第16号 令和7年5月14日(水曜日)
令和七年五月十四日(水曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 藤丸 敏君
理事 上野賢一郎君 理事 古賀 篤君
理事 長坂 康正君 理事 井坂 信彦君
理事 岡本 充功君 理事 早稲田ゆき君
理事 梅村 聡君 理事 浅野 哲君
安藤たかお君 勝目 康君
草間 剛君 後藤 茂之君
小林 茂樹君 佐々木 紀君
塩崎 彰久君 鈴木 隼人君
田畑 裕明君 田村 憲久君
根本 拓君 長谷川淳二君
平口 洋君 深澤 陽一君
福田かおる君 森下 千里君
山本 大地君 吉田 真次君
池田 真紀君 大塚小百合君
大西 健介君 酒井なつみ君
宗野 創君 堤 かなめ君
中島 克仁君 長妻 昭君
長谷川嘉一君 宮川 伸君
山井 和則君 柚木 道義君
阿部 圭史君 池下 卓君
猪口 幸子君 福田 徹君
森ようすけ君 沼崎 満子君
浜地 雅一君 八幡 愛君
田村 貴昭君
…………………………………
厚生労働大臣 福岡 資麿君
内閣府副大臣 辻 清人君
総務副大臣 冨樫 博之君
文部科学副大臣 野中 厚君
厚生労働副大臣 鰐淵 洋子君
総務大臣政務官 古川 直季君
厚生労働大臣政務官 安藤たかお君
厚生労働大臣政務官 吉田 真次君
政府参考人
(こども家庭庁長官官房審議官) 竹林 悟史君
政府参考人
(総務省自治行政局公務員部長) 小池 信之君
政府参考人
(法務省大臣官房審議官) 内野 宗揮君
政府参考人
(文部科学省大臣官房審議官) 福井 俊英君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房高齢・障害者雇用開発審議官) 藤川 眞行君
政府参考人
(厚生労働省労働基準局長) 岸本 武史君
政府参考人
(厚生労働省労働基準局安全衛生部長) 井内 努君
政府参考人
(厚生労働省雇用環境・均等局長) 田中佐智子君
政府参考人
(厚生労働省社会・援護局長) 日原 知己君
政府参考人
(厚生労働省老健局長) 黒田 秀郎君
政府参考人
(厚生労働省年金局長) 間 隆一郎君
政府参考人
(経済産業省商務情報政策局商務・サービス政策統括調整官) 江澤 正名君
厚生労働委員会専門員 森 恭子君
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委員の異動
五月十四日
辞任 補欠選任
佐々木 紀君 小林 茂樹君
長谷川淳二君 勝目 康君
吉田 真次君 山本 大地君
同日
辞任 補欠選任
勝目 康君 長谷川淳二君
小林 茂樹君 佐々木 紀君
山本 大地君 吉田 真次君
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第五〇号)
――――◇―――――
○藤丸委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。
この際、お諮りいたします。
本案審査のため、本日、政府参考人としてこども家庭庁長官官房審議官竹林悟史君、総務省自治行政局公務員部長小池信之君、法務省大臣官房審議官内野宗揮君、文部科学省大臣官房審議官福井俊英君、厚生労働省大臣官房高齢・障害者雇用開発審議官藤川眞行君、労働基準局長岸本武史君、労働基準局安全衛生部長井内努君、雇用環境・均等局長田中佐智子君、社会・援護局長日原知己君、老健局長黒田秀郎君、年金局長間隆一郎君、経済産業省商務情報政策局商務・サービス政策統括調整官江澤正名君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○藤丸委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○藤丸委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。山井和則君。
○山井委員 二十分間、質問をさせていただきます。
後半は本題のカスハラ防止についても質問させていただきますが、昨日、自民党と公明党が年金改革法案を党内了承したということを聞きましたので、まずはそのことについて、大変な御努力をしていただいたんだと思います。自民党、公明党、厚生労働省の皆さんに御礼を言いたいと思います。
私たちも繰り返し、この年金改革法案、今国会で早く出せ出せと言っていた以上、出させるだけ出させて通さないというわけにはいかないと思っておりますので、今国会で何としても修正を加えた上で成立させたいと思っておりますし、先の話ですけれども、参議院では六月四日水曜日の本会議で審議しないと今国会で成立できないということですから、もし与野党の修正協議がうまくいくのであれば、本当に、五月三十日に衆議院が通過できるぐらいでいかないと、これは私たちの都合じゃなくて、参議院側の都合でお尻があるわけなので、そういう意味では、この短期間の間に与野党で修正協議をして、しっかりした中身のある法案にすべきではないかと思っております。
そういう中で、もう報道もされておりますけれども、今回の最大の問題点は、あんパンのあんこと言われておりますけれども、就職氷河期世代以降の低年金の底上げの部分、正確に言いますと、厚生年金と基礎年金の調整期間の一致という目玉の部分がこの法案からすっぽりと抜け落ちてしまったということであります。
これについては、今日の配付資料にもありますように、例えば、私の尊敬する年金の専門家の駒村教授は、氷河期世代を放置するなというふうに訴えておられますし、その横の新聞でも、年金底上げ、導入は政治判断ということで、そういう意味では、就職氷河期世代以降の低年金の底上げ、調整期間の一致、これを修正で入れるかどうかは、ある意味で、この衆議院厚生労働委員会の与野党の私たちの責任に懸かっているというふうに思います。
それで、今日の配付資料にもありますように、十二ページですか、やはり何度言っても言い過ぎではないと思いますが、最悪の試算によると、今百万人の高齢者の生活保護の人が、二〇五〇年には二百万人に倍増するリスクがある、そういう恐ろしい状況なんですね。そういう意味では、就職世代を含めた現役の低年金の方々が今後三割年金がカットされるのを、何とかその年金の低下を防がねばならない。これは就職氷河期世代以降の現役の方々にとっては、本当に死活問題だと思うんですね。
そこでなんですけれども、今回どういう法案かということを、ちょっと僭越ながら説明を一言だけさせていただきますと、今日の配付資料九ページにもありますように、私は一番、今回の調整期間の一致の肝はこの九ページの図だと思うんです。
二〇四〇年度に六十五歳で受給開始、つまり、今五十歳の人が平均余命まで生きた場合、今回のあんパンのあんこ、低年金の底上げを入れたらどれだけ影響するか。今五十歳の人ですよ、六十五歳から受けたら。モデル世帯二人分だったら、生涯で四百五十一万円、年金の受給額が増える。比較的厚生年金が高い方でも百三十六万が増える。逆に言えば、もっと低年金の方は何と生涯年金が二百十五万増えるということなんですよね。これはやはりもう死活問題ですよ、低年金の方にとっては二百十五万円も増えるわけですから。これは全員ですからね。
そういう意味では、今の高齢者の方はちょっと減る部分もあって、ここは何らかの措置が必要だとは思うものの、五十歳以下の現役世代の方々にとっては大幅に年金が増えて、特に低年金の人の年金が増えるという、これは本当に切り札なんですね、就職氷河期世代を救う。こういうことです。
そこで、駒村教授の今日の毎日新聞を読みたいんですけれども、どう書いてあるか。今日の毎日新聞です。提出優先、骨抜き年金法案、基礎年金底上げ削除、選挙重視、最大のリスク。駒村教授ですね。読み上げます。
底上げ案は、比較的家計に余裕がある世代が、氷河期世代など不遇な世代のリスクを補う仕組みだった。厚生年金の流用といった批判があるが、法案がもっと早くに国会に提出され議論していれば、制度の趣旨が理解され、政治的な合意も取れたのではないか。対策がないままに四十年を迎えれば、低年金者が増え、年金への信頼、社会不安も広がる。生活保護に頼る高齢者は増加し、国費も圧迫するだろう。底上げ案に反対した自民党議員は、将来何が起こるか議論した上で削ったのか。数か月先の選挙が大事だっただけではないのか。年金は長期の議論が不可欠である。それを補うのが政治の役割のはずである。政治の視野が短期に向かうのが年金制度の最大のリスクである。こういうことを書いておられます。
あえて私もおわびを言いますと、確かに二〇〇七年の消えた年金のとき、私たちも乱闘になって大変御迷惑をおかけして、そういうことがあったので、今回も、もうそんなややこしいことはやめておこうということになったのであって、私も責任の一端があると思うので、こういうふうに丁重に言っているんですけれどもね。でも、今回は何とか党利党略を超えて、政争を超えて、駒村先生がおっしゃっているように、低年金の底上げをせねばならないと思います。
そこで、あえてきついことを言いますが、福岡大臣、今回、この底上げ部分を削除したということは、自民党や石破政権というのは、就職氷河期の方々の低年金の問題はもう放置する、就職氷河期世代というのはもう見捨てるということなんですか。
○福岡国務大臣 基礎年金のマクロ経済スライドを早期に終了させる措置につきましては、昨年末の社会保障審議会年金部会の議論においても、賛成、慎重、両方の意見があったところでございます。
その後、御承知のとおり、与党における法案審議の中でも、厚生年金の積立金を活用してこの措置を行うことについて、慎重な意見があったところでございます。
そのような中で、今回の法案は、五年に一度の財政検証の結果を踏まえまして、被用者保険の適用拡大などの重要な改正事項を検討しておるところから、できる限り早期に法案を提出するように、国会でも再三にわたって御要請いただいたところでございます。
できる限り早く法案を提出し、御審議いただくという点を重視し、基礎年金のマクロ経済スライドの早期終了の具体的な仕組みについては規定しない方向で、現在、最終的な調整を行っているところでございます。
○山井委員 時間に限りがあるので端的にお答えいただきたいんですけれども、慎重な意見が多かったというのは、どんな慎重な意見なんですか。これは就職氷河期世代の低年金を底上げする切り札で、これをやらなかったら将来大変なことになるという、メリットがあるわけですね。もちろんデメリットがあるのも分かりますよ。どういう慎重意見があったか、端的に短くお答えください。
○福岡国務大臣 基礎年金のマクロ経済スライドの早期終了の具体的な仕組みに関しまして、厚生年金の積立金を活用する、このことについて慎重な御意見があったということでございます。
○山井委員 でも、今言ったように、私はそこに誤解があると言っている。
何か今の答弁を聞いたら、厚生年金の人が損するみたいなイメージがあるんだけれども、違うんですよ。さっき言ったように、五十歳以下の人は全員大幅に得するんですからね。流用というけれども、厚生年金の人も一階は基礎年金なんだから。
そういう意味では、繰り返し言いますけれども、今の五十歳以下の人は、モデル世帯で四百五十一万円、高い年金の人でも百三十六万円、低い年金の方では二百十五万円、この傾向は、五十歳よりも四十歳、四十歳よりも三十歳、ますます増額が増えるんですからね。
そういう意味では、やはりこれは話し合えば、そういう誤解というか懸念があるのは分からないではありませんけれども、これから限られた時間で与野党で協議すれば、私は合意できると思うんです。
そこでなんですけれども、やはり、何党がじゃなくて、ここまでマスコミから就職氷河期世代の年金底上げが削除されてとんでもないとたたかれている以上は、やはり与野党でスピーディーに協議をして、就職氷河期世代の年金底上げの、調整期間の一致を入れた、それで衆議院を通過したとなれば、多くの方が本当にほっとされるし。
言っておきますけれども、本当に調整期間の一致をやるかどうかの判断は五年後ですからね。はっきり言って五年後ですから、今入れても確実にやるわけではないんですよ。ただ、今入れておかなかったら五年後にもほとんどできないということですから、やはり今入れておくというのは、はっきり言って、それほど実害はないと思うんですね。今入れなかったらもう永遠にやらないということですから、ちょっと言いづらいですけれども、あえて言いますけれども、将来、低年金の方が増えたときには、与党も野党も含めて、何であのとき私たちを見捨てたんだというのは、一〇〇%私たちは言われるリスクがあると思うんです。
そこで、福岡大臣にお伺いしたいんですけれども、法案提出が金曜日ですから答えづらいのは分かっておりますけれども、あえてお聞きします。
こういう形で、苦渋の形で法案を出されるということは理解をし、感謝をしておりますけれども、やはりこれは、あんパンの中のあんこ、調整期間の一致という、就職氷河期世代以降の低年金の底上げの部分を修正して与野党でもし合意できたならば、修正してもし合意できたならば、法案審議前から仮定の話で本当に申し訳ないんですけれども、ただ、これは本当にちょっと重要な問題なので、あえてお聞きします。もしそういう合意ができたならば、厚生労働省としても別にそれを排除するものではないという考えでよろしいですか。
○福岡国務大臣 まず、私どもとしては、与党の審査を経まして、今週中にも法案提出に向けた手続を今進めさせていただいているところでございます。
提出後に国会において政党間で協議をされることにつきましては、恐縮ですが、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。
○山井委員 ここは、おっしゃるように、厚労省として答えられるというよりも、ボールは私たち与野党の議員と藤丸委員長に懸かっておりますので、是非とも五月三十日の日にはそういう円満な決着ができるように頑張りたいと思います。
それで、昨日、介護クラフトユニオンの方々が深刻なハラスメント、介護職員、ケアマネさんの深刻なハラスメント、目を覆うばかりのハラスメントの被害の報告がございました。私も聞かせていただきました。
その中で、ハラスメント防止の質問は次にしますけれども、その前段として、今困っているのは、ヘルパーを派遣してくれと言われても、ヘルパー不足で派遣できない、それで、何で派遣できないんだとケアマネさんが追及されている、困っているということで、このままでは、保険料を払っているのにヘルパーを派遣できないということはあり得ないということで、介護職員さんの処遇改善が必要だということを要望をされました。
田村さんもおられますけれども、今、私たち、介護職員処遇改善法案を出しておりまして、協議をすることになっているんですけれども、実は、この法案、調べてみたら、野党は二〇〇八年にも出しているんですよ、介護職員処遇改善法案。そして、大もめにもめた末、最後、与野党協議して合意しまして、委員長提案で成立させたんですよ。それが二〇〇九年の処遇改善加算につながったんですよ。与野党合意したんですよ。そのときの筆頭理事は誰かと思ったら、私と田村さんだったんですよね、十七年前。
何を言いたいかというと、もちろん、この介護職員の処遇改善も、与党も野党も参議院で訴えるわけですから、できれば、補正予算には入れましょうということを与野党で合意するとか、選挙でけんかするだけじゃなくて、藤丸委員長のリーダーシップの下、やはり何か結果を出すということをしないと、この厚生労働委員会も存在意義がないと思うんです。補正予算で介護職員、障害福祉職員の処遇改善を是非入れていただきたいんですが、福岡大臣、いかがですか。
○福岡国務大臣 今御指摘いただきましたように、介護だったり障害福祉分野における人手不足、大変厳しいものがありますので、処遇改善が喫緊の課題だということは認識をしてございます。
これまで、昨年度の報酬改定だったり補正予算の措置、そういったことも講じてきておりますが、さらに、資金繰りが厳しい事業所等に向けて、今、WAMの融資枠の拡大、こういったこともやらせていただいています。
補正の効果が表れてくるのはこの夏頃からでございますから、そういった状況もしっかり見極めながら、必要な対応について行っていきたいと思います。
○山井委員 是非、この年金法案、無事いい形で可決できたら、その次、医療法とか介護処遇改善法案、議員立法の議論もできると思いますので、今言ったような、与野党合意でやはり是非結果を出せるようにしていきたいし、それで補正予算に、与野党協力して、介護職員処遇改善の予算がつくように頑張りたいと思います。
残された時間、カスハラなんですけれども、昨日、介護クラフトユニオンの村上副会長がおっしゃったように、一々言いませんけれども、深刻な被害がホームヘルパーさんにもケアマネさんにも、また、自治労さんからもお話がありましたけれども、公務員の方々にも深刻なカスハラの被害が出ております。
それで、今回、私たちは修正案を出しております。その修正案というのは、今日の配付資料にも出ておりますが、どういう修正案かといいますと、仮処分命令ですね。今日の三ページですね。
要は、私たちの修正案では、カスタマーハラスメントに係る正確な事実の把握、記録の作成、保存等の事後対応、仮処分命令の申立てを含むカスタマーハラスメントの抑止のための措置その他の必要な措置を講ずるということで、あえて伝家の宝刀で、最も強烈で、繰り返し行われてどうしても抑止できないときの最後の伝家の宝刀として、事業主が労働者を守るために仮処分命令の申立て、もう店に来ないでください、電話をしないでください、近寄らないでくださいとか、DV防止法みたいなやつ。最悪の場合には、ああいう強烈な手段を事業主は取ってでも、労働者をカスハラから守るべきだと。
私の知り合いでも、そういうクレームやカスハラによって体調が悪化して入院した人、仕事を辞めざるを得なくなった方というのは多数おられるんですね。
やはりそういう意味では、今回の閣法もいいんですけれども、もう一歩、私たちの修正案にあるように、仮処分命令の申立てということも事業主が講ずるべき措置の例示として入れて、やはり最悪の場合には、そう簡単にはこんなのは使えませんけれども、こういうことがあるんですよということが重要だと思いますが、この修正について、大臣、いかがですか。
○福岡国務大臣 仮処分の申立てにつきましては、代理人の選任等が必要となるなど、事業主の負担が大きいことであったり、また、活用し得る場面はあるにしても、裁判例を見ますと、適用された事例は限定的であること等考えられることから、カスタマーハラスメントの個別具体の内容を問わず、全ての事業主を対象とする措置の内容としてこの改正法案に明示することは、私どもとしては慎重に考える必要があると思います。
ただ一方で、委員御指摘がありましたように、仮に法案が成立した場合には、事業主が講ずべき措置の具体的な内容は指針等で定めることとしてございまして、御指摘に関しましても、指針などの検討の際に必要に応じて検討してまいりたいと考えています。
○山井委員 半歩前向きな答弁、ありがとうございます。
もちろんやはり、この法案が成立したときのガイドラインの指針の中に、どうしても悪質なカスハラが繰り返された場合の一つの最終的な手段として、仮処分命令の申立てをやることができる、あるいは、やってでも労働者を守るべきだということを入れていただくのは非常にありがたいので、是非入れていただきたいですし、そのためには、例えば附帯決議に仮処分命令の申立てということを入れてもらうとか。
ただ、あえてこだわりますけれども、やはり今、介護現場、お店、公務員の方々へのカスハラというのは、インターネットで顔をさらす、名前をさらすとかいうことも増えて、余りにも度を過ぎた悪質なものが多過ぎるんです。それで本当に体調を壊したり、仕事を辞めざるを得ない方も増えていますので、私たちとしては、今後、修正協議は続くんでしょうけれども、指針のガイドラインに入れてくれるのであれば、もう一言、やはり法案の中の例示に入れていただければと思います。
それで、そのことは協議しますけれども、今、ガイドラインの指針にはそういうのを入れる可能性があるという前向きな答弁をいただきましたけれども、福岡大臣として、やはりこういう、最初からじゃないですよ、最初から仮処分命令の申立てにはしませんが、やはり最後の手段として、そういう、仮処分命令の申立てということがあることによる抑止効果というのはどういうのが考えられるか、福岡大臣からお答えいただけますか。
○福岡国務大臣 先ほど申しましたとおり、法文に明示するということになりますと、全ての事業主を対象とする措置の内容として改正法案に明示することになりますので、そういった部分では慎重に考える必要がございますが、今委員がおっしゃいましたように、事業主が講ずべき措置の具体的な内容について、指針等の検討の際に、いろいろな方に御理解いただけるような、そういう方策については引き続き検討してまいりたいと思います。
○山井委員 あともう一問だけですけれども、最後。
最初申し上げましたように、五十歳以下の現役世代の方々の年金の受給額は増える、そして、かつ、それは低年金の人の方が大幅に増えるということで、法案には入っていないですけれども、年金審議会が出した調整期間の一致はそういう効果があるということでよろしいですね。確認させていただきます。
○福岡国務大臣 まず、先ほども申しましたように、今回の法案については、マクロ経済スライドの早期終了の具体的な仕組みについては盛り込まない方向で進めているという前提について申し上げますと、五十歳よりも若い方につきましては、仮に基礎年金の底上げ措置を行った場合の年金受給総額の影響は試算していないことから、回答は差し控えさせていただきますが、一般的に言いますと、マクロ経済スライドによる給付調整が終了した以降に受給する期間が長い方が改善効果が高くなりますことから、将来年金を受給する世代の方が底上げになり得るというふうに考えております。
○山井委員 もう終わりますが、この委員会室でも、町を歩いていても、五十歳以下の方の年金は全員増えるんですからね。それをやめるということは、本当に相当の政治的な責任を私たちは問われるということを申し上げて、終わります。
ありがとうございました。
○藤丸委員長 次に、早稲田ゆき君。
○早稲田委員 立憲民主党の早稲田ゆきです。
それでは、順次質問をさせていただきます。
労働政策推進法、この法案の質疑でございますが、さきの当委員会の方で私が質問したことに関連をいたしまして、中間年改定の政策のプロセスについてもまずお聞きを大臣にさせていただきます。
四月九日に中間年改定の質問をいたしました。政策決定過程の分かる資料、カテゴリー別の試算資料の存否を質疑をしたわけですけれども、大臣の方からは、影響額の試算はしていない、それからまた、どの資料か分からないというようなお答えでございました。
その中で、理事会に諮っていただきまして、委員長のお取り計らいでございまして、その中でやっと、ここに資料をつけております、御覧ください、六枚の資料が出てまいりました。これは、中医協には示されていない資料だということでございます。
この資料、あったじゃないですかということなんですよ、まずは。あったんですよね、この資料として。これは公文書としてあるということでよろしいかということが、まず一点。
それから、いつ、どなたに示されたのか、大臣もこの資料を確認して三大臣合意に至るまでに協議をされた、議論をされたということでよろしいか、伺います。
○福岡国務大臣 まず、大変恐縮ですが、私自身、試算をしていないというふうに申し上げたことはないというふうに承知をしております。
四月九日の厚生労働委員会におきまして、議員からは、医薬経済社が報じております影響額の試算に関する資料についての御質問がありましたが、御指摘の資料を特定することができなかったため、具体的にどの資料のことを指しているのかが分かりかねるため、お答えについては困難であるとお答えしたものでございます。
その翌日、医薬経済社が議員御指摘の資料を画像を添付して報じたことにより、御指摘の資料が何を指すかについての蓋然性が高まったため、四月十六日の厚生労働委員会の理事会に資料を提出させていただいたということを事務方から報告を受けてございます。
先生にお示しした資料につきましては、令和七年度薬価改定に係る三大臣合意の前後に、その時々の状況を国会議員などの関係者に説明するために作成したものというふうに承知をしておりますし、日々私も事務方から多くの説明を受けておりまして、一つ一つの資料について網羅的に記憶しているわけではございませんが、国会議員などの関係者の方々に御説明するに当たっては、その資料について適宜報告を受けているというふうに認識しています。
○早稲田委員 影響額、試算していないとはおっしゃっていないということですけれども、ずっと事務方の皆様はそういうふうにおっしゃっていました。財源について、財源ありきでやっているのではないんだという回答をされていたんですね。それだから出てこなかったんですよ。一切数字の入ったものは出ていないですよね、財源額という意味では。
ですから、今おっしゃっておりますけれども、大臣が答弁されましたけれども、それは、じゃ、公文書に当たるということで、私たちが求めれば、それからまた情報公開請求されれば、すぐに出るというものでよろしいわけですよね。そうでないと、なぜ二〇二五年の改定で二千四百六十六億円という大きな削減をしたか、それをやったのにはそのプロセスが必要だと思うんです。それをお示しをされない、そういう姿勢が私はまずいのではないかということを申し上げていて、細かい試算額のこれとかあれとか言っていませんけれども、それはやはり、民主主義の根幹である、国民に全てのことを見せて、そして公表をして、分かっていただく、批判も浴びる、そういうことが行政として求められているのではないかという質問の趣旨でございます。
それについて、大臣はどのようにお考えなのか。年末ぎりぎりで中間改定をするかしないかを決め、そして、どのようなルールかもぎりぎりで決め、その中身の肝腎な、重要なこの六枚の資料は抜いて中医協には出す。そして、それは議員に説明していたんだから出さなくてもいいんだみたいな、どれだったか分からないというような御答弁は大変不誠実だと思います。猛省を下したいと思いますが、大臣、その点について、まず、もう一度お答えください。
○福岡国務大臣 私どもは、お求めいただいた資料についてしっかりお出しをさせていただく、そういう観点の中で申し上げますと、今回、情報開示請求があったものについては、三大臣合意文書の作成に当たって、その意思決定をするに当たっての文書ということでございまして、それは、申し上げましたように、今回出したやつというのは、それに当たっての意思決定に用いた資料ではないということでございます。
○早稲田委員 意思決定に使わないで、どうやって二千五百億円削減できるんですか。そんな不誠実な答弁、よくないです。
もう一回求めます。再答弁してください。
○福岡国務大臣 先ほど申しましたように、様々な検討過程の中で、御説明をさせていただくための資料として用いさせていただいたということでございます。
○早稲田委員 元々、公開資料ですよね。なぜこの重要なものだけ抜くんですか。取扱注意とかなんとか書いてありますけれども、六枚の資料が一番重要じゃないですか。
最後に、一連の資料ということで理事会にお諮りをして、やっと出てきたわけですよ、八十ページ以上のものが。中のものは中医協の資料です。でも、その前後のもの、六枚、私がつけさせていただいたものだけが、〇・七五、なぜ基本は〇・七五にしたのかということも書かれていませんよ。だから、これだけでも、本当にこれでも分かりにくい。これでは到底、財源なんか出してこられないはずなんです。
それから、今おっしゃいましたけれども、以下の充実策の財源の一部を確保すると書いてありますね、別添の二は。こうしたことも財源の確保のためにやっているわけじゃないですか。当然ながら、そこには百億、二百億というのが、次のページの別添三にも出ておりますけれども、これだって、なぜ百億円ここに持ってきたのか。最初は後発医薬品その他は〇・七五で計算する、だけれども、それが一・〇に変わっている。そして、新創加算対象品目は下がって〇・七五になっている。これはなぜなのか、どういう理由なのか、そういうことをつまびらかにしなかったら、意思決定のプロセスなんて分かるわけがないじゃないですか。総花的な話だけをして、対象品目だけ出して、財源も示さない。一番最初の資料でさえ示さなかったんですよ。ない、ないと、お示しできるものではないと事務方はおっしゃっていました。それもおかしい話でしょう。
前の中間年改定のときには、中医協にも出している資料です。それが今度は出ていない。それはいろいろ御意見があったかもしれないけれども、国民に対して説明という意味では、当然ながらこういうものは出さなければならない。そしてまた、結果において、長い長いいろいろなプロセスの中で、この〇・七五がなぜ決まったのか、一・〇になぜしたのかということをきちんと説明するのが行政の務めではないでしょうか。私はそのことを申し上げたいんです。だから、突然水面下で決まるようなやり方、これは、財源確保ありきでやったとしか思えないと言わざるを得ません。
原資は国民の社会保険料であります。透明性が担保されなければならないのは当たり前のことです。そして、これで薬価が下がるからいいじゃないかというふうに思われる方がいらっしゃるかもしれないけれども、薬価が下がっても、それは、国民に全然供給不足になっている今の現状を鑑みれば、絶対いいことではないわけです。だから、私たちは中間年改定廃止の法案も出させていただいております。だからこそ、行政機関の政策決定がどのようにされたかを記録して公表する、これは民主主義の根幹ではないですか。
大臣、そのことについて、国家公務員制度改革基本法第五条の三の一、これについて言えば、政府は、透明化を高め、そして政策の立案、決定においては国家公務員としての責任の所在を明確なものにして、国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資するために、この当該接触に関する記録の製作、保存その他の管理をして、その情報を適切に公開するために必要な措置を講ずるものと、職員が国会議員と接触した場合におけるとわざわざ書かれているじゃないですか。これ、この基本法違反と言えますよ。
大臣、そのことについて猛省を私は促したい。このことについて、基本法違反ではないか、改めていただきたいと思いますけれども、いかがですか。
○福岡国務大臣 まず、私どもは、財源ありきで議論を行ったということはございません。ただ、透明性を高めるということについては、当然、重要なことだというふうに認識をしてございます。
これまでも、薬価改定の議論に当たりましては、中医協にも様々な資料を出して御議論いただくとともに、関係業界からも複数回に及ぶヒアリングを実施し、さらに、こうした議論につきましては、リアルタイムでのインターネット上の公開であったり議事録の公表を行うなど、議論の透明性の確保に努めてきたものと承知をしています。
今後、また更にどのような対応が必要かにつきましては、更に検討を深めてまいりたいと思います。
○早稲田委員 いや、反省をしていただかないと次の検討はできません。反省してください。これ、基本法に完全に違反していますよ。国会議員と接触した場合における接触に関する記録の作成、保存ですから。
当然ながら、一番最初に私がこれを出してくださいと申し上げたら、こうした六枚の資料は出てくるべきものじゃないですか。何でそれが公文書じゃないんでしょうか。これ、もう文書違反です。そのことについて反省をしていただき、次の中間年改定、やるかやらないかも含めてですけれども、政策決定プロセスにおいてはこうしたものをしっかりと示していただくように改善する、検討するとおっしゃっていただきたい。
○福岡国務大臣 私どもとしては、これまでもお求めに応じて対応してきているというふうに認識をしておりますが、そういった御指摘も踏まえまして、もう一度そういった文書の取扱いについては徹底をさせていただきたいと思います。
○早稲田委員 反省をしていただきたいのですが、そのことについては反省は必要ないということですか、大臣は。
これも、予算委員会でも緒方委員が質問されていて、この公文書管理法についてですけれども、総理は、メモなどはあり得ない、そしてまた、複数に供された場合は全て公文書だ、公開をすべきだというふうにおっしゃっています。
内閣の一員として、この点について反省をしていただきたい。反省について、いかがでしょう。
○福岡国務大臣 公文書法に違反しているんじゃないかという御指摘がありました。委員がお求めになられているそういったものに対して、私どもはそういった対応をしてきているというふうに認識していますが、実際の委員の御認識として、お求めに応じていないのではないかという、そこの認識の違いがあるのではないかというふうに思います。
いずれにしましても、そういった認識のそごが生じないように、こちらとしても誠実に対応させていただきたいと思います。
○早稲田委員 私は、公文書管理法というよりは、公務員制度改革基本法、これについて書かれているんですから、そのものが。ですから、これには違反をしてはならないし、している可能性があるということで、猛省を求めたいと思います、厚労省に是非。次のこの制度をつくっていくためには、こうしたことは欠かせない民主主義の根幹であることは誰よりも皆様方が一番御存じであるはずですから、そこのところをしっかりやっていただくように猛省をお願いしたいと思います。
次の質問に参ります。
それでは、この労働政策推進法の議論でありますが、職場におけるハラスメント対策ということで、雇用機会均等法の第七条、間接差別の禁止を規定をしております。その対象は、施行規則の二条の三点に限定されているわけですけれども、すなわち、身長、体重、体力と転勤、これは二〇〇六年の改正でこの七条が新規で入ってきて以来、その中身については変わっておりません。
これは、国連の女性差別撤廃委員会、CEDAWが昨年の十月二十九日に発表した総括所見、その中にも、年齢、妊娠、育児及び都市、農村などの差別事由が含まれていないことを懸念事項として挙げております。この間接差別の広い禁止事由を考慮するように、雇用機会均等法を改正すべきとしております。
これが今回入らないわけなんですけれども、この勧告に基づいて、是非十八年ぶりにこの禁止対象も広げるべき、拡充すべきと考えますが、大臣のお考えを伺います。
○福岡国務大臣 男女雇用機会均等法では、労働者の募集であったり採用等に際しまして、性別以外の事由を要件とする措置のうち、厚生労働省令で定めるものであって、他の性の労働者と比較して、一方の性の労働者に相当程度の不利益を与えるものを合理的な理由がないときに講ずることを間接差別として禁止しています。
間接差別は、性別要件のような直接差別とは異なりまして、どのような要件でも間接差別に該当し得る広がりのある概念でありますため、行政指導を行う上では、対象となる間接差別の範囲を明確化する必要があるところから、このように省令で列挙しているところでございます。
この更なる対象の追加につきましては、間接差別として違法となる範囲についての社会的合意の形成、この状況も踏まえながら、必要に応じて検討してまいりたいと思います。
○早稲田委員 是非、必要でありますので、検討していただきたいと思います。間接差別といっても、大変これで不利益を得ていらっしゃる方もいらっしゃいますので、是非必要な検討をしていただきたいと強く要望させていただきます。
それでは、この法の中に女性活躍推進法も入っております。その観点から、女性活躍の観点から、私は今、大変国会でも議論にならなければならないと私が考える選択的夫婦別姓について伺いたいと思います。
資料を御覧ください、十ページであります。これについては、経団連の女性幹部、この方が、ダイバーシティ推進委員長の次原さんがおっしゃっていることを書かれております。旧姓の通称使用では解決しないということであります。
そしてまた、自民党内のワーキングチームの中で意見交換した際に、通称使用も大変拡大しているのに経団連がそれを追っていない、アップデートしていないじゃないかみたいな批判があったと聞いておりますけれども、それは違うんだと。結局、経団連の会長も会見の中でもおっしゃっておりますが、幾ら広がってもそれでは根本的解決にならないし、その通称使用を拡大するためにどれだけ女性が苦労をしているか、手間をかけているか。
企業もそうです。それから、行政の皆様も、通称で括弧書きで書くことで大変時間も労力も、そしてまた予算も取られているはずです。そうしたことが全て女性の不利益にもつながっていくということで、私は質問させていただきたいと思います。
今日は、内閣府の辻清人副大臣にもお越しをいただきました。ありがとうございます。
副大臣は、大変、衆議院選挙のアンケートにも選択的夫婦別姓に賛成と答えられていらっしゃいますし、それからまた、選択的夫婦別氏制度を早期に実現する議員連盟のメンバーでもいらっしゃると思います。その中でありますから、大変御見識もあろうかと思いますので、是非前向きな御答弁をお願いしたいわけですけれども、少し質問を変えさせていただきます。
これまで、通称使用、補足的な位置づけということに変わりはないと私は思うんですけれども、それが広がってきたことは分かります。この併記が認められている主な制度としては、住民票とかパスポートとか不動産登記もそうなりまして、運転免許証とかありますけれども、それにしてもこれは併記でございます。併記で括弧書きで書くというものでありまして、では、単独記載のものがどのくらいあるかということを内閣府としてどのように把握をされているか。
それから、ごめんなさい、時間がないのでまとめますが、戸籍姓のみしか認められていない制度についても、お分かりの範囲でお答えください。
○辻副大臣 早稲田委員にお答えさせていただきます。
我々内閣府として、第五次の男女共同参画基本計画に基づいて、婚姻によって旧姓を使えなくなることによる不便を軽減するべく、旧姓の通称使用の拡大に向けて取組を進めてきております。その結果、現在では、住民票、マイナンバーカード、運転免許証、パスポート、不動産登記等において旧姓の併記が可能となっています。
また、各省庁の所管する各種国家資格等において旧姓をどのように使用できるのか、内閣府が令和六年に調査したところ、調査対象となった三百二十の国家資格、免許等の全てにおいて旧姓使用が可能であることを確認できています。
それで、あとは、例えば弁護士の資格証や裁判の判決書きにおいても、社労士の資格証等についても、旧姓のみの表記が可能となっている旨承知しています。
それで、旧姓を通称使用することができず、戸籍上の氏名のみを使用することを認めている制度、場面は、詳細かつ正確なところは所管省庁に確認されたいものの、各種国家資格等における旧姓使用の現状等について内閣府が調査したところ、調査対象となった資格等の全てにおいて旧姓を使用可能と確認できたところです。
その上で、例えば年金の手続においては、戸籍上の氏名の情報による記録が管理されているので、旧姓で金融機関で口座を開設されている、すなわち、戸籍上の姓と口座名義の姓が異なる場合でも、当該口座へ年金を振り込むこととされていると承知しております。
○早稲田委員 お答えいただきましたが、併記というものは大変増えました。確かに拡充をされました。しかしながら、戸籍姓だけしか取り扱わないというものに、年金であり、納税であり、選挙などもあるわけですね。そうしたところは大変、そういうふうに広がったところだけをおっしゃっても、やはりできないところはある。
それから、単独記載は、裁判官の判決とかそういうのはありますけれども、やはりこれも広がっておりません。それから、銀行口座は七割できるといっても、三割はできません。
ということを鑑みて、やはり私たちは、しっかりと法制審案、この法制審案でやっていくべきだということで、私たち、四月三十日に選択的夫婦別姓の制度の法律を提出をさせていただきました。私も提出者の一人でありますので。
是非副大臣におかれましては、そうした御見識をお持ちの中で、そしてまた、これは通称使用で不便さを感じている方がたくさんいらっしゃるということに鑑みて、是非これについては成立をさせるべきではないかと私は思います。
それからまた、国会の法律については国会でとおっしゃいますでしょうけれども、この実現をするべきではないか。旧姓使用の拡大ではなくて、選択ができる、つまりは同姓を、もちろんいいんです、自分がそれをしたいという方はいい、一つの姓でいいわけだし。それから、旧姓使用の拡大もいいと思いますし。でも、これを選びたい、単独で自分の名前を旧姓でやりたいという方が選べる、そういう社会を実現するべきだと思いますけれども、副大臣のお考え、聞かせてください。
○辻副大臣 ありがとうございます。
国会での議論、御党が提出された法案等を含めて、そういった動きにも我々はつぶさに確認をさせていただいておりますが、そういった婚姻による不便さ、改姓した人の不便さや不都合を解消すべく、運用面での対応などを今検討しておりまして、今後もそういった旧姓の通称使用の拡大やその周知に取り組んでまいりまして、その上での、今後のことについては、多少委員に先回りさせていただいて申し訳ないんですが、個人の見解をここで述べさせていただくこと、私も、委員御指摘のとおり、個人としては様々な選挙等で、そういった経歴に偽りはございません。
一方で、今後、この委員会を含めて、国民の様々な意見があるものと承知しておりますので、そういった理解が形成されることが重要であると考えていますので、我々としましては、引き続き、国民各層の意見や国会における議論の動向等を踏まえて、対応を検討してまいりたいと思います。よろしくお願いします。
○早稲田委員 副大臣から、個人の見解としては賛成をするものだというような内容だと私は理解をいたしました。
しかしながら、国民の世論が分かれているということは言い訳になりません。これは選択でありますから、選択したくなければ元のままでよろしいわけですから。
その上で、ごめんなさい、法務省にも来ていただいておりますので。今回、昨年の十月十七日、日本政府、国連のCEDAWのところに臨んだわけですけれども、勧告では、民法七百五十条改定のために何一つしてこなかったと一蹴をされました。
その中で、私が資料の最後の方につけております十二ページの方は、法制審案の戸籍でございます。一つが書かれています。でも、今他党で議論をされている旧姓使用、それから婚前氏続称とか、そうした制度におきましては、この十一ページのようなことになるのではないかと。これについては、法制審案のC案とも大変合致をするようなものであります。
それでは、法制審でなぜこのC案を採用しなかったのか。そしてまた、ごめんなさい、質問を重ねますけれども、実際、参議院の法務委員会でそのときにも吉住政府参考人が、旧姓使用の法制化を政府方針とすることは考えていないと、令和四年の五月十九日、これもおっしゃっています。この見解を踏襲される、もちろん維持をしているということでよろしいか。C案を採用しなかった理由、これについてお聞かせください。
○内野政府参考人 お答え申し上げます。
委員御指摘の平成八年までの法制審議会による調査審議におきまして、いわゆるC案というものが検討されております。これは、夫婦は同一の氏を称するものとする現行制度を維持しつつ、婚姻によって氏を改めた夫婦の一方が婚姻前の氏を自己の呼称として使用することを法律上承認する案であったと承知しております。
この案につきましては、当時の意見募集手続では支持する意見もありましたけれども、氏とは異なる呼称、こういう概念を民法に導入することになると、その法的性質は何か、氏との関係をどのように捉えるのかなどの問題が生ずるといった指摘がございまして、当時、法制審議会において採用されなかったと承知しております。
○早稲田委員 もう一つ質問をさせていただいております。法務省の見解は変わりありませんね、維持をしていらっしゃいますね、旧姓使用の拡大について。
○内野政府参考人 お答え申し上げます。
夫婦の氏の在り方につきましては、御指摘のいわゆるこういった婚前氏続称制度を含めまして、様々な案が議論されているところでございます。したがいまして、それらの案につきまして、法務省としてコメントすることが困難であることは是非御理解いただきたく存じます。
○早稲田委員 法務委員会で答えられているんですよ、政府参考人が。それを答えられないというのはおかしいと思います。これを維持するかということを聞いております。また、引き続き議論を深めてまいりたいと思います。
厚労大臣におかれましても、女性活躍の妨げになっているこの制度の改正についても、是非前向きに一緒に検討をしていただきたいと要望させていただきます。
ありがとうございました。
○藤丸委員長 次に、草間剛君。
○草間委員 自民党の草間剛でございます。
質問の機会をありがとうございます。本委員会では初めての質問ということでございますので、どうぞよろしくお願いをいたします。
十年前に女性活躍法が成立した当時、私は横浜市会議員の一期目でございました。当時の市長は女性で、ダイエーの会長なども務めた林文子市長でした。法制定を契機に、横浜を日本一女性が働きやすい、働きがいのある都市にと力を入れていたこととともに、多くの優秀な女性が子育てによってキャリアを泣く泣く断念するのを悔しい思いで見てきたとおっしゃっていたのをよく覚えております。
同じような言葉を二十年前の大学院の講義で、労働省の女性局長を務められた桜井竜子先生からも聞きました。労働省のキャリアだった先生からは、キャリアのために様々なことを諦めたという言葉が印象的でした。
私、大学ではアメフト部でございまして、男社会ですから、はいと済みませんしかほぼ言いませんでして、その後、大学院で男女共同参画とかいう講義を受けて、最初の講義で、女性と男性は差別はいけないけれども区別はしなきゃいけないんじゃないですかと先生に言って、めちゃくちゃ怒られたことを今でも覚えております。講義では、こんなに女性が働きづらいのかという様々なことをお聞きいたしまして、今は会社員の妻と共働きで子育て中でありまして、女性活躍には男性の働き方も大きく変えていかなければいけないと今実感をしております。
女性活躍推進法が制定された当時の雇用者全体に占める女性の半数以上は非正規雇用でございました。就業を希望しながら働けない女性が三百十五万人に達していたということから、それを改善するために、当時の安倍政権が目玉政策の一つとして成立させたのが女性活躍推進法だと思います。
そこで、女性の非正規雇用率は十年前から改善しているのでしょうか。また、今の女性活躍の現状を、同じ女性の田中局長に伺いたいと思います。
○田中政府参考人 お答えをいたします。
女性の非正規雇用の労働者の割合ですけれども、平成二十八年は五五・九%でございました。令和六年は五二・七%ということで、低下傾向にございます。また一方で、この間に女性のいわゆる正規雇用の労働者は二百万人以上増加をしている、こういうような状況にございます。
一方で、女性活躍の現状でございますけれども、各種指標、男女間の賃金差異ですとか、役職に占める女性の割合、これも上昇しておりますので、そういう意味では、全体として上向いていて、女性活躍推進法の取組ですとかほかの取組によりまして、一定の効果が上がって改善をしてきているというふうには思います。
しかし、じゃ、それでいいのか、十分な状況にあるかということについて言えば、例えば、諸外国と比較してみても、男女間の賃金の差異でございますとか、管理職比率ですとか、そういうようなものについてはいまだ更なる取組が必要な状況にあるというふうに認識をしておりまして、このために今回の改正法案ということで、男女間の賃金差異と女性管理職比率の情報公表でございますとか、女性活躍推進法も期限を十年延長する、こういったような内容を盛り込んでおりますので、引き続き、女性活躍の更なる推進に努めてまいりたいと考えております。
○草間委員 今回の改正では、女性の職業生活における活躍の推進に当たっては、女性の健康上の特性に配慮して行われるべき旨を明確化するとしております。
様々あるかと思うんですけれども、私自身、不妊治療を経験しまして、今回の法改正を契機に、不妊治療についても更に理解が深まってほしいと願っております。
八年前、三十五歳で結婚して、すぐ長女に恵まれたんですけれども、二人目がなかなかできなかったので、当時、まだ不妊治療は保険適用外でしたから、菅総理になって保険適用にしていただいて、じゃ、できるかなということでチャレンジをしました。
結果、原因は僕にあったんですけれども、そのとき実感したのが、不妊治療というのは、男性もそうなんですけれども、女性は本当に大変だなということを実感しました。タイミングも、職場のタイミングとかも構っていられないし、本当に職場の理解がなければできないなということを妻と一緒に実感をしたわけでございますけれども、今回の法改正を契機に、法定の休暇がない不妊治療についても、企業が就業規則などで対応できる特別休暇の創設など、後押しできる仕組みが必要と考えます。
今現在で、不妊治療休暇を定めている事業所は全国にどれぐらいあるのでしょうか。また、不妊治療休暇を国として推進していくべきと考えますけれども、いかがでしょうか。
○田中政府参考人 不妊治療の支援の関係ですけれども、令和五年度に厚生労働省で、不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査というような調査を実施をしております。
この調査によりますと、不妊治療を行っている従業員が受けられる何らかの支援制度などを実施している事業所の割合は二六・五%となります。その中で四七・八%が不妊治療に利用可能な休暇制度を導入している、こういうようなのが現状でございます。
厚生労働省の取組ですけれども、不妊治療と仕事の両立をしやすい環境の整備を進めるために、企業の好事例の周知でございますとか、不妊治療のために利用可能な休暇制度の導入等の環境整備などに取り組みます中小企業事業主への助成金の支給などを実施をしておりまして、こうした取組をしっかり継続してまいりたいと考えております。
さらに、今回の法案で、女性の職業生活における活躍の推進に当たって、女性の健康上の特性に留意して行わなければならない旨を法の基本原則として規定をすることにしてございます。
本法案が成立をいたしますれば、この改正の趣旨を踏まえて、事業主が行動計画を法律に基づいて作っていただくわけですけれども、これに関しまして、基本的な事項などを示します事業主行動計画策定指針という指針がございます。この指針を改正をいたしまして、女性の健康課題に係る取組例をお示しをすることなどを考えておりまして、事業主が女性の健康支援に資する積極的な取組を促すことを想定をしております。
○草間委員 昨日の参考人の方もおっしゃっていたんですけれども、これは女性だけじゃなくて男性もしっかり取ってもらわないといけないと思いますので、男女共に是非休暇を進めていただきたいと思います。
また、男性の自分自身としての反省は、不妊治療とかこうした大事なことを、自分が経験するまで正直言ってほとんど、議員としては知っていたんですけれども、知らなかったですし、若いときは余り関心もありませんでした。若いときにちょっとでも知っていれば、女性に対してもっと優しくできたかもしれないと自分では思っております。
不妊治療や妊娠、出産の理解を促進するために、中学、高校などからプレコンセプションケアを進めていくべきだと考えますけれども、これはこども家庭庁に伺います。
○竹林政府参考人 お答え申し上げます。
先生御指摘のとおり、男女を問わず、中学、高校などの若い世代に対し、性や妊娠に関する正しい知識を身につけ、健康管理を行うよう促すプレコンセプションケアを進めていくことは重要と考えております。
このプレコンセプションケアに関しまして、これまでこども家庭庁では、性と健康の相談センター事業による相談体制の整備、あるいは、十代を主な対象とした若者向けの性や妊娠などに関するオンライン健康相談支援サイト、スマート保健相談室の作成等の取組を進めてきました。
また、文部科学省と連携いたしまして、学校や保健所等におきまして、産婦人科医や助産師等の専門家に外部講師となっていただいて、性と健康に関する教育等の実施を支援してまいりました。
これらの取組に加えまして、昨年十一月からは、若い世代の方や実際に支援を担われる医療関係者、自治体、関係団体等の方々で構成される検討会を立ち上げ、議論を進めているところでございます。中高生を含め、ライフステージに応じた正しい知識の普及啓発や相談支援の充実等に向け、活発に御議論いただいているところでございます。こうした議論の内容も踏まえつつ、近日中にプレコンセプションケアの推進に係る五か年計画を作成したいというふうに考えています。
引き続き、関係省庁とも連携し、男性に対する普及啓発も含め、プレコンセプションケアに関する取組を進めてまいります。
○草間委員 ありがとうございます。答弁には不妊治療のフの字もなかったので、是非不妊治療もしっかり教えてもらえますよう、よろしくお願いします。
また、結婚、出産で退職する女性が大幅に減って、活躍の機会も増えて、女性の管理職、役員も少しずつですが着実に増えているということでございます。働き方の多様性がまさに社会に根づいてきていると思うんですけれども、家庭を諦めなくてもバリキャリで働くという道も広がっていると思います。
そこで、女性でも男性でも、ばりばり働きたい人は働ける環境づくりを再構築した方がいいと思うんですけれども、鰐淵副大臣、いかがでしょうか。
○鰐淵副大臣 お答え申し上げます。
男女共に、性別にかかわらず、希望する働き方を実現することができ、労働者がその個性に応じた多様な能力を発揮できる社会を実現していくことが重要であると考えております。
これまでも、女性の活躍が十分に実現できていないという課題がある中で、特に、働くことを希望する女性がその希望に応じた働き方を実現できますよう、男女雇用機会均等法の遵守徹底を図るため、周知啓発や都道府県労働局による指導等に取り組んでまいりました。また、そのほか、女性活躍推進法の下で事業主に課題分析や行動計画の策定を義務づけ、企業の自主的な取組を推進してきたところでございます。
その上で、本改正案につきましては、女性活躍推進法につきまして情報公表の強化や有効期限の延長等の見直しを行うこととしておりまして、これによりまして、各企業の積極的な取組を促し、女性活躍の更なる推進を図ってまいります。
○草間委員 ありがとうございます。
今の日本には、私は働き方改革、改革が必要だと思っております。これはまた別の機会で議論させていただきたいと思いますけれども、女性活躍もそうですけれども、男女共に多様な働き方がこれからも推進できるようにお願いしたいと思います。
次に、カスハラについて伺います。
昨日の参考人招致でも、自治体のカスハラについて各党から議論がありました。民間事業者とともに対策が急がれるのが自治体の現場だと思います。
今日は、地方自治担当の古川政務官にもお越しいただいております。私や政務官や、また先ほど御質問いただいた早稲田先生の地元である神奈川県は三月にカスハラ対策基本方針が策定されて、横浜では四月に策定をされました。
神奈川県また横浜市では、どれくらいの自治体職員がカスハラに遭ったのでしょうか。また、総務省として自治体のカスハラ対策にどのように対応していくのか、古川政務官に伺います。
○古川大臣政務官 草間委員の質問にお答えさせていただきます。
お尋ねのカスタマーハラスメントの状況について、神奈川県庁においては、県の調査結果によれば、令和五年度において、二十所属が一年間で百回以上のカスタマーハラスメントを受けており、最も多い所属では一年間で約千三十回のカスタマーハラスメントを受けたことがあるとされているものと承知しております。
また、横浜市においては、市の調査結果によれば、令和六年度において、全七百七十課のうち約七割に当たる五百五十三課でカスタマーハラスメントを受けたことがあるとされているものと承知しております。
総務省では、今般、自治体におけるカスタマーハラスメントを含む各種ハラスメントについて、初めて自治体職員を対象とした実態調査を実施するとともに、各種ハラスメントの予防、解決に当たり効果が感じられた取組について自治体にヒアリングを行い、それぞれ取りまとめを行いました。これらを踏まえ、先月末、総務省から自治体の首長宛てに、改めて、カスタマーハラスメントを含む各種ハラスメント対策の積極的な取組について要請する通知を発出したところであります。
また、この通知では、自治体のカスタマーハラスメント対策の留意事項として、組織的な対応が重要だが、その上で、部門によっては当該部門の特性に応じた対応も必要であること、行政サービスの利用者、取引先に対する相談等の対応の向上もカスタマーハラスメントの減少に一定程度資すると考えられること、社会通念上相当な範囲で行われたクレームは、いわば正当なクレームであり、カスタマーハラスメントに該当しないことなどについて助言を行っています。
職員が安心して働くことができる職場環境を整備するため、今後も、自治体の実情を伺いながら、自治体におけるカスタマーハラスメントを含むハラスメント対策の取組をしっかりと支援してまいります。
○草間委員 ありがとうございます。
今回の法改正では、それぞれの自治体にカスハラ対策が義務化をされます。政務官がおっしゃったように、それぞれの自治体に実情があると思っていまして、横浜とか神奈川とか都道府県とか、でっかい都市は自分自身で対策も打てると思うし、自分で作れると思うんですけれども、小規模自治体は、そもそもカスハラ担当もほかの業務と兼務などしていたり、対策の基本計画みたいなものを作るだけでも大変かもしれません。現場の自治体が受けるクレームというのはかなり全国で似通っていると思いますので、自治体の負担軽減のために、総務省としてカスハラ対策を標準化していくべきだと考えますけれども、これも政務官に伺います。
○古川大臣政務官 お答えいたします。
総務省ではこれまで、自治体に対し、厚生労働省が公表している民間企業向けのカスタマーハラスメント対策マニュアルなどを度々紹介してきたほか、先月末には、自治体におけるカスタマーハラスメントを含む各種ハラスメント対策の取組事例集を取りまとめ、助言、情報提供を行ったところです。
今回の法案では、カスタマーハラスメントを防止するため、自治体を含む事業主が講ずべき雇用管理上必要な措置等について国が指針を定めることとされております。本法案が成立した際には、総務省としては、指針の内容も踏まえ、自治体におけるカスタマーハラスメント対策の取組を一層支援してまいります。
○草間委員 今、恐らく総務省では自治体DXを強力に進めていただいていると思うんですけれども、民間事業者ではAIを活用したカスハラ対策なども既に行われておりまして、コールセンターなどのAI化とかも含めて、是非、自治体DXも含めて、カスハラ対策をお願いしたいと思います。
さて、先日、地元でケアマネジャーの皆さんと意見交換を開催させていただいたんですけれども、本委員会でも様々各党から出ておりますように、待遇の問題、シャドーワークの問題とともに、カスハラで苦しんでいるという声を、昨日の参考人聴取でもいただきましたし、私も地元でいただきました。
資料としてお配りしておりますのが、日本介護支援専門員協会の実態調査でございまして、ケアマネジャーの三三・七%が過去一年間にカスハラを経験したことが分かりました。労働者全体のカスハラ経験率が一〇・八%ということですから、ケアマネの皆さんの受けているカスハラの数字というのは約三倍ということで、自治体、先ほど横浜、神奈川の実態がありましたけれども、それ並みにやはりケアマネの皆さんは受けられております。
今回の法改正では、居宅介護支援事業所、これは各事業所ということなので、大きいところだったりちっちゃいところだったり様々あると思うんですけれども、ここにもカスハラ対策が義務化をされます。大きいところはいいかもしれないですけれども、小さい事業所では対策も大変だと思います。
そこで、厚労省としては現場に寄り添った対応が必要だと考えますけれども、既に、介護現場におけるハラスメント対策マニュアル、私もホームページで検索をいたしましたけれども、公開をされております。ただ、この法案成立を契機に、ケアマネジャーなどの現場の声を踏まえまして、カスハラに関するマニュアルをブラッシュアップして、更に周知をしていく必要があると思いますけれども、いかがでしょうか。
○黒田政府参考人 お答え申し上げます。
議員御指摘くださいましたように、ケアマネジャーの方々を含めて、介護分野で働く方々がハラスメントを受けることなく安心して働くことができる環境整備は、大変重要な課題でございます。
現在の取組につきましては、先ほど議員も御指摘くださいましたように、事業者向けの対応マニュアル等々の取組、それから研修、相談窓口の取組等々は進めてございますが、仮にこの法案が成立したとした場合には、関係審議会における議論を踏まえて、今後、指針等において、カスタマーハラスメントであると考えられる言動の具体例、事業主が講ずべき具体的な措置の内容等が示される予定だというふうに伺っております。
こうした内容、現場の声も踏まえながら、議員御指摘のマニュアルの見直しも含めまして、介護現場のハラスメント対策の充実強化に現場とともに取り組んでまいります。
○草間委員 各党から出ているとおり、特に福祉、今日はケアマネですけれども、本当につらい思いをされております。これはシャドーワークの問題と正直言って直結していると思いますので、是非検討を、様々されていると思うんですけれども、このカスハラ対策、待遇問題、シャドーワーク問題、しっかりと厚労省として、国として取り組んでいただくことをお願いして、私の質問を終わります。
どうもありがとうございました。
○藤丸委員長 次に、根本拓君。
○根本(拓)委員 自由民主党の根本拓でございます。よろしくお願いします。
まず、カスハラについてお伺いしたいんですけれども、今回の法改正で、カスハラを防止するために事業主に義務づけられる雇用管理上の措置の内容として事業主の方針等の明確化が挙げられていて、その例として、マニュアルの整備というものが挙げられています。
先ほどの草間委員の質問とも問題意識は重複するんですけれども、マニュアルを整備しろといっても、中小企業にとってはかなり負担が大きいのではないかと思われまして、この負担軽減策として政府の方で考えていらっしゃることはあるのでしょうか。理想的には、このマニュアルをそのまま使ってくださいというようなものがあれば、企業の方にとってはかなり負担が軽くなるのではないかなと思いますけれども、いかがでしょうか。
○田中政府参考人 お答えいたします。
ハラスメント対策ですけれども、やはり企業規模を問わず、全ての企業において進める必要があるものでございますので、今回の法案におきましても、企業規模を問わず、措置義務というようなことで義務を課す内容としてございます。一方で、中小企業等に対しまして支援を行うことは重要であるというふうに考えております。
カスタマーハラスメントに関します事業主の雇用管理上の措置義務につきましては、本法案が成立いたしますれば具体的な内容を指針でお示しをする予定でございますが、その中にも具体例も含める形でお示しをしていければというふうに考えております。
また、厚生労働省ではこれまでも、カスタマーハラスメント対策企業マニュアルを作成をいたしまして、対策の基本的な枠組みとか取組例などをお示しをして、事業主による対策の推進を図っておりますが、このほかにも、令和六年度から、業界団体等による対策を支援をするために、カスタマーハラスメント対策に関心を持つ業界団体が業界共通の対応方針等を策定して普及啓発を実施するまでの支援をモデル事業として実施をしておりまして、今年度も関係省庁と連携をしながら引き続き取り組んでいく予定でございます。
こうした取組を通じまして、企業規模にかかわらず、社会全体で足並みをそろえてカスタマーハラスメントの防止に向けた取組ができるように、政府としても支援に努めてまいりたいと考えております。
○根本(拓)委員 ありがとうございます。
カスハラにどうやって対応していくかというのは、業界ごとにいろいろ対応の仕方も異なる部分もあるかなと思いますので、今おっしゃってくださったような業界ごとの対応、その中でマニュアルも業界ごとに作っていく、そういった取組を是非支援していただければというように思っております。
次に、求職者に対するセクハラ対策の強化についてですけれども、今回の法改正で事業主に義務づけられる雇用管理上の必要な措置として、相談体制の整備、周知が挙げられていまして、相談窓口の設置なんかが想定されているのかなと思います。
一方で、日本政府は二〇二二年に、責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドラインというものを出しておりまして、これはビジネスに関して生じる人権侵害への対応についての企業の責務を定めるようなものになっています。
この人権尊重ガイドラインにおいては、企業は、自社が人権への負の影響を引き起こし、又は助長していることが明らかになった場合、救済を実施すべきであるとした上で、具体的に、苦情への対処が早期になされ、直接救済を可能とするために、企業は、企業とそのステークホルダーに関わる苦情や紛争に取り組む一連の仕組みである苦情処理メカニズムを確立することを通じて、人権尊重責任の重要な要素である救済を可能にすべきとされております。ここにおいて、ビジネス上生じる人権侵害について企業は救済をしなければいけない、苦情に対して対処しなければいけないということが既に定められているわけです。
そこでお伺いしたいのは、今回の法改正で整備することが求められている求職者に対するセクハラに関する相談窓口と、このビジネスと人権に関するガイドライン、これは国連のビジネスと人権に関する指導原則をベースとしたものでありますけれども、国際ルール上求められている苦情処理メカニズムというものはどのような関係にあるのでしょうか。
○田中政府参考人 お答えいたします。
企業活動が人権に与える影響について国際的な関心が高まっている中で、企業における人権尊重の取組の促進は、労働行政の観点からも非常に重要な取組であるというふうに認識をしております。
御指摘がありましたように、本法案では、就職活動中の学生を始めとする求職者等に対するセクシュアルハラスメントを防止をするために、その対応を職場における雇用管理の延長として捉えた上で、事業主に対して、面談等の際のルールの設定とか、相談体制の整備などの措置を講ずることを義務づけることとしております。
このために、本法律案が成立いたしますれば、全ての事業主は求職者等からの相談に適切に応じる義務を負うことになります。これに基づきます各企業における相談体制の整備は、国連で提唱されたビジネスと人権に関する指導原則や国内のガイドラインにのっとり、企業に求められている人権救済のメカニズムの構築に資するものであるというふうに考えております。
○根本(拓)委員 ありがとうございます。
ポイントは、今回、企業にとっては新しい責務が定められたものではないということだと思っております。求職者に対するセクハラというのは、日本政府の人権尊重ガイドライン、さらにはそのベースになるビジネスと人権に関する国連の指導原則において既に対処すべきとされている、自社が引き起こしている人権への負の影響に当たることが明白であって、企業というのは、そもそもこれに対して苦情処理メカニズムの中で対処することが求められているのであって、今回の法改正の中でこれが明確化された、実質化された、こういうことなのではないかと思っています。
このような観点からは、企業として、こういう法改正があるたびに後追いで相談窓口を設置したり特定の人権侵害を相談窓口の対象にしたりするのではなくて、ビジネスと人権ガイドラインが求められているところに従って、広く企業が引き起こす人権侵害に対処するための包括的な苦情処理メカニズムというものを整備しなければならないという認識を改めて持つべきなのではないかと思います。
政府としても、このことを踏まえて、求職者に対するセクハラに対処するための相談窓口を企業に求めるというだけにとどまらないで、そもそも、ビジネスに関する、ビジネスによって企業が引き起こす、助長する人権侵害に対処するための苦情処理メカニズムというもの、包括的なメカニズムを企業としては整備しなければいけないんだ、これは日本政府がこれまで促してきたことなので、省庁の垣根を越えて、こういったものの整備を是非改めて促進して、企業の認識を広めていただきたいというように思っております。
一方で、現実には、特に中小企業なんかについては、こういった苦情処理メカニズムを自社で整備してくださいといっても、なかなか負担が大きいところなのかなと思っています。この点について、経産省が出している人権尊重ガイドラインというのは、企業は、企業独自に苦情処理メカニズムを整備するという選択肢だけではなくて、外部の、業界団体等が設置する苦情処理メカニズムに参加する、そういった選択肢も用意しているところです。中小企業にとって、求職者に対するセクハラについてもこういった外部の苦情処理メカニズムや相談窓口を利用する方が負担としては少ないですし、社会全体としてのコストも下がるという面もあるかと思っています。
そこで、現在、このような外部団体による苦情処理メカニズムや相談窓口の整備や利用についてどのような状況にあるか。これは、求職者に対するセクハラというだけにとどまらず、ビジネスに関して生じる人権侵害についてお伺いしたいんですけれども、そういった人権侵害に対応するための苦情処理メカニズムの相談窓口の整備、利用状況はどうなっているのか。また、政府として、このような外部団体による苦情処理メカニズムだとか相談窓口の整備に関してどのようなサポートをしていらっしゃるか。この点について教えてください。
○田中政府参考人 御指摘のように、企業規模にかかわらず、全ての事業主に防止措置を義務づけるということでございます。社会全体で取組を進めていくには、やはり企業規模にこだわらずハラスメントの防止が必要だ、そういうようなこと、社会全体で足並みをそろえて取り組んでいくことが必要、そういうような観点から、企業規模を問わない仕組みとしております。
ただ、御指摘にありますように、企業規模が小さいということになりますと人的リソース等に限りがありますので、効果的な対策を実施をできるように支援をしていくことが重要であるというふうに考えております。厚生労働省では、都道府県労働局で御相談に応じるというようなこともしておりますし、個々のハラスメント事案に関しての相談に応じるような助言の事業も今年度から実施をしております。
また一方で、自社に相談窓口を設置をするのではなくて外部の相談窓口を利用するということですけれども、個別に、具体にどのぐらいの割合と数字を持って、今手元にあるわけではありませんが、企業さんの取組を見ますと、むしろ労働者の方から相談をしやすいというような観点から、外部の通報窓口といいますか相談窓口を設ける例というのもございますし、業界団体での相談窓口を設けている例というふうなのもあることは承知をしております。このように、外部を使うということも規模の小さい企業にとっては選択肢として有効な手法だというふうに考えますし、むしろ労働者が相談をしやすいというような観点からも工夫としてあり得る内容だというふうに考えております。
一方で、事業主に責任を持って相談対応に応じていただかなければいけないということから考えますと、外部の相談窓口を契約をしたから、もう相談はそっちで、事業主として真剣に考えるというふうなことがないということになっては困るというようなこともございます。
そういったようなことも踏まえまして、いずれにしても、指針の具体的な内容、今後、法案が成立をすれば審議会での議論を踏まえて策定をしていくことになりますので、御指摘なども踏まえながら、必要な検討を行ってまいりたいと考えております。
○根本(拓)委員 どうもありがとうございます。
私も弁護士として、ビジネスと人権の問題、これまで取り組んできたんですけれども、そういった仲間の弁護士なんかに聞くと、最近では、今御答弁いただいたとおり、業界横断的なグリーバンスメカニズムが整備されていたり、あと、最近は、中小企業が相談している社労士さんをこういったセクハラ対応の窓口に、外部の社労士さんを活用しているという事例もあると聞いております。
特にこういうセクハラの問題については、セクハラの加害者が社内にいるわけなので、社内の相談体制といっても、例えば、二十人の会社、十人の会社とかだと、一人に相談するとそれが社内に広まってしまうのではないか、情報遮断措置が十分に取れるのかどうか、こういった懸念もあり、プライバシーの問題にも配慮しなければいけない。そういう意味で、一つ外部を使うのは大事なのかなと。
一方で、今局長がおっしゃったことの中で重要なことは、企業が当事者意識を持たなくなってしまう、これには気をつけなければいけないということで、私も非常にそれはそう思います。あくまでも、対応しなければいけないのは企業それ自体、それ自身ですので、外部を相談窓口として活用する場合にも、企業にいかに当事者意識を持ってもらうか、これも課題であって、そのバランスを取った外部団体の活用の仕方としてどういうものがあるのか、今の具体例なんかも踏まえながら是非検討していただいて、そして企業の方に周知をしていただければというように思っております。
続いて、女性活躍推進法についてお伺いしますが、今回の法改正で、常時雇用する労働者の数が百一人以上の一般事業主は、男女間賃金差異及び女性管理比率の情報公表が義務づけられることになります。しかし、このような義務を企業が負担と感じてしまうと、形式的な取組は進んだとしても、実質的な女性の社会におけるプレゼンスの向上ということは思ったように進まないというようなおそれがあるのではないかと思っています。
したがって、男女間賃金差異であるとか女性管理職比率の向上といったものが、企業の成長にとって、また、この日本社会の発展にとってメリットがある、必要なことなんだということを企業、さらには国民の皆様全員に分かっていただくという必要があるように思われます。
そこで、このようなストーリーラインを基礎づける研究というものは、今どのような状況にあるのでしょうか。
○田中政府参考人 男女間の賃金差異でございますが、令和四年に、女性活躍推進法に基づきまして、常時雇用する労働者が三百一人以上の企業を対象に情報公表を義務づけております。
令和五年度に厚生労働省が実施した調査結果によりますと、情報公表を行った企業における手応えとしてですが、例えば、男女の賃金の差異の状況や要因を分析するきっかけとなった、また、賃金差異改善に向けた社内の意識が向上した、新たな取組の実施や制度の創設につながったといったような結果が見られます。
また、厚生労働省でヒアリングを行っておりますけれども、男女間賃金差異の公表に取り組んだ企業におきましては、社内外での評価の向上等の効果が実感をされているところでございます。
こうしたことを踏まえまして、本法案では、男女間賃金差異と女性管理職比率につきまして、常時雇用する労働者数百一人以上の企業等に対して情報公表を義務づけるというようなことにしてございます。
女性活躍の推進に向けまして、こうしたことの情報公表をすることによる効果についても、数字だけではなくて、情報公表による効果についてもしっかり企業に御理解をいただけるように、取組を促してまいりたいというふうに考えております。
○根本(拓)委員 ありがとうございます。
今回、情報公開が強化されるということで、いろいろなデータ、関連するデータも集まりやすくなるのではないかと思われまして、アカデミアの世界でもこういう研究が進んでいくのではないかと思います。
そういったアカデミアの分野での研究成果についても引き続き着目をしていただいた上で、女性の活躍というのが社会の発展、会社の発展のために必要なんだ、そういうポジティブなストーリーを是非組み立てていければというように思っております。
続いて、最後に、女性活躍の推進について、今回の法改正にはプラチナえるぼし認定の要件の見直しというものが含まれています。このような女性活躍の推進に取り組む企業を認定するえるぼし認定、さらには、類似するものとして、子育てサポート企業を認定するくるみん認定というものがありまして、助成金、税制上の優遇、公共調達での評価といったインセンティブがあって、今回の認定要件の見直しというものは、こういう観点から有意義だと思われます。
しかし、えるぼし認定は、従業員全てが女性の企業、男性の企業も取得できる一方で、くるみん認定は、要件として、一つ目に男性労働者の育休取得率が三〇%以上であって、二つ目に無期、有期の女性従業員の育児休業等取得率がそれぞれ七五%以上という、この二つの要件の両方を満たさなければいけない。男性、女性、それぞれの育休についての要件を二つとも満たさなきゃいけないために、従業員が全て女性の企業だったり従業員が全て男性の企業というのは、原始的にくるみん認定を取得できない仕組みになっています。
小規模な事業者の場合、従業員が全て女性であったり男性であったりする事業者もあるところ、この中には子育てサポートを充実させているという企業もあると思われます。しかし、こうした企業、従業員全員が女性又は男性という、要件の充足が原始的に不能である企業が、法の趣旨にのっとった取組を進めているにもかかわらず、くるみん認定を取ることができず、公共調達なんかで有利に扱われないというようなことは、男女共に仕事と育児を両立するのだ、できるようにするという次世代育成支援対策推進法の趣旨が徹底されていないというようにも思われますし、今回の法改正の狙いである女性活躍の推進の観点からも望ましくないというように思われますけれども、この点についてはいかがでしょうか。
○田中政府参考人 御指摘にありましたように、次世代育成支援対策推進法に基づきます、いわゆるくるみん認定でございますが、これは男性の育児休業等の取得率に関します基準を設けておりますので、社員全員が女性である企業については認定の対象外というようなことになります。
くるみん認定ですが、次代の社会を担う子供が健やかに生まれ、育成される環境を整備をするという法の目的を踏まえて設定をしておりまして、男性の育児休業取得率、政府目標にも掲げられた仕事と育児の両立に関する重要な指標であることや、仮に社員が女性のみの企業において一部基準を免除する場合に、他の企業との公平性や認定としての質の担保に懸念があることなどを踏まえますと、御指摘のような御意見があることについては受け止めさせていただきたいと思いますが、慎重な検討が必要であるということについては御理解をいただきたいと思います。
公共調達の加点、賃上げ促進税制における上乗せ措置につきましては、女性活躍推進法に基づきます、えるぼし認定のみ取得した場合であっても対象となりますので、引き続き、企業の特性に応じたインセンティブの活用促進をお願いしたいと思っております。
○根本(拓)委員 ありがとうございます。
今、公平感の問題ということがありましたけれども、私はそこは余り納得していなくて、従業員全員が女性である企業が女性にすごい手厚い子育て支援をしている、従業員、男性が全員である企業が男性育休取得率一〇〇%を達成している、こういう企業にくるみん認定をしたとしても、余り公平感が損なわれるということはないのではないかと思っています。
男女共に仕事も子育てもするという社会、この実現を目指していく上で是正が必要な問題なのではないかなと思いますので、是非とも是正に向けた検討というものを進めていただければと思います。
以上で質問を終わります。ありがとうございました。
○藤丸委員長 次に、田畑裕明君。
○田畑委員 自民党の田畑でございます。
質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
この前は、自民党は今、草間さんと根本さん、大変、一期生のフレッシュな方々の爽やかな質問に私も聞き入っていたわけであります。私も、フレッシュな気持ちで質問に立たせていただきたいというふうに思います。
それでは、先に女性活躍の文脈の方の質問から質問させていただきたいというふうに思います。今日は、野中文科副大臣にも御出席をいただきました。誠にありがとうございます。
最初に、女性活躍のことでありますが、お手元に配付した資料は、三月に公表された、政府の方、厚労省の雇均局の方で所管をしていた、担当していた女性の職業生活における活躍促進プロジェクトチームの資料から、こちらを今日配付をさせていただいた次第であります。矢田稚子補佐官がずっと仕切っていらっしゃったというふうに承知をしておりまして、主に、男女間の賃金格差の問題、また非正規労働者の労働環境についてを課題にした検討会だったというふうに承知をしております。
その中で、少しちょっとあれっと思ったもので、今日は、この資料をまずお届けをさせていただきました。
質問に入る前に、まず、公務部門、民間部門も含めて、今回の法案では、男女間の賃金の公開の関係であったりですとか、女性の管理職比率をしっかり高めるということが法案に盛り込まれています。
まず、文科省さんにお聞きをしますが、文科省における公務員の方、本省の課長、室長や課長相当職の最新の女性管理職の数字は把握されているでしょうか。お聞かせください。
○野中副大臣 令和六年七月現在になりますけれども、文部科学省における本省課室長級の女性の占める割合でございますが、一二・八%でございます。
○田畑委員 ありがとうございます。
各省の一覧表が毎年報告をされていて、それを今引用していただいたんだと思います。該当者百人以上の省庁を絞って見れば、今お話ありましたとおり、文科省さんは、総数が三百三十六ポストがあって、四十三名、女性の方が室長、課長として登用されている、一二・八%であります。
ちなみに、全省庁の中で、百人以上とした場合ですけれども、経産省が実は一番女性の課室長が高い率ということで、一三・一%であります。後ほどにもちょっとつながっていきますが、国土交通省が、やはり予想するわけでありますが、一番登用が少ない。ポストの関係もあるのかもしれませんが、同じ指標で見て、文科省は一二・八%ですが、国交省は三・二%しか、女性の方々の管理職がまだ少ないという状況であります。これは様々要因があろうかと思いますが、後ほどもまた触れてみたいというふうに思います。
ちなみに、厚生労働省は、八百四人の該当のうち女性の方八十名ということで、一〇%という登用になっているというふうに承知をしております。
文科省は非常に高い率で女性の課室長がいらっしゃるということ、この後は言及はいたしませんが、そのほか係長職ですとか、地方の、国の出先機関の管理職割合についても、文科省さんは非常に高い率であるということも御紹介をさせていただきたいというふうに思います。
それで、配付の資料の、棒グラフのこちらの資料の方でありますが、研究者に占める女性の割合とかと書いてある方ですが、この右下のグラフ、これは教員の方々に取ったアンケートなんですが、男性の方が女性より管理職に向いている、理数系の教科は男子児童生徒の方が能力が高いと回答した小学校の教員のアンケートであります。
赤書きをしておりますが、女性の二十代の教員の方が一番、男性の方が管理職に向いているんじゃないか、また、理数系の教科というのは男の学生さん、児童生徒の方が能力が高いんじゃないかと先生が答えているということでありまして、ちょっと私も、何かすごくここにはいろいろなバイアスがかかっているんじゃないかなというふうに感じるわけであります。二十代の男性も、もちろん高い回答ということであります。
一部、こういうのを見たら、女性の学生の皆さんは、やはり、こんな日本社会じゃなくてもっと海外で活躍しようかなとか、国内にとどまらないとかという志向にもつながっていくのではないかなというふうに感じます。
これは一つのアンケートということでありますが、いろいろな仮説が考えられるなとも感じるわけでありますけれども、このような教育分野の現場の教員の方々に、私からすれば、非常にバイアスがかかっているふうに受け止めるわけでありますが、いわゆるアンコンシャスバイアスの解消、ここについての問題意識等についてどう感じていらっしゃるか、まず、現状認識も含めてお答えをいただきたいと思います。
○野中副大臣 アンコンシャスバイアスの解消は極めて重要であるというふうに思っております。
まず、現状の数値について申し上げますが、我が国において、各分野における学部段階の大学生に占める女性の割合でございますが、理学分野で二八・三、工学分野で一六・七%であります。過去十五年程度の傾向から見ると、例えば工学分野では六%ほど増加をしております。
ただ、他分野と比較して、女性の割合、理工系の学部を選ぶ割合というのは低くなっております。また、研究者に占める女性の割合も一八・五%と、以前より増えてはおりますが、諸外国と比較して低い状況にあるというふうに認識をしております。
そのため、女性進出、理工系分野への進出を後押しする取組、そして、先生がおっしゃられた教員等への、アンコンシャスバイアスの解消に向けた取組が極めて重要であるというふうに思っております。
取組でありますが、具体的には、女子中高生の理工系分野への進学を促進するため、女子中高生や保護者、教員を対象とした取組を行う大学等への支援、研究環境のダイバーシティー実現のため、研究と出産、育児等の両立支援や働き続けやすい研究環境の整備、教員向けのアンコンシャスバイアス解消への研修、教育プログラムの促進等を進めております。
余談ですが、過日、研究者の表彰式に行ったところ、選考委員は、以前より表彰を受ける女性の割合が増えた、これは優秀な人が増えたのかというふうに私が確認したところ、研究者自体の割合が増えているという事実もありますので、引き続き様々な取組を積極的に行ってまいりたいというふうに思います。
○田畑委員 御答弁ありがとうございました。
ちなみに、野中副大臣は、理系出身、文系出身、どちらになられますか。
○野中副大臣 見てのとおり、文系でございます。
○田畑委員 政治を志す方は、どちらかというと法学部ですとか経済系を含めた文系科目というか、文系学科、学部を卒業された方が非常に多いのではないかと思います。我々も、いろいろ政治の世界では、もうちょっと頭をフラットにとか、いろいろな凝り固まったバイアスは突破しながら当然やっていかなければいけないというふうに思います。
研究者は、今、ドクターの養成というのを大変力を入れているところでありますが、ポスドクの方々の年収が非常に低かったりですとか、こうした研究者職、そもそもが、賃金という表現がいいのか分かりませんが、やはり報酬が非常に低い。こうしたことにもメスを入れていかなければいけないんじゃないかと思っています。
資料の裏面のところを見ると、上の表はOECDのグラフでありますが、数学的リテラシーですとか科学的リテラシーというのは、OECD諸国の中では、日本は義務教育終了段階では世界トップなわけですね。こういった優秀な人材を、やはり国として、様々な領域、様々な分野、また国際社会を牽引をするような人物、人材の養成にもしっかり力をつけていかなければいけない。
そして、理工系も含めてでありますが、どちらかというと、私どもも、理系、文系とかとくくってしまうような教育養成課程自身が非常に古い時代の考え方にも通ずるのではないかというふうに私自身は感じるところであります。
今、文科省においても、高等教育自体の在り方ですとか、今後、職業観をどう若いうちから養成をしていくか、醸成をしていくかというのも大変国家的な、今日に突きつけられている課題だというふうには思っているわけでありますが、そうしたことも踏まえまして、今も御回答ありましたけれども、どんな人物をしっかり義務教育課程そして高等教育課程で、そしてその後の出口も含めて、文科省として、むしろ、野中副大臣、政治家、副大臣野中さんとしてのお考えを是非お聞かせをいただきたいと思います。
○野中副大臣 この資料でもありますように、義務教育終了時の段階で、数学的、科学的リテラシーの数値というのは、スコアというのは世界トップレベルでありますが、一方で研究者に占める女性の割合が少ない。これは先ほども答弁させていただきました。そのような中で、多様な視点、そして優れた発想を取り入れた新しいイノベーションの創出に向けて、女性の活躍を進めていくということは本当に重要であるというふうに思っております。
具体例でありますが、理工系分野における女子を含む大学入学者の多様性確保に向けた選抜の促進、そして、ここでありますが、意欲ある大学、高専におけるデジタルやグリーンなど成長分野への学部転換等に必要な経費支援の際の女子学生の確保の要件化などを進めているところであります。
これらを強力に推進することで、女性も含めた研究者を国際的に活躍できる人材となるように育てていくよう、私どもも頑張ってまいりたいというふうに思います。
○田畑委員 ありがとうございます。
今回の法案は、私はもちろん賛同という立場でありますが、女性活躍の推進の法律までを作りながらいろいろ後押しをしなければいけないのが今現実だというふうには思いますが、しっかり、男性だろうが女性だろうがという性の差に関係なくいろいろな能力が発揮できる、そして、企業も世間も、それが日本のスタンダードだということに前向きに取り組んでいかなければいけないと思っています。
ありがとうございました。副大臣の方は、お忙しいと思いますから御退席いただいて結構です。
それでは、カスハラにつきまして、ちょっと質問させていただきたいと思います。
私は、昨年度でありますが、自民党の中でカスタマーハラスメント対策のプロジェクトチームというものを立ち上げておりまして、私はその座長でございました。ちょうど昨年の五月に提言を取りまとめをし、厚労省等、政府側に御要請をさせていただいたところであります。その要望にものっとって、今回、審議会での審議を経て、この法案が提出をされているというふうに理解をしてございます。
我々の提言の中では、カスタマーハラスメントの定義をしっかりつくること、また、労働者保護の強化という点、また三つ目は、企業における顧客、取引先等への対応に対する支援の強化、最後に四点目に、消費者の権利と責任の正しい理解の促進、強化ということで、四本柱で要望をさせていただいた次第であります。それにのっとって、相当それに加味したような形での法案というふうに理解をしているところでございます。
先ほどの草間さん、根本さんとは余り重複しないように確認をしたいと思いますが、先ほど、根本さんの質疑の中では、ビジネスと人権ガイドラインのことについての御引用がございました。
私からも、少しちょっと関連はしますが、まず一問目は、そもそも、今も事業主には従業員に対する様々な安全配慮措置的なものがいろいろな法律に基づいても課せられているわけであります。例えば、具体的には、労働契約法の第五条には、従業員の安全配慮義務を規定されているわけであります。今回の立法化、カスタマーハラスメント対策の義務づけについて、今のいろいろな法律である従業員の安全配慮、その安全という範疇も非常に広いと言えば広いんだというふうに思いますが、他の法令との整合性だったりですとか、今回成立を目指す、その意義するところについて、まず答弁をお願いします。
○田中政府参考人 まず、カスタマーハラスメントにつきましては、党の方からも御提言などをいただきまして、そうしたようなことも踏まえまして、議論を重ねて今回の法案の提出になってございます。
先生御指摘ありますように、安全配慮義務といったような義務もございますが、今回、企業規模を問わず、カスタマーハラスメント防止対策を企業に義務づけるということですけれども、こういうふうにできるようになってきたのは、社会におけるカスタマーハラスメントに対する関心、理解が深まってきている状況というのも表しているものだというふうに思います。
そうした中で、カスタマーハラスメントのない職場づくりを進めていくということに当たりましては、個々の企業ですとか業界ということにとどまらずに、社会全体で対策を進めていくこと、足並みをそろえていくことが非常に重要だというふうに思います。
そのために、企業規模にかかわらず、措置義務を位置づけまして、こういう措置義務として法律上義務づけることによって、措置を行わない場合に指導等ができるようにするということがございます。こうしたような措置を行わない場合の指導等を通じまして、社会全体で足並みをそろえて取組を進める、こういったようなことが可能になるかというふうに思っております。
○田畑委員 ありがとうございます。
企業規模を問わず、また様々な業種にしっかり物差しを当て込んで、著しいそうした顧客からのクレームに対応できる、そうした事業所をしっかり確保していただきたいというふうに思います。
いろいろなアンケート調査では、そうは申せ、実際、今日までも事業者の方においては、何をすればいいのかよく分からないという回答が非常に多いというふうにも承知をしています。
改めて、事業主は労働者に対してどのような取組を行うことを課すのか、分かりやすく回答していただきたいと思います。
○田中政府参考人 この措置義務に基づきまして事業主に講じていただく雇用管理上の措置につきましては、事業主の方針等の明確化及びその周知啓発、労働者からの相談に応じて適切に対応するために必要な体制の整備、カスタマーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応などを想定をしておりまして、指針等において具体的にお示しをしていくことを考えてございます。
また、法案の中では、カスタマーハラスメントに関する国、事業主等の責務だけでなくて顧客等の責務を定めるということや、職場におけるハラスメント一般について、何人も職場におけるハラスメントを行ってはならないということを法文上明確化いたしまして、規範意識の醸成に向けて国が周知啓発に取り組むといったようなことを盛り込んでございます。
それにしましても、事業主が講じる措置につきましては、指針の中で分かりやすいような形でお示しできればというふうに思っております。
○田畑委員 それぞれ業所管省庁をしっかりグリップしていただきたいというふうに思いますし、やはり、本当に様々、業界、業種によっては対応が違う、場合によっては、少しカスハラを甘くして、厳しいところよりも自分の事業の方に有利になるような、そうしたことを考える事業者も出てくるんじゃないかなというふうに思いますから、しっかり、業所管省庁の下にきちっと対応していただきたいと思います。
今、政府の方では関係府省連絡会議というのを設置しているというふうに承知しています。その中でいろいろ列記されているんですが、総務省は郵政業務部がメンバーに入っています。しかし、金融庁は一切入っていないんですね。いわゆる金融機関を含め、相当、顧客とのトラブルが多い業種ではないかと私は認識しますが、ゆうちょにはそれが対応されるけれども、金融庁は、そこはなぜ入っていないのかというのは少しちょっと疑問に感じるところでありますが、何か答弁があれば、お聞かせをいただきたいと思います。
○田中政府参考人 御指摘の関係省庁連携会議でございますが、十四府省庁に参画いただきまして、本年一月に第一回ということで開催をさせていただきました。
御指摘ありましたように、現在、連携会議の構成員として金融庁は含まれておりませんけれども、仮に法案が成立すれば、必要に応じて参加省庁の拡大も図りたいと考えておりますので、業所管の省庁にしっかり取り組んでいただくことも重要だというふうに非常に思っております。
関係省庁間の密接な連携の上で取り組んでいけますように、今後も継続して情報共有等を図ってまいりたいと考えております。
○田畑委員 済みません、ちょっと時間の関係上、最後になりますが、安藤政務官の方にお聞きしたいと思います。
就活中の学生のハラスメント被害の対応というものも盛り込まれているところであります。しかし、なかなかやはりこういうのはデリケートで、実際被害があったとしても相談しにくいのではないかというふうに思いますが、公的な窓口みたいなことの設置について、お考えを聞かせてください。
○安藤大臣政務官 田畑先生、ありがとうございます。車椅子なので、着座にてお話をさせていただくことを許していただければ幸いでございます。
本法案では、就職活動中の学生を始めとする求職者等に対するセクシュアルハラスメントを防止するために、その対応を職場における雇用管理の延長として捉えた上で、事業主に対して相談体制の整備などの措置を講ずることを義務づけることとしています。
御指摘のように、就職活動中の学生等の求職者の方は、当該企業に就職することを目指して活動を行っている中で、当該企業の相談窓口に社員のセクハラに関する相談をすることは、ためらわれる場合が多いと考えられます。
この点、厚生労働省が把握している企業の事例としては、これは大林組ですけれども、人事部とは独立した相談窓口や社外相談窓口を整備をしております。二つ目、これは日本たばこの例ですけれども、コンプライアンス部門が相談窓口として相談に対応するといった取組をしている事例がございます。
これらの事例はいずれも、採用を担当する部署とは別の部署が相談に対応する仕組みにすることで相談をしやすくするものであります。指針等の策定に当たっても、こうした事例を踏まえて、有効な対策を示していきたいと考えています。
また、求職者に対するセクシュアルハラスメントについては、これまでも、都道府県労働局や新卒応援ハローワーク、大学のキャリアセンターにおいて相談に対応しているところでございます。
引き続き、事業主による相談だけではなく、こうした窓口の相談対応を行うことで、被害を受けた方に寄り添った対応を図ってまいりたいと思います。
ありがとうございます。
○田畑委員 終わります。
○藤丸委員長 次に、井坂信彦君。
○井坂委員 立憲民主党の井坂信彦です。
ようやく年金法案の提出が決まったということで、年金について一問だけお伺いをしたいと思います。
残念ながら、今回、基礎年金の底上げを削除した形で提出されるということですが、我々は、法案提出後に、基礎年金の底上げをもう一度入れ直す修正をしたいと考えております。この底上げに対して、厚生年金の、会社勤めの人のお金が国民年金の個人事業主に使われて厚生年金の人は損をするんだというような、誤解に基づく間違った報道や間違った批判がされています。
厚生年金は二階建ての仕組みであります。全員が定額でもらえる基礎年金、これは国民年金と一緒の一階部分、そして、その上に、年金保険料をたくさん払った人ほどたくさんもらえますよという報酬比例部分が上乗せをされています。
今回、法案から抜かれてしまった底上げは、厚生年金から国民年金にお金を移すという話ではなくて、厚生年金のお金、これまでは二階の報酬比例部分に多く投入していたのを、これを一階の基礎年金部分にこれからは多めに投入をしましょうというだけの話であります。その結果、基礎年金が大幅に底上げをされて、厚生年金の人も幅広く得をするという仕組みであります。
試算をしてきました、この配付の資料一を御覧いただきたいと思います。これは、令和六年財政検証の詳細データを基に、男女別、そして各年代ごとに、底上げをやったら損をするのか得をするのかということを試算をしてみました。
結論から申し上げると、右下に書いてあるように、厚生年金の人であっても、六十一歳以下の男性と六十六歳以下の女性は、底上げをした方がもらえる年金が増えると思います。
右下の黄色い升、六十六歳女性のところを御覧ください。現在六十六歳の女性は、平均余命が二十三年なので八十九歳まで生きます。その間の毎年の所得代替率、すなわち年金額の水準がどうなるかというのが左側の縦長の表であります。二〇二五年からこの女性が八十九歳になる二〇四八年まで年金を受給するので、この間の所得代替率を平均をすると、青色の底上げ前の数字、平均して五七・六%、オレンジ色の底上げ後の数字、これをこの間平均しても、同じく五七・六%です。
つまり、厚生年金の六十六歳の女性が平均余命まで生きると、底上げ前後で損得が収支とんとんになり、六十六歳より若い女性は、厚生年金であっても底上げをした方が得をするということであります。同じく、右上の黄色い升、厚生年金の六十一歳以下の男性も、底上げをした方が得をします。
大臣に伺いますが、今回、法案からは当初削除をされる見通しでありますが、この基礎年金の底上げ、厚生年金も含めた基礎年金の底上げの効果について、今私が申し上げ、また表で計算過程もお示しをした、このような理解でよいかどうか、お伺いいたします。
○福岡国務大臣 御指摘いただきましたような試算は厚生労働省として行っておりませんが、委員が実際自分で行っていただいた試算については、基礎年金の底上げの効果について、一つの試算であると受け止めさせていただいています。
基礎年金のマクロ経済スライドの早期終了につきましては、将来の基礎年金水準を確保する観点から検討していたものでございまして、一般的に申し上げますと、マクロ経済スライドによる給付調整が終了した以降に受給する期間が長い方が改善効果が高くなりますことから、将来年金を受給する世代の方が底上げになり得るものと考えております。
○井坂委員 私も、今大臣がおっしゃったように、将来世代にはプラスなんだろうというふうには事前には認識をしていたんですね。ただ、就職氷河期世代だけよくなりますよとか、あるいは五十歳以下だけよくなりますよというような感じで捉えていたんですけれども、しかし、実際に計算をしてみると、今申し上げたように、思った以上に幅広い世代で、厚生年金の人でも受給額が増えるわけであります。
しかも、この表で赤い字の年金額の増減率というのも出してみましたが、確かに高齢世代の人は損をしてしまうわけですが、この損をする割合というのは、マイナス〇・五%とかマイナス一・一%など、ごく僅かな損であるのに対して、例えば、五十歳の女性はプラス六・一%、四十歳の女性はプラス八・五%と、増える方の底上げ効果がめちゃくちゃ大きいというふうに思います。
今ちまたで言われているような、厚生年金が損をして国民年金が得をするというのは、これは完全な間違いであります。また、就職氷河期だけあるいは五十歳以下だけが得をするというのも、これもやはり間違いであります。
厚生年金でも、本当に幅広い年代の年金額が実際に増えて、しかも、損をする世代、これは一定の手当てが私は必要だと思いますが、ただ、損をする世代の減り幅は私が思った以上に僅かで、得をする世代の増え幅が非常に大きいというこの事実を是非、厚生労働委員会の皆様と、それからメディアの皆様とも共有をして、年金法案から抜かれた底上げを入れ直す修正を頑張りたいというふうに思います。
次に、労働施策総合推進法について伺います。
昨日の参考人質疑では、一般企業に加えて、介護業界とか自治体など、本当に様々な業界におけるカスタマーハラスメントの実態を伺いました。利用者さんのお宅に独りぼっちで行く訪問介護、それから、住民の方がある種の権利性を持ってクレームを言ってくる自治体窓口、本当に、業界によってカスハラの形、そして対応の仕方も全く異なるわけであります。
厚生労働省は、既にカスタマーハラスメント対策企業マニュアルを公表しています。これを参考に、各業界の所管省庁が、事業の特性をちゃんと考慮してカスハラの事例収集や対応マニュアルを作成し、業界団体へ周知することが重要だと思います。また、航空法の改正や旅館業法の改正のように、業界によっては法改正で労働者をカスハラから守る必要もあると思います。
大臣に伺いますが、各省庁でちゃんと事例集や対応マニュアルを作成して、そして業界団体へ周知するとともに、必要があれば業法見直しも検討するように厚労省から各省庁にきちんと働きかけをしていただけないか、お伺いいたします。
○福岡国務大臣 御指摘ありましたとおり、カスタマーハラスメントの様態は業種、業態により異なることから、業所管省庁と連携して、各業界の実態を踏まえた対策を進めることが重要であると考えております。
このため、この法案におきましては、カスタマーハラスメントを防止するための雇用管理上の措置を講ずることを事業主に義務づけることに加えまして、国の責務として、各事業分野の特性を踏まえた広報啓発活動を行うことを定めております。これを踏まえて、関係省庁と連携し、業種、業態ごとの特性を踏まえた取組を推進していくこととしております。
具体的には、本年一月に関係省庁が参画しますカスタマーハラスメントの防止対策の推進に係る関係省庁連携会議を設置し、カスタマーハラスメント対策の取組事例等について継続して情報共有等を図ることとしておりまして、関係省庁が緊密に連携し、カスタマーハラスメントの防止対策を総合的かつ効果的に推進するように取り組んでおります。
引き続き、関係省庁とも連携しながら、業界ごとの特性を踏まえ、御指摘がありましたように、事例集であったりマニュアルの作成、法令改正等を含めた、必要に応じた対策を促進することにより、労働者の就業環境を守るための取組を進めてまいりたいと思います。
○井坂委員 ありがとうございます。
法令改正も含めてということで答弁をいただきました。これはもちろん、法律では各省庁がきちんとやらなければいけないわけでありますが、カスハラ対策というのは、やはり厚労省が既にマニュアルも作り、一日の長がありますので、是非、大臣の方から、連携というお言葉の中に、各省庁に、ちゃんと事例集、マニュアル、しっかりやってくださいよ、うちではこういうノウハウがあるのでちゃんと提供しますよ、必要があれば業法の改正もやってくださいよということで、カスハラ対策を全省庁向けにリードをしていただきたいというふうに思います。
続きまして、この法案成立後の指針に、労働者をカスハラから守るために仮処分命令の申立てができるということを記載できないかということを、質問を準備しておりましたが、先ほどの山井議員の質疑で大臣から一定の答弁がありましたので、この質問は飛ばさせていただきます。
次に、フリーランスに対するカスハラについて伺います。
今回の法改正には、まだフリーランスをカスハラから守るという措置は含まれておりません。
大臣に伺いますが、フリーランスに対するカスハラ、もちろんこれは、どういう形があるのか、そしてどういう対応が考えられるのかというところからスタートでありますけれども、フリーランスに対するカスハラについて、どのような対応が可能か、まず検討していただけないでしょうか。
○福岡国務大臣 フリーランスにつきましては、令和五年に成立したフリーランス・事業者間取引適正化等法において、業務委託を行う発注事業者に対して、社内においてハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化、方針の周知啓発を行うこと、ハラスメント行為が生じた場合の相談体制の整備等の措置義務を設け、昨年十一月から施行されております。まずは、これらの義務が着実に実施されるように、関係省庁と連携して取り組んでいきたいと思います。
その上で、フリーランスが業務を遂行するに当たり対応が必要となる顧客等からの言動について、発注事業者に何らかの措置義務を設けることは、フリーランスが発注事業者から業務遂行上の指揮監督を受けるわけではないなど、労働者とは働き方が違うこと等を勘案した上で、その必要性であったり保護の内容については慎重に考えるべきであると考えております。
一方で、その検討の重要性については、委員御指摘ありましたように認識をしてございまして、今後、施行後三年を目途としてフリーランス法の施行の状況を勘案し検討を加えることとされていることも踏まえまして、施行状況を注視しながら適切に対応してまいりたいと思います。
〔委員長退席、長坂委員長代理着席〕
○井坂委員 ありがとうございます。
重要性については認識を共有していただいたと。三年後の見直しに向けてということで、一定の具体性のある期限もおっしゃっていただいたというふうに受け止めます。
次に、訪問介護のヘルパーに対するカスハラについて伺います。
昨日も参考人の方と議論をしたんですけれども、訪問介護では、ベテランのヘルパーさんが新人のヘルパーさんに同行して指導をする、そういうときに使える支援金の制度が今既にあります。
これを何とか応用して、カスハラ、さっき申し上げたように、一人だけで、しかも相手のおうちに行くということで、何をされるか分からない、大変怖い、しかも、何かされても、それが記録や証拠がなかなか一人で行くと難しいという中で、カスハラを既に受けている、あるいはそのおそれのあるヘルパーにもう一人ヘルパーが同行して支援をするという、この二人目のヘルパーの費用を何とか助成をできないかということで参考人に伺います。
○黒田政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のとおり、訪問介護につきましては、利用者の居宅において職員がお一人でサービス提供を行うという特性がございまして、特にハラスメントが生じやすい環境にあるというふうに考えております。
こうした観点から、訪問介護の職員が安心してサービスを提供できるよう、職員の補助者として同行する方への謝金について、地域医療介護総合確保基金を活用して助成を行うというメニューを御用意をしてございます。
こうした取組が現場で更に活用されるよう、自治体、それから介護事業者等々への周知などにも取り組んでまいります。
○井坂委員 その基金を使って現状でもできるということで、これは是非、昨日の参考人の方にもすぐお伝えをしたいというふうに思いますが、ただ、これはどこでもできるのか。結局、やはり自治体がこういう補助金メニューをちゃんと考えて作ってくれない限り、現場の介護事業者の方が幾らこういうのが欲しいと言っても、使えないんだろうというふうに思います。
実際、現状で、確かにできることはできるけれども、やっている自治体というのがどれだけあるのか、お願いいたします。
○黒田政府参考人 お答え申し上げます。
先ほど御紹介いたしました地域医療介護総合確保基金の中に、介護事業所におけるハラスメント対策推進事業というメニューを作っておりまして、その中の事業の一つとして、先ほど御紹介しました補助者の同行に係る支援が入っております。このメニューの実施状況につきましては、令和六年度で十六都県が実施しているということでございまして、年々増加傾向にはございます。
ただ、この法案の過程でも、それから委員御指摘のように、このテーマは非常に重要でございますので、私どもとして、全国の自治体の方々の担当課長会議というのを開催しておりますが、毎年説明をしておりますし、それからホームページ等々にも掲載をして、取り組んでいただくようお願いをしているところでございます。
今回の議員の御指摘も踏まえまして、更なる取組を進めてまいります。
○井坂委員 まだ十六都県ということでありますので、是非、これは仕組みとしてはいい仕組みだと思いますので、全ての都道府県で必要な介護事業者が使えるように、周知、せっかく今回議論をしましたので広めていただきたいというふうに思います。
次に、介護そして福祉の人手不足、それから人材の流出について伺います。
昨日の参考人質疑では、介護の人手不足で結局事業所がサービスを提供できなくなって、そのことに対して利用者さんや家族から厳しく叱られるというような例も紹介をされました。大変理不尽な叱られ方をしているというようなお話もありました。
その後、これは公明党さんの参考人に対する質問に対して、何と経団連の参考人も含めた五人の参考人全員が、問題を解決するためには介護の賃上げが重要だという同じような答弁をされたわけであります。
大臣は、この間、この議論をずっとしていますけれども、常に大臣の答弁は、まず補正予算の処遇改善を夏に行うんだ、その効果を見て、また必要があれば考えますというような答弁にとどまっています。しかし、昨日、介護の参考人は、そんな補正予算の処遇改善では僅かな効果しか期待はできないというふうに、やる前からで申し訳ないんですけれども、言い切っておられました。
ちなみに、参考人の資料によると、転職をしたいという介護従事者の八割が賃金の高い仕事を希望している。人手不足でケアプランが組めませんでしたという経験のあるケアマネジャーがもう既に七割もいます。さらには、赤字の訪問介護事業所の七割が、ヘルパーの人手不足で、お客さんから頼まれても、もう送るヘルパーがいないからできなくて、その分収入を得る機会を失って赤字なんです、こういう理由になっております。
大臣に伺いますが、いつもの答弁を少し超えて、介護、福祉の処遇改善は、やはり秋以降では遅いのではないか。夏やりますとかそんな答弁は、なかなか今、この瞬間、難しいのは分かりますけれども、秋以降に考えたんじゃ、ちょっとさすがに遅いんじゃないかと、私は昨日参考人と議論をしてその認識を深めたわけですが、大臣の御認識を伺います。
○福岡国務大臣 まず、人材確保の難しさについては再三御指摘をいただいたところでございまして、処遇の改善は喫緊の課題だということについては、認識を共有をさせていただいております。
そして、私どもとしては、補正の効果も見極めた上で必要な措置を検討していくというふうに申し上げてきたところですが、委員からは、それでは遅いんじゃないかという御指摘があったところでございます。
私どもとしても、必要な措置が行き渡る前に、様々な、資金がショートして事業が継続できないようなことを避けるために、今般、緊急融資の制度等も設けさせていただいたところでありまして、そういったことで何とか事業を継続していただきながら、引き続き、必要な対応については検討を進めてまいりたいと思います。
○井坂委員 これは、場合によっては期中改定も必要だというふうに思います。
最後、一問お聞きしますが、骨太方針二〇二三年、当時、介護の処遇改善が書かれました。同じように、骨太方針二〇二五にも、例えば、全産業の賃金上昇と介護、福祉の人手不足の状況を踏まえ、介護利用者が必要なサービスを受けられるよう、次の介護、福祉の報酬改定を待たずに必要な対応を行うというように骨太方針二〇二五に書き込むべきだと思いますが、最後、いかがですか。
○福岡国務大臣 先ほども申し上げましたように、介護、障害福祉分野における処遇改善というのは喫緊の課題であるというふうに認識しておりまして、こうした認識に立った上で今後の調整に臨んでまいりたいと思います。
○井坂委員 喫緊という認識に基づいて今後の対応ということで、喫緊というのは、秋まで何もせずにそこから考えるというのは、喫緊とは私は思いませんので、今の答弁のとおりに、是非御対応いただきたいというふうに思います。
ありがとうございました。
○長坂委員長代理 次に、沼崎満子さん。
○沼崎委員 公明党の沼崎満子です。
昨日の参考人質疑に引き続き、質問の機会をいただき、大変にありがとうございます。
早速ですが、質問に移らせていただきます。
昨日も介護のカスタマーハラスメントに関する御質問をさせていただきましたけれども、本日も介護事業者のカスタマーハラスメント対策について御質問をさせていただきます。
介護業界、我が国の高齢化社会においては、もう非常に重要な役割を果たしています。介護士の約八割が女性であるということから、特有のハラスメントの課題というのが存在しています。介護事業者からカスタマーハラスメントに関する相談を私も直接受けておりまして、これは介護士の労働環境やメンタルヘルスにも深刻な影響を及ぼしています。介護業界から人材流出が進む中において、介護人材の人手不足は深刻な問題で、すぐにでも対応が必要と思います。処遇改善とともに、カスタマーハラスメントの課題解決は非常に重要です。
そこで、お伺いします。
初めに、介護業界におけるカスタマーハラスメントの問題を現状でどのように認識しているかということと、介護士が安心して働ける環境を整えるために具体的にどのような施策を講じているのかについて、お伺いいたします。
○黒田政府参考人 お答え申し上げます。
介護分野における人手不足が大変厳しい状況である中、介護分野で働く方々が、利用者、その御家族からハラスメントを受けることなく、安心して働くことができる環境整備を図ることが重要であるというふうに考えてございます。議員のおっしゃるとおりでございます。
厚生労働省では、介護現場における利用者、家族等によるカスタマーハラスメントへの対応としまして、これまで、介護事業者が講ずることが望ましい措置等を介護サービスの運営基準の通知により明確化をするとともに、事業者向けの対応マニュアル等の作成、自治体が行う介護事業者におけるハラスメント対策への助成等の支援を行ってございます。
特に訪問介護につきましては、利用者の居宅において職員一人でサービス提供を行う特性があるということに鑑みまして、介護報酬におきまして、暴力行為や著しい迷惑行為等が認められるような場合に、複数人でサービスの提供を行った場合の加算などを設けているところでございます。
○沼崎委員 ありがとうございます。
人手不足でなかなか複数人の対応も難しいですので、人手不足解消に向けた取組というのも是非進めていきたいと思います。
介護士がカスタマーハラスメントに遭遇した際に相談できる窓口の設置や、事業者に対する支援の強化も必要と考えます。介護事業者がカスタマーハラスメントに対する相談窓口が設置できるようにするために、どのような施策を考えているのか、お伺いいたします。昨日の鈴木参考人の方からは、伴走型支援といったことが必要だというような御意見もお伺いしました。また、具体的な窓口設置に対する支援や助成制度もあればお聞かせください。
○黒田政府参考人 お答え申し上げます。
介護現場におけるカスタマーハラスメントの防止につきましては、事業主である介護事業所が雇用管理上の配慮として行うことが望ましい取組といたしまして、御指摘の相談窓口の設置などを通知で明記をした上で、地域医療介護総合確保基金の支援メニューとして、地方自治体を通じて事業所のお取組を支援してございます。
仮に法案が成立いたしますれば、カスタマーハラスメントの防止のため、事業主である介護事業所に対して、雇用管理上必要な措置が義務づけられることになります。こうしたことを踏まえまして、今後お示しをすることとしている支援等の内容も踏まえながら、介護現場における必要な対応について、マニュアルの見直し等に介護現場の方々の御意見も十分お聞きをしながら、取り組んでまいります。
○沼崎委員 介護士のカスタマーハラスメント対策は、事業者の方からお伺いすると、介護士のやはり地位向上が重要であるというような御意見をいただいています。
昨日の参考人の方々の御意見では、やはり処遇改善が重要である、そういった御意見もありましたが、それ以外で、適切な評価を受け、職場環境が改善されるため、そしてカスハラの発生を抑制するために、介護士地位向上に向けてどのような施策が講じられているか、また、これからどういった取組を行う方針かということについて、お聞かせいただきたいと思います。
〔長坂委員長代理退席、委員長着席〕
○日原政府参考人 お答えを申し上げます。
介護人材の確保につきましては、累次にわたる処遇改善の取組を始め、介護現場の負担軽減、職場環境の改善など、総合的な対策を進めてございます。介護の仕事の新たなイメージを発信することによりまして、社会的評価の向上を図っていくことは重要であるというふうに認識してございまして、こうした総合的な対策の一環として、介護職の魅力向上にも取り組んでございます。
具体的には、介護職の方などに御自身の声で仕事の魅力ややりがいを発信していただく、そうしたコンテンツの企画、制作などを行って、発信力のある事業者と連携して広く発信するといったこと、また、魅力発信のためのプラットフォームとして、介護の仕事魅力発信ポータルサイトを設けまして、様々な介護事業者の方などが作成されたコンテンツを掲載するなど、現場の最前線で活躍されている方の視点から、その魅力を広く発信する取組を行ってございます。
さらに、都道府県におきましても、例えば教育委員会と連携をして、地域の介護福祉士の方が小中学校への出前授業を実施するなど、地域医療介護総合確保基金を活用しまして、地域の実情に応じた介護の仕事の魅力発信を行っていただいているということでございます。
引き続き、国、地方自治体、一体となりまして、こうした取組を通じ、介護職のイメージアップや社会的評価の向上などに努めてまいりたいと考えてございます。
○沼崎委員 介護士さんのお仕事は、非常に実はやりがいがあって、大変ではありますけれども、魅力のあるお仕事と思います。しっかり地位向上につながるようなアピールというのもお願いしたいと思います。
また、先ほどのお話の中にもありましたが、今回の改正で相談窓口の設置が義務化されますが、現行制度でどのような課題があるから設置の義務化というのをしたかという点と、中小事業者に対する負担にならない、負担軽減に対する支援がありましたら、お聞かせください。
○安藤大臣政務官 沼崎先生、着座にて失礼いたします。
本法案において、労働者保護の観点から、カスタマーハラスメントの対策の強化を図るために、事業主に対して、労働者からの相談に応じて適切に対応するための体制整備などの雇用管理上の必要な措置を講ずることを義務づけております。これまでは企業の自主的な取組に委ねたカスタマーハラスメント対策について、企業規模を問わず、全ての企業において進めていただくことになるため、中小企業に対して支援を行うことは重要であると考えております。
このため、都道府県労働局において法令等の内容に関する助言等を行うほか、専門家がハラスメント事案が生じた企業等の事業主や人事労務担当者等からの相談に応じて、速やかにハラスメント事案を解決するための対応策を助言する事業を令和七年から実施することになっております。
こうした取組を通じて、企業規模にかかわらず、社会全体で足並みをそろえて、カスタマーハラスメントの防止に向けた取組を進めていきたいと考えております。
○沼崎委員 事業者の方からは、自治体に御相談してもなかなか解決に至らないというような切実なお声も伺っておりますし、外部業者などもあるようですので、そういったところの御案内等もしていただければと思います。
また少し話題を変えまして、女性の健康相談窓口に関する御質問をさせていただきたいと思います。
近年、女性の社会進出、非常に進んでおりまして、多くの分野で活躍する女性が増加しており、非常に私も喜ばしいことだというふうに思っています。しかし、その一方で、女性特有の健康問題が女性活躍に影響を及ぼすことが懸念されています。
例えば、月経や更年期障害における体調の変化では、特に頭痛や倦怠感といった不定愁訴が非常に多く見られます。また、妊娠、出産といった女性特有の問題、こういったことは、職場でのパフォーマンスやキャリア形成に直接影響を及ぼす可能性があります。私自身も、女性医師として働く中で、女性医師の多くが大変な苦労を重ねてキャリア形成をする姿や、途中でどうしても諦めざるを得ない、途中で退職をする、あるいは、周囲の心ない声に自信をなくしてしまうといった様子も見てきました。
こういった健康問題に対する理解や支援が不十分である場合、女性の活躍の場というのは制限されてしまうおそれがあると思います。また、女性の健康問題に対して、社会的な認識や教育が不足していることも問題の一因と考えます。これらの問題を放置することは、これから女性が社会参加や経済活動を活性化する上で、大きな障害となりかねません。
こういった背景を踏まえまして、女性の健康問題が女性活躍に与える影響を真摯に受け止めて、適切な対策を講じていくことが急務であると思います。
そこでお伺いしますが、最初に、女性の健康問題が社会や経済に与える影響について、どのような認識をしているのか。特に女性の、特に職場における健康管理の課題についてお伺いしたいと思います。
○江澤政府参考人 女性の健康問題が社会や経済に与える影響、それから職場における健康管理等について御質問をいただきました。
経営者が従業員の健康増進に戦略的に取り組むことは、人的資本経営の土台となり、生産性の向上、ひいては企業価値の向上につながると考えています。このため、経済産業省では、健康経営の推進を積極的に進めてきたところでございます。
その中でも、女性特有の健康問題、健康課題について御指摘をいただきました。業務効率や就業の継続にも大きな影響を与えることが分かっています。その経済損失を可視化したところ、労働損失等の経済被害額、社会全体で年間三・四兆円程度と推計しております。
女性を始めとする多様な人材の活躍とイノベーション創出、さらに、企業のパフォーマンスとのその間には、一定の相関があることが各種データからも示されているところでございます。したがって、各企業が男女の差による健康課題をよく理解して、細やかに取り組むことが重要である、このように認識しております。
○沼崎委員 非常に大きな経済損失ということで、私もその金額を知って、非常に大きな驚きを持って見ているところです。
現在、女性の健康問題に対しては、どのような施策を講じていますでしょうか。特に、企業において健康管理や支援を進めるための具体的な取組について、お聞かせいただきたいと思います。
○江澤政府参考人 お答え申し上げます。
先ほど申し上げました問題意識も踏まえまして、経済産業省では、主に職場における女性の健康問題について、健康経営の質を上げる取組を支援しているところでございます。
具体的には、健康経営優良法人の認定に当たって、健康経営度調査等における女性の健康に関する設問において、経営層や管理職、特に男性でございますけれども、その理解、テレワークなどの働き方の調整、女性の健康に関する積極投資等を厳格に評価をしまして、さらに、女性の健康に関する研修等の参加率の開示も求めているところでございます。
同時に、ほかの企業の取組事例を知りたいという声もございまして、昨年度末には女性の健康取組事例集を公表し、企業規模や業種別の取組、明日から始められる身近な取組等を紹介したところでございます。
また、今年度は、女性の健康効果検証プロジェクト、こちらを実施しまして、約二百社の企業の参加をいただいております。厚労省や関係機関の協力もいただいて、女性の健康に取り組むメリットを、可視化を進めていきたいと思います。
さらに、先進的な技術を用いて女性特有の健康課題に対応するフェムテック等の利活用に関する実証事業を支援しまして、その成果の普及も行っているところでございます。
経済産業省としては、引き続き、女性特有の健康課題に起因して女性がキャリアを諦める必要がないよう、職場環境を整備する取組を支援してまいりたいと考えております。
○沼崎委員 ありがとうございます。
取組が進んで、是非企業さんでの御理解というのが進むことを期待したいと思います。
その中で、企業における女性の健康問題に対して、先ほどお話ししたように、不定愁訴も含めて様々な訴えがございますので、総合的に女性の健康に関する相談窓口を設置をしていく、それを推進することが私自身は重要だと考えております。
こういった相談窓口を設置するための支援、ガイドライン、そういったことに関する政府のお考えをお聞かせください。
○田中政府参考人 女性の健康課題につきまして、御指摘のような取組を含めて、企業の取組を後押しをしていくこと、非常に重要であると考えております。
厚生労働省においては、企業や働く女性等に対して母性健康管理や女性の健康課題に関する情報を提供する、働く女性の心とからだの応援サイト、これを運営しておりまして、ここにおきまして様々な企業の取組事例を紹介しております。その一つとして、女性の健康に関する相談窓口を設置している企業の事例も紹介をさせていただいております。
また、本法案の中で、女性の職業生活における活躍の推進に当たって、女性の健康上の特性に留意して行われなければならない旨を法の基本原則として規定をすることとしております。法案が成立いたしますれば、この改正の趣旨を踏まえまして、事業主が作成する行動計画の基本的な事項を示します事業主行動計画策定指針の改正をすることになりますが、ここに新たに、女性の健康課題に係る取組例といたしまして、女性の健康課題を相談しやすい体制づくり等の具体例を示しまして、事業主の積極的な取組を促す、こういったことなどを想定をしてございます。
○沼崎委員 ありがとうございます。
是非、今お話ししていただいた内容が実効性があるものになることを期待します。
企業が積極的に女性の健康問題を取り組むためには、やはりインセンティブ等もあるとより前に進みやすいかなと思いますが、こういったインセンティブに関して提供する予定かどうか、お伺いできればと思います。
○田中政府参考人 先ほども申し上げましたように、本法案が成立いたしますれば、改正の趣旨を踏まえながら、職場における女性の健康支援に積極的に取り組む企業を後押しをしていくということでございます。
こうしたような企業のインセンティブとなるように、女性活躍推進に取り組んで一定の基準を満たした企業を認定する、いわゆるえるぼし認定制度でございますが、女性の健康支援に関する上乗せの認定の仕組みを設けることなどを考えたいと思っております。
○沼崎委員 ありがとうございます。
今、経済産業省さんからも御返答がございましたが、経済産業省と厚生労働省で連携して、女性の健康に対する施策というのは推進していく必要性があると思いますが、今、どのような形で情報共有や施策の調整というのは行われているかということと、今後、女性の健康問題に対する施策をより効果的に推進するために連携強化をどのように行っていくかについて、お聞かせいただければ幸いです。
○田中政府参考人 まず、これまでの連携でございますが、今般の法律の改正案を作成するに際しまして設けておりました、雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会でございますとか、労働政策審議会、ここでの議論におきまして、経済産業省で行われました試算、調査結果などを参考にさせていただく、こういったようなことなど、必要な連携を図ってまいりました。
今後とも、女性を含めた全ての労働者が働きやすい就業環境の整備に向けましては、情報を共有して、しっかり連携して進めてまいりたいと考えております。
○沼崎委員 ありがとうございます。
またちょっと別の観点での質問に移らせていただきます。
介護休業制度の推進に関しまして、私自身、女性医師として働きながら、両親の介護を行った経験があります。その際、介護休暇制度を利用して何とか仕事と介護の両立をやり切った、そういう経緯がございました。制度が利用できなければ両立は不可能で、介護と仕事の両立は非常に大きな課題だというふうに認識しています。
特に介護休業制度や介護休暇制度というのは、まだまだ利用率が進まない中で、理解を深め、取りやすい環境を整えていくということが重要だと考えています。
そこでお伺いしますが、現在、介護休業制度や介護休暇制度の取得状況に関してはどのようになっていますか。また、特に、介護の主体が女性であるという現状の中で、働く女性の利用状況に関してお伺いしたいと思います。
○田中政府参考人 令和四年の就業構造基本調査によりますと、介護をしている雇用者のうち、介護両立支援制度の利用者は一一・六%となってございます。介護休業の利用者はそのうち一・六%、介護休暇の利用者は四・五%となってございます。女性について見ますと、介護をしている女性雇用者のうち、介護両立支援制度の利用者は一一・〇%となってございます。
○沼崎委員 まだまだ低い取得状況だと思いますので、しっかりここが、利用が進む、そういったことを期待したいと思いますけれども、介護休業制度や介護休暇制度をより取っていただく方が増えていくために、必要な方に制度が届くためにどのような取組をしているか、又は必要だと考えているかについてお聞かせください。
○田中政府参考人 御指摘のように、必要がある方に使っていただくということは非常に重要なことだと考えております。
昨年の育児・介護休業法の改正におきましては、労働者が家族の介護に直面した旨を申し出た場合に、企業の両立支援制度についての個別の周知と制度利用の意向確認を行うこと、家族介護に直面する前の早期に企業の両立支援制度の情報提供を行うこと、研修の実施や相談窓口の設置等の雇用環境の整備を行うこと、これを事業主に義務づけることといたしまして、本年四月から施行をしております。
個別の周知、情報提供を行うに当たりましては、介護休業は介護の体制を構築して働きながら対応できるようにするための休業であるとの両立支援制度の趣旨を踏まえることが望ましい旨を指針においてお示しをしておりまして、各企業において改正内容が適切に実施されるよう、引き続き周知に取り組んでまいります。
○沼崎委員 引き続き周知が進むことを期待します。
企業さんが様々介護と仕事の両立の支援を進めるに当たって、今、取組をお伺いしましたが、こういう取組をしている企業に対するインセンティブなどはございますでしょうか。
○田中政府参考人 こうした企業の取組を後押しする施策といたしまして、具体的には、中小企業に対する支援としまして、両立支援等助成金における業務代替支援を今年度から更に充実させるとともに、労務管理の専門家による、個々の企業や労働者の状況、課題に応じた伴走型の相談支援を実施をしております。
引き続き、企業における積極的な両立支援の取組を促進してまいります。
○沼崎委員 是非、インセンティブも含めて、具体的に前に取組を進めていただきたいと思います。
啓発活動、情報提供に関しては先ほど御説明ございましたので、少し、一問質問を省かせていただいて、今後、介護と仕事の両立をより効果的に支援するために、どのようにその効果を確認するか、施策状況の確認についてお聞かせください。
○田中政府参考人 事業主によります仕事と介護の両立支援の各取組、着実に実施されるようにしていく必要はございます。引き続き改正法の周知を行ってまいりますが、労働者に対するアンケート調査等の活用や、都道府県労働局において対応する企業や労働者からの相談等の状況把握などを通じまして、施行状況を適切に把握してまいりたいと考えております。
○沼崎委員 是非、実態も含めて調査していただいて、前に進んでいるか、効果の判定というのもお願いしたいと思います。
最後になりますけれども、がん治療と仕事の両立に関する支援について御質問させていただきます。
特に女性に関しては、女性特有がん、乳がんや子宮がんは比較的若い年齢の方がなるがんでして、働く世代に多く見られます。そういった中で、仕事と治療の両立というのも非常に、特に女性にとっては大きな課題となると認識しています。私の友人や同僚の女性医師も乳がんにかかる方が何人かおりまして、治療しながら働いているということ、そういう現状も見てまいりました。ですので、この問題に関しては本当に自分事というふうに感じております。
そこでお伺いしますけれども、女性特有のがんに罹患した場合、治療と仕事の両立に関してどのような現状があると認識されているか。特に、働く女性に対する影響についてお伺いしたいと思います。
○井内政府参考人 委員御指摘のとおり、令和四年国民生活基礎調査によりますと、仕事を持ちながらがんで通院している女性は三十万八千人いると承知しております。子宮がんや乳がんといった女性特有のがんの罹患率は二十代後半から上昇しており、働く女性にも多いという認識でございます。
一方で、がんに特化したデータではございませんが、労働政策研究・研修機構が二〇二四年に公表した調査によると、疾病を理由に退職した者の四人に一人は最初の治療が開始されるまでに退職しており、就業の継続に影響してしまうケースも多いということから、治療と仕事の両立支援の取組を強化することが必要と考えております。
○沼崎委員 そのような状況の中、今後、治療を受けながら働く女性に対する支援はどういったものを講じていく、今後の取組に関する御質問と、効果的に支援をするために新たな取組や政策を検討していることがございましたら、教えていただきたいと思います。
○井内政府参考人 治療と仕事の両立支援につきましては、厚生労働省としては、職場環境の整備、個別の労働者への支援の進め方など、事業場における取組をガイドラインとしてまとめ、周知を行ってまいりました。
具体的には、事業場の相談窓口の明確化や、病気休暇制度等の整備、避けるべき作業等の就業上の措置や、通院時間の確保等の治療への配慮といった支援内容をお示ししており、ガイドラインの周知について、ポータルサイトなどを利用し、情報発信に努めてきております。
今般、このガイドラインを示しているというところでございますが、法案におきましては、事業主に対して、治療と仕事の両立支援について必要な措置を講ずる努力義務を課すということで、現在法的根拠がないガイドラインを法律に基づく指針としたいと考えております。
法案が成立した場合には、都道府県労働局が事業主に対し、法律に基づく指導、援助等が可能になることから、そうした指導等の機会も通じて事業主へのガイドラインの周知をしながら、取組を支援してまいりたいと考えております。
○沼崎委員 ありがとうございます。
しっかりこの法案、成立して、更に仕事と治療の両立支援というのが前に進むことを期待して、質問を終わります。
どうもありがとうございました。
○藤丸委員長 午後零時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
午前十一時三十九分休憩
――――◇―――――
午後零時三十一分開議
○藤丸委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。堤かなめ君。
○堤委員 立憲民主党の堤かなめです。
二十五分間の質疑の機会をいただきましたこと、感謝申し上げます。誰もが安心、安全に働ける社会の実現に向け、ハラスメント対策について質問いたします。
今から三十六年前、一九八九年のことです。後に日本初のセクハラ裁判と呼ばれる闘いが福岡で始まりました。出版社で働く晴野まゆみさんが勇気を持って被害を訴え、福岡の多くの女性がこの裁判を手弁当で支援していました。
ちょうどその頃、私は、東京の民間企業に五年勤めた後、福岡に戻って、大学院で社会学の勉強をしておりました。友人に誘われ、このセクハラ裁判の第一回支援する会に参加いたしました。法学や社会学の研究者からこの裁判の意義を説明いただき、セクシュアルハラスメントという言葉、その定義を初めて知りました。
提訴されますと、全国的に大きく、センセーショナルに報道され、セクハラがこの年の流行語大賞を受賞し、セクハラという言葉が日本社会に定着いたしました。その三年後、一九九二年四月、原告の全面勝訴という歴史的な判決が下されました。
それからおよそ三十年余、果たしてハラスメント対策は進んだのでしょうか。
資料一を御覧ください。三年前の新聞記事です。全国の大学では相談窓口の設置は九九%と、いわゆる一般の企業ですとか職場よりもかなり進んでいると思います。でも、機能していないということです。
京都大学の矢野暢教授事件を契機に、大学では、教員を中心に一九九七年にキャンパス・セクシュアル・ハラスメント全国ネットワークが結成されました。パワハラ、アカハラ、アカデミックハラスメントですね、など、あらゆるハラスメントの根絶に向け、三十年近くの長きにわたって多くの教員が、こちらも手弁当で活動を続けています。
その初期には、私も一人の教員として参加していました。もし学生から教員によるハラスメントの被害の相談を受けたとしたら、どうすればよいのか。もし大学に相談から解決までのプロセスがなかったとしたら、公正公平に調査を行い事実認定し、ゼミを替えるなど被害者の救済措置や加害者への懲戒処分などを行う体制がなかったとしたら、自分自身が被害を受けた学生に対して二次加害をしてしまうことになるといった危機感もございました。
キャンパス・セクハラ全国ネットでは、米国、イギリスの規定などを参考に、例えば、防止や被害者救済のためにはどういう体制が必要か、相談と調査を分離することが必須であることなど、モデルとなる規定を作成し、多くの大学がこのモデル規定を参考に体制を整えてきました。
ですから、私はこの記事を見て愕然としました。いまだに大学ですら相談窓口が機能していない。学生がやっとの思いで大学に相談しても、問題解決につながるどころか、大学の対応に納得できない、大学に不信感を抱くことになってしまっている。そして、キャンパス・セクハラ全国ネットなどの関係者が三十年近く熱心に取り組んできた大学ですら、ハラスメントへの対応が適切にできていないとすれば、企業や公務職場は言わずもがなだと思いました。フジテレビ、兵庫県のハラスメント事案を見ても、そのことは明らかです。
資料二を御覧ください。これは十日前の新聞記事です。ハラスメントと言われるのが怖いなどの理由で、管理職には絶対になりたくないという若者が増えてきているという現状にあるとのことです。
すなわち、大学や企業など事業主に措置義務を課すなどの施策だけでは不十分であり、国としてハラスメントに適切に対応する体制を整えなければ、大学も企業も公務職場も疲弊してしまうのではないでしょうか。ひいては、企業や大学の競争力の低下、行政の信頼性の低下も懸念されます。
もちろん、今回の改正案にカスハラ対策、求職者等へのハラスメント対策が盛り込まれたことは評価しております。しかし、今回の改正では余りにも不十分だと言わざるを得ません。
資料三を御覧ください。六年前、二〇一九年六月に、女性活躍推進法改正案の附帯決議です。六番を御覧ください。こちらには、ハラスメント行為そのものを禁止する規定の法制化の必要性なども含めて検討することと記されています。我が国のハラスメント対策は、次の段階に進化する時期に来ているのではないかという思いを強くしています。
大臣にお聞きします。
管理職を含め、誰もが安心、安全に働ける社会を実現するため、ハラスメント禁止を法制化し、適正な事実認定を行い、被害者の救済が行われる体制を国として整備すべきと考えますが、いかがでしょうか。厚労大臣としての認識をお聞かせください。
○福岡国務大臣 我が国といたしましては、職場におけるハラスメントはその未然防止が重要でありますこと、また、ハラスメントの未然防止のためには、企業、今日お示しいただいた例でいうと大学に当たると思いますが、企業が主体的に予防から事後の対応までの一連の措置を講じることが重要でありますことから、男女雇用機会均等法において、相談体制の整備であったり、事後の適切な対応等のハラスメント防止のための雇用管理上の措置を講ずることを事業主に義務づけております。
その上で、事業主は、被害者に対する配慮のための措置であったり、行為者に対する措置を適正に行うことも求められておりまして、個別の事案が発生した場合には、被害者と行為者の間の関係改善に向けた援助であったり、行為者の謝罪、行為者に対する懲戒処分などの事案の解決に向けた取組を行うこととされております。
こうした義務の履行確保に関しましては、国が報告徴収や助言、指導又は勧告を行うことを通じて、法違反が認められる場合の速やかな是正を図っています。
今般の改正法案におきましては、こうした現行法制の体系を踏まえながら、新たに、何人も職場におけるハラスメントを行ってはならないということを法文上明確にした上で、規範意識の醸成に国が取り組む旨を定めることとしているところでございまして、全ての労働者が安心して働くことができるように、ハラスメントのない職場づくりに向けて一層取組を進めてまいりたいと思います。
○堤委員 いろいろ頑張っていらっしゃるのは大変ありがたいと思っております。ただ、まだまだ諸外国、先進諸国に比べると不十分ではないかと思っております。
資料の四を御覧ください。これは関西学院大学の野瀬正治氏の論文の中の一部でございます。イギリスの取組と日本の取組を比較したものです。イギリスではACASという政府機関が設置されています。助言、調停、仲裁など、労働者と雇用主の間で生じる問題を解決するために、無償で公平公正なサービスを提供しています。
二〇二二年の一年間でこのACASへの相談件数は六十五万件、赤丸で囲っているところです。そのうち、あっせんなどが十三万七千件ほどで二一・二%。一方、右側ですが、日本では都道府県の労働局への相談件数が百二十五万件、そのうち、あっせんなどは三千五百件ほどにとどまっています。つまり、相談を受けて何らかの対応を行ったという割合が、日本はイギリスの四十分の一にすぎないということになります。
また、波線の部分、あっせんでの未解決率、あっせんで解決できなかった比率です。イギリスでは二三・六%、日本では六四・〇%。日本では、残念ながら労働局によるあっせんがなかなか解決につながっていないのではないかということが懸念されます。
また、ある研究者の指摘ですけれども、現在の日本の労働局の紛争解決制度の特徴の一つは互譲性、互いに譲ることとなっているということです。均等法の通達には、調停とは、行為が法律に抵触するか否か等を判定するものではなく、むしろ、行為の結果生じた損害の回復等について現実的な解決策を提示して、当事者の歩み寄りにより当該紛争を解決しようとするものであることと書かれています。
ハラスメントはあってはならないもの、この社会からなくすべきものと今回の法制化でも盛り込んでいただいたと先ほど大臣からお答えいただきましたが、そういった状況の中、行政の紛争解決制度が譲り合い、歩み寄りの制度でよいのかということでございます。諸外国のように、ハラスメントと認定して救済すべきではないでしょうか。いずれにせよ、イギリスなど諸外国の先進事例を研究し、実効性のある対策に整備していただきたい、解決率をもっと上げていただきたいと思っております。
通告しておりませんが、福岡大臣にだけお聞きします。
ハラスメント事案を内密性、公平性、中立性を担保しつつ、実際に解決するための施策について検討いただけませんでしょうか。
○福岡国務大臣 ハラスメントを防止するためには、事業主の相談体制の整備などの具体的な取組を進めるとともに、ハラスメントを行ってはならないという国民の規範意識を醸成することが大変重要だというふうに考えております。
この法案におきましても、カスタマーハラスメント対策の強化のほか、職場におけるハラスメントを行ってはならないという規範意識の醸成に国が取り組むことを盛り込んでおりまして、そういったことを通じて、引き続きハラスメント対策の強化に取り組んでまいりたいと思います。
○堤委員 では、附帯決議の十二を御覧いただきたいと思います。セクシュアルハラスメント等の防止措置の実施状況、被害者の救済状況などについて実態調査を行い、効果的な防止対策を速やかに検討することなどが求められていますけれども、この調査結果や検討結果についてお聞かせください。
○田中政府参考人 ハラスメントに関します実態調査といたしましては、令和二年度と五年度に職場のハラスメントに関する実態調査を実施をいたしましてハラスメントの実態把握を行ったほか、令和六年から開催をしました雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会におきまして、複数の労使団体にヒアリングを実施するなどしたところでございまして、これらの調査により把握した実態を踏まえながら、今般の法案についても検討をしてまいりました。
○堤委員 調査によりますと、二〇〇七年に均等法のセクハラ措置義務が施行されて十八年もたっているんですけれども、三十人以上の企業でも、全て取り組んでいる企業は約半数にとどまっているという状態です。つまり、半数は措置義務違反となっています。
まずは措置義務を一〇〇%守らせるべきではないでしょうか。通告しておりませんが、田中局長、お答えください。
○田中政府参考人 措置義務として、セクシュアルハラスメントの防止措置、防止のための雇用管理上の義務を事業主に課しておりますので、当然のことながら、事業主にはその措置義務を遵守をしていただく必要があるというふうに思ってございます。
指導の行き届いていない点もあるとは存じますけれども、私どもとしても、都道府県の労働局、限られた体制の中ではございますが、指導監督、それから相談対応に努めてまいりたいと考えております。
○堤委員 行政は、今お答えいただきましたように、指導、勧告することができて、そして従わない場合には企業名を公表することができるんですけれども、公表した企業はございますでしょうか。
○田中政府参考人 御指摘のように、助言、指導、勧告、それから、勧告に従わない場合の企業名公表ということになってございますけれども、企業名の公表をした例はございません。企業名の公表に至るまでに、都道府県労働局から懇切丁寧に繰り返し繰り返し指導して、改善をしてもらうというようなことに努めております。
○堤委員 つまり、企業名を公表せずとも、ちゃんと指導、勧告したらやってくれている状態だということで安心しました。つまり、措置義務を守らせようとすればできるということです。ですから、早期に措置義務一〇〇%の実現ができるということではないでしょうか。それをお願いしたいと思います。
先ほど福岡大臣からも、防止が大事だというお話がありました。私も全くそのとおりと思っております。そのためには、やはり措置義務を一〇〇%守らせる。一旦ハラスメントが起きると本当に大変です。周りの人々も分断され、疲弊してしまいます。申し立てた人の言い分を信じる人と、申し立てられた人を守ろうとする人に職場が二分されてしまいます。そして、どう対応してよいか、ノウハウのない管理職も悩み、苦しむことになります。
措置義務を果たすことは、職場の全員を守ることにつながります。措置義務一〇〇%、まず、相談窓口をつくるですとか研修をするとか実態調査をするとか、そういった今ある、やっと皆さんの御努力で整備していただいた措置義務、これを一〇〇%に向けて、支援策も含めてお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか、田中局長。
○田中政府参考人 措置義務をしっかり全ての事業主に守っていただけますように、都道府県労働局におけます指導等々につきましては徹底をしてまいりたいと思いますし、企業のお取組もそうですけれども、やはり社会全体が、ハラスメントが許されないんだというような共通認識の下に一人一人が行動できるようにすることが非常に重要だと思っております。
ホームページ等々における情報提供でございますとか、実例を踏まえたようなウェブサイトなども設けることもしてございますし、また、都道府県労働局とは別に、助言をするようなハラスメント対策の事業も実施をしておりますので、必要に応じていろいろなものを選んでいただけるように、しっかり取り組んでまいりたいと考えております。
○堤委員 例えばアメリカとかでは、社員が全てが、Eラーニングでかなりいろいろな項目にわたってハラスメントとは何かといったものについて全員が学ぶとか、Eラーニング、ネット上でですね、そういったことを全員の義務としているとか、研修の方法もいろいろ工夫することができるのではないかと思っております。是非、防止措置に向けて、先ほども言いましたが、支援策も含めて職場を守っていただきたいというふうに思っております。
最後に、今回の改正法に即した質問をさせていただきます。三点ですね。
一点目に、求職者等に対しては、セクハラに限らずあらゆるハラスメントが起こり得ると思いますけれども、どのように対策を考えているのか、お聞かせください。
○田中政府参考人 本法案の中身といたしましては、近年、社会的に問題となっております求職者等に対するセクシュアルハラスメントを防止をするためということで、事業主に雇用管理上の必要な措置を義務づける内容でございます。
その上で、労働政策審議会においての議論を少し御紹介をさせていただきますと、求職者等に対するセクシュアルハラスメントだけではなくて、例えば求職者等に対するパワーハラスメントに類する行為など、これらについても議論を行ったところでございます。様々な意見がございました。
どこまでが相当な行為に当たるのかという点についての社会的な共通認識が必ずしもできているとは限らないのではないかということでございますとか、セクシュアルハラスメントについては、その被害の性質等々に鑑みて非常に重要なんじゃないかというような御意見、様々ございました。そういう中で、今般の改正法案の中では、セクシュアルハラスメントということで措置を行うということにしたものでございます。
そのほかのパワーハラスメント等々につきましては、パワーハラスメント防止指針などにおいて記載の明確化などを図りながら、周知を強化していくということを通じて、その防止に向けた取組を推進するとともに、社会的認識の深化を促していくことが適当というふうにされております。こういうような、指針の内容での明確化ですとか、その認識の周知徹底をまずは図らせていただきたいと思っております。
○堤委員 求職者に対するパワーハラスメントなどのあらゆるハラスメントに対しても取り組んでいくということだったかと思います。よろしくお願いします。
二点目に、OB、OG訪問やインターンシップなど、採用希望先で既に働いている労働者と求職者とが接するあらゆる機会を含め、厚労省としてガイドラインを作成すべきと考えますが、いかがでしょうか。
○田中政府参考人 求職者等に対してのセクシュアルハラスメントですけれども、面接等の場面だけではなくて、一般的に取り組む採用に至るまでの一連のプロセス、OB訪問ですとかOG訪問ですとかインターンシップ、これなどについても含まれるものというふうに考えております。
それで、法案が成立いたしますれば、雇用管理上の措置の具体的な中身として指針を定めていくことになります。その中でも、いわゆるOB、OG訪問等の機会を含めて、接触するあらゆる機会について、実情に応じて、面談を行う際のルールをあらかじめ定めておくことなど、お示しをしたいというふうに考えております。
○堤委員 今、ちょっとかぶりますけれども、三点目に、求職者などへの面接において人格を否定する発言をしてはならないなど、ガイドラインを策定する必要があると考えますが、いかがでしょうか。
○田中政府参考人 御指摘の点につきましては、むしろ、パワーハラスメント防止指針等における記載の明確化などを検討する予定でございますので、そうした中で検討してまいりたいというふうに考えております。
○堤委員 是非、ガイドラインの策定をお願いしておきます。
この三十年間、セクハラ、パワハラ、マタハラ、SOGIハラ、アルハラ、ハラハラ、ハラスメントをされたというハラスメントですとか、フキハラ、不機嫌ハラスメントなど、これまで見過ごされてきたハラスメントについて名前がつけられることによって、ハラスメントに対する人々の感度、規範意識が高くなってきたということは確かだと思います。これは、ハラスメント被害を受けていても、それがハラスメントだと認識できずに一人で苦しんできた人がそれを認識できるようになってきたという点からは、非常に大切なことであると思っています。
しかし一方で、ハラスメントへの感度が高まったゆえに、ハラスメント対策に不満を抱く人も増えているのではないかと思います。ハラスメントによる精神疾患の労災認定が、認定件数が五年連続で過去最多を更新していることに明らかなように、ハラスメントはますます深刻な労働現場での問題となっています。さらには、学校でも塾でも公務職場でも、首長のハラスメントを始め、議会や町内会など、地域でもハラスメントは起こる可能性があります。実際に起こっています。
包括的なハラスメント禁止法。今、パッチワークのような状態になっています。私は、包括的な、全体を網羅できるようなハラスメント禁止法、そして、法的な拘束力を持つ問題解決のための体制が必要だと思っています。諸外国の先進事例などを研究調査いただきまして、是非そういった体制を日本でもつくっていただきたいと思っております。
ハラスメントの根絶に向け、よりよい有効な施策を要望いたしまして、質問を終わります。ありがとうございました。
○藤丸委員長 次に、酒井なつみ君。
○酒井委員 立憲民主党の酒井なつみでございます。
労働施策推進法、法改正に当たりまして、関連事項も含め、質問をさせていただきます。
まず初めに、女性の活躍と健康について取り上げます。
十年間の時限立法として制定をした女性活躍推進法は、政府の改正案で、有効期限を二〇三六年三月三十一日まで十年間延長することといたしました。役割を終えたと言える状況になく、多くの課題が残されていることは大変無念であり、実効性ある取組を強力に進めていくことを政府に求め、三点、まず質問します。
男女間賃金格差は、資料一でお示しをしたとおり、縮小傾向にはあるものの、二〇二三年時点で女性は男性の約七五%にとどまり、国際的にも見劣りする現状があります。
女性の管理職比率の向上についても取り上げますが、私が強力に推進するべきと考えているものが女性の管理職比率の向上です。政府が女性の管理職比率に関する数値目標を三〇%と初めて掲げたのが、二〇〇五年の第二次男女共同参画推進計画でした。あれから二十年もの歳月を経ました。過去二十年で、民間企業の課長相当職は三%だったものが一二・七%と約九・七ポイント上昇したものの、目標三〇%の達成には更に三十五年かかる計算です。遅過ぎると指摘せざるを得ません。もっと早く結果を出すべきではないでしょうか。
三〇%という目標の水準は国際的に見ても見劣りするだけでなく、資料二でお示しをしているとおり、女性国家公務員の登用も未達が多く、例えば、厚労省の本省課室長相当の職員の割合は八・三%にとどまっています。政府自身が率先して改革をすべきです。
政府は、この度の法改正によって、従業員百一人以上の企業に男女間の賃金格差及び女性管理職比率の情報公表を義務化しますが、なぜ百一人以上なんでしょうか。更に範囲を拡大するべきではありませんか。この情報公表の強化によってどの程度の具体的な効果を考えているのか、伺います。また、男女間賃金格差の解消や男女共同参画基本計画の女性管理職比率に関する目標達成の見込みはいつなのか、政府参考人に伺います。
○田中政府参考人 お答え申し上げます。
まず、常時雇用する労働者の数が百一人以上の事業主に情報公表を義務づけている点についてでございます。
本法案では、今申し上げましたように、常時雇用する労働者百一人以上の企業に義務づけをしておりますが、これにつきましては、そもそも女性活躍推進法に基づきます一般事業主行動計画の策定がこの範囲であるということでございますとか、労働政策審議会におきまして議論をする中で、やはり、中小企業の取組は重要であるけれども、大企業と比較して人員や組織体制に差があるという意見があったことなどを踏まえまして、当該規模百一人以上の企業に義務づけるというようなことにしたものでございます。
もちろん、中小企業における取組も重要でございますので、常時雇用する労働者数が百人以下の事業主につきましても、情報公表等の取組を努力義務という形で課してございます。
引き続き、中小企業に対するコンサルティング事業の実施等の支援を通じまして、取組を促してまいりたいと思います。
また、今般の見直しにより、情報公表の義務の対象を拡大をいたします。これの効果といたしまして、約四万四千の企業が新たに情報公表義務の対象となることになります。
情報公表につきましては、この情報公表を契機として企業の自主的な取組を進めていただくことや求職者の企業選択に資すること、こういったようなことを目的とするものでありまして、この義務づけ自体、これだけによる社会全体で見た指標の改善効果を数値として挙げることはなかなか難しゅうございますが、結果として社会全体の指標の改善に資するものであると考えてございます。
また、各種指標の目標の達成の見込みでございますが、御指摘にありましたように、男女間の賃金差異ですとか管理職に占める女性の割合につきましては全体的に上向いております。賃金差異も縮小しておりますが、一定の効果はこういう意味で上がっているとは考えられますけれども、男女間賃金差異についても、女性の管理職の比率についても、国際的に見ると依然として差が大きくございますし、男女共同参画基本計画における女性管理職に関する成果目標につきましても、このままでは達成が難しい状況にございます。
こういうために、更なる取組の推進が求められていると認識しておりまして、こうしたことから、本法案において法律の有効期限を十年間延長するとともに、情報公表の義務化などに取り組んでいるところでございます。
○酒井委員 厚生労働省の雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会の座長も務められた東京大学の佐藤博樹名誉教授は、女性管理職比率の公表が目的ではなく、比率が高い、低いといった要因を企業に考えてもらうことが重要だとおっしゃっています。比率が低い場合には、どこに原因があって、これから何を改善するのかということを併せて公表してもらうことも大事だという指摘をされています。
大臣、目標達成に向けてスピードアップするべきではありませんか。民間企業を見ても、今のままのペースだと、三〇%達成には更に三十五年かかる計算です。例えばフランスやノルウェーなどでは、クオータ制を導入したり、目標に達しない場合に説明責任やペナルティーを科すことで四〇%を達成しています。
数値だけではなく要因分析や改善策の公表も求めるなど、取組のスピードを加速していくことを求めます。大臣に見解を伺います。
○福岡国務大臣 先ほども局長から申し上げましたように、この法案におきまして女性活躍推進法を延長するとともに、法に基づく情報公表の強化を図ることとしてございます。
引き続きながら、各種施策に総合的に取り組むことで、女性活躍の推進、しっかり図ってまいりたいと思います。
○酒井委員 同じ答弁を期待したわけではなくて、今の質疑にどう考えられたかを聞きたいんですね。
今のペースのままでは三十五年かかります。拡大したところで、スピードが格段にアップするとは思えないんですね。やはり、みんなで考えて、要因分析をして、その公表を事業者に求めていくことが必要ではないでしょうか。もう一度お願いします。
○福岡国務大臣 今おっしゃいましたように、要因等についてもしっかり精査した上で、全体として取組が進むように努めてまいりたいと思います。
○酒井委員 お願いいたします。
女性の健康についてお尋ねします。
女性活躍推進法の基本原則に女性の健康への配慮が明記されたことは、前進したと評価できます。一方で、数値目標を定めないと聞いていまして、理念だけで現場の運用が行われるのか、疑問です。
支援体制の整備、休暇制度や勤務体制等の整備状況などを数値目標として設定し、推進するべきではないでしょうか。大臣に伺います。
○福岡国務大臣 この法案におきましては、女性の職業生活における活躍の推進に当たっては、女性の健康上の特性に留意して行われるべきであることを基本原則に明示することとしております。
その上で、事業主の具体的な取組を促進するために、仮に法案が成立した際には、この改正の趣旨を踏まえ、事業主が作成する行動計画に関し基本的な事項等を示す事業主行動計画策定指針を改正し、女性の健康課題を相談しやすい体制づくりや休暇制度の充実などの女性の健康課題に係る取組の具体例を示すことを想定しています。
また、職場における女性の健康支援に積極的に取り組む企業のインセンティブとなるように、えるぼし認定制度におきまして、女性の健康支援に関する上乗せの認定の仕組みを設けることも想定しているところでございます。
まずは、今申し上げたような施策を通じて事業主の自主的な取組を促進していくことを考えてございまして、目標の設定については現時点では想定しておりませんが、女性の健康課題に係る取組を推進し、働きやすい就業環境の整備に努めてまいりたいと思います。
○酒井委員 理念だけでは現場の運用が行われるのか疑問という視点で是非とも進めていただきたいと、今後の発展を期待をしております。
次に、家族のケアによる離職について伺います。
我が国では、女性は、不妊治療や出産、育児等により、仕事を辞めたりパート勤務に替わるなど、雇用の不安定化や低賃金、キャリアが積めないことが度々あります。
資料三にお示しをしたとおり、女性の出産前後の就業継続率は近年上昇しており、約七割となっています。正規職員の就業継続は八割以上ですが、パート、派遣の場合はその約半分の四割にとどまり、キャリアが途切れている状況です。
私は、これまでの政治活動で、子育て世代の方々から、保活と再就職活動の同時進行が大変過ぎる、これは無理ゲーだ、そして、医療的ケアや障害児の子育て負担が大きく自分の時間が持てないなど、働きたいのに働けない、預けたくても預け先がないという悲痛な声を多く聞いてまいりました。就業を希望する女性の数は二〇二三年で百五十六万人とも言われており、私もそのように認識しています。
家族のケアなどによる離職後の再就職率や、不本意な非正規労働、子供の多様な預かりに関する状況は改善しているのか、お示しください。また、当事者の声を聞き、施策の反映と課題解決を推進するべきと考えますが、大臣はどのように考えておられますか。
○福岡国務大臣 第一子出産後の女性の継続就業率につきましては近年一貫して上昇してございまして、また、不本意非正規雇用労働者割合につきましても一貫して減少しております。さらに、子供の多様な預かりの拡充につきましても、保育の必要量の見込み等を踏まえて受皿整備が進められてきたと承知しています。
政府においては、育児・介護休業法等に基づきまして、男女共に希望に応じて仕事と育児を両立できる職場環境の整備であったり、また、希望する方々の正社員への転換支援、同一労働同一賃金の遵守徹底、また、求職活動中におけます子供の保育所等での受入れであったり一時預かり事業の推進などの取組を進めてきたところでございます。
関係省庁とも連携し、各種審議会等における様々な有識者の御意見も踏まえながら、希望する女性が出産後においてもその個性であったり能力を生かし活躍できる社会の実現に努めたいと思います。
○酒井委員 取組は様々していただいていることは承知をしておりますけれども、実際、現場ではまだまだ、希望しても働けない、預ける場所がないという声は受け止めていただきたいと思います。
次に、治療と仕事の両立支援について伺います。
私は、二十八歳でがんと診断され、手術と抗がん剤治療を受けました。社会のサポート不足や仕事との両立支援不足を身をもって味わいました。当時の調査では、がんと診断された人の三割から四割の方が退職しているということが分かり、そこから、がん患者支援と両立支援は私のライフワークとなりました。
資料四を御覧ください。疾病を抱え、通院しながら働く人は、十年ほど前と比較して三百万人以上増えており、就業者の四〇・六%、五人に二人となっています。
この度の法改正により、職場における治療と仕事の両立支援が企業の努力義務となります。しかし、資料五と六を御覧いただきたいのですが、治療と仕事の両立支援のためのガイドラインの認知度は、二〇二四年、千人以上の企業で五八・九%、五十人未満の企業では五%台と、特に中小企業は深刻でした。
周知啓発の強化が必要だと考えますが、どのように取組を進めていくのか、また、指針に基づいて事業者の取組をどのように支援していくのか、大臣に伺います。
○福岡国務大臣 委員におかれては、治療と仕事の両立支援に一貫して取り組んでいただいておりますこと、心から敬意を表したいと思います。
ガイドラインの周知につきましては、ポータルサイト、治療と仕事の両立支援ナビによります事業場における取組事例等の情報発信であったり、また、各都道府県の産業保健総合支援センターに両立支援の専門スタッフを配置し、研修、相談対応、事業場への訪問による導入支援等の実施などに取り組んできたところです。
御指摘がありましたように、中小企業におきましては依然として認知が低いということから、現在は法的根拠がないガイドラインを、今般、法律に基づく指針として示すことといたしました。これによりまして、法律が成立した場合には、都道府県労働局が事業主に対して法律に基づく指導、援助等が可能となることから、そうした指導等の機会も通じて事業主への周知を強化していきたいというふうに考えております。
産業保健であったり人事労務管理の体制が必ずしも十分ではない中小企業に対し、特に支援が必要でございまして、産保センターに治療と仕事の両立支援の専門スタッフであります両立支援促進員を配置し、専門研修そして相談対応、事業場への訪問による制度導入等の支援を行っております。
さらに、今後、都道府県労働局において、事業場のニーズに応じて産保センターの支援の利用勧奨を行うなど、企業が具体的な取組に着手できるように一層後押しを進めていきたいと思います。
○酒井委員 私が十一年前に闘病したときには、このガイドラインはまだ作られておりませんでした。まだまだ、今と比べても支援が少なかったように感じています。
二〇一六年にこのガイドラインは初版、公表されていますけれども、間もなく十年となります。これまでの見直しの経緯も見させていただきましたけれども、随時見直しを行ってきたと承知をしており、より多くの事業所で活用していただきたいというふうに思います。中小企業、五十人未満の企業ではこの認知度は五%台ですから、しっかりと今後上がっていくように、私も今後も注視していきたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。
資料七を御覧ください。そもそも、治療と仕事を両立できるような取組があるとする事業所の割合は、二〇二二年、全体で五八・八%、従業員十人から二十九人の規模に限れば五五・四%となっており、更なる支援と制度的後押しが求められます。
もっとこの割合を増やしていくために、前回の質疑で、産保センターや地産保での支援の強化、メンタルヘルス対策でも求めたんですけれども、それと同様に強化が欠かせないと考えます。
また、治療と仕事の両立への取組の進み具合によって、努力義務ではなく、実務的な支援体制の整備として、労働安全衛生法上の義務規定とする検討も必要ではないかと思いますけれども、併せて大臣に見解を伺います。
○福岡国務大臣 御指摘の支援の強化は大変大事なことだというふうに思います。
各都道府県の産業保健総合支援センターにおきましては、治療と仕事の両立支援の専門スタッフである両立支援促進員を配置し、専門的研修、相談対応、事業場への訪問による制度導入等の支援を無料で提供してございます。
この産保センターの両立支援促進員は、両立支援に知見のある社労士、産業カウンセラー、保健師、看護師といった方々でありまして、令和五年度時点では約四百人が配置されております。事業主のニーズに応じて対応していただいております。具体的には、令和五年度の実績で、専門的な相談への対応には約八千件、事業場への訪問による制度導入等の支援に約二千件対応をしていただいているところでございます。
今般の改正法案が成立した場合には、両立支援の取組への支援ニーズが高まることを踏まえまして、産保センターによる企業支援体制の拡充に取り組んでいきたいと考えております。
そして、治療と仕事の両立支援は、離職防止であったり就業継続のために相談体制、勤務制度の整備などの多様な措置を求めるものであることを踏まえますと、安全であったり衛生の最低基準を定めて災害防止措置を講じさせる労働安全衛生法に位置づけることはなじまないというふうに考えております。
義務化につきましては、現在の両立支援に関する認知度であったり取組状況を踏まえれば、現時点では難しいと考えておりますが、まずは改正法案により努力義務とすることで、より一層の取組の促進につなげてまいりたいと考えております。
○酒井委員 法律が整備されていても、現場では運用がなかなかされていないというところが実際の課題だと思います。課題の本質を捉えた上で、今私が提案したような、安衛法での義務規定とするような検討も必要かもしれないというふうに私は考えておりまして、今後も注視をしていきたいというふうに思います。
最後に、ハラスメント対策の強化について伺います。
今回の法改正の趣旨にハラスメント対策の強化が入ったことは評価をしています。二〇二一年六月、国際労働機関、ILOは、第百九十号条約、暴力とハラスメントの撤廃に関する条約を発効しましたが、日本政府は条約審議の中で賛成したものの、これを批准しておらず、批准するべきだと考えています。今回の改正によって批准することになりますか。見解と併せて、今後の批准に向けた取組を最後に大臣に伺います。
○福岡国務大臣 御指摘のILO第百十号条約の締結につきましては、我が国において、国内法制との整合性を確保する観点から、条約において仕事の世界におけるハラスメントを禁止するための法令の制定が求められていること、また、条約の保護の対象に求職者など雇用の関係のない者が含まれていることなどについて検討を進めてきたところでございます。
これらの点につきまして、本法案では、職場におけるハラスメント対策の強化とし、職場におけるハラスメントを行ってはならないことを法文上明確化し、国が規範意識の醸成に取り組むほか、カスタマーハラスメント対策の強化、就活等セクシュアルハラスメント対策の強化などの内容を盛り込んでおりまして、同条約の締結に向けた環境整備に資するものだというふうに考えております。
その上で、本条約締結に当たりましては、条約で求められている内容と今回の改正法案を含めた国内法制全般との整合性について、更に詳細に検討していく必要があると考えています。引き続き、関係省庁とも連携しながら、締結に向けた検討を進めていきたいと思います。
○酒井委員 前向きな答弁で安心しました。批准に向けて、是非取組をよろしくお願いします。
ありがとうございました。終わります。
○藤丸委員長 次に、池下卓君。
○池下委員 日本維新の会の池下でございます。
本日もよろしくお願いいたします。
まず冒頭、法案の質疑に入る前に、B型肝炎の除斥の問題につきまして、一つお話をお伺いさせていただきたいなという具合に思います。
先日も、当委員会におきまして質問させていただいたんですが、ちょっと復習なんですが、福岡高裁におきまして、三月の救済案では、賠償請求権が消滅する除斥期間、二十年でありますけれども、これの起算点について、治療の中断が認められる場合には、再々発型ということもありまして、幅広に救済をしていくという基準を認められたというのが裁判所の判断でございました。
私の先日の質問の方でも、この除斥の問題に対する、判断基準となる資料、これはどうなっていくのかということでお伺いをしたところ、大臣の方から、覚えていらっしゃるかと思うんですけれども、まだ係争中なのでお答えはできないんですよというお答えがあったかという具合に思います。
ただ、このゴールデンウィーク中に患者団体さんの方からメールをいただきまして、三日ほど前も直接お会いをさせていただきました。そこで、ちょっと資料の方を御覧いただきたいと思うんですが、これは、ちょっといろいろありまして報道の新聞しか御用意できていないということなんですけれども、タイトルの方、西日本新聞の方には、「B型肝炎救済案 国拒否」というタイトルで記載がされております。
これは、四月三十日に厚労省が原告側に伝えた内容を基に記事にされているということでありますけれども、弁護団によりますと、厚労省は、除斥期間の起算点を再々発時に遅らせることは認める一方で、治療中断時については医師が経過観察を含めて通院不要を指示した診療記録を求める、こういう判断基準を出されているという具合に聞いております。
ところが、弁護団であったりとか原告団の方のお話を聞きますと、除斥期間の対象となる二〇〇四年であったり二〇〇八年、これの治療のガイドラインによりますと、症状がない患者も定期的な通院が必要であると定めており、通院不要との診療記録があるはずがないということなんですね。自分が数値が落ちてキャリアになったとしても、やはり心配でありますので、定期的な検診なんかというのは行くのが当然であるという具合に思います。
この厚労省の判断というのが、報道が正しければということなんですけれども、厚労省の判断が医療やガイドラインで行われている実態と乖離しているのではないかなと非常に危惧をしております。
集団予防接種による注射の使い回しという国の施策においてこういう問題が発生しているわけですから、政府として、このような問題は非常に課題がある、患者に寄り添っていないという具合に思いますけれども、大臣の見解の方をお伺いしたいと思います。
○福岡国務大臣 前も申し上げましたように、B型肝炎特別措置法に基づく給付金の支給につきましては、慢性肝炎の発症後、民法上の除斥期間であります二十年が経過し、国の損害賠償責任が消滅した方でありましても、減額した給付金を支給するといった政策的な対応を行っております。
令和三年の最高裁判決では、慢性肝炎が再発した場合の考え方を示されたところで、議員が今いろいろ報道等もお示しをいただきましたけれども、再々発した場合の取扱いにつきましては、現在、福岡高裁の仲介の下、国と弁護団及び原告団との間でまさに今協議を行っているところでございますため、大変恐縮でございますが、その御指摘について裁判所外でコメントをすることは差し控えさせていただきたいと思います。
○池下委員 ありがとうございます。ありがとうございますじゃないですね、ごめんなさい。
今言われていることも非常に分かります。裁判外で、これはこれからも協議されるということで、五月も協議されるということで一方で聞いているものの、やはりこれは、大臣、財務省とか、いろいろそういう経過であったりとか、ほかのものもあったり、障害があったりするということも承知はしておるものの、やはりここは、厚生労働大臣としてリーダーシップを持って患者さんにしっかりと対応していただくことが必要であると思っております。
そして、加えて、これは患者さんからももう一つ伺っているわけなんですが、肝炎の判断基準となるALT値についてなんですけれども、裁判所の方は、ALT値が下がっている期間を国と患者団体の協議でやってくださいねということで言われているわけなんですが、患者団体は六か月、国の方は一年ということで言われていると聞きました。
ですので、ここについてもまだまとまっていないということで聞いておりますけれども、やはり、その点につきましても、しっかりと協議を前向きにしていただきますよう、注文ではないですけれども、お願いをしておきたい。これは答弁は求めません。
そして、そこからちょっと法案の方に入らせていただきたいという具合に思います。
次は、先ほどもちょっとありましたけれども、治療と仕事の両立支援という観点からお話を聞かせていただきたいと思います。
今回の改正で、やはり、病気を抱えながら、病気の治療をやりながらしっかりと働き続けられるような社会というものを目指していくというのが理念の根本としてあるかと思いますし、それに対して、企業側は努力義務ということも課せられるということで思っております。
ただ、しつこいようですけれども、私が気になりますのは、がんや難病の患者さん、高額医療のとこら辺が、私、非常に気になっているところであるわけなんです。
やはり現行制度では、働ければ働いて、所得が上がれば上がるほど、当然、治療費、医療費の自己負担というものが大きくなるという具合に思うんです。これは、医療の観点からやはり継続した仕組みは必要ですよねということで、大臣、言われていたかと思うんですが、一方、やはり労働施策の方から考えますと、これは逆行しているんじゃないかなと思うんですよね。
やはり患者の皆さんといいますのは、特に難病の方なんかも、がんの方もそうですけれども、病状が悪化しない限りには働いていける。ただ、病状が悪化すると、どうしても通院しなきゃいけないであったりとか休職しなきゃいけないとか、そういうとこら辺のことがありますので、非常に、QOLの中からも、やはり仕事はどんどんしていきたいよねという希望をされる方が多いかという具合に思います。こういう患者さんの気持ちもある中で、所得に応じた自己負担の引上げといいますのは、勤労意欲を逆に下げてしまうんじゃないかなという思いも持っております。
そうした中で、この両立の支援というものは、医療の部分と労働行政の中で相入れない部分はあるんじゃないかなという具合に思うわけなんですが、やはり私としては、患者の負担増ではなくて、現行制度の安定的な運用をどうしていくかというのが非常に大事だと思うんですけれども、本制度の在り方において、労働行政の在り方から見解の方をお伺いをしたいと思います。
○福岡国務大臣 まず、高額療養費制度については、御承知のとおり、国会での御議論も踏まえまして、また専門家による議論を経て、今年の秋までにその方向性を定めていくということにしているものでございます。
ただ、ずっと議論の中でありましたように、社会保険料を、将来にわたってその伸びを抑制するとともに、この制度の持続可能性をどうやって担保していくかということが極めて大きな論点だというふうに考えています。
今回の法案で推進します治療と仕事の両立支援につきましては、労働者の経済状況にかかわらず、職場における相談窓口であったり休暇制度の整備などの措置によりまして、治療を理由とする離職を防ぐための環境を整備するものでございます。
このように、労働行政の観点からは、治療と仕事の両立支援の推進の重要性は論をまたないところでございますが、他方で、高額療養費制度の持続可能性を高めることは、治療を継続しながら仕事をされている患者さんの皆様にとっても大変重要であるというふうに考えておりまして、今後、そういった患者団体さん始め、保険者等を始めとした関係者からの御意見を伺いながら、経済的な負担が過度にならないように配慮しながらも、増大する高額療養費制度を能力に応じてどのように分かち合うかという観点から検討を進めさせていただきたいと思います。
○池下委員 高額療養の件につきましては、超党派の議連ということもありますけれども、今、五月の中旬でございます。議連の方も、中島先生も、いらっしゃらないかな、いろいろさせていただいておるところなんですけれども、秋というのが九月なのか十月なのか分かりませんけれども、ちょっと時間が足りないんじゃないかなということで、しっかりと議論の方をできるような環境づくりも大臣の方にはしていただきたいと要望させていただきます。
そこで、次になんですけれども、また改めて、難病患者の雇用支援に関する制度整備についてお伺いをしたいと思います。
実は、私、三年前、この当委員会におきまして、高齢者、障害、求職者雇用支援機構、いわゆるJEEDによる難病患者の就労困難性に関する研究調査について取り上げまして、難病患者の方も障害者の方と同様に法定雇用率に入れるべきではないですかということの質疑をさせていただきました。
先ほども申し上げましたように、難病患者の方というのが、やはり、病状の具合によってはしっかり働けるけれども、ときによっては、病状の波によって働けないときには休職、それによって退職というところが実際に全国各地であるという具合に仄聞をしております。
その中で、やはり就労環境をしっかりと整備していくとともに、それを受け入れる企業側も、双方にとってプラスになる、損にならないような制度設計というのが私は必要であるのではないかなという具合に思っております。
こういった中で、ちょっと私が気になっているのが、障害者総合支援法では指定難病が明確に規定されています。ただ一方で、障害者雇用促進法では定義が曖昧なわけなんです。その結果、難病患者が雇用支援制度の対象とならないということから、除外されているという制度の不一致を心配しております。
具体的に言いますと、どういうことかというと、例えば、障害者総合支援法に基づく福祉サービス、就労移行支援事業所などは就労の入口でありますけれども、これは利用できます。けれども、一方で、出口の方、障害者雇用促進法における法定雇用率という方に逆につながっていない、こういう矛盾をはらんでいるわけなんですね。要するに、福祉と雇用、ここの部分でねじれが生じているということで私は感じております。
そこで、JEEDによるこれまでの研究成果、これをどのように政府として評価されているのか。また、難病患者に関する雇用支援制度の整備にどのように反映していくのか。指定難病を障害者雇用制度としてどう位置づけられるのか。法定雇用率に算入する議論が今別の会議で進んでいるということで聞いておりますけれども、今の雇用促進法で曖昧な扱いになっている、この点につきまして、見解の方をお伺いをしたいと思います。
○福岡国務大臣 障害者雇用促進法におきます障害者は、心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者とされておりまして、障害者総合支援法の指定難病患者も含み、また、難病患者のうち、これに該当する方は、現在も、事業主の合理的配慮の提供義務、ハローワークによる就労支援であったり特定求職者雇用開発助成金等の助成の対象となってございます。
一方で、御指摘ありましたように、障害者の雇用率の制度につきましては、事業主に一定の雇用義務を課すものでありますことから、公平かつ一律性を担保する必要があるため、その対象を障害者手帳を所持する方とさせていただいております。
その上で、手帳を所持されていない難病患者の方々の取扱いにつきましては、令和四年に労働政策審議会障害者雇用分科会において取りまとめられました意見書において、個人の状況を踏まえることなく一律に就労困難性があると認めることは難しく、また、調査研究等の結果等も参考に、その取扱いを検討することが適当とされたことを踏まえまして、昨年十二月より今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会を開催し、難病の当事者団体を含む関係団体からのヒアリングも行いながら、今検討を行わせていただいておりまして、本年中を目途に取りまとめることとしております。
御指摘がありましたJEEDの調査研究の内容を参考にしながら、同研究会等において、難病患者さんの就労支援の在り方について議論を進めていきたいと考えています。
○池下委員 御答弁いただきました。今、研究会のお話もいただきまして、私も承知をしているところなんですけれども、当然、難病の団体さん、やはり当事者の方の御意見を聞いていただけるということは非常にありがたいという具合に思っております。
一方で、今大臣が言われたような御意見もあるということで聞いておりますけれども、やはり障害者手帳を持っていないという難病患者さんというのは非常に多いんです。そういう方々の部分もしっかりと踏まえた上で、この法定雇用率の算入について御議論をいただければということで思います。
ちょっと時間がなくなってきましたので、順番を入れ替えさせていただきたいなという具合に思います。
次に、カスタマーハラスメントについてお伺いをいたします。
契約の有無についてということを中心にお伺いをしたいと思うんですが、昨日の参考人招致の中でも、公務員、大阪市の方が来られていたと思うんですが、公務員の方のカスハラの対策について御意見というものがありました。
今回の法案の改正におきまして、カスタマーハラスメントの定義、これは、顧客、取引先、施設利用者その他の利害関係者による社会通念上相当な範囲を超えた言動によって労働者の就業環境が害されることと定義をされております。さらに、労働政策審議会では、契約内容から相当性を欠く言動がある場合に該当すると、契約内容ということ、契約という言葉が出ております。
しかしながら、この考えを前提としますと、契約関係が存在していない場合には、カスタマーハラスメント、カスハラには該当しないのではないか、そういうちょっと曖昧なところになるのではないかと私は危惧をしているところでございます。
例えば、身近な例をちょっと取り上げさせていただきたいと思うんですが、ここの議員さん全て、ほぼ全員に関わることかと思うんですけれども、例えば議員事務所における秘書さんの例ですね。
政策秘書さんと公設秘書さんは衆議院と契約し、雇用されているということでありますけれども、私設秘書さんなんかといいますのは、当然、事務所と契約している。池下卓であれば、池下卓の事務所と私設秘書さんが契約をしているわけですから、当然、この法案の対象にもなってくるかと思うんですけれども。
ただ一方で、有権者の方々から、陳情であったり、いろいろお伺いをしたときに、やはり、無理、いろいろな御意見をいただいて、できなかったら相当厳しい言葉を浴びせられるということもあるかと、委員長もにこっとされておりますけれども、皆さん、多分、そういう御経験はあるんじゃないかなと思います。これは一例であります。あとは、報道関係も、いろいろなことを書いて、全然雇用関係のない方から相当なクレームということも当然考えられるわけであります。
このような、契約のない関係であったとしてもハラスメントが深刻な影響を及ぼし得る実態というのがあるかと思うんですが、政府として、こうした関係性をカスハラの定義や今後の対策の中でどのように位置づけて制度的な対応をされていこうとされているのか、見解の方をお伺いをしたいと思います。
○田中政府参考人 カスタマーハラスメントの定義でございますが、この法案において、職場の顧客、取引の相手方、施設の利用者を含め、労働者を雇用する事業主の行う事業に関係する者を広く顧客等と捉えた上で、その行う社会通念上許容される範囲を超えた言動によって労働者の就業環境が害される、こういったようなことをカスタマーハラスメントとして位置づけておりまして、その防止のために、労働者を雇用する事業主に雇用管理上必要な措置を義務づける、こういう体系を取ってございます。
ですので、カスタマーハラスメントは契約関係のある場合に限られるものではありませんので、御指摘いただいたような事案についても、本法案の対象から除外されるものではございません。こうした点については、指針等につきましても分かりやすくお示しをしていきたいと思っております。
○池下委員 ありがとうございます。
指針等でも分かりやすく説明していただくということで、ありがたい話だと思いますし、やはりこれは、事業者というとこら辺が努力義務ということでしっかりと労働環境をつくっていかなければならないというのは承知しているものの、やはり世間一般にも、こういう状況になっているんだということを周知していただく必要があるかと思いますので、その点も含めてお願いをしておきたいと思います。
以上で質問を終了させていただきます。
ありがとうございました。
○藤丸委員長 次に、猪口幸子君。
○猪口委員 日本維新の会の猪口幸子でございます。
本日は、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実に関する法律等の一部を改正する法律案について質問しますが、その前に、今朝、ニュースで、出産の無償化を二〇二六年から開始することを検討しているというのをお聞きしまして、是非進めていただきたいと思うんですけれども。
以前質問したときに、お財布の要らない出産ということで、地元が葛飾区なんですけれども、葛飾日赤では、出産育児一時金の制度がありますけれども、それは後払いなんですよね、実際に分娩予約金というのを行っていまして、出産育児一時金を医療機関に直接支払いということをする場合はこの分娩予約金は十五万円、そして、直接支払いしないということだと三十万円の予約金が必要なんですよ。だから、若い世代の方が出産に関して十五万円あるいは三十万円と用意するというのは非常に困難で、後から来るといっても、まさにお財布の要らない出産ということを検討していただく。
それから、できれば、母子手帳ですね。全国レベルで今、地方自治体が個別に作っているんですけれども、全国一律の母子手帳を作っていただいた方が、いろいろな記載の間違いとか抜けがないということで、是非それもお願いしたい。
さらには、妊婦健診ですけれども、基本的に妊婦健診は自費です。ただ、地方自治体によっては、健診を無料で受けられるよう、健診のクーポン券が何枚か出ます。それに外れて、ちょっと余分に健診を受けなければいけないというときは自費になってしまうんですよ。
だから、こういうことも含めて、妊娠が分かった段階で社会全体がおめでとうございますなんですよ。事情はどうあれ、望まないとか迷っているというときでも、それはおめでたいことで、おめでとうございます、社会全体が、そこから産むまでお金は要りません、そういうことをしていかないと、基本的には少子化対策にはならない。これが基本だと思っております。ですから、是非進めていただけたらと思います。よろしくお願いします。
そして、本題に入ります。
まず、女性活躍推進法に関してですが、パーソル総合研究所のデータでは、管理職になりたくない割合は男女合わせて七七%。女性では、管理職になりたいと答えた割合は一二・三%と少ない状態です。管理職になりたくない理由としては、管理職の業務が多いということと、あと責任が重い、それに加えて、育児、介護のバランスが取れないことが大きな要因という結果になっています。
このことを踏まえて、職業生活における活躍に関する情報公開の強化として、男女間の賃金差異とともに、男女別の育児休業取得率を公表の必須とすべきではないでしょうか。厚生労働大臣に質問いたします。
○福岡国務大臣 済みません、まず冒頭、お時間をいただきまして、先ほどの酒井なつみ先生への答弁に当たりまして、ILO百九十号条約と呼ぶべきところを、間違ってILO百十号条約と答弁をしてしまっております。正しくはILO百九十号条約です。おわびの上、訂正をさせていただきます。申し訳ございません。
今の質問に関しまして申し上げますと、女性の管理職比率は、男女間賃金差異の大きな要因の一つであると考えられるものでございまして、性別に関わりない、公正な登用による組織内の多様性が確保されているのかどうか、また、後進の女性のロールモデルの有無であったりキャリアパスの整備など、各企業の女性登用やキャリア形成の実態を表すものでございます。
このため、この法案におきましては、常用労働者数百一人以上の企業に対し、女性管理職比率の公表を義務づけることとしております。
指標の公表を契機といたしまして、企業がその実情を踏まえ、課題解決に取り組むことが重要でございますが、各企業における女性の活躍に係る現状や課題、取組状況は各社各様でございまして、求職者の企業選択に資する情報も企業の実情により異なるものと考えられ、公表が適当な数値は各社異なり得ること、また、中小企業等の負担も考慮する必要があることなどを踏まえ、一定の取組の結果を表す項目を義務項目とするほか、企業の実情に応じて選択して公表しなければならない選択項目を設けております。
御指摘がございました男女別の育児休業取得率は、この選択項目の一つとなっておりますが、情報公表項目の設定の趣旨に鑑みれば、その他の選択項目の公表義務化については、今般の改正法案の履行状況等も踏まえながら、中長期的な検討を要する課題であると考えています。
なお、男性の育児休業取得率につきましては、育児・介護休業法において、公表義務の対象を本年四月より常時雇用労働者一千人超から三百人超の事業主に見直したところでございまして、その着実な履行確保を図ってまいりたいと思います。
○猪口委員 三百人以上の事業所で、男女の育児休業、休暇率等を公表ということですけれども、百人以上でも、できればやっていただきたいと思います。
同一労働同一賃金は男女を問わず実行されるべきものですけれども、女性管理職比率というのは、情報公開を義務化することに意味があるのかというのはちょっと疑問なんですけれども。女性の管理職が多い産業としては、医療、福祉分野では五〇%、女性が管理職としています。看護、介護の分野に占める女性の就業割合が高いためではないかと思いますが。
その一方、男性の自殺率は女性の二倍という状況で、経済的な理由もありますけれども、勤務のストレス、管理職のストレス等も加わっておりますので、男女共に受ける管理職のストレスというのは、基本的には男女を問わず充実させていただきたいと思います。
続きまして、今回の法案では、主にカスタマーハラスメント被害者となる従業員の保護を中心としていますが、カスタマーハラスメント加害者が最も大きな問題であると認識しておりますが、カスタマーハラスメント加害者への対応はどのように考えていますか。
○田中政府参考人 本法案でのカスタマーハラスメント防止対策でございますけれども、カスタマーハラスメントは労働者の心身に深刻な影響を与えるということで、労働者保護の観点から、労働法制の中での対策の強化ということで、事業主に雇用管理上必要な措置を講ずることを義務づける、こういうような体系を取ってございます。事業主が講ずべき雇用管理上の措置につきましては、カスタマーハラスメントに関して事業主が方針等の明確化を行うことなどを盛り込んでございます。
当然のことながら、カスタマーハラスメントが起きないようにするということは、カスタマーハラスメントをする方にしっかり考えていただく必要がございます。
そういったようなことをするために、本法案においては、顧客等の責務というふうな形で、カスタマーハラスメントの問題に対する関心と理解を深めるとともに、労働者に対する言動が当該労働者の就業環境を害することのないよう、必要な注意を払うように努めなければならないということの規定、それから、ハラスメント一般について、何人も職場におけるハラスメントを行ってはならないということを法文上明確化した上で、国が周知啓発に取り組むということなどをしてございます。
社会全体で、やはりカスタマーハラスメントを行ってはならないというような社会になっていくということが重要だと思いますので、カスタマーハラスメントの行為者たり得るそれぞれの顧客等につきましても、しっかり認識を持っていただけますように周知等に取り組んでまいりたいと考えております。
○猪口委員 カスタマーハラスメント加害者への対応に関する法整備というのは、基本的には始まっていないという認識なんですけれども、カスタマーハラスメント規制法のような法整備というのは、厚生労働委員会で言うような話ではないのかもしれませんけれども、やはり非常にモンスター化している状況から考えれば必要なんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
○田中政府参考人 まず前提といたしまして、我が国の法制におきましては、一般にカスタマーハラスメントというように呼ばれることのある行為であっても、刑法等に規定する犯罪に該当する行為に当たる場合には刑事責任が課され得るというものでございます。また、民事上も、不法行為や債務不履行を根拠として損害賠償請求の対象にもなり得る、こういうようなものでございます。
その上で、規制法ですけれども、仮に刑事罰を伴うものを念頭に置いたとしますと、罪刑法定主義の下で、違法となる行為の要件を厳格に明確化する必要があります。
カスタマーハラスメントは、様々な言動、様々な状況で生じていますので、どういうように行為を特定するかといった点について難しい課題がありますし、また、特定できたとしても、対象となる行為が限られるということなどの課題があるというふうに考えております。
また、労働者に対するものでないものを含めて、広くハラスメントというようなことについてでございますが、そういうようなことも、当然のことながらあってはならないものだというふうには考えますけれども、ちょっと厚生労働省としてお答えをするということは難しゅうございます。
○猪口委員 今回の法律案とちょっとまたかけ離れてしまうんですけれども、今回、カスタマーハラスメントと求職者へのセクシュアルハラスメントを取り上げていますけれども、その他のハラスメントへの具体的な対応というのはいかがでしょうか、また同じような質問になってしまうんですけれども。
○田中政府参考人 今回の改正法案も含めまして、ハラスメントに対しまして、ハラスメントにより就業環境を悪化させないために、事業主に雇用管理上の措置義務を講じさせるというような枠組みを取ってございます。
ハラスメントの種類といたしましては、セクシュアルハラスメント、それから、妊娠、出産等に関するハラスメント、育児休業等の取得に関するハラスメント、パワーハラスメント、これが今まで現行法でもう既に措置をされておりますハラスメントでございまして、それに加えまして、今回の法案で、カスタマーハラスメント、それから求職者等に対するセクシュアルハラスメント、こういったようなハラスメントを規定をすること、措置義務化することによって対策を取っていこう、こういうようなものでございます。
加えまして、それ以外のハラスメントにつきましても、一般的に何人も職場におけるハラスメントを行ってはならないというようなことを条文上明確化し、国が規範意識の醸成に取り組むというようなことをしておりますので、全体としてハラスメントがない社会づくりに向けて取り組んでいく、こういうのが政府としての方針だというふうに考えております。
○猪口委員 ありがとうございます。
ハラスメント、非常に世の中で多くなっているという状況で、カスタマーハラスメントの一つだと思うんですけれども、モンスターペーシェント、あと、先日、立川市の小学校で起きている傷害事件などもモンスターペアレントということで、学校、医療機関でも非常に困る事例でございまして、また、SNSなんかによる個人攻撃や、店舗、そしてあと自治体職員へのハラスメント、こういうものが非常に増えていて、ストレスの原因となって、自殺に追い込まれる方もいらっしゃる。
あと、手術に関連して、外科医が手術の際に、手術後に患者さんに対してセクハラをしたということで、一時有罪、その後無罪となって、その過程の中で、その外科医の先生のお子さんが十二歳で自殺したという非常に不幸な出来事もありまして、そういったことでも、いろいろな場面で、介護の現場でも、できるだけ一人にならない、そういったことも非常に大事かなと思います。
ハラスメント全体に対して、加害者への罰則というのが、それぞれの個々のことで、なかなか全体としての罰則規定というのはできない状況だとは思うんですけれども、海外に目を向けますと、米国、英国では、いかなる形でも、相手への執拗な嫌がらせがストーキングと呼ばれています。
一九九七年に制定された英国による嫌がらせ行為防止法では、ストーキング、人種ハラスメント、セクシュアルハラスメント、隣人の反社会的行為など、その形態を問わず、ハラスメント行為を禁止し、ストーキングの特徴を示す定義として、個々の行為の性質に関わりなく、その執拗さゆえに被害者の心に多大な負担となり、脅威を感じさせる行為となっています。
ハラスメントを包括的に考えて、全体として考えて、加害者への罰則を含んだ法整備というのが必要と考えるんですけれども、この罰則規定というのが非常に難しいという状況は、御説明いただいたとおり、よく分かるんです。
ハラスメント行為を防止するための理念法案、私、理念法案というのは嫌いで、理念を掲げても何が意味があるのかなと思ったんですけれども、非常にハラスメントが世界中でも日本でも、特に顔の見えないもの、SNS、電話、そういったところだと非常に激しく攻撃する、そういうことが多くなっている現状で、規定するのが難しいとなれば、理念、そういったものを必要とする状況ではないのかなと思いますが、これは通告はしていないんですけれども、もしお答え願えれば。
○田中政府参考人 なかなかお答えが難しい点だと思いながら、ちょっと今ここに出てまいりましたが。
先生から御指摘のありましたとおり、イギリス等諸外国では、労働者に対する職場のハラスメントという形のものもありますけれども、それを超えて、広く一般にハラスメントを扱うというような法制も見られるところでございます。
また、日本の状況を見ますと、職場におけるハラスメントもあってはならなくて、それを防止していくというのも非常に大事ではございますけれども、職場以外の様々な面で、特に、御指摘のありましたような昨今のSNS等による嫌がらせとか、それがだんだんエスカレートするというふうな状況も見られているところでございます。
一般論として申し上げれば、こういうような言動についても、あってはならないというものであるというふうに考えますし、あってはならないという理念を明確化していくというようなことは、一つの手法としては考えられるものだというふうには思いますけれども、いかんせん、労働法制の範囲を超えることでございますので、ちょっと私がこの場で厚生労働省としてどういうふうに考えるかということをお答えするというのは、ちょっと難しいかというふうに考えます。
○猪口委員 ありがとうございました。
ただ、理念として、どの分野でこういうことを発信したらいいのか、ちょっと分からないんですけれども。
それから、ハラスメント加害者というのは、困った人ではありますよね。でも、困っている人でもある、一方で。それは、特に、モンスターペーシェント、モンスターペアレント。学校での保護者、今度問題を起こした保護者、そしてまた医療機関なんかでの問題行動を起こす方、これは、その加害者本人に非常に問題がある場合で、寄り添えば解決できる、そういうことも多いと感じております。
単に加害者と見るばかりでなくて、ハラスメントを起こしている人の根本的な問題を解決しない限り問題は繰り返されていくと思いますが、加害者へのケアということは、何かお考えはないでしょうか。
○福岡国務大臣 加害者の抱える問題に目を向けるということは、御指摘のとおりだというふうに思います。
この法案では、顧客等の言動であって社会通念上許容される範囲を超えたものにより労働者の就業環境が害されることをカスタマーハラスメントとした上で、その防止のため、雇用管理上必要な措置を事業主に義務づける改正案としております。
御指摘のような行為者への配慮を事業主に求めることは、この法案の範囲を超えておりまして、対応はなかなか困難でございますが、事業主が講ずる措置の内容等につきましては、仮に法案が成立すれば、労働政策審議会の議論を踏まえて指針等でお示しすることとなりまして、その際には、行為者にも様々な特性があることにも留意しながら指針等の内容を検討してまいりたいと思います。
また、カスタマーハラスメントの防止に当たりましては、接客対応の改善によって再発防止を図ることも考えられますが、御指摘のような行為者の特性への配慮という観点からも、適切な接客対応は重要でございまして、そういった点も踏まえまして、指針の内容を検討していきたいと考えております。
○猪口委員 よろしく指針の方をお願いいたします。
職場でパワハラ、セクハラ、こういったものは、大分いろいろなところで、こういうものが、こういう言葉がパワハラです、こういう言葉がセクハラになりますという、かなりそれは浸透してきたと思うんですけれども、それをもっと拡大した形で啓発ということを、法整備ができなければ啓発という形で、みんな、こういう攻撃をしては人を傷つけますし、命も落とす人もいますという形の啓発ということが大事かなと思いますので、是非よろしくお願いいたします。
ありがとうございました。
○藤丸委員長 次に、福田徹君。
○福田(徹)委員 国民民主党、福田徹です。
私、勤務していた職場の環境改善の一環として、職場で感じるストレスについて簡単なアンケートを行ったことがあります。その結果、最も大きなストレスの原因であったのは、患者さんや家族からの難しい要求への対応でした。
私、すぐ対応を始めました。当時、まだカスタマーハラスメントとかペーシェントハラスメントとかこういう言葉が余りなくて、悪質クレームという言葉を見つけて、ほかの業界のマニュアルを参考にしながら、救急外来悪質クレーム対応ワンツースリーステップというマニュアルを作ったことを今でも覚えております。そのマニュアルに責任者に相談と入れておいたので、私自身でたくさん対応することになりました。難しい顧客への対応を自分自身でもたくさんたくさん経験しておりますので、今回の法改正の重要性を強く当事者意識とともに認識している、そして同時に、本当の意味で現場の労働者に届く法律にしたいなと思って、議論させていただきたいと思います。
まず、今回の法改正の実効性を確認するための質問をさせてください。
今回の法改正の柱の一つが、カスタマーハラスメントを定義し、事業主に雇用管理上必要な措置を義務づけるものですが、今回のカスタマーハラスメントに先立ち、二〇二〇年六月一日よりパワーハラスメント防止措置が義務化されています。そして、この二〇二〇年から今日まで、パワーハラスメントに関する相談件数の推移はどうなっていますでしょうか。教えてください。
○田中政府参考人 お答えいたします。
都道府県労働局に労働者、事業主等から寄せられましたパワーハラスメントに関する相談件数の推移でございますが、二〇二〇年度、これは六月からになりますけれども、一万八千三百六十三件、二〇二一年度が二万三千三百六十六件、二〇二二年度が五万八百四十件、二〇二三年度が六万二千八百六十三件となってございます。
○福田(徹)委員 ありがとうございます。
今お示しいただいたとおり、令和二年度一万八千三百六十三件から令和五年度六万二千八百六十三件、激増しています。
もちろん、これだけでパワハラ防止法の意味がなかったとは全く思いません。法律のおかげで社会にパワハラの関心とか理解が広がって、それで、元々相談されていなかったパワハラが相談されるようになった、これは大きな意味があると思っております。
一方で、大臣は、この結果、この数値となっている原因は何と考えていらっしゃいますでしょうか。
そして、この法律の効果がどうであったかと判断されていますでしょうか。
○安藤大臣政務官 福田先生、済みません、また着座で失礼いたします。
今お話があったように、都道府県労働局に寄せられるパワーハラスメントに関する相談件数は増加傾向にありますが、これについては、中小企業におけるパワーハラスメントに関する事業主の雇用管理上の措置が二〇二二年四月に施行され、事業主等からの相談が増えたことも影響をしていると考えられます。一概に増加の理由を申し上げることは、今の時点では難しいと思っています。
次に、効果なんですけれども、一方、厚生労働省が令和五年度に実施した職場のハラスメントに関する実態調査によると、過去三年間に勤務先でパワーハラスメントを受けた経験があると回答した労働者は、令和五年度は一九・三%であり、令和二年度の三一・四%に比較すると一二・一ポイント減少をしております。
こうした結果を踏まえますと、事業主のパワーハラスメントの防止に関わる措置義務が二〇二二年に全面施行されてから三年程度でありますが、パワーハラスメントが社会的に許されない行為だと認知をされ、ハラスメントの減少や関係機関への相談につながるなど、一定の効果があったと考えられます。
以上でございます。
○福田(徹)委員 ありがとうございます。
この法律の最大の目的は、ハラスメントを減らすこと、ハラスメントで困っている人を減らすことだと思います。なので、今お示しいただいたパワハラの経験がある人の割合が減っているというのは、これはすばらしいデータだと思います。
ただ一方で、不思議なのは、都道府県労働局への相談件数が同じ時期に激増しているのに、パワハラを受けた人の割合が減っている。ごめんなさい、これはちょっと通告していない問いで申し訳ないんですけれども、もし答えていただけるようでしたら、このデータになっている理由はどう判断されていますでしょうか。正しい理由を知っておくことが、打ち手をつける上で大切だと思います。
○田中政府参考人 厳密に分析をしたものではございませんけれども、都道府県労働局に寄せられる相談は、労働者から困っているという相談のほかに、事業主から、こういうようなことをしたらどうなんだろうかというような相談も含まれますので、そういう意味で、事業主が積極的に取り組もうと思って労働局に相談をしている分も含まれているかと思います。
それから、都道府県労働局への相談と、調査を取ったその調査の結果ですので、それぞれのデータの基となっている手法が違いますから、そういうようなことによる影響というのも一部あろうかというふうには思います。
○福田(徹)委員 相談であれば、パワハラが発生している前に相談しているから、いわゆる啓発効果が高かった、そういう意味でよろしいですか。ありがとうございます。
では、次にお尋ねします。
今回の法改正においては、カスハラが定義され、防止措置が盛り込まれております。今回のカスハラ防止措置は、これまでのパワハラ防止措置との何か違いはありますでしょうか。何か、パワハラ防止措置よりも今回時間がたっておりますので、改めて、更に期待できるような措置であるのかどうか、教えてください。
○福岡国務大臣 今回の改正法案におきましては、これまで企業の自主的な取組に委ねてきたカスタマーハラスメント対策について、企業規模にかかわらず、事業主に義務づけ、社会全体で足並みをそろえて、カスタマーハラスメントの防止に向けた取組を進めていくこととしております。
また、この法案におきましては、顧客等の責務として、カスタマーハラスメントの問題に対する関心と理解を深めるとともに、労働者に対する言動が当該労働者の就業環境を害することのないよう、必要な注意を払うように努めなければならないことを規定しておりますほか、ハラスメント一般について、何人も職場におけるハラスメントを行ってはならないということを法文上明確にした上で、規範意識の醸成に向けて、国が周知啓発に取り組むこととしております。
こうした規定を踏まえまして周知啓発に取り組むことで、カスタマーハラスメントの行為者に対して抑止効果を期待できるものというふうに考えておりまして、社会全体でカスタマーハラスメントの防止に取り組んでいきたいと思います。
○福田(徹)委員 ありがとうございます。
今回はカスハラ、いわゆる顧客が関わっておりますので、事業主と労働者という組織の中の人だけではなくて、顧客という組織の外の人の責務が入っていることはとても重要だと思っております。
ただ、本当に重要なこの点で、顧客側の問題を抑制すること、これを実現できなければ実効性はないと思うんですね。カスハラのスタートは、やはり顧客側の問題のことが多いはずです。そして、幾ら今回定めた指針に従って組織内でマニュアルを作って、研修もして、相談体制も取っても、ただ、それでも、顧客側の問題が大きければカスタマーハラスメントは起こると容易に想像されます。だから、これは事業主にとってももちろんですが、現場で対応する労働者にとって、身内の中で幾ら頑張っても、外の問題で嫌な思いをする、この徒労感は計り知れません。どれだけ社内でカスハラの防止措置をしても、顧客に大きな問題があれば防ぎ切れない。
この点について、今回のこの法律で書かれていることによって、何か労働者のために事業主ができることというのはありますでしょうか。
○福岡国務大臣 カスタマーハラスメントにつきましては、これまでも、厚生労働省においてカスタマーハラスメント対策企業マニュアルを作成し、対策の基本的な枠組みであったり、各企業が実施すべき取組例をお示しをしております。
御指摘に関連します具体的な対応例としましては、顧客等の理解を得るためにポスター等を見えるところに掲示しまして、カスタマーハラスメント対策に関する事業主の方針であったり姿勢を明確にすることであったり、また、顧客等への対応は基本的に複数名で対応し、対応者を一人にさせないということ、また、カスタマーハラスメントに当たる行為が犯罪にも該当し得るものであり、暴行等の行為の類型に応じて、対応者の安全を確保しながら、直ちに警察に通報することなどをお示しをしております。
この法案に盛り込んでおりますカスタマーハラスメントに関する事業主の雇用管理上の措置義務につきましては、仮に法案が成立すれば、指針等において具体的な内容をお示しすることを予定しておりますが、その際には、こうしたマニュアルの記載も踏まえながら、具体的な対応例も含めた有効な対策をお示しできるように検討していきたいと思います。
○福田(徹)委員 ありがとうございます。
今お示しいただいた方法は、確かに一定の効果はあるんだろうなと私も思います。ただ、本当にカスハラ対応は難しくて、特に、初めから悪意を持って、組織や個人を困らせる目的で行われるハラスメントに対しては、話の傾聴とか合理的な説明というのでは対応できないんですよね。
一方で、もちろん私も経験があるのですが、上司から、マニュアルを作ったんだからマニュアルに従ってちゃんとやっているかとか、丁寧に話を聞きなさいとか、お客様なんだから、患者様なんだから、こういう指示があると、本当に光の見えない暗闇の中を歩いているような、絶望的な気分になるんですけれども。
大臣、一個教えていただきたいんですけれども、大臣、このようなカスタマーハラスメントを受けた御経験、ありますでしょうか。そのとき、もし何か感じたことがあれば教えてください。
○福岡国務大臣 私も、この政治の世界に足を踏み入れる前、七年半ぐらい民間企業に勤めておりました。ちょうど就職したのが三十年ぐらい前でありますから、当時は今とも大分社会情勢等も違う中で、私も、お客さんとの対応の中で胃の痛むような思いをした経験はございます。
○福田(徹)委員 大臣もそのとき感じられたんじゃないかなと思うんですけれども、カスハラ対応をしてきて、少なくとも私が一番思うのは、恐らく多くの労働者が思うのは、やはり問題のある顧客から引き離してほしいということだと思うんですね。これは個人だけじゃない。個人はもちろん、その組織から、大きな問題のある顧客に対しては、対応しない、サービスを提供しないという判断をどこかの時点ですることが強く求められると思っております。現場ではすごく望まれていると思います。そして、やはりそれを後押しすることが今回の法律で何かできないかな、それが真に労働者に届く法律だと思います。
そこで、一つ提案させていただきたいのですが、今回の法改正において、雇用管理上必要な措置の例示として、顧客が組織に近づけないようにする、例えば、仮処分命令の申立て等を一つの例として入れることはどうでしょうか。どうお考えでしょうか。教えてください。
○福岡国務大臣 同様の指摘はほかの委員からもあったところでございますが、この法案におきましては、カスタマーハラスメント防止のため、事業主に雇用管理上必要な措置を義務づけることとしております。
御指摘がありました仮処分命令の申立ては民事保全法に基づくものでして、事業主からの申立てが行われ、これを受けて裁判所が仮処分命令の可否を判断するものであると承知をしておりますが、代理人の選任等が必要となるなど事業主の負担が大きいこと、また、活用し得る場面はあるというふうに思いますが、裁判例を見ると、適用された事例は限定的であると考えられることから、カスタマーハラスメントの個別具体の内容を問わず、全ての事業主を対象とする措置の内容として改正法案に明示することは、慎重に考える必要があると考えています。
一方で、仮に法案が成立した場合には、事業主が講ずべき措置の具体的内容は指針等で定めることとしておりますので、御指摘に関しましても、指針等の検討の際に必要に応じて検討してまいりたいと思います。
○福田(徹)委員 確かに、仮処分命令申立てとか、物すごく大変ですし、そういうのが例として入ると、例えば、やや繊細な労働者からこれは申立てしてくださいというのが多発すると、事業主としてはとても大変になることは容易に想像できますので、事情としては分かるのですが、本当に意味のあるカスハラ対策、現場に届くカスハラ対策というのはそういうものだということを一緒に御理解いただけたらなと思っております。
次に、カスハラで困っている人を減らすという一番大切な目的を達成するために、今回の法改正の効果を今後どのように検証し、そして改善を行うか、その計画があれば教えてください。
○福岡国務大臣 本法案による改正につきましては、施行後五年をめどとして、法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づき、所要の措置を講ずることとしております。
仮に本法案が成立した際には、都道府県労働局における相談であったり指導等の施行状況を始めとして、必要な実態を把握し、必要な対応を図ってまいりたいと思います。
○福田(徹)委員 検証には、必ず数字が必要だと思います。先ほど、パワハラのところでも教えていただいたとおり、しっかりと数字に基づいた検証、そして改善が目に見えるような形で、私たちにも、労働者にも見えるような形で行っていただけたらなと思います。
ハラスメント、本当に私も困っていました。困っている人を本気で減らす政治をしたいと、私は今、この場に立って思っております。困っている人がいるのに何もしない、それは、病気の人がいるのに、病気だと分かっているのに治療しないのと同じことだと思うんですよね。どうか実効性のある法改正としていただけるよう、繰り返しお願い申し上げます。
最後に、ちょっと逆の方向の話になっているのですが、町で事業主の方とお話ししていると、最近、ハラスメントという概念が広がるほどに、労働者からの過剰なハラスメントの訴えで事業主が困っているという話をよく聞きます。当然ハラスメントは許されるものではありませんが、現実世界としては、それで困っていらっしゃる事業主の方はいっぱいいらっしゃるみたいなんですよね。
これは事業主でなくても、上司でも、先ほど、ハラスメントだと言われるのがつらいから、余りポジションを取りたくないみたいな、そういう話も出ましたが、この問題に関して、何か行政の方で把握していること、対応、ありますでしょうか。
○福岡国務大臣 セクシュアルハラスメントなど職場におけるハラスメントについて、事業主に雇用管理上の措置を講ずることを義務づけていますが、これは、職場における労働者の方々の就業環境を害する言動の防止を図るものでございまして、労働者の方々の就業環境を害するとは言えないような言動まで何でも含まれるというものではございません。
その上で、事業主は、男女雇用機会均等法であったり労働施策総合推進法等の法律に基づいて、職場におけるハラスメントに関する方針の明確化であったり、労働者の方々に対する研修等による周知啓発等を行うこととしておりまして、こうしたことを通じまして、ハラスメントに関しての正しい理解を広め、その防止を図っていくことが大変重要だと考えています。
○福田(徹)委員 ありがとうございます。
最後に、厚生労働省のホームページに、職場のハラスメント対策キャッチフレーズというものがありました。その中にこんなフレーズがありました。「その言葉、大事な人にも言えますか」とあったんです。私たち政治家も、大事な人が本当に困っているときに、大事な人に、こんな法律ならどうだと自信を持って言えるような法律を作りたいと思います。私も一緒に頑張りますので、よろしくお願いします。
ありがとうございました。
○藤丸委員長 次に、浅野哲君。
○浅野委員 国民民主党の浅野哲でございます。
今日は、大臣には、終日、カスタマーハラスメントを中心にした答弁対応、お疲れさまでございます。
私も、昨日、参考人質疑、五人の参考人の皆様に来ていただきまして、その内容を踏まえて、これから十五分間、質疑をさせていただきたいと思います。
昨日、参考人で来ていただいた方々の中には、地方自治体の役職員を経験された方や、介護業界で働かれている方の代表者も含まれておりました。特に、やはり、特定の業種にカスタマーハラスメントが集中しているということは断定的に言うべきではないかもしれませんが、話を聞いておりますと、非常にハラスメントに遭いやすい職場というのはやはり存在しているようにも思いますので、最初の質問は全体観、全体的な質問になりますが、二問目以降は少し個別の問題にフォーカスを当てて質問していきたいと思います。
まず最初の質問なんですけれども、やはりこれまでも、ほかの委員の先生方も繰り返し質問されてきておりますが、本当にカスハラ事案については、企業間の連携というものが本来求められているにもかかわらず、これがこれまで進んでこなかったという問題があります。
例えば、厚生労働省の令和五年に行った調査によりますと、ハラスメントに関して他社から事実確認や調査の協力を求められた場合、求められたことがあると答えた企業の割合は全体の約二割で、八割はそんなことを求められたこともないというふうに答えています。求められたときに対応した企業が多くいるんですが、中には、応じなかったと答えた企業もあったということなんですね。
そもそも、なぜ八割ものケースが相手に確認もしなかったのかというところをひもといていくと、やはり、失注であったり、契約解除であったり、様々な反作用をイメージして、それに萎縮して相手に聞くことができない、そういった原因もあるということであります。
やはり、企業のハラスメント対応部署同士が情報共有あるいは連携できるように、国がガイドラインや事例集をしっかりと整備をして、それを周知すべきだと思うんですね。その上で、取引関係上、社内では対応が難しい事案については、国が第三者的に相談を受けられるような窓口の設置も考えていくべきかと思うんですが、これについて大臣の見解を伺いたいと思います。
○福岡国務大臣 この法案では、カスタマーハラスメント対策を強化するため、事業主に対して相談体制の整備等の雇用管理上の措置を講ずることを義務づけていますが、御指摘がありましたように、加えまして、他の事業主からこれらの雇用管理上の措置に関する協力を求められた場合に、これに応ずるように努めなければならないとする規定を置くこととしております。
仮にこの法案が成立した場合には、カスタマーハラスメントに係る事業主間の協力が図られるように、関係省庁ともしっかり連携しながら、業界団体を通じて、規定の趣旨について丁寧な周知に努めてまいりたいと考えています。
加えまして、個別の事案の解決の促進に関しましては、都道府県労働局において労働者や事業主からの相談に応じて必要な指導を行うとともに、今年度からは、個々のハラスメント事案に関して労務管理に精通する専門家が事業主や人事労務担当者等からの相談に応じ、速やかにハラスメント事案を解決するための対応策を助言する事業を実施し、当該事業で支援した事例を基に対応事例集を作成、周知をすることとしておりまして、これらの取組を通じまして、事業主間の適切な連携の促進を含めまして、カスタマーハラスメント対策の推進を図っていきたいと考えています。
○浅野委員 今、事例集を作成していただく予定であるということで、是非お願いしたいと思います。
ちょっと更問いになってしまいますので、答弁は局長でも結構ですけれども、今、やはり企業間の連携を促進するために、調査に応じるよう求められた場合には、それに応じるよう努めなければならないという義務も設けるという答弁がありましたが、今私が冒頭申し上げたように、他社に、相手先の企業に調査を求めたか求めなかったかというアンケート調査については、八割が求めなかった。求めた二割のうち、ほとんどが応じているんです。本当に、〇・四%ぐらいが応じなかったという回答でしたので、実際には、ほとんどの企業が調査を求められたときには応じているんですね。
問題は、求められたときに協力するかしないかではなくて、そもそも、被害を受けた、調査をしなければいけない企業が、相手に求められないことが問題なんだということなんです。だから、相手に調査協力を求めやすい環境づくりというのをもっと主眼を置いて取り組まなきゃいけないと思うんですが、ここに関しては今政府がどのように考えているんでしょうか。
○田中政府参考人 ここの法律の中では、ほかの事業主から当該事業主の講ずる雇用管理上の措置の実施に関して必要な協力を求められた場合の努力義務というような形になってございます。
政府としては、この法律案が成立をした後には、法律改正の内容それからその趣旨について、しっかり事業主、社会一般も含めまして理解をしていただく必要がございますので、こういうような規定があるということについてもしっかり周知をしてまいりたいと考えております。
○浅野委員 じゃ、ちょっとしつこいようで申し訳ないですが、もう一問だけ更問いで。
今回、国の責務規定も設けられますね。やはり、今のような意識の醸成というのは、これは事業主の自己責任というよりは、国がしっかり責任を持って意識醸成をしなければいけないと思うんですね。ですので、もしハラスメント事案があった場合に、それが複数の企業にまたがっていた場合、しっかりその当事者企業は関係する相手先企業に対して調査を要請する、この必要性をしっかり意識を醸成する責務が国にあるとお考えになっているかどうかだけ、答弁をお願いします。
○田中政府参考人 事案は様々でございますので、全ての場合に調査を相手の事業主に求めなければいけないかどうかという御質問であれば、ちょっとなかなかそうではないのではないかと思いますけれども、法律としてその制度を改正をいたしまして、法律ができて施行するということについては、それは国の責任でございますので、しっかり周知に取り組んでいくべきものだというふうに考えております。
○浅野委員 ありがとうございます。
是非、責任を、責務意識を持って、国の方にも、この意識醸成、取り組んでいただきたいと思います。
続いての質問ですけれども、昨日の参考人の方の中には自治体職員を経験をされた方がいらっしゃいまして、やはり自治体におけるカスハラというか、住民からの不当な要求に相当な苦労をしてきたという話がありました。
自治体職員の三五%が過去三年間に住民等からのカスハラを受けたという回答、調査もあります。これは、総務省の二〇二五年四月公表の、今年の四月公表の調査結果であります。
また、自治体の役場の職員さんのみならず、学校の教員や、あるいは公共施設を委託を受けて運営している民間事業者の方々についても、同じように被害を受けている。さらには、フリーランス、ギグワーカーなどのような個人についても、これまで議論がありました。
やはり厚労省として、こうした方々の実態把握を進めていく必要性は認識されていると思うんですが、特に自治体職員に対する住民からの不当な要求あるいはハラスメント的行為を抑えていくためには、総務省としっかり連携をしていただく必要があるかと思うんですね。他省庁と連携して、ガイドラインの整備や支援体制の構築に取り組んでいただきたいと思うんですけれども、それについて、大臣の見解をお伺いします。
○福岡国務大臣 御指摘の総務省の調査については、承知をしております。
本法案におきましては、顧客等の言動でありまして、社会通念上許容される範囲を超えたものにより労働者の就業環境が害されることをカスタマーハラスメントとした上で、その防止のために、雇用管理上必要な措置を事業主に義務づけることとしておりますが、これは地方公務員も対象となるものでございます。
カスタマーハラスメントの様態は業種、業態によって異なることから、各業界ごとの実態を踏まえた対策を進めるべく、業所管省庁と連携していくこととしているところでございまして、今御指摘がございましたように、地方公務員の現場においてもしっかりと対策が講じられるように、総務省との連携を深めていきたいと思います。
○浅野委員 是非、よろしくお願いいたします。
続いては、今回この法案の中ではカバーし切れない方々への配慮について、少し質疑をしたいと思います。
私も様々な現場の方からお声をいただいておりますが、特に今回カスハラの法整備を進められるということで、ここに含まれていない方々の中には、個人事業主、具体的に私が聞いたのは、簡易郵便局の局長さんですとか、コンビニエンスストアの店長さん、経営者さんですね、こういった方々については、今回のこの法律では保護の対象になっていないんです。保護しなければいけない責務者、責任者側の立場になってしまいます。
ただ、実際、現場に出てみますと、私が聞いたのは、少し前に郵便局では切手の値段が上がりました。数円上がって、その上がる前に官製はがきを購入した方が郵便局にはがきを出しに来たときに、切手の値段が上がっているので出せませんから、追加で切手を購入してくださいというようなことを言われたときに、ついこの間買ったばかりだというような主張で、それが少しトラブルに発展してしまって、それに対応された局長さんから、そういうことがあったんだという話を聞いたんです。
ただ、こういったケースの場合に、その局長さんが相談する先がないんです。相談先はあるんですよ、あるんですけれども、保護の対象ではないんです。ですから、是非、形式上は使用者というカテゴリーに分類される方々であっても、やはり、世の中を支えていただいている、頑張って働いている方であることに、労働者であることに変わりはありません。労働法上の労働者に該当しなくても、しっかりハラスメントから保護をしていく必要性というのはあると思っていますので、この包括的なハラスメント対策。
先ほど、堤委員はハラスメント禁止法の制定というようなこともおっしゃっておりました。私も、それも一つよいアイデアかなというふうに思っておりますが、是非、包括的なハラスメント対策をほかの省庁とも連携して検討していっていただきたいと思うんですが、大臣の御見解を伺いたいと思います。
○福岡国務大臣 我が国のハラスメント法制は、ハラスメントを個人間の問題にとどめず、事業主が雇用管理の問題として取り組むべきものとして位置づけ、事業主に未然予防に取り組んでいただくことを軸とし、これを通じてハラスメントのない職場づくりの実現を図るものです。
御指摘のとおり、職場以外においても、社会の様々な場面において、他者の尊厳であったり人格を傷つけるような言動が見られるところでございまして、一般論として申し上げれば、こうした言動についてもあってはならないものであるという認識については共有させていただきますが、労働法制の範囲を超えるものでございまして、厚生労働大臣として、ここで何か所見を述べさせていただくことについては控えさせていただきたいと思います。
その上で、この法案におきましては、新たに、何人も職場におけるハラスメントを行ってはならないということを法文上明確にした上で、社会においてそうした規範意識の醸成がなされるよう、国が周知啓発に取り組む旨を定めることとしておりまして、これに基づく取組を進めていくことは、職場以外におけるハラスメントも含めた、ハラスメントのない社会の実現につながるものと考えておりますので、しっかりと取り組んでいきたいと思います。
○浅野委員 今回のこの労働施策総合推進法でカバーできない部分については、最終的には、刑法や民法で本当に最終的な対応はできるものの、やはり意識の醸成というところ、社会的規範をどう構築していくか、どの法律でつくり上げていくかというところの考え方は非常に大事だと思っております。
先ほど来、ほかの委員の皆様も触れていましたが、ほかの国では、ハラスメント行為そのものを、被害者が誰だからとか加害者が誰だからとか関係なく、その行為そのものを禁止するような法体系を持っている国もありますので、これは今、大臣としてはなかなか答弁が難しいということでありましたけれども、是非、政府内横断的に、このハラスメント問題には、これは厚生労働大臣がリーダーシップを発揮しなければ議論が前に進んでいかない問題だと思っておりますので、是非御検討していただきたいと思います。
続いては、学生の保護に関する質問です。
皆さんも既に御認識のことかと思いますが、就活生の約三割がセクハラなどの被害を受けたという調査結果が最近出ております。この三割という割合は本当に深刻だと思います。
その内訳については更なる調査が私は必要だと思いますけれども、なぜこのような割合の状態が放置されてきたのか、これまで政府はどのような実態把握と対策を行ってきたのかを、まず確認させていただきたいと思います。
さらに、求職者段階のハラスメント対策がどこまでガイドラインで明示されているか、厚労省の認識を伺いたいと思います。
○田中政府参考人 求職者等に対するセクシュアルハラスメントですけれども、議員御指摘のように、特に近年、社会的に問題となって表面化をしております。
実態把握するための調査ですけれども、直近ですと、令和五年度にその調査をしておりまして、その中身を見ますと、就職活動又はインターンシップを行った経験がある者のうちで、例えば就職活動中ということですと、先生がおっしゃったような三一・九%ということになっています。
これにつきまして、今、事業主に雇用管理上の措置を法律上義務づけているのは、セクシュアルハラスメントについては、雇用されている労働者がその対象になります。その上で、それぞれ、各法律に基づきまして、指針で望ましい内容として示しておるものの内容の中で、求職者等に対する言動についても必要な注意を払うことが望ましい、こういったようなことを記載をし、周知活動等を行っているところでございます。
○浅野委員 もう時間が参りましたので、最後、ちょっと簡潔に質問をしたいと思います。
やはり学生さんを中心に求職者を保護するためには、もっと解像度を上げて考えていく必要があると思います。特に、インターンシップ中に被害を受けたのか、就職採用時の面談で被害を受けたのかによって、インターンシップは一定期間その場にいますから、相談窓口を会社が設けるというのは分かります。ただ、就職面接のときはその場限りですので、その会社に相談をするというのは、どうしても学生さんや求職者は萎縮しがちですよね。
ですから、第三者的な相談窓口、サポート体制を構築すべきだと思うので、これを最後に伺って、終わりたいと思います。
○田中政府参考人 御指摘のとおり、求職者はその会社に就職をしようと思って就職活動をしていますので、自分の労働者としての買手側となるその企業に対していろいろな被害を相談しにくい状況にあるというふうなことについては、まさにそのとおりかというふうに思います。
そういうようなことで、企業の取組としては、求職者が相談しやすいような相談体制を取っていただくということですので、例えば、社外を活用するといったような企業の事例もありますし、また企業以外について、労働局での相談でございますとか、大学での相談等々も実施をしておりますので、そういうようなことについてしっかり周知をしてまいりたいと思います。
○浅野委員 終わります。
○藤丸委員長 次に、八幡愛君。
○八幡委員 れいわ新選組の八幡愛です。
質問に入る前に、冒頭、ほかの委員も言及されておりましたが、昨日飛び込んできました、出産費用無償化について。
これは、私も、見出しだけ見たときに、ええやんと思ったんですけれども、いやいや、待てよと。今の政府の方針というのは医療費四兆円削減ですから、これを思い出さないといけないと私は改めて思いました。
だって、地域の小さい病院を無視するような政策ばかりやっているし、私も再三ここで質問させていただきましたけれども、医療現場の賃金がなかなか上がらない、そして処遇も改善されない、だから人員不足に陥っていく。これは産科医ですね。要は、赤ちゃんを産める機能を持った産婦人科がどんどん減っていってしまっている。これは社会問題にもなっていると思います。そして、産科医も、お医者さんも減っている。それは、結構過酷な労働があったりとか、リスクも高いからということなんですけれども、やはり、無償化するのはいい、それを検討するのはいいんですけれども、あわせて、現場の声としっかり向き合っていく、もっともっと考えていかないといけないところはたくさんあるんだ、しっかりあるんだということをお伝えしたいと思います。
本当に、今のまま、このまま出産費用無償化というのだけが行ってしまうと、私、本当に嫌な予感しかしないです。それを予言させていただいて、質問に入らせていただきます。
労働施策総合推進法の改正案ということで、一般的には、カスタマーハラスメント対策の義務化や求職者などに対するセクシュアルハラスメントの防止が前面的に出ていて、今日的な問題を解決する試みが見られているんですが、これは昨日も言いました、当然、従来から指摘されている、職場におけるセクハラや、妊娠、出産、育児休業などに関するハラスメントの防止対策などについても、引き続き取り組んでいくべきだと考えます。
そのためにも、女性活躍推進法の有効期限を十年間延長することも本改正案の対象となっております。はっきり言って十分ではなかったということで、これを延長していくということに関しては私も必要だと考えております。
昨日の参考人質問でも聞かせていただきましたけれども、我が国における男女間の賃金差異は、長期的には縮小傾向にありますが、国際的に見れば依然としてまだ差異が大きい状況にあるというデータも出ております。
私、先日、ワーキング・ウィメンズ・ネットワークという、働く女性の実態を国連やILOに訴えて、国との省庁交渉などで法律の改正にも取り組んでおられる団体の方から陳情をいただいたんですけれども、その共同代表の方自身が、女性であることで昇格や賃金などで差別を受けたとして、男女賃金差別裁判というのを闘った原告の方だったんです。
同期入社の男性は、ほとんどが勤続二十年を過ぎると管理職に昇格していく。しかし、その方は、女性ということで、教育訓練の機会も与えられず、専門職への転換を希望しても、実績がないと言われて推薦されなかった。裁判は、昨年に、勝訴そして和解となったんですけれども、なった瞬間に、給料も男性並みになる。その賃金格差というのが月額二十二万円だったということなんですね。今もらっている給料とプラス二十二万円ですよ。
私の世代では、このようなあからさまな男女差別というのは減ってきていると思うんですけれども、やはりそれは先輩方が闘ってこられた結果なんだろうなと改めて思いました。
これは氷山の一角で、日本の男女間の賃金格差というのは世界的に見てもまだまだ大きく、二〇二二年に発表されたOECDの調査によりますと、加盟三十八か国の中で下から四番目、賃金格差は二一・三%、先進国、G7では当然ワーストワンという結果が出ております。正直、これを聞いて、私、恥ずかしいなと思うんです。
世界からもその是正が求められているところなんですが、そもそも、お伺いしたいんですけれども、なぜ女性の賃金が低くなってしまうのか。時代だからという言葉では絶対に片づけてはいけないと思うんですが、きっと、泣き寝入りされた方も、この国にはたくさんいらっしゃると思うんですよ。
そこで、大臣に改めて聞きたいんですけれども、大臣は、なぜ女性の賃金が低くなってきた、低くなっていると考えられますか。お願いします。
〔委員長退席、長坂委員長代理着席〕
○福岡国務大臣 御指摘がありましたように、我が国の男女間賃金差異は、長期的には縮小傾向にあるものの、依然として差異が大きいというのは御指摘のとおりです。その是正は大変重要な課題だと思います。
なぜかということで、その主な要因といたしましては、さっきお話がありましたように、女性の管理職比率が低いこと、また、男性と比較して女性の平均勤続年数が短いことなどが考えられると思います。
○八幡委員 女性の勤続年数が短いというのは、結婚とか出産とかがあるからという意味でおっしゃったんですかね。ちょっとそこを確認させてください。
○福岡国務大臣 様々な要因があると思いますが、事実として、男性に比べて女性の方の勤続年数が短いということがデータ上示されているということでございます。
○八幡委員 まさに今大臣が答弁されたことが本当に全てだなと、私も聞いていてちょっといらっとしちゃったんですけれども、短くしか働けない理由が絶対そこにはあるはずじゃないですか。だから、それを是正していかなあかんということで、まさに、まだまだやなと思います。
いらっとし過ぎて、どこを言いたいかちょっと分からなくなったんですけれども、私、三十七歳なんですけれども、やはり、会社勤めをしている友人に聞きますと、上司から、パートナーの有無とか、結婚の予定とか、出産の意思なんかを確認されるんですって。これこそがハラスメントだとは思うんですけれども、それの全てを否定した上で、ようやく昇進したと。
昨今のテレビドラマなんかを見ていても、そういった、女性が仕事を任せてもらえないという、そんな悔しい表情とか、そういう表現がなされているということは、やはり多くの働く女性の共感を呼んでいるんだと推測されます。長く働きたくても働けない、休んだら仕事から外されてしまうんだというような、多分そこにはすごい共感を呼ぶということ、大臣、ちょっと頭の片隅に置いておいてください。
そのような状況を改善するためにも、今回の改正案で、企業に対して、男女間賃金差異と女性管理職の比率の情報公表を、常時雇用する労働者の数が百一人以上の一般事業者及び特定事業主に義務づけるとあったんですけれども、日本企業の多くは中小零細企業なんですよ。しかも、女性労働者の約四割は、雇用者数百人以下の企業で働いているんです。
何でここであえて百一人以上と限定するんですかという質問をちょっと用意していたんですけれども、この質問はほかの委員からもありました。その答弁を聞いていても、結局は、まずは大企業なんだ、中小零細企業も大事なんだけれども、そこに対しては努力義務を課すんだというんですが、努力義務で片づくんだったら、こうやって法改正することもないわけですよ。努力義務ではできない。
私が一番言いたかったことは、大企業ばかりを中心に考えるんじゃなくて、やはり本当に小規模でやられている人たち、そこで働いている人たちもいるんだよということをちゃんと政府として忘れないでいただきたいということが言いたかったです。
続いての質問に行くんですが、先ほど最近のドラマの話をしたんですが、昭和の映画とかドラマとかを見ていると、何か余計どきっとすることが多いですよね。例えば、女性社員はお茶くみ、コピー取り要員である、今思うとひどい直接的な男女差別がある。何か、見ていても、そこに対して働いている女性たちは何も思わずに、今の時代とは全然違う感覚がやはり昭和の時代にはあったんだなと私も思うんですけれども、現在は、当然、そのようなことを強いる会社はほぼないと思うんですが、その分、最近は間接差別が問題視されております。
間接差別の禁止というのは、男女雇用機会均等法第七条に明記されております。第七条が適用される事由として、施行規則第二条に三つの措置というのが禁止されています。この三つの禁止事項というのは、募集、採用に当たり、身長、体重又は体力を要件とすること、二つ目、募集、採用に当たり、転居を伴う転勤に応じることができるかを要件とすること、三つ目、昇進に当たり、転勤経験があることを要件とするということなんですけれども、今の時代、間接差別はそれ以外にも様々なものがあると予想されるのに、この三つの措置に限定して禁止するという理由が私には分からないんです。このような間接差別の対象を限定的に列挙しているというのは、世界で見ても余り例がないんですよね。
実際、我が国は、昨年十月の女性差別撤廃委員会において、懸念事項として、この三つに限られているというところを突っ込まれてしまっています。ほかの、国際的に認められた、年齢、妊娠、育児及び出身地などの差別事由が含まれていないので、間接差別のより広い禁止事由を考慮するよう、雇用機会均等法を改正することと勧告を受けているんですよ。
また、そこで紹介したいんですけれども、令和六年五月十三日の東京地裁の判決で、司法の場において初めて、この三つの禁止事項に該当しない例が認められました。総合職のみに社宅制度を利用させ、一般職には利用させていないという事案、これが間接差別だと認定をされました。
この判決は、均等法施行規則に限定されない間接差別の在り方を示しましたけれども、これについて大臣はどのように受け止められているか、聞きたいです。間接差別の禁止を三つに限定するのは、やはり時代遅れだと私は思います。みんな、一つ一つ裁判をしている暇もないわけです。今後、限定列挙されている男女雇用機会均等法第七条を見直すべきではないでしょうか。よろしくお願いします。
○福岡国務大臣 まず、先ほどお示しになられました裁判例については承知をしておりますが、当該事案においては、総合職のほとんどが男性、一般職はほとんどが女性で占められている事情の下で、合理的理由なく総合職だけに社宅制度、家賃補助を適用していることが、男女雇用機会均等法の趣旨に照らし、間接差別に該当すると判断されたと承知をしております。社宅制度の利用を総合職だけに認める措置が一般的に間接差別に当たると認めたというものではございませんので、これをもって直ちに一般化できるものではないというふうに考えています。
間接差別は、性別要件のような直接差別とは異なりまして、どのような要件でも間接差別に該当し得る、広がりのある概念でありますため、行政指導を行う上では対象となる間接差別の範囲を明確化する必要があることから、このように省令で列挙をしているところです。
更なる対象の追加につきましては、間接差別として違法となる範囲についての社会的合意の形成状況も踏まえながら、必要に応じて検討してまいりたいと思います。
○八幡委員 まずは、裁判の詳細も補足いただいて、ありがとうございます。
この判決が、これは間接差別を認めたわけではないとか云々かんぬんおっしゃっていましたけれども、じゃ、もし間接差別を広く認めるとなったら、その範囲が広くて、何が差別なのか予見可能性が乏しいということを理由に法制化に懸念を表す意見というのはもちろん私も存じてはいるんですけれども、それなら逆に、雇用主側になったら、三つに限定しない方が雇用主も安心して雇用できるとも思うんです。ですので、私は、引き続き、今後の改正の必要性、ここは御検討いただきたいと思っております。
続いて、カスタマーハラスメントについてなんですけれども、これはほかの委員の方もおっしゃっていました、社会通念上許容される範囲を超えたものというものがあるんですが、これはやはり曖昧で、個人の受取の差もあると思います。法的に安定性がないと考えます。
その中で、厚労省に設置された雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会というのが昨年八月に公表された資料というのがあるんですけれども、社会通念上相当な範囲を超えた言動という中に、長時間の拘束と繰り返しの質問というのが入っているんですよ。でも、障害とかによって、コミュニケーションに相当な時間を要したり、繰り返しの確認をしてしまうことというのは絶対あると思うんです。実際、障害を持った方が私に、合理的配慮を求める声までカスハラとして扱われないかなという不安の声も言ってくださっているんです。
昨日も問題視されましたけれども、障害や認知症や病気とかを理由に人を傷つけることがあってはならないというのは当然分かっているんですけれども、障害の有無に関係なく、正当なクレームや要望でもカスハラだと言われてしまわないかと心配している人たちもいらっしゃると思います。
全国初のカスハラ防止条例を昨年十月に制定した東京都では、こういった問題に対して、顧客等の権利を不当に侵害しないように留意しなければならないという文言を入れているんです。でも、今回の法律案には、都の条例のような、正当なクレームを含む顧客の権利への配慮規定というものがないんですけれども、正当な権利がカスハラ扱いされる危険性はないのでしょうか。大臣、お願いいたします。
○福岡国務大臣 この法案で義務づけることとしておりますカスタマーハラスメントに関する事業主の雇用管理上の措置については、仮に法案が成立すれば、労働政策審議会における議論を踏まえて、指針等において具体的な内容をお示しすることを予定しております。
その上で、今お話がありましたように、障害のある方が合理的配慮を求める際に、社会的障壁の除去を必要としている旨の意思を表明すること自体は、一般的にカスタマーハラスメントには当たらないと考えられます。労働政策審議会の建議におきましても、障害者差別解消法に基づく合理的配慮の提供義務を遵守する必要があることは当然のことであることを指針で示すことが適当であるとされておりまして、こうした建議の内容も踏まえまして、指針の内容について検討してまいりたいと思います。
○八幡委員 やはり、カスハラ法といってメディアとかでも報道されていて、その文言がすごくキャッチーなので、それと併せて、その中でも合理的配慮が必要な人たちのことも、いるんだよということを併せて厚生労働省として周知をしていただきたいと申し伝えます。
昨日の参考人質疑でも、今回の法改正案に期待される声というのを聞きました。私たちれいわ新選組としては、様々な行為を明文化して、刑事罰、民事救済を規定としたハラスメント禁止法というのを策定する必要があるというのは政策の中に入れているんですけれども、引き続き、また金曜日も質問の機会がございますので、しっかりと私もこの審議を進めてまいりたいと思います。
ありがとうございました。
〔長坂委員長代理退席、委員長着席〕
○藤丸委員長 次に、田村貴昭君。
○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
労働施策推進法改正案について質問します。
二〇一九年の法改正後、日本政府も賛成して、ILO第百九十条約がILO総会で採択されました。同条約の中身は、職業上のハラスメントを包括的に定義して、禁止することを各国に求めています。しかし、日本のハラスメント法制というのは、四つのハラスメント、セクハラ、マタハラ、育ハラないしはケアハラ、そしてパワハラの類型ごとに雇用管理措置義務を課しているのみであります。
なぜ、ハラスメントそのものを禁止しないのでしょうか。これは大臣にお尋ねします。
○福岡国務大臣 我が国におきましては、職場におけるハラスメントは、その未然防止が重要であること、また、ハラスメントの未然防止のためには、企業が主体的に予防から事後の対応までの一連の措置を講じることが重要でありますことから、男女雇用機会均等法において、ハラスメント防止のための雇用管理上の措置を講ずることを事業主に義務づけておりまして、ハラスメントの行為そのものを法令で禁止するという手法は取っておりません。
事業主に措置を義務づけるという手法は、ハラスメントを個人間の問題にとどめず、事業主が雇用管理の問題として取り組むべきものとして位置づけるものでありまして、ハラスメントのない職場づくりを進めるに当たって効果的な手法であるというふうに考えております。
今般の改正法案におきましては、こうした現行法制の体系を踏まえながら、新たに、何人も職場におけるハラスメントを行ってはならないということを法文上明確にした上で、規範意識の醸成に国が取り組む旨を定めることとしておりまして、ハラスメントのない職場づくりに一層取組を進めてまいりたいと思います。
○田村(貴)委員 これまでの説明の中では罰則の話も出たんですけれども、百九十号条約というのは、ハラスメントに対して刑事罰を科すことは明文で求めていません。政府の資料でも、批准国であるドイツでは、刑法典で規制する傷害罪等が適用されつつとしながらも、ハラスメント禁止法制では刑事罰は科していないと。
そして、大臣が言われた、企業が対応していくということと、それから事前に対応していく、これは、全てを否定するわけじゃないんですけれども、ハラスメントというのはやはり禁止される、これを明確に打たないと、いつまでたっても理不尽な、そして法外な嫌がらせというのは続いていくわけなんですね。今日は、そのことについて議論したいと思います。なぜ禁止が必要なのか。
具体例を挙げたいと思います。地方自治体で働く会計年度職員のマタハラについてです。
資料を配付しています。これは中国新聞の二月十二日付の記事なんですけれども、広島県内の自治体で働く女性の会計年度職員の方です。今年三月末までが任期でした。昨年九月に産休と育休の取得を希望したら、その一月後に、任期を半年近く残して、契約更新できない旨を通告されました。そして、三月に産休に入ったものの、三月末で雇い止めとなりました。納得いかないので理由を聞いたら、勤務態度がよくなかったから、こういう理由を受けたということなんです。
出産、妊娠を契機とする不利益取扱いは、均等法や育児・介護休業法で禁止されています。これは正規の地方公務員でも同じであります。しかし、非正規公務員の臨時的任用職員は育休を取ることができません。
総務省にお伺いします。
育児休業を理由とする不利益的取扱いを禁止する地方公務員育児休業法九条は、臨時職員に対して、事実上、空文化していますよね。妊娠、出産による不利益取扱いを禁止している雇用機会均等法九条は、これは地方公務員に適用除外となっているのではありませんか。いかがでしょうか。
○小池政府参考人 臨時的任用職員につきましては、臨時、緊急のとき、又は育児休業中の職員の業務を処理するために任用されるものであること、また、その期間は一年を超えて行うことができないことから、育児休業制度を適用しないこととされております。
御指摘の男女雇用機会均等法第九条について、地方公務員は適用除外とされているものですが、妊娠や出産、育休を理由とする不利益な取扱いは、地方公務員法第十三条や地方公務員育児休業法第九条により、制度上、禁止されているところでございます。
○田村(貴)委員 制度上の矛盾が起きているわけなんですよ。
冨樫総務副大臣に今日お越しいただいております。
出産、育休取得を理由とする雇い止めは地方公務員法の平等取扱原則に違反するという解釈は、二〇一六年三月の参議院総務委員会で初めて示されています。それ以前は、総務省自身が違法とは言えないと説明してきました。だから、妊娠した非常勤職員を、育休どころか、産休を取ることすら認めずに雇い止めをする例が続いてきたのであります。
かつて、西日本のある教育委員会は、非常勤の看護師を、任用期間をわざわざ産休直前まで短縮して雇い止めを行いました。当の教育委員会は、出産、育休に伴う不利益取扱いを禁止した育児・介護休業法の規定は、地方公務員法には適用されず、産休直前の雇い止めは違法ではないというふうに開き直ってきたのであります。
非常勤職員が産休、育休を伝えると雇い止めするというのは、これは過去の話ではありません。そして、妊娠を契機とする雇い止めやマタハラがあちこちで起こっています。
民間では、妊娠、出産を契機として雇い止めは違法だけれども、頻繁に起こっています。使用者は、本当は妊娠、出産が理由であったとしても、勤務態度がよくないとか、成績がよくないとか、こういう説明をしてきたんです。これを認めてしまったら、妊娠、出産を契機とする不利益的取扱いの禁止というのは、これは空文化してしまうんです。だから、民間では、出産から一年以内の雇い止めは、禁止される、違法な不利益取扱いとして推定して、監督が行われています。
冨樫副大臣にお伺いします。平等的取扱原則というのであれば、出産などから一年以内の雇い止めは違法とする解釈を取るべきではないでしょうか。
○冨樫副大臣 妊娠、出産等を理由とする不利益な取扱いは、地方公務員法第十三条や地方公務員育児法第九条により、妊娠、出産からの期間にかかわらず、制度上、禁止をされております。この取扱いについては、各自治体に対して、地方公務員両立支援パスポートに明記することなどを通じて周知を図ってきたところであります。
総務省としては、育児休業の適正な運用がなされるよう、今後とも情報提供や助言をしっかりと行ってまいります。
○田村(貴)委員 臨時職員、それから会計年度職員がこういう不利益を受けているわけなんですよね。だから、福岡大臣、こうしたことは、やはり包括的禁止規定とか、それから、マタハラであるとかこういうハラスメントというのはいけないんですよ、法律によって禁止されているんですよということを内外に明らかにしていく必要があると思うんですよ。そうじゃないと、見解とか、それから隙間を見て、こういう扱いというのがずっと続いていくということになりかねないんですよね。
私は、総務省において、地方自治体で働く臨時的任用職員、会計年度職員がこうした事態に陥らないことを直ちに手だてを打っていただきたいというふうに思います。
禁止されていなければ違法ではないと、堂々とマタハラを自治体はやってまいりました。この新聞記事の中で和光大学名誉教授の竹信三恵子さんは、契約が一年ごとの会計年度職員はマタハラされやすい制度になっているというふうに述べておられます。
福岡大臣にお伺いします。
このように、ハラスメントというのは、禁止されていなければ違法ではないと言い張ることができるんです。ハラスメント行為そのものを禁止しなければいけないのではないでしょうか。いかがでしょう。
○福岡国務大臣 我が国の法制においては、ハラスメントについて、刑法等に規定する犯罪に該当する行為は刑事責任が課されるほか、民事上も、不法行為であったり債務不履行を根拠として、損害賠償請求の対象にもなり得るところです。
その上で、職場に係るハラスメントについては、その未然防止を図るために、事業主に雇用管理上の措置を義務づけ、各事業主において、ハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化であったり周知啓発のほか、行為者に対する懲戒処分等の措置を適正に行うこととしております。こうした義務の履行確保に関しましては、国が報告徴収であったり助言、指導又は勧告を行うことを通じて、法違反が認められる場合の速やかな是正を図っているところです。
今般の改正法案においては、こうした現行法制の体系を踏まえながら、新たに、何人も職場におけるハラスメントを行ってはならないということを法文上明確にした上で、規範意識の醸成に国が取り組む旨を定めることとしているところでございまして、全ての労働者が安心して働くことができるよう、ハラスメントのない職場づくりに向けて一層の取組を進めてまいりたいと思います。
○田村(貴)委員 今回の法改正でも包括的な禁止規定というのは設けられないわけです。禁止されるハラスメントの範囲が狭くて、そして、未然防止とか言われたけれども、ハラスメント被害の救済は、やはり不十分です。規制が後追いとなって救済が遅れてしまうことを指摘せざるを得ません。
職場における性別による経済的な差別というのは、ILO百九十号が禁止するハラスメントにも当たります。
次に、労働者に対する間接差別について質問します。
日本では、直接的差別、それから間接的差別は雇用機会均等法で禁止されています。ところが、禁止される間接差別の類型は省令に限定列記されています。一つは、募集、採用に当たって身長、体重、体力等を要件とするもの、二つ目、総合職の募集、採用に当たって転居を伴う転勤を要件とするもの、三つ目、昇進に当たって転勤経験を要件とするもの、均等法で禁止されている類型は、この三つに集約されています。
これに属さない間接差別事件が起こりました。AGCグリーンテック事件です。ほぼ全員が男性で構成される総合職のみに家賃を補助して厚遇するのは男女差別だと、AGCの子会社で勤務する一般職の女性が損害賠償などを求めた裁判です。東京地裁は、昨年五月、男女雇用機会均等法が禁じる間接差別と認めて、子会社に慰謝料など約三百七十八万円の賠償を命じました。
間接差別は三つに類型されませんよね。AGCグリーンテック事件というのは、この三要件以外の間接差別を認定したものではないでしょうか。いかがですか。
○田中政府参考人 御指摘の裁判例でございますけれども、御指摘ありましたように、総合職、そのほとんどが男性、一般職、そのほとんどが女性、こういうような状況下におきまして、合理的な理由がなく総合職だけに社宅制度、家賃補助を適用していることが、男女雇用機会均等法の趣旨に照らし、間接差別に該当すると判断されたものと承知をしております。
本判決は、こうした個別的な状況の下でのこの企業の具体的な取組が、均等法の趣旨に照らし、間接差別に該当するとされたものであると承知しております。
○田村(貴)委員 間接差別、そういうふうに断罪されたということだったら、今後の行政指導の根拠となってまいりますよね。ですから、類型というのは三つに限らないということなんですよ。三つでは、間接差別は救済が難しいということになっているんですね。
裁判に訴えなければ、そして長い間闘っていかなければ、行政指導の対象となっていかないわけであります。みんながみんな、司直に訴えることはできません。我が国においてハラスメント対策法制というのは、特定のハラスメント類型について当事者が争って、違法かどうか白黒をはっきりする、そして、社会問題化して初めてハラスメントの対策法制の対象となってきたのであります。
ですから、福岡大臣、対策が後追いになっているんですよ、やはり。これは問題ではないでしょうか。
○福岡国務大臣 我が国では、職場におけるハラスメントについて、個人間の問題にとどめず、事業主が雇用管理の問題として取り組むべきものとして位置づけ、その未然防止を図るために事業主に措置を義務づけ、主体的に予防から事後の対応までの一連の措置を講ずることとしてきました。
このような手法は、ハラスメントのない職場づくりを進めるに当たって効果的なものであるというふうに考えておりますが、各企業において実効的な対策を進めるためには、どこからがハラスメントに当たるのかといった点について共通認識を持つ必要がございまして、これまでも、社会的な共通認識の形成状況を踏まえながら、時期を捉えて対策を講じてきたところでございます。
○田村(貴)委員 ほかにもいっぱい問題があります。例えばパワハラについては、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものという要件をクリアする必要があります。必要な業務命令の範囲を超えたものかどうかが争いになるわけです。
労働者を辞めさせるために、隔離部屋に押し込めて仕事を取り上げるという事例がよくあります。これは政府機関においても同様です。国立研究開発法人理化学研究所に働く研究者が、理研を相手取って地位確認の裁判を闘っています。
文部科学省に伺います。
この研究者には理研が用意する研究費はなくて、この四月から二億円の実験機器を廃棄し、そして、実験スペースのない、机と椅子だけの部屋に移るように求められています。これは事実でしょうか。
○福井政府参考人 お答え申し上げます。
御質問の研究者につきましては、理化学研究所大阪地区が昨年度末で閉鎖されたことに伴い、その執務場所は今年度から神戸地区へ移転しておるというところでございます。
移転に当たりまして、大阪地区における実験機器は、当該研究者の使用していた機器も含め、理化学研究所の内外での活用を念頭に調整が行われていると聞いております。また、必要な経費や研究環境につきましては、個々の職員の業務遂行に当たり必要な環境が整備されていると聞いております。
理化学研究所における職員の雇用管理等につきましては、法人の自主性、自律性の下、法令に基づいて適切に対応しているというふうに認識しております。
以上でございます。
○田村(貴)委員 そう答弁されるけれども、理研の管理職は、四月以降に研究実施場所をこちらから用意する予定はないと明言しているんですよ。当事者にとってみたら、研究環境を取り上げられて、実験スペースも研究費もない、椅子と机だけ用意すると。そうしたら、研究者が研究するという仕事を取り上げられたということじゃないですか。
厚労省に一般的にお伺いします。
それまで行っていた業務を取り上げて、当事者が望んでいないにもかかわらず、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないということは、これは過小な要求型のパワーハラスメントに当たるのではないでしょうか。
○田中政府参考人 一般論として申し上げます。
個々の事案ごとの判断にはなりますが、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより労働者の就業環境が害されるものであれば、パワーハラスメントに該当するものです。
また、パワーハラスメント防止指針におきましては、業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないことを指す過小な要求を、パワーハラスメントの代表的な言動の類型の一つとしてお示しをしております。
○田村(貴)委員 そういうことなんですよね。理研は、移転という業務上の必要性や本人の業務の必要性を理由に、適切だというふうに言っているんです。
先ほど言ったように、福岡大臣、業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの、これをやはりクリアしないと、こんな不利益を被って、一方的に研究者が研究職を与えられない、机だけ与えられている、そういう環境に落とし込められるんですよ。こんなハラスメントが行われるんですよ。
だから、私は、こうした点を直していかなければいけないと思います。この事例も含めて、大臣、いかがお考えですか。
○福岡国務大臣 個別の事案についてはお答えを差し控えさせていただきたいと思います。
その上で、一般論については、今局長が申し上げたとおりでございます。
○田村(貴)委員 冒頭言いましたように、ハラスメントは、やはり明確に禁止しなければいけないんですよ。ILO百九十号条約が明確に世界に求めている。そして、包括的な禁止規定というのを求めていかないと、今日私が申し上げた事例というのは、ほかにもいっぱいあります。だけれども、未然に防止するとか、企業の管理者の責務であるとか、そういうことを言っていたら、やはり根本的な問題は解決しないと思います。
大臣、やはり検討の余地があるんじゃないですか。いかがですか。
○福岡国務大臣 ハラスメント自体を包括的に禁止する規定を設けることは、複数の法律でそれぞれ関連するハラスメントについて定める現行の法体系との整合性などについて課題があるというふうに考えています。
ハラスメント防止のためには、事業主の相談体制の整備等の具体的な取組を進めるとともに、ハラスメントを行ってはならないという国民の規範意識を醸成することが重要でございます。
この法案につきましては、カスタマーハラスメント対策の強化のほか、職場におけるハラスメントを行ってはならないという規範意識の醸成に国が取り組むことを盛り込んでおりまして、そういったことにしっかり取り組んでいきたいと思います。
○田村(貴)委員 続きは次回行います。
今日は終わります。
○藤丸委員長 次回は、来る十六日金曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後三時八分散会