第3号 令和7年11月4日(火曜日)
令和七年十一月四日(火曜日)―――――――――――――
議事日程 第三号
令和七年十一月四日
午後一時開議
一 国務大臣の演説に対する質疑
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○本日の会議に付した案件
情報監視審査会委員辞任の件
情報監視審査会委員の選任
国務大臣の演説に対する質疑
午後一時二分開議
○議長(額賀福志郎君) これより会議を開きます。
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情報監視審査会委員辞任の件
○議長(額賀福志郎君) お諮りいたします。
情報監視審査会委員中西健治君から、委員を辞任いたしたいとの申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(額賀福志郎君) 御異議なしと認めます。よって、許可することに決まりました。
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情報監視審査会委員の選任
○議長(額賀福志郎君) つきましては、情報監視審査会委員の選任を行います。
衆議院情報監視審査会規程第六条の規定に基づき、情報監視審査会委員に藤丸敏君を選任するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、選任することに決まりました。
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国務大臣の演説に対する質疑
○議長(額賀福志郎君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。野田佳彦君。
〔野田佳彦君登壇〕
○野田佳彦君 立憲民主党の野田佳彦です。
立憲民主党・無所属を代表し、高市総理に質問いたします。(拍手)
まず初めに、高市総理、大役への御就任、誠におめでとうございます。ワーク・ライフ・バランスに留意され、健康管理には十分お気をつけください。
私は、右にも左にも流されない中道路線の立ち位置から高市政権と対峙していく決意です。
そして、連立政権の枠組みが変わり、アクセルが二つになった政権に対し、国民の暮らしを守り、自由を守り、平和を守る観点から、ブレーキ役を果たす責任を担ってまいります。
高市総理が所信表明演説で掲げた、力強い経済と責任ある積極財政、そして力強い外交、安全保障政策など、それぞれの中身についてお尋ねしてまいります。
日本が強くなっても、格差が大きくなれば、生活が苦しくなる日本人は増えます。円安では本当に日本が強くなるかも疑問です。
立憲民主党は、国民一人一人の暮らしや家計を基本に、政権と対立するためではなく、国民のために善政を競い合う論戦をしてまいります。
総理が尊敬する英国の政治家は、アイアンレディー、マーガレット・サッチャーだそうですね。私が尊敬する英国の政治家は、買収選挙が横行する時代に金権風土を塗り替えようと立ち上がり、一八八三年、腐敗防止法を作った立て役者であるヘンリー・ジェームズです。
政治家になるのならこのような仕事をしたいなという思いで、私は徒手空拳で千葉県議選に挑み、衆院選でも政治改革を掲げ、一九九三年に総理とともに初当選をいたしました。
翌九四年、細川内閣の下で、連座制を強化した公職選挙法改正を含む政治改革関連法が成立し、尊敬するヘンリー・ジェームズに一歩、一歩だけですが、近づけたかなという高揚感を味わうことができました。
しかし、自民党の派閥パーティーによるいわゆる裏金事件によって、時計の針を巻き戻すように我が国の政治倫理は後退し、国民の政治への信頼は地に落ちています。
総理は、旧安倍派幹部を党の要職に登用し、副大臣、政務官人事でも、いわゆる裏金事件で党の処分を受けた旧安倍派の衆参両院議員七人の起用を決めました。政治と金の問題について決着がついたかのごとく人事を決められたことは大変遺憾です。
衆院選、参院選で示された民意は、政治と金の問題を解決し、政治への信頼を回復せよということです。決断と前進の前に、信頼回復が必要ではないでしょうか。
改めてお伺いをいたします。総理は、政治と金の問題はけじめがついたとお考えでしょうか。
自民党、日本維新の会の連立政権合意書には、一割を目標に衆議院議員を削減するとあります。また、報道によると、維新の会は比例代表のみ削減と主張されておられます。
二〇一二年に私と当時の安倍総裁と議員定数削減について党首討論で合意した頃と、多党化した今日とでは状況が大きく変化いたしました。
定数は、数の力で強引に決める課題ではありません。国勢調査や、衆議院議長の下にある選挙制度に関する協議会での議論などを踏まえ、幅広い合意形成をし、一つの方向性を見出すための議論を重ねていくことが必要です。
総理は、所信の結びで十七条の憲法の「事独り断む可からず。必ず衆と与に宜しく論ふ可し。」を引用され、政治とは、独断ではなく、共に語り、共に悩み、共に決める営みですと語られました。改めて肝に銘じていただきたいと存じます。
なお、私は、議員定数削減の方向性には賛成です。ただし、比例区だけ削減ではなく、小選挙区と比例区のバランスを考慮して削減すべきではないでしょうか。
企業・団体献金について、日本維新の会は一番厳しく廃止を訴えていたにもかかわらず、高市総裁の任期中に結論を得ると合意したのは、事実上の先送りにほかなりません。
去年の衆議院選挙、今年夏の都議会議員選挙、参議院議員選挙で国民が自民党にノーという意思を突きつけたのは、不祥事続きの自民党を許さないということであり、今は政治資金問題の結論を出すことが先ではありませんか。
公明党が連立から離脱したのも、政治資金の問題で自民党の基本姿勢に疑問を感じたからであり、衆議院の議員定数を削減をすることで政治資金の問題を棚上げというのは、争点のすり替えにすぎません。
資金の流れも把握できていない自民党の七千八百もの政党支部が企業・団体献金の受皿になっているのは、どう考えてもおかしいと思います。
企業・団体献金の廃止に向けて、膠着した議論を一歩でも前進させるために、公明党と国民民主党が提案している規制強化案について、まずは今国会で実現しましょう。企業・団体献金の受取先を政党の本部と都道府県の組織に限定し、廃止に向けた第一歩を踏み出すべきではないですか。
ガソリン税の暫定税率の廃止、そろそろ決着をつけませんか。
地方においては、買物に行くにも病院に行くにも、何をするにも車が必要ですから、近年のガソリン代の値上がり、高止まりは大変な負担になっています。暫定税率を廃止すれば、一リットル当たり二十五・一円の値下げ、四十リットル給油したら今より千円安くなりますから、極めて有効な物価高対策であり、地方経済の活性化にもつながるものと思います。
この間、立憲民主党は、政府が二月に提出した税法に対する修正案で、また、四月には単独提出の議員立法で、そして六月、八月には野党七党共同提出の議員立法で、暫定税率の廃止を政府・与党に迫ってきましたが、自民党の強い抵抗に遭って、その都度、廃止時期の後ろ倒しを余儀なくされてきました。
年内の早い時期の廃止という公党間の合意をほごにすることは断じて許されず、我々がこれを強く押し返した結果、先週の与野党協議では、ここまで議論が遅延したことについて自民党から率直におわびがあった上で、十二月三十一日の年内の廃止で合意されました。
最終的には幹事長レベルで合意できると聞いていますが、これまで三か月以上にわたって自民党の党内の都合で暫定税率への対応が遅れたことについて、総理はいかに考えますか。
所信表明演説では、ガソリン税について、今国会での廃止法案の成立を期しますとしていますが、年内に廃止するとここで明言すべきではないですか。あわせて、軽油引取税の暫定税率についても、合意に沿って、来年四月一日から廃止することを明言していただけませんか。
参院選で公約した給付金を実施しないということですから、高市政権には即効性のある物価高対策はほとんどないということになります。自民党内の権力闘争で政治空白を長引かせた上、有効な物価高対策がないというのは、到底許されることではありません。
経済対策の策定は指示されたようではありますけれども、現状、それがいつ形になり、国民の懐に届くのか、全く分かりません。また、その規模も大きな論点です。
内閣府が八月に発表した中長期の経済財政に関する試算では、来年にもプライマリーバランス黒字化が可能と示されておりましたが、仮に経済対策が昨年並みの規模となった場合、赤字に転落する可能性が高いと思われます。実際に、片山財務大臣は、補正予算の財源として、既に赤字国債の増発に言及されています。
高市総理は責任ある積極財政を掲げておられますが、まず、政府自らが骨太の方針で定めたプライマリーバランス黒字化目標を達成することが責任ある姿ではないでしょうか。経済対策を取りまとめ、補正予算を国会に提出する時期はいつなのか、また、国、地方を合わせたプライマリーバランスの黒字化を目指した予算規模に抑えるのか、お伺いをいたします。
食料品の高騰が家計を直撃しています。
民間の調査によれば、十月だけで三千品目以上の値上げが行われており、今年一年間では二万品目を超える食料品の値上げが行われる見込みです。所得が低い人ほど食料品の支出割合が高い傾向にあることから、現下の食料品の高騰は極めて深刻であり、急ぎ対策を実行することが必要です。
自民党と日本維新の会の連立政権合意書には、飲食料品については、二年間に限り消費税の対象としないことも視野に、法制化につき検討を行うとの記載があります。実施時期も明記されていなければ、視野に、検討など、やる気のなさがにじみ出ている一文です。
高市総理は、今年五月二十三日、自民党税制調査会の勉強会が終了した後、記者団の取材に応じられて、国の品格として食料品の消費税率はゼロ%にするべきと発言されています。たった数か月前、総理が国の品格とまでおっしゃった政策です。
立憲民主党は、食料品消費税ゼロ法案を先月三十一日に国会に提出をし、他党の御理解と御賛同を得ながら今国会中の成立を目指していますが、総理、共に実現しませんか。
高市総理は、自他共に認めるアベノミクスの継承者です。
私は、アベノミクスというのは、デフレ脱却のための壮大な社会実験であったと認識しています。問題は、結果が出なかったにもかかわらず、やめどきを見失い、だらだらと続けたことで、逆に様々な課題を引き起こしたことであります。当初目指したトリクルダウンは起こらず、富める者が富んだだけで、非正規雇用の増加や実質賃金の低迷に象徴されるように、格差の拡大が進みました。
二年で二%の物価安定目標達成をうたった異次元の金融緩和は、十年たっても目標を達成できませんでしたが、近年になっては円安を助長する大きな要因となり、輸入物価の上昇を通じて家計の負担増をもたらしています。また、異次元の金融緩和の一環で買い入れたETFは簿価で三十七兆円以上に上り、その売却には百年以上も要する見込みですが、これはアベノミクスの副作用の大きさを端的に示すものであります。
総理は、アベノミクスをどのように評価されていますか。アベノミクスを踏襲するのですか、修正するのですか。お答えいただきたいと思います。
高市総理は、安倍政権時代に自民党の政調会長を務められておられました。そのとき、大規模な金融緩和の実行を迫るため、日本銀行に対する解任権の導入を示唆するなど、日銀の独立性を脅かすこともいとわないほど強硬な金融緩和論者です。
また、昨年、自民党総裁選に出馬された際も、金利を今上げるのはあほやと思う、金融緩和はもう少し我慢して続けるべきだと、やはり強い口調で緩和の継続を訴えられました。
もちろん、米国の関税政策の影響などは見定めなければなりませんが、今の状況で全く金利の引上げを許さないということになれば、円安が進行し、インフレを助長する可能性があります。
また、高市総理は一貫して積極財政論者でもいらっしゃいます。これは今や、全閣僚への指示を通じて、高市政権全体のスタンスにもなっていると思います。
しかし、これまで政府が財政出動の根拠としてきた需給ギャップは足下で需要超過となっており、積極財政の結果として、かえってインフレが助長され、家計の負担増をもたらす可能性があります。
総理、金融緩和と積極財政は物価高を助長するのではないでしょうか。
我々は、消費税の逆進性対策として、給付つき税額控除の導入を長年にわたって主張してまいりました。所得再分配機能の強化、勤労意欲の促進などの効果もあると思います。
高市総理も、給付つき税額控除は私の持論とおっしゃられ、政府として制度設計の導入に着手することを掲げられたことは率直に歓迎したいと思います。
給付つき税額控除の導入に向けて、石破政権の下で立憲、自民、公明の協議体が立ち上がっていますが、他党にも呼びかけて、制度設計を急ぐべきではないでしょうか。
高市総理が所信表明演説で提案した、社会保障制度における給付と負担の在り方に関する国民会議についてお尋ねいたします。
増える医療費と現役世代の保険料負担、医療崩壊につながりかねないほど深刻な医療機関の赤字、介護、障害福祉従事者の人手不足、国民に信頼される年金制度の確立など、社会保障の課題は山積をしています。国民の暮らしを支え、命と健康を守るため、国民的な議論を行い、不断の改革をしていかなければなりません。
ただし、国の根幹に関わる社会保障制度については、政権が替わるたびに制度をころころと変えるようなことがあってはなりません。したがって、与野党の垣根を越えて議論を行うこと自体は私も賛成です。
今年の通常国会で、年金改革法案の修正について立憲、自民、公明の三党で合意した際、私は石破前総理に対して、今国会の、この国会の年金改革は一里塚で、更なる改革が必要であるため、超党派で年金に関して協議する場の設置を要請をいたしました。
私が要請したのは、国会の中で、政治家主導で協議する場であり、政府の中で、役所主導で議論する場ではありません。与野党で社会保障の給付と負担の在り方について議論することは重要ですが、国民会議を政府の下に置くのではなく、国会内に会議体を設置したらどうでしょうか。
私は、九月に、自治体病院を持つ首長の皆様から、危機的状況にある自治体病院の存続に向けた要請をいただきました。十月には、都内にあるJCHOの病院を訪問し、施設が老朽化し、手術室で雨漏りしてしまった深刻な状況を視察をいたしました。
このままでは、医療機関の経営は立ち行かなくなり、助けられる命も助けられなくなってしまいます。地域医療の最前線、最後のとりでを守るため、医療機関への支援は最優先で取り組まなければならない課題であり、補正予算でしっかりと支援すべきです。
立憲は、間もなく取りまとめる経済対策に医療機関支援を盛り込む予定です。我が党の提案も踏まえて、診療報酬の引上げ、改定前に病院そして診療所への緊急支援を行うべきではないでしょうか。
政府は、当事者の意見を聞かず、短期間で高額療養費の自己負担限度額の引上げを決定いたしました。長期の治療を続けるがんや難病などの患者さんたちが治療の中断に追い込まれたり、生活できなくなることが危惧されました。
当事者の皆様が諦めずに声を上げ続け、立憲が予算の修正案や法案を提出して引上げ凍結を要求した結果、石破政権は引上げを凍結をいたしました。
高額療養費の自己負担限度額は、患者やその御家族に深刻な影響を与えるため、引き上げるべきではありません。その代わりに、命に関わらない軽症患者の医療費を優先して見直すべきです。
自民党総裁選時の共同通信が行ったアンケート調査で、高市総理は高額療養費制度見直しについて、患者負担上限額を引き上げるべきではない、医療保険制度改革全体の中で考える課題と回答されています。引き上げるべきではないというのは私たちと同じ考えであり、引上げを完全にストップできるのではないかと期待をしています。
報道によると、上野厚生労働大臣から、高額療養費制度の見直しについて十二月に方向性をまとめるという発言がありました。先週末に全国がん患者団体連合会の幹部の皆様とお会いしましたが、負担増になるのではないかと、とてもとても心配されておられました。
石破政権は、高額療養費の引上げを見送り、秋までに再検討するとしていましたが、高市政権はどうするのでしょうか。引き上げないという政治判断もあるのでしょうか。明快にお答えいただきたいと思います。
高市総理が所信表明演説で述べた攻めの予防医療についてお尋ねいたします。
予防医療を実現するための鍵は、自民党政権下でなかなか進まない、かかりつけ医の制度化であると考えます。一昨年の政府提出法案による法改正でかかりつけ医機能の法整備が行われましたが、今までと何が変わるのか分からない、不十分なものでした。
立憲民主党は、医師がかかりつけ医として必要な知識、技能を有しているかの認定制、住民一人一人と医師を結びつけ、お互いの認識を一致させるための登録制を導入することを提案をしています。日本版家庭医制度です。
気軽に何でも相談できるかかりつけ医がいれば、健康に不安があるときに、かかりつけ医と相談し、適切なアドバイスを受けられるようになり、適切な医療機関を紹介してもらうことができるようになります。結果的に、医療機関をたらい回しにされて無駄な診療を受けることが減り、薬の重複処方が避けられるようになる効果も期待できます。
あえて、攻めの予防医療とおっしゃる高市総理ですが、攻めの予防医療とは具体策は何でしょうか。日本版家庭医制度を取り入れたらどうでしょうか。
日米同盟は、我が国の外交、安全保障の基軸です。先週、総理は初めてトランプ大統領と会談されました。満面の笑みで元気いっぱいおもてなしをされ、大統領もエネルギッシュな女性だと評価され、個人的な関係構築のよいスタートを切れたのではないかと拝察しています。
ただし、トランプ大統領をノーベル平和賞に推薦すると伝えたとしたならば、それは行き過ぎたお世辞外交であり、軽率です。
昨年、日本被団協がノーベル平和賞を受賞しました。今年は、広島と長崎への原爆投下から八十年という節目の年です。
日本は唯一の戦争被爆国として一九九四年から核廃絶決議案を国連に提出し続け、今年は、十月三十一日の国連総会で、百四十五か国の賛成多数で三十二年連続採択されました。昨年賛成した米国は棄権に回りました。
トランプ大統領が核実験の再開を指示したことが背景にあるのだと思います。米国が一九九二年を最後に行っていない爆発を伴う地下核実験を行えば、ロシアや中国に同様の実験に踏み切る口実を与えかねません。
総理は今も、トランプ大統領をノーベル平和賞の候補に推薦するつもりですか。また、私は、日本が核兵器禁止条約にオブザーバー参加すべきと考えますが、総理はいかがお考えでしょうか。
総理は主体的に防衛費の増額に引き続き取り組む決意を表明され、トランプ大統領は、防衛力を大幅に強化していることを承知していると答えました。これは、総理が所信で明らかにし、また、小泉防衛大臣が翌日にヘグセス国防長官に伝えた、防衛費の総額を、二年前倒しで、本年度中にもGDP比二%を達成するという姿勢についてのコメントです。
現在の防衛力整備計画は、二三年度から二七年度の五年で四十三兆円の計画です。計画の三年目に当たる本年度の防衛予算は現在八・五兆円のところ、総理は就任後、唐突に、残り数か月でGDP比二%、約十一兆円まで増額するとしました。このような重要な政治判断は、総裁選挙中に明言しておくべきだったのではないでしょうか。
岸田元総理は、数字ありきではなく、防衛費は積み上げた数字だとずっと御説明をされてきましたけれども、初年度に約千三百億円もの予算を積み残してしまいました。防衛費は増額ありきの前に、効率化や節約の努力も忘れてはなりません。
防衛費をGDP比二%にするためには、補正予算では追加的に幾ら必要となりますか。なぜ今年度中に十一兆円まで増額するのですか。急激な予算増は無駄やコスト高につながると指摘をしておきます。
中国の東シナ海や南シナ海における現状変更の試みや、既成事実の積み重ねで覇権を拡大しようとする姿勢は、国際社会の法の支配を脅かし、インド太平洋地域の平和と安定を妨げます。特に、尖閣諸島周辺の一方的な主張に基づく領海侵入などには毅然と対応しなければなりません。
また、レアアースの輸出制限でしばしば圧力をかける中国に対し、我が国始め各国は供給を多角化しようとしていますが、依然として、中国が圧倒的なレアアースの供給者であることは変わりません。
所信表明演説の中で、対中関係について、経済安全保障を含む安全保障上の懸案事項が存在すると述べられていますが、その懸念について、日中首脳会談においてはどのような議論があったのでしょうか。
日韓首脳会談において、未来志向の協力確認ができたことについては、一定の評価をしたいと思います。
八月に李在明大統領が訪日された際、私も会談をいたしました。その際、CPTPPへの加盟をお勧めしたところ、強い関心を示されました。
今回のAPECの首脳宣言は、自由貿易をめぐる表現が明らかに後退しています。こういうときこそ、日本は、CPTPPやRCEPの拡充の先頭に立ち、自由貿易の旗手を目指すべきではないでしょうか。
近年、全国各地で熊による人身被害を含めた被害が深刻化しています。過去最多だった令和五年度の人身被害は百九十八件、被害者は二百十九名、死者は六名に上りましたが、今年度も同水準で被害が増加しており、死者数は既に過去最多となっています。
しかし、熊被害がこれほど拡大しているにもかかわらず、国は自治体任せです。現場からは、自治体職員、警察官、消防職員、猟友会が疲弊し、対応が限界に達しているといった切実な声が寄せられています。
宮城県の村井知事は、熊被害対策において猟友会の高齢化や人手不足を課題に挙げ、自衛官、警察官のOB、OGを会計年度任用職員として活用できるか検討したいと述べています。秋田県知事は、自衛隊の派遣を要請しています。
こうした人材活用を含め、自治体任せにしない体制を構築するのが国の役割ではないでしょうか。
立憲民主党は、熊被害対策に関する提言をまとめ、十月二十八日、鈴木農水大臣に提出をいたしました。それに加えて、村井宮城県知事の提案も含め、熊被害対策にOB、OGを含めた自衛官、警察官を活用してはいかがでしょうか。
今求められているのは、右にも左にも偏らず、現実を見据えて国民の暮らしを守る政治です。国民が望んでいるのは、力の誇示、イデオロギーの対立ではありません。安心して暮らせる社会、希望を持てる未来なのです。
物価高、格差拡大、地方の疲弊など、これら全ての課題に、私たちは、生活者の視点に立ち、一人一人の暮らしを支える政治で応えてまいります。
これからも中道に軸足を置いて頑張っていくことをお誓い申し上げて、質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣高市早苗君登壇〕
○内閣総理大臣(高市早苗君) 野田佳彦議員の御質問にお答えをいたします。
政治と金の問題についてお尋ねがございました。
自民党総裁として申し上げますと、自民党における旧派閥の政治資金収支報告書の不記載に関する問題については、第三者である検察による厳正な捜査が行われ、法と証拠に基づき、刑事事件として取り上げるべきものは立件されてきました。また、外部の弁護士を交えた聞き取り調査や当事者自身による会見などでの説明等、様々な関係者による事実関係の把握、解明の努力が進められました。その中で、それぞれの議員が丁寧に、真摯に説明責任を尽くしてきたものと考えております。
ただ、大切なことは、二度とこのような事態を繰り返さないということです。政治と金の問題には厳しい姿勢で臨み、改正政治資金規正法を始め、ルールを徹底的に遵守する自民党を確立する覚悟でございます。
この不記載の問題によりまして政治への信頼を損ねることになってしまいましたことにつきましては、自民党総裁として、国民の皆様、そして全国民の代表であられる同僚議員の皆様に心よりおわびを申し上げます。
議員定数の削減についてお尋ねがございました。
国会議員の定数の在り方については、各党各会派で御議論いただくべき事柄でありまして、内閣総理大臣の立場で議論の具体的な方向性についてコメントを行うことは差し控えたいと思います。
その上で、自民党総裁の立場から申し上げましたら、先般、自民党と日本維新の会との間で、一割を目標に衆議院議員定数を削減するため、令和七年臨時国会において議員立法案を提出し、成立を目指すとの内容の合意書を交わしました。
議員定数削減の方向性には賛成という心強い御発言をいただきましたが、議員定数の削減は身を切る改革として重要な課題であり、自民党としても全力で取り組んでまいります。
その上で、具体的な削減案の策定及びその実現に向けては、できるだけ幅広い賛同を得ることが重要でございます。今後、与党内での検討とともに、各党各会派とも真摯な議論を重ねていきたいと考えております。
企業・団体献金についてお尋ねがありました。
企業、団体にとって献金は自らの政治的意見を表明するための重要な活動であり、憲法と最高裁判例により政治活動の自由の一環として保障されているものです。
そのため、更なる規制の強化については、企業、団体の政治活動の自由に関わるものでありますので、必要性や相当性についてよく議論する必要があると考えます。
その上で、政治資金の在り方については、各党の成り立ちや組織のありよう、規模にも十分留意しつつ、真に公平公正な仕組みとなるよう、不断に検討していくことが重要だと考えています。
この度の政権発足に当たっては、自民党と日本維新の会との間で、企業、団体からの献金、政治団体からの献金、受け手の規制、金額上限規制、機関誌などによる政党の事業収益及び公開の在り方などを含め、政党の資金調達の在り方について議論する協議体を二五年臨時国会中に設置するとともに、第三者委員会において検討を加え、私の任期中に結論を得るとの合意を行い、国民の皆様に信頼される政治資金の在り方について検討していくことといたしました。
今後、両党で合意した考え方に沿って検討を進めますとともに、御党を含む他党とも真摯な議論を重ね、政治改革の取組を着実に進めてまいります。
いわゆるガソリンの暫定税率についてお尋ねがありました。
いわゆるガソリンの暫定税率の廃止については、自民党の総裁選挙もございましたけれども、その間も与野党の実務者間で精力的に協議をしていただき、先日、十月三十一日、与野党六党の実務者間で合意案で一致したところでございます。
その合意案では、いわゆるガソリンの暫定税率については本年十二月三十一日に廃止すること、また、軽油引取税の暫定税率についても、財源確保、流通への影響、地方財政への配慮等に加え、軽油引取税に特有の実務上の課題に適切に対応した上で、来年四月一日に廃止することとされています。
政府としては、政党間の御議論の結果をしっかりと踏まえて対応をしてまいります。
そして、補正予算の提出時期、予算規模についてお尋ねがございました。
高市内閣では、物価高への対応に最優先で取り組むこととしており、先日の自由民主党、日本維新の会の連立政権合意書において、令和七年臨時国会において補正予算を成立させるとされていることも踏まえ、政府として、速やかに経済対策を取りまとめた上で、必要な補正予算の案を今国会に提出いたします。
補正予算の規模につきましては、必要な施策を積み重ねていくことによって決まるものと考えております。お尋ねの財政健全化目標との関係も含め、その規模についてあらかじめ言及することは差し控えたいと思います。
御党提出の法案についてお尋ねがございました。
御指摘の法案を御党が国会に提出されたことは承知していますが、国会における法案の取扱いについては、政府の立場からコメントをすることは差し控えたいと思います。
内閣としては、物価高対策としてすぐに対応できることをまず優先すべきと考えております。その上で、消費税率の引下げにつきましては、事業者のレジシステムの改修等に一定の時間がかかる等との課題にも留意が必要であると考えております。
そして、アベノミクスの評価についてお尋ねがございました。
アベノミクスは、デフレでない状況をつくり出し、GDPを高め、雇用を拡大し、企業収益の増加傾向にもつながりました。他方、その後、新型コロナウイルス感染症の影響で雇用状況が悪化したということ、そして、いわゆる第三の矢としての民間投資を促す成長戦略の成果が十分ではなかったことなども踏まえて評価する必要があると私は考えます。
こうしたアベノミクスの評価も踏まえつつ、責任ある積極財政の考え方の下、戦略的に財政出動することにより、所得を増やし、消費マインドを改善し、事業収益が上がる好循環を実現することにより、不安を希望に変える強い経済をつくってまいります。
金融政策と財政政策についてお尋ねがございました。
物価の現状につきましては、食料品価格の高い伸びなどを背景に、消費者物価は三%近い上昇率が続いているものの、賃金上昇を伴った持続的、安定的な物価上昇の実現は道半ばであると認識をしております。
こうした認識の下、政府においては、責任ある積極財政の考え方の下、日本の供給構造を強化しながら、物価高を更に加速させることがないよう、戦略的に財政出動を行っていく考えです。また、日本銀行におきましては、二%の物価安定目標の持続的、安定的な実現に向けて、引き続き、適切な金融政策運営が行われていくことを期待いたしております。
給付つき税額控除の導入についてお尋ねがございました。
税、社会保険料負担で苦しむ中低所得者の負担を軽減し、所得に応じて手取りが増えるよう、給付つき税額控除について早期に制度設計に着手いたします。
また、人口減少、少子高齢化を乗り切るためには、社会保障制度における給付と負担の在り方について国民的議論が必要です。
このため、政府・与党だけではなく、野党の皆様も交え、丁寧な議論を進めていくため、国民会議を設置し、給付つき税額控除の制度設計を含めた税と社会保障の一体改革について議論していくこととしております。様々な論点について早期に検討を進め、給付つき税額控除の実現を目指してまいります。
この国民会議についてのお尋ねもございました。
やはり人口減少、少子高齢化の中で社会保障改革というものを進めるためには、全ての世代を通じて納得感が得られるものとするということが重要でございます。
このため、国民会議においては、給付と負担の在り方や、給付つき税額控除の制度設計を含めた税と社会保障の一体改革について、政府・与党だけではなく、野党の皆様も交え、丁寧な議論を進めていきたいと考えております。
国民会議の設置に向けて、その具体的な在り方、また議論の内容や進め方も含めて、各政党の皆様とよく御相談をして取り組んでまいります。
病院、診療所への緊急支援についてお尋ねがございました。
国民の皆様の命を守り、安心して必要なサービスを受けていただくために、経営難が深刻化する医療機関への支援は急を要します。全くおっしゃるとおりだと思います。
このため、診療報酬改定の時期を待たず、経営の改善や職員の方々の処遇改善につながる補助金を措置し、効果を前倒しします。
経済対策、補正予算に必要な施策を盛り込むべく、施策の具体化に取り組み、スピード感を持って対応してまいります。
高額療養費制度の見直しについてお尋ねがございました。
現在、厚生労働省において、患者団体の方にも御参画いただく専門委員会を設置し、関係者の方々からヒアリングを行うなど、丁寧に議論を進めているところです。
専門委員会における議論では、高額療養費制度の在り方について、医療保険制度改革全体の中で全体感を持って議論する必要があるという認識で一致をしています。
こうした観点を踏まえまして、患者の方々の経済的な負担が過度なものとならないよう配慮をしながら、一方で、増大する高額療養費を負担能力に応じてどのように分かち合うかという観点から、検討を丁寧に進めてまいります。
攻めの予防医療及び家庭医の制度についてお尋ねがございました。
国民の皆様の命と健康を守り、健康寿命の延伸を図るために、攻めの予防医療を徹底させるということは、皆様が元気に活動し、また社会保障の担い手となっていただくためにも非常に重要です。
疾病の予防や早期発見につながるがん検診等の充実のため、例えば、がん検診について、個別勧奨の徹底などによりまして、受診率や精密検査受診率の向上に取り組んでまいります。
また、議員御指摘の日本版家庭医制度とは異なりますが、フリーアクセスを維持しつつ、かかりつけ医機能の確保を図ることや、幅広い領域の疾病への対応ができる総合診療医の養成の支援を行ってまいります。
ノーベル平和賞及び核兵器禁止条約へのオブザーバー参加についてお尋ねがありました。
ノーベル平和賞の候補者の推薦につきましては、ノルウェーのノーベル賞委員会が審査資料を少なくとも五十年間は開示しないこととしていることを踏まえ、推薦の事実及びこれを前提としたお尋ねにお答えすることは差し控えます。
核兵器禁止条約へのオブザーバー参加につきましては、国際社会の情勢を見極めつつ、我が国の安全保障の確保と核軍縮の実質的な進展のために何が真に効果的かという観点から、慎重に検討する必要があると考えています。
安全保障関連経費の規模についてお尋ねがありました。
一層急速に厳しさを増す安全保障環境を踏まえ、我が国として主体的に防衛力の抜本的強化を進めていくことが必要でございます。
そのために、政府として、まずは、現在の取組を加速すべく、現行の国家安全保障戦略に定める対GDP比二%水準について、補正予算と併せて、今年度中に前倒しして措置を講じることとしました。
この対GDP比二%水準は、安全保障関連経費の水準を示しており、金額としては十一兆円ほどになりますが、令和七年度当初予算においては九・九兆円を計上しております。
令和七年度当初予算に追加で必要となる経費については、現下の安全保障環境を踏まえれば、例えば、自衛隊の人的基盤の強化、ドローン対処器材の整備などの自衛隊の活動基盤の強化、自衛隊の運用態勢の早期確保などに必要な経費の計上を考えております。これらが一定の額に達するものと見込まれますため、対GDP比二%水準についても、結果として達成するものになると考えております。
日中首脳会談でのやり取りについてお尋ねがございました。
習近平主席との間では、戦略的互恵関係の包括的な推進と、建設的かつ安定的な関係の構築という日中間の大きな方向性を確認するとともに、諸懸案についても議論をいたしました。
具体的には、尖閣諸島を含む東シナ海の問題、レアアースの輸出管理、邦人拘束に関する懸念、中国在留邦人の安全確保などにつきまして、私から直接、率直に懸念事項をお伝えしました。
また、南シナ海、香港、新疆ウイグル自治区などの状況に対する懸念も表明いたしました。
懸案や意見の相違があるからこそ、首脳間で直接かつ率直に対話することが重要です。今回の会談を、日中両国が様々な課題や協力に取り組んでいくきっかけとしていく考えでございます。
また、自由貿易の旗手を目指すことについてお尋ねがありました。
ルールに基づく自由貿易体制の維持拡大は、我が国の経済外交の柱です。世界で保護主義や内向き志向が強まる中、我が国が自由貿易の旗振り役としてリーダーシップを発揮することはますます重要となっております。
このような観点から、例えば、CPTPPへの新規加入への対応は重要です。戦略的観点や国民の皆様の理解も踏まえつつ、進めてまいります。これに加え、協定の一般的な見直しなども通じ、枠組みの発展に取り組んでまいります。
RCEPにつきましても、透明性のある協定の履行確保などに取り組む考えです。
熊による被害対策についてお尋ねがありました。
政府は、十月三十日にクマ被害対策等に関する関係閣僚会議を開催し、議長である木原官房長官から、追加的、緊急的な対策のパッケージを今月中旬までに取りまとめ、実効性の高い対策を着実かつ段階的に実行することを指示しました。
具体的な施策としては、例えば、警察官によるライフル銃を使用した熊の駆除について早急に対応していくこととしています。
また、狩猟免許を持つ者を公務員として任用する、いわゆるガバメントハンターの確保等も進めていくことを想定しております。
その際には、自衛官や警察官のOBを含む、経験と能力を有する多くの人材の確保に努めてまいります。
以上です。(拍手)
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○議長(額賀福志郎君) 小林鷹之君。
〔小林鷹之君登壇〕
○小林鷹之君 自由民主党の小林鷹之です。
自由民主党・無所属の会を代表し、高市総理の所信表明演説に対し質問いたします。(拍手)
政権発足から二週間、我が国初の女性総理として歴史の扉を開かれた高市総理。所信表明において明確に政権の方針を示した上で、日米、日韓、日中、そしてASEAN、APECと一連の首脳外交を展開、まさに最高のスタートダッシュを切られました。国民の期待も大きく、若い世代や現役世代を中心とする高い支持率は、我々としても大変勇気づけられる思いがいたします。
一方で、物価高、エネルギーや食料の安定供給への不安、止まらぬ少子高齢化、地方の衰退、そして揺れ動く国際秩序。我が国を取り巻く情勢は依然厳しいものがあります。国民の命と暮らしを守り抜くためには、まさに政策の実行あるのみ。我々は、責任政党、政権与党として、結果を出して国民の不安を解消し、この国の未来に希望の光をともしてまいります。そのためには、目の前の課題に早急に対処しつつも、その先に、日本をどのような国に、どのような社会にするのかというビジョンと、そこに向かう道筋を示すことが求められます。
そして、総理は所信の冒頭で、日本と日本人の底力を信じてやまないと高らかにうたわれました。この揺るぎなき日本への信頼こそ、我が国再起の礎であります。
政策実行の前提となるのは政治の安定です。この度、我々は新体制となり、連立の枠組みも変わりました。二十六年間にわたり共に歩んできた公明党の皆様には、政治の安定と数多くの政策実現への御尽力に改めて心から感謝を申し上げます。そして、新たな連立パートナーである日本維新の会の皆様とは、政策合意と緊密な意思疎通に基づき、より深い信頼関係を育み、国家国民に対し共に責任を負い、改革と挑戦を着実に進めたいと考えております。我が党として守るべき一線は維持しつつも、幅広い合意を目指し、他党の皆様とも真摯に対話をしてまいります。
本日は、高市総理が所信で述べられた、日本と日本人の底力を引き出すために政治は何をすべきかを軸に質問してまいります。
まず、日本再起を掲げる新政権がいかにして国力を高め、国民の不安を希望へと変えていくのか、総理のビジョンと政権運営の方針をお聞かせください。
総理が所信で表明された強い経済実現への道筋について伺います。
総理は、新技術立国を目指すとされました。資源に乏しい我が国では、科学技術こそが成長の源泉です。技術を起点に強い経済をつくる。技術力と経済力があれば、防衛力が強くなる。経済力と防衛力があれば、それを裏づけとして外交力が強くなる。そうすれば、国益にかなう形で国際ルールを作ることが可能となって、経済力が更に高まる。経済、防衛、外交、経済、この循環を軌道に乗せていくことこそ、今、政治がやらなければならないことだと考えます。
総理は、成長戦略の肝として危機管理投資を掲げられました。まさに政治の要諦は危機管理です。経済安保、食料、エネルギー、健康医療、そして国土強靱化など、我が国が抱えるリスクに先んじて手を打つ、まさに国家戦略としての投資であると受け止めました。成長戦略における危機管理投資の意義について伺います。
続いて、成長戦略の具体策について伺います。
先行する半導体産業はもとより、情報通信やエネルギー、あるいは生成AI、宇宙、造船など、日本の成長につながる戦略産業や戦略技術への投資をすることが必要です。
例えば半導体の場合、国と民間が十年先のビジョンを共有し、国が投資を決めたことで、今では関連する企業が集積し、更なる投資を促し、大学や高専に若い人が集まり、地域も活性化するという波及効果が見られます。
国と民間、そして自治体やアカデミアがビジョンを共有し、国が投資を決めることで、民間に予見可能性を与え、リスクを取る企業や個人の挑戦を後押しすることが国の役割だと考えます。そうすることで、地方大学や中小企業を含む民間の人材育成や研究開発を促し、そして研究成果の事業化につなげていく。こうした一連の仕組みが必要だと考えますが、総理の具体的な考え方を伺います。
とりわけ、四面を海に囲まれる我が国にとって、造船業は安全保障を支える基盤産業です。産業再生を国策に据え、果断な支援を講じるべきであり、特に建造能力の増強や次世代船舶の開発に向け、基金を含む大胆な施策を措置すべきです。総理のお考えを伺います。
デジタル政策について伺います。
医療、教育、農業、建設分野を含め、データ利活用とAIの徹底活用を鍵とするDXによる社会変革は不可欠です。しかしながら、我が国のデジタル赤字は七兆円にも上ると言われています。つまり、デジタル化を進めるためのプラットフォームや生成AIなどは、ほとんど海外企業に依存をしています。今後、我が国が自律性を持ってデータの利活用を進めるためにも、我が国としての事業者を育てていく必要があります。
一方で、データ、情報セキュリティーの確保も重要です。我が国のデータの基盤整備、利活用と保護に関する制度設計、そしてAI戦略をいかに進めていくのか、総理の方針を伺います。
将来の成長を見据えつつ、目下最優先に取り組むべきは、国民生活を直撃する物価高への対応です。
総理は、就任と同時に、総合経済対策の策定について指示を出されました。ガソリンや軽油の暫定税率の廃止を含む価格引下げについては、与野党の関係者の真摯な協議により大筋合意に至りました。この点を含め、自民党としては、物価高対策や成長戦略への橋渡しとなる施策など、効果を十分に発現するために必要な事業を積み上げ、相応の規模の補正予算を伴う対策案をスピード感を持って取りまとめた上で、総理に提言させていただきます。
そして、物価高に負けない賃上げを国が企業に期待をするのであれば、まず隗より始めよ、医療、介護、看護などのエッセンシャルワーカーの処遇に関する公定価格や官公需価格をインフレ時代に即した水準へ見直すことも急務です。
中小企業に対しては、適切な価格転嫁を促すとともに、中小企業の賃上げを支える措置など、賃金上昇が物価上昇を上回る構造をいかに実現するのか、具体策を伺います。
次に、社会保障政策について伺います。
現在、医療機関や介護施設では、物価や人件費の高騰により経営難が深刻化しています。特に、地域医療の中核を担う公立病院では、赤字が全国的に拡大し、存亡の危機にあります。現場の処遇改善と経営支援を早急に行わなければなりません。
誰もが安心して医療、介護を受けられる体制が確保されなければ、患者のみならず、そのケアを担う家族への負担も増大します。地域医療を支える基盤を立て直し、医療人材の確保と質の維持を図るため、まずは足下の財政支援や制度改革を含む総合的対策を講じるべきと考えますが、総理の所見を伺います。
社会保障制度の持続性確保は、社会の安定にとって不可欠です。
まずは、電子カルテを含む全国の医療機関の電子化と連携、データヘルス等による重複した検査や投薬を減らすといった効率化、質の高度化が必要です。もちろん、無駄は最大限削るべきですが、一方的な削減のみでは、献身的に頑張っている医療従事者の士気も上がりません。
また、負担の在り方についても、年齢にかかわらず能力に応じて負担して、支え合うことも必要になると考えますし、攻めの予防医療や、治療と仕事の両立、リハビリなど予後重視による社会復帰、女性特有の健康課題への対応などの社会をつくる改革を進めることで、現役世代の方々の社会保険料の負担を軽減できるのではないでしょうか。
そして、大切なのは、その先の社会保障制度の抜本改革です。
総理は、給付と負担の在り方について、国民会議を設置し、給付つき税額控除の制度設計を含めた税と社会保障の一体改革について議論していくと表明されました。総理はいつ頃までにどのような社会保障改革を進めていかれるのか、また、国民会議の在り方や合意形成の具体的手法について所見を伺います。
我が国の最大の問題は人口減少です。経済社会の活力低下や人手不足、社会保障の持続性など、我が国が抱える諸課題の根源だからこそ、真正面からこの問題に取り組まなければなりません。
これまで我が国は様々な子育て政策を講じてきましたが、いわゆる合計特殊出生率で見ると、二〇一五年以降は低下傾向が続き、二〇二四年は一・一五と過去最低になりました。様々な理由はあると思いますが、若者の雇用の安定や所得の向上により、豊かな暮らしができる経済基盤の確保が極めて重要と考えます。
だからこそ、総理が目指す強い経済を必ず実現しなければならないのです。そこで、根本的な少子化対策について、総理の見解を伺います。
また、子育て世代への支援も引き続き重要です。この国の今を支える現役世代の働きと、未来を担う子供たちの育みを両立させるため、今後の子育て支援の在り方について、総理のお考えを伺います。
国力の根幹は人づくり、教育です。経済成長の源泉たるイノベーションを生み出すのは人。イノベーションの成果をどう使うかを決めるのも人。我が国の資源は人です。日本の未来を担う人材をどう育成していくのか。
文理問わず、自分の頭で考えて、自分の腹で決めて、自分の意思で行動できる人材を育てていく必要があります。我が国の成長を支える人材を育成するために、特に高校教育、大学教育の在り方について、総理のお考えを伺います。
近年、豪雨災害が頻発し、巨大地震や津波など複合災害の同時多発リスクが高まっています。被災後の復旧にとどまらず、事前防災、予防保全の強化こそ国家の責務であり、インフラ老朽化対策も喫緊の課題です。発災時の初動から復旧復興までを一貫して担う体制整備も不可欠です。
震災からの復興については、我が党は、東日本大震災の復興に被災地の皆様とともに全力で取り組み、福島イノベーション・コースト構想や復興再生土の利活用といった未来志向の挑戦を後押ししてきました。能登半島でもインフラ復旧や被災家屋の公費解体を着実に進め、生活再建を支援してまいりました。こうした経験と教訓を次世代へつなぎ、災害に強い国づくりをいかに進めるのか、総理の決意を伺います。
地域の安心、安全に係る重大な問題として、従来から深刻な鹿やイノシシなどの農作物被害に加え、近年は熊が市街地にも出没し、人身被害が相次いでいます。今年は、現時点で死傷者数が過去最多水準に達しました。我が党では、クマ被害緊急対策プロジェクトチームを立ち上げ、総合的な対策の検討を開始しました。
政府も関係閣僚会議を設け、被害防止と生息管理の強化に着手しました。これまで対策の前線を担ってきた猟友会の高齢化や人手不足も深刻化しており、捕獲体制の維持強化が急務です。被害の拡大を防ぐため、政府は今後どのように実効性ある対策を講じていくのか、総理の見解を伺います。
次に、経済安全保障について伺います。
二〇二二年に経済安全保障推進法の制定以降、重要物資の供給網強化、先端技術の保全や獲得を加速度的に進めてきました。自律性を強化し、不可欠性を獲得することが、国家の存立基盤そのものだからです。
そして、経済安全保障を脅かす最大のリスクの一つが、サイバー空間における脅威です。近年、企業や自治体を狙ったサイバー攻撃が急増し、取引や物流の混乱、ひいては事業を長期間停止せざるを得ない事例もあります。対策を講じてもスピードと手口の巧妙化がそれを上回る中、鉄道や電力などの重要インフラへの攻撃に対する備えと、仮に起きてしまった場合の対処などの検討も急務です。
今後、能動的サイバー防御を含む次期サイバー戦略、基本方針をどのように策定し、国民の命と暮らし、経済を守り抜くのか、総理の所見を伺います。
エネルギーは国民生活と経済の基盤です。
生成AIなど新しい産業構造への移行が急速に進む中で、電力需要は一段と増大しています。安価で安定した電力を供給することが、経済成長と安全保障の両面で極めて重要です。
総理は、安全性を前提とした原発再稼働や、次世代革新炉、核融合の研究促進、ペロブスカイト太陽電池など国産エネルギー技術への投資にも言及されましたし、資源やエネルギーの供給元の多角化と地政学的リスクへの備えも不可欠です。
一方で、メガソーラー事業の拡大により、山林伐採や土砂災害、地域対立に加え、事業者の在り方に安全保障上の懸念が生じているケースも少なくありません。再生可能エネルギーの推進は必要ですが、環境破壊や安全保障上のリスクを放置することはできません。安全保障を含めたあらゆる観点から抜本的に見直しを進め、関係各省が連携して対策を講ずるべきと考えます。
この点を含め、AI時代の電力需要を支えるため、安定供給と低炭素化をいかに両立し、国民生活と産業基盤を守るのか、総理の見解を伺います。
食料安全保障について伺います。
農業とは、長年にわたり土を育て、あぜを整え、腕を磨いて初めて実りを得る営みです。常日頃から需給を安定させ、確固たる生産基盤を築く必要があります。農家の方が長期の見通しを持てる経営環境の整備と、生産、消費、流通の全てが持続可能な価格の実現が重要です。
食料安全保障の実現のため食品産業システム全体の改革をいかに進めるのか、食料安全保障を実現し、農山漁村の未来をどう描くのか。また、食料安全保障の確保に向けて、農業の構造転換を集中的に進めるため必要となる別枠予算の確保に向けて、総理の考えを伺います。
次に、外国人政策について伺います。
観光、就労、留学など多様な目的で中長期滞在者が増加する一方、犯罪、難民認定の濫用、不法就労、社会保険料や医療費等の未払い、外国資本による土地取得など、国民の安心を脅かす課題も顕在化しています。また、オーバーツーリズムによる地域社会への悪影響も課題となっています。
こうした状況を踏まえ、政府は不法滞在者ゼロプランに取り組んでいますが、電子渡航認証制度の早期導入や在留管理のデジタル化など、総合対策を更に加速すべきです。外国人による土地取得の在り方も最重要課題であり、国籍情報の把握はもとより、実効性ある制度設計を検討する時期に来ています。
他方、業種によっては、人手不足の解消や地域経済の活性化に外国人材の活躍が不可欠でもあるため、行き過ぎた排外的な規制にならぬよう留意すべきですし、適正な受入れのためのルールを含めた環境整備も急務です。
我が党は、秩序ある共生社会を掲げ、法の下で誠実に暮らす外国人は守り、違法行為には厳格に対応していくべきと考えますが、外国人政策の理念と今後の方向性について、総理の方針を伺います。
外交政策について伺います。
日米同盟は、日本の外交、安全保障の基軸であると同時に、インド太平洋の平和と繁栄の礎です。訪日したトランプ大統領からは、日米関係は今まで以上に強固なものとなっていくとの発言があり、今回の日米会談は成功裏に終わりました。政権発足間もない時期に我が国での首脳会談を実現できたことは大変意義深く、両国の強いきずなと日米関係の黄金時代の幕開けを世界へと示しました。
今般のトランプ大統領訪日に総理が込めた思いと成果、そして、今後どのように日米関係を高みに引き上げていくのかを伺います。
あわせて、トランプ大統領の訪日に際し、共同ファクトシートが公表され、日米の多くの企業から強い関心が寄せられています。これらの投資が有する意義と日米両国へ与える効果についてお答えください。
続いて、近隣諸国との外交について伺います。
韓国は自由主義世界の価値観を共にする大切なパートナーであり、東アジアの安定のためには今後も緊密な連携が求められます。中国とは、戦略的互恵関係の実現を目指しつつ、力による一方的な現状変更の動きには毅然とした対応を取り、その上で、建設的かつ安定的な関係を構築していかなければなりません。北朝鮮とは、拉致、核、ミサイルの包括的解決を目指し、朝鮮半島の平和と、一刻も早い拉致被害者全員の帰国に全力を尽くさなければなりません。
総理は、世界の真ん中で咲き誇る日本外交を取り戻すとおっしゃいました。そのためには、同盟国、同志国だけでなく、台頭するグローバルサウスと手を携える外交も不可欠です。これらの国々は、成長のポテンシャルも高く、これからの国際秩序を共に支えていく同志です。
東アジアの国々、また、台湾海峡やグローバルサウスを含む地域の平和と安定へ、日本としてどう向き合うか、先般開催された日韓首脳会談、日中首脳会談の成果を踏まえ、総理の考えを伺います。
外交は内政です。諸外国の首脳や政府は、政治基盤の弱い国を相手にしない。
我が党と日本維新の会の連立政権である高市政権は、少数与党ではあるものの、国民からの高い支持を得ていることが総理の堂々とした外交を支えています。今後も政策実現で国内の支持を維持しつつ、地球儀を俯瞰する外交を進めていただくことを期待します。
総理は所信で安保三文書の改定前倒しを表明されましたが、私はこの決断を全面的に支持します。
ロシアによるウクライナ侵略は、平和への挑戦であり、決して許されるべきことではありません。ロシアには北朝鮮や中国も支援を強めており、もはや、ヨーロッパだけではない、アジアも含めた問題です。九月三日の天安門広場に三名の国家指導者が並び立ったあの光景が、我が国を取り巻く安全保障環境の厳しさを物語っています。我が国を自らの手で守り抜く、その覚悟が求められています。
国益を守り、国民の安全を確保するためには、インテリジェンスに関する国家機能の強化が急務です。国際的脅威に即応し、戦略的意思決定を支えるため、情報収集、分析機能を統合する国家情報局の創設を検討されるとのことですが、総理の見解を伺います。
総理は、横須賀での演説において、平和は言葉だけではなく、確固たる決意と行動によってこそ守られるとおっしゃいました。この日本を守るため、防衛力の抜本的な強化に向けて、集中的に議論を進めていきます。横須賀での日米首脳演説が、地域の自由と平和を守る象徴たる空母ジョージ・ワシントンで行われたことは、日米から世界への強烈なメッセージとなりました。
高市総理のリーダーシップの下で、我々は、自らの国を守るため、新たな時代へ船出しました。これから我が国は、どのような帆を掲げ、この自由で開かれた海を進んでいくのでしょうか。総理のビジョンをお示しください。
憲法改正、自民党の党是である一方、立党七十年を迎える今このときまで実現できていないことを重く受け止めています。現下の厳しい安全保障環境や自然災害などの脅威を考えると、現行憲法の下で、果たして危機管理という政治の要諦、根源的な責務を果たすことができるのか、極めて強い危機感を抱きます。
憲法改正に取り組む高市総裁の政治家としての思い、覚悟をお聞かせください。
最後に、信なくば立たず、我々は、政治資金をめぐる問題の猛省の上に立ち、今後も国民の皆様の政治への信頼を回復するための改革に全力で取り組んでまいります。
そして、戦後八十年の節目を迎える今、私たちは、先人の犠牲の上に今日の日本があることに思いを致し、戦後の厳しい環境からの想像を絶する苦労に感謝しつつ、次の時代を切り開く責任を果たさねばなりません。国民の幸福を支える国家の力を備え、子供たちが将来、世界に向けて堂々と胸を張ることのできる国をつくる、それこそが政治の使命です。
自由民主党は、高市総理・総裁のリーダーシップの下、政治は国民のものとの立党精神に立ち返り、国民の皆様とともに、日本再起に全力を尽くしてまいります。
その決意を申し上げ、質問を終わります。
ありがとうございます。(拍手)
〔内閣総理大臣高市早苗君登壇〕
○内閣総理大臣(高市早苗君) 小林鷹之議員の御質問にお答えいたします。
政権の基本姿勢と政権運営の方針についてお尋ねがありました。
強い経済を構築するため、責任ある積極財政の考え方の下、成長戦略の肝である危機管理投資を中心に戦略的に財政出動を行うことで、国民の皆様に景気回復の果実を実感していただき、不安を希望に変え、日本列島を強く豊かにしていきます。
また、日米同盟を基軸としつつ、自由で開かれたインド太平洋を、外交の柱として引き続き力強く推進し、進化させていくこと等により、世界の真ん中で咲き誇る日本外交を取り戻します。
そして、最優先で取り組むことは、国民の皆様が直面している物価高への対応です。暮らしの安心を確実かつ迅速に届けてまいります。
こうした政策を実行していくため、政治の安定が不可欠です。日本維新の会との広範な政策合意に基づき、連立政権を樹立いたしました。この連立政権合意を基礎とし、各党からの政策提案についても、柔軟に、真摯に議論してまいります。
危機管理投資の成長戦略における意義についてお尋ねがありました。
この内閣は、今の暮らしや未来への不安を希望に変え、強い経済をつくります。本日設置した日本成長戦略本部におきまして、日本の供給構造を強化し、強い経済を実現するための成長戦略を強力に推進していきます。
成長戦略の肝は、危機管理投資です。AI・半導体、造船、量子等の戦略分野において、リスクや社会課題に対し、先手を打って供給力を抜本的に強化するため、官民連携の戦略的投資を促進し、世界共通の課題解決に資する製品、サービス及びインフラを提供することにより、更なる我が国経済の成長を実現します。
このため、供給サイドに直接働きかける措置のみならず、戦略的投資促進につながる需要サイドからの政策支援を含む、多角的、戦略的な総合対策を取りまとめてまいります。
成長戦略の具体策と造船能力の増強に向けた施策についてお尋ねがございました。
今答弁させていただいた危機管理投資については、本日設置した日本成長戦略本部において、多角的、戦略的な総合対策を取りまとめるよう関係大臣に指示をしました。
また、技術、人材育成、スタートアップ、金融など、分野横断的な課題についても、担当大臣を指定しまして、それぞれの課題解決のための戦略策定を指示いたしました。
御指摘の造船業についてでございますが、貿易量の九九%を海上輸送に依存する我が国にとって、国民生活、経済活動のみならず安全保障も支える極めて重要な産業です。
戦略分野の一つとして、船舶建造能力の抜本的な強化に向けたロードマップを策定するとともに、民間の積極的な投資を促進する施策として、大胆な措置を検討してまいります。
AI戦略とデータの利活用についてお尋ねがございました。
AIの利活用を促し、様々なリスクや社会課題に対して、先手を打った官民の積極的な投資を引き出し、産業化を加速することは、危機管理投資の中核だと考えております。
現在検討中の人工知能基本計画に、御指摘の医療、教育、農業、建設、さらに、日本が強みを持つ産業、研究等の分野のデータについて、利活用と保護のバランスも考慮しつつ、データ連携基盤を構築することを盛り込んでまいります。
賃金上昇が物価上昇を上回る構造の実現についてお尋ねがありました。
物価上昇を上回る賃上げを事業者に丸投げしてしまっては、事業者の経営が苦しくなるだけでございます。継続的に賃上げができる環境を整えることが、政府の役割です。
このため、医療、介護等の現場での公定価格の引上げを行うとともに、国、地方自治体から民間への請負契約単価を、物価上昇等を踏まえて適切に見直します。
また、生産性向上支援、事業承継やMアンドAの環境整備、更なる取引の適正化、賃上げ促進税制の活用促進等の関連する施策を総動員して、賃上げに取り組む中小企業、小規模事業者を強力に後押ししてまいります。また、自治体向けの重点支援地方交付金を拡充し、賃上げ税制を活用できない中小企業、小規模事業者を支援する推奨メニューを設けることも検討してまいります。
医療、介護分野の財政支援及び制度改革についてお尋ねがありました。
経営難が深刻化する医療機関や介護施設への支援は急を要します。
このため、診療報酬や介護報酬について賃上げ、物価高を適切に反映させるということとともに、報酬改定の時期を待たず、経営の改善や職員の方々の処遇改善につながる補助金を措置し、効果を前倒しいたします。
経済対策、補正予算に必要な施策を盛り込むべく、施策の具体化に取り組み、暮らしの安心を確保できるよう、スピード感を持って対応していきます。
また、地域医療を支えるためには、高齢化に対応した医療体制の再構築も必要です。
入院だけではなく、外来、在宅医療や介護との連携を含む新しい地域医療構想の策定や、医師の偏在是正に向けた総合的な対策を講じるとともに、新たな地域医療構想に向けた病床の適正化を進めます。
社会保障改革及び国民会議についてお尋ねがありました。
社会保障制度を持続可能なものにしていくため、全ての世代で能力に応じて負担し、支え合い、必要な社会保障サービスが必要な方に適切に提供される全世代型社会保障を構築することが重要でございます。
そのため、OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直しや、データヘルスなどを通じた効率的で質の高い医療の実現などについて、迅速に検討を進め、社会保障制度改革を進めていく中で、現役世代の保険料負担を抑えます。
あわせて、攻めの予防医療を徹底し、健康寿命の延伸を図り、皆が元気に活躍し、社会保障の担い手となっていただけるように取り組みます。
また、国民会議においては、給付と負担の在り方や、給付つき税額控除の制度設計を含めた税と社会保障の一体改革について、政府・与党だけではなく、野党の皆様とも一緒に、丁寧な議論を進めていきたいと考えております。
この国民会議の設置に向け、その具体的な在り方、議論の内容、進め方も含めて、各政党の皆様とよく相談して取り組んでまいります。
根本的な少子化対策と子育て支援についてお尋ねがありました。
少子化の克服には、若い世代が将来の経済的な見通しを持てることは不可欠でございます。強い経済の実現により、所得を増やし、雇用を安定させ、結婚、出産、子育ての選択に直面する若い世代の未来への不安を希望に変えてまいります。
また、現役世代の働きと未来を担う子供たちの育みを両立させるため、柔軟な働き方の推進に加え、安全で質の高いベビーシッターの利用促進、企業の活力を生かした子供、子育て支援の推進など、働きながら子育てしやすい環境を整えてまいります。
日本の未来を担う人材の育成についてお尋ねがありました。
現在の我が国が直面する少子高齢化を克服し、強い経済の基盤をつくり上げるには、イノベーションを起こすことのできる人材の育成が重要です。
このため、高校、大学を通じた文理分断からの脱却と専門高校の機能強化、大学における理工、デジタル系人材の育成の重視など、高校から大学までを通じた産業イノベーション人材を育成するためのシステム改革を一体的に進めてまいります。
国土強靱化、発災時の体制整備、災害に強い国づくりについてもお尋ねがありました。
激甚化、頻発化する自然災害による被害を最小限に抑制できるよう、老朽化したインフラの整備、保全を含め、第一次国土強靱化実施中期計画に基づく取組を今般の総合経済対策に位置づけ、着実に推進してまいります。
東日本大震災等での経験と教訓を次世代につなげていくことは重要です。この内閣におきましては、復興庁を所管する復興大臣を防災庁設置準備担当大臣としました。災害に強い国づくりを進めるため、防災体制の抜本的強化を図るべく、防災庁の来年度の設立に向けて準備を加速するとともに、官民の総力を結集して、事前防災、予防保全を徹底してまいります。
熊による被害対策についてお尋ねがありました。
政府は、十月三十日にクマ被害対策等に関する関係閣僚会議を開催し、議長である木原官房長官から、追加的、緊急的な対策のパッケージを今月中旬までに取りまとめ、実効性の高い対策を着実かつ段階的に実行することを指示しました。
具体的な施策としては、例えば、警察官によるライフル銃を使用した熊の駆除について早急に対応していくほか、狩猟免許を持つ者を公務員として任用する、いわゆるガバメントハンターの確保等を進めていくことを想定しています。
この対策パッケージの取りまとめを待たずに、スピード感を持って必要な施策を順次実行に移し、熊による被害の拡大の防止、さらには国民の皆様の安全、安心を確保してまいります。
次期サイバー戦略等についてお尋ねがありました。
我が国の力強い経済と安全保障、自由で開かれた安定的な国際秩序のために、自由、公正かつ安全なサイバー空間を確保することは極めて重要です。
しかしながら、近年、機微情報の窃取、重要インフラの機能停止等を目的とする高度なサイバー攻撃は、国民生活や経済活動に多大な影響を与え、ひいては国家安全保障上の大きな懸念にもなっています。
こうした情勢に官民挙げて切れ目なく対応するため、政府としては、サイバー対処能力強化法に基づく基本方針や、サイバーセキュリティ基本法に基づく新たなサイバーセキュリティ戦略を、年内を目途に策定することとしております。
これらを通じて、能動的サイバー防御を含む多様な措置によるサイバー脅威に対する防御、抑止、社会全体のサイバーセキュリティー及びレジリエンスの向上、人材、技術に係るエコシステム形成を実現し、国民の皆様の命と暮らし、経済を守り抜いてまいります。
エネルギーの安定供給と脱炭素化の両立についてお尋ねがありました。
国民生活及び国内産業を持続させ、更に立地競争力を強化していくためには、エネルギーの安定的で安価な供給が不可欠です。
電力需要の増加も見込まれる中、安全性の確保を大前提とした原子力の活用、ペロブスカイト太陽電池を始めとする国産エネルギーの導入拡大など、地域の理解や環境への配慮を前提に、エネルギー安全保障にも寄与する脱炭素電源を最大限活用し、エネルギー安定供給、経済成長、脱炭素の同時実現を目指します。
食料安全保障の確保についてお尋ねがありました。
食料安全保障を確保する観点から、先端技術の活用による生産性の向上、付加価値の増大、輸出の拡大を促進し、稼げる農林水産業と持続可能な食料システムをつくり出すとともに、農山漁村に活力を取り戻します。
これに向け、五年間の農業構造転換集中対策期間において、別枠予算を確保し、農地の大区画化、共同利用施設の再編、集約化、スマート技術の開発と生産方式の転換、実装、輸出産地の育成など、農業の構造転換への集中投資を実施してまいります。
外国人政策の理念と今後の方向性についてお尋ねがありました。
所信でも申し上げましたとおり、一部の外国人による違法行為やルールからの逸脱に対し、国民の皆様が不安や不公平を感じる状況が生じていることも事実です。
外国人政策においては、国民と我が国で生活しておられる外国人、双方にとって安全、安心な、秩序ある共生社会を実現することが重要です。
政府においては、本日、外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議を設置いたしました。
秩序ある共生社会実現のため、新たな担当大臣の下、与党における御議論も踏まえ、政府一体で検討を進めてまいります。
トランプ大統領の訪日、今後の日米関係、日米間の投資についてお尋ねがありました。
先日、トランプ大統領と初の対面での首脳会談を行いました。日米同盟は、日本の外交、安全保障政策の基軸です。同時に、日本は、米国にとり、インド太平洋における不可欠なパートナーでもあります。
幅広い分野での率直な議論を通じて、そうした点についてトランプ大統領と確認するなどの大きな成果を上げることができました。
今後とも、電話や対面など、トランプ大統領との会談を重ね、強固な信頼関係を一層深めて、日米同盟を更なる高みに引き上げていく決意です。
我が国は世界最大の対米投資国であり、日米は、経済面でも最も緊密なパートナーです。政府としては、今後の日米両国のサプライチェーン強靱化に資する様々な取組を推進することで、日米両国の経済を力強く成長させ、また、経済安全保障分野の日米協力を更に強化してまいります。
東アジアの国々、地域の平和と安定にどう向き合うのかについてお尋ねがございました。
韓国につきましては、APEC首脳会議の機会を捉え、李在明大統領と首脳会談を行い、現下の戦略環境における日韓関係、日韓米連携の重要性について一致いたしました。大統領との間では、隣国ゆえに立場の異なる諸懸案はありますが、これらを管理し、国交正常化以来これまで築かれてきた日韓関係の基盤に基づき、日韓関係を未来志向で安定的に発展させていくことで一致しました。今後、シャトル外交の実施を含め、両政府間で緊密に意思疎通をしていく考えです。
中国につきましては、習近平主席との間で、戦略的互恵関係の包括的な推進と、建設的かつ安定的な関係の構築という日中間の大きな方向性を確認するとともに、諸懸案についても率直に議論しました。懸案や意見の相違があるからこそ、首脳間で直接かつ率直に対話することが重要です。今回の会談を、日中両国が様々な課題や協力に取り組んでいくきっかけとしていく考えです。
北朝鮮については、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化を実現するのが政府の基本方針です。全ての拉致被害者の一日も早い御帰国を含め、北朝鮮との諸問題を解決するため、あらゆる手段を尽くして取り組んでまいります。
存在感を増すグローバルサウスとの連携強化は、今まで以上に重要となっています。国際秩序が大きく揺らぐ中、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を堅持していくためにも、グローバルサウスの様々なニーズにきめ細やかに対応していくことが不可欠です。基本的価値を共有する同志国やグローバルサウス諸国と連携し、国際社会の平和と安定に役割を果たしてまいります。
国家情報局の創設についてお尋ねがありました。
戦後最も厳しく複雑な安全保障環境において、政府全体のインテリジェンスに関する国家機能の強化が急務です。
今般、日本維新の会との連立合意書には、令和八年通常国会における国家情報局の創設などの内容が盛り込まれました。
政府としても、与党と緊密に連携しながら、組織の在り方等について、早急に論点を整理し、検討を進めてまいります。
日本外交の今後のビジョンについてお尋ねがありました。
我々が慣れ親しんだ自由で開かれた安定的な国際秩序が大きく揺らぎ、我が国周辺では、中国、北朝鮮、ロシアの軍事的動向等が深刻な懸念となっています。
こうした国際情勢の下、世界の真ん中で咲き誇る日本外交を取り戻し、国際社会の平和と繁栄に、より大きく役割を果たしていきたいと考えています。
そのためのビジョンが、自由で開かれたインド太平洋、FOIPです。先日訪日したトランプ大統領との間でも、FOIPを力強く推進するために緊密に連携していくことを確認いたしました。
FOIPを外交の柱として引き続き力強く推進し、時代に合わせて進化させていきます。そのビジョンの下で、同盟国である米国はもちろん、基本的価値を共有する同志国やグローバルサウス諸国との連携強化に取り組んでまいります。
憲法改正についてお尋ねがありました。
憲法改正につきましては、内閣総理大臣としては、憲法審査会における党派を超えた建設的な議論が加速するとともに、国民の皆様の間での積極的な議論が深まっていくことを期待しています。
その上で、自民党総裁として申し上げますれば、憲法はあるべき国の形を示す国家の基本法であり、国際情勢や社会の変化に応じた改正、アップデートが必要です。時代の要請に応えられる憲法を制定することは喫緊の課題と考えています。
先般の日本維新の会との連立合意書においても、憲法九条や緊急事態条項に関する改正に向けた取組が盛り込まれました。
もとより、憲法改正には国民の皆様の御理解と御支持を得られることが重要です。
今後、これまでの論点整理や議論の蓄積を踏まえて、各会派の御協力も得ながら、改正案を発議し、少しでも早く憲法改正の賛否を問う国民投票が行われる環境をつくっていけるよう、粘り強く全力で取り組んでいく覚悟です。
以上です。(拍手)
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○議長(額賀福志郎君) この際、十分間休憩いたします。
午後二時四十七分休憩
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午後三時一分開議
○副議長(玄葉光一郎君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
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○副議長(玄葉光一郎君) 国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。城井崇君。
〔城井崇君登壇〕
○城井崇君 立憲民主党の城井崇です。
私は、会派を代表して、高市早苗内閣総理大臣に質問します。(拍手)
全ての質問について、高市早苗内閣総理大臣からの答弁を求めます。
所信表明演説を拝聴しました。内閣総理大臣から、国会を通じて国民へ、今後、高市政権がやることを高らかに演説をいただきました。その内容を精査するとともに、自民党、日本維新の会の連立政権合意書、一部報道された全大臣への指示書と比較してみました。
所信表明演説で総理が言及され、連立合意、大臣指示のいずれでも言及があったのは、物価高対策、給付つき税額控除、教育無償化、エネルギー、経済安保、AI、宇宙技術などでした。短期的政策又は国際競争に対応する政策を中心に進めていくのだと受け止めました。
一方、所信表明演説では一般論しか国民に語られなかった分野が二つあります。大臣指示書でも記載が薄かったのに、連立合意では四つの大項目、社会保障改革項目に関する具体的な骨子に至っては十三項目にもわたり詳しく言及された社会保障、医療改革と、そして政府効率化局(仮称)の設置であります。
社会保障、医療改革は、応能負担や全世代型社会保障といった言葉で抽象的に語られています。高市政権は保険料率引下げをうたっていますが、保険料引下げの原資は何ですか。実際には、応能負担の拡大や高齢者の定義見直し等により、国民の負担が増えるのではないか。高市総理から、以上の問いにお答えいただくとともに、社会保障に関わる国民負担の増減の見込みを具体的に示してください。
行財政改革推進の色合いが薄かった高市総理の所信表明演説において、政府効率化局の設置は曖昧にされています。
政府効率化局については、租税特別措置及び高額補助金を総点検するのが役割とのことですが、いつまでに総点検を行って、どのように改善結果を出すのか。そもそも、総点検対象が狭いのではないか。
これまで立憲民主党からも、本気の歳出改革作業チームや予算委員会省庁別審査など、行政監視の上で改善提案を繰り返してきた政府基金や特別会計、政府資産なども含めて、総点検の対象を拡大すべきです。
また、あわせて、政府効率化局と既存の行政改革の部署との役割分担はどうなるのか、教えてください。
所信表明演説で高市総理から国会や国民に語られていない政策項目もありました。それはインテリジェンス政策です。大臣指示書には全閣僚共通指示としてインテリジェンス機能の強化と一言書かれているだけですが、連立合意には六項目にわたり詳細に政策項目が盛り込まれています。所信表明演説で国民に向かって具体的に方針を示していない上に、担当大臣への曖昧な指示で進められるような軽い話ではありません。国民の生活や権利に重大な影響を及ぼすものです。
インテリジェンス政策について、いつまでに、どのような内容を、どなたの責任で取りまとめ、実行していく考えか。その政策財源をどこに求めるのか。連立合意で、令和九年度末までに独立した対外情報庁を創設するとうたっていますが、既存の情報組織とはどのような関係を取るのか、高市総理のお考えを具体的に述べてください。
高市総理は所信表明で、物価高を上回る賃上げが必要、継続的に賃上げできる環境を整えることこそが政府の役割と述べましたが、この点は私たちも同じ考えです。大臣への指示でも賃上げ方針を示しており、早期の具体化を期待します。
一方、賃上げ方針に、実質賃金や労働分配率のKPI、すなわち、ゴールへ向かう中間目標が見当たりません。長らく上がっていない実質賃金をどこまで上げるのか、労働分配率をどこまで回復するのか、具体的な目標値を国民に向かって分かる形ではっきりとお示しをいただきたい。あわせて、いつまでに達成する計画かも高市総理から具体的に示してください。
最低賃金について、全国平均千五百円を二〇二〇年代にとの石破前総理が示した方針を高市総理は引き継ぐのか、明確に答弁をお願いします。
この間、私は、公定価格や行政規制の影響を受ける職場の声を地元北九州市で多く聞いてきました。
介護や保育の職場では、介護保険料や保育料など定められた価格の中で経営せざるを得ず、賃上げの原資を得るためでも値上げはできません。公共交通の職場では、赤字が続かなければ値上げ申請できず、三年も赤字が続けば会社がもたないとの声もあります。運輸業も同様で、荷主の影響が大きく、運賃値上げの要請は難しいと陸運、港湾、海運の現場から聞いています。公共事業に関わる建設業も同じです。資材高騰の中で予算を絞り続ければ、国や自治体が設計労務単価を幾ら上げても、建設、土木などの関連事業者は賃金や労務費を上げる原資を確保するのは極めて難しい状況にあります。
こうした現場の悲痛な声を今年六月の衆議院予算委員会で私から石破前総理に直接訴え、結果として、骨太の方針二〇二五に、物価上昇に合わせた公的制度の点検・見直しの項に、本基本方針第二章及び第三章に記載している、公定価格(医療・介護・保育・福祉等)の引上げ、働き手の賃上げ原資を確保できる官公需における価格転嫁の徹底を省庁横断的に推進すると盛り込まれました。第二章と第三章にも詳しく書かれています。
高市総理、公定価格や行政の規制の影響を強く受ける職場で働く方々の賃上げの元手確保に必要な政策、特に、医療、介護、保育、福祉等の公定価格の引上げ、働き手の賃上げ原資を確保できる官公需における価格転嫁の徹底を高市内閣で実現すると、是非ここで明言してください。
介護、障害福祉従事者の処遇改善と事業所支援について総理に伺います。
介護、障害福祉事業所は、物価高や人件費上昇により厳しい経営を強いられ、従事者の賃金も全産業平均より約八・三万円低い状況です。このままでは、事業所経営が立ち行かず、人材流出が進みます。
処遇改善と事業者支援は喫緊の課題です。立憲民主党は通常国会で、衆議院の医療法等改正案審議の際に、介護・障害福祉従事者処遇改善法案と訪問介護緊急支援法案の並行審議を求めましたが、自民党は、閣法審議を拒否してまで、私たちの法案を拒みました。処遇改善と支援の遅れは自民党の責任です。なぜ審議を拒んだのか、高市総理の見解を伺います。
その後、中央最低賃金審議会が全国加重平均で時給六十三円の引上げを答申し、賃上げが期待される一方で、負担増で事業継続が困難な事業所も懸念されます。
立憲民主党は、八月、介護、障害福祉事業所全職員の月一万円以上の処遇改善、最低賃金引上げへの対応支援、来年四月の介護報酬期中改定を求め、厚労省に要請しました。
高市総理は所信表明演説で、報酬改定の時期を待たず、経営の改善及び従業者の処遇改善につながる補助金を措置して、効果を前倒ししますと述べました。総理が想定する支援と処遇改善の金額を伺います。
保育士の処遇改善は急務です。政府は二〇二四年度に公定価格を一〇・七%引き上げ、人件費に充てるとしましたが、処遇改善加算の効果を検証しているんでしょうか。実際には全額が保育士の給与に反映されず、賃金は全産業平均と比べ依然低い水準です。希望を持って就職した保育士が離職する要因の一つでもあります。
立憲民主党は、保育所や幼稚園、放課後児童クラブや児童養護施設等で働く全ての職員一人当たり月額五万円の賃金引上げが必要であると考えており、まずは、緊急的な措置として、月額一万円加算する保育士・幼稚園教諭等処遇改善法案を実現すべく、あらゆる会派の皆様への賛同を呼びかけます。まずは総理に、この法案の内容に関する見解を伺います。
総理から大臣への指示にある就職氷河期支援の充実は、寄る辺なく歯を食いしばってきた就職氷河期の当事者の苦労に思いを致しながら、対応を急がねばなりません。
立憲民主党からは、就職氷河期支援政策として、夏の参院選公約を始め、具体的に提案を重ねています。就職氷河期世代のリスタート支援として、現役世代の雇用形態や所得保障を強化して経済的安心を確立すること、安定した居住環境を確保することで就職氷河期世代の生活の安心、再出発を支えること、就職氷河期世代が、学び直し、キャリア転換、ライフスタイルを再設計できる時間的余裕を支援することなど、お金、家、時間の観点から支援を充実する内容です。
こうした手段も明確にしながら、支援による目標を具体化すべきです。就職氷河期世代の正社員採用がどのくらい進んだか、賃金がどのくらい上がったかなど、定量目標を示すべきです。総理、取り組んでいただけますか。
そもそも、中小企業の人手不足は深刻で、人材確保競争でも、大企業の経営体力と比べると厳しい状況に置かれています。一方、正社員になることを希望するけれども、かなっていない非正規雇用の労働者が相当数おられるのも事実です。
立憲民主党は、新たに正規労働者を雇用した中小事業者には、長期間に社会保険料の事業主負担の一定部分を助成することで負担軽減を図る議員立法を提案しています。中小企業が新たに雇う人の社会保険料の事業主負担を軽減して、経営と雇用を支えて人材を確保するとともに、正規労働を希望する非正規やフリーランスの方が正規労働となる機会を拡大して安定した雇用と生活を確保することで、年収増による個人消費の増加や中小企業の発展と相まって、地域経済社会の活性化につなげていくべきと考えますが、総理の御見解をお聞きします。
高市総理の言う積極財政と財源の整合性について伺います。
責任ある積極財政の財源は何か。積極財政で民需を喚起する狙いと理解していますが、裏づけとなる財源は示されていません。数字のない積極財政は希望的観測にすぎません。政策財源に何を想定していますか。
税収増の見込みについて伺います。
所信表明演説で総理は、所得を増やし、消費マインドを改善し、事業収益を上げ、税率を上げずとも税収を増やすと述べました。成長による税収増をどの程度見込むのか、具体的数字を示してください。
国債の増発方針についても伺います。
片山財務大臣は十月二十四日、報道各社のインタビューで、二〇二五年度補正予算の財源について、足りなければ国債増発になる、やむを得ないと述べました。国債増発なら債務残高は伸び、財政負担は増します。
総理は所信表明で、成長率の範囲内に債務残高の伸びを抑え、対GDP比を引き下げると述べましたが、国債を増発しますか。増発すると、成長率の範囲内に債務残高の伸びを抑え、対GDP比を引き下げるということが難しいと考えます。国債の増発方針について、総理から具体的にお答えください。
加えて、増税の取扱いです。
防衛増税を実施しますか。来年度の防衛費もGDP比二%を維持又は増額しますか。その財源は何ですか。
いわゆる一億円の壁の是正を行いますか。金融所得課税の強化を行いますか。高市総理は増税を行うのか否か、明確にお答えください。
以上、積極財政の財源と金額規模、国債増発、税収増、増税の方針を具体的に伺います。
私たち立憲民主党からは、政策提案に当たって具体的な財源についても示すよう努力を重ねてきました。例えば、政府基金の積み過ぎの是正です。
政府基金は、複数年度にわたる予算執行可能という特徴がある一方で、一度歳出として国会の議決を経ながら、その後は執行、運用の実態が見えず、政策効果の検証も不十分なまま積み上がっています。いわば第二の予算と化しています。
私たち立憲民主党は、政府基金を見直し、政府方針の三年ルールを踏まえ、今後三年間の事業に必要な額を確保してもなお残る積み過ぎ基金について、令和六年基金シートに基づく試算で約七・八兆円を物価高対策等に活用すべきと提起してきました。石破政権の閣僚とも議論を重ねてまいりましたが、事業に使うから積み過ぎではないとの強弁ばかりでした。これでは、補正予算のたびに不要な国債発行が積み重なり、基金残高の膨張が続きます。
総理、当面三年間の事業に使わないお金を基金残高に見せ金のように積みっ放しにしている基金残高は、積み過ぎ基金だとお考えになりませんか。政府において積み過ぎ基金を精査をして、物価高対策など政策財源として国民生活のために活用すべきと考えますが、総理のお考えを聞かせてください。
本年成立した給特法の改正法は、教職調整額の段階的引上げ、働き方改革計画の策定、公表義務、主務教諭の新設を内容としています。教員の過重労働是正や処遇改善を求める声の中で一定の前進と受け止めますが、課題は依然山積です。
文部科学省の調査では、公立小中学校の教員不足は一千七百一人、約二十校に一校で不足が発生しています。学級担任における臨時的任用教員は小学校で一一・四九%、特別支援学級で二三・六九%を占め、定数確保だけでは、安心して働ける環境にはほど遠い状況です。総理は、この深刻な人材不足をどう認識していますか。
改正法では、二〇二九年度に時間外在校等時間の月平均三十時間を目標としました。しかし、二〇二四年の国際教員指導環境調査で、日本の教員の勤務時間は参加国・地域で最も長い。月八十時間超えの残業を行う教員は小学校で一四・二%、中学校で三六・六%に上ります。教職調整額を一〇%に引き上げても、時間に応じた残業代が出ない、定額働かせ放題の構造は残ります。総理は、これで真に処遇改善につながるとお考えか、更なる見直しの意思はあるか、お答えください。
特に、働き方改革の鍵である部活動の地域展開は進んでいません。ガイドラインの実態を調査、検証し、必要な改善をすべきと考えますが、見解を伺います。
また、主務教諭制度は、役割分担の明確化が期待される一方で、中間管理業務が増え、現場負担が懸念されます。働き方改革計画が導入されても、校務分掌、部活動、保護者対応などの業務削減は具体化していません。改正法をどう実効的に運用し、業務削減をどう進めるのか、明確な方針を示すべきです。総理の見解を伺います。
教員が子供と向き合い、教育に専念できる環境整備こそ改革の目的です。現場実態に即した更なる改善を求めます。
来年四月実施を所信表明演説でも高市総理が言及された学校給食無償化について、今後の取組への総理の考えを確認させてください。
これまで、私たち立憲民主党からも学校給食無償化法案を国会提出するなど、実現を後押ししてきました。その検討の際にも課題として挙がりましたのが、物価高騰分を補填する、学校給食の質を向上させるということを満たした国の取組とすべきと考えます。また、全額確実に市町村に届くよう、地方交付税ではなく、補助金や交付金で行うべきではないですか。総理、物価高騰分の補填と給食の質の向上、補助金、交付金での給食無償化を実行していただけますか。
高校無償化の拡充も来年四月から実施と所信表明演説で高市総理が言及されました。私たち立憲民主党からは、しわ寄せを受ける公立高校支援の充実が必要ということを、議員立法も提起をしながら訴えてきました。所信表明演説では、公教育の強化の意欲を示された点は評価をできますが、内容を是非充実させていただきたい。
また、日本の高校教育の在り方についての見直しに言及があり、また、自民、維新の連立合意には、高校教育改革のグランドデザインの策定による全国での教育機会確保と教育の質の向上を実現するとあります。
公教育の強化、高校教育の在り方見直しに関し、我々立憲民主党が提案してきた老朽化対策等を含む公立高校支援の充実は含まれるのか。いつまでに、どのような具体的な成果を目指して、誰の責任で実現する考えか。その際の政策財源をどこに求める考えか。総理から具体的にお答えください。
日本における二〇二四年度のデジタル赤字は六兆七千七百二十二億円に上るとされています。また、経済産業省大臣官房若手新政策プロジェクト、PIVOTが発表したデジタル経済レポートでは、二〇三五年には、ベースシナリオで約十八兆円、悲観シナリオでは約二十八兆円のデジタル赤字が見込まれると示されています。この将来予測について、日本政府として同様の見解を持っているのかどうか、仮に政府として異なる見解がある場合には、その根拠、前提条件、試算方法等について総理から御説明を伺いたい。
次に、デジタル赤字を解消し、将来的にデジタル黒字を実現するための方策について伺います。
デジタル赤字を解消するためには、大きく二つの方向性があると考えます。第一に、海外製品の輸入に極力頼らず、日本製のシステムやサービスが国内で広く利用される環境を整備すること。第二に、日本製品やサービスが海外で利用されるようにし、輸出を拡大すること。この二点を実現して初めて、構造的なデジタル赤字からの脱却、そして黒字転換が可能になると考えます。
政府としては、そもそもデジタル黒字を目指す方針をお持ちなのか、また、もしそうであるならば、短期的、中期的、長期的にどのような構想の下で、どのような具体的施策を講じてデジタル赤字を解消していくのか、総理からお答えください。
国内のICT産業が国際競争で劣勢に立たされている現状についても伺います。
ビッグテックの主な競争力の源泉としては、利用者が増えるほどサービスの価値が高まるネットワーク効果、追加サービス提供時の限界費用の低さ、そして、ユーザーが使い慣れたサービスからほかのサービスに乗り換えることが難しくなる囲い込み効果などが挙げられます。こうした特性により、グローバル市場で事業を急拡大させたビッグテックが世界的なシェアを握り、日本企業のプレゼンスが低下する結果となっています。
また、ビッグテック五社の研究開発投資額は約三十四兆円に達し、日経二二五構成銘柄の合計約十五兆円を上回る現状にあります。
こうした状況を踏まえ、国内のICT産業がグローバルなデジタル市場で再び競争力を高め、逆転を図るためにはどのような打開策を講じていくべきと考えているか、総理の見解を伺います。
AIの研究開発や生成AIの社会実装を推進する一方で、国内のクリエーター、作家、写真家、音楽家などの著作物や肖像の無断利用への懸念が高まっています。AIの進展と人間の創作を両立させるため、権利保護と補償の新たな仕組みを検討していく考えはありますか。文化と産業の共生をどう実現するのか、総理からお答えください。
円安や国際情勢を背景に、電気、ガス、燃料などのエネルギー価格が高騰しています。企業の生産コスト上昇と家庭の光熱費負担は限界に達しています。再エネや省エネ等の促進と同時に、電力、ガス等の公共料金の抑制、中小企業支援の即効策を講じるべきと考えますが、総理のお考えはいかがですか。ある場合には、具体的な時期と財源をお示しください。
また、燃料価格の軽減については、ガソリンや軽油のほかに、重油、灯油、航空機燃料など、他の油種についてもこれまでに燃油補助金の対象としてきていますが、これらも継続すべきと考えます。対応時の政策財源を含め、高市総理の具体的な対応方針を示していただきたい。
我が国の公共インフラは、戦後の高度経済成長期に整備されたものが多く、老朽化が急速に進んでいます。橋梁、道路、上下水道、港湾、鉄道など各分野で更新需要が集中し、特に地方では、維持管理費や人材の確保が深刻です。能登半島地震では、生活道路やライフラインが寸断され、復旧復興の妨げとなりました。災害のたびに復旧の遅れ、人手不足が繰り返される現状は看過できません。
地震や豪雨災害が頻発する中、老朽化インフラの更新、維持管理は喫緊の課題です。政府は、国土強靱化基本計画に基づき、今後五年間で二十兆円規模の第一次中期計画を掲げていますが、内訳や優先順位、財源見通しは不透明です。高市総理は、この計画をどのような理念と戦略で推進をし、地方財政をどう支える考えがあるか、伺います。
また、建設業の担い手不足は全国的課題で、地方では世代交代が進まず、技能継承が困難です。地域の建設業を、単なる請負業でなく、防災、復旧の最前線を担う公共インフラ人材として育成、支援する仕組みを政府として検討すべきです。総理の見解を伺います。
公共インフラ整備は、地域の安全と経済を支える未来への投資です。立憲民主党は、予防保全型維持管理、グリーンインフラ、防災DX、地域雇用と技術継承を重視し、国民の命と暮らしを守る強靱な国土づくりを政府に求めます。
この国と国民を守る。世界が振り返る教育、科学技術立国日本を実現する。子供たちに誇れる日本を引き継ぐ。私は、この思いを貫いて、引き続き実行可能な政策提案と厳しい行政監視を両立して国民の負託に応えることをお誓いし、質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣高市早苗君登壇〕
○内閣総理大臣(高市早苗君) 城井崇議員の御質問にお答えいたします。
社会保障に関する国民負担についてお尋ねがございました。
社会保障制度を持続可能なものにしていくため、全ての世代で能力に応じて負担し、支え合い、必要な社会保障サービスが必要な方に適切に提供される全世代型社会保障を構築することが重要です。
そのため、OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直しや、電子カルテを含む医療機関の電子化を通じた効率的で質の高い医療の実現などについて、迅速に検討を進め、社会保障制度改革を進めていく中で、現役世代の保険料負担を抑えてまいります。
少子高齢化の進行などにより、社会保障給付費は今後も増加が見込まれますが、様々な改革を進めることを通じて、現役世代の保険料負担をできる限り抑制できるよう議論を進めてまいります。
租税特別措置や補助金の総点検についてお尋ねがありました。
今般の自民党、日本維新の会の連立合意において、租税特別措置及び高額補助金について総点検を行い、政策効果の低いものは廃止すると盛り込まれていますので、政府としても適正化を進めるよう関係大臣に指示をいたしました。
いずれにしましても、検討スケジュール、総点検の対象範囲を含めた検討方法、政府内の体制など、今後の具体的な対応については、与党ともよく連携しながら速やかに検討をしてまいります。
インテリジェンス政策の取りまとめと対外情報庁についてお尋ねがありました。
今般、自民党と日本維新の会との間で締結した連立政権合意書においては、国家情報局等の創設や対外情報庁の創設といった様々なインテリジェンス政策が盛り込まれました。政府としては、与党と緊密に連携し、情報機関の組織の在り方等について、お尋ねの事項も含め、早急に論点を整理し、検討を進めてまいります。
最低賃金を含む賃上げ方針についてお尋ねがございました。
この内閣が優先で取り組むことは、国民の皆様が直面している物価高への対応でございます。物価上昇を上回る賃上げが必要ですが、それを事業者に丸投げしてしまっては、事業者の経営が苦しくなるだけです。継続的に賃上げできる環境を整えることこそが、政府の役割です。
そのため、生産性向上支援や更なる取引適正化等を通じ、中小企業、小規模事業者の皆様を強力に後押ししてまいります。
本日設置した日本成長戦略本部において、賃上げ環境整備担当大臣に対し、物価上昇を上回る賃上げが継続する環境整備に向けた戦略策定を指示しました。
この戦略の中で、最低賃金を含むこれまでの政府決定への対応や、物価上昇を上回る賃上げ実現に向けた道筋を含めて、経済動向等を踏まえて、今後、具体的に検討してまいります。
賃上げのための公定価格の引上げ等についてお尋ねがありました。
国民の皆様が安心して必要なサービスを受けていただくために、医療、介護、保育、福祉等の公定価格の分野において、賃上げ、経営の安定、人材確保が図られるよう取り組むことが重要です。
このため、診療報酬等の公定価格について、賃上げや物価高を適切に反映させるとともに、報酬改定の時期を待たず、経営の改善や職員の方々の処遇改善につながる措置を行い、効果を前倒しいたします。
まずは、経済対策、補正予算に必要な施策を盛り込むべく、施策の具体化に取り組み、スピード感を持って対応していきます。
また、物価高から中小企業、小規模事業者を守り、持続的な賃上げを行えるよう、官公需も含めた取引適正化の徹底や、生産性向上支援、伴走支援の徹底など、企業の稼ぐ力の強化に向けた取組を強力に後押ししていきます。
介護、障害福祉分野の処遇改善や事業所支援についてお尋ねがありました。
御党提出の法案の取扱いは、国会で御判断いただくものと承知しております。
介護、障害福祉分野の処遇改善や事業者支援を早急に行えるよう、補助金の措置に向けて、経済対策、補正予算に盛り込むべき必要な施策の検討を指示したところでございます。施策の具体化を進めるなど、スピード感を持って対応してまいります。
保育士等の処遇改善についてお尋ねがございました。
令和六年度において、保育士等について一〇%を上回る処遇改善を行っており、その支払い状況や賃金の状況については、現場への実態調査や統計調査により確認することとしています。
御党の提出法案の取扱いは、これは国会で御判断いただくものと承知しておりますが、保育士等の処遇改善については、こども未来戦略などに基づき、民間給与動向を踏まえた更なる処遇改善に取り組んでまいります。
就職氷河期世代への支援についてお尋ねがございました。
今年六月に取りまとめた新たな就職氷河期世代等支援プログラムの基本的な枠組みにおいて、従来からの就労、処遇改善に向けた支援や社会参加に向けた段階的支援に加えて、新たに、家計改善、資産形成や住宅確保等の高齢期を見据えた支援を盛り込んでいます。
これに基づき、具体的な目標であるKPIを含む新たな支援プログラムを、今年度内を目途に取りまとめる予定としております。就職氷河期世代等への支援の強化に向けて、検討を進めてまいります。
社会保険料の事業主負担の軽減による安定雇用と生活の確保についてお尋ねがございました。
公費によって社会保険料の事業主負担を軽減すべきとの御提案につきましては、社会保険料が医療や年金の給付に充てられ、また、労働者を支えるための事業主の責任であることなどから、慎重な検討が必要だと考えています。
その上で、働く人の安定した雇用や生活を確保するため、正社員転換を行う事業主に対するキャリアアップ助成金による支援や、フリーランスの方などに対する求職者支援制度による支援などの施策に取り組んでまいります。
責任ある積極財政の財源、国債発行、税収増、増税の方針についてお尋ねがありました。
この内閣におきましては、強い経済を構築するため、責任ある積極財政の考え方の下、戦略的に財政出動を行います。
お尋ねの責任ある積極財政に係る財源、国債発行、税収増につきましては、財政の持続可能性を実現し、マーケットからの信頼を確保しつつ、経済あっての財政の基本的な考え方の下、今後、取組を進める中で具体化していくものと考えております。
来年度の安全保障関連経費につきましては、現在、令和八年度予算の編成作業中であります。予断を持ってお答えすることは差し控えますが、防衛力の抜本的強化に係る事業につきましては、現行の防衛力整備計画等に基づき編成していく方針です。
防衛力強化に係る財源確保のための税制措置につきましては、これまでの与党税制改正大綱等の趣旨も踏まえ、引き続き検討してまいります。
金融所得課税につきましては、税負担の公平性のほか、貯蓄から投資への流れを引き続き推進し、一般の投資家が投資しやすい環境を損なわないようにすること、これも重要でございます。こうした観点を総合的に検討する必要があると考えております。
基金についてお尋ねがございました。
基金については不断の見直しが必要と考えますが、いわゆる三年ルールの策定前に措置されたものも含め、基金ごとに、事業の性質や執行状況など、置かれた状況が異なっています。
そうした状況を踏まえて見直しを行ってまいりますが、見た目の残高を一律に積み過ぎと考えて政策の財源として活用することには課題があると考えております。
教員の処遇改善、働き方改革、業務削減を始めとする教職の魅力回復についてお尋ねがありました。
教師不足については、改善すべき課題であり、徹底した働き方改革の実施など、教職の魅力を高める取組を進めていく必要があると考えています。
先般成立した改正給特法等を踏まえ、業務の仕分を行った、学校と教師の業務の三分類を文部科学大臣が定める指針に位置づけており、教育委員会による学校の業務量管理を徹底してまいります。
学校部活動の地域展開については、各自治体の取組状況を把握しながら、円滑な移行に向けた国のガイドラインの見直しを進めてまいります。
給特法につきましては、様々な議論があることは承知しております。まずは、時間外在校等時間が月二十時間程度に達するまでに、幅広い観点から諸課題の整理を行ってまいります。
給食無償化についてお尋ねがありました。
いわゆる給食無償化については、これまでの政党間の御議論において、給食の質の向上や国と地方との関係などの論点について十分な検討を行うこととされています。
政府としては、今後の政党間の議論を踏まえ、制度設計の議論を進め、安定財源の確保と併せて、来年四月から小学校段階で実施してまいります。
公教育の強化、公立高校支援の充実についてお尋ねがありました。
公教育の強化は、我が国の未来を見据え、イノベーションを起こすことのできる人材の育成のために重要であると考えます。
高校教育については、老朽化対策に関し、引き続き都道府県において適切に取り組むとともに、政党間の議論を踏まえて、国として高校教育改革のグランドデザインを今年度中に提示し、各都道府県が策定する計画に基づく取組を支援する交付金等の仕組みの構築について、税制による対応も含め、安定財源の確保と併せて検討し、公立高校が地域の人材育成といった役割を果たすことができるように取り組んでまいります。
いわゆるデジタル赤字についてお尋ねがありました。
いわゆるデジタル赤字の将来予測については、政府全体で統一的な見解はありませんが、足下で、デジタル関連収支の赤字、これは年々拡大しております。
デジタル赤字が拡大し続けることは、我が国の経済成長や経済安全保障の観点からも好ましくはなく、まずはデジタル赤字の拡大抑止、さらにはその改善を進めてまいります。
このため、本日設置した日本成長戦略本部の下、AIを始めとする新しいデジタル技術の研究開発や産業化を加速化させるとともに、コンテンツ産業を含めたデジタル関連産業の海外展開を支援してまいります。
国内ICT産業の国際競争力強化についてお尋ねがありました。
ICT産業は、社会経済活動を支え、災害、安全保障面でも重要な産業です。本日開催した日本成長戦略本部において、戦略分野である情報通信として、総務大臣を担当大臣に指名し、強力に取組を進めることといたしました。
具体的には、進展するAI社会を支えるオール光ネットワークや海底ケーブルなどのデジタルインフラについて、グローバル市場を先読みした、研究開発から社会実装、市場獲得の一気通貫での支援により、国際競争力を強化してまいります。
AIの進展とクリエーター等の権利保護と補償の両立についてお尋ねがありました。
AIの進展により、クリエーターや権利者から、知的財産権の侵害に対する懸念の声があるものと認識しています。
政府においては、法、技術、契約の各手段を適切に組み合わせて対応することが重要であることをこれまでも示してきたところです。
その上で、イノベーションの促進とリスク対応の両立を理念とするAI法の施行も踏まえ、AI技術の進歩と知的財産権の適切な保護の両立が達成されるよう、検討を進めてまいります。
電気、ガス等公共料金の抑制、中小企業支援の即効策についてお尋ねがありました。
国民の皆様が直面している物価高に対応するため、既に、経済対策の策定に着手するよう指示を行っています。
電気・ガス料金については、寒さの厳しい冬の間、支援を行います。
また、再エネの活用や中小企業等への省エネ支援を進めてまいります。
このほか、賃上げ税制を活用できない中小企業、小規模事業者などを支援する推奨メニューを設け、重点支援地方交付金により、地域のニーズにきめ細やかに対応をしてまいります。
これらについて、財源を含め、早急に検討を進めてまいります。
野党の皆様との真摯な対話と合意を積み重ねながら、速やかに経済対策を取りまとめ、必要な補正予算を今国会に提出いたします。
燃料油価格支援についてお尋ねがありました。
燃料油の価格高騰対策としての定額引下げ措置の支援については、いわゆる暫定税率について結論を得て実施するまでの間、行うこととしています。暫定税率については、十月三十一日、与野党六党の実務者間で、ガソリンは令和七年十二月三十一日に、軽油は令和八年四月一日に廃止すること等について一致したところです。
灯油等の油種につきましては、経済対策において拡充することとしております自治体向けの重点支援地方交付金も活用し、地域の実情に合った的確な支援をお届けするなど、必要な対応を講じていく考えです。
政府は、このような取組を通じて、内閣の最優先課題として、国民の皆様が直面している物価高に対応し、暮らしの安心を確実かつ迅速に届けてまいります。
国土強靱化実施中期計画、建設業の担い手不足についてお尋ねがありました。
激甚化、頻発化する自然災害から国民の皆様の生命、財産、暮らしを守るため、国土強靱化の取組を切れ目なく推進する必要があります。第一次国土強靱化実施中期計画では、計画期間内における各施策の目標を設定し、その達成に向けて重点的に取り組むこととしております。
この取組に係る地方負担につきましては、地方の財政運営に支障が生じないよう、適切に地方財政措置を講じてまいります。
また、地域の守り手としてインフラ整備や災害時の応急対策等を担う建設業について、その担い手の確保、育成に向け、処遇改善、働き方改革、生産性向上等に引き続き取り組んでまいります。
以上でございます。(拍手)
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○副議長(玄葉光一郎君) 藤田文武君。
〔藤田文武君登壇〕
○藤田文武君 日本維新の会の藤田文武でございます。
私は、日本維新の会を代表し、高市総理の所信表明に対し、全て総理に質問いたします。(拍手)
今般の第二百十九回国会において、高市早苗衆議院議員が内閣の首班に選出され、日本初の女性総理が誕生いたしました。高市早苗内閣総理大臣に改めて心から祝意を申し上げます。
高市政権は、日本維新の会及び自由民主党により形成された本格的な改革保守連立政権です。我が国における保守連立政権の誕生は、約三十年ぶりとなります。我が国の未来をつくるべく、本格的な改革保守連立政権を樹立する一助となれたことを誇りに思います。
我が国は、戦後八十年にわたり、国の形をつくり上げる過程で積み残してきた宿題を解決すると同時に、冷戦後の三十年の厳しい経済状況を乗り越え、国民生活を向上させる過程で積み残してきた宿題を解決する、そのための改革が急務であります。
そのために、国家観を同じくする保守勢力の結集が不可欠であります。両党が、立場を乗り越え、保守勢力として結集し、連立政権を樹立したことは、日本の政策の夜明けであります。
去る十月二十日に両党が調印した連立政権合意書の前文でも記したとおり、両党は、国家観、国際政治観、安全保障観、経済財政観を共有しています。
国家の運営は、単なる数合わせで行ってはなりません。国家の背骨に関する思想を同じくしているからこそ、共同で国家の運営を行うことができるのです。
両党の力を結集し、日本再起を図らなければなりません。高市政権を長期安定政権にすることこそが、国難を突破し、日本列島を強く豊かにし、自立する国家としての歩みを進めることにつながります。我々は、日本の底力を信じ、全面的に協力してまいります。
日本再起のための政策が、連立合意書に記載された十二本の矢です。我々は、政策実現に徹底的にこだわります。捨て身で十二本の矢の政策実現を行います。
先般、高市総理の所信表明演説の多くが、この十二本の矢に基づくものでございました。
まず、十二本の矢に関する政策実現に向けた決意を伺います。
次に、経済及び財政政策、並びに物価高対策について伺います。
第一に、自民、維新の連立合意書にも記され、高市総理の述べる責任ある積極財政とは、具体的にどのようなものでしょうか。
第二に、合意書に基づき、自由民主党が参議院選挙の公約で掲げた二万円等の給付は実施しないこととなり、総理も所信表明で述べておられます。この施策を実施しない理由について、総理の見解をお聞かせください。また、それに伴い、物価高にどのような方策を取る考えがあるのか、お聞かせください。
第三に、ガソリン税の暫定税率廃止については、各党間の議論を踏まえ、今国会での廃止法案の成立を期すとする一方、これらの廃止に伴い必要となる国及び地方自治体の安定財源を確保しつつ、廃止までの間も、補助金を確保することで、価格引下げに対応するとされています。最終的には、いつから補助金を拡充し、いつまでに補助額を二十五・一円とし、いつから暫定税率を廃止するのか。また、廃止に伴い必要となる国及び地方自治体の安定財源をどのように確保するのでしょうか。
第四に、所得税の基礎控除をインフレの進展に応じて見直す制度設計について、どのような内容を考えているか、お聞かせください。
次に、成長戦略について伺います。
第一に、連立合意書では、租税特別措置及び高額補助金の総点検を行い、政策効果の低いものは廃止するために、政府効率化局(仮)をつくるとしています。高市総理は、早速、財務大臣に対し、租税特別措置・補助金の見直し担当大臣としての任を課し、政策を強力に進める体制を取られました。そこで、あえて問います。本政策の推進に当たり、政府効率化局はいつ、どのようにつくるお考えでしょうか。
第二に、高市政権の成長の肝である危機管理投資は、これまでの成長戦略と何が違うのか。
第三に、所信表明で述べられた新技術立国とは、これまでの科学技術政策と何が違うのか。真の科学技術振興のためには、連立合意書にある大学数及び規模の適正化といった大胆な大学改革を通じ、高等教育に対する選択と集中が必要だと考えますが、御見解を伺います。
次に、エネルギー安全保障について伺います。
先週、私は、福井県にある関西電力高浜原子力発電所を視察し、我が国産業の基盤たる電力を安定的に供給する原子力発電所の重要性を再認識いたしました。原発再稼働に向けた意気込みを含めて、高市政権のエネルギー政策の特色をお聞かせください。
また、大規模太陽光発電、いわゆるメガソーラーは、北海道の釧路湿原や熊本の阿蘇の外輪山など、我が国の美しい国土を侵しており、大変な問題となっています。このような状況を憂い、美しい国土を守るためにも、連立合意書に基づき、メガソーラーを法的に規制する施策を実行することとなっています。メガソーラーの規制にかける総理の決意をお伺いいたします。
次に、社会保障改革について伺います。
物価は上がっている。しかし、手取りは上がらない。その原因は、税金よりはるかに高い社会保険料にあります。高齢化と医療の高度化に伴い、医療費は年々増大し、それを支える現役世代の大きな負担となっています。
特定の費目が国家予算の一定以上の割合を占めるとき、財政が硬直化し、長期的な国力低下を招くことは、歴史的な教訓として知られています。
社会保障こそ、我が国内政の最大の課題であります。社会保障関係費は、国家予算、すなわち一般会計歳出総額の三分の一を占め、国家予算から国債費、地方交付税を除いた一般歳出に絞ると二分の一を占めています。
我が国の長期的な国力低下を防ぎ、日本再起を図るためには、抜本的な社会保障制度改革が必要なのです。
命に関わる医療の核を守りつつ、社会保険料を下げて、現役世代の生活も守る。この両立こそが、我々日本維新の会が進める社会保障改革の命題だと考え、全身全霊で進めてまいる所存です。
現役世代の大きな負担となっている社会保障の改革に対する問題意識を伺います。
また、現在、インフレ等の影響で医療機関及び介護施設の経営状況が悪化しています。それらの短期的な経営改善に加え、従事者の処遇改善は待ったなしの課題です。そのために、総理は、報酬改定の時期を待たず、処遇改善につながる補助金を措置するとしていますが、本施策は、自民、公明、維新の三党による、いわゆる医療法に関する三党合意書に基づくものです。本施策の具体的な内容についてお聞かせください。
さらに、医療体制の再構築について。いわゆる医療法に関する三党合意書では、病床再編の拡大として、人口減少等により不要となると推定されている約十一万床の病床について、二年後の新たな地域医療構想に向けて、地域の実情を踏まえた調査を実施した上で、削減していくこととしています。このことは、今年の骨太の方針にもしっかりと記載されています。
政府は、令和六年度補正予算において、医療需要の急激な変化を受けて、病床数の適正化を進める医療機関に対して、一床当たり四百十万円の病床数適正化支援事業を実施しています。医療機関の経営を支援しつつ、病床の削減を強力に後押ししており、我が党としても、今後ともしっかりと進めていただきたいと考えています。
しかしながら、この事業では、五万床を超える多くの申請があったものの、一万床程度しか内示することができませんでした。各地の医療機関のニーズはまだ十分に酌み取れておりません。
三党の合意においては、我が党の試算として、約十一万床の削減により二年間で約一兆円の医療費削減効果があると計算しており、病床削減は、我が党が掲げる重要な改革の一つである、社会保険料の軽減にも大きな効果をもたらすと考えています。
削減する病床一床に対し四百十万円の補助を、令和六年度補正予算で酌み取れなかった医療機関のニーズも含めて、しっかりと対応できるよう、十分な予算確保が必要と考えていますが、政府として、今後の病床数の適正化に向けてどのような姿勢で対応していくのか。また、政府としても、病床削減に伴う医療費削減効果を示すべきだと考えますが、いかがでしょうか。
加えて、社会保障改革のための超党派かつ有識者も交えた国民会議では、給付つき税額控除の制度設計を含めた税と社会保障の一体改革について議論するとされています。具体的な内容に加え、どのようなタイムラインで議論するのか、どこに設置し、野党にはどのような参加を呼びかけて実現するのか、お聞かせください。
次に、外交、安全保障について伺います。
第一に、連立合意書にも記され、高市総理も所信表明で述べた、戦略三文書の前倒し改定について。
国家安全保障戦略は十年の期間を念頭に策定するとされていますが、連立合意書に基づき、二〇二二年の前回策定時から僅か三年での改定となります。これはひとえに、我が国を取り巻く戦略環境が激変しているからであります。
国家安全保障戦略の本家本元は米国です。米国の国家安全保障戦略は、一九八七年から始まり、八〇年代に二回、冷戦が終結し戦略環境が激変した九〇年代には合計九回、二〇〇〇年代には三回、二〇一〇年代も三回、二〇二〇年代は現時点までに一回策定されています。
一方、我が国は、安倍晋三元総理が国家安全保障戦略を策定した歴史的な二〇一三年に始まり、二〇二二年に一度改定されただけです。
このように、米国は約四十年で十八個、我が国は約十年で二つ作られています。国家安全保障戦略という戦略論を国家として考えてきた期間でいえば四倍、個数でいえば約九倍の開きがあるのが実情であります。米国の事例を見れば分かるとおり、国家安全保障戦略というのは、戦略環境の変化に応じ柔軟に改定していくべき性質のものです。
そこで、我が国の戦略環境、安全保障環境はどのように変化しているのか、総理の情勢認識と戦略三文書改定に向けた決意をお伺いいたします。
第二に、軍事同盟の関係を深める大陸側の中国、ロシア及び北朝鮮に対する抑止力を高める目的で、海洋国家である我が国は、日米同盟の更なる深化を図り、同志国との安全保障協力を増強するためにも、我が国の更なる防衛力の向上が不可欠であります。その裏づけとなる防衛費の対GDP比二%水準について、補正予算と併せて今年度中に前倒しして措置を講ずることは必須であります。自立する国家として、自らの防衛力を増強するために、主体的かつ能動的に防衛費を充実させることが重要ですが、総理の見解を伺います。
第三に、連立合意書にも明記された防衛装備品移転三原則の運用指針における五類型の撤廃について。装備移転を強力に推進する観点から非常に重要な施策であり、総理のお考えをお聞かせください。
第四に、自衛官の採用状況に関する深刻な情勢に対する危機感と、処遇改善を含む人的基盤の抜本強化、自衛官の自衛官たる矜持を向上させるための施策の必要性の観点から、連立合意書には自衛官の恩給制度の創設の検討が明記されました。国家国民のために、「事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえること」、これを誓う自衛官に対し、死ぬまで国が面倒を見るという気概と制度的担保が必要です。自衛官の恩給制度創設に対する総理の決意をお聞かせください。
第五に、多極化する国際社会において、外交ツールとしての和平調停の重要性が高まっています。
古くは米国ルーズベルト大統領による日露戦争の調停に始まり、ノルウェーの調停によるイスラエル、パレスチナ間のオスロ合意、我が国の調停によるフィリピン政府、モロ・イスラム解放戦線の間のミンダナオ和平、そして先般の米国トランプ大統領によるイスラエル、ガザ地区、ハマスの間の和平調停。
連立合意書に基づき、和平調停に関する部署を外務省内に設置しなければなりません。具体的な課を設置した上で、調停を行うことのできる専門人材たる調停官の養成も必要であります。国際社会における平和を構築する新たな外交手段を涵養する観点から、和平調停の能力強化に関する総理の決意を伺います。
第六に、現在の自衛官の階級、服制及び職種等の呼称の国際標準化を行う必要があります。本年中に具体的手法の検討を開始すべきと思いますが、総理の見解を伺います。
第七に、先般のトランプ大統領訪日について。特に日米首脳会談に係る一連の行事は、日米両国のきずなを明確に示すことのできた歴史的な時間となったのではないでしょうか。トランプ大統領訪日の成果についてお聞かせください。
次に、インテリジェンス政策について伺います。
連立合意書に記されているとおり、自由民主党及び日本維新の会は、我が国のインテリジェンス機能が脆弱であり、インテリジェンスに関する国家機能の強化が急務であるという認識を共有し、総合的なインテリジェンス改革を行うこととしています。我が国のインテリジェンス機能に関する総理の認識を伺います。
また、連立合意書に基づき、国家情報局、国家情報局長及び国家情報会議の創設を行うこととなっていますが、総理の決意をお聞かせください。
次に、人口政策、外国人政策についてお伺いいたします。
第一に、連立合意書に基づき、政府に人口減少対策本部を立ち上げ、抜本的かつ強力な人口減少対策を実行する必要があります。人口減少対策本部に関する方針についてお伺いいたします。
第二に、外国人政策の司令塔について。令和七年七月十五日、外国人との秩序ある共生社会推進室が司令塔として創設されました。これは重大な一歩であります。しかし、その司令塔の姿では、まだまだ力が弱く、道半ばでありました。そのような状況を踏まえ、政府は、内閣官房長官を議長とする外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議を創設し、強力な体制を構築いたしました。そのことに敬意を表します。強力な司令塔を構築した上で、包括的で、スピード感を持って施策を実行する必要があると思いますが、外国人政策に関する今後の方針をお伺いいたします。
第三に、連立合意書に基づき、令和八年通常国会において、対日外国投資委員会、日本版CFIUSの創設に加え、外国人及び外国資本による土地取得規制の厳格化に関する法案の策定が必要となっています。今すぐにでも準備が必要になっているスケジュールだと思いますが、総理の決意をお聞かせください。
次に、統治機構改革について。
我が党は、これまでに、首都機能のバックアップや多極分散型経済圏の形成を目的として、いわゆる副首都構想を訴えてきました。政府はこれまでどのような取組を進めてきたのか、お聞かせください。
また、これまでの取組を踏まえ、連立合意書及び所信表明演説で触れられている首都の危機管理機能のバックアップ体制を構築し、首都機能分散及び多極分散型経済圏を形成する観点から、首都及び副首都の責務及び機能を整理した上で、早急に方策を検討することについて、今後どのように進めていくのか、見解を伺います。
次に、教育政策について伺います。
我が国の社会経済の持続的な成長には、成長分野や地域産業を支える人材育成を底上げする必要があり、そのためには高等学校が担う役割が極めて重要です。全国どこの地域であっても、自らの希望に応じ、質の高い高等学校教育が受けられる環境を整えるため、令和八年度からの高校無償化を確実に実施するとともに、併せて高等学校教育の質の向上に向けた取組を行う必要があると考えますが、総理の見解を伺います。
次に、政治改革について。
自由民主党、日本維新の会の連立合意書に明記された十二本の矢は、その多くがこれまでの政府の政策を転換する非連続的な政策です。政府内外から大きな抵抗があることでしょう。
本日十一月四日は、立憲政友会の総裁を務めた原敬総理が暗殺された日です。私も先日、東京駅丸の内の現場を見てまいりました。その床には今でも、原首相遭難現場の碑が埋まっています。
原敬は、総理就任時、軽佻浮薄の俗論を廃止し、神聖なる国民の意思に基づき、微力を国家にささげる、国家のためなら政友会に不利な政策も取ると述べたと言われています。
大衆迎合的言説を排し、党利党略を捨て、国益の大義に生き、日本再起のための政策実現にこだわる。皆様、この原敬の姿勢こそが今の政治に求められているのであります。
様々な抵抗を排し、改革を実現するためには、まずは隗より始めよ。その姿勢が必要不可欠であります。
その一つが、衆議院議員定数の一割削減であります。
二〇一二年には、当時の民主党の野田総理が、自由民主党の安倍総裁に対し、まず、我々が身を切る覚悟で、具体的に定数削減を実施しなければいけないと、四十五議席削減を提案されました。
また、先月、立憲民主党の野田代表は、議員定数削減は安倍さんと約束した悲願でもある、吉村さんが突破口を開いてくれたことには感謝したいと述べてくださいました。議員定数削減の達成を悲願とも形容された思いに私も強く賛同するものであります。
国民民主党の玉木代表も、議員定数削減案に対し、賛成したい、臨時国会の冒頭で処理したらよい、十年以上ずっとほったらかしにしてきた宿題を解消するという意味では意味があるとおっしゃってくださいました。
皆様、何と心強いお言葉でしょうか。
二〇一三年には、自民、維新の連立合意書で記した衆議院一割という数字以上の八十議席を削減する法案に、野田代表も玉木代表も賛成者として名を連ねておられます。まさに、議員定数削減の志を同じくする同志であります。
野田代表、そして玉木代表、原敬元総理の言葉を胸に刻み、是非とも、共に、十年越しの宿題を解決し、議員定数削減を実現しようではありませんか。有言実行あるのみであります。
高市総理、連立合意書を共にまとめてくださった高市総理に対しても、我が国の改革に向けた議員定数削減に対する決意を伺います。
次に、国家の背骨について。
第一に、憲法改正については、総理在任中の国会発議を目標にする旨を述べられました。
我が党は、提言、二十一世紀の国防構想と憲法改正において、憲法九条二項削除による集団的自衛権行使の全面容認にまで踏み込み、リアリズムの視座に立ち、正面から国際安全保障環境を見据えております。
自由民主党の皆様には、二〇一二年の憲法改正草案の趣旨をいま一度想起していただくことを切に願っております。
高市総理におかれては、本年六月五日の衆議院憲法審査会において、我が党の議員からのそのような問いかけに対し、条文の内容も、二〇一二年四月二十七日の自民党憲法草案がベストだと思っていると応じていただいたことを心強く感じております。
憲法改正、特に憲法九条改正についての決意を伺います。
第二に、内閣による憲法改正原案の提出について伺います。
過去の質問主意書において、政府は、憲法第九十六条第一項の規定により、憲法改正を発議して国民に提案する権能は国会にあるが、内閣は、憲法第七十二条の規定により、議案を国会に提出することが認められていることから、憲法改正の原案を国会に提出することが可能であると答弁しています。
内閣は、憲法第七十二条の定めに基づき、憲法改正原案を国会に提出できることについて、政府の立場は引き続き変わりないか、総理に伺います。
第三に、連立合意書に基づき、旧姓の通称使用の法制化法案を令和八年通常国会に提出し、成立を目指すと、具体的な内容及び期限を合意しています。なぜ、立憲民主党や国民民主党が提案する選択的夫婦別氏ではなく、旧姓の通称使用の法制化が重要なのか、総理による国民に分かりやすい説明を求めます。
第四に、連立合意書に基づき、日本国国章損壊罪を制定し、外国国章損壊罪のみが存在する矛盾を是正することになっています。総理の見解を伺います。
本日、様々御質問した内容を見るだけでも、重要な政策が並んでおり、自由民主党及び日本維新の会による本格的な改革保守連立政権である高市政権の意気込みや覚悟を感じることができます。
死して不朽の見込あらばいつでも死ぬべし
生きて大業の見込あらばいつでも生くべし
吉田松陰先生のこの言葉にあるとおり、政治家の存在価値は政策実現、その一点にあり。我が国の生存と繁栄のために、国民の幸福のために、国益と志に殉じていることこそ、政治家の本望ではありませんか。皆さん、いかがでしょうか。
国難に際し、志を持った在野の人間が一斉に立ち上がり、大きな物事を成し遂げるという草莽崛起の思想こそ、今の我が国には必要であります。
我々は、至誠をもって、政権を支え、必ずや政策を実現していくことをお誓いし、私の代表質問といたします。
御清聴、誠にありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣高市早苗君登壇〕
○内閣総理大臣(高市早苗君) 藤田文武議員の御質問にお答えいたします。
十二本の矢実現に向けた決意についてお尋ねがございました。
政治の安定なくして、力強い経済政策も、力強い外交、安全保障政策も、推進していくことはできません。この思いを胸に、日本再起を目指す広範な政策合意の下、日本維新の会との連立政権を樹立いたしました。
国家国民のため、決して諦めないとの不動の方針の下、合意書に掲げた十二項目の政策を、合意したスケジュールに従って、確実に検討及び実施してまいります。
責任ある積極財政についてお尋ねがありました。
この内閣では、経済あっての財政の考え方を基本とし、強い経済を構築するため、戦略的に財政出動を行います。これにより、所得を増やし、消費マインドを改善し、事業収益が上がり、税率を上げずとも税収を増加させることを目指します。この好循環を実現することによって、国民の皆様に景気回復の果実を実感していただき、不安を希望に変えていきます。
こうした道筋を通じ、成長率の範囲内に債務残高の伸び率を抑え、政府債務残高の対GDP比を引き下げていくことで、財政の持続可能性を実現し、マーケットからの信認を確保していきます。
物価高対策についてお尋ねがありました。
自民党がこの夏の参議院議員選挙で公約として掲げた給付金については、国民の皆様の御理解が得られなかったことから、実施しません。
足下の物価高に対しては、いわゆるガソリン税、軽油引取税の暫定税率廃止、地域のニーズにきめ細やかに対応する重点支援地方交付金の拡充、厳しい冬の間の電気・ガス料金の支援等の施策を、既に策定を指示している経済対策の中に盛り込むこととしております。
いわゆるガソリンの暫定税率についてお尋ねがありました。
いわゆるガソリンの暫定税率について、先日、十月三十一日、与野党六党の実務者間で合意案に一致したところです。
その合意案では、ガソリンについては、本年十一月十三日から二週間ごとに五円ずつ補助金を引き上げ、十二月十一日にはいわゆる暫定税率と同水準にした上で、十二月三十一日に暫定税率を廃止することとされています。
また、安定財源の確保については、歳出改革等の努力を前提としつつ、各種の税制措置を検討し、本年末までに結論を得ること、道路関連インフラ保全の重要性等との関係にも留意しつつ、安定財源を確保するための方策を引き続き検討し、今後一年程度を目途に結論を得ること、地方の安定財源については、これらの税制措置による地方増収分を活用するほか、具体的な方策を引き続き検討し、速やかに結論を得ることとされています。
今後、政党間での正式な合意に向け、各党において党内手続を行っていくと承知しております。
政府としては、政党間の御議論の結果を踏まえてしっかりと対応してまいります。
租税特別措置や補助金の総点検についてお尋ねがございました。
今般、自民党及び日本維新の会の連立合意において、租税特別措置及び高額補助金について総点検を行い、政策効果の低いものを廃止すると盛り込まれており、政府としても、適正化を進めるよう、関係大臣に指示をいたしております。
租税特別措置や補助金については、与党ともよく連携しつつ、税制改正や予算編成のプロセスにおいて不断に見直しを行ってきているところでございますが、お尋ねの政府の体制も含め、政府内で検討を進めてまいります。
危機管理投資についてお尋ねがありました。
危機管理投資は、経済安全保障、食料安全保障、エネルギー安全保障、健康医療安全保障、国土強靱化対策など様々なリスクや社会課題に対して、官民が手を携え先手を打って行う戦略的な投資です。
AI・半導体、造船、量子等の戦略分野を指定し、供給力を抜本的に強化するため、官民連携の戦略的投資を促進します。世界共通の課題解決に資する製品、サービス及びインフラを提供することができれば、更なる成長につながります。
こうして経済の新たな成長を切り開いていくという点において、これまでの成長戦略と異なります。
本日設置した日本成長戦略本部において、各戦略分野について、供給サイドに直接働きかける措置のみならず、戦略的投資促進につながる需要サイドからの政策支援を含む、多角的、戦略的な総合対策を取りまとめるよう、関係大臣に指示しました。
今後、各戦略分野の対策について、具体的な検討を加速し、経済の新たな成長を切り開き、国民の皆様の未来への不安を希望に変えてまいります。
新技術立国と大学改革についてお尋ねがございました。
私自身、科学技術政策担当大臣を務めておりました。その当時推進してきた政策を更に発展させていきます。
具体的には、公教育の強化や大学改革を進めるとともに、強い経済の基盤となる科学技術、人材育成に資する戦略的支援を行い、新技術立国を目指します。
本日設置した日本成長戦略本部においても、分野横断的課題として新技術立国、人材育成等を掲げ、担当大臣に課題解決のための戦略の取りまとめを指示しました。
また、大学数及び規模の適正化については、産業構造の変化に対応した新たな価値の創出や高校教育へのアクセス確保と併せて進めることが重要であり、理工、デジタル系人材や地域社会を支える人材の育成を進めつつ、再編統合の推進など高等教育全体の規模の適正化を図ってまいります。
エネルギー政策とメガソーラー規制についてお尋ねがございました。
高市内閣は、強い経済の実現に向け、エネルギー安全保障の確立に力を入れて取り組みます。
エネルギー安全保障の観点から、安全性が確保された原子力の活用、ペロブスカイト太陽電池を始めとする国産エネルギーの導入拡大が重要です。
原子力につきましては、安全性の確保を大前提とし、地域の御理解を得ながら再稼働を進めます。国も前面に立ち、立地自治体など関係者の御理解と御協力を得られるよう、取り組んでまいります。
再生可能エネルギーにつきましては、地域の理解や環境への配慮を前提に導入を進めていきます。御指摘のメガソーラーにつきましては、関係する規制の総点検を行い、連立政権合意に基づき、法的に規制する施策を実行してまいります。
エネルギーの安定的で安価な供給を実現することで、国民生活及び国内産業を持続させ、更に立地競争力を強化してまいります。
社会保障改革に対する問題意識についてお尋ねがありました。
国民の皆様の命と健康を守ることは、重要な安全保障でございます。日本維新の会との連立政権合意書にあるように、社会保障関係費の急激な増加に対する危機感と、現役世代を中心とした過度な負担上昇に対する問題意識を共有し、社会保障改革に取り組んでまいりたいと考えております。
具体的には、日本維新の会、公明党、自民党の三党合意を踏まえ、OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直しや、金融所得の反映など応能負担の徹底、電子カルテを含む医療機関の電子化を通じた効率的で質の高い医療の実現などについて、迅速に検討を進め、現役世代の保険料負担の抑制につなげてまいります。
医療、介護分野の従事者の処遇改善、病床数の適正化及び病床削減に伴う医療費削減効果についてお尋ねがありました。
経営難が深刻化する医療機関や介護施設への支援については、報酬改定の時期を待たず、経営の改善や職員の方々の処遇改善につながる補助金を措置し、効果を前倒しします。
経済対策、補正予算に必要な施策を盛り込むべく、施策の具体化に取り組み、スピード感を持って対応していきます。
また、高齢化に対応した医療体制の再構築を図るためには、地域の実情に応じて病床を適正化することが重要です。
このため、日本維新の会、公明党、自民党の三党合意に基づき、人口減少等により不要となると推定される、約十一万床の一般病床、療養病床、精神病床といった病床について、地域の実情を踏まえた調査を行った上で、二年後の新たな地域医療構想に向けて、不可逆的な措置を講じつつ、調査を踏まえて次の地域医療構想までに削減を図ります。
具体的には、感染症に対応する病床等の医療体制への影響などにも留意しながら、医療機関のニーズに応えられる必要な予算を補正予算に盛り込んでまいります。
なお、病床削減に伴う医療費適正化効果については、三党合意において、感染症等に対応する病床は確実に確保しつつ、削減される病床の区分や病床の稼働状態、代替する在宅、外来医療等の増加等を考慮した上で、精査を行うとされていることも踏まえ、精査を進めてまいります。
社会保障改革のための国民会議についてお尋ねがありました。
社会保障は、国民一人一人がその夢や希望の実現を諦めることなく、安心して働き、暮らしていくための基盤です。人口減少、少子高齢化の中で社会保障改革を進めるためには、全ての世代を通じて納得感が得られるものとすることが重要です。
このため、国民会議においては、給付と負担の在り方や、給付つき税額控除の制度設計を含めた税と社会保障の一体改革について、政府・与党だけではなく、野党の皆様も交えて、丁寧な議論を進めていきたいと考えております。
国民会議の設置に向け、その具体的な在り方、議論の内容や進め方も含めて、各政党とよく相談して取り組んでまいります。
戦略三文書の改定についてお尋ねがありました。
前回三文書を改定した二〇二二年と比べ、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序への挑戦が勢いを増すとともに、インド太平洋では、中国、北朝鮮の更なる軍事力の増強や、中ロやロ朝の連携強化などが見られ、各国は、ロシアによるウクライナ侵略を教訓に、無人機の大量運用を含む新しい戦い方や長期戦への備えを急ぐなど、安全保障環境の変化が様々な分野で加速度的に生じています。
こうした急速な変化に適切に対応し、強い覚悟を持って、我が国の独立と平和、国民の皆様の命と平和な暮らしを守り抜くため、三文書の来年中の改定を目指し、検討を進めてまいります。
防衛力強化と防衛費の増額、連立政権合意書を踏まえた対応についてお尋ねがありました。
一層急速に厳しさを増す安全保障環境を踏まえ、我が国の独立と平和、国民の皆様の命と平和な暮らしを守るため、主体的に防衛力の抜本的強化を進めてまいります。
そのため、まずは、現行の国家安全保障戦略に定める対GDP比二%水準を前倒しして措置するとともに、国家安全保障戦略を始めとする三文書改定の検討を開始することとしました。
また、防衛装備移転は、力による一方的な現状変更を抑止し、我が国にとって望ましい安全保障環境を創出するための重要な政策的手段です。
今般、自民党、日本維新の会が合意した五類型の撤廃も、防衛装備移転を更に推進していくという決意が示されたものと受け止めています。
防衛装備移転三原則運用指針の見直しを早期に実現すべく検討を進めます。
自衛官が安んじて国防という国家にとって極めて枢要な任務に当たることができるようにすることは、国の責務です。
自衛官の恩給制度の創設については、現在進めている再就職先の拡充や若年定年退職者給付金の給付水準の引上げといった施策を十分に踏まえた上で、自衛官の退職後給付の在り方の中で検討する必要がございます。自衛官の処遇改善について国民の皆様の御理解をいただきながら、よりよい制度とすべく取り組んでまいります。
和平調停の能力強化についてお尋ねがありました。
国際情勢がますます厳しくなり、各地で紛争が発生する中、危機を未然に防ぎ、また、和平調停等を通じて、紛争の早期終結、和平の実現につなげていくことの重要性が高まっています。
和平の実現から紛争後の復旧復興へのシームレスな取組につなげるべく、我が国の能力強化に努めてまいります。
自衛隊の階級、服制、職種等についてお尋ねがありました。
これも、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境の下、防衛力の抜本的な強化が必要であります。
この防衛力の中核は自衛隊員であり、全ての隊員が高い士気と誇りを持って任務に当たることができる環境を整備する必要があります。
御指摘の自衛官の階級、服制、職種等の国際標準化につきましては、スケジュールを含めた進め方を与党とも御相談をしながら、スピード感を持って検討をしてまいります。
トランプ大統領訪日の成果についてお尋ねがございました。
先日、トランプ大統領と初の対面での首脳会談を行いました。日米同盟は、日本の外交、安全保障政策の基軸です。同時に、日本は、米国にとり、インド太平洋における不可欠なパートナーでもあります。
幅広い分野で率直な議論を行いましたが、今申し上げた点についてトランプ大統領と確認するなど、様々大きな成果を上げることができました。
今後とも、トランプ大統領との会談を重ね、強固な信頼関係を一層深めて、日米同盟を更なる高みに引き上げていく所存でございます。
インテリジェンス機能に関する認識、国家情報局等の創設についてお尋ねがありました。
今、非常に複雑な安全保障環境において、政府全体のインテリジェンスに関する国家機能の強化が急務だと認識をしております。
今般、御党との連立合意書には、令和八年通常国会における国家情報局、国家情報局長、国家情報会議の創設などの内容が盛り込まれました。
政府としても、御党と緊密に連携しながら、組織の在り方等について、早急に論点を整理し、具体化を進めてまいります。
人口減少対策本部についてお尋ねがありました。
連立政権合意書では、我が国最大の問題は人口減少という認識に立ち、令和七年臨時国会中に、政府に人口減少対策本部(仮称)を立ち上げ、子供、子育て政策を含む抜本的かつ強力な人口減少対策を検討、実行するとされています。
人口減少対策を進めるに当たっては、現在、政府に設置されているこども未来戦略会議や新しい地方経済・生活環境創生本部、外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議との関係も含め、どのような体制で進めていくことが効果的か、考えて対応してまいります。
外国人対策についてお尋ねがありました。
政府においては、本日、司令塔として、外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議を設置しました。
新たな担当大臣の下、与党における御議論も踏まえ、政府一体で、土地取得等のルールの在り方の検討を含め、秩序ある共生社会実現に向けた施策を進めてまいります。
対日外国投資審査については、経済安全保障を強化する観点から、関係大臣に対して、審査を高度化する枠組みの検討を指示しております。速やかに具体化を進めてまいります。
いわゆる副首都構想についてお尋ねがありました。
政府では、これまで、首都直下地震により官邸が使用できない事態を想定し、緊急災害対策本部の代替拠点の確保等に係る取組を進めてまいりました。
また、多極分散型国土の形成については、第三次国土形成計画において、東京一極集中の是正に向け、人口や諸機能が分散的に配置された国土構造の実現を目指すこととしております。
今後の進め方につきましては、連立政権合意書において、令和七年臨時国会中に、両党による協議体を設置し、首都及び副首都の責務及び機能を整理した上で、早急に検討を行うとされております。早急に与党による協議体を設置いたします。当該協議体において、しっかりと検討を進めていただきたいと考えております。
高校教育についてお尋ねがありました。
高校教育の振興については、御党との合意を踏まえ、安定財源を確保しつつ、いわゆる高校無償化について、令和八年度からの実施に向け、必要となる制度設計を進めるとともに、高校教育の質の向上に向け、国として高校教育改革に関するグランドデザインを今年度中に提示し、各都道府県が策定する計画に基づく取組を支援する交付金等の仕組みの構築などに取り組んでまいります。
議員定数の削減についてお尋ねがありました。
国会議員の定数の在り方については、各党各会派で御議論いただくべき事柄であり、内閣総理大臣の立場で議論の具体的な方向性についてコメントを行うことは差し控えたいと思います。
その上で、自民党総裁の立場から申し上げれば、先般、自民党と御党との間で、一割を目標に衆議院議員定数を削減するため、令和七年臨時国会において議員立法案を提出し、成立を目指すとの内容の合意書を交わしました。
議員定数の削減は身を切る改革として重要な課題であると認識しており、合意書の内容を踏まえ、御党とともに取り組む決意です。
憲法改正についてお尋ねがありました。
憲法改正については、内閣総理大臣としては、憲法審査会における党派を超えた建設的な議論が加速するとともに、国民の皆様の間での積極的な議論が深まっていくことを期待しています。
その上で、自民党総裁として申し上げれば、時代の要請に応えられる憲法を制定することは喫緊の課題だと考えております。
先般の自民党と日本維新の会との連立合意書においても、九条改正を始めとする憲法改正に向けた取組が盛り込まれました。
今後、これまでの両党における議論の蓄積を踏まえ、検討を進めた上で、各会派の御協力も得ながら、改正案を発議できる環境がつくられるよう、自民党総裁として粘り強く取り組んでいく覚悟です。
内閣による憲法改正原案の提出についてお尋ねがありました。
内閣は、憲法第七十二条の規定により、議案を国会に提出することが認められていることから、憲法改正の原案を国会に提出することも可能です。
内閣として、この考えに変わりはありません。
旧氏の通称使用の法制化についてお尋ねがありました。
政府においては、これまで二十年以上にわたり、旧氏の通称使用の拡大やその周知に取り組んでまいりました。
私自身も、総務大臣在任中は、総務省単独で措置できる手続等につき、千百四十二件を旧氏や併記で対応できるようにしました。全ての省庁、地方公共団体、公私の団体、事業者において同様の取組を行えば、婚姻による氏の変更により社会生活で不便や不利益を感じる方を減らせると考えています。
そのため、旧氏の通称使用の法制化については、連立合意の内容を踏まえ、与党と緊密に連携しつつ、必要な検討を進めていく考えでございます。
日本国旗損壊罪の制定についてお尋ねがありました。
これは、過去、私自身が刑法九十二条改正案を起草し、自民党の党議決定や御党関係議員の御協力の下、法案を国会に提出したこともあります。
御党との合意書の内容を踏まえ、今後、その実現に向けて、両党間で具体的な検討を進めていくとともに、政府としても、与党と連携を図りつつ、必要な取組を進めてまいります。
以上です。ありがとうございました。(拍手)
○副議長(玄葉光一郎君) 内閣総理大臣から、答弁を補足したいとの申出があります。これを許します。内閣総理大臣高市早苗君。
〔内閣総理大臣高市早苗君登壇〕
○内閣総理大臣(高市早苗君) 大変申し訳ございません。藤田文武議員の早口で聞き取れなかったところがございました。申し訳ありません。
所得税の基礎控除の見直しについてお尋ねがありました。
所得税の控除が定額であるために、物価上昇局面に実質的な負担増が生じるという所得税の課題につきましては、本年末までの令和八年度税制改正プロセスにおいて、基礎控除を物価に連動した形で更に引き上げる税制措置の具体化を図ることとしております。与党税制調査会の御議論などを踏まえながら適切に対応してまいります。
失礼いたしました。ありがとうございました。(拍手)
――――◇―――――
○小寺裕雄君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明五日午後一時から本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されることを望みます。
○副議長(玄葉光一郎君) 小寺裕雄君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(玄葉光一郎君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。
本日は、これにて散会いたします。
午後四時四十一分散会
――――◇―――――
出席国務大臣
内閣総理大臣 高市 早苗君
総務大臣 林 芳正君
法務大臣 平口 洋君
外務大臣 茂木 敏充君
財務大臣 片山さつき君
文部科学大臣 松本 洋平君
厚生労働大臣 上野賢一郎君
農林水産大臣 鈴木 憲和君
経済産業大臣 赤澤 亮正君
国土交通大臣 金子 恭之君
環境大臣 石原 宏高君
防衛大臣 小泉進次郎君
国務大臣 あかま二郎君
国務大臣 小野田紀美君
国務大臣 城内 実君
国務大臣 黄川田仁志君
国務大臣 木原 稔君
国務大臣 牧野たかお君
国務大臣 松本 尚君
出席内閣官房副長官
内閣官房副長官 尾崎 正直君
出席政府特別補佐人
内閣法制局長官 岩尾 信行君

