第25号 令和7年5月13日(火曜日)
令和七年五月十三日(火曜日)―――――――――――――
議事日程 第二十三号
令和七年五月十三日
午後一時開議
第一 電気通信事業法及び日本電信電話株式会社等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
第二 日本国の自衛隊とフィリピンの軍隊との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国とフィリピン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件
第三 日本国の自衛隊とイタリア共和国の軍隊との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とイタリア共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件
第四 日本学術会議法案(内閣提出)
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○本日の会議に付した案件
日程第一 電気通信事業法及び日本電信電話株式会社等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第二 日本国の自衛隊とフィリピンの軍隊との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国とフィリピン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件
日程第三 日本国の自衛隊とイタリア共和国の軍隊との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とイタリア共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件
日程第四 日本学術会議法案(内閣提出)
午後一時二分開議
○議長(額賀福志郎君) これより会議を開きます。
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日程第一 電気通信事業法及び日本電信電話株式会社等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
○議長(額賀福志郎君) 日程第一、電気通信事業法及び日本電信電話株式会社等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。総務委員長竹内譲君。
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電気通信事業法及び日本電信電話株式会社等に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔竹内譲君登壇〕
○竹内譲君 ただいま議題となりました法律案につきまして、総務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、近年の社会経済情勢の変化を踏まえ、電話及びブロードバンドのユニバーサルサービスのあまねく日本全国における提供及び電気通信事業者間の適正な競争関係を確保しつつ、NTT東日本及びNTT西日本の経営の自由度の向上等を図るため、ユニバーサルサービスについて他の電気通信事業者が提供しない区域における提供の義務を負う最終保障電気通信事業者について規定するほか、NTT東日本及びNTT西日本の地域電気通信業務の範囲を見直す等の措置を講じようとするものであります。
本案は、去る四月二十三日本委員会に付託され、翌二十四日村上総務大臣から趣旨の説明を聴取し、五月八日、質疑を行い、これを終局いたしました。次いで、討論を行い、採決いたしましたところ、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○議長(額賀福志郎君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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日程第二 日本国の自衛隊とフィリピンの軍隊との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国とフィリピン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件
日程第三 日本国の自衛隊とイタリア共和国の軍隊との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とイタリア共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件
○議長(額賀福志郎君) 日程第二、日本国の自衛隊とフィリピンの軍隊との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国とフィリピン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件、日程第三、日本国の自衛隊とイタリア共和国の軍隊との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とイタリア共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件、右両件を一括して議題といたします。
委員長の報告を求めます。外務委員長堀内詔子君。
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日本国の自衛隊とフィリピンの軍隊との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国とフィリピン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件及び同報告書
日本国の自衛隊とイタリア共和国の軍隊との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とイタリア共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔堀内詔子君登壇〕
○堀内詔子君 ただいま議題となりました両件につきまして、外務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
まず、日・フィリピン部隊間協力円滑化協定は、令和六年七月八日に署名されたもので、一方の締約国の部隊が他方の締約国を訪問して協力活動を行う際の手続及び同部隊の地位等を定めるものであります。
次に、日伊物品役務相互提供協定は、令和六年十一月二十五日に署名されたもので、自衛隊とイタリア軍隊との間で物品、役務を相互に提供する際の決済手続等を定めるものであります。
両件は、去る五月二日外務委員会に付託され、七日岩屋外務大臣から趣旨の説明を聴取いたしました。九日に質疑を行い、質疑終局後、討論を行い、順次採決を行いました結果、両件はいずれも賛成多数をもって承認すべきものと議決した次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○議長(額賀福志郎君) これより採決に入ります。
まず、日程第二につき採決いたします。
本件を委員長報告のとおり承認するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、本件は委員長報告のとおり承認することに決まりました。
次に、日程第三につき採決いたします。
本件を委員長報告のとおり承認するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、本件は委員長報告のとおり承認することに決まりました。
――――◇―――――
日程第四 日本学術会議法案(内閣提出)
○議長(額賀福志郎君) 日程第四、日本学術会議法案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。内閣委員長大岡敏孝君。
―――――――――――――
日本学術会議法案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔大岡敏孝君登壇〕
○大岡敏孝君 ただいま議題となりました法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過及び結果を御報告いたします。
本案は、日本学術会議の機能強化に向けて、その独立性、自律性を抜本的に高めるため、学術に関する重要事項に係る審議等を行うことにより、学術の向上発達を図るとともに、学術に関する知見を活用して社会の課題の解決に寄与することを目的とする法人として、日本学術会議を新法により設立するものです。
本案は、去る四月十八日、本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、同日本委員会に付託されました。
本委員会においては、二十三日坂井国務大臣から趣旨の説明を聴取した後、二十五日から質疑に入りました。五月七日には参考人から意見を聴取し、九日質疑を終局いたしました。質疑終局後、討論を行い、採決しましたところ、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
なお、本案に対し附帯決議が付されました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○議長(額賀福志郎君) 討論の通告があります。順次これを許します。山登志浩君。
〔山登志浩君登壇〕
○山登志浩君 立憲民主党の山登志浩です。
会派を代表して、日本学術会議法案に反対の立場から討論を行います。(拍手)
まず、会員任命拒否問題についてです。
事の発端は、二〇二〇年十月、当時の菅義偉首相が、合理的な説明を行わないまま、学術会議の会員候補六名の任命を拒否したことにあります。この問題は、日本学術会議の独立性とそれを担保する人事の自律性を侵害するものであり、その独立性と自律性を基礎づけている学問の自由を脅かし、また、国民主権に由来する行政の公正、透明性の原則及び説明責任の原則に反する点で大きな問題でした。にもかかわらず、今回の本法案の審議においても、政府からは、なぜ任命を拒否したのか、本会議や委員会で明確な答弁がなかったことは極めて遺憾です。
任命拒否の人事介入が行われるまでは、三十年以上にわたり、学術会議が選考した候補者がそのまま会員として任命されてきました。学術会議の真の発展を目指した議論をするのであれば、任命拒否した六名を速やかに任命し、学術会議との信頼関係を再構築するべきです。
次に、日本学術会議の独立性についてです。
現行の日本学術会議法を廃止して新法を制定する理由について、法人化することにより学術会議の独立性が高まるという説明がされてきました。しかし、任命拒否問題で学術会議の独立性を毀損した政府自身が、独立性を定める現行法に問題があるとして廃止を主張することは滑稽です。形式的に国の機関から切り離して法人化させたからといって、独立性が高まることはありません。
本法案によって、内閣総理大臣の関与が強化されています。新法によって設立される法人は、内閣総理大臣が会員以外の者から任命する監事が業務一般を監視、監査し、内閣総理大臣に意見を提出する強大な権限を有し、監事の再任の妨げもありません。また、評価委員会の委員も、内閣総理大臣が任命することとされ、中期的な活動計画について意見を述べるなど、政府が、間接的にせよ、運営全般に介入する仕組みになっています。
会員選考については、現在の会員自身が次の会員の選考を行うコオプテーション方式が否定され、新会員の選考に当たっては特別な選考方法が採用されます。学術会議会長が選考委員を任命するときは、内閣総理大臣が指定する有識者と協議しなければなりません。また、現在の会員の半数が継続して会員となり得るものの、三年後の改選で再任されることはありません。
すなわち、会員選考における継続性が遮断され、また、任命の過程で政府が排除したい学者についてフィルタリングが行われ、任命拒否と同じことが行われるおそれがあることを指摘しなければなりません。
参考人質疑で梶田隆章前学術会議会長からも、活動面については、幾重にも、監視、管理あるいは助言という形で意見を聞きながらの活動を求められるので、独立した活動ができるのか、また、会員選考については、新法人となるときに特別な選考方法を求めている点、かつ、通常時も会員選定委員会が選考方針のみならず会員選考にまで意見を述べることができる点に懸念を持つと述べられました。
このように、政府が介入しようと思えばできる仕組みが幾つも組み込まれており、介入したくてもできない仕組みであるべきです。
次に、財政民主主義についてです。
政府は、本法案の正当化のために、度々財政民主主義を答弁で持ち出していました。
財政民主主義とは、財政は国会の意思に基づいて行使しなければならないというのが一般的な理解ですが、国が金を出しているのだから口を出すのは当然と言わんばかりに、財政民主主義を振りかざすことがあってはなりません。また、中期的な活動計画や年度計画の策定を通じて、国費による予算措置が学術会議の活動を方向づける手段になることが危惧されます。
最後に、本法案の提出に至るプロセスを見ると、政府は学術会議に対する配慮が欠如していたことを厳しく指摘しなければなりません。
学術会議の会長経験者からは、七十五年余りにわたって培われてきた学術に基づいて社会と政府に発信するという機能を弱体化させ、ひいては日本の学術の終わりの始まりとすることになりかねない旨の声明が出され、学術会議や学問の自由を脅かしかねないと警鐘が鳴らされています。
学術会議の在り方を法律で定めるに当たっては、学問の自由に由来する独立性、自律性が保障されることが大前提であり、本法案はそれを満たしていないことを厳しく指摘し、反対の討論といたします。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(額賀福志郎君) 三木圭恵君。
〔三木圭恵君登壇〕
○三木圭恵君 日本維新の会の三木圭恵です。
私は、会派を代表し、日本学術会議法案に賛成の立場から討論をいたします。(拍手)
本来であれば、全面的に国の補助金で運営するのではなく、日本学術会議の独立性を担保するためにも、資金面でも自立していくことが求められます。そういった意味では、今回の法案はまだまだ不十分であり、全面的に賛成とは言えません。
最大の問題は、国からの独立を掲げながら、年間十二億円にも及ぶ税金投入が続くことです。学問の自由を追求し、真の独立をかち取るためには、財政面でも独立し、民営化の道を進むことが本来の姿であり、国民からの支持や期待に応えていくことでしょう。
しかし、不十分な法案とはいえ、本法案に反対し廃案にするとすれば、現行の学術会議がそのまま存続することになり、それでは必要な改革を先送りすることにしかなりません。本法案を第一歩とし、民営化に向けた抜本的改革に取り組んでいくべきです。
本法案が提出された背景として、いわゆる任命拒否問題があると指摘されています。
現行制度の下、国の行政機関であるからには、特別職の国家公務員としての適格性、政治的中立性の確保など、総理の任命権に基づく判断は尊重されて当然です。同時に、法に根拠がある行為である以上、任命拒否について国民に対する説明責任があることも当然です。政府は、人事に関することだからと説明を拒む姿勢を改めるべきです。国民に広く説明責任を果たし、国民の理解を得ることが必要です。
学術会議の立場から見れば、本法案によって国の機関でなくなれば総理の任命手続も不要で、任命するしないの問題に時間を取られることなく、科学的助言など本来の業務に専念することができます。本来業務に専念できることは本望ではないでしょうか。
学術会議が、今後、我が国最高の科学アカデミーとして国民から信頼されるためには、学術会議の政治的中立性を確保することが非常に重要です。
特定の政党や外部勢力が介入し、影響を及ぼすようなことはあってはなりません。我が党のこの指摘に対し、日本共産党は、我が党は学術会議に対し不当な介入、干渉を行った事実は一切ありませんと反論しましたが……(発言する者あり)済みません、共産党の批判に対して立憲民主党の一期生がやじを飛ばすというのはどういうことでしょうか。一九五〇年発行の同党の雑誌「前衛」四十七号の中で、同党の幹部、宮本顕治氏は、学術会議選挙で党員専門家が最高点を得た成果について赤旗は大きく取り上げたと、あからさまに会員選挙に党として介入したことを語っています。学術会議の法人化が学問への政治の介入だと非難されるのであれば、まずは自分たちの党の歴史を勉強されることをお勧めします。
また、五月九日の内閣委員会において、日本共産党の塩川委員より、三木委員のやっていることは反社会的集団の統一教会系団体と同じものであり、統一教会と一体と見られても仕方がないと発言されましたが、私は統一教会とは無関係であり、根拠のない誹謗中傷です。日本共産党を非難すれば統一教会と同じだなどと一生懸命レッテル貼りをされる姿は、怒りを通り越して気の毒とすら思いますが、内容が真実と違うので痛くもかゆくもありませんし、そんなことで私が黙るとお考えなら、大きな間違いであることを指摘させていただきます。
過去の歴史を真摯に反省し、特定の政治勢力やイデオロギーによる支配を許さず、国民全体の利益のための科学という、本来あるべき姿を取り戻すべきです。
そのためにも、本法案で新設される選定助言委員会など、会員候補者の選定に当たっての一定の外部の科学者の目は必要となります。この点、特に、会員の選定プロセスにおける現在のコオプテーション方式は、組織の内部の価値観が固定化されるリスクをはらんでいます。新しい知見や多様な視点が積極的に取り入れられるような制度に改めることで、学術会議がより多様な意見を取り入れ、時代に即して柔軟に対応することが可能となるでしょう。
本法案では、コオプテーションの考え方を引き継ぐとする一方で、これまでの会員は一旦リセットし、新法人の下で新たに選出するとしています。
この点について、この四月に開催された学術会議総会において一部会員から驚くべき発言があったことが、五月七日と九日の内閣委員会で指摘されました。この法律が通ることで、これまでとは違う人が入ってくる、文系には政府にすり寄る、かなり右に立っている人が確実にいる、そういう人たちがここに入ってくる、そういう状態を許していいのか考える必要があるとの発言です。これは、まさしく、現状の学術会議はイデオロギーによって会員を選別している実態を示すものであり、これをリセットすることは待ったなしです。
運営費用については、本法案では、学術会議の業務の財源に充てるため、政府が必要と認める金額を補助することができるとしていますが、できるだけ早い時期に税金依存の体質を改めていく必要があります。新しい法人が国民に対して透明性のある財務運営を実行することは、寄附を始めとした多様な自主財源を確保し、真に独立した自主的な組織として発展していくためにも不可欠だと考えます。
科学的助言が社会から一定の重みを持って受け止められるのは、国の機関だからではなく、そのクオリティーが高いから、国民から求められている機能、役割を果たし理解、信頼されているからであり、そのような価値あるものについては自然と注目も集まります。国の機関として行政を通した間接的な影響力ではなく、独立した一組織として国民にダイレクトに働きかけることができれば寄附も集まるでしょう。
また、政府は、寄附に対する国民の機運を醸成し、学術に関する国民の関心を高めることを目的に、国民が学術会議に寄附をした際には寄附金控除の制度を設けるなどの税制措置をすることなども早急に検討していただくことを要望とします。
学術会議の活動内容についても、本法案を機に改善が求められています。
四月の総会の際、学術会議が発表した声明では、設立以来の七十六年の歴史的成果として南極地域観測と初期の原子力開発を挙げていますが、近年、国民の苦難となっていた新型コロナウイルスによるパンデミックや東日本大震災に伴う放射線や放射性物質の問題などに対して学術会議がどのように役立ったのかを示すことはありませんでした。逆説的に言えば、学術会議の役割は南極観測や原子力開発までであり、既にその役割を終えているということではないでしょうか。
学術会議は、設立以来、軍学共同反対のスローガンの下に、かたくなに国防技術の研究への協力を拒み続けてきました。しかし、そのことが科学技術一般の進歩の妨げになってきました。
令和四年になってようやく学術会議は、軍民共用、いわゆるデュアルユースとそうでないものとに単純に二分することは困難との新たな見解を示しましたが、その後、大学から防衛省へのデュアルユース研究の応募が増えたことからも、学術会議が大学の研究を実質的に阻害してきたことは明白であり、それまでの研究の遅れを思うと遺憾でなりません。今後は大いに防衛技術の研究に貢献し、我が国の安全保障、平和の維持のために科学の力を発揮していただきたいと思います。
本法案はあくまでも改革への最初の一歩にすぎず、これで終わりではなく、廃止又は完全民営化を含めた抜本改革を実現するまでは改革の手を緩めるわけにはいきません。本法案の附則第二十七条の検討規定については、施行後六年にこだわらず、不断に見直しを行い、議論を続けていくべきです。
以上、提案いたしまして、賛成討論とさせていただきます。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(額賀福志郎君) 田中健君。
〔田中健君登壇〕
○田中健君 国民民主党の田中健です。
ただいま議題となりました日本学術会議法案につきまして、会派を代表して、反対の立場から討論を行います。(拍手)
まず、確認しておきたいことがあります。それは、日本学術会議の法人化そのものに反対しているわけではないということです。むしろ、時代の変化に応じて組織の在り方を見直し、自律性と柔軟性を高めていくこと自体は、前向きに検討されるべき課題であります。
参考人質疑の中でも、日本学術会議梶田元会長からは、日本の場合、立法府への科学的助言のチャネルがないことが課題であり、立法府への助言機能が明記されるなら、法人化のメリットになるとの言及がありました。現在のような厳しい財政状況の中で、効率的かつ機動的な運営を求める観点から、法人格の付与という制度設計に一定の合理性があることも理解をしております。
しかしながら、本法案が国会に提出されるまでの経緯、そしてその中身を慎重に検討するにつれ、やはり本法案を現段階で成立させることには大きな疑問が残ると言わざるを得ません。
最大の問題は、日本学術会議が国際的なアカデミーとしての信頼を維持し続けるために不可欠とされる五要件が、法案の設計において十分に尊重されていないという点です。これらは、いずれも、ユネスコや国際学術会議など国際的な学術機関が共有する基準であり、日本が学術国家として国際的な信頼を維持するためには不可欠な価値であります。
ところが、本法案では、監事の任命権が内閣総理大臣にあること、さらには、学術会議の運営状況を評価する第三者委員会の評価委員会委員についても総理が任命する仕組みになっています。これは、名目上の法人化を通じて形式的には独立性を高めたように見せかけつつも、実質的には政府の関与を強化する構造になりはしないかという懸念を生むことになりました。また、法人化の際とその三年後の二回にわたって採用される会員選考方式が、現会員が次期会員を選考するコオプテーションという世界標準の会員選考方式からほど遠いものであるという点にも懸念が表明されています。しかし、現場から上がっているこれらの声に納得し得る回答は示されず、最後まで懸念が解消されることはありませんでした。
こうした懸念は、学術会議の現職の会員のみならず、広く学術界からも強く表明がなされています。日本学術会議を構成する会員は、あらゆる学問分野の中から厳正な手続に基づいて選ばれ、国家としての知の基盤を担う存在です。その構成員から独立性が脅かされるという声が上がっていること自体が、既にこの法案の問題性を如実に物語っているのではないでしょうか。
また、全国の学会、学協会からも次々と懸念や反対の声明が発表されています。日本物理学会、日本心理学会、日本社会学会、日本法社会学会など主要な学会が名を連ねており、その数は百を超える規模にまで及んでいます。これらの学会は、それぞれの専門性の高い分野を担いながらも、共通して、学術の独立性は守らなければならないという立場から、本法案の問題点を指摘しています。
これほどまでに学術界が分断された状況の中で、政府が一方的に法案を成立させることは、我が国の学術に対する信頼を大きく損なう結果となりかねません。
とりわけ、二〇二〇年に発生した、日本学術会議の会員候補六名が任命拒否をされた問題は、いまだに十分な説明がなされておらず、学術界の不信を払拭するに至っていません。そのような中で、学術会議の構造そのものを大きく変える法案を性急に成立させることは、国民の理解を得る上でも極めて困難であると考えます。
更に申し上げれば、今回の法案では、法人化後の財源や運営体制についての具体像が曖昧なままであり、会議の運営に必要な人的、財政的支援が将来的にどのように確保されるのか依然として不透明です。この点についても、現場から不安の声は絶えません。
私たちは、学術会議が、政府からの独立性を保ちながら、国民のために自由で公正な知を提供し続ける存在でなければならないと考えます。だからこそ、今私たちがすべきことは、拙速な法整備、法改正ではなく、政府と学術界が対話を重ね、信頼を再構築することにあります。そして、学術の独立性を真に保障する制度設計を丁寧につくり上げていくことが、学術会議の未来にとっても、知と自由が尊重される社会の未来にとっても必要不可欠であるとの結論に至りました。
以上の理由から、会派を代表して、反対の討論といたします。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(額賀福志郎君) 上村英明君。
〔上村英明君登壇〕
○上村英明君 れいわ新選組の上村英明です。
私は、日本学術会議法案について、会派を代表し、断固反対の立場から討論いたします。(拍手)
格言ですが、愚者は経験に学び、賢者は歴史に学びという言葉があります。ドイツの宰相ビスマルクの言葉と言われています。約五千万人から八千万人の未曽有の人命が失われ、我が国でも沖縄戦を含め約三百万人が帰らぬ人となった第二次世界大戦、そしてその大きな原因の一つが科学技術の軍事利用でした。これを深く反省し、一九四九年、日本の科学者を代表し、科学を平和の達成に貢献させる組織として日本学術会議が誕生しました。日本学術会議は、紛れもなく、歴史に根差した平和主義の組織です。
時あたかも、二〇一〇年代には日本の平和主義の解体が始まります。二〇一四年には、一九七六年、三木武夫政権によって確立され、実質的に武器輸出を行わないとした武器輸出三原則が廃止され、それを可能とする防衛装備移転三原則への転換が図られました。これは、かつてアイゼンハワー大統領が警告した軍産複合体の日本における始まりです。さらに、翌二〇一五年には、防衛装備庁による安全保障技術研究推進制度が制定されましたが、これによって日本における軍産学共同体の形成が始まりました。早速、二〇一七年、日本学術会議は、軍事的安全保障研究についての声明で、こうした軍事研究への警鐘を鳴らしました。これはイデオロギーの問題ではなく、当然のことです。
これに対し、二〇二〇年、時の政権による一方的な六名の会員候補の任命拒否が行われ、この問題をきっかけとして、あたかも日本学術会議に深刻な問題があるかのように論点をすり替えて出てきたものが本法案であります。立法事実も曖昧であるばかりか、この目的は、政府が言う日本学術会議の強化ではなく、政府に異議を唱える組織の解体です。
本議場の皆さんに申し上げます。健全な政府には、きちんとした批判を正面から受け入れる度量、そして健全な独立性を持った組織が不可欠です。改めて、健全な政府への道を進むための戦後八十年の歴史の意義を強調します。
れいわ新選組は、この法案をとんでも法リストに入れました。いずれ廃案にすることを宣言して、反対討論を終わりたいと思います。(拍手)
○議長(額賀福志郎君) 塩川鉄也君。
〔塩川鉄也君登壇〕
○塩川鉄也君 私は、日本共産党を代表して、日本学術会議法案に反対の討論を行います。(拍手)
先ほどの、維新、三木議員の我が党に対する発言は、事実をゆがめた暴言であり、断じて認めることはできません。その暴言は、統一協会の主張を丸写ししたものであり、維新の会の知的退廃と堕落を露呈したことを示しています。今日、このような賛成討論をするしかないこと自体が、本法案がいかに道理がないかを証明するものであります。断固抗議し、撤回を求めるものであります。
そもそも、政府には本法案を提出する資格がありません。安倍、菅両政権が行った会員候補六名に対する違法、不当な任命拒否をいまだ撤回せず、その理由すら明らかにしないまま、一方的に、現行の日本学術会議を解体して全く別の組織につくり変えるという乱暴なやり方で学問の自由を踏み荒らす政府の姿勢に断固抗議をするものです。
法案が廃止を明記した現行の日本学術会議法は、その前文で、「科学が文化国家の基礎であるという確信に立つて、科学者の総意の下に、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与する」と学術会議設立の趣旨をうたっています。
戦前の日本が学術を政治に従属させ、また、学術の側も戦争遂行に加担する役割を果たしたことへの痛苦の反省の上に、学問の自由を保障する日本国憲法に立脚し、科学者の総意の下に我が国の平和的復興に貢献することを使命とした戦後の出発点を消し去ることは、到底許されるものではありません。
重大なことは、坂井担当大臣が、特定のイデオロギーや党派的主張を繰り返す会員は今度の法案では解任できると答弁したことです。政府の意に沿わない会員は、学者の学識にかかわらず、党派的と勝手に決めつけて排除する法案だと述べたものであります。学問の自由、思想信条の自由に対するあからさまな侵害であり、法案の本質が、日本学術会議を解体し、その独立性を奪い、軍事研究を始め政府や財界の意に沿う方向に学術界を動員することを示すものです。この道が学問の自由を奪い、学術の衰退をもたらし、日本の進路をも誤らせることは、歴史の教訓であります。
法案が、現行法にある独立して職務を行うとの規定を削除し、日本学術会議の運営、財務、会員選考にまで政府が介入できる仕組みをつくろうとしていることに、学術会議の総会が採択した声明は、独立性の阻害が意図されていると深刻な懸念を表明したことを重く受け止めるべきであります。
日本の学術を圧殺する法案に反対する多くの学者、学協会や市民とともに、本法案を廃案にするため最後まで力を尽くすことを表明し、討論を終わります。(拍手)
○議長(額賀福志郎君) これにて討論は終局いたしました。
―――――――――――――
○議長(額賀福志郎君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
――――◇―――――
○議長(額賀福志郎君) 本日は、これにて散会いたします。
午後一時四十三分散会
――――◇―――――
出席国務大臣
総務大臣 村上誠一郎君
外務大臣 岩屋 毅君
国務大臣 坂井 学君