(処分時) | ||
55. | 6 | 辞職 | |||
56. | 7 | 日本専売公社副総裁 | |||
57. | 6 | 〃 総裁 | |||
60. | 4 | 日本たばこ産業(株)社長 | |||
63. | 6 | 〃 特別顧問 | |||
63. | 11 | 東京証券取引所理事長 | |||
平 | 6. | 5 | 〃 顧問(〜6.8) | ||
7. | 7 | 日本たばこ産業(株)顧問 |
松下 康雄 | |||||
昭 | 54. | 10 | 大臣官房長(処分時) | ||
55. | 6 | 主計局長 | |||
57. | 6 | 大蔵事務次官 | |||
59. | 6 | 辞職 | |||
61. | 6 | (株)太陽神戸銀行取締役 | |||
62. | 6 | 〃 頭取 | |||
平 | 2. | 4 | (株)太陽神戸三井銀行会長 | ||
4. | 4 | (株)さくら銀行会長 | |||
6. | 6 | 〃 相談役 | |||
6. | 12 | 日本銀行総裁 | |||
10. | 3 | 辞任 |
篠沢 恭助 | |||||
平 | 7. | 9 | 大蔵事務次官(処分時) | ||
8. | 1 | 辞職 | |||
8. | 9 | (財)生涯学習開発財団顧問 | |||
10. | 4 | 辞任 |