第17号 令和7年5月16日(金曜日)
令和七年五月十六日(金曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 藤丸 敏君
理事 上野賢一郎君 理事 古賀 篤君
理事 長坂 康正君 理事 井坂 信彦君
理事 岡本 充功君 理事 早稲田ゆき君
理事 梅村 聡君 理事 浅野 哲君
安藤たかお君 岩田 和親君
草間 剛君 小森 卓郎君
佐々木 紀君 塩崎 彰久君
鈴木 隼人君 田畑 裕明君
田村 憲久君 根本 拓君
長谷川淳二君 平口 洋君
深澤 陽一君 福田かおる君
森下 千里君 山本 大地君
吉田 真次君 池田 真紀君
大塚小百合君 大西 健介君
尾辻かな子君 酒井なつみ君
下野 幸助君 宗野 創君
堤 かなめ君 中島 克仁君
長妻 昭君 長谷川嘉一君
宮川 伸君 山井 和則君
柚木 道義君 阿部 圭史君
池下 卓君 猪口 幸子君
福田 徹君 森ようすけ君
沼崎 満子君 浜地 雅一君
八幡 愛君 田村 貴昭君
…………………………………
厚生労働大臣 福岡 資麿君
内閣府副大臣 辻 清人君
厚生労働副大臣 仁木 博文君
厚生労働副大臣 鰐淵 洋子君
総務大臣政務官 古川 直季君
厚生労働大臣政務官 安藤たかお君
厚生労働大臣政務官 吉田 真次君
政府参考人
(内閣府大臣官房審議官) 原 典久君
政府参考人
(デジタル庁審議官) 三浦 明君
政府参考人
(総務省自治行政局公務員部長) 小池 信之君
政府参考人
(文部科学省大臣官房学習基盤審議官) 日向 信和君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房長) 村山 誠君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房医薬産業振興・医療情報審議官) 内山 博之君
政府参考人
(厚生労働省医政局長) 森光 敬子君
政府参考人
(厚生労働省健康・生活衛生局長) 大坪 寛子君
政府参考人
(厚生労働省健康・生活衛生局感染症対策部長) 鷲見 学君
政府参考人
(厚生労働省労働基準局長) 岸本 武史君
政府参考人
(厚生労働省労働基準局安全衛生部長) 井内 努君
政府参考人
(厚生労働省雇用環境・均等局長) 田中佐智子君
政府参考人
(厚生労働省老健局長) 黒田 秀郎君
政府参考人
(厚生労働省保険局長) 鹿沼 均君
厚生労働委員会専門員 森 恭子君
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委員の異動
五月十六日
辞任 補欠選任
安藤たかお君 山本 大地君
後藤 茂之君 小森 卓郎君
佐々木 紀君 岩田 和親君
大塚小百合君 尾辻かな子君
大西 健介君 下野 幸助君
同日
辞任 補欠選任
岩田 和親君 佐々木 紀君
小森 卓郎君 後藤 茂之君
山本 大地君 安藤たかお君
尾辻かな子君 大塚小百合君
下野 幸助君 大西 健介君
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第五〇号)
――――◇―――――
○藤丸委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。
この際、お諮りいたします。
本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官原典久君、デジタル庁審議官三浦明君、総務省自治行政局公務員部長小池信之君、文部科学省大臣官房学習基盤審議官日向信和君、厚生労働省大臣官房長村山誠君、大臣官房医薬産業振興・医療情報審議官内山博之君、医政局長森光敬子君、健康・生活衛生局長大坪寛子君、健康・生活衛生局感染症対策部長鷲見学君、労働基準局長岸本武史君、労働基準局安全衛生部長井内努君、雇用環境・均等局長田中佐智子君、老健局長黒田秀郎君、保険局長鹿沼均君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○藤丸委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○藤丸委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。中島克仁君。
○中島委員 おはようございます。立憲民主党の中島克仁でございます。
労働施策推進法等改正案、私からも質問させていただきますが、その前に、今朝、年金改革関連法案がようやく閣議決定をされたと承知しております。国会提出は午後になるとも聞いておりますが、国会提出の期限、三月十四日、それから約二か月、遅れに遅れ、しかも、その内容、肝中の肝、あんパンのあんとも言える、喫緊の課題である就職氷河期世代を支えるための低年金者対策、基礎年金の底上げ、この部分が抜け落ちておる。氷河期世代の不安解消へ責任を果たすべきときにもかかわらず無責任の対応と、猛省を求めたいと思います。
加えて、猛省とともに、今日閣議決定されたわけでありますから、なぜ、その肝中の肝、あんパンのあんが、低年金者への対応、基礎年金の底上げが抜け落ちたのか、理由について御説明をいただきたいと思います。
○福岡国務大臣 本日、委員会に先立ちます閣議において閣議決定をされたということでございます。法案提出に向けての調整に時間を要したということでございますが、今日に提出が至ってしまったということについての御指摘については重く受け止めさせていただきたいというふうに思います。
その上で、氷河期世代を含めます将来の年金の底上げの措置についての御指摘がございました。
これについては、再三申し上げておりますように、将来の年金水準の引上げの必要性については与党内の審査でも認識は共有されたものの、厚生年金の積立金をそこに扱うことの是非等も含めて、様々な御議論があったというふうに承知をしています。
そういう中で、私どもとしては、できるだけ早期に提出すべきという御要請になるべく応えるために、そういったものを今回は抜いた上で提出をさせていただいたというような状況だというふうに思っております。
しかしながら、今回の法案におきましては、被用者保険の適用拡大など、将来の年金水準の底上げにつながるような措置も盛り込まれておりますことから、早期に御議論いただいてということで考えております。
○中島委員 前代未聞ですからね。重要広範議案、これがこの時期にようやくですから。二か月遅れた。猛省していただくとともに、今回、先ほども言ったように、パートタイムなど短時間労働者の厚生年金への加入拡大、それともう一つが、氷河期世代対策としての基礎年金の底上げだった。先ほどお声もありましたが、遅れたとはいえ、自民党内においても多くの皆さんの御尽力をいただいて、そして、提出は午後でありますが、閣議決定、提出の運びとなったと私も承知しておりますから、その抜け落ちたあん、肝中の肝、我々は修正を準備しておりますから、是非、与党の皆さん、そして大臣にも、我々の修正協議、真摯に受け止めていただきたいと思いますが、大臣、御見解をいただきたいと思います。
○福岡国務大臣 そこの修正協議については、公党間において行っていただくものと思いますが、お求めに応じて、厚生労働省も最大限誠実に対応してまいりたいと思います。
○中島委員 どうぞよろしくお願いいたします。
そしてもう一点ですが、四月三日に本会議審議入りした、我が党からは宗野議員が代表質問をいたしましたが、医療法等の改正案、この内容は、地域医療構想の見直し、介護との連携、医師偏在対策、医療DXの推進。二〇二五年問題、二〇二五年に突入して、そして、我が党公的・公立病院のワーキングチーム、岡本理事がリーダーシップを発揮して対策を示しておりますが、地域の医療、介護も含めて大変重要なテーマ、これが、もう本会議で審議入りしているにもかかわらず、今国会、審議の見通しが立っていない。
医療法等の改正案の重要性、福岡大臣に改めて認識を確認したいと思うと同時に、まさかですけれども、今国会で審議がされないなどということは私はあり得ないと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○福岡国務大臣 今御指摘いただいたように、様々な項目が盛り込まれております医療法等の改正案につきましては、その重要性については認識を共有させていただいております。
その上で、大変恐縮でございますが、国会での扱いにつきましては国会でお決めをいただく話でございますので、そこについての言及は差し控えさせていただきたいと思います。
○中島委員 年金関連法案も、石破総理も福岡大臣も再三にわたり指示を出したと。そして、医療法等改正案は、四月三日ですよ、本会議で審議入りしているんです。会期末まであと一か月余りという状況でございます。おそらく今日、議運でもいろいろ議論をされて、重要広範議案の年金関連法案でありますから来週から審議入りだと思いますけれども、同時に、再三指示を出してきたとおっしゃっておりました、年金改革関連法案に関しては。医療法についても、確実に審議するように、そして、我々も、もう何か月前からですか、その内容についての修正も準備しているんです。是非大臣から、国会でのと言わず、年金関連法案も指示を出していたわけですから、是非審議して、延長もしてでも、何としてでも審議入りして、一定の結論を見出す指示を出していただけませんか。
○福岡国務大臣 法案につきましては、提出に当たっての責任者が私でございますから、国会のお求めに応じてなるべく早く法案を提出できるように、様々な形で与党の幹部にもお願いをさせてきていただいたところでございます。
一方、提出させていただいた法案の取扱いについては現場というか国会において決めていただく、そういう話でございますが、引き続き、与党とも連携を密にしながら対応に当たってまいりたいと思います。
○中島委員 是非、与野党筆頭理事、また委員長にも、医療法の審議入りが確実になされますように、お計らいをよろしくお願いしたいと思います。
それでは、労働施策総合推進法等改正案の質疑に入りたいと思います。
ハラスメント対策の強化内容について、カスハラ対策の法制化が示されたことは、率直に私は評価をしたいと思います。一方で、法制化に伴う課題として、どのような行為がカスタマーに該当するのか、その判断基準。さらに、対策の実効性をどういうふうに担保するのか。課題は大きく二点あると私は考えています。
これは大臣に認識を確認したいのですが、カスハラは従前のセクハラとかマタハラ、パワハラとはちょっと異なって、特有の難しさがあることをどのように認識されているか。また、法制後、判断基準、実効性について、課題についてどのように取り組んでいくおつもりなのか、確認をさせていただきたいと思います。
○福岡国務大臣 本法案におきましては、カスタマーハラスメントについて労働者保護の観点から対策の強化を図るため、事業主に雇用管理上必要な措置を講ずることを義務づけることとしております。
対策を推進する上でのカスタマーハラスメント特有の難しさにつきましては、例えば、行為者がお客さんであったり取引先等の第三者であるということを考慮した上で具体的な措置の内容等を検討する必要があること、また、カスタマーハラスメントの様態は業種、業態により異なりますことから、業界ごとの特性を踏まえる必要があることなどがあるというふうに認識をしております。
仮に法案が成立した場合には、具体的な措置の内容について指針などでお示しすることになりますが、その策定に向け、こうした課題も踏まえながら、対策が実効性のあるものとなるように丁寧に検討を行い、お示しするとともに、業所管官庁等ともしっかり連携を図った上で、社会全体でカスタマーハラスメント対策の推進を図りたいと考えています。
○中島委員 今御答弁いただいたように、事業所におけるセクハラ、マタハラ、パワハラなどは、現場でのコンセンサスということが大事になると思いますが、カスハラについては、今もお話ししたように社会全体、私、この後ちょっと医療、介護現場のハラスメント、カスハラについて御質問を続けますけれども、やはり社会全体で醸成していかなきゃいけないこの悩ましさ、また、医療・介護分野ではそのこと自体が命や健康に直結する部分でもあり、その判断基準というのが非常に悩ましい部分であると思います。
昨年十二月の労政審の建議においては、業種、業態によりカスタマーの態様が異なるために、厚労省、消費者庁、警察庁など、業所管省庁等で連携していくことが重要ということ。それを受けて、本年の一月に各省庁連携会議が設置されたと承知しております。指針でということでございますが、そういったことから、より具体的な事例も含めて指針を示す必要があるのではないかと思います。
先ほどの大臣の御認識を踏まえて、私から医療、福祉現場におけるカスハラ対策について質問を続けさせていただきたいと思いますが、資料の一枚目でございます。
これは、三年前、令和四年の一月に起きました、埼玉県ふじみ野市で在宅医が患者家族に射殺をされたという事件の、その一週間後の記事でございます。訪問医療や看護、介護の世界では、患者や利用者からの精神的、肉体的暴力について危うさを訴える声が以前からあった、今回の事件を契機にどう改善していくべきかという見出しになっております。
私、この事件、当初、大変衝撃、社会でも大きな衝撃だったわけでありますけれども、その当時も厚労委員会で、この事案を含めて、これを契機に取組を強化すべきということも御指摘をさせていただきました。
これは参考人にお尋ねをしたいのですが、この埼玉県ふじみ野市在宅医射殺事件を受けて、在宅医療、介護に潜む危険に対して具体的にどのような取組がされたのか、確認をさせてください。
○森光政府参考人 お答え申し上げます。
在宅医療等の医療従事者の安全の確保、これは重要なことと認識しております。
御指摘の事件を受けまして、警察庁と連携いたしまして都道府県等に対しまして、在宅医療従事者等の安全確保のため、各都道府県の医師会や医療機関、警察による意見交換の機会を設けるといったことを求めたほか、在宅医療従事者に対する暴力、ハラスメントの事例や対策に関する調査研究の成果の周知、これらを進めてまいりました。
また、在宅医療を含め医療現場全体におけるカスタマーハラスメント対策としまして、各都道府県に設置しております医療勤務環境改善支援センターにおいて医療機関からのハラスメント対策の体制整備に係る相談対応を行うほか、医療従事者が患者やその家族からのハラスメント対策について学習することができる教材、これを作成いたしまして、管理者や従事者に対して周知啓発を行っております。
また、このほか、診療報酬、介護報酬では、暴力行為、器物破損行為等が認められるような現場において複数名で訪問看護や訪問介護の提供を行った場合の加算などを設けております。
引き続き、これらの対策を講じていくことによりまして、介護・医療従事者の皆様の安全を確保し、安心して従事できる体制を整えてまいりたいと考えております。
○中島委員 様々取組はされてきた。例えば、埼玉県ふじみ野市において、条例で、地域医療介護総合基金、これを拠出して、二人で訪問介護の場合とか、様々な取組をされておる。あと、医師会や地域の様々な協議場。これは、やはり個々ではなかなか難しい課題であります。
一方で、このふじみ野市の事件を受けて、全国在宅療養支援医協会によると、訪問診療医の四割が危険を感じたことがある。これは、ケアマネさんも訪問介護も同じぐらいの数字だと思います。
私も実際に、外科医から訪問診療医、やはり病院でもそのような思いを抱えている患者さんはおられるかと思うんですが、首座が御自宅ということで、しかも、親御さん、場合によったらお子さんがお亡くなりになる、その状況の中で、私も何度か、殴られはしませんでしたが、胸ぐらをつかまれたり、そして、先に到着していた訪問看護師、泣き叫んで外に出てくるとか、そういった経験も何度かしておりました。ですから、このふじみ野市の事件が起きたときに、起きてしまったかと。いつこういうことが起きてもおかしくないのではないかということ、その思いから、この事件が起きたとき、大変な衝撃を受けたということであります。
先ほども申し上げたとおり、この判断基準ですね。医療、福祉分野においては、提供が途絶えると、その患者さん、利用者さんの命、健康に直結してしまうことから、医療者、介護者がなかなか声を上げられない、こういう現状があるのだと思います。
ちょっと医師に関して、これも確認なんですが、医師法の応招義務、診療を求められた場合、正当な理由なく拒んではいけないという医師の応招義務。今回、カスハラが法制化されることと医師の応招義務との関係性、どのように整理をされているのか、今回の法制化により変わる部分があるのか、これも確認をさせていただきたいと思います。
○田中政府参考人 お答えいたします。
医師の応招義務の関係ですけれども、先生御指摘がありましたように、医師法等におきまして、診療に従事する医師又は歯科医師は、診察、治療の求めがあった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならないとされておりますが、正当な事由がある場合には、患者を診療しないことが正当化される場合がございます。
これに関して、令和元年の医政局長通知においては、具体的にどのような場合に診療しないことが正当化されるのかについて考え方を整理をしておりまして、その具体的事例の一つとして患者の迷惑行為を挙げて、診療内容そのものと関係ないクレームを繰り返し続けるなど、診療、療養等において生じる患者の迷惑行為の態様に照らし、診療の基礎となる信頼関係が喪失している場合には、新たな診療を行わないことが正当化される、このことをお示しをしております。
その上で、本法案ですけれども、労働者保護の観点から対策の強化を図るために、医療業界を含む全ての事業主に雇用管理上必要な措置を講ずることを義務づけるとともに、国の責務として、各事業分野の特性を踏まえつつ、周知啓発活動等の実施に努めることを定めております。
事業主が講ずべき具体的な措置の内容については、法案が成立すれば、今後、指針等において具体的な内容をお示しをすることになりますが、その際には、業種によっては、御指摘の医師法による応招義務のように、顧客等への対応に関して業法による規律がなされている場合があります。こうしたことにも留意をし、各事業主が実効性のある対策を取ることができるよう、業所管とも連携をしながら検討してまいりたいと考えております。
○中島委員 今具体例と言いましたけれども、指針も含めて、より具体的な例を分かりやすく示していただくようにお願いをしたいと思います。
とにかく、先ほど私も在宅医としていろいろな場面に出くわしたということをお話ししましたけれども、例えば、毎晩毎晩呼び出されて、そして、その患者さん、別にそれで往診しないというわけではないですが、元殺人犯の方であって、その家に毎晩呼ばれると、やはり精神的には非常に圧迫感を感じる。それを、まず、どこにその問題意識というか気持ちを共有したらいいのか、早い段階で相談できる、地域によってそれぞれだとは思いますけれども、そういう場所の設置を是非整備をしていただきたいということはお願いをしたいと思います。
今週の火曜日、参考人質疑、五人の参考人それぞれのお立場でお話をいただき、大変参考になったわけでございますが、日本クラフトユニオンの村上参考人から、介護現場のハラスメントの実態、状況を切実に陳述をいただきました。家族の了解を得て、県によっては条例に基づいて二人で訪問する状況があるとはいうものの、そもそも、資料の二枚目でございますが、二人で行きたくても、介護人材が圧倒的に足りない。このままでは、介護全体、カスハラの問題もそうでありますけれども、人材不足、これによって、地域包括ケアシステムどころか、地域の介護が維持できないと切実な訴えでありました。
そして、介護分野の人材確保については、五人の参考人が全て、賃金、処遇改善が最優先と話をされておられました。カスハラの問題、喫緊の課題でもありますが、人的に対応したくてもそもそも人手が足りない、全産業別の平均賃金もまた八・三万円と広がってしまっている。この現状で、一刻も早く、処遇改善、手を打たなければならない。
資料の三枚目でございますが、これは昨年の六月の厚生労働委員会の決議です。私は野党の筆頭であったんですが、当時の橋本岳与党筆頭、代表提出者として、我々が今、今国会にも提出している介護・障害福祉従事者処遇改善、訪問介護緊急支援議員立法、これの内容に沿った決議を全会派一致で決めているんです。昨年の六月の時点ですよ。
こういう状況から、先ほど、医療法等改正案、必ず審議をというお話をしましたが、同時に、我々、また国民民主党、維新さんと共同で提出している介護・障害福祉従事者処遇改善、一刻も早く成立させなければならないと思います。
大臣、何度もお尋ねしていますが、これも必ず審議する、その決意をどうかよろしくお願いいたします。
○福岡国務大臣 大変恐縮でございますが、御党提出の法案についての取扱いについては国会で御判断いただく話でございますが、国会でも再三御指摘いただいておりますように、介護であったり障害福祉分野の人材不足というのは大変深刻であるということは認識をしておりまして、処遇改善が喫緊の課題であるというところの認識については共有をさせていただいているところでございます。
その上で、毎回申し上げさせていただいておりますが、昨年の報酬改定に加えまして、例えば処遇改善加算の要件を緩和させていただいたり、昨年末に措置させていただいた補正予算等の対応をさせていただいています。それが今年の夏頃に行き渡るというふうに承知をしておりまして、そういった状況も見ながら、必要な対応を行ってまいりたいと考えています。
○中島委員 介護事業所の倒産、休廃業、解散数も、昨年、過去最高ですよ。そして、今回、カスハラの問題、人的に対応しようと思ってもできない現状。先日の村上参考人の話でも、本当に間に合わないですよ。
そして、我々が提出している議員立法、その目標は、介護、障害福祉人材、やはり安定した人材確保をするためには、今すぐとは言いませんが、将来的に全産業別平均、これを実現するための検討をするという規定があります。
大臣、今すぐは無理でも、やはり今後、二〇二五年問題から二〇四〇年、更にその先、何十万人も介護人材が足りない、これを安定して確保するために、全産業別平均を目指す検討を行うと。大臣に、その目標、検討すると是非お答えいただきたいと思います。
○福岡国務大臣 先ほども申しましたように、介護、障害福祉分野における処遇改善というのは喫緊の課題だというふうに思っております。
そこの目標の在り方につきましては、他産業との人材の引き合いの状況であったり、職務内容や職責、人材に求められる資質、専門性などを踏まえた多角的な検討が必要だというふうに考えてございます。
そういった、今講じている施策の効果も把握しながら、財源と併せて必要な対応を検討してまいりたいと思います。
○中島委員 検討するぐらい言っていただいていいと思いますよ。そうしないと、今働いている方々は、厚生労働大臣、福岡大臣は、今すぐは無理でも全産業別平均を目指しているんだ、そういうメッセージだけでも大変勇気づけられる。今、だって、離職してしまう人、そしてカスハラの問題で辞めてしまう方がいる。ただでさえ人材、専門学校だって人が足りないわけですから。
大臣の強い目標意識がそういう方々へのメッセージになるということ。是非、検討ぐらいは明言していただきたいと思いますが、もう時間がないので、明言してくださいね、今度、次のときでもいいですから。よろしくお願いします。
次に、治療と仕事の両立支援の推進に関してです。
これはいろいろ、質問、何項目かあるんですが、仕事と治療の両立支援といえば高額療養費、現役世代の、働きながらがんや難病の治療をする方々を直撃した、昨年政府が示した見直し案、これは凍結されたわけでありますが、五月の一日、高額療養費制度の在り方に関する専門委員会設置についてということで公表をされました。
昨日、超党派議連、私は事務局長をやっておりますが、政府から、この設置の内容、そして今後の進め方について説明をいただいたわけでありますが、やはり、設置されたことはいいです、ただ、実際に、誤ったプロセスを踏んだ教訓を生かせるものになっているのか。そして、生活実態調査とか、受療行動に与える影響、この厚生労働委員会でも決議されましたよね、あの内容がちゃんとこの委員会でなされるのか。
私は、例えば、ここにも書いてあるように、高額療養費制度は秋までにと書いてありますが、これは今年の秋のことですか、来年の秋ですか、どちらでしょうか。
○福岡国務大臣 本年の秋でございます。
○中島委員 まだ始まってもいないし、昨日も厚労省に聞くと、メンバーもまだ決まっていませんよ。そして目的は、社会保障全体の中でこの高療費をどう考えるかなのか、それとも、あくまでも患者負担の見直し、これについての議論なのか、その目的自体もまだ不明瞭。さらには、実態調査、それに基づいて、見直しによって、受療行動に、どう変化されるか。これを、誤ったプロセス、教訓を生かしていくためには、これはとても秋までには。お尻だけ決めるということは控えるべきだということは御指摘をさせていただきたいと思います。
そして最後に、今日、仁木副大臣にも来ていただいておりますが、仕事と治療の両立支援ということで、私のところ、また各党にも御要望が来ていると思います。コロナ後遺症患者と家族の会の代表ですね。
改めて、コロナ後遺症によって、仕事を辞めざるを得ない方、また教育を受けられない、今なお苦しんでおられる方がいる。そのための、どういう実態になっているかの調査、そして支援体制の構築、これは私も実際に現場でそういう方々の相談を受けていますが、やっているとは言うかもしれませんが、実際にはそうなっていない部分について、改めて、今どのような状況になっているのか実態調査をするとともに、支援体制を強化する必要があると思いますが、いかがでしょうか。
○仁木副大臣 中島委員にお答えします。
今、世界的にも、その病態ですね、コロナの症状でいろいろな、味覚障害あるいは嗅覚障害とかがありました、そういうのが持続している実態がありまして、厚生労働省の科学研究及び日本医療研究開発機構、いわゆるAMEDにおいての研究で病態解明や国内の実態把握に努めているところでございます。
実際のところ、二〇二〇年から実施しております厚生労働科学研究では、罹患後症状を有する方の大半は時間の経過とともにその症状は改善されていらっしゃるものの、今御指摘があった団体の方々のように、症状が残存している方も一定程度おられます。その中で、何らかの罹患症状を有したと回答した割合は、感染から十八か月たった後には、成人では約五%、小児では一%というふうな結果が出ております。
そしてまた、対策、支援体制のことでございますけれども、罹患後症状に悩む方々への支援制度につきましては、労災保険、障害手当金、障害年金、また障害者手帳等の対象となる可能性があり、今、この障害者の認定に関して、今まで概念になかった呼吸器症状というものも現場のそういった診断書を書く際のドクターに伝わるようなことも、厚生労働省のホームページ等々で周知を行っているところでございます。
引き続き、罹患後症状に悩む方が適切な医療や支援体制が受けられるようなことに努めてまいりたい、この環境整備に関しまして努めてまいりたいと考えております。
○中島委員 質問を終わります。ありがとうございました。
○藤丸委員長 次に、大塚小百合君。
○大塚委員 立憲民主党の大塚小百合です。
会派を代表いたしまして、議題となっております労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律案について質問いたします。
質問の順番を変更いたしまして、先に女性活躍の推進関係についてお伺いいたします。
平成二十七年に十年間の時限立法として制定された女性活躍推進法に基づく取組を実効性あるものとするためにも、単なる有効期限の延長ではなく、働き方の見直しや事業主に対するインセンティブの導入を含めた、女性活躍の推進の強化が必要だというふうに考えております。
本改正案では、女性の職業選択に資する情報の公表の義務の適用拡大等が盛り込まれていますが、公表のみでは格差の是正につながらないと考えます。まず、女性活躍推進法における情報公表項目について、数値目標を設定していないのはなぜでしょうか。政府にお伺いいたします。
○田中政府参考人 お答えをいたします。
女性活躍推進法ですが、女性活躍に関します課題の状況は事業主ごとに異なりますので、事業主に状況把握と課題分析を行うことを義務づけて、自らの組織が解決すべき課題を明らかにして、数値目標を含む行動計画を定めて、いわゆるPDCAサイクルの下で取組を進めていくことを対策の柱としております。
また、求職者の職業選択に資するように、企業の実情に応じて選択した項目を定期的に情報公表する、これについても義務づけた上で、具体的に情報公表する項目については、状況把握、課題分析を行った項目から情報公表項目を選択することが基本である旨を指針でお示しをしております。
一方で、情報公表をする項目ですけれども、各事業主にとって課題であると判断した項目だけではなくて、求職者へのアピールのために、取組の結果、女性活躍の状況が比較的優れている項目を公表する、こういったことも想定をされます。
こうした中で、情報公表をしている項目についても数値目標の設定を事業主に義務づけることとすると、必ずしもその事業主にとって課題となっているわけではない事項に関して数値目標を定めなければならない場合が生ずることとなりますので、事業主がPDCAサイクルの下で女性活躍の課題にしっかり主体的に取り組んでいただく、自主的に取り組んでいただくという制度の趣旨とそぐわない面がございますので、これにつきましては慎重な検討が必要だと考えております。
○大塚委員 目標数値がないと、なかなかやはり推進につながらないというような懸念もございますので、是非こういった点も検討をいただけたらと思います。
また、公表の義務となるのは、常時雇用する労働者の数が百一人以上の一般事業主及び特定事業主です。事業主を限定せず、全ての事業主に対して積極的な公表を促すべきではないかと考えますが、政府の見解はいかがでしょうか。
○田中政府参考人 女性活躍につきまして、企業規模を問わず企業に取り組んでいただくということ自体は、非常に重要なことだというふうに考えてございます。
それで、今回の法案でも、百一人以上の企業に情報公表の義務、男女間の賃金差異と女性管理職比率について義務づけることにしておりますが、これにつきましては、そもそも、元々、女性活躍推進法に基づきまして、一般事業主行動計画、この策定を常時雇用する労働者が百一人以上の企業に義務づけている、こういうような中で、審議会の議論の中でも、なかなか、中小企業の取組は重要だけれども、大企業と比較して人員や組織体制に差があるという意見があったことなどを踏まえまして、この規模の企業に対して今回義務を課すということにしてございます。
一方で、中小企業でも取組は重要ですので、情報公表の取組を努力義務としておりますし、この努力義務に基づいて取り組む中小企業をコンサルティング事業の実施などを通じましてしっかり支援をすることで、取組を促してまいりたいと考えております。
○大塚委員 よろしくお願いいたします。
また、女性活躍の推進を強化するためにも、単なる数値の公表に終わるのではなく、男女間の格差の改善に向けた要因分析、格差是正に向けた取組などを説明欄に記載するように促すべきではないでしょうか。福岡大臣の御見解をお願いいたします。
○福岡国務大臣 御指摘がありましたように、単に情報公表を行っていただくだけでなくて、それを契機といたしまして、自社の女性活躍の状況に関して状況把握、課題分析を行い、取組の点検や改善へとつなげていただくことは大変重要だと考えております。
各企業が男女間賃金差異を公表するに当たりましては、御指摘がありました説明欄を活用いただくということを推奨しております。これは、男女間賃金差異を公表する際に、自社の男女間賃金差異の背景事情について追加的に情報を公表していただくものでございますが、これを行うことで企業の自主的な取組に資することとなるというふうに考えておりまして、引き続き積極的な活用を促してまいりたいと思います。
○大塚委員 背景分析、とても大事だと思いますので、よろしくお願いいたします。
障害者雇用の促進等に関する法律においては、常用労働者百人超の障害者法定雇用率未達成事業主から納付金を徴収する一方で、法定雇用率達成事業主に対しては障害者雇用調整金を支給しています。これを参考に、罰金やインセンティブを設けて女性活躍の推進を図る必要性があると考えますが、政府として何か取り組まれていることはありますでしょうか。
○田中政府参考人 女性活躍の推進でございますが、各事業主自らの課題を認識をして、これを労働者とも共有をしながら、主体的かつ継続的に取り組んでいただくことが重要だというふうに考えております。
そのために、御指摘にありましたような、インセンティブを設けるということで推進を図ることが適切であろうということで、女性活躍推進法の枠組みの中に、取組の実施状況が優良な企業に対する認定制度であります、えるぼし認定という制度を設けております。この認定を取得をすれば、この認定マーク、企業のホームページですとか広告等に表示をして、女性活躍に取り組んでいる企業であるということを求職者などについてアピールすることができることになります。
また、国などが行います公共調達において加点評価を受けるということができるような仕組みとしておりますので、こうした制度の周知を図って、女性活躍推進法に基づく取組のメリットを実感していただいて、更に取組を進めていただけるように支援してまいりたいと思っております。
○大塚委員 今御答弁にありましたように、えるぼし認定が設置されているのは承知をしておりますが、一般的に求職者にこの制度は知られていないように感じております。
私も事業主として経験がございますけれども、そういった経験がなければ、こういったえるぼし認定という制度に触れることはなかったというふうに感じます。
女性の職業選択に資する情報としては、とても認知度がまだまだ低い制度だというふうに思うんですけれども、えるぼし認定の認知度について調査の必要性があるのではないでしょうか。政府にお伺いいたします。
○田中政府参考人 御指摘いただきましたように、えるぼしの認知度ですけれども、個人の認知度に関する調査、今、そのものというふうなものはありませんが、事業主の認知度に関して申し上げますと、えるぼし認定を取得をしていない理由として、特に常時雇用する労働者の数が三百人未満の企業においては、マークの存在を知らなかったというようなことを挙げられている割合が高くなっているというふうな状況にございます。
御指摘いただきましたように、えるぼし認定の認知度を高めてその取得を促進するということは非常に重要でございますので、認定している企業の企業名などを厚生労働省のホームページなどにおいても公表いたしておりますし、また、就職活動中の学生などに対するパンフレット、リーフレット等においても周知を行っております。
また、事業主に対してもパンフレットの周知とメリットの周知というのを行っておりまして、引き続きこういうような周知に取り組んでまいりたいと思いますし、求職者等の認知度向上も非常に重要でありますので、どういったような形で把握できるのかなどについて今後検討してまいりたいと考えております。
○大塚委員 まずは知ってもらうことが大事だというふうに感じております。一般の認知度も是非一度調査をしていただき、今後につながるようにお願いいたします。
現行のえるぼし認定は、取得に特段のメリット、恩恵というのが、やはりまだまだ認知度も低いというところもありまして、感じることができない状況だというふうに思っております。
えるぼし認定を受けた事業所のメリット、有効性を更に高めるために、えるぼし認定の更なるインセンティブを検討する必要があると考えますが、福岡大臣、いかがでしょうか。
○福岡国務大臣 えるぼし認定には、認定マークを企業のホームページや広告等に表示し、求職者等に対してアピールできることであったり、また、国などが行う公共調達において加点評価を受けられるといったメリットがございます。こうしたメリットが事業主にとって認定の取得を目指すインセンティブとなりますように、求職者に対する認知度の向上に努めるとともに、公共調達における優遇措置に関し、これまでの国の機関における加点評価の実施状況等を踏まえつつ、各機関における取組実施の更なる促進を図っているところです。
さらに、このえるぼし認定を積極的に取得していただけるように、労働政策審議会建議においては、制度の趣旨に留意しながら認定基準の見直しを行うべき旨が盛り込まれておりまして、今後、この具体的な内容について検討を行ってまいりたいと考えています。
○大塚委員 是非検討を進めていただければと思います。
私も女性管理職として介護現場で働いてまいりましたが、管理職に就くためには多くの犠牲が伴いました。私が働いていた老人ホームでは、早番、遅番、夜勤と、全ての時間帯で就業ができないと正社員になれませんでした。自身の経験から、勤務時間や残業への配慮、そしてまた、事業所内託児室などの設置を行い、女性管理職の増加を試みました。
子育てや介護をしながら、早朝の勤務や夜勤の勤務、また残業や休日出勤ができる女性はほとんどおりません。私の場合は、家族の支援や子育てサービスを駆使しましたが、それでも十分に補うことは難しく、それらの支援を得ることが難しい方も多くおられます。
女性の正社員、管理職比率が低水準なのは、必然だというふうに思っております。そこで、女性の管理職比率改善のためには、育児や介護との両立支援、短時間労働等の多様な働き方の推進及び男女の役割分担等の意識改革の強化が必要であると考えますが、福岡大臣の御見解はいかがでしょうか。
○福岡国務大臣 短時間労働者の多様な働き方の推進については、正社員として働くことを希望する非正規雇用労働者の正社員転換の支援であったり、また短時間正社員制度など、多様な正社員制度の普及促進に今取り組んでいるところでございます。
また、育児と仕事、介護を両立し、継続して就業することに向けた取組といたしましては、本年の四月より段階的に施行されております改正育児・介護休業法において、男女共に介護両立支援制度等を取得しやすい雇用環境の整備の措置であったり、子の看護等休暇制度の対象年齢引上げ、また、三歳から小学校就学前の子供を養育する労働者についての柔軟な働き方を実現するための措置の導入などの見直しを行っているところでございます。その上で、企業版両親学級の推進などを通じまして、男性の育児参画も含めます共育ての推進にも取り組んでおります。
引き続き、希望する方の正社員転換の支援であったり、仕事と育児、介護の両立支援、女性の方に家事、育児等の負担が偏る状況の改善などを通じまして、男女共に希望する働き方が実現できるように取り組んでいきたいと思います。
○大塚委員 環境の充実には費用も非常にかかります。助成金の充実なども併せて御検討をいただけるよう、お願いいたします。
男女格差の改善に向けた要因分析や取組の検討などは、企業の負担が大きい一方で、女性の活躍の促進に当たっては重要な取組であります。金銭的での援助も必要ですが、少なくとも、活用例や好事例、既に公表している男女間賃金差異分析ツールを始めとする支援ツールの提供、またそれらの周知など、中小企業を中心に全ての企業に対して行うべきではないでしょうか。福岡大臣の御見解をお伺いいたします。
○福岡国務大臣 女性活躍の推進に向けては、各企業において、実態の把握や課題分析など、いわゆるPDCAサイクルを回していただくことによりまして、企業の実情に応じた取組を進めていくことが重要であると考えています。
御指摘がありました、企業ごとに人員や組織体制に差がある中で、中小企業における取組の裾野を広げていくためには、取組の意義であったり効果について分かりやすく十分な周知を行うとともに、必要な支援を行うことが重要だということは委員御指摘のとおりだというふうに思っております。
このため、厚生労働省のウェブサイトにおきまして、男女間賃金差異の把握、分析や情報公表に取り組んでいる中小企業の好事例を紹介しておりますほか、主に中小企業を対象として、個々の企業の雇用管理状況に応じたコンサルティングを実施する、また、各企業において男女間賃金差異の要因を簡易に分析することのできるツールとして、男女間賃金差異分析ツールを作成し、提供するなどの支援に取り組んでいるところでございまして、引き続き、こういった形で中小企業の取組を支援してまいりたいと思います。
○大塚委員 支援ツールの提供を始めとした支援策を是非全ての企業に充実させていただきますよう、お願い申し上げます。
一般事業主には、各企業の情報の公表内容等を横断的に把握できるよう女性の活躍推進企業データベースがありますが、特定事業主の情報公表は各省庁、各地方自治体に任されております。
職業生活を営み、また営もうとする女性の職業選択に資するよう、特定事業主においても、一般事業主と同様に、内閣府又は総務省が各省庁、各地方自治体の情報を一括して公表すべきと考えますが、内閣府と総務省のお考えをお伺いいたします。
○原政府参考人 お答え申し上げます。
女性の活躍状況に関する情報につきましては、女性活躍推進法上、特定事業主である国及び地方公共団体も、一般事業主と同様に、各事業主において、必須の情報公表項目のほか、任意の項目を選択して公表することとされております。
内閣府におきましては、これらの特定事業主による公表情報を収集し、内閣府の女性活躍推進法「見える化」サイトにおいて、一括して公表しております。この見える化サイトでは、特定事業主の名称や取組内容等を検索して閲覧できるとともに、他の特定事業主と比較することもできるようになっております。
今後、御審議いただいている改正法案の趣旨を踏まえ、各特定事業主に対して、必須公表項目に加えて、なるべく多くの項目について情報公表を行うよう働きかけるとともに、見える化サイトの利便性の向上、周知を図り、サイトがより一層活用されるよう取り組んでまいります。
○小池政府参考人 総務省といたしましても、先ほど内閣府から答弁がございました見える化サイトにつきまして、各種会議等の機会を捉えまして、自治体に対し、御自身の自治体をPRする材料として活用したり、公務員志望者等に周知したりするなど、積極的な活用をお願いしているところでございます。
このサイトが一層活用されるよう、引き続き自治体に働きかけてまいりたいと考えております。
○大塚委員 分かりやすい情報公開システムの作成に今後も引き続き取り組んでいただけるよう、お願いいたします。
続きまして、カスタマーハラスメント対策強化関係についてお伺いいたします。
まず、労働者を守る視点からお伺いいたしますが、令和五年度厚生労働省委託事業、職場のハラスメントに関する実態調査によると、過去三年間の顧客等からの著しい迷惑行為に関する相談の最も多かった業種が医療、福祉となっております。
政府は、カスタマーハラスメントを防止するための措置の具体的な内容は今後指針で示すとしていますが、医療、福祉分野の職場におけるカスタマーハラスメント対策のより一層の強化が必要だというふうに感じております。介護人材の確保は我が国の大変重要な課題であり、就職率を高め、離職率を減らすためにも、介護職員が安心して働くことができるよう、ハラスメント対策を含む職場環境の労働環境の改善を図っていくことが必要です。
医療、福祉分野でのカスタマーハラスメントについて、政府が認識している課題をお伺いいたします。
○黒田政府参考人 お答え申し上げます。
委員御指摘の医療・介護分野につきましては、利用者の方々あるいは患者さんと一対一で対する場面が多くあるという特質がございまして、その結果として、個々の職員の方々が、ハラスメントが仮にあった場合に、それを個人として抱えて孤立しがちな環境に陥りやすいという特色があるというふうに考えております。そのため、両分野共通の話として、組織としてそういった状況を共有をした上で、組織として対応するということが全般的に必要かと存じます。
その上で、委員が大変お詳しくていらっしゃる介護現場につきましては、介護現場特有の事情といたしまして、利用者による暴力行為あるいは著しい迷惑行為等が認知症の症状として表れる場合がございまして、ハラスメント対策という視点に加えまして、認知症などの症状を踏まえた医療的ケアによる対応の必要性という観点からもこうした課題を見ていく、両方から見ていくということが重要だと考えます。
医療的なケアによるアプローチが必要な場合におきましても、職員の安全に配慮する必要があることには変わりはございません。加えまして、職員の方々に加えて、その分野に精通した専門職、例えば医師、ケアマネジャー、それから行政などもございますが、こうした様々な関係者と連携をしながら、この両面からの対応に応えていくということが必要かと存じます。
これまでも、厚生労働省といたしましては、事業者向けのマニュアルなどでそうした対応、つまり、組織的な対応の必要性、それから、様々な専門職を含めた関係者との連携の必要性についてお示しをしてございますが、今般の法案の行方も踏まえまして、更なる取組の充実に努めてまいります。
○大塚委員 私も老人ホームの施設長を長年務めておりましたが、実際の現場では、認知症や精神疾患の利用者さんに暴力を受けたり、罵詈雑言を浴びせられたり、セクハラを受けたりと多くの相談を受けてまいりました。しかし、相手は病気を患っている方ですので、正常な判断が難しく、職員としては、ハラスメントを我慢されている方も少なくありません。
国として、介護分野でのカスタマーハラスメントをどのように定義しますか。こういったケースはカスタマーハラスメントに認定されるのでしょうか。
また、指針に定めるカスタマーハラスメントを防止するための措置の具体的な内容について、現在の検討状況をお聞かせください。
○黒田政府参考人 お答え申し上げます。
本法案におきましては、カスタマーハラスメント対策の強化を図るため、事業主に雇用管理上必要な措置を講ずることを義務づけた上で、措置の具体的な内容について、法に基づき国が指針を定めることとされております。
仮にこの法案が成立いたしますれば、労働政策審議会での議論を踏まえて、業種、業態等にかかわらず、全ての事業主に共通する基本的な事項を中心とした指針などが策定される予定でございます。その中で、カスタマーハラスメントの定義、それから事業主が講ずべき具体的な措置の内容について示される予定だというふうに承知をしております。
その上で、議員御指摘の、介護現場に特有な事情というものがございますので、先ほど議員が御指摘くださった暴力行為、著しい迷惑行為などが認知症の症状などとして表れる場合がある、これは介護現場に特有の事情だと存じますので、そうした実態を踏まえた対策を併せて講じていくということが重要だと考えております。
現在、介護現場における利用者、家族等によるカスタマーハラスメントへの対応として、介護事業者が講ずることが望ましい措置などを介護サービスの運営基準の通知により明確化するとともに、事業者向けの対応マニュアル等の作成を行っておりますが、法に基づく指針等の内容、それから現場の声もよくお聞きをしながら、マニュアルの見直しも含めて、ハラスメント対策の充実強化に取り組んでまいります。
○大塚委員 先日の議論の中にも、地域医療介護総合確保基金等のお話もありましたけれども、やはり、誰かカスタマーハラスメントに対しての証明をしてくれる方がつくというのは、介護サービスにおいて非常に重要なところだというふうに感じております。
対象は、先ほどの確保基金に関しましても訪問系サービスのみというところであり、人員配置の少ない施設介護や早朝、夜勤などの対応は対象外でございます。具体的な内容はこれから考えていくところも非常に多いと思いますけれども、是非熟議を重ねていただきたいというふうに思っております。
加えまして、介護分野では、訪問介護中に利用者様の家族からの過度な要求やスタッフへの暴言が発生するなど、利用者以外からのカスタマーハラスメントも起こっております。施設介護におきましても、サービス利用開始時に、できること、できないことを説明し、納得をいただいても、対応いたしかねる医療行為や、転ばせないようにつきっきりで介護をしてほしいなどの要求、また、支払いが長期間滞っている家族の方が御本人の引取りを拒否されるなど、転居や入金を納得しない、そういった無理な要求をされるケースがございます。
対策を強化する必要があるというふうに考えますが、福岡大臣の御見解をお伺いいたします。
○福岡国務大臣 委員も、介護の現場に身を置かれている中で様々なことを御経験されていらっしゃると思います。
その中で、介護現場における家族からのハラスメントの要因といたしましては、利用者さんだったり、また御家族の介護サービスに関する誤った認識であったり理解不足があるといったこと、また、御家族御自身が疲労感から自身の言動に配慮する余裕がなくなっているなど、様々な事情があり得るものと認識をしております。
このため、介護事業者向けのマニュアルを作成いたしまして、介護事業所が具体的に取り組むべきことといたしまして、利用者であったり家族に対して、介護サービスの範囲や方法に関する契約内容の理解を図ることであったり、また、トラブル防止のために、御協力いただきたい事項を適切に分かりやすく伝えることが必要である旨をお示しし、周知を行ってまいりました。
今回の法案でも、事業主に対して雇用管理上必要な措置を講ずる義務が盛り込まれたところでありまして、この取組が実効性あるものとなるように支援をしていきたいと考えています。
あわせて、家族介護者への支援を行う観点からは、地域包括支援センターにおいて家族介護者に対する総合相談支援を行う、また、家族介護者の精神的な負担の軽減等を目的とした、介護者同士の交流会を開催するといった市町村の取組を支援をさせていただいております。また、複合的な課題を有する御家族に対しまして包括的な支援を行うことが可能となるように、市町村における重層的支援体制整備事業などの取組を支援をしております。
今後とも、この法案の趣旨も踏まえながら、介護現場の実態に即したハラスメント対策の充実強化に取り組んでいきたいと思います。
○大塚委員 御家族も併せて、意識の醸成はとても大切だというふうに思います。一般の商業施設などと違い、介護や医療のサービスは打ち切ることが利用者や患者の命にも関わる可能性があることから、ハラスメントを受けたからといって、サービスをすぐに打ち切ることはできません。利用者、事業者共に快く接することができるような環境整備を進めていただきたいと思います。
さて、次に、事業主の視点からお伺いいたします。
本改正案では、カスタマーハラスメント対策の強化として、厚生労働大臣が事業主に対して助言、指導、勧告等を行うことができるとしており、当該勧告を受けた者がこれに従わない場合はその旨を公表することができるとしています。
本改正案では、公表のみで、罰則を科すことが規定されておりませんが、これではカスタマーハラスメント対策の実効性が担保できるのでしょうか。政府の見解をお伺いいたします。
○田中政府参考人 お答えいたします。
御指摘の点ですけれども、職場のハラスメント、その未然防止が重要でありますこと、また、その未然防止のために企業が主体的に予防から事後の対応までの一連の措置を講じることが重要であること、こういったようなことから、今回のカスタマーハラスメントにつきましても、その防止のために雇用管理上の措置を講ずるということを事業主に義務づけて、ハラスメントの行為そのものを罰則をもって禁止をするというような手法は取ってございません。
罰則について申し上げれば、罪刑法定主義の下で違法となるというふうなためには要件を厳格に明確化する必要がございますし、また、特定できたとしても、職場でのハラスメントの態様は様々な中で、対象となる行為が限られてくるといったような課題もあろうかと思います。
事業主に対しての措置義務を課すということで、先生からも御指摘のありましたように、都道府県労働局が助言、指導、勧告、勧告に従わない場合の企業名公表というような履行確保の措置を準備をしてございますので、これらを粘り強く行うことによりまして実効性を確保してまいりたいと考えております。
○大塚委員 はっきりした回答はなかなか難しいと思います。やはり、実効性のある措置として、ある程度の罰則規定を設ける必要性について、最後に福岡大臣の御見解をお聞かせください。
○福岡国務大臣 この法案におきましては、カスタマーハラスメントから労働者を保護する観点から、事業主に雇用管理上必要な措置を講ずることを義務づけることとしておりますほか、カスタマーハラスメントに関する顧客等の責務を定めることであったり、職場におけるハラスメント一般について、何人も職場におけるハラスメントを行ってはならないということを法文上明確にした上で、規範意識の醸成に向けて国が周知啓発に取り組むことを盛り込んでおりますところでありまして、これらの規定を踏まえつつ、社会全体でカスタマーハラスメントの防止に取り組んでいきたいと思います。
御指摘のような、カスタマーハラスメント行為者に対して罰則を設けることにつきましては、先ほど局長も申し上げましたように、罪刑法定主義の下では違法となる行為の要件を厳格に明確化する必要がありますが、個々のハラスメントにより言動の内容や性質が様々である中で、どのように行為を特定するかといった点に難しい課題があり、また、特定できたとしても、対象となる行為が限られることとなるという課題があるというふうに考えております。
いずれにしましても、労働者の方々が安心して働くことのできる就業環境整備についてはしっかり進めてまいりたいと思います。
○大塚委員 是非、本改正法案が労働者や女性にとって働きやすい環境づくりの一助となることを期待して、質問を終わります。
ありがとうございました。
○藤丸委員長 次に、宗野創君。
○宗野委員 立憲民主党の宗野創です。
冒頭、先ほど来、中島委員の方からも御指摘がありましたけれども、医療法の審議がまだなされていないという点に関して御意見をお伝えしたいと思います。
私も本会議で質問させていただきまして、今、病院は六割が赤字ということです。本当に地域医療は疲弊しているという中でございますし、医療DXに関しても、電子カルテの導入、二〇三〇年までと政府が定めているわけでございます。それを本気でやるのであれば、一日だって惜しいはずじゃないでしょうか。それにもかかわらず、この医療法の審議をまだなされていないということに関しては、年金が就職氷河期の低年金放置だとすれば、これは地域医療崩壊の放置そのものだと思いますので、強く審議入りを求めます。冒頭、これだけ御意見としてお伝えさせていただきたいと思います。
それでは、本題のハラスメント対策に関しての議論に入ります。
初めに、自治体あるいは公的な職場のハラスメントについて伺います。
先日、自治労の林参考人からも御指摘があったとおり、自治体でのカスハラ対策の検討に当たっては、権利の制限、表裏一体となっているため、現場には高いハードルがあるということです。全国に先駆けて条例を制定した東京都などのように、自治体の中に人員やノウハウ、専門性が蓄積しているとは限りません。
おとといの委員会質疑でも福岡大臣から、自治体がカスハラ対策を行うに当たって、国からも必要な支援を行うと御答弁いただきましたけれども、もう少し具体的にお聞かせいただきたいと思います。
例えば、自治体で困難事例が発生した場合に、自治体側のファーストコール先、これはどこが担うのでしょうか。自治体内に相談機能を設けるための人材支援、それが難しいようであれば、外部の相談機関などを設けることは検討されているのでしょうか。御答弁をお願いします。
○小池政府参考人 総務省では、自治体においてカスタマーハラスメントを含む各種ハラスメントの予防、解決に当たり効果が感じられた取組について、取組事例集として取りまとめ、先月末に助言、情報提供を行ったところでございます。
この取組事例集におきましては、職員だけでは対応が困難なハラスメント事案に対応する取組として、例えば、弁護士による外部相談窓口の設置、第三者委員会への外部有識者の参画、警察との連携などを紹介しておりますが、今回の取組事例集の取りまとめを通じて、ハラスメント対策の取組は様々なものがある中、各自治体の実情や課題に応じた効果的な取組を講ずることが重要であるということが浮き彫りになったと考えております。
今回の法案では、カスタマーハラスメントを防止するため、自治体を含む事業主が講ずべき雇用管理上必要な措置等について、国が指針を定めることとされております。
本法案が成立した際には、総務省といたしましても、今後定められる指針の内容を踏まえつつ、自治体の実情やニーズもお伺いしながら、自治体におけるカスタマーハラスメント対策の取組を支援してまいりたいと考えております。
○宗野委員 今、御承知のとおり、全国の自治体では様々なアイデアを絞って独自の対応というのを検討されているわけですけれども、公共施設に関しては、既に、図書館規則であるとか市民館条例の中に退館を求める規定などが盛り込まれている場合もございます。
こうした規定等も活用しながら現場対応に当たっているという事例もありますので、事例集等の作成に当たって、こうしたケースを参考にすることはあるのでしょうか。
○小池政府参考人 各自治体におかれましては、自治体の施設におけるカスタマーハラスメント対策として、それぞれの実情に応じ、当該施設からの退館を求める旨を定めているケースを含め、様々な対策が講じられているものと承知をしております。
先月末に取りまとめました取組事例集におきましても、例えば、庁舎管理規則を改正し、庁舎内における正当な理由のない撮影や録音行為等を原則禁止するといった取組を紹介しているところです。
今後も、このような自治体におけるカスタマーハラスメントの防止に関する効果的な取組も参考としながら、各自治体におけるカスタマーハラスメント対策の取組を支援してまいりたいと考えております。
○宗野委員 ありがとうございます。
是非、総務省としても、市町村の皆さんがこれだったらできるかもしれないというふうな具体的な情報発信をいただけたらと思います。
その一方で、カスハラ対策の実効性を担保するという視点は重要ですけれども、行政側の過剰規制に関しても注意が必要と考えます。カスハラの認定を前面に出すことで、不当に市民の権利が侵害されることはあってはなりません。
例えば、有識者等で構成する第三者委員会を設置して、そこでカスハラの認定を行う事前審査制や、あるいは、市民への対応時間の上限などを設ける、こういった対応がなされています。
そういった対応が適切に運用されていたのかということを事後的に検証するような事後審査の仕組みなども考えられると思いますが、こうした事例も含めて、事例集等の作成に向けて検討されていらっしゃるのか、古川政務官に伺います。
○古川大臣政務官 お答えいたします。
総務省では、先月末、自治体の首長宛てに、カスタマーハラスメントを含む各種ハラスメント対策の積極的な取組について要請をする通知を発出したところであります。
自治体におけるカスタマーハラスメント対策においては、効果的、積極的な取組と同時に、正当なクレームや行政サービスの利用者の権利等に留意する必要があると考えています。
その点を踏まえ、通知においては、組織的な対応が重要だが、その上で、部門によっては当該部門の特性に応じた対応も必要であることについて盛り込む一方、留意点として、社会通念上相当な範囲で行われたクレームは、いわば正当なクレームであり、カスタマーハラスメントに該当しないこと、公務職場では全ての行政サービスの利用者に対して公平公正に行政サービスを提供することが必要であること、行政サービスの利用者の権利を不当に侵害しないよう慎重な対応が求められることなどについて助言を行っております。
行政サービスの利用者の権利等に留意しつつ、職員が安心して働くことができる職場環境を整備するため、今後も自治体の実情やニーズを伺いながら、自治体におけるカスタマーハラスメントを含むハラスメント対策の取組をしっかりと支援してまいります。
○宗野委員 ありがとうございます。
自治体側からしたら、こうした方法をここまでやっちゃうと駄目なんだという方の一つの基準ができることで、むしろ、カスハラの認定にも、より実効性を持った対応を自信を持ってできるようになると思います。今後も、カスハラの対応と過剰規制の防止、両面で指針の作成に当たっていただければと思います。
政務官、総務省の皆様、御答弁ありがとうございました。こちらで御退席いただいて結構でございます。ありがとうございます。
次に、精神障害等を抱える方への対応について伺います。
一律にカスタマーハラスメントとして認定してしまうリスクがあるというような御指摘が繰り返しなされておりますけれども、やはり、国の指針等において障害者団体の方などの意見を反映させる必要があると考えます。具体的な方法を明確に御答弁、お願いいたします。
○福岡国務大臣 本法案では、顧客等の言動であって、社会通念上許容される範囲を超えたものにより労働者の就業環境が害されることをカスタマーハラスメントとした上で、その防止のため、雇用管理上必要な措置を事業主に義務づけることとしております。
具体的な措置の内容につきましては、仮に法案が成立した場合、指針等でお示しすることを予定をしておりますが、労働政策審議会の建議においては、障害者差別解消法に基づく合理的配慮の提供義務を遵守する必要があることは当然のことであることを指針等で示すことが適当であるとされておりまして、これを踏まえて検討をしていく予定でございます。
そして、その指針の検討に当たりましては、何らかの形で当事者の方々の意見を伺いながら進めていきたいと考えています。
○宗野委員 御意見を伺うのと同時に、その検討委員会の中に例えば入っていただくとか、そういったことも含めて御検討いただければと思います。
次に、教育現場に関する事例に関しても認識を整理したいと思います。
教育現場において過剰な苦情や不当な要求を行う保護者等、いわゆるモンスターペアレントと言われる方々、こういった方々ですけれども、法案のカスタマーハラスメントの定義における施設利用者その他の当該事業主の行う事業に関係する者に該当するのでしょうか。簡潔にお答えください。
○田中政府参考人 本法案のカスタマーハラスメントの行為者の定義ですけれども、顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者、こういうように幅広く規定をしておりますので、御指摘のような、教員などに対して行われます児童生徒の保護者による言動についても、もちろん個別の事案の判断にはなりますけれども、社会通念上許容される範囲を超えて就業環境を害すると考えられるものについては、カスタマーハラスメントに該当し得るものだと考えます。
○宗野委員 ありがとうございます。
いわゆるモンスターペアレントと言われる方も、状況によってはカスタマーハラスメントに該当するという旨の御答弁でした。
それでは、公立の学校現場において、事業主として雇用管理上必要な措置を義務づけられているのは誰になるのでしょうか。
○日向政府参考人 お答えいたします。
公立学校における御指摘の点に関する事業主が誰になるのかについてでございますが、例えば、現在施行されているハラスメントの関係について申し上げますと、各学校を設置する地方公共団体の教育委員会が事業主に当たるものと承知をしております。
○宗野委員 ありがとうございます。
御答弁のとおり、教育委員会に対応の責任があるという、非常に重要な御答弁をいただいていると思います。モンスターペアレント等への対応において、教育現場から本当に悲鳴の声が上がっていますので、是非とも、教育委員会の方々に関しては、この対応に責任を持って御対応いただければと思います。
それと併せてですが、先来の給特法の議論もありましたけれども、介護人材と同様に、給与水準の改善、働き方の改善といった、そもそもの根本的な課題にしっかりと向き合っていくべきだということを政府全体には強くお伝えをしたいと思います。
次に、芸能関係者のカスタマーハラスメントについて伺います。
福岡大臣から、参議院の厚生労働委員会で、芸能人に対するファンや観客からの嫌がらせや迷惑行為もカスハラになり得るという旨の答弁がありました。近年、芸能関係者とファンとの関係のこじれを発端として、最悪の場合、命が奪われるような事件も発生しています。
例えば、アイドルの興行の現場では、特定のファンの迷惑行為に対して、運営側による裁量によって出禁の措置を行うことが慣習化していますけれども、こうした行為は、本法案によって事業主が講ずべき措置に該当するとみなしてよいのでしょうか。
○福岡国務大臣 芸能界における契約形態は様々でございまして、一概に申し上げることはできませんが、御指摘のアイドル等が仮に労働者に該当する場合には、そのアイドル等を雇用する事業主は、カスタマーハラスメントから労働者を保護するために必要な措置を講ずる義務を負うこととなります。
その上で、御指摘の出禁につきましては、アイドルの興行の現場における慣習について承知しているわけではございませんが、事業主が施設への出入り禁止を行うことに関しては、これまでも、厚生労働省のカスタマーハラスメント対策企業マニュアルに取組例の一つとして紹介をしております。
カスタマーハラスメントに関して、本法案を踏まえて事業主が講ずる措置の具体的な内容につきましては、仮に本法案が成立すれば、指針等で定めることとしておりまして、その際には、マニュアルの記載等を踏まえながら、有効な対策をお示しできるように検討をしていきたいと考えています。
○宗野委員 御答弁ありがとうございます。
これまで一つの慣習的に行われてきたこの出禁措置というのが、一定、今回のカスタマーハラスメント対策の一つの措置として検討し得るというふうなところだと思うんですけれども、一方で、こうした措置が適切なものかどうかをめぐって様々なトラブルが生じています。中には、悪質な事業者によって、ファンからのクレームを不当に拒否するために出禁にするとか、そういったケースもあると言われています。
運営側の基準をガイドラインで統一化することによってトラブル抑止につながると考えますが、こうした芸能関係事業のガイドライン策定と事業者への周知をどのように行っていくのか、お教えください。
○福岡国務大臣 今般の改正法案につきましては、カスタマーハラスメント対策について、全ての事業主に防止措置を義務づけ、また、業所管官庁等と連携して顧客等へ周知啓発にも取り組むことで、社会全体でカスタマーハラスメントの防止に取り組むこととしておりますほか、ハラスメント一般について、何人も職場におけるハラスメントを行ってはならないということを法文上明確にした上で、規範意識の醸成に向けて国が周知啓発に取り組む旨を定めることとしております。
これらは、労働者保護の観点から労働法制において取り組んでおるものでございまして、社会全体で取組を進める中で、尊厳であったり人格を傷つける行為は許されないものであるという認識が深まることで、芸能業界におけるそうした行為の防止に向けた取組の機運醸成にも資すると考えております。
御指摘がありました芸能業界におけるガイドラインの策定等につきましては、恐縮ですが、これは厚生労働省の施策の範疇を超えるものでございまして、直接業界団体等に働きかけを行う立場にはございませんが、今後、カスタマーハラスメント対策に関して業所管官庁等と連携を図っていく中で、御指摘のような課題についても共有を図ってまいりたいと思います。
○宗野委員 ありがとうございます。
先日、経済産業省の皆さんとも少し議論させていただきましたが、業界団体に所属していない事業者も多い業界です。さらに、近年では、もはや個人事業主としてアイドルをプロデュースして、業務委託契約するというような形を取っている場合もあります。是非、今後の課題として、ひとつ御認識いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
続けて、女性活躍推進における男性の働き方について伺います。
先日、草間委員からも御指摘いただいたとおり、女性の活躍推進に当たって、男性の方の働き方改革も非常に重要であると私も考えております。
一方で、労働時間だけではなかなか解決しない問題もあるということでございまして、おつけいたしました資料の一から四番の内容でございます。
こちらは、労働時間別に様々な家事を担う夫と妻の割合を示した調査ですけれども、男性の場合、実は、労働時間が長くても短くても家事をほとんど行わないという割合が一貫して高いという調査でございます。
私の妻もフルタイムで仕事をしておりまして、本当にお恥ずかしながらというか、私も自己反省を含めての質問であるんですけれども、男性の勤労時間が減っても、ケアワーク、アンペイドワークへの参加が進まないというこうした調査あるいは御指摘をどのように受け止めていらっしゃるのか、そして、どのような対策を検討されているのか、大臣の見解を伺います。
○福岡国務大臣 男性の家事、育児等への参画の状況につきましては、六歳未満のお子さんがいる家庭で一日当たりの家事関連時間を比較いたしますと、男性の家事関連時間は一貫して上昇はしてきているものの、令和三年の調査では、夫婦共に雇用されている場合でも、妻は六時間三十二分であるのに対して夫は一時間五十七分でありまして、女性と比べて三・四倍もの差があるというふうに承知をしております。
男性の家事、育児等への参画を促進するため、本年四月から施行されています育児・介護休業法等において、男性の育児休業取得率の公表義務の対象拡大であったり、また、企業が策定します行動計画に男性の育児休業の取得状況に関する数値目標の設定を義務づけることなどの見直しを行っております。
その上で、企業が従業員とその配偶者を対象に開催いたします企業版両親学級、この推進等を通じまして、男性の育児参画に向けた意識改革を含む共育ての推進に取り組んでいます。
引き続き、関係省庁とも連携しながら、この共育ての推進に向けた取組を進めていきたいと考えています。
○宗野委員 ありがとうございます。
やはり、男性、女性が共にケアワーク、アンペイドワークに当たるという土壌をしっかりつくっていく必要があると思いますので、私自身も含めて、一緒に頑張っていきたいと思います。(発言する者あり)頑張ります。ありがとうございます。
最後に、治療と仕事の両立に関して伺います。
資料五を御覧ください。治療を始める以前に仕事との両立を断念されているという方が全体の四分の一に当たるということです。そして、治療を始めても初期で退職されてしまうという方まで含めますと、およそ半数以上の方々が治療の前半の時点で仕事との両立を断念されているという実態があります。
実際に当該の職場で両立をできるイメージが湧かないということもあるとは思いますが、具体的な支援が行き届いていないということも分かるのではないでしょうか。
相談窓口の整備も必要ですが、職場の理解という点では、業務配分の調整なども視野に入れる必要があるのではないかと思います。例えば、先ほど御答弁の中にもありましたが、育児・介護休業法における休業者の業務代替者を対象とした給付など、今様々な両立支援があります。
こうした支援を参考としつつ、治療対象者が担う業務の配分調整など、職場の同僚も含めて行う際の支援策を今後どのように検討されていくのでしょうか。御答弁をお願いします。
○福岡国務大臣 今回の法案で推進する治療と仕事の両立支援は、離職防止や就業継続のために、相談体制、勤務制度の整備など、多様な措置を努力義務として求めるものでございまして、それぞれの事業者の実情に応じて、可能なことに取り組んでいただくこととしております。
このため、現時点では、育児休業のように、休業者の業務を職場の同僚が代替したことに対する手当の支給を助成金で支援するようなことは想定をしてございません。
ただ、治療と仕事の両立につきましては、取組実態が分からないという課題があると考えられますため、国といたしましては、各都道府県の産業保健総合支援センターによる技術的支援の無料での提供等を通じて、まずは、両立支援に資する環境整備等の取組が的確に図られ、定着するよう必要な支援を行ってまいりたいと思います。
その上で、今後の施策の進展状況を踏まえ、更なる支援としてどのような対応があり得るのかについては、不断に検討をしていきたいと考えています。
○宗野委員 ありがとうございます。
今、両立支援は様々なメニューがありまして、ケースごとに分かれて存在しているということですけれども、じゃ、対象となる治療と対象とならない治療をどう考えるのか、そこに、不平等と言ってはあれですけれども、そういった議論も一つあるかなと思います。
ケースごとに助成をしていくことにも一定の限界があるとも考えられます。ある程度包括的な職場支援の在り方も、今後の議論の在り方としては考えられるべきかなと思いますので、引き続き御検討いただければ幸いでございます。
御答弁ありがとうございました。質問を終わります。
○藤丸委員長 この際、暫時休憩いたします。
午前十時二十五分休憩
――――◇―――――
午前十一時二十五分開議
○藤丸委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。尾辻かな子君。
○尾辻委員 立憲民主党の尾辻かな子です。
今日は、厚生労働委員会で質問の機会を頂戴しまして、本当にありがとうございます。十五分という短い期間ですので、端的に質問をさせていただけたらというふうに思います。
私は、二〇〇五年、大阪府議会議員のときに、レズビアンであるということを東京のパレードのときに公表をいたしました。もう二十年前になります。以来、二十年間、やはり同性婚やLGBT差別解消法を含めて、多くの当事者がなかなか自分の課題のことすら社会に対して課題であるということが言えない、そういった中で、政治の場で声を上げるということを続けてまいりました。
今日はハラスメントの法案でありますけれども、特に、このハラスメントが、性的指向、性自認に関するハラスメントをどのように位置づけ、そして防止していくのかという観点から質問をしてまいりたいと思います。
今回、特に就活ハラスメント、就活生に対するセクシュアルハラスメントについてはきちっと措置義務になったということでありますけれども、では、まず、そこで一問目、確認をしてまいりたいと思いますけれども、求職者に対する、雇用する労働者からのセクシュアルハラスメント防止は措置義務になった。当然に、この措置義務の中には、性的指向、性自認に関わる性的な言動についても事業主に措置義務が課されるということでよいのか、お聞かせください。
○田中政府参考人 求職者等に対しますセクシュアルハラスメントに関する具体的な言動の内容については、現行のセクシュアルハラスメント防止指針の内容を参考としつつ、指針等においてお示しするものではございますが、現行のセクシュアルハラスメント防止指針におきましては、性的指向、性自認にかかわらず、性的な言動であればセクシュアルハラスメントに該当するとしております。
○尾辻委員 ということは、今後、求職者に対するセクシュアルハラスメントに関する指針についても、しっかりと指針の中で検討されるということでよいですか。
○田中政府参考人 こうした現行の考え方を踏まえながら、求職者等に対するセクシュアルハラスメントに関する指針についても検討してまいります。
○尾辻委員 ありがとうございます。
ということで、セクシュアルハラスメントの中の性的な言動で性的指向や性自認を含むところは大丈夫だということが分かりました。
次に、じゃ、パワーハラスメントはどうなるのかというところであります。
性的指向や性自認に関する性的ではない侮辱的な言動、さらには、労働者の性的指向、性自認の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること、これはいわゆるアウティングというふうにいいますけれども、こういった部分は、では、どのような取扱いになるのか、お聞かせください。
○田中政府参考人 求職者等に対します性的指向、性自認に関する侮辱的な言動や、労働者の性的指向、性自認という機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露をすることは、侮辱的な言動の内容が性的なものである場合を除けば、関連する指針における性的な言動ではありませんので、本法案における求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止措置の対象に含まれるものではありません。
一方で、労働者に対する性的指向、性自認に関する侮辱的な言動や、労働者の性的指向、性自認等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露することは、パワーハラスメント防止指針におきまして、パワーハラスメントに該当すると考えられる典型的な例としてお示しをしているところでございます。
パワーハラスメント防止指針は、義務の対象に求職者等は含まれておりませんけれども、指針におきましては、事業主がパワーハラスメント防止措置を講ずるに当たっては、求職者等についても必要な配慮を行うことが望ましい内容として規定をしているところでございます。
○尾辻委員 では、求職者に対しての性的指向、性自認に関する侮蔑的なところも防止措置が望ましいという中で、既に規定がガイドラインの中ではあるということで確認をさせていただきました。
それで、今後ということなんですけれども、性的マイノリティーの全国団体であるLGBT法連合会が三月三十一日に公表した、性的指向及び性自認を理由とする私たちが社会で直面する困難のリスト第四版では、このときから新たに加わった事例として、例えば、採用面接で突然、社長から君はホモかと聞かれ、否定したが、就職してからもホモかと何度も聞かれ、体調を崩して出社できなくなり、退職したという事例が挙げられております。
いまだにこのような事例が見られること、そして、就活時のハラスメントが就職してからも継続、影響することをしっかり踏まえて、法に基づく指針にこの点を強調して書き込んで、対策や周知を進めていただきたいというふうに考えておりますけれども、これは大臣の方に聞かせていただきたいと思います。
○福岡国務大臣 御指摘のありましたリストに掲載されている事例について、その発言のあった具体的な状況を知ることができませんが、そうした証言は当事者の方にとって侮辱であると感じられる場合があることから、適当ではないというふうに考えております。
その上で、先ほど政府参考人が申し上げましたとおり、求職者等に対する性的指向、性自認に関する侮辱的な言動については、基本的には関連する指針における性的な言動には該当せず、本法案に盛り込んでいる求職者等に対するセクシュアルハラスメントに関する措置義務の対象に含まれるものではございません。
一方で、御指摘のような表現を用いることは適当でないことから、現在、性的マイノリティーの当事者を含む多様な人材が活躍できる職場環境整備を図るため、企業の取組等をまとめた事例集を作成、周知する中で、その旨を盛り込み、周知しておりまして、引き続き取り組んでまいりたいと思います。
また、仮に法案が成立した場合に、求職者等に対するセクシュアルハラスメントに関する指針等を検討する際には、御指摘のような発言について、セクシュアルハラスメントに当たるものではないにしても、不適当な言動である旨を盛り込むことも含め、必要な検討を行ってまいりたいと思います。
○尾辻委員 指針作成の際、しっかりと盛り込んでいただきたいと思います。
それでは、次に、パワーハラスメントと生徒指導提要について、これは文科省の方にお伺いをしてまいりたいと思います。
前回のいわゆるパワーハラスメント防止措置規定を新設した労働施策総合推進法改正案の附帯決議には、性的指向、性自認の望まぬ暴露であるいわゆるアウティングも対象になり得ること、そのためアウティングを念頭に置いたプライバシー措置を講ずることが盛り込まれ、法に基づく指針でも、先ほども確認しましたが、アウティングがパワーハラスメントに該当すると考えられる例に明記されています。
これについては、文部科学省も、令和二年三月十九日に教育委員会宛てに通知を出しており、労働者の性的指向、性自認等の機微な個人情報について、当該労働者の了承を得ずに他の労働者に暴露することについても、パワーハラスメント指針においてパワーハラスメントに該当すると考えられる例として示されることと記載しています。
同通知では、児童生徒への指導等において、教職員がパワーハラスメント指針で示されたパワーハラスメントに類する言動を行ってしまうことも考えられるためとして、教職員への注意喚起や啓発など必要な措置を講じること、児童生徒や保護者から相談に適切に対応できる体制を整えることが記載されております。
一方で、文科省は、二〇二二年十二月に閣議決定した生徒指導提要の「「性的マイノリティ」に関する課題と対応」において、以下の記載を設けております。当該児童生徒の支援は、最初に相談を受けた者だけで抱え込むことなく、組織的に取り組むことが重要であり、学校内外の連携に基づく支援チームをつくり、ケース会議のチーム支援会議を適時適切に、対応を進めるというような形でありまして、ちょっとこれは長いので短縮させていただきますけれども。
要は、生徒指導提要の中で、相談を受けたときに教職員の中で共有すると言っているわけですよ。これはアウティングに当たるんじゃないですかということで、まさにアウティングを推奨しているように聞こえてしまうわけですが、文科省はどのように考えておられるか、お聞かせください。
○日向政府参考人 お答えいたします。
生徒指導提要においては、「「性的マイノリティ」に関する理解と学校における対応」として、最初に相談を受けた者だけで抱え込むことなく、組織的に取り組むことが重要であるとするとともに、教職員間の情報共有に当たっては、児童生徒自身が可能な限り秘匿しておきたい場合があることなどに留意が必要であることや、当事者である児童生徒やその保護者に対し、情報を共有する意図を十分に説明、相談し理解を得る働きかけも忘れてはならないことも記載しているところであり、当事者の理解を得ずに他者に暴露する、いわゆるアウティングを推奨するものではないと考えております。
文部科学省としては、性的マイノリティーに係る学校の対応が適切になされるよう、引き続き、学校現場や教育委員会等の学校関係者の理解促進に向けて取組を進めてまいります。
○尾辻委員 確認ですけれども、この留意が必要の留意の部分なんです。この留意というのは、本人の同意なく他者に共有しないということでよろしいのか、確認いたします。
○日向政府参考人 お答えいたします。
今御指摘の点につきましては、本人の意思に反する対応は当事者である子供を傷つける危険性があること、また、これは児童生徒間だけではなく教職員が関与している場合もある、こういうことは、教育委員会の担当者に対しては注意喚起を行わせていただいております。
○尾辻委員 この留意の部分、しっかりとやっていただかないと、結局、例えば一橋大学なんかでも、これは、学生間のアウティングで命が失われたという事象もあります。文科省がパワーハラスメント防止をしていく上で、生徒の相談を勝手に共有するということ、これはあってはならないというふうに思いますので、しっかりと対応いただきたいと思います。
あともう一問、させていただきたいと思います。学校健診とハラスメントについてお伺いをしていきたいというふうに思います。
学校健診も、これはやはり注意深くする必要があるというふうに考えておりまして、昨年の一月、文科省より、学校健診時に原則着衣であるという通知は出ておりますが、各自治体で対応にばらつきがあるようです。
学校健診を考える会の中心を担っている京都府長岡京市議の川口良江さんからも、私はヒアリングをさせていただきましたが、今現場では、児童生徒が健診時に乳頭を見せること、これが非常に児童生徒に対して大きな抵抗を感じているという話を聞いています。学校健診時に工夫をすることで、必ずしも乳頭を見せずに健診する方法もあるかと思います。その辺りについて文科省にお伺いします。
○日向政府参考人 お答えいたします。
文部科学省においては、令和六年一月に、学校の健康診断について、正確な検査、診察を実施するとともに、児童生徒のプライバシーや心情へ配慮する観点から、必要な留意点を示した通知を発出しております。
当該通知では、検査、診察時の服装について、正確な検査、診察に支障のない範囲で、原則、体操着や下着等の着衣、又はタオル等により身体を覆い、児童生徒等のプライバシーや心情に配慮するとする一方で、着衣では正確な検査、診察が困難になる懸念も示されていることから、必要に応じて、医師が、体操服、下着やタオル等をめくって視触診したり、体操服、下着やタオル等の下から聴診器を入れたりする場合があることについて、児童生徒等や保護者に対して事前に説明を行うことを示しております。
さらに、令和六年九月に同様の事務連絡を発出するとともに、担当者が集まる会議においても随時周知に努めており、各学校において、本通知の趣旨を踏まえ、正確な検査、診察を実施するとともに、児童生徒等のプライバシーや心情にも配慮した健康診断が実施されるよう、文部科学省としましても、引き続き、様々な機会を通じて周知に努めてまいります。
○尾辻委員 今、学校健診をめぐっては、例えば、学校医の方がパンツの中を見るというようなことがあったりとか、ハラスメント事象が何件か報道もされております。
例えば、着衣を認めない学校健診が現場でどれぐらい行われているか、こういう実態把握も私は文科省としてそろそろすべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○日向政府参考人 お答えいたします。
検査、診察時の服装について、一義的には、先ほど御答弁した通知の趣旨等を踏まえ、各学校において判断されるものであると認識しております。
この上で、お尋ねの調査を行うことにつきましては、各学校に負担になることが想定されることから、現時点で実施は考えておりませんが、いずれにしましても、児童生徒等のプライバシーや心情に配慮した正確な検査、診察が実施されるよう、文部科学省としましても、様々な機会を通じて周知に努めてまいります。
○尾辻委員 ちょっと時間が来ました。指導提要のところ、ちょっと突っ込み不足になってしまったんですが、私は、ハラスメントのところと共有のところはやはり整理をして、指導提要の見直しが必要だと思います。これは要望として伝えておきたいと思います。
以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。
○藤丸委員長 次に、梅村聡君。
○梅村委員 日本維新の会の梅村聡です。
それでは、今日、早速法案の質疑をしていきたいと思っておりますが、五月十三日火曜日の参考人質疑の中でもお聞きをしたんですけれども、今回の法案の中のカスハラ対策の強化に関して、カスハラを行った者に対する罰則、これは必要なのかどうなのか、これを参考人の方々に聴取をさせていただきました。
まず、公務員の立場からのお話は、実際にカスハラを行って、それがすごくひどい、仮処分を仮に取ったとしても、言うことを聞いてくれるかどうか分からないわけですから、やはり罰金のような何か罰則というのは要るんじゃないか、こういう意見をいただきましたし、介護現場の方も、こういった利用者の方に一定のカスハラがされた場合には罰金等があった方が効果的ではないか、こういう意見が述べられたわけなんです。
今回は、あくまでもカスハラ対策を雇用主に義務づけて対策を進めるということでありますけれども、やはり罰則の必要性、あるいはまた、今後指針を作る、今後の法律改正も含めて、そういったものは論点の中に含まれるのかどうか、これをお答えいただきたいと思います。
○福岡国務大臣 我が国における職場におけるハラスメント防止対策は、事業主と労働者との関係を規律する労働法制において、ハラスメントを個人間の問題にとどめず、効果的に取り組むため、事業主に雇用管理上の措置を講ずることを義務づける手法で行ってきたものでございます。
カスタマーハラスメントについても、罰則等で行為自体を規制するという手法ではなくて、これまでのハラスメント防止対策を踏まえ、労働法制において措置することを前提に、労働政策審議会において議論を行ってきたものでございます。
○梅村委員 今回はあくまでも罰則で規制するものではないと思いますが、それを超えていけば当然刑法で、暴行罪や脅迫罪、これを使わざるを得ないわけでして、やはり一定の論点としては今後残るのではないかということを指摘しておきたいと思います。
それでは、二点目の質問ですが、これも参考人の方にお聞きをしました。
今回、本法案の三十三条一項に、雇用管理上必要な措置、この中には仮処分命令の申立て、これは今後指針の中で定められていくものだと承知をしておりますけれども、これも参考人の方にお聞きをしました。実際に仮処分命令の申立てをするに当たっては、費用の問題、それから弁護士さんとの折衝、さらには仮処分命令を受けるための担保の提供と、事業主にも当然負担がかかってくるわけでありまして、こうしたものへの負担、こういったものをやはり軽減していく措置は必要ではないか、こういう意見が述べられましたが、この点に関してどのようにお考えか、教えてください。
○福岡国務大臣 本法案では、カスタマーハラスメント防止のため、事業主に雇用管理上必要な措置を義務づけることとしておりまして、具体的な措置の内容等については、仮に法案が成立すれば指針等でお示しすることを予定をしております。
御指摘の仮処分命令の申立ては民事保全法に基づくもので、実際に活用されている例もあると承知しておりますが、事業主が講ずる具体的な措置であったり取組例を指針等でお示しする際に、どういった対応ができるかについて検討してまいりたいと思います。
また、社会全体で足並みをそろえてカスタマーハラスメント対策の取組を進めていくために、中小企業事業主を含め、事業主に対する支援を行うことは重要であると考えています。
このため、厚生労働省においては、都道府県労働局において労働者や事業主からの相談に応じ必要な指導等を行うとともに、個々のハラスメント事案に関して労務管理に精通する専門家が事業主や人事労務担当者等からの相談に応じ、速やかにハラスメント事案を解決するための対応策を助言する事業を今年度から実施することとしております。
こうした取組を通じて、実効あるカスタマーハラスメント対策の推進を図ってまいりたいと考えています。
○梅村委員 法的な面、公的な面で、是非サポートができる体制をお願いしたいと思います。大企業だけができて中小企業ができない、これは最悪な形になってしまいますので、是非そこもお願いしたいと思います。
それでは、参考人の方からお聞きした話が続くんですけれども、今度は、介護現場の話も聞きました。随分いろいろなハラスメントが実際には起きている。前歯を折られたり目を突かれたりとか、いろいろなことがあるというお話もありましたけれども、では、仮にそういった著しいハラスメントが行われて、利用者さんはもう来ないでくださいね、あるいは職員は行きませんよとなった場合には、これは当然、介護サービスはそこで停止することになるかと思います。
一般的にはほかの業者を紹介するという手もあるのかもしれませんが、一方で、介護保険というのは市町村が保険者として責任を持ってサービスを提供する責務を負っておりますから、こういったことが起こってきた場合には誰がどのように責務を負っていくのか、これを少し整理をして教えていただきたいと思います。
○黒田政府参考人 お答え申し上げます。
介護保険は市町村が保険者として運営されているもの、先生の御指摘のとおりです。同様に、事業者の方々にも一定の責務を担っていただいていますので、その組合せでということになろうかと存じます。
まず、事業者の方々につきましては、利用者に適切なサービスを自ら提供することが困難であるという場合には、居宅介護支援事業者への連絡、ほかの施設、事業所の紹介等々、必要な措置を速やかに講ずるということが基準上は求められておりまして、そういったことは行っていただくことが前提となります。
その上で、事業所だけの力でなかなか難しいという場合には、先生御指摘のとおり、保険者である市町村、それから事業所の指定権者である都道府県などとの連携をしながらサービス確保と、それから、できますれば、そういった行為がやんでいくような取組と併せてお願いしていくということになろうかと存じます。
法制上の権限で申しますと、介護保険の保険者としての責務もございますし、それから、老人福祉法に基づいて、最終的には措置の権限というものも市町村にはございます。ただ、権限をいたずらに行使するということが目的ではございませんので、その手前の様々な調整も含めて、事業者と保険者、それから指定権者である都道府県が連携をして対応していくということが想定されております。
○梅村委員 都市部は何らかの対応ができると思いますが、やはり地方は介護事業者そのものが少ないという面もあるかと思いますので、その辺りのサポートもしっかりお願いをできればと思っております。
それでは、最後の質問になりますけれども、今度は医療機関でのカスハラということで、これは実は、令和元年十二月二十五日の医政局通知の中で、いわゆる医師の応招義務、ですから、ハラスメント行為があったときに診療を断ることが医師の応招義務違反に当たるのか当たらないのか、これに関して通知が出ておりまして、患者の迷惑行為については診療拒否をしても応招義務違反には当たらないということがなされております。
しかし一方で、これは必ずしも医師、患者だけではなくて、医療機関のスタッフがカスハラを受けて、そして医師である事業主の院長が、それだったら、その患者さんは医療機関の中にもう入ってもらわないようにしようと。これは医師と患者関係ではなくて医療機関と患者関係になるんですけれども、この場合でも、著しいカスタマーハラスメントが起こった際に診療を拒否しても医師法違反に当たらないのかどうか、この確認をお願いしたいと思います。
○田中政府参考人 先生の方から御指摘がありましたように、医師法等におきまして、診療に従事する医師又は歯科医師は、診療、治療の求めがあった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならないとされているところでありまして、正当な事由がある場合には、患者を診療しないことが正当化される場合がございます。
これに関しまして、御指摘のありました令和元年の医政局長通知で、具体的にどのような場合に診療しないことが正当化されるのかについて考え方を整理をしておりまして、その具体的事例の一つとして患者の迷惑行為を挙げて、診療内容そのものと関係ないクレームを繰り返し続けるなどの、診療、療養等において生じる患者の迷惑行為の態様に照らして、診療の基礎となる信頼関係が喪失している場合には、新たな診療を行わないことが正当化されることをお示しをしてございます。
今後、本法案で指針を制定していくことになりますけれども、こうした指針等の策定に当たっては、御指摘のような応招義務のように、顧客等への対応に関して業法による規律がなされている場合もありますので、そういう場合にも留意をしながら検討してまいりたいと考えております。
○梅村委員 いずれにしても、画期的な体制をつくる法案だと思いますので、これから指針作りを含めてよろしくお願いをしたいと思います。
私からは以上です。ありがとうございました。
○藤丸委員長 次に、阿部圭史君。
○阿部(圭)委員 日本維新の会の阿部圭史でございます。
まず、労働施策総合推進法改正案について伺います。
治療と仕事の両立支援の推進という項目がございまして、これは非常に重要な話だと思っております。
超高齢社会において、高齢者の就労の増加、そして更なる促進を行っていかねば我が国の労働力はもたないというふうに思っておりまして、また、医療技術の進歩によって、例えば抗がん剤についても入院しなくても外来でできるようになってくるなど、ふだんの生活と両立ができるようになってきております。
そのような観点から、事業主に対して、職場における治療と就業の両立を促進するため、必要な措置を講じる努力義務を課すということに今回なっております。これは、今後の我が国の社会において非常に重要な指摘だと思っておりまして、ただ一方で、懸念もあるかなと思っております。
ここで大臣にお伺いしますが、こういった努力義務を課すということについて、事業主の人数要件はございません。ただでさえ、かつかつで経営しておりまして企業体力がない中小企業に対して、今回、過度な負担とならないかという懸念がございますけれども、そういった配慮はどのようなものがございますでしょうか。
○福岡国務大臣 治療と仕事の両立支援の取組は、中小企業にとっても、人材確保や生産性向上、企業の成長という観点から重要であるというふうに考えております。
この改正案では、事業主に対して、治療と仕事の両立支援のための必要な措置を講じる努力義務を新たに設けることとしておりまして、事業者の実情に応じて、可能なことに取り組んでいただくように努めることをお願いしておりまして、過度な負担とはならないというふうに考えております。
中小企業におかれては、どのように取組を進めればいいのか分からないといった課題もあるというふうに考えられますため、各都道府県の産業保健総合支援センターによります専門的研修、相談対応、事業場への訪問による制度導入等の支援などの技術的な支援などの対応も行ってまいりたいと思います。
○阿部(圭)委員 いろいろ御配慮いただけるということですけれども、やはり、企業体力のない中小企業の経営者が、社員の病気に伴う就労支援の際に、社員の稼働に合わせて給与を減らした場合ですとか、これは通告の二問目と三問目を一緒にお伺いいたしますけれども、給与を減らした場合ですとか、例えば解雇又は自己都合退職となった場合に、どのような問題が発生し得るとお考えでしょうか。
これは努力義務が課されるというものでございますので、そういったことが発生した場合に、裁判になった場合、どのような法的問題となって議論されることが想定されているんでしょうか。大臣、お願いいたします。
○福岡国務大臣 給与削減と解雇ということでございます。両方申し上げさせていただきます。
今般、企業の努力義務となります治療と仕事の両立支援は、具体的な措置の在り方を一律に定めるものではなく、企業ごとに様々な取組があり得ます。
例えば、通院に対応するために時間単位の年次有給休暇の仕組みを設けたり、また、法定の年次有給休暇とは別枠で病気休暇の仕組みを整備することなどが考えられますが、法定の年次有給休暇とは別に病気休暇を設ける場合に、これを有給とするか無給とするかにつきましては特段の規制がないことなどから、労使でよく話し合って取扱いを決めていただくことが望ましいと考えております。
治療に伴い就労できなかった場合の賃金の取扱いについては、労働者が訴訟を起こした場合、民事問題であり、断定的なお答えは差し控えさせていただきますが、一般論として申し上げれば、事業主は就業規則等の定めるところに従って対応していれば足りると解されます。このため、仮にこの法案が施行され、治療と仕事の両立支援が企業の努力義務となったとしても、その解釈は変わらないというふうに考えております。
そして、労働契約法第十六条におきまして、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」とされています。労務提供が困難になったことは解雇理由の一つになり得るものと解されていますが、その場合でも、業務内容であったり勤務時間などに企業として可能な配慮を行えば就労が可能な場合には、解雇に先立ってそのような配慮が求められた裁判例もあると承知をしております。
仮に、今回の改正法が施行され、治療と仕事の両立支援が企業の努力義務となった後に、治療との両立が困難となった労働者が解雇された場合、その有効性は、労働契約法の規定に照らして司法で個別に判断されるものと認識しております。
○阿部(圭)委員 ありがとうございます。
治療と仕事の両立、重要な問題でございます。是非とも、進めるに当たって、労使双方に配慮していただいて政府として進めていただければなというふうにお願いを申し上げます。
次に、終末期医療について伺いたいと思います。
医療現場における終末期に関する概念として、ACP、アドバンス・ケア・プランニングというものがございます。終末期における医療の選択肢について、事前に話し合い、自分の価値観や希望を伝え、尊重されるように促すプロセスのことです。
また、DNAR、ドゥー・ノット・アテンプト・リサシテーションというものもありまして、これは、心肺停止の際に、患者本人又は患者の利益に関わる代理者の意思決定を受けて、心肺蘇生法を行わないことでございます。私も、医療現場で、終末期の患者さんの御意思に従ってDNARの指示書を取った経験もございます。
大臣、通告しておりませんけれども、患者さんでDNARを取っていらっしゃる方にお会いされたことというのはございますでしょうか。
○福岡国務大臣 多分、私、様々な方と接する中で、そういう方と接している可能性はあると思いますが、明示的に、そのような方から、私はそういった意思を持っているということを承ったことはございません。
○阿部(圭)委員 ありがとうございます。
是非、これは終末期において非常に重要な取組ですので、一度現場を見ていただきたいなというふうに思っております。
そこで、お伺いしますけれども、このACPやDNAR、非常に重要ですが、法令上の概念はどのようになっているんでしょうか。定義がありましたら教えてください。
○福岡国務大臣 御承知の上でお問合せだと思いますが、御指摘のACPであったりDNARにつきましては、法令上の定義はございません。
一方で、ACPにつきましては、人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドラインに関する解説資料において、人生の最終段階における医療、ケアについて、本人が家族等や医療、ケアチームと事前に繰り返し話し合うプロセスとお示しをしてございます。
DNARにつきましては、厚生労働省の検討会で取りまとめられました人生の最終段階における医療・ケアの普及・啓発の在り方に関する報告書において、百科事典を引用し、心停止又は呼吸停止に陥った患者に対して蘇生の処置を試みないように記載した医師の指示書と示されているところでございます。
○阿部(圭)委員 今お答えいただいたように、法令上の定義はないけれども、行政施策上の定義といいますか、引用はあるということだと理解をいたしました。
今後、超高齢社会の多死社会ということで、終末期の問題はいろいろ問題になってくると思いますけれども、これは法令上の定義がない中で、行政施策上の定義があるという状況で、ACPとDNARを所掌している部局というのは具体的にどこになるんでしょうか。厚生労働省の中でお答えください。
○福岡国務大臣 ACP及びDNARに関する取組につきましては、基本的に厚生労働省の医政局が所掌をしてございます。
一方、こうした取組の具体的な推進に当たりましては、人生の最終段階における医療、ケアに関しては、疾患の種類や状況、状態に応じた対応が求められ、また、診療報酬や介護報酬等に反映することも検討対象となりますことから、医政局のみならず、他の関係部局も連携の上、取組を進めているところでございまして、省全体で取り組んでまいりたいと思います。
○阿部(圭)委員 是非頑張っていただきたいと思いますが、医療法、今回改正がなされるということで議論がされておりますけれども、全国の医療機関等において電子カルテ情報を共有、閲覧できるようにするという論点がございますが、その共有の対象は三文書六情報というふうに言われております。この三文書六情報の中で、非常に医療現場にとって重要なACPですとかDNARは含まれておりません。終末期の患者の意思であるこの二つのものについては非常に重要であることは、医療現場を経験した方であればよくお分かりだと思いますし、実際、そのような御意見もいただきます。
医療現場の意見に鑑み、三文書六情報に加えて、このACP、DNARに関する文書も共有、閲覧できるようにすべきというふうに思いますけれども、大臣、お考えをお聞かせください。
○福岡国務大臣 電子カルテ情報共有サービスで共有する三文書六情報につきましては、有識者による検討や医療現場等におけるニーズ調査を踏まえ、外来や救急診療の現場でニーズの高い情報として設定したものでございます。
共有する情報の範囲につきましては、今後、医療DXの推進に関する工程表にのっとり順次拡大していくということとしておりまして、現在、透析の情報、蘇生処置等に関する情報、歯科や看護の情報等を共有可能とするよう標準規格化を進めているところでございます。
今後も、共有すべき情報の拡大に当たりましては、共有の必要性や現場の負担などについて医療関係者の方々の意見をよく聞きながら、検討を進めてまいりたいと思います。
○阿部(圭)委員 今、蘇生処置等に関する情報というお答えがございましたけれども、これにDNARは入っているんでしょうか。
○内山政府参考人 お答え申し上げます。
蘇生処置等に関する情報の中に、今御質問のありましたDNARの情報も含まれ得るというふうに考えてございます。
○阿部(圭)委員 ありがとうございます。
非常に重要な情報ですので、是非拡大してやっていただきたいなと思っております。
次に、終末期における緩和ケアについて伺いたいと思いますが、その前に大臣に、これは通告しておりませんけれども、四月の私の質問で、戦後八十年に際して、安倍総理の戦後七十年談話について船橋洋一先生が記した「宿命の子」は読みましたかということで御紹介をさせていただきましたけれども、その後、読む時間はございましたでしょうか。
○福岡国務大臣 大変申し訳ございません。その後も何かと、言い訳がましいですが、様々なことに忙殺されておりまして、まだそれを手にする余裕がなかったということでございます。
○阿部(圭)委員 非常にお忙しくされていると思いますので難しいと思いますけれども、国会が終わって参議院選挙が終わったら比較的余裕も出ると思いますので、是非読んでいただきたいと思いますが、是非、八月の前にお願いいたします。
一方で、この本はお読みになっていらっしゃるというふうに、熟読されていらっしゃるというふうに思いますが、堀川恵子さんという方が書かれた「透析を止めた日」という本ですね。
これは皆さんにも御紹介をさせていただきたいと思いますけれども、多発性嚢胞腎を患って、腎不全、血液透析に至り、途中腎移植を行いましたが、後に、その移植腎も廃絶し、末期腎不全と末期肝不全で血液透析を再開、最後は、血液透析の苦痛に苦しみながらも、十分な緩和ケアを受けることができずにお亡くなりになられた方のお話でございます。著者は、その方の奥様でいらっしゃいます。
この本では、緩和ケアを始めとする終末期の医療に関する問題提起がなされていると理解をしておりまして、大臣、厚労省の局長の皆さんに、この一冊、読むようにというふうにおっしゃられたというふうに伺っておりますけれども、通告しておりませんが、どのような思いで紹介されたかというのを、もしお答えできることがございましたらお願いいたします。
○福岡国務大臣 私がそれを手にするというか読ませていただくきっかけにつきましては、堀川様の御主人というか亡くなられた方が私の大学の剣道部の先輩に当たられるというようなこともあり、そういったこともあって、その問題意識を本を読んで共有させていただいたということでございます。
○阿部(圭)委員 ありがとうございます。
まさに身近な方のお話ということですけれども、私も、これまで何人もみとってきた経験もございますので、実際、こういった終末期をどうするかということについては恐らく同じ思いを抱いていると思いますので、その観点から伺いたいと思います。
皆さん、資料一を御覧ください。緩和ケアチームによる手厚い緩和ケアを提供するに際して診療報酬上評価している対象患者について、私の方で整理をさせていただいたものです。
緩和ケア病棟では、がんとエイズ以外、緩和ケア病棟入院料は算定できません。右側を見ていただきまして、緩和ケア病棟以外の病棟では、がん、エイズ、末期心不全以外は緩和ケア診療加算は算定できないというのが今の緩和ケアに関する診療報酬体系になっております。
これを踏まえて大臣にお伺いしたいと思いますが、入院及び外来で緩和ケアチームによる手厚い緩和ケアを提供するに際し診療報酬上評価している対象患者については、一つ目、がんとエイズを緩和ケア病棟で診た場合と、二つ目、がん、エイズと末期心不全を緩和ケア病棟以外の病棟で診た場合の、この二パターンという理解で、これで合っていますでしょうか。
○鹿沼政府参考人 お答えいたします。
緩和ケアの診療報酬の体系については、先生のこの資料にあるような整理だというふうに思っております。
○阿部(圭)委員 ありがとうございます。
これを見ていただくと分かるように、がんとエイズが緩和ケア病棟入院料の対象となっていて、末期心不全が対象となっていない。一方で、緩和ケア病棟以外の病棟だと、緩和ケア診療加算ということで末期心不全が対象になっておりますが、末期心不全が緩和ケア病棟で対象となっていないという合理的な理由は何があるんでしょうか。
○福岡国務大臣 末期心不全の患者さんにつきましては、平成三十年度の診療報酬改定で緩和ケア診療加算の対象に、また、令和二年度の改定で外来緩和ケア管理料の対象に、それぞれ加えたところでございます。
これは、末期心不全の患者さんにつきましては、比較的長期間にわたり、心不全に対する専門的治療を継続しながら、併せて緩和ケアを提供する必要がありますため、緩和ケアを中心に行う病棟よりも、心不全患者の治療を行う病棟において、緩和ケアチームと連携しながら対応することが望ましいとの考えによるものでございます。
質の高い緩和ケアに対する診療報酬上の評価につきましては、関係学会の意見なども踏まえながら、引き続き中医協において議論してまいりたいと思います。
○阿部(圭)委員 末期心不全については理由があるというふうなお答えがございましたけれども、それでは次に、なぜがんとエイズだけが緩和ケア病棟入院料の対象となっているのか。
例えば、この本にございます、この患者さん、大臣の先輩ですけれども、末期腎不全と末期肝不全で最後は苦しまれたということですが、末期腎不全、末期肝不全が対象となっていないのは何でなんでしょうか。
○福岡国務大臣 緩和ケア病棟入院料につきましては、平成二年度の診療報酬改定において新設され、その後、中央社会保険医療協議会での議論も踏まえて見直しを行ってきたところでございますが、末期腎不全であったり末期肝不全などの患者さんは対象となっていないところでございます。
非がん患者さんにおけます緩和ケアについては、診療報酬での評価の議論に先立って、まずは、提供すべき緩和ケアの内容であったり構築すべき提供体制について、それぞれの疾患を専門とする学会と緩和ケアを専門とする学会において十分に議論し、コンセンサスやエビデンスを整理していただく必要があると考えております。
末期腎不全であったり末期肝不全を含む非がん患者さんに対します緩和ケアにつきましては、関係学会での議論を促してまいりたいと考えています。
○阿部(圭)委員 がん患者と非がん患者は一定程度違うということで御説明をいただきましたけれども、それはあくまで医療提供者の視点であって、患者の視点ではないというふうに思います。やはり、患者の視点ですと、まさにこの本にもあるとおり、苦しんでいる方は苦しんでいるということですので、やはり患者の視点でやっていただくというのが大事なのではないかなと思います。
ですので、大臣に是非お考えをお伺いしたいと思いますが、緩和ケアが必要な患者に対して、緩和ケアチームによる手厚い緩和ケアをあまねく提供できる機会を確保する必要があると思いますけれども、いかがお考えでしょうか。
○福岡国務大臣 御指摘がありましたように、疾患にかかわらず、緩和ケアを必要とされる患者さんが適切に緩和ケアを受けられるようにするということは大変重要な観点であるというふうに考えています。
特に、単なる身体的痛みを超えた苦痛など、多職種で構成される緩和ケアチームによる専門的な対応が必要な場合もあるというふうに考えています。このため、様々な医療職種が緩和ケアに関する基本的な知識を習得することができるように、医師、看護師、薬剤師等の医療従事者を対象に、がんを中心に、がん以外の内容も含めて緩和ケア研修を実施をしているところです。
また、専門的な緩和ケアにつきましては、日本緩和医療学会を中心として、緩和ケアチームに関する手引を作成し、教育セミナー等による人材育成を通じて、がん以外の疾患患者さんにも対応できる緩和ケアチームの養成に取り組んでいるというふうに承知をしております。
腎不全も含めて、疾患に関係なく、緩和ケアを必要とされる方々が適切な緩和ケアを受けられるように、関連学会ともしっかり連携しながら取組を進めてまいりたいと思います。
○阿部(圭)委員 是非進めていただきたいなと思っておりまして、今年の秋以降に診療報酬改定の議論も非常に活発になるでしょうから、是非ともそういったところで対応いただきたいというふうに思っております。
次に、マイナポータル期間連携APIについて伺います。
資料五を御覧ください。マイナポータルAPIについて書いたものですが、マイナポータルAPIとは、マイナポータルと外部民間サービスとをAPIでつなぎ、情報連携させることで国民の利便性を向上するものでございます。
次に、資料六を御覧いただきますと、このマイナポータルAPIの中で、昨年十二月八日に開始されたマイナポータル期間連携APIについて書いておりまして、これは、マイナンバーカードをかざして本人が同意することにより、マイナポータルAPIから民間のサービスに連携されるデータについて、一定期間継続的に更新できるという仕組みでございます。
これは医療分野だけ今行われておりまして、マイナポータル医療保険情報APIというふうになっておりますけれども、時間が来たのでということですが、これは非常に重要な取組だというふうに思っておりまして、国民の利便性を向上する上で、是非とも医療保険以外のことについても使えるように拡充をしていただきたいというふうに思っておりまして、今日は私の質問を終わらせていただきますが、また改めて質問させていただきたいと思います。
どうもありがとうございました。
○藤丸委員長 次に、森ようすけ君。
○森(よ)委員 国民民主党の森ようすけでございます。
本日は、質疑の時間をいただき、ありがとうございます。
本日は労働施策総合推進法の改正の議論ということで、今回、併せて女性活躍推進法についても改正がされているところです。この改正内容としては、男女間の賃金差異でしたり女性管理職比率、こうしたものを情報公開を義務づけするような規定が定められておりますが、その中でも、本日は、えるぼし認定に関わる点について質疑をさせていただければと思います。
えるぼし認定については、女性活躍の推進において、より優良的な取組をしている企業に対して認定を与えるような仕組みでございますが、いろいろその効果がございまして、公共調達において加点が設けられることであったり、あと、えるぼし認定を受けているというようなマークをいろいろな商品であったりサービスに付与することができる、こうした効果が定められるえるぼし認定というところがございます。
今回の改正では、えるぼし認定について、特に優良な事業者を指定するプラチナえるぼしの認定要件に、就活生に対するセクハラ、こうしたものを導入するというようなところでございます。これ自体は非常にいい方向性だというふうに認識はしているんですけれども、えるぼし認定についてはまだまだ改善の余地があるなというふうに個人的に考えているところでございます。
それで、まず基本的なところについてお伺いしたいんですけれども、えるぼし認定というのは、取組の状況によって、えるぼし認定の一から二、三とあって、それに加えてプラチナえるぼしというふうに、四つの段階があるというふうに認識しているんですけれども、それぞれに対して、認定企業数と、あと全体に占める割合、こちらを教えていただけますでしょうか。
○田中政府参考人 お答えいたします。
御指摘のえるぼし認定の取得企業数でございますが、令和六年九月末時点の数字を申し上げますと、全国で三千四十一社になっております。このうち、認定の段階の一段階目、十六社で、全体に占める割合は〇・五%、二段階目が九百五十九社で、割合が三一・五%、三段階目は二千六十六社で、割合は六七・九%となっております。
また、えるぼし認定企業のうちで特に優良である企業、プラチナえるぼし認定ですけれども、この取得企業数は六十八社で、割合としては二・二%となっております。
○森(よ)委員 御答弁いただき、ありがとうございます。
今説明いただいたとおり、認定段階としては三段階目の三のところが多くて、一方で、特に優良な事業者のプラチナのところはかなり数が少なくて六十八ですかね、これは全体に占める割合は二%程度ということで、特に優れている事業者を認定するので、二%が多いのか少ないのか、ここは一定の判断はあると思うんですけれども、いずれにせよ、六十八社という数自体は少ないなというふうに聞いて感じたところでございます。
これはさっきも話したんですけれども、認定を受けると、その段階ごとによって効果が様々あって、もちろん、プラチナになればなるほど、上になればなるほど、加点の点数が増えたり、いろいろこういうふうに効果が出てくるわけなんですけれども、一方で、要件がなかなか厳しいんじゃないかという声も出ているというふうに思っております。プラチナに認められる上では様々要件が設けられていて、女性の管理職比率であったりとか、あと女性の勤務継続年数であったり、こうした要件が、普通のえるぼしと比べるとプラスで満たさないといけないことであったりとか、要件が結構厳しく設定されているというふうに考えております。
そうした中で、大臣にお伺いしたいんですけれども、プラチナの数が六十八社であるということに対して、要件が厳し過ぎるから少ないというふうに捉えているのか、それとも、インセンティブがなかなか小さいから増えてこないのか、どういったふうに捉えていますでしょうか。
○福岡国務大臣 プラチナえるぼしに特化したデータがないので大変恐縮ですが、厚生労働省が令和五年度に実施しました女性活躍に関する調査によりますと、プラチナえるぼし認定を含むえるぼし認定を企業が取得しない理由といたしましては、マークの存在を知らなかったことであったり、そもそもマークを取得することによるメリットを感じなかったこと、自社の指標が一段階目の認定の取得基準に達していなかったことなどを挙げている割合が高いと承知をしております。
えるぼし認定制度の認知度の向上と、認定を取得することによるメリットの周知が必要であると考えておりまして、パンフレットであったりリーフレット等による周知などを通じて、認定の取得促進を図ってまいりたいと考えています。
○森(よ)委員 御答弁ありがとうございます。
アンケートの結果を報告いただいたんですけれども、おっしゃるとおりで、直近、これは二〇二三年に調査をしているというふうに思っていて、その前は五年前の二〇一八年にアンケートがされております。
マークの存在を知らなかったというところを最初に挙げていただきましたが、これは三百人以上の企業でいえば、直近の調査では知らない事業者というのは一七・九%で、五年前の二〇一八年の調査で見ると三一・七%ということで、五年過ぎたことによって、割とこの割合は減ってきて、周知は結構進んできているんだなというのがアンケート結果から読み取れるところです。
ただ、ちょっと一方で気になるところは、そもそもマークを取得するメリットを感じなかったというようなアンケート項目もあります。この項目については、直近の調査では、大企業、三百人以上の企業に関しては、三七・六%の企業がメリットを感じていなかったと。これは結構多いなというような肌感があるのと、その前の二〇一八年の調査では、これは二七%だったんですね。なので、この五年を経て、メリットを感じない事業者が一〇%ポイント程度増えているというのが、結構これは深刻な問題だなというふうに感じていて、認知が進んだ一方で、メリットを感じない事業者が更に増えていっていることになるので、やはりこれはインセンティブのつけ方に一定の課題があるなというふうに感じているところでございます。
そして、加えてなんですけれども、今回、法改正において、就活生に対するセクハラに対する取組を公表しているかどうかというところがプラチナの要件に含まれることになりましたが、今、事業者数でいうと、さっきお伝えしたとおり六十八社しかプラチナがいないわけですから、プラチナの要件を厳しくしたとして六十八社しか対象にならないというか、厳格な要件が認められる事業者として数がかなり少ないので、今回、この改正による効果が極めて小さいのではないかなというふうに感じているところでございます。
なので、方向性自体はいい方向だと思うんですけれども、まずはプラチナのえるぼしの認定企業数を増やしていくことが重要だと思いますので、インセンティブを更に強くしていく、こうしたことが必要だというふうに考えているんですけれども、御見解はいかがでしょうか。
○福岡国務大臣 この法案におきましては、求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止のために事業主が講じている措置を公表することが、求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止に資するものであり、また、求職者の企業選択に資するものでもあることから、これを女性活躍の推進に関する取組が特に優良な事業主に対する特例認定制度の認定要件に追加することとしているものでございます。
そして、インセンティブが必要だという御指摘がありました。
プラチナえるぼし認定を含めまして、えるぼし認定の取得促進に向けましては、認定を取得している企業名などの公表であったり、求職者に対する周知を通じた認定制度の認知の向上に努めるとともに、事業主に対する、認定を取得するメリットの周知を図っております。
また、その認定取得のメリットの一つであります公共調達における優遇措置に関しまして、これまで、国の機関における加点評価の実施状況等を踏まえながら、各機関における取組実施の更なる促進を図っていくこととしておるところでございます。
○森(よ)委員 御答弁ありがとうございます。
多分、今までの取組と延長線の取組をしても、なかなかメリットを感じる事業者は増えてこないと思うので、結構抜本的なインセンティブをつけないといけないなというところで、公共調達のところも話していただきましたが、その点ちょっと本日の後半でお伺いさせていただければと思っているところでございます。
そして、この女性活躍の推進については、日本全国津々浦々、全ての企業に対して女性活躍の推進を図っていく必要があるというふうに考えております。
そこで、ちょっとまず基本的なところをお伺いするんですけれども、えるぼしの認定企業数、都道府県ごとに認定企業数を公表されていると思うんですけれども、そのうち全国に占める東京都の企業数の割合、そして東京都の企業数、これを教えていただけますでしょうか。
○田中政府参考人 お答えいたします。
同じく令和六年九月末時点の数字になりますが、えるぼし認定の取得企業三千四十一社のうちで、本社が東京都に所在する企業は千四百九社でございまして、割合は四六・三%になっております。
○森(よ)委員 御答弁ありがとうございます。
四六・三%が東京の企業というのは、聞いたらすごい多いなと思って、やはり全国でしっかりと、特に地方において女性の活躍というのはしっかり進めていかないといけないと思う一方で、このえるぼしというような制度においては、東京にかなり偏っている、取組が偏っているような現状になっていると思います。
そこで、もう一点お伺いするんですけれども、東京に偏っている要因について、どのように捉えていますでしょうか。お願いいたします。
○田中政府参考人 お答えいたしましたように、えるぼし認定の取得企業、東京に多く所在をしております。この理由につきまして一概に申し上げることは難しいのでございますが、その上で、考えられる要因として申し上げますと、まず、えるぼし認定、事業所単位ではなくて企業ごとの申請になりますので、一定規模以上の企業の本社は東京に集中していること、それから、女性活躍推進法を十年前に制定を施行しましたが、その当時は、常時雇用する労働者数が三百一人以上の企業に行動計画策定の義務がありまして、そうした大企業は東京に多く所在をしているということで、早い段階から取り組まれた企業というのが東京に多くて、その取組が実を結んで認定を受けるというようなことも多かったのではないかというふうに考えております。
○森(よ)委員 御答弁ありがとうございます。
企業規模が大きいところは東京に所在する確率、割合が多いということで、それが一要因じゃないかというふうにいただいたんですけれども、今後においては、多分、小さな企業においても女性活躍を推進していくことは大事だと思いますので、しっかりフォローアップをしながら、東京に偏り過ぎないような状況、進捗になっているかというところを是非見ていただきたいなと思っております。
その上で、えるぼしの取組を地方に広げていくためには、これもやはり、あめの部分をおいしくしていくことが必要だというふうに考えております。もちろん、えるぼしの認定を受けていなくても女性活躍に取り組んでいる企業というのはあるので、えるぼしの数だけで一位と見るのは、それが正しいのか正しくないのか、いろいろ考え方はあると思うんですけれども、一つの指標として、全国の都道府県各地においてえるぼしの認定企業数を増やしていくというふうなことを、是非進めていただきたいと思っているんです。
先ほど大臣からも御答弁いただいたとおり、今、国における調達において加点の取組がされているところでございます。これを全国に広げていくためには、国の調達だけではなくて地方自治体の調達においても、こういったえるぼしであったり女性活躍の推進に取り組んでいる企業を優遇、加点するような仕組みが必要だというふうに考えているんですけれども、そうした方向性について、いかがでしょうか。
○福岡国務大臣 地方における女性活躍の推進は大変重要な課題であるというふうに考えております。今回の改正では、常時雇用する労働者数百一人以上の事業主に対して男女間賃金差異等の情報公表を義務づけることとしておりまして、地方に多い比較的規模の小さな事業主も新たに義務の対象となることから、これを契機として、女性活躍の推進に関する取組の裾野を広げ、えるぼし認定を取得する企業の増加につなげていきたいと考えています。
また、労働政策審議会の建議におきましては、女性活躍の推進に取り組む事業主にえるぼし認定を積極的に取得していただけるように、制度の趣旨に留意しながら認定基準の見直しを行う旨が盛り込まれておりまして、今後、具体的な内容について検討を行ってまいりたいと思います。
なお、御指摘の地方自治体の調達につきましては、女性活躍推進法において、地方公共団体は、国の施策に準じて、えるぼし認定企業等の受注機会の増大等に努めるものとされておりまして、内閣府において、地方公共団体における取組を促しているものというふうに承知をしております。
引き続きまして、地方における女性活躍に向けた取組を、内閣府とも連携しながら推進してまいりたいと思います。
○森(よ)委員 ありがとうございます。
地方自治体において準じた仕組みを進めていくことというような答弁もいただきましたが、しっかり、えるぼしといういい仕組みがあるので、それをベースに使いながら、内閣府とも連携しながら取組を進めていただきたいなと思っているところでございます。
そして、公共調達の部分について少し深掘りをしてお伺いしていきたいんですけれども、現在、調達においては、ワーク・ライフ・バランスの推進というところで、このえるぼしに加えて、子育ての推進に取り組んでいる企業、くるみんの認定というのもあって、えるぼしとくるみんを一体的に加点要素として捉えているような仕組みが国において導入されているところでございます。
そこで、まずお伺いするんですけれども、調達において、ワーク・ライフ・バランスの取組、こうしたものを考慮している事例として、国の全体の調達に占める金額と件数、そして物品、役務と公共工事、それぞれ数字があると思うんですけれども、そちらについてお伺いいたします。
○原政府参考人 お答えいたします。
お尋ねの、国の機関が実施する調達のうち、加点評価の取組を実施した調達ですけれども、令和五年度の実績では、物品、役務等については、金額では約一兆二千八百億円で九八・〇%、件数では約九千二百件で九八・六%の実施割合となっております。公共工事等については、金額では約一兆一千六百億円で三三・七%、件数では約四千四百件で一八・六%の実施割合となっております。これらを合わせた全体では、金額で約二兆四千四百億円で五一・五%、件数では約一万三千六百件で四一・三%の実施割合となっております。
○森(よ)委員 御答弁ありがとうございます。
この数字を聞いて思うのは、物品、役務に関してはほとんど一〇〇%、進捗というか実施がされている一方で、公共工事の割合がまだまだ低い。金額ベースでいうと三三・七%、件数ベースでいうと一八・六%と、かなり進捗が悪いなということで、少しずつ増えてはいっていると思うんですけれども、なかなか、物品、役務の調達と比べて、公共工事における加点というのは進捗が芳しくないなというふうに感じているところでございます。
そこで、公共工事の状況がよくない理由について、どのように捉えていますでしょうか。
○原政府参考人 お答え申し上げます。
公共工事等については、加点評価を実施した調達が一〇〇%の機関がある一方、発注額の多い国土交通省の実施率が低いことから、政府全体の実施率が低くなっております。
国土交通省におきましては、建設業はそもそも女性の割合が少なく、特に中小企業が多い地方における、女性を積極的に採用したいが応募が少なく、継続採用が困難との声を踏まえ、まずは加点評価の対象を先行的に大規模工事に限定して実施するとともに、中小企業における取組への理解促進を図ってきております。
こうした経緯も踏まえ、今年度中にその対象を広げ、基本的に全ての工事を対象にワーク・ライフ・バランスの加点評価を実施することとし、現在準備を進めていると承知しております。このため、今年度以降の公共工事における実施率は改善していくことが期待されております。
内閣府としては、国土交通省とも連携しながら、公共工事において更なる加点評価の実施が進むよう取り組んでまいります。
○森(よ)委員 御答弁ありがとうございます。
今年度からは一〇〇%を目指してやるということで、基本的に、じゃ、フォローアップをすると一〇〇%に近い数字が出てくるという認識でよろしいんでしょうか。済みません、もう一度お願いいたします。
○原政府参考人 お答え申し上げます。
これまでの経緯を踏まえて、今年度中に対象を広げ、基本的に全ての工事を対象にワーク・ライフ・バランスの加点評価を実施することとし、現在準備を進めていると承知しております。今年度から、基本的に全ての工事を対象に実施するということを聞いております。このため、今年度以降の公共工事における実施率は改善していくことが期待されております。
○森(よ)委員 ありがとうございます。
基本的にというのが少しひっかかるんですけれども、やはりこれは鶏と卵の問題だと思うんですけれども、おっしゃるとおり、なかなか公共工事、この建築分野において、建設分野において女性の就業者の数がそもそも少ないであったり、希望する方が少ないので、一足飛びにこれを要件にするのはなかなか業界の慣習上難しいというところも理解はできるんですけれども、あくまで政府として女性活躍を推進している以上は、しっかり、その基本的にというところで、どこまでか分からないですけれども、しっかりと一〇〇%を目指してやっていただきたいと思うので、数字については私もまた見ていきたいなというふうに感じているところでございます。
最後、あめの部分、インセンティブのところをお伺いさせていただきたいんですけれども、やはり単なる加点では、企業側からするとメリットを感じないというふうに捉えているんだと思います。なので、例えば、試行的にではあるんですけれども、えるぼしを取っていることを条件にするとか、こうした取組を例えば内閣府においてだけやっていくとか、内閣府の男女共同参画局の調達においてだけはえるぼしを義務にしていくとか、何かそういった抜本的なインセンティブというのも一つ方向性としてはあるかなというふうに考えているんですけれども、その点、副大臣、いかがでしょうか。
○辻副大臣 先ほどから議論になっている公共工事に関する調達を始め、加点評価等では更なる実施余地があると考えているんですね。
政府としては、現在、国の機関における実施状況や競争参加者の特性等を踏まえつつ、各機関における実施を促進しているところで、委員が今御提案のそういった試行的な取組については、いろいろ御提案も参考に、どのようなインセンティブの強化が可能か、関係府省の御意見も聞きながら研究させていただきたいと思います。
○森(よ)委員 ありがとうございます。
参考にしていただけるということなんですけれども、さっきのアンケート調査を見ても、効果を感じないという事業者が増えてきているので、増えてきているのはかなり何か悲しい結果だなというふうに思っていて。周知が進むのはいいんですけれども、周知が進んでそれを実行に移してもらう事業者が増えないと意味がない制度なので、是非抜本的にこのあめの部分を強くしていただければと思いますので、御検討をお願いして、私の質疑とさせていただきます。
ありがとうございました。
○藤丸委員長 次に、八幡愛君。
○八幡委員 れいわ新選組の八幡愛です。
労働施策総合推進法の改正審議が終局を迎えるということで、今日も質問させていただくんですが、今回の改正案では、今日的な課題であるカスタマーハラスメント、就活時のセクハラ対策などについて強化される点は重要であると考えますし、本法案改正に当たっても、女性活躍の推進のために、男女間の賃金格差についてなど、これまで私、委員会で質問させていただきました。
一方で、LGBTQ当事者へのハラスメントや最近少しずつ浸透してきましたSOGIハラなどへの対策強化については、はっきりと書かれていないと感じます。SOGIというのは性的指向や性自認のことで、職場での望まぬ暴露、いわゆるアウティングなどについて、SOGIハラスメントも、カスハラと同様に、令和二年、厚労省の公示第五号でパワハラと認定されています。雇用管理上の措置の対象になって、プライバシー保護を講ずることがSOGIハラ対策に当たりますが、今回、残念ながら明文化はされていません。
また、昨年十一月にフリーランス新法が施行されていますが、フリーランス新法自体にハラスメント対策などを盛り込んでいるということは理解しているんですけれども、これらについての強化も今回の法改正では明文化されておりません。
私の知人や友人はフリーランスの芸能関係者やアニメや漫画制作などに携わるクリエーターが多いんですけれども、フリーランス新法ができても、まだまだ現場ではむちゃな発注があったり、例えばキャンセルフィーが支払われていないなどの問題も起きておりまして、フリーランスという立場の弱さがなかなか改善されておりません。
フリーランスも、LGBTQ当事者への差別も、SOGIハラも、法律に明文化されることによって事業者による取組がより一層推進して、労働者保護がされ、社会全体としていかなるハラスメントも許されるものではないということがより明確になっていくと思うんですけれども、今回の改正案を御覧になったLGBTQ当事者の方やフリーランスの方などは、ハラスメント対策から自分たちの存在が忘れられてしまっているんじゃないかなと感じたのではないでしょうか。
そこで、大臣にお伺いいたします。
今回、性的マイノリティー当事者やフリーランスへのハラスメント対策が改正法案では明確に強化されていなかった点、措置義務が入らなかったことについて、厚生労働大臣として何を思いますか。お願いします。
○福岡国務大臣 今日、別の委員とのやり取りの中でも具体的な事例等について御紹介がありましたが、性的マイノリティーの当事者であります労働者が職場において様々な困難を抱えておられるということは承知をしております。
本法案はカスタマーハラスメントの対策の強化等を図るものでありますが、厚生労働省においては、これまでも順次、職場におけるハラスメント対策を強化する中で、性的指向、性自認に関しても必要な対応を図ってきたところです。
具体的には、指針において、性的指向、性自認にかかわらず、性的な言動であればセクシュアルハラスメントに該当する旨をお示しするとともに、労働者に対する性的指向、性自認に関する侮辱的な行動であったり、労働者の性的指向、性自認等の機微な個人情報について本人の了解を得ずに他の労働者に暴露することをパワーハラスメントに該当すると考えられる例としてお示しをしております。
また、性的マイノリティーの当事者を含む多様な人材が活躍できる職場環境の整備を図るため、性的指向、性自認に関する企業の取組等をまとめた事例集の作成、周知を行っておりまして、引き続き、企業の取組の推進であったり、職場における理解増進を図ってまいります。
またちょっと答弁が長くなるといつも怒られるんですが、フリーランスについて御質問がありましたので、答えさせていただきます。
フリーランスについては、フリーランス・事業者間取引適正化等法において、業務委託を行う発注事業者に対して、発注事業者等が行うハラスメントについて相談体制の整備等の措置義務を設け、昨年十一月から施行をしているところです。
この上で、フリーランスが顧客等から受けるハラスメントに対する対応につきましては、労働者との働き方の違いも勘案しつつ慎重に検討すべきではございますが、同法の施行後三年を目途として検討を加えることとされていることも踏まえまして、施行状況を注視しながら適切に対応してまいりたいと思います。
○八幡委員 今大臣から、答弁が長くなったら怒られると言っていましたけれども、中身があったら怒らないですからね。先ほどは前よりも全然ましです。中身がない、すかすかやったら怒りますけれども、さっきのは重要なことなので、全然問題ないので言及させていただきますが。
何が言いたいかというと、今回、厚生労働省の方に事務所に来ていただいて、いろいろレクチャーを受けたんですけれども、この場合はどうですか、いや、この場合はセクハラに含まれるかなとか、これはパワハラかなとか、これはこの法律でカバーできていますとかとおっしゃるんですけれども、結局、解釈の問題なんですよね。私たち、やはり忘れてはいけないのは、法律の文章とかを審議するに当たって、その文章を読んだときに国民の方が、ああ、自分は忘れ去られているんじゃないか、解釈によっては入っているかもしれないけれども、明文化されるところによって救われる人と、やはりそこで絶望する人というのが出てくると思うんです。だから、私たちはそういった公文書を取り扱っているんだということをやはり思い出さなあかんのちゃうかなと、今回、審議をしていて思いました。
次へ行きます。
最近、コンビニやスーパーに行っても、レジの横に、カメラ撮影しないでくださいとか、恫喝しないでくださいみたいな、不当なカスハラに関する抗議の張り紙というのを見ることが増えてきました。それは、それぞれの店舗が従業員を守るために掲示をされていて、ある一定の効果が見られていると私は思うんですけれども、カスハラ問題は、店員とお客さんというケースだけではないと思うんです。いわゆる企業間取引のトラブルも増えているのではないでしょうか。
例えば、流通業者が納品したものに傷があって、納品先から、売れないから返品したいんやと言われたんだけれども、メーカーがそれを認めない。包装時か運搬時か、その原因がはっきりと判明しない場合であっても、その場にいる人に責任を取れとかと強く言われて、買い取らざるを得ないというケースなども報告が上がっております。現場で働く人たちに負担がかかっています。
企業間の取引、つまりBトゥーBでもこういった対応がカスハラに該当する可能性があるということを、双方が、みんなが分かるようにあらかじめ周知しておく必要がありますし、それが防止策にもつながると思うんですけれども、厚生労働省は、企業間取引においてのハラスメントについて今後どのように周知していく予定か、教えてください。お願いします。
○田中政府参考人 御指摘がありましたように、今回の法案の中では、労働者保護の観点から、行為者を問わず、労働者の就業環境が害されることのないようにということで扱っておりますので、いわゆる労働者と顧客だけではなくて、取引の相手方の労働者から様々な苦情を受けるとかというようなことも対象にしておりまして、事業主に対して雇用管理上必要な措置を講ずるよう義務づけております。
法案が成立すれば、その内容について事業主に対してしっかり周知をしてまいりますが、事業主は、自分の雇用する労働者がハラスメントに遭わないようにということもありますし、自分の雇用する労働者がほかの労働者に対してハラスメントをしないというふうなこともありますので、それを前提として、法律の内容を周知をする中でしっかり分かっていただけるようにしていきたいと思います。
○八幡委員 それは是非お願いいたします。
やはり周知はすごく大事だと思います。これは、先ほど取り上げましたフリーランスの方を守るということにもつながってくると思います。カスハライコール店員対お客様だけではないということが、これからも周知されることを願っております。
そして、十四日の委員会においてほかの委員からも言及がありましたが、仕事の世界における暴力及びハラスメントの撤廃に関する条約である、国際労働機関、いわゆるILOですね、ILOの第百九十号条約に批准していない国というのは、G7の中で日本とアメリカだけです。その制定において、締結に向けた検討を進めていくと十四日に大臣は答弁された一方、禁止規定の制定には消極的な答弁をほかでされていたと感じました。ILO百九十号に批准するには禁止規定の制定が必要であるので、大臣の御答弁はちょっと矛盾しているのかなと思ったんですけれども。
ハラスメントを少しでも抑止していくということに私は賛成しますが、実効性のない防止規定にとどまり続けて、人権侵害の放置につながる、禁止規定というのを盛り込まない法案というのは、れいわ新選組としては反対せざるを得ません。
そして、我々れいわ新選組、基本政策の中で、違法行為を明文化する、刑事罰、民事救済を規定したハラスメント禁止法を策定する、ハラスメント被害が認定された場合は、医師やカウンセラーによる診療やケア、そして労災保険の適用につなげるなど、救済措置の制度化を目指しています。また、労働基準監督署の下に、二次被害の心配のない相談窓口を設ける、ただ加害者を罰するだけではなく、加害者が更生につながっていくような加害者支援も基本政策として訴えております。
一方で、正当なクレームがハラスメントとしてレッテル貼りされることもしっかり防止する仕組みが必要だと訴えています。今後、改正法案が成立した後、具体的な内容は指針で定められていく。これは前回も指摘したんですが、特に障害者の合理的配慮や正当な社会的障壁除去の求めというのは、カスハラに該当しない旨を明確化しておくべきだと思います。実際に現場では、障害特性で何度も問合せしたことがカスタマーハラスメントと誤解されて、合理的配慮の提供を受けられなかったというケースも聞いています。
そこで思い出していただきたいんですが、二〇二三年の通常国会で成立した旅館業法改正についてです。旅館業法では宿泊拒否の原則禁止を定めているんですが、この改正によって、従業員にとって負担が過重で、業務を著しく阻害する要求を繰り返す客の宿泊を拒めるようになったんですね。具体的にどのような行為が該当するかは省令でその後定めると規定されたんですが、このときに様々な障害者団体から、合理的配慮の要請が従業員にとっての負担だとみなされたら、宿泊拒否につながるのではないかという懸念の声が上がったんです。
それを踏まえて、同年の七月に改正旅館業法の円滑な施行に向けた検討会というのが立ち上げられました。そこには障害当事者も委員として参画して、様々な障害当事者団体にヒアリングを行い、社会的障壁の除去を求めるということが宿泊拒否の事由に当たらないこと、そして合理的配慮の具体例などの詳細が指針に明確的に盛り込まれまして、二〇二三年十二月に施行されたという経緯があります。
是非、今回の本改正案においても、指針の策定、これからされると思うんですけれども、立ち上げられる検討会には障害当事者を検討会の委員に選任して、様々な障害種別の団体にヒアリングを実施していただきたいです。大臣、是非お願いいたします。
○福岡国務大臣 指針の検討に当たりましては、実態をよく把握した上で検討することが重要であると考えておりまして、御指摘の点については、当事者の方からどのような形で御意見を伺うかも含め、必要な対応を検討してまいりたいと思います。
○八幡委員 それ、入れますと言えないですか。是非是非、検討というか、もう入れた方が絶対いいと思いますよ。いかがでしょうか。メンバーに入れてください。
○福岡国務大臣 今申し上げましたように、当事者の方から御意見を聞くということについては大切なことだというふうに思います。どのような形で御意見を伺うかについては、しっかり内部で検討させていただきます。
○八幡委員 厚生労働大臣は私が思っている以上に割と力があると思いますので、そこはばしっと、もう当事者団体も入れなあかんでというのを言っていただければ、私と福岡大臣のやり取りというのはユーチューブで結構見られていますので、上がるんじゃないかなと思いますけれども、是非御検討ください。
ということで、今回の労働施策総合推進法の改正案について、参考人招致も含めて三日間にわたって私、質問させていただきました。大企業ばかりではなく、中小零細企業で勤める人たちも、女性はもちろんです、マイノリティーとされる方たち、そして障害当事者の方たちのことも取りこぼすことのないような法の改正を求めます。
その観点からいきますと、れいわ新選組としては、政府原案については賛同できません。声なき声を拾う姿勢というのが今の政府には欠けているのではないかと疑問を呈しまして、私の質問とさせていただきます。
ありがとうございました。
○藤丸委員長 次に、田村貴昭君。
○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
労働施策推進法改正案について、前回に引き続き質問をします。
雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会の報告書では、四種類のハラスメントに係る規定とは別に、一般に職場のハラスメントは許されるものではないという趣旨を法律で明確にすることが考えられるとしたわけです。しかし、それは見送られました。
ハラスメントそのものの禁止が必要ではないですかと私はずっと言ってきているんですけれども、十四日の私の質問に対して福岡大臣は、ハラスメント防止のためには、未然防止、国民の規範意識の醸成が必要である、そして、事業所に雇用管理上の措置を講じて義務づけているので、ハラスメント行為そのものを禁止するという手法は取っていないというふうに答弁されました。
しかし、この検討会の報告では、四類型にかかわらず、悪質なものは刑事責任が課せられる、民法の不法行為などを根拠に損害賠償に問われるという法律関係を念頭に、一般に職場のハラスメントは許されるものではないという趣旨を法律で明確にするということを提案したわけであります。
検討会の報告でなぜこれをしたかというと、その効果について述べたんです。国のハラスメント対策の実施において、ハラスメントは許されるものではないということについての周知啓発の効果的な実施が期待できる、あるいは、行為者に対する注意喚起や牽制効果が期待できる、企業における社内での対策の効果的な実施が期待できるなどのメリットを挙げたんです。
私はそのとおりだと思うんですけれども、厚生労働省は、この点は認めないんですか。それとも、やはり認めるんですか。いかがですか。
○田中政府参考人 御指摘のありました雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会の報告書の中で、一般に職場のハラスメントは許されるものではないという趣旨を法律で明確にすることが考えられるとされております。
今回、この報告書に基づきまして、この内容を踏まえながら労働政策審議会で議論を行いまして、本法案に盛り込んだような規定を設けるべき旨が建議の形で取りまとめられまして、それを踏まえて今回の法案を提出をしているものですので、この検討会報告書にあった提案というのを見送られているとか、変わったとかというものではないというふうに考えております。
○田村(貴)委員 よく分からなかったんですけれども、やはり指摘されていることは非常に大事で、その効果、メリットというのは私は正しいと思います。
ハラスメントそのものをやはり禁止する規定が必要です。我が党として、今度の法案に対して修正案を用意しておりますので、禁止を、規定を設ける、そういう動きになることを是非期待したいというふうに思っております。
次の質問に入ります。
女性活躍推進法では、国や自治体、一定規模以上の事業主に対して、男女賃金格差の公表や、自らの課題を把握し、数値目標を定めて改善することが義務づけられています。
お配りした資料を御覧いただきたいと思います。これは、厚生労働省で働く職員の男女賃金格差であります。全職員では六五%と書かれています。これは、全労働者平均と比べて一〇%以上も大きくなっています。一方で、任期の定めのない常勤職員、つまり正職員での男女格差は八六・四%、これは、全労働者の平均と比べて一〇%近くも小さいんです。厚労省は任期の定めのない常勤職員以外の職員において女性の割合が大きいために、全職員で見た場合の男女給与の差異が大きくなっていると、この説明欄でも書かれています。
それでは、お伺いします。この調査において、厚生労働省の非正規職員の女性の割合はどうなっているでしょうか。また、あわせて、正規職員中の女性の割合はどうなっているでしょうか。
○村山政府参考人 お答え申し上げます。
厚生労働省におけます御指摘のデータに基づく算出によりますと、一点目、厚生労働省における任期の定めのない常勤職員以外の職員に占める女性の割合は七五・七%でございます。また、二点目の厚生労働省における正規職員、任期のない職員に占める女性の割合は三三・九%でございます。
以上でございます。
○田村(貴)委員 すごい差ですよね。
厚生労働省の正規と非正規の職員の賃金格差というのは、これは発表されていませんけれども、どういう数字になっているんでしょうか。
○村山政府参考人 お答え申し上げます。
厚生労働省は、女性活躍推進法に基づいて公表しております、正規、非正規それぞれの賃金格差につきましては、委員配付の資料で御説明のとおりでございます。
委員のただいまの御指摘は恐らく、こうした調査のバックデータを活用して、常勤職員と常勤以外の職員との賃金格差を算出できないのかという趣旨の御質問かと拝察しますが、この調査では、男女、また、常勤、常勤以外、それぞれの賃金総額データを用いておりまして、一般に雇用形態間の賃金格差の比較に当たって用いられる所定内給与額での比較は困難になっております。
その上で、お求めでございますので、御指摘の元データにおきまして、常勤職員と常勤以外のそれぞれの賃金総額を各職員数で機械的に除しまして、一人当たりの賃金額を比較した場合に、常勤職員と比べて、常勤以外の職員の賃金額は約四七%になるものと認識しております。
繰り返しになりますが、賞与や残業代の実態が相異なることを捨象した比較でございますし、また、そもそも、女性活躍推進のための算出データを雇用管理の形態間の比較という他の観点から見ている話でもございまして、幅を持って見るべき数字であるというふうに考えております。
○田村(貴)委員 私も推計して、四七%なんですよね。正規と非正規の間の賃金格差は半分以下になっている。
大臣、質問しますけれども、ちょっとまとめますね。これは厚生労働省は非常に重要なんです。厚生労働省の職員で、非正規雇用の四分の三は女性なんです。逆に、正規の女性は三割程度にとどまっているんです。そして、非正規職員の給与は正規職員の半分を割っているんです。大きな賃金格差が厚生労働省で生じているわけです。
性別以外の理由による措置で、他の性に比較してもう一方の性に不利益を与えるものを、合理的理由がないものが間接差別とされていますよね。厚生労働省の男女間や雇用形態間の賃金格差というのは、やはり是正されなければいけない間接差別だと私は考えますが、いかがですか。
○村山政府参考人 お答え申し上げます。
間接差別という問題提起でございますけれども、これらを規定しておりますいわゆる男女雇用機会均等法、国家公務員は適用除外ではございますが、一方で、そもそも、国家公務員法制上、職員の任用は、その者の能力の実証により行うこととされておりまして、性別等によって差別してはならない旨の平等取扱原則が定められておりまして、これにのっとって職員の採用、また人事管理等を行っているところでございます。
その上で、私どもといたしましては、非常勤職員についての適切な採用プロセスを経た上での常勤化や男性職員を含めた働き方改革などによって、職員給与の差異縮小を目指しているところでございます。
以上でございます。
○田村(貴)委員 配付資料に戻ります。ここの説明欄に、任期の定めのない常勤職員以外の職員のうち、ハローワーク相談員等の非常勤職員については、適切な採用プロセスを経た上で常勤化にも取り組んでいるとされています。
では、直近で構いません、この常勤化の実績というのは何人になっているんでしょうか。
○福岡国務大臣 ハローワークの非常勤職員等につきまして、令和六年度は百六十六名、令和七年度は百五十名の方を常勤として採用するなどの実績を上げているところでございまして、これらの取組を引き続き着実に進めてまいりたいと思います。
○田村(貴)委員 厚生労働省の非正規職員というのは約三万六千人おられますよね。常勤化は、今大臣の数字で、ちょっと手計算できないんですけれども、一%にも行っていないんですよ。一%にもすぎない。
雇用機会均等法を始めとして労働行政を所掌する厚生労働省において、厚生労働省は賃金格差の解消に本気で取り組んでいると言えるんでしょうか。官民を含めて、厚生労働省というのは、やはり規範を示すべき省庁だ、役所だと私は思うんですけれども、取組から見てそうは言えない、現状から見てまだまだだと言わざるを得ないんですけれども、大臣、男女間や雇用形態間での賃金格差の是正に、やはり目標値を持って、そして改善していく、これが求められると思いますが、大臣、いかがですか。
○福岡国務大臣 厚生労働省においては、都道府県労働局を中心に、非常勤職員の常勤化に取り組んでいるところでございます。また、予算の範囲内ではございますが、非常勤職員の中においても、職務経験等を踏まえた給与の決定であったり、また、ボーナスの支給月数を引き上げるなどの処遇改善を進めております。
こうした取組を通じまして、男女間の賃金格差の縮小をしっかり目指してまいりたいと思います。
○田村(貴)委員 やはり三万人以上いる非正規雇用の方が、特に地方に多い。労働局で、常勤職員化が百六十人とか百五十人とか、こういうペースですよね。やはり、こうしたところの賃金差異というのは、厚労省が先陣を切って、範を示してやっていかなければいけないと重ねて要求したいと思います。
賃金格差の情報開示と是正に向けて質問します。
日本のメガバンクの中で、誰もが知っている大銀行です、男女間の賃金差異の主因が、総合職とBC職、つまり一般職の、このコース別にあるとして、コースの垣根を解消して、新設する職分に一本化することを予定しています。そして、ジェンダーやコース区分等にとらわれず、より一人一人自律的なキャリア形成を後押しし、管理職や上位職層への女性の登用拡大と男女間の賃金差異の是正を目指しますとしています。こういう方針がうたわれています。
また、同じく日本を代表する大きな銀行ですけれども、男女の賃金水準が異なっている理由に、BC職、一般職に女性を多く採用してきたとして、総合職に統合して、より上位の階層への転換に挑戦できる制度を導入し、既に成果を上げているということがあります。民間においてこういう取組が進んでいるわけなんです。
また、さきの資料に戻ります。この説明欄では、厚生労働省が男女賃金格差の理由を、任期の定めのない常勤職員以外の職員において女性の割合が大きいために、全職員で見た場合の男女給与の差異が大きくなっているというふうにも説明されています。
そう言うのであれば、解消策というのは、今、日本の大銀行、二つ事例を出しましたけれども、民間で行われているように、非正規、正規の雇用管理区分をなくさなければいけない、そして、非正規雇用労働者の大幅な賃金を引上げするしかない、このことが求められると思いますが、大臣、見解を聞かせてください。
○村山政府参考人 お答え申し上げます。
まさに先ほど大臣から御答弁ございましたとおり、非常勤職員の常勤化、また、予算の範囲内での、職務経験等を踏まえた給与の決定やボーナスの支給月数を引き上げる等の処遇改善に努力しているところでございますが、先生御指摘の点は、まさに国家公務員制度全体の人事給与制度、定員管理等にも関わる課題であると認識しておりますが、その枠内で、私どもとしてできることをしっかりと取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。
以上でございます。
○田村(貴)委員 大臣も同じ考えですか。
○福岡国務大臣 そのとおりでございます。
○田村(貴)委員 法改正の部分です。
これまで常時雇用三百一人以上の企業が対象だった男女賃金差異と女性管理職の比率の情報公表が、百一人以上の企業にも義務づけられることになりました。これは必要なことです。
百人以下の企業については、単純に義務を課すだけでは駄目で、男女賃金格差を公表できるようにするための国の支援が必要だと思いますが、どうなっているでしょうか。
○福岡国務大臣 御指摘の男女間賃金差異の公表義務対象企業を拡大することにつきましては、一般事業主行動計画の策定が常時雇用する労働者百人以上の企業に義務づけられていることであったり、労働政策審議会において、中小企業での取組は重要だが大企業と比較して人員や組織体制に差があるという意見があったこと等を踏まえまして、この法案では、常時雇用する労働者百一人以上の企業に対して、男女間賃金差異の情報公表を義務づけることとしているところでございます。
一方で、常時雇用する労働者数が百人以下の企業についても、情報公表等の取組を努力義務としているところでございますが、中小企業における取組を推進するための支援は大変重要であるというふうに考えております。
このため、主に中小企業を対象として、個々の企業の雇用管理状況に応じたコンサルティングを実施する、また、各企業において男女間賃金差異の要因を簡易に分析することのできるツールとして、男女間賃金差異分析ツールを作成し、提供するなどの支援に取り組んでいるところでございまして、引き続き、御指摘も踏まえまして、中小企業の取組の支援を行ってまいりたいと思います。
○田村(貴)委員 時間が来ましたので、質問を終わります。
○藤丸委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。
―――――――――――――
○藤丸委員長 この際、本案に対し、上野賢一郎君外五名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、国民民主党・無所属クラブ及び公明党の五派共同提案による修正案並びに田村貴昭君から、日本共産党提案による修正案がそれぞれ提出されております。
提出者より順次趣旨の説明を聴取いたします。浅野哲君。
―――――――――――――
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律案に対する修正案
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――
○浅野委員 ただいま議題となりました労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、提出者を代表して、その趣旨及び内容の概要を御説明申し上げます。
今回の政府案では、カスタマーハラスメントを防止するため、事業主に雇用管理上必要な措置を義務づけ、国が指針を示すとともに、カスタマーハラスメントに起因する問題に関する国、事業主、労働者及び顧客等の責務を明確化することとされています。
しかし、今月十三日の参考人質疑においても指摘されていたように、実際の現場においては、労働者を守るために事業主が取ることのできる措置があるにもかかわらず、適切に措置が講じられていないケースがあります。この点について、カスタマーハラスメントへの対応が実効性を持って行えるよう、カスタマーハラスメントの抑止のための措置も、事業主において取ることのできる措置の一つであることを明らかにすべきではないかと考えます。
また、政府案によるカスタマーハラスメント対策において保護されるのは、事業主に雇用される労働者です。この点について、業務委託を受けて事業を行うフリーランスの方は、その顧客等からカスタマーハラスメントを受けるリスクが労働者と同様にあるにもかかわらず、今回のカスタマーハラスメント対策の対象外とされているところであり、その保護が図られるべきであると考えます。
そこで、次に申し上げます二つの点を内容とする修正案を提出することといたしました。
その主な内容は、第一に、カスタマーハラスメントに起因する問題に関する事業主による雇用管理上の措置の例示として、カスタマーハラスメントへの対応の実効性を確保するために必要なカスタマーハラスメントの抑止のための措置を追加することとしております。
第二に、フリーランス・事業者間取引適正化等法に定める特定受託事業者が受けた業務委託に係る業務において行われるカスタマーハラスメントを防止するための施策について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずることを政府に義務づけることとしております。
以上であります。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○藤丸委員長 次に、田村貴昭君。
―――――――――――――
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律案に対する修正案
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――
○田村(貴)委員 ただいま議題となりました労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、日本共産党を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
ハラスメントは、働く人の尊厳、人格を大きく傷つけます。多くの被害者が、声を上げることができず、勇気を振り絞って相談しても、事業主から適切な対応が取られないばかりか、加害者から謝罪さえ受けることなく、心身に不調を来したり、休職、退職に追い込まれたりしているのが現状です。職場でのハラスメントが、一人一人の人生を狂わせ、一人の働き手を経済社会から失わせるという深刻な結果をもたらしています。しかし、ハラスメントに対して労働行政は全く無力と言わざるを得ません。
現在、セクシュアルハラスメント、妊娠、出産、育児休業等に関するハラスメント、パワーハラスメントについて事業主に雇用管理上の措置義務が課せられていますが、二〇二三年度に都道府県労働局に寄せられたこれらのハラスメントに関する相談件数は約十三万四千件に上り、相談件数は高止まりしています。特にセクハラについては、男女雇用機会均等法において措置義務が導入されてから約二十年経過しますが、相談件数は約七千件で推移しています。また、勧告に従わない場合の企業名公表制度が設けられていますが、セクハラで企業名が公表された事例は過去に一件もありません。
今回、政府から提出された法律案の内容は、極めて不十分な内容であります。最大の問題は、ハラスメント行為を法的に禁止していないことです。ILOでは、二〇一九年にハラスメントの問題を扱う初の国際労働基準である、仕事の世界における暴力及びハラスメントの撤廃に関する条約が採択され、仕事の世界における暴力とハラスメントを定義し禁止する法令の制定を求めています。このままでは、日本は、職場におけるハラスメントの禁止規定を持たない後進国になってしまいます。
世界の流れという観点から、また、働く者の願いという観点から、ハラスメントによる被害者の救済とハラスメントの防止について、実効ある法整備が今求められており、本修正案を提出することといたしました。
以下、修正案の主な内容を御説明いたします。
第一に、基本的理念に、職場における就業環境を害する言動を受けることのないよう適切な措置が講じられることを明記いたします。
第二に、国の施策において、労働条件の改善等の施策を充実するに当たっては、各人の意欲及び能力のほか、その他多様な事情に応じて就業することを促進することを目的とすること、困難な問題を抱える女性の就業を促進するために必要な施策を充実すること、職場における労働者の就業環境を害する言動に起因する問題の解決を促進するために必要な施策を充実するに当たっては、仕事の世界における暴力及びハラスメントの撤廃に関する条約、百九十号の趣旨を踏まえることを明示いたします。
第三に、事業主がその雇用する労働者の就業環境の整備を行うに当たっては、当該労働者が就業環境を害する言動を受けることのないようにすること及び多様な事情に応じた就業ができるようにすることを事業主の責務として明記いたします。
第四に、何人も、職場における労働者の就業環境を害する言動を行ってはならないとの禁止規定を設けることといたします。
第五に、当該言動等に係る事件の審査を行うため、厚生労働大臣の所轄の下に中央就業環境加害言動救済委員会を、都道府県知事の所轄の下に都道府県就業環境加害言動救済委員会をそれぞれ置くことといたします。
第六に、事業主は、ハラスメントにより就業環境を害された労働者に関し雇用管理上の措置を講ずるに当たっては、当該労働者の意向を十分に尊重しなければならないことといたします。
第七に、政府は、この法律の公布後速やかに、職場における労働者以外の者の就業環境を害する言動を禁止するための措置について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすることといたします。
以上であります。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○藤丸委員長 以上で両修正案の趣旨の説明は終わりました。
―――――――――――――
○藤丸委員長 これより原案及び両修正案を一括して討論に入ります。
討論の申出がありますので、これを許します。田村貴昭君。
○田村(貴)委員 私は、日本共産党を代表して、労働施策推進法の改正案に反対の討論を行います。
本法案に反対する理由は、包括的なハラスメントの禁止規定が盛り込まれていないことです。本法案は、ハラスメント対策として、新たに、カスタマーハラスメントや求職者等に対するセクシュアルハラスメントについて、事業主に防止措置義務を課していますが、防止措置義務ではハラスメントを防ぐことはできず、対策としても実効性がありません。二〇〇六年の均等法改正でセクハラに対する事業主の防止措置義務が導入されましたが、その後、ハラスメントに関する相談件数は増え続けています。
厚生労働省は、本法案をILO第百九十号条約の批准に資するものと評価しますが、同条約は、ハラスメントを包括的に定義し禁止する法整備を求めています。本法案には、条約が求めるハラスメントの包括的な定義も禁止規定もなく、国際水準にふさわしいものとは到底言えません。
日本の法律は、包括的な定義がないために、セクハラやマタハラ、パワハラ、カスハラといった個別のハラスメントを既存の法律に当てはめる形で規制しており、社会問題化したものしか規制の対象にならず、社会問題化してから法整備を行うため、被害の防止や救済が遅れる実態があります。日本も、条約批准に向けて包括的な禁止規定を設けるべきです。
また、本法案は、男女の賃金の額の差異と管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合を法定事項とし、企業規模にかかわらず、必須の公表項目とします。賃金格差の把握、公表は当然必要ですが、その公表内容は、男性の正規と非正規、女性の正規と非正規と、同性間の賃金格差のみであり、一番格差の大きな男性正規と女性非正規との比較ができません。男女間賃金格差を見る場合、雇用形態間格差も複合的に関わってくるため、男性正規と女性非正規の格差も公表すべきです。
また、本法案は、賃金格差の是正措置がありません。我が党は、企業が正規、非正規、男女の賃金格差を是正する計画を作成、公表し、その履行を国が指導、督励する仕組みを提案しています。情報の把握、公表にとどまらず、企業に賃金格差是正を義務づける仕組みをつくるべきであります。
以上述べまして、討論を終わります。
○藤丸委員長 以上で討論は終局いたしました。
―――――――――――――
○藤丸委員長 これより採決に入ります。
内閣提出、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律案及びこれに対する両修正案について採決いたします。
まず、田村貴昭君提出の修正案について採決いたします。
本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○藤丸委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。
次に、上野賢一郎君外五名提出の修正案について採決いたします。
本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○藤丸委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。
次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。
これに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○藤丸委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。
―――――――――――――
○藤丸委員長 この際、本案に対し、長坂康正君外四名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、国民民主党・無所属クラブ及び公明党の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
提出者より趣旨の説明を聴取いたします。梅村聡君。
○梅村委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきます。
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。
一 カスタマーハラスメント対策の実効性を担保するため、労働者が事業主に相談した場合に形式的でなく実効性のある対応が行われるような指針を策定すること。また、カスタマーハラスメントに関する業界団体のガイドライン策定等に当たっては、消費者、障害者等の利害関係者にも配慮するよう留意すること。
二 福祉事務所、病院等のサービスが途絶すると生存に影響が及ぶ施設等においては、その利用が途絶しない工夫を行いつつ、カスタマーハラスメント対策を講ずること。また、事業主が前述の施設等でのカスタマーハラスメント対策を講ずる際には、利用者に理解してもらえるように代理人の同席を認めることや弁明の機会を設けるなどの権利擁護の配慮を怠らないよう指導等を行うこと。
三 カスタマーハラスメント対策の強化のため、事業場において労働者と同一の場所において作業を行う労働者以外の作業従事者も含むカスタマーハラスメント対策の在り方について、本法の施行状況を踏まえ、必要な検討を行うこと。
四 他の事業主にカスタマーハラスメント対策の協力を求めた場合の他の事業主の対応について、協力を求めた事業主に調査を行うことにより、その実効性について検証を行い、必要な措置を講ずること。
五 地方自治体でのカスタマーハラスメント対策は住民の権利制限と表裏一体のため、制度設計に当たって総務省からの支援策を講ずること。また、国及び地方自治体でのカスタマーハラスメント対策について、本法の施行後一定期間が経過した後に実態調査を行い、実効性のある対策が取られているか等の運用面の確認等を行うこと。
六 措置義務の対象となるハラスメントに限らず、悪質なハラスメントは刑事罰等の対象となり得ることを踏まえ、都道府県労働局等が相談を受けた際は、真摯に対応すること。そのため、都道府県労働局等の相談支援の強化やハラスメントに関する紛争解決援助制度等の利用促進について検討を進めること。
七 性的指向や性自認(SOGI)の開示であるいわゆる「カミングアウト」を禁止する又は強要・強制する行為がパワーハラスメントに該当し得ること、顧客等から労働者に対するSOGIに関連するハラスメントがカスタマーハラスメントに該当し得ること及び就職活動中の学生に対するSOGIに関連するハラスメントの防止が必要であることをそれぞれ関連するハラスメント防止指針に明記し、もって広く事業主に周知啓発を行うこと。
八 パワーハラスメントを受けた労働者からの相談には適切に対応し、相談者の意向を丁寧に聴取しながら解決するよう事業主に周知徹底すること。
九 労働者の就業環境等を害する言動又は行為については、仕事の世界におけるハラスメントとして全て禁止することについて検討すること。また、我が国のハラスメント法制との整合性を精査した上で、ILO第百九十号条約の批准に向けて検討すること。特に、地方自治体の長及び議会の議員によるハラスメントの禁止に向けた地方自治体の取組を支援すること。
十 男女雇用機会均等法第七条に規定する間接差別の禁止の対象の拡充について、社会情勢の変化や国際機関の意見を踏まえつつ、機動的に検討を行うこと。
十一 女性の職業生活における活躍に関する情報公表について、女性管理職比率及び男女間賃金差異の定義を明確化するとともに、客観的に比較可能なものとなるような計算方法を示すこと。男女間賃金差異については、企業規模にかかわらず全ての企業への公表の義務化並びに男女間賃金差異が一定割合を超えている企業についてその原因分析及び是正計画の策定・公表の義務化を含め、実効的な対策を検討すること。また、公表項目の充実及びよりわかりやすい公表の在り方を検討すること。
十二 治療と仕事の両立支援を推進するため、新たに公表する指針の周知に努めるとともに、守秘義務に留意した上で、産業医と主治医の間における効果的な情報交換の在り方及び病気休職中の労働者からの相談窓口を明確にする等の職場復帰に向けた支援の在り方を検討すること。また、本法の施行状況を踏まえ、治療と仕事の両立支援の在り方について今後も検討すること。
十三 疾病などを抱える労働者が適切な治療を受けながら働き続けられる職場環境の整備を含めた事業主の取組を支援するとともに、治療と仕事の両立に資するよう、医療機関の待ち時間の短縮などの好事例を周知すること。また、小規模事業場で働く労働者を支援する観点から、産業保健総合支援センター等の産業保健活動総合支援事業による企業支援の強化に取り組むとともに、労働者からの相談に応じ、適切な対応をするために必要な体制整備の支援に取り組むこと。
以上であります。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)
○藤丸委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。
本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○藤丸委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
この際、福岡厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。福岡厚生労働大臣。
○福岡国務大臣 ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして努力してまいります。
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○藤丸委員長 お諮りいたします。
ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○藤丸委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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〔報告書は附録に掲載〕
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○藤丸委員長 次回は、来る二十日火曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後一時二十分散会