第16号 令和7年5月21日(水曜日)
令和七年五月二十一日(水曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 西村智奈美君
理事 小泉 龍司君 理事 津島 淳君
理事 中野 英幸君 理事 鎌田さゆり君
理事 黒岩 宇洋君 理事 米山 隆一君
理事 金村 龍那君 理事 円 より子君
井出 庸生君 稲田 朋美君
上田 英俊君 上川 陽子君
河野 太郎君 小林 茂樹君
棚橋 泰文君 寺田 稔君
中西 健治君 平沢 勝栄君
深澤 陽一君 牧島かれん君
森 英介君 山本 大地君
若山 慎司君 有田 芳生君
篠田奈保子君 柴田 勝之君
寺田 学君 平岡 秀夫君
藤原 規眞君 松下 玲子君
黒田 征樹君 萩原 佳君
小竹 凱君 大森江里子君
平林 晃君 本村 伸子君
吉川 里奈君 島田 洋一君
…………………………………
法務大臣 鈴木 馨祐君
経済産業副大臣 大串 正樹君
外務大臣政務官 松本 尚君
最高裁判所事務総局民事局長 福田千恵子君
政府参考人
(金融庁総合政策局参事官) 若原 幸雄君
政府参考人
(金融庁総合政策局参事官) 岡田 大君
政府参考人
(法務省民事局長) 竹内 努君
政府参考人
(法務省刑事局長) 森本 宏君
政府参考人
(外務省大臣官房参事官) 門脇 仁一君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 田中 仁志君
政府参考人
(経済産業省大臣官房審議官) 河野 太志君
政府参考人
(中小企業庁事業環境部長) 山本 和徳君
法務委員会専門員 三橋善一郎君
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委員の異動
五月二十一日
辞任 補欠選任
神田 潤一君 小林 茂樹君
棚橋 泰文君 中西 健治君
森 英介君 深澤 陽一君
藤田 文武君 黒田 征樹君
同日
辞任 補欠選任
小林 茂樹君 山本 大地君
中西 健治君 牧島かれん君
深澤 陽一君 森 英介君
黒田 征樹君 藤田 文武君
同日
辞任 補欠選任
牧島かれん君 棚橋 泰文君
山本 大地君 神田 潤一君
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律案(内閣提出第四三号)
譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第四四号)
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○西村委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律案及び譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。
この際、お諮りいたします。
両案審査のため、本日、政府参考人として金融庁総合政策局参事官若原幸雄さん、金融庁総合政策局参事官岡田大さん、法務省民事局長竹内努さん、法務省刑事局長森本宏さん、外務省大臣官房参事官門脇仁一さん、厚生労働省大臣官房審議官田中仁志さん、経済産業省大臣官房審議官河野太志さん及び中小企業庁事業環境部長山本和徳さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○西村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○西村委員長 次に、お諮りいたします。
本日、最高裁判所事務総局民事局長福田千恵子さんから出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○西村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○西村委員長 これより質疑に入ります。
質疑の申出がありますので、順次これを許します。若山慎司さん。
○若山委員 おはようございます。自由民主党の若山慎司でございます。
今日は、譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律案及び関係法律の整備に関する法律案について質問をさせていただきます。
今日、実は、こうして立たせていただくことは、これまで委員会でも何度か立たせていただきましたけれども、本当に、私も秘書時代からずっといろいろな中小企業の資金繰りの御相談というのを受けてまいりましたけれども、そこに通ずる法案についてこうして質問に立たせていただくこと、誠に名誉なことだと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
さて、中小企業の資金繰りが大変厳しい状況にあります中で、多様な資金調達方法を整備する。土地を差し出すというか担保に入れたり、それから保証人を立てたりというようなこと、不動産担保や人的保証に過度に依存するような資金調達を行う実情がある中で、そこに依存しない資金調達というものを促進するという観点から、この法律の果たす役割は非常に大きなものであって、また有意なものであるということを感じております。
これまで多くの経営者の方々から様々な御相談をいただきましたけれども、実態としては、これまでこの法律がなかったことによって、判例によってルールの形成をしてきたというような経緯がありまして、金融機関の審査において、法的な安全性や予測可能性に欠けるということで、審査ではねられてしまったというような事案も多々ございました。
この法律化をすることによって、法律関係の安定性が向上することが期待されるわけでございますが、まず、この法律により政府として期待する効果、それから、今回対象としていない財産、例えば不動産とか会社が持っている技術、特許、こういったものをもって受けるという際には、今までと同じように判例法理を利用することになるのかということをお尋ねをさせていただきたいと思います。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
譲渡担保法案及び整備法案でございますが、譲渡担保及び所有権留保に関する法律関係の明確化や取引の法的安定性の確保を図るとともに、必要に応じてより合理的なルールを導入するものであります。法務省といたしましては、譲渡担保等がより積極的に活用され、企業の資金調達の多様化につながるものと期待をしておるところでございます。
他方で、譲渡担保法案では、譲渡担保契約について明文の規定を設ける必要性が高いとは言えないと考えられることなどを理由に、委員御指摘の不動産や特許を受ける権利等、一定の財産を目的とする譲渡担保契約については、原則として譲渡担保法の適用を除外することとしております。譲渡担保法の適用がない財産が担保目的で譲渡された場合の法律関係につきましては、これまで同様に、判例や解釈に委ねられることになると考えております。
○若山委員 ありがとうございました。
私ども、物づくりの愛知を地元に抱える中で、工作機械であったり、また様々な新しい技術を生かして新しいものをクリエートしていく、生み出していくために資金調達をしていかなければならないといったときに、まずは、持っている機械類がしっかりと法的な根拠があった担保価値を評価してもらえるものになったということを一定の評価としたいとともに、今お話ありました特許等についても、これからいろいろと検討していっていただけたらなと思います。
ただ、この法律を作りました、できましたとなったときに、やはり貸し手側の方の金融機関の審査のスキルというものがどうしても必要になってくる。金融機関としては、いや、うちはちょっと査定できないんだ、そういう経験がないんだ、実績がないんだというようなことで、なかなか受けてもらえないというようなことも多々ございます。
そうした中、実効性のある立法を目指していくという観点から、成立後の金融機関への周知、これは金融庁としてどのように考えておられるか、また、もう一つは、政府系金融機関である政策金融公庫、特に中小企業事業部門が大きく関わるところではあると思いますけれども、こういったところの審査体制の強化についてどのように考えておられるか、所管庁それぞれにお伺いをできればと思います。
○岡田政府参考人 お答え申し上げます。
譲渡担保等を利用した融資、いわゆるABLを含めまして、金融機関が金融仲介機能を発揮するに当たりましては、自らの経営資源や経営戦略を踏まえながら、事業者の資金需要に係る様々なニーズに適切に応えていくことは重要と考えております。
金融庁におきましては、金融機関による、過度に不動産担保あるいは個人保証に依存しない、事業の実態に着目した融資というのを促進しておりまして、ABLもその選択肢の一つとして、事業者のニーズを踏まえた活用を促してきておりますが、今回、この譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律案が成立しました際には、譲渡担保等に係るルールの金融機関への周知について、法務省と連携してやっていきたいと思っております。
私ども金融庁といたしましては、引き続き、こうしたことも含めまして、事業者の実態、将来性に着目した融資の後押しに取り組んでいくことを通じまして、金融機関による一層の金融仲介機能の発揮を促してまいりたいと思います。
○山本政府参考人 お答えいたします。
今回の法案の目的は、不動産担保等に依存しない資金調達を促進するため、動産等を担保とする融資を推進するものと認識しております。
御指摘いただきました日本政策金融公庫中小企業事業におきましては、同様の認識の下にこれまでも取り組んできております。
まず、無担保での貸付けにも弾力的に対応しておりまして、二〇二三年度の融資実績に占める無担保貸付けの割合は、金額ベースで七三%となっております。
また、担保が必要な場合でありましても、これまで機械装置や商品在庫といった動産、知的財産等を担保の対象とさせていただいてきており、動産等を担保とする融資も含めて、中小企業の幅広い資金ニーズに対応しております。
中小企業庁といたしましては、引き続きこうした取組を進めてまいりますとともに、本法案が成立した暁には、法務省と連携しながら、政府系金融機関にも十分な周知、広報に努めてまいる所存でございます。
○若山委員 ありがとうございました。
実は、今週になってから、地元の染色、糸を染める会社さんたちとお話を聞く機会がありましたけれども、ちょっとした技術、それから、自分たちでは当たり前だと思っていたものが価値を生み出して、それが担保価値として認められるようなことになっていきますと大変助かるというようなお話もありました。
どうか、これまでいろいろ資金繰り対策としてやってまいりました中で、こういった技術を持っている会社さんが、製品化したいんだけれども、資金調達ができなくて、泣く泣くそういった技術、パテントを大手の会社さんに譲り渡さざるを得ないような状況ということも、過去に出くわしたこともございました。どうぞこれからも、中小企業の皆さんの資金繰り対策として、これが更に有意に活用されるように生かしていただけたらと思う次第でございます。
ただ、そうした中で、今回の法律の目的としては、規律の合理化ということが目的の一つにあろうかと思います。金融機関等が目的動産の担保価値を正確に把握することも非常に重要になってくるわけでございますが、そのためにも、登記による担保権のありようが明らかにされることも必要であります。
そうしたときに、司法書士を始めとして、士業の皆さんにも積極的に中小企業の経営に関わっていただきながら登記を進めるということも重要かと思いますが、この点、いかがお考えになられますでしょうか。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
整備法案では、譲渡担保権等の十分な公示を行うため、新たな登記類型の創設なども含めまして、動産・債権譲渡登記制度の見直しを行っております。
また、譲渡担保法案では、占有改定の方法により対抗要件を具備した動産譲渡担保権はその他の方法により対抗要件を具備した動産譲渡担保権に劣後するものとしているため、譲渡担保法の施行後は、動産譲渡登記の対抗要件具備の方法としての重要性が一層高まるものと考えられます。
このようなことから、整備法の施行後に新たな動産・債権譲渡登記制度が円滑に利用されるためには、この登記制度の内容や動産譲渡登記の対抗要件具備方法としての位置づけなどについて十分な周知、広報を図ることが重要と考えておりまして、登記を取り扱う司法書士等の専門職としっかり連携をしていきたいと考えております。
○若山委員 ありがとうございました。
では、ちょっと中身の部分に触れてまいりたいと思います。
今法案の債務者側の課題ということで、私的実行の濫用として、いきなり回収をされてしまうというようなものに対する防御手段ということに触れたいと思います。
私的実行の猶予期間や裁判所による譲渡担保権の実行手続の禁止命令や取消し命令、これらについてこの法案ではどのようになっているかということ。あわせて、今回、いきなり回収をされてしまうことによって、会社自体が経営が立ち行かなくなる、倒産というようなことも起こり得るわけですが、そうしたときに、労働者等の一般債権者を保護するための仕組みづくりとして、未払い賃金の問題ということがあろうかと思います。これは多分、この法案の検討段階ではいろいろな有識者の皆さんの御意見等もあってで組み上がってきたことだと思いますが、その過程の中で、労働者側の立場から、どういった方がどういった意見を述べられた中でこの法律に仕上がっていったのかというところを、経過を御説明をいただければと思います。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
譲渡担保権の私的実行につきましては、短時間で実行が完了することから、債務者が倒産法上の制度を利用することによって事業継続に必要な財産の流出を防ぐなどの対応を取るための時間的な余裕が乏しいと指摘をされてきました。
そこで、譲渡担保法案では、設定者が事業継続のために必要な手段を取るための猶予期間を設けることとし、設定者に対する通知から二週間が経過し、又は動産譲渡担保権者等が譲渡担保動産の引渡しを受けるまでは実行の効果が発生しないこととしております。破産手続等において、裁判所が譲渡担保権の実行の開始前に実行の禁止を命ずることができることとしたのも、同様の趣旨に基づくものでございます。
さらに、集合動産、集合債権譲渡担保権について実行通知等がされますと、設定者は、目的動産の処分権限や目的債権の取立て権限を失うことにより、それ以後の事業の継続が困難になるおそれや資金繰りが悪化するおそれがあります。
そこで、譲渡担保法案では、譲渡担保権設定者が処分権限や取立て権限を回復することができるように、担保権の実行手続の取消し命令を設けることとしております。
それから、労働者の関係ですが、法制審議会担保法制部会には、労働組合の関係者に委員として参加していただくとともに、組入れ制度の検討の際には、労働事件に精通した弁護士にも参考人として御参加をいただき、労働者の視点や労働者保護の視点から意見をいただいたところでございます。
譲渡担保法案は、特定の意見のみを反映したものではありませんが、労働者の視点等を有する委員等の意見も勘案し、立案したものでございます。
○若山委員 ありがとうございました。
起こり得る事態に対してしっかりと備えていかなければなりませんし、内容についても、これから経過を見ながら、いろいろと更に深化させていただく必要性ということもあるのではないかと思います。
では、最後に、逆に、担保権者側の権限を制約し過ぎると、動産や債権の担保の促進を阻害することにもなりかねない、この法案が、骨抜きというか、意味がなくなってしまうこともあります。そうした中で、この法案で譲渡担保権者の権限を強化するものとしてどのようなことを設定されているかということを、最後、お聞きしたいと思います。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
譲渡担保法案では、譲渡担保権者の利益を保護するため、例えば次のような規定を設けることとしております。
まず、譲渡担保権者が、目的である財産の代替として設定者が取得する金銭等からも優先して弁済を受けることができるという物上代位を明文化することとしておりますほか、動産譲渡担保権の優先弁済権の行使が妨害されているときは、動産譲渡担保権者はその妨害停止の請求等をすることができる旨の規定を設けることとしております。
また、集合動産、集合債権を目的とする譲渡担保権について、設定者はその目的である財産の価値を担保権者を害する程度に減少することのないように維持しなければならないという、担保価値維持義務に関する規定を設けております。
さらに、譲渡担保権の実行手続に関しましては、設定者等が譲渡担保動産の価値を減少させる行為等をし、又はそのおそれがあるときは、裁判所が、その行為の禁止等や執行官による譲渡担保動産の保管等を命ずることができることとしたほか、私的実行のための引渡命令や私的実行の終了後の引渡命令を設けるなど、動産譲渡担保権の実行手続の実効性を確保するための裁判手続を設けることとしております。
○西村委員長 若山さん、時間ですので、御協力お願いします。
○若山委員 ありがとうございました。
○西村委員長 次に、篠田奈保子さん。
○篠田委員 立憲民主党・無所属の篠田奈保子です。
本担保法制の見直しに関して、特に労働者の立場から質問をさせていただきます。
私は、地方の都市の町の弁護士として、中小企業の様々な御相談にも応じてまいりました。倒産処理、そしてまた倒産に関する相談のほとんどは、労働者が三十人未満の小さな企業のことが多くて、管財人業務の主な仕事としては、在庫の処分をして、それを換価して財団をつくる、それからまた売掛金の回収をして破産財団をつくる、それを各債権者に配分をするというような仕事となります。
この本担保法制の見直しによって、様々なものが担保に取れるということになりますので、いわゆる倒産状態になったときには、不動産も担保権者に、様々な債権についても担保権者に、そしてまた倉庫内の様々な在庫についても全て担保権者にということで、一般債権者、特に労働債権者に関しては、かなり自分の取り分が、ほとんど配当が得られないというような状況も生じるというふうに考えて、ちょっと危惧するところがございます。
こういった課題に関して、本法案はどのような手当てを準備をしているのか、まずお答えをいただけますでしょうか。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
譲渡担保法案では、労働債権者を含む一般債権者の保護の観点から、集合動産譲渡担保権又は集合債権譲渡担保権が実行された場合に、一般債権者への弁済原資を確保し、これによって担保権者と一般債権者との間の分配の公平を図るため、集合動産譲渡担保権等が実行された場合において、設定者について法的倒産手続が開始したときは、譲渡担保権者が実行により回収した額のうちの一定額を破産財団等に組み入れなければならないこととしております。
これは、集合動産譲渡担保権等は、一定の範囲に属する設定者の財産を一括して担保の目的とするものであって、その範囲の定め方によっては設定者の倒産時において一般債権者のための引き当て財産が著しく減少するおそれがあること、また、集合動産及び集合債権の価値を維持するためには労働債権者や仕入れ先などの一般債権者の寄与が必要であり、さらには、これらの一般債権者の寄与によってその価値が増大することもあることから、このような点で、集合動産譲渡担保権等には特定物を目的とする譲渡担保権その他の担保権とは異なる特殊性があり、その価値の全てが担保権者の債権の満足に充てられるのは相当とは言えないということを考慮したものであります。
○篠田委員 ありがとうございます。
本法制に関しては、一定の組入れ義務を設けていただいたということは大変ありがたいことではあるかなと思いますが、この破産財団への組入れ義務がしっかりと機能をするためには、やはり破産管財人の責務が重要となると考えます。
破産管財人の責務がしっかりと果たされるための担保は用意をされておりますでしょうか。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
集合動産譲渡担保権者等に組入れ義務が発生するのは、設定者について法的倒産手続が開始した場合でございます。例えば、破産手続におきましては、選任された破産管財人がその実行をした譲渡担保権者と交渉し、組入れ額を算定するために必要な資料を収集した上で、組入れ義務の履行を請求することとなると考えられます。その上で、組入れ義務が履行された後は、破産手続の中で、労働債権者を含む債権者に対し配当が実施されることとなります。
こうした破産管財人の職務に関しまして、破産管財人は、善良な管理者の注意をもって、その職務を行わなければならないこととされており、関係法令の定めに従い、財団の管理、処分等を適切に行うことが期待され、裁判所がこれを監督することとされておるところでございます。
○篠田委員 実務でしっかりと実効性ある運用がなされることを期待したいというふうに思います。
私のところに、会社が倒産しました、賃金が払われていません、どうしたらいいですかという御相談は本当に多く寄せられております。例えば、こういった、全てを担保で取られているようなケースだと、労働者の方が、倒産手続に入ったとしても、もう自分は配当にあずかれない、だから債権届出も諦めるというような方も出てくるのかなというふうに思います。
やはり、新しい破産財団への組入れ義務があって、配当を受けられる可能性があるということをしっかりと労働債権者にも知らしめる必要があると考えております。例えばですが、破産裁判所から労働債権者への破産開始決定の通知にこの制度の説明文書を同封するなどして周知を図るというようなことも一つ考えられるかなと思いますが、このような破産裁判所の新たな対応について、裁判所はいかがお考えでしょうか。
○福田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
委員御指摘のとおり、労働債権者に対して破産手続に参加するのに必要な情報が提供されることは重要であると認識しております。
このため、現在の破産手続の実務においても、労働債権者が債権届出をしないまま失権することがないよう、破産法の規定に基づき、破産管財人が労働債権者に対し、破産債権の届出に必要な情報提供を行うなどしているところでございます。
本法律案における組入れ制度について、労働債権者に対する情報提供をどのように行うのかについては、本法律案の成立後、破産事件を担当する個々の裁判所において検討をすべき事項になりますので、現時点で事務当局としてお答えをすることは困難ではありますが、配当原資となる破産財団の形成に関する情報を手続のどの段階で誰が提供するのが最も効果的かという観点から、適切な検討がされることになると考えております。
○篠田委員 ありがとうございます。
しっかりと実務で労働債権者に情報が行くようにしていただきたいと思います。
それから、この組入れ制度なんですが、担保権を一定制約する意義は理解をいたしましたが、労働債権を含めた一般債権者の保護にどの程度寄与するかというのはちょっと若干疑問がございます。
この一般債権者には、いわゆる公租公課の、租税の債権者も含まれるのでしょうか。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘の組入れ制度の立案過程におきましては、譲渡担保権者から倒産財団への組入れ額をどのように算出するかなどについて様々な議論がありましたが、最終的には、制度の実効性を考慮して、目的である財産の価値を基準とする考え方を採用することとしております。
そして、現在の金融実務におきましては、被担保債権額が担保目的財産の価値を上回らないように管理しながら融資をするという手法も見られるようになっていることからしますと、組入れ制度は、一般債権者への弁済原資を確保することに資するものと考えております。
この一般債権者には、租税債権者も含まれております。例えば、破産手続においては、労働債権のうち、その開始前三か月間の給料の請求権等は財団債権と扱われ、租税債権とは同順位として扱われます。そのため、組入れ義務が生じた場合には、財団債権である労働債権が残存している限り、組入れの結果として、労働債権への弁済額は増加することになります。
したがって、組み入れられた額が租税債権者を含む一般債権者への弁済原資になるとしても、労働債権保護の観点から、相当程度の実効性を期待することができるものと考えております。
○篠田委員 実際に破産事件の配当表なんかを見ても、やはり中小企業というのは、たくさん実は税金の滞納、あとは社会保険料の滞納をしている事例が大変多くありまして、給料の三か月分が財団債権として租税債権と同列ということになっても、ほとんど大きな金額が租税債権の配当に充てられて、実際になかなか労働債権の配当に充てられないということで、何か本当に、この企業を支えてきた労働者の賃金、未払い賃金が租税債権と三か月だけ同等、そしてほかのものは劣後するということは、私は政策としていかがなものかというふうに日々思うところでございます。
賃金や退職金などの労働債権というのは、労働者と家族のほぼ唯一の生活の糧でありまして、倒産などにより賃金が支払われなければ、そこでもう生活が詰んでしまうという、まさに衣食住が欠けるという状態になってしまいます。
労働債権を社会政策的にやはり特別に保護する必要性は非常に高く、これまでも様々な、国会の中で、労働債権の優先順位を、担保法制においてもっとしっかりと特別な地位を与えるべきであるということが議論をされております。
これに関して、法務大臣、いかがお考えでしょうか。
○鈴木国務大臣 まず、篠田先生、実務の現場での様々な御経験ということで、今も拝聴させていただいておりました。
私どもとしては、この労働債権でありますけれども、これは民法において、債務者の総財産を目的とする一般の先取特権が付与をされております。加えて、破産手続におきましても、その一部、これが財団債権とされておりますなど、一定の優越的な地位、これが与えられていると私どもとしては認識をしているところであります。
その上で、倒産法制全体において、この労働債権の優先順位、これを更に引き上げるべきではないか、そういった御趣旨だと思いますけれども、そこについては、抵当権等の約定担保権、これを設定する際に、これに優先する債権はどの程度あるのか、どの程度発生をするのか、そういった予測、これは困難ということがあります。そういった中で、担保取引の安定性を害するおそれがあるのではないか、あるいは、抵当権や質権等の不動産に設定できる担保権と労働債権との関係を全面的に見直す必要が生じてまいりますので、その際には実務に対する重大な影響が生じ得るのではないか、こういった様々な課題があると我々としては認識をしておりまして、そういった意味では、慎重な検討が必要ではないかと考えております。
ただ、法制審の担保法制部会においても、倒産法制における労働債権の優先順位につきましては、債権の倒産手続における優劣関係全般に関わる問題として倒産法制の見直しの中で検討すべきである、そうした御意見があったのも事実であります。
そういった中で、私どもといたしましては、こうした御意見、これも今の委員の指摘も含めてしっかり受け止め、まずは倒産局面における各債権者の債権の満足の状況等についてのやはり実態調査、これを行っていくことが必要であろうということで、こうしたことも検討しているところでありまして、その結果を踏まえて適切に対応してまいりたいと考えております。
○篠田委員 二〇〇三年の民法等の改正法のとき、そしてまた二〇〇四年の改正破産法の附帯決議において、労働者の生活保持に労働債権の確保が必要なことを踏まえて、債権の優先順位について検討を進め、所要の見直しを行うことや、ILO第百七十三号条約を早期批准をするよう努める旨が明記をされております。もうこの課題も本当に何十年も積み残した課題の一つでありますので、是非前進をさせていただきたいというふうに思っております。
次に、破産財団から満足な労働債権の回収ができない場合には、相談に来た方に、未払い賃金立替え制度という制度がありますよということで、その相談者にパンフレットをお渡しして、この制度の利用を促しております。
しかしながら、この未払い賃金立替え制度というのは、事実上の倒産については中小企業のみが対象、一定規模の企業では法的破産と、法的な倒産が条件となっています。大企業においても事実上の倒産が生じることからすれば、要件の見直しを行うべきではないかと考えております。
また、立替え払いの対象なんですけれども、退職手当を含む未払い賃金総額の八割になっているものの、退職時の年齢に応じた上限があります。一時金や解雇予告手当なども対象外とされておりまして、一時金や解雇予告手当も対象に加えることが必要であると考えます。この未払い賃金立替え制度、二〇〇二年を最後に変更されていない状況にありまして、今、物価高等々で賃金水準も変わっております、増額などを検討すべきではないのでしょうか。
○田中政府参考人 お答えいたします。
未払い賃金立替え払い制度は、倒産等によって賃金の支払いを受けられない労働者の差し迫った生活を救済する必要性に鑑みまして、労働者からの請求に基づき、未払い賃金のうち一定の範囲のものを事業主に代わって政府が弁済する、こういう制度でございます。
本制度において、未払い賃金の弁済を受けられる要件を明確にする、こういう観点から、原則として法的倒産のみを対象にしているところでございますが、中小企業につきましてはやはり事実上の倒産が多い、こういうことから、例外的に事実上の倒産についても中小企業については未払い賃金の対象とする、こういうような取扱いをしております。
また、賃金の立替え払い制度は労働者の救済のための制度ではありますが、一方で、賃金の支払いは本来個々の事業主の責任の範囲に属するものであることから、やはりモラルハザードを防止する、こういう観点からも、立替え払いの対象となる賃金、上限額についても一定の範囲のものに限定をしている、こういう状況でございます。
こうした立替え払いの枠組みについて、現時点で直ちに大きな見直しを行うということは考えてはおりませんが、引き続き、制度の適切な運用に努めるとともに、必要な取組でありますとか運用の改善にはしっかり努めていきたいというふうに思っております。
○篠田委員 今コロナのゼロゼロ融資の返済が始まるなどして、本当に倒産がこれから増加する可能性がございます。労働者の生活を守るためにこの未払い賃金立替え払い制度の拡充は必要だと思いますので、是非前向きに御検討をお願いしたいと思います。
最後に、事実上の倒産と労基署で認定されない場合には、実態として賃金支払い能力が欠けているケースでも対象外となってしまうようなことが問題となっています。法的整理をしたくても、申立ての弁護士費用が用意できないとか裁判所に対する予納金を用意できないとかで、事実上、法的倒産をできない事業者をたくさん知っております。そういった中で、事実上の倒産と認定がされず未払い立替金制度を労働者が利用できていない割合はどの程度あるのか、その実態とそれに対する対応策を最後に伺います。
○田中政府参考人 お答えいたします。
未払い賃金立替え払い制度におきましては、中小企業事業主がいわゆる事実上の倒産状態になったことにつきまして、労働者からの認定の申請がなされた場合に、労働基準監督署が必要な調査を行った上で認定の可否を判断しているというところでございます。
令和五年に事実上の倒産について認定の申請がなされた件数は千三百五十七件でございます。また、同年に認定された件数は九百七十八件ということでございます。同年に認定された件数、必ずしも全てが令和五年に申請されたものではございませんけれども、これを機械的に計算いたしますと約七割が認定されているということですので、三割弱というところが不認定になっている、こういうことでございます。
労働基準監督署におきましては、各種資料の収集や聞き取りなど必要な調査を行った上で、慎重に判断を行っているところでございますが、本来認定されるべき事案が不認定となることのないように、引き続き的確に対応してまいりたいというふうに考えております。
○篠田委員 三割が不認定で、それで利用できない方々が実際いらっしゃるということなので、そこはしっかり実態調査をした上で前向きに改善していただきたいと最後にお願いを申し上げます。
ありがとうございました。
○西村委員長 次に、柴田勝之さん。
○柴田委員 立憲民主党・無所属の柴田勝之です。よろしくお願いいたします。
今回の法律案、譲渡担保や所有権留保について従来から判例や実務で認められてきた内容を法律で明確にした部分が多いというふうに理解しておりますが、七十一条と九十五条で定められております集合動産と集合債権の譲渡担保権者による超過分の金銭の組入れ義務、これは新しい規定であり、労働債権保護の観点からも意義のある規定と考えますので、その観点から伺いたいと思います。
まず、超過分の金銭の組入れの具体的な手続、また、その際の破産管財人等、また担保権者、それぞれの義務や責任について御説明をお願いいたします。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
譲渡担保法案は、集合動産譲渡担保権又は集合債権譲渡担保権が実行された場合において、設定者について破産手続開始の決定等があったときは、譲渡担保権者が実行により回収した額のうちの一定額を破産財団等に組み入れなければならないこととしております。
このように組入れ義務が発生するのは設定者について法的倒産手続が開始した場合でございまして、例えば、破産手続においては、破産管財人がその実行した譲渡担保権者と交渉し、組入れ額を算定するために必要な資料を収集した上で組入れ義務の履行を請求することとなると考えられます。
管財人は、善良な管理者の注意をもってその職務を行わなければならず、その注意義務の一つとして、このような調査を実施し、担保権者に対して適切に組入れを求めて財団の増殖を図ることが求められると考えられます。そして、私的実行した集合動産譲渡担保権者等は、組入れ義務を負う場合には、管財人の求めにより、例えば、組入れ義務を算定するために必要な資料を提供した上で適切にこれを履行することが求められると考えられます。
○柴田委員 それで、先ほど申し上げたように、この制度は新しい制度でございますので、担保権者による組入れ義務の履行が実務において円滑に行われるための方策、これは特に必要性が高いと考えておりますが、どのような方策を予定されておりますでしょうか。また、それでも組入れ義務が履行されない場合にはどういう対応が考えられるのか、御説明をお願いいたします。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
組入れ制度は、一般債権者に対する弁済原資を確保するため、倒産財団に譲渡担保権者に対する債権を与えたものであり、その履行がされないという場合には、その義務の履行を求めて訴えを提起し、必要に応じて強制執行等によってその履行を実現することになると考えられます。
組入れ請求権は、設定者について倒産手続が開始した場合に発生いたしますが、例えば、破産手続においては、善良な管理者の注意義務を負う破産管財人が財団に帰属する財産の管理処分権を有しており、組入れ請求権も行使することになるため、適切な調査や請求がされると期待することができます。
法務省といたしましては、倒産実務に携わる実務家も含め、新たな制度を利用する方に十分な情報提供がされるよう、十分な周知、広報に努めてまいりたいと考えております。
○柴田委員 それで、そもそも、破産管財人等が担保権者に組入れを求めると今お話がありましたが、そのためには、対象となる譲渡担保権が実行された事実あるいはその内容を把握することが必要になりますが、その把握はどのようにしてなされるものなんでしょうか。お答えください。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
集合動産譲渡担保権等が実行された後に、設定者について例えば破産手続が開始したという場合には、破産管財人は、通常は私的実行がされた旨を設定者からの情報提供により把握すると考えられます。破産管財人としては、まずは設定者の有する資料や登記情報等を検討して、譲渡担保権者、被担保債権額、その消滅額等を調査し、組入れ請求権の有無及び額を検討することになろうかと思います。
また、譲渡担保法案では、私的実行をするときは、担保の目的である動産の見積価格や算定根拠、被担保債権の額等を設定者に通知しなければならないこととしているため、この通知を確認することができる場合には、この通知は有力な資料となると考えます。設定者側の資料のみでは資料が不十分な場合には、譲渡担保権者と交渉し、組入れ額を算定するために必要な資料を収集することも考えられます。
なお、設定者が譲渡担保権の実行に係る通知の書面を紛失したという場合には、設定者や譲渡担保権者から必要な情報を収集することになると考えられます。
○柴田委員 それで、この制度では、債権の元本部分については保証されているといいますか、組み入れなくてよいということになっております。したがって、担保権者が目的財産をあえて安く評価して組入れを免れようとすることが容易に予想されると思います。
例えば、譲渡担保の目的動産の価値が一億円、債権の元本額が九千万円、一千万円は利息、損害金に充てましたという場合には、この一千万円は本来組入れの対象になるはずなんですが、これを九千万円以下の金額であえて評価して譲渡担保権を実行してしまうと、元本の範囲内ということになりますので、組入れはしなくて済む。そして、実行によって取得した動産を後で一億円以上で売却して、一千万円の利益を得る。こういったことも予想されるわけですけれども、破産管財人などは、目的財産の評価の妥当性をどう確認するのか、そして、評価が安過ぎる、不当であると認められた場合には、どのようにしてこれを是正して組入れ義務を履行させるのか、お答えください。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
譲渡担保法案では、譲渡担保動産の価値に関する担保権者の判断を設定者に認識させ、その合理性について検討する機会を与えるために、帰属清算の通知及び処分清算譲渡をした旨の通知におきまして、譲渡担保動産の見積価額やその算定根拠を通知しなければならないこととしております。破産管財人等としては、通知により示された見積価額等算定根拠等に加え、譲渡担保権者が実際に処分清算方式により譲渡した価額について情報を収集するなどして、その評価の妥当性を確認することとなると考えられます。
評価が不当であった場合でございますが、譲渡担保法案は、帰属清算方式又は処分清算方式による私的実行があった場合には、消滅する被担保債権の額は、担保の目的である財産の客観的な価額に基づいて算定することとしております。したがって、譲渡担保権者が目的である財産の価値を不当に低く見積もって私的実行をしたといたしましても、私的実行によって消滅する被担保債権の額が減少するものではなく、破産管財人等は客観的な価額に基づき算定された組入れ額を主張することができ、譲渡担保権者が任意に履行しないという場合には、最終的には訴えを提起してこれを回収することになると考えられます。
○柴田委員 今の御説明だと、例えば、譲渡担保権者が九千万円と評価したにしても、客観的に一億円と評価されるものであれば、管財人は、これは一億円です、一千万円繰り入れてくださいということが言えるということかと思いますが。
これは、さっき申し上げた例で、実行するとき九千万円だったんだけれども、実際に後で一億円で売りましたというような事実、そういう事実があった場合には、管財人としては、これはやはり一億円だったんじゃないかと言える材料になるという理解でよろしいんでしょうか。どうやってその客観的な価値を、さっきは何か評価の方法などについてちょっとおっしゃっていましたけれども、そういった場合、後で幾らで処分したかとか、そういうことも考慮して管財人の方で財産の価額を評価することができるということになりますでしょうか。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
財産の評価時、財産の価額の評価時をお尋ねというふうに理解をいたしましたが、これは、被担保債権の消滅時、すなわち、私的実行の効果が発生した時点の価値ということになりますので、その時点の価値が幾らであったかということを管財人が勘案して行動するということになろうかと思います。
○柴田委員 ありがとうございます。
その辺、なかなか難しい問題があるなというふうに思っております。
次に、本法律案の七十一条五項には、組入れ義務の履行を確保するための担保の請求が規定されていますが、この条文に言う、必要があるときの意義、また、ここに言う、担保というのは具体的にどのようなことが想定されるのか、また、この請求は、いつ、どのようにして具体的に行うのか、請求にもかかわらず担保権者がこれを履行しない場合にはどのような対応が可能なのかについて、御説明をお願いいたします。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
譲渡担保法案では、組入れ義務の確実な履行を確保するという観点から、設定者及びその債権者は集合動産譲渡担保権者等に対し相当の担保を請求することができることとしております。これは、集合動産譲渡担保権者等は譲渡担保権の実行後に設定者について倒産手続が開始された時点で組入れ義務を負うことになりますので、それまでに集合動産譲渡担保権者等の資力が悪化して組入れ義務を履行することができない事態が生ずるおそれがあることを考慮したものであります。
ここで、履行を確保するため必要があるときとは、この制度趣旨からいたしますと、組入れ義務を負う譲渡担保権者の属性や資力の状態等に照らし、将来、設定者について法定の倒産手続の申立てがされた時点において組入れ義務が履行されない蓋然性があるときをいうと考えられます。
また、相当の担保の請求とは、組み入れられるべき金銭を確実に回収するという観点から、組入れ請求権を保全するために必要かつ十分な人的又は物的担保の提供を求めることをいうと考えられまして、組入れ義務を負う譲渡担保権者がこれを任意に履行しないという場合には、裁判上、相当の担保の請求をすることができると考えられます。
○柴田委員 それで、担保請求というのはいろいろな法律にあるんですが、ちょっとこの法的手続というのは私もやったことがありませんし、余り、その実効性には疑問があるように思っております。
それで、担保請求以外の保全方法、例えばその金額を供託させるとか、そういったことは考えられないのでしょうか。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
法制審議会担保法制部会におきましては、組入れ義務の実効性確保の観点から、新たな供託制度を導入し、組入れ義務を負う集合動産譲渡担保権者及び集合債権譲渡担保権者に対し、組み入れるべき金銭の供託を義務づける制度を設けるべきとの意見も出されました。
しかし、このような供託制度を設けることにつきましては、譲渡担保権の実行により回収された金銭は被担保債権の弁済に充てられたのであるから、その一部を実行後直ちに設定者に返還すべき債務を観念することはできず、このような債務が認められない以上、債務が存在することを前提とする弁済供託を義務づけることはできないですとか、債務を負っていないにもかかわらず供託を義務づけることは、譲渡担保権者が回収した金銭の管理処分権に対する大きな制約になり得るといった課題がありまして、このような供託制度は設けないこととされたものでございます。
○柴田委員 先ほど来申し上げているように、この制度、新しい制度でございますので、労働債権者の保護のためにこの制度が使えるということを周知する、あるいは労働債権者が担保請求しやすくなるようなマニュアルとか書式を作る、そういった支援策も必要ではないかと思っておりますが、その点についての当局のお考えをお聞かせください。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
組入れ義務の履行を確保するため必要があるときは、設定者は譲渡担保権者に対し相当の担保を請求することができるとしていることは先ほどのとおりですが、もっとも、集合動産譲渡担保権等の担保権者や設定者には様々な者が含まれますため、担保権者の資力にリスクがあるにもかかわらず、設定者が適切に担保請求を行わないという場合もあり得るところでございます。
そこで、譲渡担保法案は、労働者を含む設定者の債権者も担保請求をすることができることとしております。労働者が担保請求をする必要がある場合を想定いたしますと、労働者に対して適切に制度の情報提供がされることが重要になってまいります。
法務省といたしましては、組入れ制度や担保請求が実務において円滑に運用されるようにするという観点から、厚生労働省と連携し、労働問題等の相談窓口において組入れ制度や担保請求に関する周知や関係機関の案内等の支援が適切にされるよう、組入れ制度や担保請求の趣旨、内容について周知に努めてまいりたいと考えております。
○田中政府参考人 お答えいたします。
本法案におけます組入れ義務の周知につきましては、労働者が担保請求をする場合がある場合も想定をいたしまして、労働者に適切に情報提供をなされることが重要であるというふうに我々も考えております。
このため、厚生労働省といたしましても、法務省とよく連携をいたしまして、都道府県労働局の総合労働相談コーナーでありますとか、労働基準監督署でありますとか、相談窓口を通じまして、しっかり本制度の趣旨、内容について労働者の方に、周知に努めてまいりたいというふうに考えております。
○柴田委員 そもそもこういう制度があるということを知らないと相談のしようもありませんので、その辺も含めた周知をお願いしたいと思います。
そして、倒産手続の中で労働債権者が保護されるためにも、この組入れ義務について実効性ある運用がなされることが重要と考えますが、今日のこのやり取りを踏まえて、この点についての法務大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
○鈴木国務大臣 この組入れ制度、まさに新しい制度ということで、集合動産譲渡担保権そして集合債権譲渡担保権について、一般債権者の弁済原資を確保するために、その優先弁済権の一部を制限する、そういった制度ということで、まさにこれまでの民法上の担保権にはなかった新しい制度であります。
そうした新しい制度、この円滑な運用の観点、今、民事局長等々からも答弁させていただきましたけれども、やはり、労働者も含めて、この制度を利用される方に適切に情報提供さらにはそうした支援等がされるように、この制度の趣旨、内容についてはしっかりとした周知をしていくということ、まさにこれが実効性のある運用ということになるためにも極めて重要と考えておりますので、私どもといたしましても、引き続きそうしたことを踏まえながら、厚生労働省とも連携をして必要な取組をしっかりと進めていきたいと考えております。
○柴田委員 ありがとうございます。
次に、集合動産譲渡担保について少しお伺いいたします。
本法律案の四十条によれば、譲渡担保権の対象となる動産を種類と所在場所その他の事項によって特定されるということにされておりますが、種類と所在場所によって特定するという場合には、当該種類の動産を所在場所とされている特定の倉庫などに運び込むことによって譲渡担保権が及ぶようになる、そして運び出せば譲渡担保権が及ばなくなるという理解でよろしいでしょうか。教えてください。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
譲渡担保法案におきましては、集合動産譲渡担保契約について、動産の種類のほか、所在場所その他の事項によって定められた範囲に属する動産を一体として目的とすることができることとしております。そして、設定者は、このように定められた範囲に属する動産を処分することができることとしておりまして、このような処分がされた場合には、当該動産については集合動産譲渡担保権の効力が及ばなくなります。
委員御指摘のとおり、集合動産譲渡担保権の目的である集合動産の範囲が動産の種類と所在場所によって定められている場合には、当該種類に係る動産が当該所在場所に搬入されたことにより集合動産譲渡担保権の効力が当該動産に及び、当該所在場所に属する当該種類に係る動産が設定者の処分権限に基づいて搬出されたことにより集合動産譲渡担保権が当該動産に及ばなくなると考えております。
○柴田委員 そうしますと、例えば会社が破産しそうになったときに、譲渡担保権者を利する意図、逆に言えば他の債権者を害する意図ということになりますが、所在場所の倉庫に急に大量の動産が搬入されるというようなことも考えられると思いますが、このような場合、他の債権者や破産管財人が取り得る方策はありますでしょうか。教えてください。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
集合動産譲渡担保権が設定されている場合に、その設定者が譲渡担保権の効力の及ぶ動産を不当に増加させると、実質的には新たに担保権が設定されたのと同様に、一般債権者が害されることとなります。そのため、このような行為についても、担保権設定行為と同様に、民法の詐害行為取消し請求や、破産法等の否認制度の趣旨が妥当をいたします。
譲渡担保法案は、設定者が動産を集合動産譲渡担保権の目的である集合動産に加入させた場合について、これを担保の供与とみなして民法の詐害行為取消し請求の規定を適用することとしているとともに、専ら譲渡担保権者に弁済を受けさせる目的でしたときは、その動産を目的とする担保の供与があったものとみなして、破産法等の否認の規定を適用することとしております。
委員御指摘の行為については、これらの制度を利用することにより、加入した動産に担保権が及ばないようにすることができると考えております。
○柴田委員 逆に、譲渡担保権者を害する意図で所在場所の倉庫から動産を運び出して空っぽにしてしまうというようなことも考えられますが、そのような場合に取り得る方策について、本法案四十二条一項の担保権者を害することを知っていたときの意義も含めて御説明をお願いいたします。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
譲渡担保法案では、集合動産譲渡担保契約については、設定者は集合動産の範囲に属する動産を処分することができることとしております。この処分権限は、譲渡担保権の負担のないものとして動産を処分する権限を意味しております。
もっとも、このような動産の処分を無制限に認めますと、譲渡担保権の目的である財産が不当に流出して担保価値が減少し、譲渡担保権者の優先弁済権を害するおそれがあります。そこで、譲渡担保法案では、設定者は譲渡担保権者を害する行為を、そのことを知ってすることはできないこととし、処分権限に制限を加えております。
譲渡担保権者を害するとは、その行為がなければ譲渡担保権者が当該動産から回収することができたはずの債権を回収することができなくなるという不利益を譲渡担保権者に与えることをいうものと考えております。
そして、譲渡担保権者を害することを知って集合動産の範囲に属する動産を譲渡したときは、設定者の処分権限の範囲を超えるものでありますので、相手方は完全な所有権を取得することはできないことになります。
○柴田委員 労働債権保護の方策全般について幾つか伺います。
そもそも、本法律案で、超過分の金銭の組入れ義務の対象を集合動産、集合債権の担保のみにした理由、また法的倒産手続の場合のみに限定した理由、さらに、七十一条一項に定める組入れ部分、これを、目的動産の価額の九割を超え、しかも元本を超える部分のみに限定した理由、これらについて御説明をお願いいたします。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
集合動産譲渡担保権等は、一定の範囲に属する設定者の財産を一括して担保の目的とするものでありまして、その範囲の定め方によっては設定者の倒産時において一般債権者のための引き当て財産が著しく減少するおそれがあること、集合動産及び集合債権の価値を維持するためには労働債権者や仕入れ先などの一般債権者の寄与が必要でありまして、さらには、これらの一般債権者の寄与によってその価値が増大することもあることから、集合動産譲渡担保権等には特定物を目的とする譲渡担保権その他の担保権とは異なる特殊性があり、その価値の全てが担保権者の債権の満足に充てられるのは相当とは言えないと考えております。
そのため、集合動産譲渡担保権等については組入れ義務を設けることとしておるものでございますが、他方で、既に質権や抵当権などの個別の財産を目的とする担保権においては同様の制度は存在しません。そのため、個別の動産等を目的とする譲渡担保権についても組入れ義務を設ける場合には、質権や抵当権などの他の担保権との整合性に関しても問題になるところでございますので、組入れ義務は集合動産譲渡担保権等のみを適用対象として設けることとしているものでございます。
法的倒産手続のみを対象にした理由でございますが、設定者が法的倒産手続の開始に至らず事業を継続しているという場合には、設定者の財産から一般債権の回収を図ることもなお期待することができる一方で、法的倒産手続が開始した場合には、一般債権者の弁済原資の確保の必要性が高いと言えることなどを考慮したものでございます。
さらに、目的価額の九割を超える利息、損害金等を、相当部分のみを組入れ部分とした理由でございますが、譲渡担保権の目的である財産の価値の維持形成に一般債権者が寄与したことを考慮して、一般債権者への弁済原資を確保するという制度趣旨を踏まえますと、組入れ価額の算出に当たりましては、集合動産又は集合債権の価額の一定割合に相当する額を基準とすることが相当であると考えられます。
その上で、譲渡担保法案では、その一定割合について、実務上、破産手続における担保目的物の任意売却の際に目的物の価額の三%から一〇%程度が破産財団に組み入れられることがあることを参考にいたしまして、集合動産又は集合債権の価額の一〇%を基準とすることとしておるものでございます。
○柴田委員 本法案によって動産とか債権担保の活用を拡大することが予想されますが、それによって労働債権の原資がますます減少する結果になるのではないか、さっき篠田委員からも指摘がありましたが、そういう懸念については当局はどのようにお考えになっておりますでしょうか。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
一般論といたしまして、動産や債権を目的とする担保が中小企業等の資金調達の手段として活用されることについては、これによって調達された資金が中小企業等の債務者の財産の一部となり、事業の拡大にもつながることからいたしますと、労働債権者の利益にも資するものと考えておるところでございまして、そのため、動産や債権を目的とする担保の活用それ自体が労働債権者の不利益となるとは認識をしていないところでございます。
譲渡担保法案では、担保権の及ぶ範囲が広範なものとなりがちな集合動産譲渡担保権又は集合債権譲渡担保権については、一般債権者への弁済原資を確保するという観点から新たな組入れ制度を創設しておりまして、これによって譲渡担保権者と労働債権者を含む一般債権者との利益のバランスを図ることにしておるところでございます。
法務省といたしましては、このような組入れ制度が倒産手続において円滑に運用されるよう、組入れ制度の周知、広報に努めてまいりたいと考えております。
○柴田委員 先ほど篠田委員からも指摘がありましたけれども、労働債権の履行を確保するために、倒産法制全体の整合性というお話もありましたが、倒産法制全体において労働債権の保護の拡大の検討を今後お願いしたいと思います。
最後に、法務大臣にその点の御見解をお願いいたします。
○西村委員長 鈴木大臣、時間が来ていますので、簡潔にお願いします。
○鈴木国務大臣 先ほど篠田委員に御答弁申し上げた内容とかなり重複いたしますので、同様の状況の中で、そうした様々な御意見、これは法制審の中でもございましたので、私どもといたしましては、こうした先生も含めたこの御意見、しっかりと踏まえて、まずは倒産局面における各債権者の債権の満足の状況等についての実態調査、これを行うことを検討しておりますので、その結果を踏まえて適切に検討してまいりたいと思います。
○柴田委員 ありがとうございました。
○西村委員長 次に、米山隆一さん。
○米山委員 それでは、会派を代表して御質問いたします。今の時間の分は、こちらで調整、私の部分で調整いたします。
また、譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律案について御質問いたします。
今までの質問の中にも出てきたんですが、この法案は、今まで実務上又は判例上もある程度確立したものを法律に落としたという法案でございますので、大きな異論があるというわけでもないというのが大勢かとは思うんですけれども、それぞれ細かいところについてなど聞かせていただきたいと思います。
お手元の資料を御覧ください。
一ページ目なんですけれども、譲渡担保契約でどんなものがなされているかというのを見ると、ほうほうということで、太陽光発電と売電債権が圧倒的多数と。これは考えてみるとなるほどということで、太陽光発電というのは、なかなか、火力発電を中小企業が造れるかというと造れないわけですが、小規模事業者が運営できる。しかも、売電債権に関しては、少なくとも十年間、固定価格で買取りが確実に保証されている、その後も長期にわたって売電が可能で、しかも、設備自体が、太陽光パネルですからね、比較的汎用性が高い設備で、一度運営が始まってしまえば、その後の業務はメンテナンスですから、債権者がもしかしてこの設備を取得したっていいし、転売で換価することも可能であろうということで、きっと、太陽光発電を動産譲渡担保にして融資するとか、そういうことが起こるんだなというのを確認したところなんでございます。
太陽光発電ですけれども、とはいえ、太陽光パネル等の主要部品を、十から二十年単位で順次交換しなければいけないわけです。
太陽光発電施設に対して譲渡担保、動産譲渡担保が設定された後に太陽光パネルを張り替えた場合に、この新たなパネルは譲渡担保の対象になりますでしょうか。そしてまた、そんな主要な部品ではなく、例えば一部の銅線のような小さな部品を交換した場合はどうなりますでしょうか。御見解を伺います。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
委員お尋ねの事案におきましては、太陽光パネルや銅線によって構成される太陽光発電設備を一つの動産と評価して、それに対して譲渡担保権を設定したものと考えられます。
したがいまして、太陽光パネルを取り替えたという場合には、その新しい太陽光パネルが譲渡担保権の目的物の一部となりまして、その効力が及ぶことになると考えられます。銅線を取り替えた場合、小さい部品を交換した場合でも同じように考えております。
○米山委員 ああ、そうなんですね。これは結構、それでいいんですかみたいなところがあって、要は、動産として結構変わってしまうことだってあるわけですよね。
これは、集合動産譲渡担保ならそれはそうなんだろうと思うんですけれども、個別の太陽光パネルとかが思いっ切り変わった場合でも、それは、じゃ、譲渡担保の対象になるということでいいんですね。何か、テセウスの船的な話なんですが。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
仮に太陽光発電設備としての同一性が失われるような交換ということになりますと、それは債務者の担保物の保存義務等の問題が出てくるかと思いますが、そうには至らないような状態で、太陽光発電設備としての同一性は維持した上で部品を交換するというようなことであれば、その交換された部品は元々独立の動産であったわけですけれども、交換されたことによって独立性を失ってその設備の一部となって譲渡担保権の対象になる、こういうふうに理解をしております。
○米山委員 そうなんでしょうねということなんですけれども、結構これは、やはり哲学的な問題は突きつけたりはするんですよね。一体どこから同一性が変わるのであろうかと。
特に太陽光パネルみたいなものというのは、今の太陽光パネルと例えば二十年後は全然違いますみたいなものが一斉に張り替えられた場合、どうするのかと。さらに、例えばそのときに新しい融資を受けて、いや、こっちはこっちなんです、古いのは古いのなんですみたいな話があったときにどうするんだみたいなこともあろうかと思います。結局、それはこれから実務や判例を積み重ねて分かるんでしょうねということだとは思うんですけれども、そんな、結構難しい問題ありますよねと。
特に、ちっちゃな動産、本当に、こういうiPhoneみたいなものであればそれは分かりやすいんでしょうけれども、太陽光発電設備みたいなでかい動産といいますか、それはほとんど一般的な感覚では不動産でしょうみたいなものが動産として扱われて、むしろメインな融資先なわけですから、譲渡担保設定先なわけですから、そういうことが起こるということを指摘させていただきたいと思います。
さらに、次に質問させていただきますけれども、この太陽光発電設備から銅線が大量に盗まれる、最近ありますよね、という事態が生じて、でも、幸いにして犯人が見つかって損害賠償を得られたとします。このとき、単純な動産譲渡担保の場合には、動産担保権者は、その損害賠償に譲渡担保権が及んで、これを差し押さえることができるけれども、集合動産譲渡担保の場合には、譲渡担保権が及ばずに、これを差し押さえることができないということになろうかと思うんですけれども、その理解でよろしいでしょうか。また、同じような事態であるにもかかわらず、法形式の僅かな違いでこのような差が生じることは妥当かということについて御見解を伺います。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のとおり、個別の動産を目的とする譲渡担保権について、目的である動産の盗難により設定者に損害賠償請求権が発生したという場合には、譲渡担保権者はこれに対して物上代位権を行使することができます。
他方で、集合動産を目的とする譲渡担保権につきましては、目的である財産の盗難により設定者に損害賠償請求権が発生した場合でも、設定者が動産の補充等によって集合動産の全体としての担保価値を維持することができるという間は譲渡担保権に基づく物上代位権を行使することはできないことになっております。
これは、集合動産譲渡担保においては、設定者は動産の補充等によって集合動産の全体としての担保価値を維持する義務を負っているということ、それから、集合動産譲渡担保契約が設定者が動産を処分して事業を継続することを前提とするものであることなどを踏まえまして、担保権者による物上代位権の行使を直ちに認めるのではなく、設定者自身に金銭その他のものを取得させた上で事業を継続させるのが適切であると考えられたことによります。
個別の動産を目的とする譲渡担保権につきましては、集合動産を目的とする譲渡担保権とは異なりまして、目的である動産が変動することを予定しておらず、その補充等を求める担保価値の維持義務に関する規定は存在しないことなどから、担保権者による物上代位権を認める必要があるところでございます。
このように、委員御指摘の違いでございますが、設定者が負う義務の違い等に起因しているものでございます。
○米山委員 これも原則はそうなんでしょうけれどもということで、わざとそれが似たような感じになる例を出しているわけですよね。それは、ちっちゃなものだったら明らかにそうだと思うんですけれども、この太陽光パネルの発電設備みたいなものというのは、実は、動産譲渡担保で設定することも、集合動産譲渡担保で設定することもあり得るんだと思うんですよね。先ほど言ったみたいに、だって、動産譲渡担保の設定をしたって、修理したって、そのまま同一性は変わらないんだから、そのままになるんだったら、別に設定者としてそれでよかったりするわけですよね。ところが、今みたいに、どちらで契約するかによって、結構、そこの部分は大きく変わっちゃうということなんだと思います。
ちなみに、集合でなくて、要は、単なる動産譲渡担保だって、基本的にはその担保権は維持するべきなんだから、実は、動産譲渡担保の場合でも、四十四条みたいに、その物としての価値、その発電設備としての価値を維持できる限りは物上代位しませんよという規定を置いたって構わないというか、むしろ実態に即するんだと思うんですよ。
特に、今回メインのターゲットとしているのは、ちっちゃな譲渡担保みたいなものをメインのターゲットにしているわけじゃなくて、基本的には産業用の融資みたいなものを考えているわけなので、そうであれば、ちょっと規模の問題も確かにあるとは思うんですけれども、そういったものに関しては、四十四条のようなことを作って、担保のその価値を維持できる限りは物上代位しないという方がむしろ実態に即すると思うんですが、御見解を伺います。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
集合動産を目的とする譲渡担保権につきましては、設定者が動産を補充することなどによって集合動産の全体としての担保価値を維持する義務を履行することが可能であれば、担保権者による物上代位権の行使を直ちに認める必要はなく、設定者に事業を継続させるのが適切であると考えられるところでございます。
他方で、個別の動産を目的とする譲渡担保権につきましては、集合動産を目的とする譲渡担保権とはやはり異なりまして、目的である動産の担保価値の維持義務に関する規定は存在しないことなどから、委員御指摘のような、担保権の目的である動産が損傷した場合などに、設定者がこれを補修するなどしてその価値を維持するとは限らないところでございます。
そのため、担保権者による物上代位権を除外することについては、慎重に検討する必要があると考えております。
○米山委員 これも理屈上はそうなるのはそんなに異論があるわけでもないんですが、でも、やはり実態に応じて、これも運用しながら考えるところもあろうかと思います。
似たような問題で、今度は、太陽光パネルのせいで大規模な土砂崩れが発生して、大きな被害が出たんだけれども、太陽光発電設備自体は無事であるということが起こったとしましょう。
そうしたとき、事業が継続できれば、その中から損害賠償を払っていくんでしょうけれども、損害賠償額が大きくて、なかなか事業継続が困難と。ともかく、その事業体、今の事業者は事業継続は困難。それで、後から破産手続が開始されて、太陽光発電施設の換価価値が担保している融資債権額を下回っているということで、それは、じゃ、ともかく換価したものはひたすら融資に回すしかないということになった場合には、この土砂崩れに遭った被害者というのは、太陽光発電の売却時に得られた資金から損害賠償を得ることは可能でしょうか。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
委員お尋ねの事例で、太陽光発電施設について、譲渡担保権の実行として売却がされますと、これによって得られた金銭は、まず譲渡担保権者等に対する優先弁済に充てられまして、仮に清算金が生じた場合には、清算金は破産財団に帰属することになります。
お尋ねの事例の土砂崩れの被害者でございますが、破産債権者と位置づけられますので、破産手続の中で権利を行使することになります。清算金がある場合には、破産手続における配当を通じてこれが被害者の損害賠償請求権の弁済に充てられることはありますが、被害者は、売却代金債権そのものから優先弁済を受けることなどはできないことになっております。
○米山委員 これもそうはなるんですけれども、これも集合動産担保の七十一条のようなことで、一定の破産財団への組入れがあれば、これは労働債権という文脈でずっと語られていますけれども、実は、こういう場面でも利いてくるといいますか、ともかく、一定程度は破産財団に組み入れてもらえるんだったら、そこから損害賠償も受けられるかもしれないということが起こるわけです。
逆に言うと、やはり集合動産に関しては、実は集合動産譲渡担保については新しい制度なので、そういういろいろな手当てがされているんですけれども、動産譲渡担保に関しては、今回、それだって新しい制度と言えるとは思うんですけれども、条文になったのは新しいわけですから、でも、今までの判例に非常に縛られて、そういうものがないわけなんです。
でも、実際はこれで登記手続もできたし、非常に産業用にも使われるわけですから、なかなか、一定規模ということになると、立法上の難しさは、立法技術的な難しさはあるにせよ、やはりそういう動産譲渡担保に関しても、七十一条のような組入れというのを考えてもいいかと思うんですが、御所見を伺います。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
委員お尋ねの趣旨は、個別の動産を目的とする譲渡担保権につきましても、集合動産譲渡担保権のように組入れ制度を設けることにより、一般債権者への弁済原資を確保すべきでないかという問題意識と理解をしております。
組入れ制度が適用される集合動産譲渡担保権に当たるためには、多数の動産を目的としているというだけではなく、その範囲に、将来において新たに動産が加入することが予定されている必要がございます。
委員御指摘のような場面など、譲渡担保権の目的に新たな動産が加入することが予定されていない場合、すなわち個別の動産を目的とする譲渡担保権について組入れ義務を設けるとすると、質権や抵当権などの他の担保権について組入れ義務が設けられていないこととの整合性が問題になります。
このため、個別の動産を目的とする譲渡担保権を組入れ制度の対象とすることについては、慎重な検討を要すると考えておるところでございます。
○米山委員 これも、先ほど来ずっと、そこの哲学的な問題なんですけれども、じゃ、本当に、太陽光パネルを新たにしたらそれは入らないというのはその理屈だと思うんですけれども、何せ、動産譲渡担保でも、太陽光パネルを新たに替えたって、それは同一性があるんだから、それはそのまま担保の対象になり続けるというのであれば、やはり考えてもいいんだと思います。
要は、やはりこの譲渡担保も新しい制度なので、今までみたいな小さい動産だけではないといいますか、大規模設備みたいなものも動産として譲渡担保の対象になるというか、むしろ、それを予定しているものなわけなので、取りあえずはもちろん、従前との整合性ということであるんだと思いますけれども、今後、そういったことも改正の検討課題だと思いますので、是非その辺は履行状況を確認していただければと思います。
また、先ほど来お話のある労働債権ということになりますけれども、これも労働債権の話は先ほど来たくさんお話があったので細かくは繰り返しませんが、しかし、これを聞くのはやはり我が党の党是みたいなところがございますので、聞かせていただきたいと思うんですけれども。
これは結局、組み入れても何しても、基本的には、やはり優先権がない限りは、限界が非常にあるということだと思います。ですので、これは譲渡担保からちょっと離れてしまいますけれども、労働債権をきちんと確保するためには、やはり労働債権というのは、労働者やその家族の生活維持に必要不可欠であり、そして社会的公正、社会政策上の観点から特別な保護の必要性が高いものでございますので、特別の先取特権の創設を含めた優先順位の引上げに向けた検討を行う必要があると考えますので、御所見を伺いたいと思います。
あわせて、そのような内容を含めたILO百七十三号条約というものが、ずっと批准されずに、ある種つるしになっているわけでございますが、このILO百七十三号条約を早期に批准すべきだと考えますが、それぞれ法務大臣と厚労省担当者の御所見を伺います。
○鈴木国務大臣 まずは私の方から、前半部分についてということでありますけれども、先ほど来、各委員にも御答弁申し上げておりますところとかなり重複いたしますので手短に申し上げますが、やはり、様々な担保取引の安定性を害するおそれ、あるいは、実務に対する重大な影響が生じ得る等々の課題がありますので、私どもとしては慎重な検討が必要と考えておりますが、法制審の担保法制部会においても、今御指摘の担保法制における労働債権、この優先順位につきましては、債権の倒産手続における優劣関係全般に関わる問題として倒産法制の見直しの中で検討すべき、そうした御意見がありました。
そういったこともありますので、こうした御意見、あるいは、先ほど来、委員の皆様方からの御意見等もしっかり受け止めまして、まずは倒産局面における各債権者の債権の満足の状況等についての実態調査を行う、この検討をしておりますので、その結果を踏まえて適切に対応していきたいと私どもとしては考えております。
○田中政府参考人 お答えいたします。
ILO第百七十三号条約についてでございます。
労働債権の保護について定めるILO第百七十三号条約では、例えば、三か月以上の労働債権につきまして、税や社会保険等の債権よりも高い優先順位とすることが求められていると認識しております。
本条約の批准、締結については、国内法制との整合性等の観点から、なお課題が多いものだというふうに考えておりますが、引き続き検討に努めてまいりたいというふうに考えます。
○米山委員 これは、法務省は厚労省の顔色をうかがい、厚労省は法務省の顔色をうかがって課題が多いと言っていると進まないので、是非、両省で協力して進めていただきたいと思います。非常に重要なことでございます。
次に、動産譲渡担保の実行についてお伺いいたします。
これは、六十条で帰属方式についての実行方式が、また、六十一条で処分清算方式による実行方式が定められており、いずれも、処分時の見積額及びその算定根拠を通知する必要を定めるとともに、その見積価額は合理的な方法により算出したものでなければならないとされております。
しかし、動産譲渡担保を実行されるような状態になっている動産譲渡担保設定者、事業者は、動産譲渡担保権者、債権者に対して事実上の交渉力を失っており、ある種の買いたたきのような事態が発生することは容易に想像されます。
そのような事態、つまり、到底合理的とは言えない見積りでの通知がなされた場合、動産譲渡担保設定者、事業者はどのような対抗措置が取れるか、伺います。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
譲渡担保法案におきましては、帰属清算方式又は処分清算方式による私的実行があった場合には、消滅する被担保債権の額及び清算金の額は、担保の目的である動産の客観的な価額に基づいて算定することとしております。したがいまして、譲渡担保権者が担保の目的である動産の価値を不当に低く見積もって私的実行したとしても、私的実行によって消滅する被担保債権の額又は設定者が支払いを受ける清算金の額が減少するものではございません。
また、譲渡担保法案におきましては、帰属清算方式及び処分清算方式のいずれにおきましても、譲渡担保権者は設定者に対して、担保の目的である動産の見積価額を通知しなければならないとされているところ、その額は合理的な方法により算出したものでなければならないとしております。そのため、例えば、帰属清算の通知における譲渡担保動産の見積価額が著しく不合理だというときは、帰属清算の通知がされたと評価することができない場合もあると考えられます。このような場合には、帰属清算方式による私的実行は効力を生じないということになります。
このように、譲渡担保法案では、動産譲渡担保権者が譲渡担保動産の価値を不当に低く見積もって私的実行することについて、それによって設定者が不当な不利益を被ることがないようにするとともに、譲渡担保動産の価値の算定の合理性を確保するための措置を講じているところでございます。
○米山委員 でも、これは、今の御回答は、やはり条文上もそうなんですけれども、結局、対抗する手段は余りないというのが実情ですよね。だって、不当に価格が低かったら通知されたとみなされないといったって、債権者の方が基本強いわけですから、いや、そんな不当といったって、もうこの工場は俺のものだ、この太陽光パネルは俺のものだ、出ていけと言って、どやどやどやっと入ってこられたら、それはどっちが鍵を持っているのかみたいな話はありますけれども、それは相当難しくなっちゃうわけなんですね。
そこで、ある程度の対抗措置というものがやはり法定されていなかったらなかなか難しいんだろうと思いますので、そこは是非、一定程度、これもまた、やりながらということなんでしょうけれども、やっていただければと思いますよね。そうしないと、それはいかにも起こりそうということだと思います。
この不合理な見積りを、通知を防ぐには、恐らく、譲渡担保契約を設定するときに見積額の合理的な算定方法を定めるというか、それが常識的に考えて有効だと思うんです。契約書の中で、もし実行する場合にはこの会社とこの会社とこの会社の見積りを取れと書いてあれば、まあ、それはねという、特に大手をそこに書いておけば、それはそんなにおかしなことも起こらないでしょうということが起こるわけなんだと思います。
ただ、金融機関と事業者、若しくは大手の機材メーカーと中小の事業者のような関係では、適正なそういう契約をすること自体が難しいという可能性も少なくないと思います。それを防ぐためには、実は、見積金額の合理的な策定方法を定めることを何なら動産譲渡担保の登記事項としてしまえと。登記事項にしてしまえば、だって、それは決めなきゃいけないわけだから、登記せざるを得なくなる。そうすると、なるほど、じゃ決めましょうかということになるかと思うんですが、こういった対策を打つことについての御見解を伺います。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
担保の目的であります動産の見積価額は、私的実行する時点における様々な事情を踏まえまして、合理的な方法により算出すべきものであります。譲渡担保契約を締結する時点では、将来私的実行が行われる時点において、これらの諸事情が具体的にどのような状況にあるかということは必ずしも明らかではないと考えます。したがいまして、譲渡担保契約におきまして、事前かつ一律に見積価額の算出方法を定め、これを登記することを求めることについては、私的実行の時点における諸事情を踏まえた評価という観点からは慎重な検討を要するものと考えております。
私的実行によって消滅する被担保債権の額及び設定者が支払いを受ける清算金の額は、通知上の額ではなく、その動産の客観的な価額に基づいて算定をされます。したがって、譲渡担保権者が担保の目的である動産の価値を不当に低く見積もって私的実行したとしても、私的実行によって消滅する被担保債権の額等が減少するものではございません。
また、設定者に対する通知における担保の目的である動産の見積価額が著しく不合理であるときは、そもそも私的実行の効力が生じない場合もあり得ると考えております。
このような規律があることによって、譲渡担保権者が担保の目的である動産の価値を不当に低く見積もる行為が抑止されることになると考えておるところでございます。
○米山委員 それはちょっと違っていて、清算した場合はそれは売却しますから、売却価格というのは分かるわけだから、見積りも何もない、売却価格は分かるわけですけれども、帰属方式の場合には、だって、自分のものにしてひたすら営業しちゃうわけですよね。低い見積価格にして、いやいや、債権残っているぜと言い続けられるわけですから、それは問題ないということはないと思うんです。
そこは、でも、確かに登記に本当にそのまま書くのがいいかというのはあるとは思うんですけれども、やはり通知が、見積りがきちんとなされるということは非常に重要だと思いますので、それは例えば、法務省というよりはそれぞれの、経産省かもしれないんですけれども、業界での標準契約みたいなものでちゃんとそれは定めておきなさいみたいなことをしたりして、公正を保つということが重要かと思いますので、是非しっかりと、その辺もまた実行しながらきちんと対処をしていただければと思います。
あと一秒なのでこれで終わります。ありがとうございました。(発言する者あり)
○西村委員長 それでは、質疑を続行してください。
○米山委員 大変失礼しました。本当に申し訳ございません。二十五分たったかと思ったんですが、あと五分あったんですね。
では、ちゃんと質問を用意しておりますので、是非、侮辱罪厳罰化について御質問させていただきたいと思います。とはいえ、五分しかございませんので、まとめて御質問をさせていただこうと思うんですけれども。
侮辱罪厳罰化が二〇二二年七月七日に施行されて間もなく三年になる。三年になったときにいろいろ検討するということだったのでございますが、三年、七月七日はもう国会が終わっていますので今聞きたいんですけれども、二〇二一年から二〇二三年までの起訴件数、そして発信者情報開示の件数、また発信者開示をお答えください。質問通告の一番から三番までをまとめて御質問いたしております。
○森本政府参考人 お答えいたします。
まず、受理件数もですね、先生。(米山委員「はい、そうです」と呼ぶ)
平成三十一年、令和元年の侮辱罪の受理人員数は百十四、令和二年が百十九人、令和三年が百八十五人、令和四年が二百二十五人、令和五年が三百四十六人。
他方で、検察における名誉毀損の方の受理人員数は同じく、平成三十一、令和元年が千百五十三、令和二年千二百五十六、令和三年千三百九、令和四年が千三百三十三、令和五年が千四百七十四人でございます。
起訴の件数につきまして、侮辱罪の方でございますが、令和三年四十二人、令和四年が四十三人、令和五年が七十三人。名誉毀損の起訴人員につきましては、令和三年が二百四十四人、令和四年が二百三十七人、令和五年が二百七十八人でございます。
○米山委員 ありがとうございます。
これは事前に聞いて資料四になっているんですけれども、結局、侮辱罪厳罰化は、なかなか、多少なりとも増えている、検挙件数が増えているのはそうだとは思うんですが、相談件数に対しては特段増えていませんし、皆さんの実感としても、やはり全然誹謗中傷に対する抑止効果はなかったじゃないかというのが現実だと思うんですね。それはそうというか、ちょっと厳罰化したぐらいで、しかも検挙って非常にハードルが高いわけですから、なかなかそんなところまでは行かないということだと思います。
ちなみになんですけれども、侮辱罪厳罰化もありますし、あとは発信者情報開示の制度も変わったんですけれども、この発信者情報開示、非常に時間がかかるということを伺っておりますが、その原因として言われているものについてお伺いいたします。
○福田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
ただいま審理に時間を要しているのではないかという御指摘をいただいたところですけれども、中には発信者情報の開示までに時間を要するケースもあると承知をしております。その原因について網羅的に把握をしているわけではございませんので、確たることを申し上げられませんけれども、今私どもで承知しているところを御説明させていただきます。
発信者情報開示命令申立て事件の手続は、申立人がコンテンツプロバイダーに対してアクセスプロバイダーの名称等の提供を求める申立てをし、裁判所の提供命令に基づいてコンテンツプロバイダーが申立人にその情報を提供すると、申立人がアクセスプロバイダーに開示命令申立てをし、両プロバイダーに対する開示命令事件が一体的に審理されるという流れが想定をされております。
このような手続の流れの中で、例えばコンテンツプロバイダーが保有する発信者情報の有無について認否をすることに時間を要するケースや、裁判所から提供命令が出されたにもかかわらず、コンテンツプロバイダーがこの提供命令を長期間履行しないことから、発信者情報開示に向けたその後の手続を進めるのに時間を要するケースがあるなどと聞いております。
○米山委員 そうなんです。しかも、プロバイダーと言われていましたけれども、要は、名前を出していいんだと思いますけれども、Xとかユーチューブとか、海外のプロバイダーが一切応じてくれない。なので、全然発信者情報開示がなされないから、幾らやったって、なかなかその誹謗中傷は減らない、結局そこは見つからない、発信者情報にたどり着けないわけですからということが起こっているわけなんです。
何せ海外の事業者なので、幾らなかなかやったって、彼らが言うことを聞かないことをなかなか是正もし難いということで、じゃ、どうしたらいいかということなんですけれども、実はそれは、我々ができるのは刑法である。刑法できちんと、そういった誹謗中傷に関しては、もう一定程度の罰則をばしばしっとやっちゃいますよと。侮辱罪厳罰化もそういう話だったと思うんですけれども。
でも、そうじゃなくて、誹謗中傷自体をきちんと取り締まりますよということが必要だということで、私が加害目的誹謗等罪というものを実は随分前に、二〇二二年に提案しておりまして、それがつるされておるのでございますが、それもやがて早期に審議していただきたいということをお願いいたしまして、ちょうどあと十秒でございます、私の質問とさせていただきます。
ありがとうございました。
○西村委員長 次に、萩原佳さん。
○萩原委員 日本維新の会の萩原でございます。
早速ですが、質疑をさせていただきます。
まずは、法案質疑に入る前に、不当な強制執行事案への対策についてお伺いいたします。
資料一を御覧ください。
読売新聞の記事によれば、オンラインカジノなど、犯罪に利用された疑いがあるとして凍結された銀行口座に対して、裁判所から得た虚偽の書面で強制執行をかけて五千万円の金員を受け取ったという事案がありました。かかる凍結口座はマネーロンダリングに利用されていたようです。
このように、簡易な執行手段である支払い督促が悪用されている状況にあります。支払い督促は、形式的な要件を満たしていると債務名義が出ます。執行の段階で請求異議や配当異議の申立てがあれば対応できるのかもしれませんが、当事者から異議がなければ対応できません。
以上を前提に、まずは金融庁にお伺いいたします。
振り込め詐欺救済法では、振り込め詐欺等の犯罪に利用された疑いのある銀行口座の取引が凍結され、被害者への支払いが行われます。しかし、差押えは禁止されていません。今回のような不当な強制執行事案に対応するためには、犯罪に利用された疑いのある銀行口座に対する差押えを禁止していく方向性、これが一定考えられますが、金融庁としてはどのように捉えられているのか、お答えください。
○若原政府参考人 お答えいたします。
いわゆる振り込め詐欺救済法におきましては、ある預金口座があったときに、それが犯罪利用預金口座等であると疑うに足りる相当の理由があると認めた場合には、金融機関がその預金口座等に係る債権を消滅させる手続、俗に失権手続と言われていますけれども、こちらに入るということでございます。
ただし、その預金口座等に対しまして、例えば、被害者の方御自身による被害回復手続等の強制執行等の手続が行われている、そういったときはこの失権手続に入らないこととされているところでございます。
これは、振り込め詐欺救済法に基づく手続といいますのは、簡易迅速な手続でございますので、別の司法上の手続が行われている場合にはその司法上の手続を優先すべき、そういう考えに基づくものというふうに認識をしているところでございます。
現時点では、この考え方自身について何かしらの問題があるということではございませんので、特段の制度の見直しは考えていないところでございますけれども、更なる問題が認められるような、そういうような場合におきましては、法律の制定経緯等も踏まえまして、必要に応じて、関係省庁や関係機関と連携しながら、どのような対応が必要なのかを検討してまいりたいと考えておるところでございます。
以上でございます。
○萩原委員 ありがとうございます。
そういう意味では、振り込め詐欺救済法ではなかなか難しいということかなと思います。
では、裁判所にお伺いいたします。
不当な強制執行事案は裁判所を介した詐欺の事案でありますので、裁判所としては全国の裁判所に注意喚起を行っているということです。しかし、資料一にあるとおり、元裁判官の方の御意見では、水面下で同様の手法、これが蔓延しているおそれがあって、裁判所は銀行などへの不正を防ぐ対策の議論を始めるべきだとおっしゃっております。
最高裁判所としては、銀行との議論を進めていくことは考えておられるのか、見解をお示しください。
○福田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
いわゆる振り込め詐欺救済法に基づき凍結された銀行口座に係る預金債権に対し不当な強制執行がされているという報道については承知をしており、最高裁としては、裁判手続が悪用されているとすれば誠に遺憾であるというふうに考えております。
こうした指摘を受け、先ほども委員御指摘いただきましたとおり、最高裁では、同種事案の有無について調査を行うとともに、新聞報道の内容と調査結果を全国の裁判所に周知をしたところでございます。
委員から更なる方策を取る必要があるのではないかという御指摘をいただいたところではございますけれども、現行の民事執行法や振り込め詐欺救済法においては凍結された口座の差押えは禁止はされていない、また、差押命令の発令に当たって、債務名義に記載された請求権の存否は執行裁判所の審査対象になっていないところでございます。
こうした法制度を前提といたしますと、先ほど委員御指摘いただきました銀行との協議を含めまして、裁判所において運用で何らかの対策を講じるということは困難ではありますが、今後も引き続き、同種事案に関わる動向を注視し、制度を所管する関係省庁に必要に応じて運用の実情を提供するなど、適切な協力を行ってまいりたいと考えております。
○萩原委員 今おっしゃったとおり、運用での対応は困難ですよ、ちょっと同種事案の状況を確認していくというところでいうと、この取引が、不正事案が広がっていって、より顕著にならないとどうしようもないということなのかなというふうに思っております。
資料一です。それによると、福岡地裁では強制執行、これを認めていないという状況ではありますが、これは、詐欺事件の被害者が請求異議の訴訟を提起したことでそうした判断が可能だったということの記載がございます。被害者が訴訟を提起しなければ、強制執行が逆に言うと認められてしまうということになります。
金融庁や裁判所で先ほどいただいた御答弁のとおり対応が難しいとすれば、こういう法の網をかいくぐるような手口が今後とも横行していく可能性があり、何らかの対応をしていく必要があると考えます。民事執行の手続において、今回のような極めて限定された場合において、公益の代表者として検察官の異議を認めていくということも考えられますが、当事者主義の理念に反しかねないという懸念はございます。
ここで大臣にお伺いいたしますが、今回の不当な強制執行事案についてどのように対応されていくのか、法務省、裁判所、金融庁、三者で協議して対応を図っていくべきだと考えておりますが、大臣のお考えをお示しください。
○鈴木国務大臣 御指摘の報道についてということで、若干、これまでのそれぞれからの御答弁とも重なるところがありますけれども、一般論としては、凍結された銀行口座に係る預金債権についても、振り込め詐欺救済法又は民事執行法においてその差押えは禁止されていないために、債権者によって差し押さえられること、これはある。したがいまして、この報道のように、口座名義人が銀行に対して有する預金債権をその口座名義人の債権者と称する者が差し押さえて強制執行手続に移行するといった事態、これは現行の中で生じ得るということであります。
しかし、例えば振り込め詐欺の被害者など、凍結された銀行口座の名義人に対して損害賠償請求権を有する債権者、これは民事執行法上、一定の要件の下で、差押債権者に対して、不当な強制執行の申立てであるとしてその強制執行を許さない旨の判決を求め、訴えを提起し、その判決によって強制執行を停止等させるということはできるということで、こうした手続によって、凍結をされた銀行口座に対する不当な差押え、これを排除することができるケースもまたあるというふうには承知をしております。
ただ、こうした事案が増えていく可能性があるということについてということでありますけれども、まさにこうした御指摘のような事案に対してどのような対策を講じていくべきなのか、まさにこれは関係する諸省庁において、関係する制度との整合性あるいは必要性、相当性を踏まえて検討されるべき事柄であると考えておりますけれども、御指摘も踏まえまして、我々法務省といたしましても、注意深く情報収集をするなどしながら、関係省庁における検討に対して必要な協力、私どもとしてもしっかりとしてまいりたいと考えております。
○萩原委員 協力をしていくということでしたけれども、是非、法務大臣としてリーダーシップを持って、こういう法の網をかいくぐるようなところに対しての対応を取っていただきたいなと考えております。
ある意味、こういう不正な事案が起こると、口座を凍結する、それが余り意味がないことになってしまうことにもなりかねませんので、難しい問題とは考えているんですけれども、御対応いただければと考えております。
というところで、二問目、法案質疑の譲渡担保そして所有権留保法案についてお伺いいたします。今までるる専門家の弁護士の皆様が質疑しているところに比べるとちょっと視点が違うところがあるかもしれませんが、その点、御容赦いただければなと考えております。
お伺いいたします。
法案では、譲渡担保契約の範囲として動産や債権等に限られて、不動産、これは対象としていません。確かに、不動産の場合には抵当権がありますので、その規律に従うべきということかもしれません。しかし、不動産でも譲渡担保、これは使われているという事実は一定ございます。法案で不動産を対象としなかった理由についてお答えください。
対象とされていない不動産については、従来どおり判例法理に従うという理解でよろしいのでしょうか。法案では、動産譲渡担保の私的実行については、帰属清算方式、処分清算方式、いずれにも二週間の猶予期間を設けていますけれども、不動産の譲渡担保については適用されないということでよろしいでしょうか。お答えください。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のとおり、譲渡担保法案は、不動産についてその適用を除外することとしております。これは、一般に、不動産については設定者がその目的である財産を使用収益することができる担保権として抵当権が利用されている一方で、譲渡担保は現在では活発には利用されていないと言われていることから、不動産譲渡担保についての規定を設ける必要性は必ずしも高いとは言えないと考えられたことによるものでございます。
もっとも、譲渡担保法の規定の適用を除外したとしても、従来利用されてきたような譲渡担保の目的とすることができなくなるというものではなく、これらの財産が担保目的で譲渡された場合の法律関係については、これまでと同様、判例や解釈に委ねられることになります。
私的実行の完了までの猶予期間等も引き続き解釈等に委ねられることになりますが、いずれにせよ、現在では不動産譲渡担保権が活発には利用されていないという現状からいたしますと、不動産を譲渡担保法案の適用から除外することに特段の不都合はないと考えております。
○萩原委員 今本当に、余り使われていないというところで対象から外しているということですけれども、そうなると、どんどん不動産に対する譲渡担保というところがますます使われていかなくなるというところかなという気もしておりますので、改めて、じゃ、いざ適用になった場合というのはどうなるんだというところは、ガイドライン若しくはQアンドAとかで周知徹底していくことになろうかと思いますので、その点は御対応いただければと思います。
続きまして、質問いたします。
法案では、占有改定による引渡しにより対抗要件、これを備えていても、占有改定以外の引渡しがあればそれが優先することになります。そういう中で、実務では占有改定が広く活用されています。
確かに、占有改定は外見上、占有の在り方に変化がなく、外部から認識することが困難であるため、占有改定以外の対抗要件の方が優先することは公示性を高める観点からは理解できます。しかし、占有改定が対抗要件として劣後するとすれば、事実上、登記を備えようとして、融資額が三百万円にも満たない少額融資の場合にはコストがかかることになって、譲渡担保の利用は疎遠され、金利が多少高くなっても無担保融資を選択するか融資を受けることを断念する問題はないかという懸念がございます。
かかる懸念についてはどのように対応されていこうと考えているのか、お示しください。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
譲渡担保法案は、占有改定によって対抗要件を備えた譲渡担保権は、占有改定以外の方法で対抗要件を備えた譲渡担保権に劣後するという占有改定劣後ルールを設けることとしております。
この占有改定劣後ルールによりまして、占有改定によっては他の担保権者に優先することが確実にはできないこととなりますので、金融機関等が譲渡担保権者となる場合を中心に、登記が対抗要件として利用されることが多くなると予想をされます。その結果、全体としては譲渡登記を通じた譲渡担保権の公示が進むことになると考えられます。
もっとも、担保権者と設定者との間に信頼関係がある場合など、後順位の譲渡担保権の設定が想定されないこともあり得るところでありまして、そうした場合には引き続き占有改定が利用されることになると考えられます。したがって、占有改定劣後ルールにより、少額融資の場合であっても常に譲渡登記を具備しなければならなくなることにはならないと考えております。
これに対し、後順位の譲渡担保権が設定される可能性があるという場合には、譲渡担保権者は登記を具備することになると考えられます。しかしながら、このような場合には、余剰の担保価値を適正に活用するためには譲渡担保権の公示性を高めることが望ましく、全体としては占有改定劣後ルールを設けるメリットが大きいと考えております。
○萩原委員 ありがとうございます。
民法ですと、現実の引渡しなどと併せて、占有改定も引渡しの一つとして、対抗要件を有すると定められています。にもかかわらず、引渡しの中で占有改定だけを劣後させることは、民法の原則からすると少々特異な規律のようにも思います。
登記という高い公示性を有するものに高い対抗力を認める方向性もあったかと思いますが、引渡しよりも登記について高い対抗力を認めるという制度設計にしなかったという、これも併せてお示しください。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
従来の譲渡担保については、占有改定によって対抗要件を備えた場合に外部から認識することが難しく、新たに動産に譲渡担保権を設定しようとする者が優先する譲渡担保権の有無を判断することができないことが融資実務の妨げとなっていると指摘をされてまいりました。
そして、動産譲渡担保権は、その設定後も設定者が担保の目的である動産を引き続き使用収益することができることがその特徴でありますので、占有改定が用いられることによる問題を解決する必要性は高いものがあります。
他方で、占有改定以外の引渡しについては、現実に担保権設定者以外の者が動産を占有しておりますので、何らかの権利が設定されている事実を外部から認識することが可能でありまして、占有改定による対抗要件具備について指摘されてきた問題は基本的に生じないと考えられます。また、動産譲渡担保において占有改定以外の引渡しが利用されているケースはそれほど多くないと考えられます。
したがって、譲渡担保法案において、占有改定以外の引渡しについて動産譲渡登記を優先させるというルールを設ける必要は必ずしも高くはなく、そのような規律を設けることはしなかったものでございます。
○萩原委員 性質に応じてこのような形の制度設計にしたということだったかと思います。了解いたしました。動産のところは了解です。
続きまして、対抗要件については、特定動産の場合も集合動産の場合も、引渡しではなく登記、これがされることが多くなっています。九〇%程度が登記です。
他方、特定債権や集合債権の場合、登記は大体六〇から七〇%程度で、通知や承諾の方が多く使われている状況です。これは、内容証明郵便で、確定日付による通知、承諾といった対抗要件を具備する方が実務的に簡易かつ便利であることによるものと思います。
今回の改定では、債権の譲渡担保等については通知、承諾の劣後ルールが採用されているわけではないため、ある意味、この登記というのは進んでいかないかなと思うんですけれども、この点に関してはどのように考えているのか、お示しください。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
譲渡担保法案では、同一の債権に債権譲渡担保権が競合する場合の優劣関係につきましては、民法四百六十七条二項に規定する確定日付のある証書による通知又は承諾の前後によることとしております。
債権譲渡登記がされたときは、第三者についてはこの通知があったものとみなされますが、譲渡担保法案は、譲渡担保権の優劣関係を定めるに当たって、債権譲渡登記を通知又は承諾に優先させるなどの規律を設けることとはしておりません。
債権譲渡担保権を第三者に対抗するというためには、第三債務者に対する確定日付のある証書による通知又は第三債務者の承諾が必要でありまして、債権を担保の目的として融資をするという場合には、先行する債権譲渡担保権が設定されているか否かを第三債務者に確認することが可能であります。
このため、対抗要件を譲渡担保契約の当事者の合意のみによって具備するという、動産譲渡担保権における占有改定のような問題は生じないと考えられます。
そこで、譲渡担保法案では、債権譲渡担保権については動産譲渡担保権における占有改定劣後ルールのような規律は設けないこととしたものでございます。
○萩原委員 そのものの性質であるとか実務上の利便性、あとコスト、そこら辺の関係から、今回の改定は、登記というのは基本的には公示力が高いけれども、そのような引渡しや通知、承諾よりも登記が優先するというルール、これは採用しなかったというふうに考えています。そして、これまでの判例法理でも、他の対抗要件に比べて、ある意味、登記を優先するルール、これが形成されてきたわけではないと考えています。
このような中、現在、動産の譲渡担保で登記が利用されていることが多いと言えます。今回、占有改定は対抗要件として残りますし、少額融資の場合には占有改定が利用され続けるということはあると考えています。しかし、今後の方向性として、動産の譲渡担保、債権譲渡担保については登記することが多くなっていくとすると、公示について、引渡し又は承諾、通知よりも登記を優先することは考えられるんじゃないのかと考えております。
他の対抗要件よりも登記という公示を優先するルール、これの今後の方向性についてどのように考えているのか、お願いいたします。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
譲渡担保法案は、動産譲渡担保権の対抗要件の一つであります占有改定について、外部から認識することが難しいという問題に対応するため、占有改定劣後ルールを設けることとしております。
占有改定以外の方法による引渡しや、債権譲渡担保権の第三者対抗要件である第三債務者に対する確定日付のある証書による通知又は第三債務者の承諾については、外部から認識することが難しいという問題は生じていないため、直ちに見直しに向けた検討が必要であるとは考えていないところでございます。
いずれにしましても、法務省といたしましては、まずは、譲渡担保法の施行後の運用状況を注視してまいりたいと考えております。
○萩原委員 まずはこの法案が成立して、今後どうしていくかというのはまた考えていきましょうということかなと考えていますが、是非、登記の利用率というのが高まれば、登記優先ルールというのも検討していく必要があるかなと思っていますし、やはり登記は公示性が高いと考えておりますので、物によっては必要ないと今おっしゃっているようなこともあったかと思いますけれども、そういう場合だけに限らないかなというのも思っておりますので、御検討いただければと思います。
では、続きまして、オンライン申請の利用拡大に関してお伺いいたします。
オンライン申請については、権利者、義務者の双方が委任状等の添付情報に電子署名を付す必要があって、利用が進んでいないという指摘がございます。権利義務関係の変動等を公証するものであるため、極力、不正な登記、これを防止していく必要は当然あります。とはいえ、利便性の向上は動産、債権譲渡担保の普及には欠かせないと考えています。
オンライン申請の利用拡大に向けて今後どのような取組を行っていくのか、お示しください。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
動産譲渡登記及び債権譲渡登記の申請方法といたしましては、書面方式、事前提供方式、完全オンライン方式の三種類がありますところ、令和五年度の動産譲渡登記及び債権譲渡登記の申請件数のうち、完全オンライン方式によるものは約一%にとどまっております。
その主な理由としては、譲渡登記をオンラインにより申請するためには、譲渡人及び譲受人の双方が申請書情報又は委任状情報に電子署名を付与しなければならない点などが、必ずしも電子署名が普及していない現状において高いハードルとなっているのではないかとの指摘がございます。
本改正に伴いましてオンラインでの譲渡登記の申請のニーズも高まると考えられることから、今から申し上げるような方策を考えているところでございます。
まず、商業登記所では、法人の代表者の印鑑証明書に代わる電子的な証明書として商業登記電子証明書を発行しておりまして、譲渡登記のオンライン申請における電子署名の本人性等を証明するためにこれを利用することができます。
商業登記電子証明書につきましては、本年四月に、これまでよりも証明期間が短い代わりに手数料がより低額な証明書の発行を可能とするとともに、既存の手数料についても全体として引下げを行ったところでございまして、このような取組の周知、広報を通じて利用促進を図ってまいりたいと考えております。
また、譲渡登記のオンライン申請におきましては、現在、商業登記電子証明書以外にも指定された種類の電子証明書を利用することができるところ、利用可能な電子証明書の種類を拡大することなどによるオンライン申請の利便性の向上についても検討してまいりたいと考えております。
このような方策も検討して、オンライン申請の利用促進をしっかりと進めてまいりたいと考えております。
○萩原委員 ありがとうございます。
本当に、今答弁の中でありましたけれども、利用率、完全オンラインが一%程度、また、事前データ提供による一部オンライン化というのは、お伺いしたところでいうと約三〇%ぐらいというところで、実際七〇%が書面でやられているというような状況でありますので、なかなかオンライン申請というのが進んでいないという状況で、時代にちょっと取り残されているんじゃないのかという気持ちもございます。
是非、先ほどおっしゃっていただいた拡大策もそうですし、例えば、登記では司法書士さんに申請依頼することが多いため、司法書士さんの署名だけでも済むようにするといった対応も考えられるんじゃないのかなと思っておりますので、是非、利用しやすい制度、ある意味、ちょっと時代に取り残されつつあるような状況じゃないという形にしていただくことをお願いして、オンライン申請の拡大についての質問は終わります。
最後に、ABLの促進への影響についてお伺いします。
動産・債権担保融資であるABL、これは、実行件数が一万二千件になった時期もありましたけれども、二〇二一年には六千六百件程度に下がっています。実行額についても、一兆円近くまで達した時期もあったけれども、二〇二一年には五千六百億円まで下がっている。これは、太陽光発電設備や売電債権を担保にする融資が、事案が多かったためで、最近は、太陽光発電についての融資、これが下火になっていることを受けているものかと思っております。
金融機関からすると、回収局面で目的物の保存費用等を負担せざるを得ず、結果的に期待したような回収ができないということもありますし、他方、融資を受ける側も、金融機関からのモニタリングが行われることへの懸念があって、これらがABLが進まない要因になっているものと考えております。
今回の改正案で、譲渡担保や所有権留保についてのルールを明確化、合理化することで、不動産への担保や個人保証に依存しない資金調達を行うことをアシストしようとされておりますけれども、今回の改正により、ABLの利用の進展によい影響が出ると考えておりますが、金融庁の考えをお伺いします。
○岡田政府参考人 お答え申し上げます。
委員御指摘のとおり、太陽光発電設備を担保としたABLの減少等により、ABLの件数が減少しているという調査があることは承知しております。
金融庁といたしましては、金融機関に、過度に不動産担保や個人保証に依存しない、事業の実態に応じた融資というのを促進しておりまして、ABLというのもその選択肢の一つとして、事業者のニーズを踏まえた活用というのを促してきております。
一方、これまではABLを行う場合に、在庫等、事業者が引き続き占有する必要がある動産については、これらの取引について明文の規定がなくて、法的な安定性に欠ける面があるというような指摘があるとも承知しておりまして、今般の譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律案が成立いたしますれば、法律関係の予見可能性、取引の安定性が高まり、金融機関のABLの取組にも資すると考えております。
金融庁といたしまして、足下で、事業の実態に着目した融資を促進するための施策の一環として、事業性融資推進法の来年の春頃の施行を見据えまして、事業全体を担保とする企業価値担保権の活用に向けた環境整備も行っているところでございますが、引き続き、金融機関に対しまして、ABLや企業価値担保権など選択肢を提示しつつ、個人保証や不動産担保に過度に依存しない、事業者の実態、将来性に着目した融資を推進してまいりたいと考えております。
○萩原委員 ありがとうございます。
本当に融資関係、やはり実務として見ていても不動産等に頼り過ぎているというところは思っておりますので、これを契機に、是非このABLの制度の拡大も含めて、多様な融資の在り方というところを努力していただくことをお願いして、私からの質疑とさせていただきます。
御清聴ありがとうございました。
○西村委員長 次に、小竹凱さん。
○小竹委員 国民民主党の小竹凱です。本日も質疑の機会をいただき、ありがとうございます。
今日は、譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律案、質問させていただきます。
本法案は、歴史をたどっていきますと明治時代からこういったやり取りはされている中で、これまで過去の判例によって積み上がってきた、運用されてきたというように承知しております。
今回の法定化、明確化により、安定化を図り、不動産担保や個人保証に依存し過ぎない資金調達を促進することを目的に定められているものと認識しております。
本法案の立法目的について、このタイミングということも含めて、改めて政府の御説明をお願いしたいというふうに思います。また、現在の実務において、譲渡担保や所有権留保がどのように利用されて、どういった課題があるからこの法整備が必要とされたのか、この辺をお聞かせください。
〔委員長退席、鎌田委員長代理着席〕
○竹内政府参考人 お答えいたします。
企業の資金調達におきましては、従来、不動産や保証が担保として多く用いられてまいりました。しかし、不動産を有しない企業の増加や保証人の負担軽減の観点から、機械設備、在庫商品等の動産や売り掛け債権等の債権を担保とする融資を推進するなど、資金調達手法を多様化する必要性が高まっております。
従来、実務では、動産や債権を担保として資金を調達する場合は、譲渡担保や所有権留保が用いられてまいりました。しかし、これらの担保取引については明文の規定はなく、専ら判例によって規律をされておりますため、法的安定性に欠ける面があります。また、判例には、譲渡担保権を活用した金融実務の要請に応えることができない点も生じておりました。
本法案は、譲渡担保及び所有権留保に関する法律関係の明確化や取引の法的安定性の確保を図るとともに、必要に応じてより合理的なルールを導入することにより、企業の資金調達手法の多様化を促進しようとするものであります。
○小竹委員 ありがとうございます。
法的な明確化、安定化、こういうところに関しては、これまで運用されてきて、これから更によくなるというか、私は前向きに捉えているところでございます。
今回の法案で、個人保証に依存しない資金調達手段として、動産や債権を担保に取る譲渡担保の活用を促していくということも書かれておりましたが、個人保証の提供はいまだに金融慣行として強く根づいておりまして、また、不動産を担保に取ることもあります。中小企業の金融や地域金融においても顕著であることから、金融機関の意識変革も必要なのではないかと考えます。
この点について、金融庁の見解を伺います。
○岡田政府参考人 委員御指摘のとおり、担保、保証に過度に依存しない融資慣行を促進するためには、金融機関の意識の改革が必要であると認識しております。
金融庁では、こうした観点から、これまでも様々な取組を行ってまいりました。
例えば、経営者保証に依存しない融資の促進に向けては、関係省庁と連携の上、二〇二二年十二月に経営者保証改革プログラムを公表いたしまして、金融機関に対しまして、一つには、経営者保証に関するガイドラインを浸透、定着するための取組方針というものを公表するよう要請しております。
また、そのほか、新たな保証契約を、経営者保証の契約を締結する際には、事業者等に、どの部分が十分でないためにその保証契約が必要になるのかとか、どのような改善を図れば保証契約の変更、解除の可能性が高まるかについて個別具体的に説明して、なおかつ、その結果を記録するということを求めて、そうしたことについて金融機関の意識改革を促してきております。
また、不動産担保につきましては、不動産担保によらず、事業者の事業の実態、将来性に着目した融資を後押しするため、足下では、昨年、通常国会で成立した事業性融資推進法の来年春頃の施行を見据えまして、事業全体を担保とする企業価値担保権の活用に向けた環境整備にも取り組んでいるところでございます。
金融庁といたしましては、引き続き、金融機関との対話等を通じまして、担保、保証に過度に依存しない融資というのを後押ししてまいりたいと考えております。
○小竹委員 ありがとうございます。
二〇二三年から、経営者の保証改革プログラム、先に経営者の方の意識改革であったり、企業価値の方を担保に取っていく、様々な変革はされていると承知しております。
次は、民間の意識変革についても伺いたいというふうに思います。
譲渡担保をより安定した法律上の制度として位置づけていく、その中でその活用が進むと考えていると思いますが、一方で、現在でも、不動産担保が主流を占めているのが現状でありまして、不動産に加えて、これから動産や債権まで担保に供することになりますと、取引先の企業にとってみれば、これまでのスタンダードで鑑みますと、当該企業の経営状況などを不安視するようなこともあるのではないかというふうに考えます。
登記優先を促進していこうという法務省の考えとして、こうした懸念の払拭に向けた検討はなされていたのか、この辺もお伺いします。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
動産や債権に担保権を設定していることが知られることにより、設定者についての無用な信用不安を招くおそれがあるとの指摘があることは承知をしております。
これまで、企業の資金調達におきましては、動産や債権を目的とする担保取引が必ずしも一般的なものではなかったことから、そのような財産にまで担保権を設定しなければ資金を調達することができないという誤解があることが、無用な信用不安を招くおそれがあるとの指摘につながっているものと考えられます。
本法案は、人的保証や不動産担保に過度に依存することのないよう、動産や債権を担保とする融資を推進することを目的とするものでございます。本法案が施行され、動産や債権を担保とする融資が企業の主要な資金調達手法としてより一般的なものとして普及し、先ほど申し上げましたような誤解がなくなっていけば、これらの財産に担保権を設定していること自体が信用不安を招くおそれは小さくなっていくものと考えられます。
本法案の趣旨、内容について正しく理解されるよう、今後、十分な周知、広報に努めてまいりたいと考えております。
〔鎌田委員長代理退席、委員長着席〕
○小竹委員 ありがとうございます。
人的保証であったり不動産がある意味当たり前の中で、こういったことに広げていくと、私は石川県ですけれども、特に地方のこの当たり前が根づいた文化でありますと、こういったところを不安視する声も必ず出てくると思いますので、そういったところの広く広報と発信というのを是非お願いしたいというふうに思います。
次に、破産財団の組入れ義務の実効性を高めるための方策についても伺います。
担保取引が活性化するということは、金融機関などが設定する担保契約が増加することになりまして、企業の倒産時などでは、担保権者は担保権を設定した不動産などの資産を優先的に回収できることから、限られた債務者の財産のほとんどがその回収に充てられ、結果として、融資先の企業では、未払い賃金など労働債権を含めた、そういったほかの債権者の弁済に充てる原資がほとんど残らないというようなケースを多々耳にしております。
過去には、会社が破産して労働者が全員解雇になり、賃金、退職金、解雇予告手当、全て未払いとなった事案であったり、資金繰りが悪化した際には、売掛金や商品にまで譲渡担保権が設定されているケースも少なくないということで、こうした場合に退職金が全て支払われなかったというような事案も発生したというようなことも聞いています。
企業の事業というのは、そもそも労働者による労働力の提供によって維持、発展していくわけでありまして、その結果として企業が動産や債権を得ているというのが実態、互いに必要とし合う関係であるということでありますが、不動産などへの担保権の設定により、そのリスクを、結果として、融資先で働く労働者、そういったところにしわ寄せが行っているのではないかというふうに私は考えておりまして、倒産時においても、そこで働く労働者が置き去りにされるようなことはあってはならないというふうに考えます。
本法案の成立により、動産や債権を目的とする担保取引が活性化していく中で、これまで以上に労働債権者などへの原資は更に寡少となるのではないか。先ほどの質疑にもありましたが、この辺についての見解を伺いたいと思いますし、また、労働債権などの一般債権者の保護の観点から、本法案において、どのように一般債権者を保護し、保護の実効性を高めていくか、この点についても見解を伺いたいと思います。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
譲渡担保法案は、担保権の及ぶ範囲が広範なものとなりがちな集合動産譲渡担保権又は集合債権譲渡担保権について、一般債権者への弁済原資を確保し、これによって担保権者と一般債権者との間の分配の公平を図るという観点から、新たな制度を創設しております。
具体的には、これらの担保権が実行された場合において、設定者について法的倒産手続が開始したときは、担保権者が実行により回収した額のうちの一定額を破産財団等に組み入れなければならないこととしております。組み入れられた金銭は、倒産手続の中で労働債権者を含む債権者に対する配当原資になり得るなど、この組入れ制度は一般債権の弁済に資するものと考えております。
法務省といたしましては、このような組入れ制度が倒産手続において円滑に運用されるよう、倒産手続に関わる実務家や金融機関等に対して、本制度の周知、広報に努めてまいりたいと考えております。
○小竹委員 ありがとうございます。
先ほどの答弁をいただいている中からこういった中身ということは把握しておりましたが、実効性を是非高めていただきたいというふうに思います。
次に、担保評価の妥当性に関しても伺いたいと思います。
動産や債権を担保に取る場合、その評価が適正に行われないと、担保権者が不当に得をして、ほかの債権者や債務者が不利益を被るというおそれがあります。特に多数の動産をまとめて担保とする集合動産担保の場合、どの時点の範囲、どの範囲の資産を評価するかという、難しいところになるかと思いますが、本法案では、担保権実行時の評価の公平さを確保する仕組みをどのように設けているか、具体的に説明を願いたいと思います。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
譲渡担保法案では、集合動産譲渡担保の私的実行をしようとするときは、担保権者はその旨を設定者に通知しなければならないこととし、この通知がされた時点で実行の対象となる動産が確定することとしております。これにより、どの時点のどの範囲の資産を評価するかという点については明確化が図られております。
その上で、担保権者は、実行の対象となる譲渡担保動産の見積価額を合理的な方法により算出し、その額を算定根拠とともに通知しなければならないこととしております。このようなプロセスを通じて、設定者には必要に応じ評価額の是正を求める機会が与えられております。
さらに、被担保債権について不履行があった場合には、担保権者が円滑に評価額を算出することができるように、譲渡担保動産の状態、数量等をその所在場所において確認する行為など、担保権者による帰属清算の通知又は処分清算譲渡に必要な行為を設定者が受忍しなければならないこととしております。
なお、実行によって消滅する被担保債権の額及び清算金の額は、譲渡担保動産の客観的な価額に基づいて算定することとしております。したがって、仮に担保権者が譲渡担保動産の価値を不当に低く見積もって私的実行したとしても、私的実行によって消滅する被担保債権の額又は設定者が支払いを受ける清算金の額が減少するものではありません。
○小竹委員 ありがとうございます。
続きまして、労働債権の保護に向けた政府の検討状況についても伺いたいというふうに思っています。
二〇〇三年の民法の改正、二〇〇四年の改正破産法の附帯決議におきまして、倒産時における労働債権と他の債権の調整について、労働者の生活の保持に労働債権の確保が不可欠であることを踏まえて検討するというようなことが明記されております。
破産法改正から既に二十年が今たっておりますけれども、倒産時における労働債権の保護に関して政府内でこれまでどのような検討が行われてきたのか。厚生労働省と法務省に、それぞれその検討状況について伺いたいというふうに思います。
○田中政府参考人 お答えいたします。
労働債権は労働者やその家族の生活の糧であって、その保護は重要であるというふうに認識をしております。厚生労働省といたしましては、倒産時等におけます労働債権の優先順位に関しまして、法務省に設置された法制審議会担保法制部会における検討に幹事として参加をさせていただいたところでございます。
今般御審議をいただいております本法案は、当該部会での御議論を踏まえまして、倒産時において一定額を破産財団等に組み入れることなどを通じて労働債権の保護が図られるものと認識をしております。
今後とも、労働債権の保護が図られますよう、法務省ともしっかり連携をいたしまして、必要な取組を進めてまいりたいというふうに考えております。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
平成十五年の民法改正の際の法案審議におきまして、委員御指摘の附帯決議がされたものと認識をしております。
このことも踏まえまして、平成十六年に成立した破産法では、破産手続開始前の原因に基づいて生じた労働債権のうち、未払い給料の請求権については破産手続開始前三か月間のものを財団債権とし、優先的破産債権となる労働債権についても、一定の要件の下で裁判所の許可を得て配当手続より前に弁済をすることができるという弁済許可制度が設けられるなどしております。その際の法案審議におきましても、倒産時における労働債権の優先順位について、引き続き検討に努めることとの附帯決議がされたものと認識をしております。
その上で、今般の法制審議会担保法制部会におきまして議論をいたしまして、先ほど申し上げましたような新たな組入れ制度を設けることとなったところでございます。
このように、法務省といたしましては、倒産時における労働債権者等の保護の重要性を踏まえまして、民事基本法制の累次の見直しを進めてきたものでございます。
○小竹委員 ありがとうございます。
倒産時における労働債権の優先順位であったり、これらに関する議論、それから今回の組入れ義務のことについてもよく理解いたしました。
そして最後に、担保権の行使と倒産手続の整合性について確認したいというふうに思います。
新たに法定化される譲渡担保権や留保所有権が、破産、民事再生、会社更生といった倒産手続の中でどのように扱われていくのか、ルールを確認したいというふうに思いますけれども、本法案に関連して、倒産法令上の改正や運用の取決めは新たになされるのか。特に、担保権者が倒産手続開始後も別個に権利行使をできるのか、それとも手続内で処理されるのか、この辺について御説明いただきたいというふうに思います。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
現行の実務上、倒産手続において、譲渡担保権や留保所有権に関しましては、譲渡担保権者及び留保売主等を担保権者として扱うのが一般的でございます。
譲渡担保法案は、この一般的な実務の扱いに従うこととし、また、質権が譲渡担保権と同様に動産、債権等を目的とし得るものでありますことから、破産法等の規定のうち質権者に関する規定を譲渡担保権者及び留保売主等について適用する旨を定めることとすることによりまして、倒産手続において譲渡担保権者及び留保売主等が担保権者として扱われることを明文化することとしております。
したがいまして、質権が別除権として倒産手続によらないで行使することができる破産手続等におきましては、譲渡担保権及び留保所有権も倒産手続によらないで行使することができます。他方で、質権を倒産手続内で行使することが必要となる更生手続においては、譲渡担保権及び留保所有権も手続内で行使しなければならないこととなります。
その上で、譲渡担保権及び留保所有権につきましては、私的実行が短期間で終了するという譲渡担保権及び留保所有権の性質を踏まえまして、それに対応するため、担保権の実行手続の禁止命令や取消し命令の規定を設けること、設定後に譲渡担保権設定者が取得する動産や債権にも効力が及ぶという集合動産譲渡担保権等の性質にかかわらず、倒産手続が開始した後に譲渡担保権設定者が取得する動産や債権には、原則として集合動産譲渡担保権等の効力が及ばないことを明確化するなど、譲渡担保権及び留保所有権の性質を踏まえた特別の規定を設けることとしているところでございます。
○小竹委員 ありがとうございます。
この倒産手続の中の別除権の行使に当たっては、担保権者による清算金の支払いや適正評価が適切に行われているか、このようなチェックはこれまで裁判所によってされてきたというふうに承知しておりますが、今般の法定化により何か変わる点があるのか、また、どのようにこれからもチェックされていくのか、この辺も確認したいと思います。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
譲渡担保法案におきましては、帰属清算方式又は処分清算方式による私的実行があった場合には、被担保債権の消滅額や清算金の額は、譲渡担保動産の客観的な価額に基づいて算定することとしております。
また、清算金が発生する場合には、その支払いを確保するため、担保権者が私的実行の効果の発生後に譲渡担保動産の引渡しを求めても、設定者は、同時履行の抗弁権又は留置権に基づいて、清算金等の支払いがあるまでは譲渡担保動産の引渡しを拒絶することができることとしております。
なお、実行によって消滅する被担保債権の額及び清算金の額は譲渡担保動産の客観的な価額に基づいて算定されますので、譲渡担保権者が譲渡担保動産の価値を不当に低く見積もって私的実行したとしても、私的実行によって消滅する被担保債権の額又は設定者が支払いを受ける清算金の額が減少するものではございません。
そして、被担保債権の消滅額や清算金の有無又は額について担保権者と設定者との間に争いがある場合には、設定者が清算金の支払いを求めて提起した訴えに係る裁判手続において適正な評価額が認定されて、それに基づく清算金の支払いが命じられるなど、適切な解決が図られることになると考えております。
○小竹委員 質問を終わります。ありがとうございました。
○西村委員長 次に、平林晃さん。
○平林委員 公明党、平林晃です。
この度、新しく提案されております譲渡担保法案につきまして質問させていただきます。これまでの議論とちょっと重複する部分もございますけれども、御容赦いただけたらと思います。
まず、総論といたしまして、大臣にお聞きできればと思います。
譲渡担保や所有権留保に関しましては、実務や判例法理を重ねて発展してきた手法と承知をしております。そうした手法をなぜ今法定化するとの判断に至ったのかという点に関しまして、その背景と目的、効果、どのようなものを期待しておられるのかと、あわせて、この度、民法の改正ではなくて新法の制定という形式を取られた理由に関しまして、大臣の御所見を伺います。
○鈴木国務大臣 企業の資金調達におきましては、これまで、不動産あるいは保証、こうしたことが担保として多く用いられてきましたけれども、最近、不動産を有しない中小企業、そういったものが増加をしている、あるいは、事業者の債務を保証した者が過大な責任を負いかねないという問題を背景に、不動産担保あるいは個人保証、ここに過度に依存しない資金調達方法、これを促進をする、そうした必要性が高まっている、こう認識をしているところであります。
そして、こうした資金調達の方法として、実務上これまで用いられてきました譲渡担保あるいは所有権留保について、これは明文の規定がないということがありました。そして、判例法理が示されていない、そうした論点もあるということがございます。そういったことから、法律関係の予見可能性あるいは取引の法的安定性に欠ける等の問題、これがございます。
そこで、動産以外の財産を担保の目的とする取引についての法律関係の予見可能性あるいは取引の法的安定性、これを向上させる観点から、私どもとして、この法律案を今国会で提出をさせていただいたところであります。
譲渡担保法案によりまして、動産、債権等を目的とする譲渡担保契約についての法律関係の予見可能性、取引の法的安定性を高めるということとなりまして、結果として、不動産担保や個人保証に依存しない資金調達の手法の一つとして譲渡担保等が利用しやすくなり、資金調達手法が多様化をされる、そうしたことを我々としては期待をしているところであります。
そして、今回、譲渡担保法案、これは民法の改正ではなくて新たな法律案を制定するものとした理由ということでお尋ねもございましたけれども、この点について申し上げますと、第一には、譲渡担保権あるいは留保所有権は実質担保権でありますけれども、目的である財産権そのものを移転したり、あるいは留保する形式を取るという点で、これは民法の定める担保物権とは性質がやはり異なるということ。そして、第二には、実行のための各種の裁判手続や、あるいは、譲渡担保権等の倒産法上の扱いに関する規定など、民法が定める実体的な規定ということではなく、多数の手続的規定、これを定める、設ける、そうした必要があるということで、今回この新法として制定をすることを我々としては考えたところでございます。
○平林委員 ありがとうございます。
続きまして、集合動産譲渡担保権について伺います。
本法案につきましては、第四十条において、集合動産譲渡担保権の設定が可能であることが明文化されています。この部分で、ちょっと済みません、一問飛ばさせていただけたらと思います。本法案四十三条で、集合動産譲渡担保権設定者は、正当な理由がある場合を除いて、少し飛ばしまして、特定範囲所属動産の一体としての価値を、集合動産譲渡担保権者を害しない範囲を超えて減少することのないように維持しなければならないとされています。
この法文案におけます正当な理由ということに関しまして、主として何を想定しておられるのでしょうか。また、集合動産譲渡担保権者を害しない範囲、これはどの程度の範囲を意味するのかということで、このような抽象的な表現よりも、具体的な基準を明示することも考えられるのではないかと思ったんですけれども、そうした必要性がないのかも含めまして、法務省の御見解を伺います。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
集合動産は設定者による処分等によってその構成部分が変動いたしますが、担保権者は、仕入れによる補充等により、全体として一定の範囲で価値が維持されることを前提にした担保価値を期待していることが通常でございます。
そこで、譲渡担保法案は、設定者は動産の補充等により集合動産の全体としての価値の維持義務を負う旨を特に明文で定めることとしております。
もっとも、集合動産はその価値が変動することが予定されておりますので、その変動の原因には様々なものがあります。集合動産が維持すべき価値を下回った場合でも、当然に義務違反を問うのは相当ではないことがあり得ます。そこで譲渡担保法案は、正当な理由がある場合には担保価値維持義務を負わないこととしております。
どのような場合に正当な理由があると言えるかは、個別具体的な事情に基づく判断ということになりますが、例えば、合理的な経営判断に基づく事業の縮小に伴って、担保の目的である在庫の価値が減少する場合等がこれに当たると考えられます。
また、担保権者を害するとは、集合動産の価値が一定の範囲で変動することを考慮してもなお、譲渡担保契約上、担保権者が合理的に期待していた範囲を超えて目的財産の価値が減少し、譲渡担保権の実行によって本来回収することができた債権を担保権者が回収することができなくなることをいうものでございます。
例えば、設定者が正当な理由なく、事後的な補充の意思もないのに集合動産の構成部分を処分して大幅に減少させるといった行為が、担保価値維持義務違反に当たると考えられます。
もっとも、設定者に求められる動産の補充等の方法や程度、頻度等については、動産の種類等により多種多様でありまして、設定者が担保権者を害しない範囲を超えて担保価値を減少させたかどうかは、個別具体的な事情に基づき判断されることになりますので、一律の基準を明示することは困難であることを御理解いただきたいと思います。
実務的には、譲渡担保契約において、当事者間で想定される事情を踏まえて、担保価値維持義務の基準を合意し、その内容をより明確にしておくことが考えられるところでございます。
○平林委員 個別具体の事情によって変わってくるので抽象的な表現になるということで、理解をさせていただいたところでございます。
さらに、関連してとなりますが、例えばの話ですけれども、事業者Aが倉庫の在庫一式に対して集合動産譲渡担保権を設定をして、金融事業者、例えば銀行Bから融資を受けている、こういう状況におきまして、Aに対して物を卸していくような仕入れ事業者Cが、当該倉庫に納品したものの所有権を留保することによって代金債権を担保する、こういうことも十分に考えられるわけでございます。
この場合、この所有権の留保と集合動産譲渡担保権との優劣関係については、どのような規定が設けられているのかという点です。集合動産譲渡担保権が設定されて、対抗要件が具備されていた場合、この後に物品を納品した仕入れ事業者Cは、集合動産譲渡担保権に劣後することになってしまうと、これはCがどうしてもかなわないということになってしまって、Aとの取引が円滑に行われなくなってしまうのではないか、こういう危惧を覚えるところでございますけれども、この点に関しまして、法務省の御見解を伺います。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
譲渡担保法案は、同一の動産について、留保所有権と集合動産譲渡担保権とが競合し得ることを前提に、その優劣関係について規定を設けております。
具体的には、その動産の代金債務を担保する留保所有権は、その限度で集合動産譲渡担保権を含む他の担保権に優先することとしている一方で、同一の動産について担保権の設定を受けた他の担保権者がいる場合には、留保売主は、その担保権者に優先するためには先に対抗要件を具備することが必要となります。
委員御指摘の事例におきましては、同一の動産について、仕入れ先Cの留保所有権と、事業者Aが金融業者Bのために設定した集合動産譲渡担保権とが競合しておりますので、仕入れ先Cの留保所有権が先に対抗要件を具備したという場合には、牽連性のある債務を担保する仕入れ先Cの留保所有権が優先することとなります。
これにより、集合動産譲渡担保権が設定された後も、仕入れ先の取引が円滑に行うことができると考えております。
○平林委員 ありがとうございました。
AからCに占有改定を行っておけばBに勝てる、そのようなルール化がなされている、このように理解をさせていただいたところでございます。ありがとうございます。
一方で、今、集合動産譲渡担保権を中心に聞いてまいりましたけれども、所有権留保、例えば自動車ローンなんかでも我々も身近に接してきているところでございますけれども、本来所有権の移転が生ずる取引において、代金債権等を担保するために所有権を移転させない、こういうものであると理解をしておりますけれども、譲渡担保と同様に、実務上は担保取引として用いられてきたと認識をしております。
この度の法案においては、この所有権留保については具体的にどのような規律が設けられることになったのか、法務省の御見解を伺います。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
譲渡担保法案は、所有権留保契約として、売買契約等、動産の所有権の移転の原因となり得る契約において、代金債権等を担保するため、その完済までは目的物の所有権を売主等に留保するもの、売主等の委託を受けて代金等を支払った信販会社等の求償金債権等を担保するため、その完済までは目的物の所有権を当該第三者、すなわち信販会社等に留保するものという二つの類型を定義することとしております。
その上で、譲渡担保法案は、所有権留保が、基本的に担保権者に所有権が帰属するという形式を取るものの、担保取引としての実質を有しているという点、動産を目的として担保権者が占有しない類型の担保取引として利用されてきた点で譲渡担保と共通している部分が多いこと、買主が譲渡担保と同様に後順位の担保権を設定することができるようにするという実務上のニーズを踏まえまして、所有権留保契約の効力、留保所有権の実行、破産手続等における留保所有権の取扱いについて、譲渡担保契約の規定を基本的に準用することとしております。
○平林委員 続きまして、またちょっと動産譲渡担保権に話を戻してしまうんですけれども、本法案におきましては、担保権者が複数ある場合にどちらが優先するのかというルールが新設されることとされています。例えば、事業者Aがある装置、機械を目的として動産譲渡担保権を設定をし、金融事業者、例えばBの一としますと、から融資を受けているときに、重ねて同じ装置、機械を目的とした動産譲渡担保権を設定して、別の金融事業者、例えばBの二とします、から融資を受けることもあり得るということであります。
そのような場合にどちらを優先するのかを決めておかなければなりませんが、これまでは、引渡しを受けた順で決まっていた、このように伺っております。これを今回の法案では、第三者から認識しやすい譲渡担保権、例えば登記されたものなどが優先するようにルールを変更することとされています。
このような変更が必要であると判断されるに至った背景や問題点がどこにあるのか、また、本法案により得られる効果がどのようなものであるのか、これらの点に関しまして法務省の見解を伺います。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
同一の動産について複数の動産譲渡担保権が競合したという場合には、現行法におきましては、占有改定を含む引渡しを受けた時点の前後によってその優劣関係が定まってまいります。しかし、占有改定は当事者の意思表示のみで行うことができるため、外部から認識することは困難であります。そのため、新たに動産を目的とする譲渡担保権の設定を受けようとする者は、優先する譲渡担保権の有無を判断することができず、その結果、融資実務が妨げられているとの指摘がございました。
そこで、譲渡担保法案は、競合する譲渡担保権の優劣関係が動産の引渡しの前後によって定まるという原則を明文化するとともに、その例外として、占有改定によって対抗要件を備えた譲渡担保権はそれ以外の方法で対抗要件を備えた譲渡担保権に劣後するという占有改定劣後ルールを設けることとしております。
この占有改定劣後ルールにより、占有改定によっては他の担保権者に優先することが確実にはできないこととなりますので、登記が対抗要件として利用されることが多くなることが予想されます。その結果、全体としては、譲渡登記を通じた譲渡担保権の公示が進むことになると考えております。
○平林委員 ありがとうございます。
最後、もう一つ質問を用意しておりましたけれども、命令の関係に関しましては、ちょっとまた、もう時間がございませんので省略させていただけたらと思います。
本法案が中小企業の皆様のより円滑な資金調達に資することを願いまして、私の質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○西村委員長 大臣から答弁の修正がございますので、お願いいたします。鈴木大臣。
○鈴木国務大臣 今の平林委員の最初の問いの中で、動産以外の財産を担保の目的とする取引についての法律関係の予見可能性と申し上げていたところが、正確には、動産等の財産を担保の目的とする取引についての法律関係の予見可能性と言うべきところでありました。
おわびの上、訂正を申し上げます。
○西村委員長 次に、本村伸子さん。
○本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。
譲渡担保法案について質問いたします。
今回の法案は、事業のための資金調達、融資を受けるために事業に必要な機械などを譲渡して財産権を移してお金を借りて、お金を返したらその機械の財産権を元の所有者に戻すという慣行で行われていた譲渡担保、集合動産譲渡担保というものを法的に整理した法案だというふうに思いますけれども、機械などの場合は譲渡担保といい、倉庫の中の商品のような場合は集合動産譲渡担保ということになっております。
お金が返せなくなった場合、債務不履行に陥った場合にどこかに処分されてお金に換えられてしまう可能性があります。そうなると、会社、法人が倒産ということとなり、そのときに未払い賃金、退職金、賞与など、労働者への支払いができなくなるおそれがあります。
こうした労働債権をちゃんと支払うためにどのような手だてを取っているのかという点をまず確認をさせていただきたいと思います。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
譲渡担保法案は、担保権の及ぶ範囲が広範なものとなりがちな集合動産譲渡担保権又は集合債権譲渡担保権について、一般債権者への弁済原資を確保し、これによって担保権者と一般債権者との間の分配の公平を図るという観点から、新たな制度を創設しているところでございます。
すなわち、これらの担保権が実行された場合におきまして、設定者について法的倒産手続が開始したときは、担保権者が実行により回収した額のうちの一定額を破産財団等に組み入れなければならないこととしております。
具体的には、集合動産又は集合債権の価額の九〇%に相当する額と実行費用及び最先順位の譲渡担保権の被担保債権の元本の合計額とのいずれか大きい方の額を超えて被担保債権が消滅した場合に、譲渡担保権者はその超える額を組み入れなければならないこととしております。組み入れられた金銭は、倒産手続の中で労働債権者を含む一般債権者に対する配当原資になり得るなど、この組入れ制度は一般債権の弁済に資するものであると考えております。
○本村委員 法案では、集合譲渡担保と譲渡担保で規律が違うわけです。集合動産、集合債権譲渡担保権の場合のみ一割ということで、一割以上ということで、労働債権のために確保をされるというふうに思います。
例えばなんですけれども、ある事業者が保有する事業所の設備、施設一式が単体と認識されても、定期的にメンテナンスが行われて、各設備が新しい機器に更新されて、それが労働者によって運用されているという場合は、労働者の寄与の程度が大きく、集合動産譲渡担保と同様に労働債権分として保護するべきだというふうに考えますけれども、特定物を対象とする譲渡担保と集合譲渡担保とを具体的にどのように区別をするのかという点、お示しをいただきたいと思います。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
譲渡担保法案では、集合動産譲渡担保契約は、動産の種類、所在場所その他の事項によって定められた範囲によって特定された動産を一体としてその目的とするものをいうとしております。これは、集合動産を目的とする譲渡担保権に当たるためには、多数の動産を目的としているというだけでなく、その範囲に将来において新たに動産が加入することが予定されている必要があることを意味しております。
そのため、譲渡担保契約の目的が現に存在する複数の動産のみを担保の目的としている場合には、個別の動産を目的とする譲渡担保契約でありますが、現に存在する動産に加えまして、将来の動産についても属し得るものとしてその範囲が定められている場合には、集合動産譲渡担保契約に該当することになると考えております。
○本村委員 そうしますと、メンテナンスなどをして新しく更新するという場合も含む契約であるのであれば、集合動産とみなせるという考え方でよろしいでしょうか。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
個別の事情あるいは個別の契約の内容にもよるかと思いますが、将来において新たに動産が加入することが予定されているかどうかというのが区別の基準になると考えております。
○本村委員 譲渡担保の場合も労働者が寄与する程度がかなり大きいというものもあるというふうに思います。譲渡担保の場合でも労働債権をちゃんと確保するべきだというふうに考えますけれども、大臣、御答弁をお願いしたいと思います。
○鈴木国務大臣 今局長からも申し上げましたように、集合動産を目的とする譲渡担保権に当たるためには、多数の動産を目的としているということのみだけではなくて、その範囲に将来において新たに動産が加入することが予定をされているということが必要となるということでございます。
譲渡担保権の目的に新たな動産が加入することが予定をされていない場合、すなわち、今お尋ねの個別動産を目的とする譲渡担保権について組入れ義務を設けるとした場合には、質権や抵当権などのほかの担保権について組入れ義務が設けられていないこととの整合性が問題となることも考えられます。
このために、個別の動産を目的とする譲渡担保権を組入れ制度の対象とすることについては慎重な検討を要すると考えているところでございます。
譲渡担保権の範囲に将来において新たに動産が加入することが予定されているかどうかについては、譲渡担保契約における譲渡担保権の目的財産の定め方によるところがございますので、契約上定められた目的物の範囲に既存の動産だけではなくて将来における動産が含まれ得ると解釈をされる場合、その場合に、集合動産譲渡担保権に該当するということで、組入れ制度が適用されるということになるというのが私どもの見解でございます。
○本村委員 労働債権についてはしっかりと、働く方々と家族、あるいは命、暮らしを守るためにも確保のための対策を強化していただきたいというふうに思っているわけですけれども、今回、財産の価値の一割を倒産財団のために確保をして組み入れる制度ということで、一割以上というふうには先ほども答弁がありましたけれども、十分に労働債権の弁済が図られるのかという問題があります。これだけでは労働債権の保全には不十分と言わざるを得ないというふうに思います。
労働債権などの一般債権者への弁済の実効性を高めるためには、倒産財団、破産財団への組入れ対象の範囲の拡大ですとか新たな供託制度による保全対策の強化、これは先ほど来御議論もありましたけれども、改めてやはりこうした対策が必要だというふうに考えますけれども、大臣の御所見を伺いたいと思います。
○鈴木国務大臣 今回の譲渡担保法案が規定をする組入れ額、ここは一般債権者に対する弁済原資を確保をしつつ、担保価値の減少による融資実務への影響、これについても配慮をしたものでありまして、まさにその実効性ということを期待できると私どもとしては考えているところであります。
破産財団への組入れ対象範囲の拡大ということ、すなわちそれは組入れの対象である目的財産の価格の一〇%という割合を増加をさせるということかと思いますけれども、その場合には、担保価値の減少による融資実務への影響に鑑みると、この割合を増加させることについては慎重な検討がやはり必要であろうと我々としては考えております。
また、お尋ねの新たな供託制度による保全対策、これは倒産手続開始前の時点であらかじめ組入れ額を供託をさせる、そういった制度ということかと存じますが、そのような制度については、設定者について倒産手続が開始されるまでは組入れ義務は発生をしていない、債務が存在をすることを前提とする弁済供託を義務づけることはできない等々の課題があるところでありまして、その導入についても慎重な検討が必要ではないかと考えております。
いずれにいたしましても、私どもといたしましては、組入れ制度の内容について周知に努めていく、そして同時に、施行後は、譲渡担保法施行後の組入れ制度の運用状況等、これをしっかりと注視をしてまいりたいと考えております。
○本村委員 働く方々と家族の命と暮らしを守るために対策を強化していただきたいと思います。
労働債権はほかの債権者や国の社会保障制度の請求権に優先して支払われる、労働債権の保護を確実にするためのILO百七十三号条約、これも早期に批准をするべきだということを私からも強調をさせていただきたいというふうに思います。
次に、資金の回収、保全のための、金融機関が財産を根こそぎ回収するという手段に使われるおそれについてですけれども、それを一定抑えるために、私的実行の完了までの一定の猶予期間を創設し、着手から二週間を経過するまでは実行が完了しないものとしております。
お金を借りている事業者への通知がなされたとしても、当事者の方がやむを得ない事情で通知されたということが分からない、そういう場合もあると思います。私も実際いろいろな御相談を受ける中で、ポストに通知が入っていたけれども別の場所にいたのでそれを知らなかった、でもそのうちに差押えされてしまったという御相談も受けたんですけれども、そういうこともあるかというふうに思います。
そういう場合もあるということで、二週間の猶予期間では設定者の保護には不十分ではないかというふうに考えますけれども、その点、御所見を伺いたいと思います。
○鈴木国務大臣 今回の法案におきましては、今御指摘のように、私的実行の効果が発生をするには、設定者に対する通知、ここから二週間が経過をすること等が必要であるとされているところであります。
この通知の効力が発生をするには、通知が設定者に到達をすること、これはすなわち通知が設定者にとって了知可能な状態に置かれること、これが必要となると私どもとしては認識をしております。
その趣旨として申し上げると、この法案における猶予期間、これは設定者に対する通知が設定者にとって了知可能な状態に置かれたことを前提として、その前提の下で、譲渡担保権者等の利益との調整の観点も踏まえつつ、その時点から私的実行の効果が発生するまでに二週間の期間を設けたということであります。まさにそれは設定者の事業再生の利益を保護するための実効性の図られた制度と私どもとしては考えているところであります。
その上で、今、通知が了知して、どういう状況なんだということでありますけれども、どの時点で通知が設定者にとって了知可能な状態に置かれたと評価をして二週間の期間の起算をするかということについては、これは個別具体的な事情もありますので、そこに応じて裁判所において適切に判断をされると私どもとしては考えております。
○本村委員 会社更生ですとか事業再生ができるように、是非柔軟に解釈をするということでお願いをしたいというふうに思います。
法案は、新しい融資制度を創設するものではなく、実務上、判例法理で運用されてきた既存の譲渡担保制度を法制化するものにすぎないというふうに思います。中小企業、小規模事業者の皆さんに関しては、無担保で融資をすることが今広がっている現状があります。
本法案は、無担保で融資を受けられない事業者が融資を受ける手段とはなり得るというふうに思いますけれども、本来であれば、無担保融資制度の枠組みを拡大するということが最優先であるべきだというふうに思います。特に、今、トランプ関税の影響が大変心配をされております。
私は、愛知県豊田市の出身で、住んでおりますけれども、自動車産業を含め様々な産業、電機産業なんかはリストラの計画が様々出ております。本当に中小・小規模事業者の皆さんのことが心配されるわけでございます。地元の中小・小規模事業者の団体の皆様から様々お話も伺っておりますけれども、今、中小・小規模事業者の皆さんを守る思い切った支援が必要なのではないかというふうに考えますけれども、経済産業副大臣、そして大臣にお伺いをしたいと思います。
○西村委員長 大串経済産業副大臣、時間が参りますので、簡潔に。御協力お願いします。
○大串副大臣 中小企業の資金繰り円滑化のために、日本公庫等による貸付け、そして民間金融機関から借入れに対する信用保証を通じた金融支援を実施しております。
無担保融資に関しましては、日本公庫等により、貸付金額全体のうち大半は無担保で融資をしております。また、信用保証においても、一社当たりの平均利用額は二千四百万程度に対して、八千万円を上限として無担保で保証付融資を受けられる枠を設けているところでありまして、まずはこうした既存の制度の活用を図っていくところでございます。
また、お尋ねの米国の関税措置の影響を受けて、事業者に対しては、政府としては、短期の資金繰り支援策として、日本公庫の低利融資制度であるセーフティーネット貸付けの利用要件の緩和を講じているところでもありまして、本融資制度も無担保で利用が可能となっております。
経産省としては、引き続き、中小企業を取り巻く状況を注視しながら、適切な支援を実施してまいります。
○鈴木国務大臣 担保付融資において、要は、担保を提供しない場合と比較して借り手が有利な条件で融資を受けられる場合、それも多いこともありますので、まさにそれはメリット、デメリット両方あると思います。
そういったことで、多様な資金調達の選択肢の存在、これは私どもとしても大事だと考えておりますので、企業の円滑な資金調達、これが促進されるように、関係省庁とも連携をして取り組んでまいりたいと考えております。
○西村委員長 本村さん、時間ですので、終わってください。
○本村委員 はい。
ありがとうございました。
○西村委員長 次に、吉川里奈さん。
○吉川(里)委員 参政党の吉川里奈です。
本日は、譲渡担保法案に関連し、質問を行います。
譲渡担保は、太陽光発電設備や売電債権、電気を売って得られる収入ですね、これを担保として太陽光発電の事業者に多く使われています。この実態を見ると、今回の法整備は、太陽光発電への融資を後押しする側面があるようにも見受けられます。
そこで、お尋ねします。
今般の法案では、担保取引のルールの明確化をするとのことですが、明確化をすることによって何を実現しようとしているのか、立法の目的と政策的な意義について、大臣の御見解を端的にお願いいたします。
○鈴木国務大臣 先ほど来何回か申し上げておりますが、従来、動産や債権を担保として資金を調達する場合に用いられてきた譲渡担保あるいは所有権留保については明文の規定がないということ、専ら判例によって規律をされてきたために、法的な安定性、ここに欠ける面があって、まさに、そういった面があるのに加えて、判例においても、譲渡担保権を活用した金融実務の要請に応えることができていない、そういった点がありました。
そういったことから、まさに、法律関係の明確化、あるいは取引の法的安定性の確保を図るとともに、必要に応じて、より合理的なルールを導入することによって、不動産担保や個人保証に依存しない企業の資金調達手法の多様化を促進するものということで、私どもとしては提案をしてございます。
○吉川(里)委員 御答弁で制度の目的は理解しましたが、実際の活用は太陽光発電に偏りが見られます。幅広い業種の事業者にとって利用しやすい制度とはなっていないようにも感じられます。
また、事前の説明によれば、法務省、金融庁共に、利用の実態や法制化による経済的影響について把握をしていないということでした。法制化が国民生活や中小企業の現場にどのような影響を及ぼすのか、関係省庁にはその検討が求められると思います。
他方、経済産業省の資料では、譲渡担保の利用実態が詳細に調査をされております。
そこで、経済産業省にお尋ねします。
他の委員からも太陽光が多いとの御指摘がありましたが、譲渡担保による融資、ABLのうち、太陽光発電設備及び売電債権への直近の融資の実行件数と実行額が全体において占める割合をお示しください。
また、法制化による経済効果、こちらをどのように評価しているのか、お答えください。
○河野政府参考人 お答え申し上げます。
経済産業省におきましては、先生御指摘のとおり、二〇二二年度に実施した委託調査によりますと、二〇二一年度における、アンケート調査で回答された、いわゆる譲渡担保を用いた融資のうち、今御指摘ございましたけれども、太陽光発電設備と売電債権を担保とした融資の割合は、件数ベースで見ますと約四五%、金額ベースで見ますと約五一%ということになってございます。
この譲渡担保法案でございますけれども、民間の営みが先行する中で、動産や債権等を目的とする担保取引につきまして予見可能性それから法的安定性を高めるべく今般法制化が検討されているものと承知してございまして、本法案の制度のみを切り出してその経済効果を評価することは困難ではないかというふうに考えているところでございます。
○吉川(里)委員 譲渡担保の実態として、太陽光発電設備及び売電債権が一番多く、半数を占めているということです。制度の効果については、これだけを切り取っては分からないということです。ですが、これだけ特定分野に偏って利用されている実態があるのだからこそ、経済効果を評価しないというのは、私はずさんだと思います。
実態調査も、これは二〇二三年で止まっていると伺いました。法制化を行うことで資金調達をしやすくするのであれば、引き続き動向を追って、経済効果を検証していただきたいと思います。
私たちは、行き過ぎた再エネ事業に慎重な立場を取っています。再エネ賦課金による国民負担、出力の不安定性、化石燃料削減効果の限界、電力余剰による出力抑制など、現実的な課題が山積しています。加えて、FIT制度の見直しに伴う事業縮小、関連企業の倒産増、そして産業廃棄物の処理といった将来的課題も無視できません。
今回の法制化が特定の事業を、業種を対象としたものではないことは承知しておりますが、譲渡担保の多くが太陽光発電関連融資に偏っているということは事実であり、この傾向は今後も慎重に注視すべき重要な視点であると考えます。
営業資産を担保にする譲渡担保の仕組みは企業の支配につながるおそれが指摘されており、今回の法改正が外資ファンドによる日本企業の買収に利用されることはないのかという懸念があります。
経営難の企業が過剰担保や厳しい条件等を課せられ返済不能となった場合に、担保権を実行し、日本の企業の事業再生の機会を不当に奪われるような実態が生じるおそれはないのか、大臣の御見解を伺います。
○鈴木国務大臣 まさに担保権設定者が事業を再生しようとする場合に、事業の継続にとって必要な財産、これが担保権の実行によって流出するということになれば、当然その設定者の事業再生の機会、これは失われることになってしまいます。もちろん、そういったことがあってはならないわけでありまして、今の倒産法におきましても、事業の継続に必要な財産の流出を防ぐ、そのために担保権の実行手続の中止命令などの制度が設けられておりまして、今回の法案においても同様な対応が取れるような、そういった措置をしているところでもあります。
また、この譲渡担保法案におきましては、様々、設定者の事業再生の機会をより厚く確保する、そういった制度を設けているところでありますので、まさにそうした今回の制度によって、日本企業等々の設定者、この事業再生の機会を不当に奪うということにはならないと私どもとしては考えておるところであります。
○吉川(里)委員 制度の明文化によって利便性は高まりますが、外資ファンドによる買収に悪用されないように十分な注意が必要かと思います。譲渡担保の手続に一定のルールが設けられた点は評価しますが、太陽光関連に偏った実態や企業買収の悪用リスクについては今後も注視が必要であると思います。
立法府として、法制化後の実態把握、経済効果、検証においては関係省庁で取り組んでいただきたいということを申し上げまして、私の質問を終わります。
ありがとうございました。
○西村委員長 次に、島田洋一さん。
○島田(洋)委員 日本保守党の島田です。
この法案は、担保として不動産等を有しない中小企業が資金調達しやすくなると期待できる点で、しっかり運用されれば経済活性化に資する、その点は評価しているんですが、同時に、この法案が成立すると、動産譲渡登記、延長登記、抹消登記等、オンライン手続の利用が相当大幅に増えると予想されます。先ほど民事局長も、まさにそのオンライン手続の利用促進に努めるとおっしゃっていましたけれども、となると、その分やはり、サイバー攻撃による情報漏れ、データの書換え等のリスクも高まると見ておかざるを得ない。
ちなみに、二日ほど前、ロイター通信等が報じましたけれども、中国製の太陽光発電システムに仕様書にない通信機器が組み込まれていて、調査の結果、遠隔操作で送電網に破壊的な打撃を与える能力を有していたと。
こういった状況を踏まえて、五月十六日には能動的サイバー防御法が成立しました。すなわち、特定の基幹インフラに対してサイバー攻撃があった、あるいはその兆候が認められた場合には能動的サイバー防御、すなわち反撃を可能にする、機動的に行うという法案ですが、この防御対象に、防衛対象になる基幹インフラにこのオンライン登記システムも含まれるのか否か、大臣、お願いします。
○鈴木国務大臣 これは私どもの所管の法案ということではありませんので、そこについての答弁は差し控えさせていただきたいと思いますが、いずれにしても、こういった情報セキュリティーの確保、これは極めて重要な課題と私どもとしても認識をしております。
○島田(洋)委員 このオンライン登記システムがもし破壊されるということになると、経済的に大混乱になりますし、この能動的サイバー防御の任務に実際当たるのは警察、防衛省とかの専門家と聞いていますけれども、そっちの方面にこの債権、担保、譲渡担保法案、法に詳しい人たちがそんなたくさんいるとも思えないので、やはり法務省としても、警察、防衛省とかに対して協力をしっかりすべきじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
○鈴木国務大臣 まさにこうした情報セキュリティーの確保は極めて重要でありますので、そうした様々な情報管理も含めて、これは関係省庁とも適切に連携をしてまいりたいと考えております。
○島田(洋)委員 しっかり機動的に行っていただきたいと思うんですが。
中国に関しては、二〇一七年に国家情報法を制定して、在外中国国民に対しても情報工作活動への協力を強要する、こういう動きになっています。それに対して、例えば、自民党の小野寺五典政調会長はこうコメントしていますね。非常に恐ろしい法律だ、国際社会から見てあり得ない内容だと。
こういう状況が近隣に発生しているということですが、この小野寺政調会長のコメント、これは法務大臣も共有されますか、その認識は。
○鈴木国務大臣 私も、政府としての、他国の法律、この内容であったり運用、そこについて申し上げる立場にありませんが、しかしながら、当然のことながら、中国ということであれば、我が国の安全保障上極めて重要な問題だと思いますし、まさに報道されているようなことが実際、事実であれば、これは普通に我々の感覚から考えればあり得ないことではないかと考えております。
○島田(洋)委員 この国家情報法の危険というものに関しては、松本外務政務官にもおいでいただいていますけれども、外務当局としては、この中国の法律に関してどういう認識であり、また、これまでにどういう申入れを中国に対して行ってきたのか、この点、お願いします。
○松本大臣政務官 島田委員にお答えします。
中国の国家情報法につきましては、今、鈴木法務大臣がおっしゃったとおり、政府としてお答えする立場にないんですけれども、御指摘の小野寺氏の発言については、二〇二二年の九月にテレビ番組内で発言したというふうに我々も承知をしております。
その上で、いかなる組織及び公民も国家情報工作を法に基づき支持し協力しなければならないといった規定がこの国家情報法というのには書かれておりまして、こういった規定やその運用については、小野寺氏のように懸念をする見方もあるというのは当然だろうというふうに思います。
外務省として、そういった懸念も念頭に置きつつ、国内法の規定を踏まえて、国家及び国民の安全が害されないように適切に対応していかなければいけないというふうに思っております。
ありがとうございます。
○島田(洋)委員 また、中国からのサイバー攻撃、北朝鮮等もやってくる可能性がありますけれども、あるいはロシアとかイランとか、これは送電網とか、そういう分かりやすいインフラシステムだけじゃなくて、このオンライン登記システムとか、そういう経済混乱を狙ったサイバー攻撃も活発化すると見ておかないといけないと思うので、この辺、大臣、強い意識で取り組んでいただきたいと思います。
一言、どうですか。
○西村委員長 鈴木大臣、時間が来ていますので、簡潔にお願いいたします。
○鈴木国務大臣 政府として万全を期してまいりたいと思います。
○島田(洋)委員 それじゃ、時間が来ましたので終わります。
○西村委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。
―――――――――――――
○西村委員長 これより両案を一括して討論に入るのでありますが、その申出がありませんので、直ちに採決に入ります。
まず、内閣提出、譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律案について採決いたします。
本案に賛成の皆さんの起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○西村委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
次に、内閣提出、譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について採決いたします。
本案に賛成の皆さんの起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○西村委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
―――――――――――――
○西村委員長 この際、ただいま議決いたしました両案に対し、津島淳さん外七名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、国民民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党、参政党及び日本保守党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
提出者から趣旨の説明を聴取いたします。松下玲子さん。
○松下委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきます。
譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律案及び譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案に対する附帯決議(案)
政府及び最高裁判所は、両法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。
一 労働債権が労働者やその家族の生活維持に不可欠であり、社会的公正や社会政策上の観点から特別な保護の必要性が高いことを踏まえ、譲渡担保権の実行に際しての破産財団等への組入義務など、一般債権者への弁済原資を確保するための新たな制度に係る両法施行後の運用状況について検証し、企業の倒産時における労働債権について優先順位の引上げ等に関し、引き続き必要な検討を行うこと。併せて、ILO第百七十三号条約の早期批准に向けて検討に努めること。
二 動産及び債権譲渡の対抗要件の見直し並びに所有権留保登記の新設等に伴い、企業における登記の需要が増大することから、登記申請の際の添付情報の合理化、オンライン申請における本人確認の合理化など、登記手続の利便性の向上及びコスト低減のための方策を検討し、必要な措置を講じること。
三 本改正が融資実務に多大な影響を与えることに鑑み、両法の趣旨や内容、裁判手続等について周知広報を徹底するとともに、施行に向けた適切な準備を進めること。
以上であります。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○西村委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。
本動議に賛成の皆さんの起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○西村委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。
この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。鈴木法務大臣。
○鈴木国務大臣 ただいま可決されました譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律案及び譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
また、最高裁判所に係る附帯決議につきましては、最高裁判所にその趣旨を伝えたいと存じます。
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○西村委員長 お諮りいたします。
ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○西村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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〔報告書は附録に掲載〕
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○西村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時九分散会