第21号 令和7年5月27日(火曜日)
令和七年五月二十七日(火曜日)午前九時三十分開議
出席委員
委員長 藤丸 敏君
理事 上野賢一郎君 理事 古賀 篤君
理事 長坂 康正君 理事 井坂 信彦君
理事 岡本 充功君 理事 早稲田ゆき君
理事 梅村 聡君 理事 浅野 哲君
安藤たかお君 五十嵐 清君
草間 剛君 後藤 茂之君
小森 卓郎君 佐々木 紀君
塩崎 彰久君 鈴木 隼人君
田畑 裕明君 田村 憲久君
根本 拓君 長谷川淳二君
平口 洋君 平沼正二郎君
深澤 陽一君 福田かおる君
森下 千里君 山本 大地君
吉田 真次君 若山 慎司君
池田 真紀君 大塚小百合君
大西 健介君 酒井なつみ君
宗野 創君 堤 かなめ君
中島 克仁君 長妻 昭君
長谷川嘉一君 松尾 明弘君
宮川 伸君 山井 和則君
柚木 道義君 阿部 圭史君
池下 卓君 猪口 幸子君
福田 徹君 森ようすけ君
沼崎 満子君 浜地 雅一君
八幡 愛君 田村 貴昭君
…………………………………
厚生労働大臣政務官 安藤たかお君
厚生労働大臣政務官 吉田 真次君
参考人
(大妻女子大学短期大学部教授) 玉木 伸介君
参考人
(慶應義塾大学教授) 駒村 康平君
参考人
(昭和女子大学特命教授) 八代 尚宏君
参考人
(株式会社笑下村塾代表取締役) たかまつなな君
参考人
(一般社団法人日本経済団体連合会専務理事) 井上 隆君
厚生労働委員会専門員 森 恭子君
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委員の異動
五月二十七日
辞任 補欠選任
塩崎 彰久君 若山 慎司君
深澤 陽一君 五十嵐 清君
福田かおる君 山本 大地君
吉田 真次君 小森 卓郎君
長妻 昭君 松尾 明弘君
同日
辞任 補欠選任
五十嵐 清君 平沼正二郎君
小森 卓郎君 吉田 真次君
山本 大地君 福田かおる君
若山 慎司君 塩崎 彰久君
松尾 明弘君 長妻 昭君
同日
辞任 補欠選任
平沼正二郎君 深澤 陽一君
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本日の会議に付した案件
社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出第五九号)
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○藤丸委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案を議題といたします。
本日は、本案審査のため、参考人として、大妻女子大学短期大学部教授玉木伸介君、慶應義塾大学教授駒村康平君、昭和女子大学特命教授八代尚宏君、株式会社笑下村塾代表取締役たかまつなな君、一般社団法人日本経済団体連合会専務理事井上隆君、以上五名の方々に御出席をいただいております。
この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
次に、議事の順序について申し上げます。
最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ十分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
なお、発言する際はその都度委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。
それでは、まず玉木参考人にお願いいたします。
○玉木参考人 大妻女子大学短期大学部の玉木でございます。
本日は、このような機会を与えていただき、誠にありがとうございます。
まず、出だしから申し上げます。まず、我が国の年金制度として、私としてこうあってほしいなと思う属性は数多くございますけれども、そのうちの三つをお話の出だしとして申し上げたいと思います。
第一は、労働市場に中立的であること。第二は、厚生年金保険制度が再分配機能を果たすこと。第三は、国民の常識と整合的であって、国民に信認されやすい制度であること。これらと関連づけながら、御審議中の法案に関して若干のコメントを申し上げようと思います。
まず、お手元に資料一枚紙がございますけれども、一の、労働市場に中立的という点について申し上げます。
労働市場に中立的とはどういうことでしょうか。労働市場は、労働者が、この仕事でこの賃金なら働こう、企業が、この人をこの賃金で雇えるなら働いてもらおうという意思決定を行う場です。その意思決定に当たって、年金制度が有利にも不利にも作用しないので、年金を気にして働き方、雇い方を変えることがない、したがって、年金制度が労働市場をゆがめることがない、これが中立ということでございます。
現実はどうでしょうか。決して中立ではありません。年収の壁の手前での就業調整と呼ばれる現象は、その一例です。労働市場のゆがみと言ってよいでしょう。
ある二人の方が同じように雇われて働いているのに、片方は、勤務先の企業規模が大きいために厚生年金保険などの被用者保険に入って給付が手厚く、もう一人の方は、勤務先の企業規模が小さいために被用者保険に入らず給付が手厚くないということが、今はあります。おかしなことです。
雇う側が支払う労働の対価については、同じ労働なのに、被用者保険の事業主負担分だけ異なっています。一物二価です。これもゆがみです。
今回の法案では、こうしたゆがみが減るよう、雇われて働く方々がより多く被用者保険に入るようにする適用拡大の措置が盛り込まれています。これは正しい方向です。可能な限り推進していただきたいと思います。
中立でないことのもう一つの事例は、在職老齢年金です。
経験知の豊かなベテラン技術者などの中には、高齢者になっても、企業が相応の処遇をしてでも雇いたくなるような方が少なからずおられるでしょう。
ところが、現行制度では、賞与込みの月当たりの勤労収入と年金の報酬比例部分の合計が五十万円を超えると、報酬比例部分が部分的に、又は全面的にカットされます。
ある程度の技術やマネジメント経験などがあれば、月当たりの勤労報酬が五十万円前後ということは十分にあり得ます。また、特に恵まれた超高所得者ということでもありません。しかし、年金カットが起き得るのです。
人によっては、カットされるぐらいなら勤労収入はほどほどでいいから、フルタイムで働くことはやめておこうという傾向が生じます。高齢者の勤労の意欲の抑圧でございます。これもゆがみです。
法案には部分的な対処が盛り込まれていますが、今後、在職老齢年金の廃止を含めた更なる検討が進むことを期待します。
次いで、お手元の資料、二の、厚生年金保険制度の再分配機能について申し上げます。
厚生年金の保険料が報酬に比例する一方、給付には基礎年金という定額の部分があります。この結果、大きな所得再分配が生じます。
例えば、月収十五万の方と六十万の方を比べると、払う保険料は月収と同じく一対四ですけれども、定額の基礎年金があるために、高齢者になってからの給付の差は一対四よりかなり小さくなります。十五万の方は、六十万の方と同額の基礎年金を、四分の一の保険料支払いで受給できるようになっているのです。
年金で暮らす高齢者の生活水準の格差が余り広がらないようにすべきという価値観を我々が持つとすれば、厚生年金の所得再分配機能は貴重です。
生活保護も所得再分配のルートの一つですが、どうしても施しというイメージがつきまとい、スティグマと言われる現象が生じてしまいます。再分配の受け手の方々が、肩身の狭い思いをなさってしまいます。
しかし、年金給付は、現役期の保険料支払いの結果ですから、先ほどの十五万の方は、自分は若い頃に保険料を払ったからこそ、この給付を受けていると胸を張っておられるでしょう。スティグマなどありません。
この意味で、基礎年金による所得再分配は貴重であり、それだけに、基礎年金にはある程度の大きさが必要です。
二〇二四年度のモデル年金の所得代替率は六一・二%で、そのうちの二五・〇%が報酬比例部分、残る三六・二%が再分配効果を有する基礎年金です。
今後はどうなるでしょうか。
現行制度が続くと、基礎年金の所得代替率は、二〇二四年度の三六・二%から、成長型経済移行・継続ケースでは三二・六%、過去三十年投影ケースでは二五・五%と、それぞれ少なからず低下します。基礎年金の再分配効果の後退は、現行制度のままでは避けられません。
しかし、再分配の縮小など、誰も意図していません。意図せざる再分配の縮小を止めるべく、何らかの適切なアクションが必要です。
今後、基礎年金の大きさを確保するための更なる検討、例えば、今、基礎年金は四十年加入で満額給付になるところ、四十五年加入として、満額が従来の四十分の四十五倍になるというように、拠出と給付が相似形を保ったまま制度を拡張するとか、マクロ経済スライドによる給付調整の早期終了を導入するとか、そういった施策について、国庫負担の増加を賄う安定財源の確保を含めて、議論していただきたいです。
最後に、お手元の資料の三の、国民の常識との整合性や国民の年金制度に対する信認について申し上げます。
人々の生活には常識というものがあり、これは時代とともに大きく変化します。僅か半世紀前、日本社会には、人は結婚し、男性が一家の大黒柱として働き、女性は家庭に入って生活を支えるという常識がありました。しかし、今の若者の間に、そんな常識は影も形もありません。
年金制度は、日々変化する国民の常識と整合的であり続けるよう、永久に適合を繰り返さねばなりません。その適合の一つが、法案に含まれる遺族年金の制度改正です。
かつては社会における男女の役割が大きく異なっていたために、現行の遺族年金には男女差があります。こういうものは、国民の常識と整合的でないので、国民は違和感を抱きます。人々が違和感を抱く制度は、国民の信認を得られません。これは困ったことです。今回の法案に男女差の解消が盛り込まれていることは適切と思います。
先ほど、在職老齢年金についてお話ししましたが、この制度も、恐らくは国民の常識と整合的でなく、また、人々の年金制度への信認にマイナスの影響を及ぼしていると思います。
年金制度の各分野において、将来にわたって人々の腹にすとんと落ちるものであるよう、国民の常識の変化への適合を繰り返していくべきと思います。
もう一点大事なことは、広報でございます。広報につきましては、皆様、大変御尽力いただいてございます。政府の姿勢が国民にとっては大事でございますので、是非継続していただきたいと思います。広報に対します私の希望を表明いたしまして、私の陳述を終えることといたします。
御清聴、誠にありがとうございました。(拍手)
○藤丸委員長 ありがとうございました。
次に、駒村参考人にお願いいたします。
○駒村参考人 慶應義塾大学の駒村康平でございます。
こういう機会をいただきまして、大変ありがとうございます。
お手元に、少し厚い資料でございますが、用意させていただきました。後半の方では、少し私の論考も補足のためにつけておりますが、おおむね最初の十四ページで御説明したいと思います。
今日お話ししたい内容はこの「構成」というところで、年金制度を評価するに当たっての評価基準、改革の評価基準、それから、現行の年金制度改革で大きな課題になっている基礎年金の給付水準の問題、この底上げをめぐる政策の選択肢、それに関わる三つの壁というものをお話しさせていただきたいと思います。本体資料と参考資料もつけさせていただきました。
では、三ページを見ていただければと思います。年金制度の評価軸というのは、まず、持続可能であるのかどうかということでございます。財政的に持続可能かどうか。さらに、給付水準が年金としてふさわしいレベルを保障しているのかどうか。それから、働き方や家族はその時代とともに変化をしていきますので、社会経済等の変化に対する対応力、こういったものが重要かと思います。
高齢化が進む中で、この一番と二番のバランスはかなり際どい状態になってきていることは事実でありますが、しかしながら、まだ破綻をするとか若い人が年金をもらえないとかというような緊急事態になっているわけではなく、調整をしながら何とか維持できるというふうに考えております。三番は、不断の改革が必要になってくるということでございます。
では、四ページの方に移りたいと思います。今回の年金財政検証で大きな課題になったのが、当初、二〇〇四年にこの改革、現行年金制度ができたときには、二〇二三年にはマクロ経済スライドが停止して、厚生年金の報酬比例部分と基礎年金は、相似形で、同じ比率で下がっていくということが想定されていました。基礎年金のウェートが六で報酬比例部分の方が四、四対六のバランスのまま小さくなってくる。
ところが、現行を財政検証をしたところ、マクロ経済スライドが非常に長期に利いて、特に基礎年金については長期に利いていって、このバランスが五対五まで変化してしまう。要するに、基礎年金の方がいびつになって小さくなるということが判明した。これは年金の、特に国民年金のデフレ調整能力に課題があったということになります。
そこで、このまま放置しておくと、二〇四〇年にリタイアをする氷河期世代を直撃するルートに入ってきていますので、この直撃を回避するために、積立金を活用して早めに基礎年金へのマクロ経済スライドを終了させるということで、それで四対六のバランスを確保できるということになります。
エッセンスを言うと、報酬比例部分を少し薄くして、基礎年金という下の方に渡す。上半身のエネルギーを少し下半身に、栄養の方に回す、こういうことでございます。
さて、五ページの方に行きますと、基礎年金が仮に放置して下がるとどうなるかということになりますけれども、生活保護が最低生活保障を握る要石だということになれば、基礎年金というのは、それを支える、その上に立つ心柱のような状態になっているということで、生活保護の前で、ほとんどの方が基礎年金を持っていますねと、障害、遺族、老齢、全て基礎年金でまず押さえた上でセーフティーネットが出てくるということになりますが、基礎年金の給付水準三割低下を放置すると、障害基礎年金、遺族基礎年金、共に全て下がってしまうということになってしまうわけです。
また、基礎年金が、あるいは年金が地域にどういう影響を与えているのかというのを見ますと、六ページの方の下段に出ていますけれども、高齢化が進む地域であればあるほど、地域経済に占める年金のウェートが大きいということで、地方であればあるほど、年金の給付引下げは大きな影響を受けるということも確認できるということです。
七ページ目の方に入りたいと思います。これは、基礎年金を縦に取って、横に年齢を取って、六十五歳から以前にもらうと繰上げ受給、遅くもらうと繰下げ受給ということになりまして、現行水準が三六・二%、所得代替率がある。これが何もしなければ二五・五まで下がるということで、三割下がることになりますけれども、この一〇・七%ポイントの下がり方をどう補っていくのかということで、四十五年加入だとこれは四%回復できる、二百万人適用だと一・七%回復できる、二百万人プラス四十五年加入で五・七%の回復ができるということで、部分的な回復しかできないわけですけれども、マクロ経済スライドの短期化によって七・七%まで回復できるということで、短縮と二百万人の適用拡大で合計九・四%まで回復できるので、おおむね、一〇・七%のかなりの低下分は回復できる、こういうふうに思います。
ただ、これについて三つの壁があります。一つは、積立金の流用ではないかという誤解であります。これは、国民年金は徴収の口座でありまして、国民年金の中で一号、二号、三号という形で徴収される。給付の口座が基礎年金でありますので、この案は、徴収の口座である国民年金に厚生年金からお金を入れるという話ではなくて、給付の口座である基礎年金に、国民共通の基礎年金に積立金を一部入れるということでございますので、流用には当たらないと判断をしております。それから、切替えの時期に一時期、氷河期世代よりも上の世代がやや年金が沈む時期がある、これをどういうふうに対応するか。それから、年金の給付水準を引き上げると国庫負担が必要になってくるということをどう解いていくのかということがあろうかと思います。
九ページ目には、この誤解というところを少し詳しく書いておるところでございますけれども、国民年金イコール基礎年金イコール自営業年金という誤解がどうもあるようでございますけれども、下の方の十ページにありますように、基礎年金というのは、人生の様々なキャリアの中でためてきた年金の口座にお金を入れるということを今回意図していますので、一〇〇%一号の人がいるわけでもないし、一〇〇%二号の人がたくさんいるわけでもない。それぞれ極端な自営業と極端なサラリーマンというのは少数派で、ほとんどの方が、厚生年金と国民年金の時代があった、組み合わされたキャリアを持っている。このキャリアを持った人たちがつくった束が基礎年金という勘定になって、そこにお金を入れるということでございますので、決して流用には当たらないと思います。
それから、十一ページでございますけれども、氷河期世代のことを世代ガチャとも言うこともございますけれども、意図せずに、あと、御本人たちの御責任でもないにもかかわらず、非常に厳しい現役時代を過ごして、恐らく年金もかなり厳しいものになってくるのではないか。これが三割下がってくるということは、生活保護の増加も含めて厳しいことが予想される。そうなるならば、やはり、上の世代で余裕のある世代が、氷河期世代より以降の世代のために、少し我慢をしていくというのも社会のあるべき姿ではないか、不幸な世代を、社会でそのリスクを分散するということも年金の役割ではないか、こういうふうに思っておりますので、非常に下がる方がいればケアをした方がいいだろうとは思います。
最後に、十三ページでございますけれども、年金制度改革というのは、手堅い前提で、タイミングを逸しない改革が必要である。政治的な理由で改革の重要な部分が延期される、対応できないということになりましたら、世代間の負担と調整が失敗して、年金への信頼を失ってくる。これこそが高齢化以上に賦課方式の年金の危機ということでございますので、この辺を私は、先生、皆様ですね、この適切な議論をやっていただきたいなと思っております。
短期的な、情動的な方にどうしてもSNSなどを見ていると話が行ってしまう傾向もありますけれども、先生方におかれましては、長期的な視点から、根拠に基づいて、論理的で実行可能な選択肢を議論していただきたいと思います。
まとめて言いますと、やはりこの底上げというのは必要かつ早急に対応すべき政策テーマだと思っております。
以上で、私の最初の説明とさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)
○藤丸委員長 ありがとうございました。
次に、八代参考人にお願いいたします。
○八代参考人 昭和女子大学の八代尚宏と申します。
本日は、このような貴重な機会を与えていただきまして、ありがとうございました。
私は、以前、第一次安倍内閣、福田内閣のときの経済財政諮問会議の委員をやっておりまして、社会保障、年金問題も担当しておりました。そのときには本当に年金の改革、民主党の御意見も入れて大改革をやろうとしていたわけですが、そのときと比べて今回の年金改革案というのは、はっきり言って大きな問題を全部逃げている、非常に年金技術的な問題ばかりを議論されている、これがまず一番大きな問題だと思います。
一ページめくっていただきまして、なぜ年金給付が減額されなければならないのかということであります。
今、基礎年金がほっておけば三割減ってしまう、それをどうしようかということを議論しているんですが、そもそもなぜ基礎年金のような大事なものが三割も減らなければいけないのか、これが実は最大の問題なわけなんですね。
なぜかといいますと、日本は高齢者の寿命が世界一長いわけです。寿命が長いというのはいいことなんですね。日本はいろいろな問題を抱えていますが、少なくとも国民生活というのは最も世界でいい国なんです。ただ、この寿命が長いということに今の年金制度が対応していないということが非常に大きな問題です。
寿命が長いということは、高齢者の寿命が一年延びるということは一年分の年金給付が増えるということ。これをどう対応するか。
高齢者の方で年金を調整するためには、二つの手段があるんですね。一つは、世界標準のやり方。つまり、寿命が一年延びたら一年遅く年金をもらい始める、それによって生涯の年金を受け取る期間を固定化する。これが十分な給付の下で年金財政を安定させるグローバルスタンダードのやり方なんですね。
ところが、なぜか日本はこのやり方を取っていない。六十五歳に年金支給開始年齢を固定して、専ら年金を減額することで対応するという極めてひどいやり方を取っているわけですよね。
日本の年金水準というのは、私が以前勤めておりましたOECDの資料によりますと、G7の中で最も低い。この低い年金を更に減らそうというのがこの国民窮乏化案なわけですね。マクロ経済スライドという意味不明の名前を使っておりますが、これは年金減額スライド方式なんです。これをどこまで国民が理解されているかということです。
それからもう一つは、基礎年金なんですが、基礎年金の財政が極めて不安定である。第一号被保険者のうちで保険料を払っている人は半分にも満たないわけです。第三号は全く払っておりません。そういう形で、専ら被用者年金に負担がしわ寄せされているというのが現状なわけです。
もう一枚見ていただきたいと思います。そういう今の大きな問題を解決するためにどういう制度改革が必要かということなんですが、そういう議論を避けるために、今回の年金財政計算というのは極めて楽観的な推計をしているわけですね。
右のグラフを見ていただきますと、これは積立金の見通しなんですが、この場合、四つのシナリオがありますが、最初の二つは極めて楽観的です。なぜ楽観的かというと、何と、積立金が今後どんどん膨らんで、発散しそうな勢いなわけですよね。こんなに積立金が増えるのなら、何の改革も要らないわけです。
何で積立金が増えるかというと、これは足下で増えているからで、前回の財政検証時よりも、株高とかいろいろな状況によって、予想以上に年金が積み上がっている。それは結構なことです。それが今後五十年、百年続くと思うのか、これは誰が考えたっておかしいわけですよね。
それから、高齢者や女性の就業率が予想以上に上がっている。これも結構なことです。だけれども、高齢者の就業率が上がっているのは、六十五歳に年金が引き上げられるから、それに対応して上がっているわけですが、もう六十五歳以上は上げないと言っているわけで、何でそれにもかかわらず高齢者の就業率が同じペースで上がるのか。
それから、ひどいのは女性の就業率です。この前提では、子育て期の女性の就業率が男子並みに上がる、九〇%にまで上がるというすさまじい前提をしています。どういうケースで女性の就業率がそんなに上がるのか。これは未婚の場合ですよね。現に、未婚化が進んでいるから女性の就業率が上がっているんですが、もし子育て期の女性がみんな未婚になったら、何が起こると思われますか。子供が生まれません。それにもかかわらず、出生率の方はどんどん上がるという前提。こんな非論理的な、矛盾した前提に基づいた年金財政というのは本当にいいんでしょうかということです。
もう一枚めくっていただきたいと思います。
最も矛盾が起こっているのは、出生率なんですよね。私も昔、人口問題審議会に入れていただいていましたが、ここでは物すごく精緻な人口推計をしている。ただ、前提が問題で、出生率というのは推計じゃなくて前提なんですよね。過去六回の人口推計で五回、過大推計になっている。今回の出生率だって、今、どんどん子供の数が減っているわけで、むしろ加速しているのに、二三年を底にして、二四年は急速に上がって、今後は上がり続ける、上がって安定する、どこからこんな結論が出てくるのか。
間もなく、六月に二〇二四年の合計特殊出生率が出る予定ですが、これが多分一・一五と言われている。一・一五というのは、実は低位推計に非常に近い水準なんですよね。そこで止まるならいいんですが、本当に止まる保証もない。韓国では〇・八ぐらいまで下がっている。
そういう状況の下で、仮に、今中心となっている中位値を低位値に置き換えたらどうなるか。それが次のページでありますが、そうなると、厚労省が言っている前提が全部狂うわけです。所得代替率、これは厚労省の定義した所得代替率、専業主婦の基礎年金を含めた、水増しした代替率ですが、それが五〇%を切るわけです。
そうしたときには、要するに、財政再計算を見直さなきゃいけないというのが前回の附則にも書いてあるわけで、これを無視していいのかどうか。先日の国会の討議を聞きましたら、それは五年後に考えればいいということですが、足下で低位の水準まで出生率が下がっているときに、そんな悠長なことでいいんでしょうかということです。
もう一枚めくってください。これまで日本の財政をやってきたマクロ経済スライドというのは破綻しているんです。そんなことを誰も知りません。
右のグラフを見ていただきたいと思います。マクロ経済スライドというのは、二〇〇四年から始まったわけですが、本当はもう終わっていなきゃいけない。五〇・二%、二四年ですよね。それが六一・二%にまで上がっている。むしろ、二〇〇四年の水準よりも高い。この二十年間、マクロ経済スライドは全く機能していないんですよね。こんな大事なことがほとんど議論されていない。ですから、今後はこの積み残し分も含めて大幅な減額が必要だから、基礎年金が三割も減額されることになるわけです。
だから、それを厚生年金からどうするとか、そんな技術的な話じゃなくて、こういう状態にもかかわらず、今後ともマクロ経済スライドを続けるのか。支給開始年齢の引上げと併用することで、少なくとも減額のスピードを緩める、あるいは減額しないということを、本当は国会で議論していただきたいわけです。
次のページを見ていただきますと、年金支給開始年齢の高い国ほど高い給付水準で、これも私が昔勤めておりましたOECDの資料でありますが、個人単位で見ると、日本は何と三八・八%と最も低い水準で、この低い水準の年金を更に下げようというのが今回のやり方なわけです。
日本は世界一の寿命にもかかわらず、支給開始年齢が六十五のままになっている。なぜ、人の国並みに、アメリカやイギリスのように六十七まで上げられないのか。今年が六十五まで到達した年なわけです、男性について。このままのペースで六十六、六十七と上がるということがなぜできないのかということです。
最後になりますが、そういうことも踏まえまして、本来の年金改正案というのは、国民に負担を求める以上、多様な選択肢の情報開示をしていただきたい。支給開始年齢の議論は、年金審議会でも全く議論されませんでした。基礎年金の税方式も全く議論されませんでした。我々は厚労省の手の中で踊っているわけで、本来大事な年金改革案は全く議論されていない。こういうことも含めて、是非国会では議論していただきたい。
それから、福田内閣でやったときのように、厚労省じゃなくて内閣の下に、当時は社会保障国民会議というのを設けましたが、今でも全世代社会保障会議というのがありますので、そういうところで雇用制度も含めて議論していただかないとまずいわけです。やはり、高齢者がもっと働けるような状況にする、そのためには、いろいろな労働市場の整備が必要です。そういうことを踏まえて、一体的に年金問題を議論する。
先ほどの税方式になりますと、第三号の問題もなくなりますし、第一号の未納問題もなくなります、年金財政も安定化します。なぜ、この抜本的な議論、福田内閣のときには、これがあと一歩まで、できるところまで行ったわけですね。それが残念ながら潰されてしまった。今からでも遅くないわけで、是非、福田内閣のときに議論した社会保障国民会議の議論をもう一度やっていただきたいと思います。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
○藤丸委員長 ありがとうございました。
次に、たかまつ参考人にお願いいたします。
○たかまつ参考人 株式会社笑下村塾のたかまつななと申します。
本日は、貴重な機会をありがとうございます。
私は、若者の政治参加を推進する活動をしています。年金部会の委員では最年少でした。若者世代の声を本日は届けたいと思います。
年金部会での取りまとめの後、SNS等で情報発信をしたところ、大きな反響があり、いわば炎上をしました。現役世代の声を十分受け止められていないのではないかというふうに考え、インターネットを通してアンケートを実施しました。若者、現役世代を中心に、五百十三名の方から回答をいただきました。
その声をまとめて、見えてくるポイントは三つです。
一つ目、現役世代の負担軽減の必要性です。
現役世代は、現状の年金制度に不安を覚えています。本来、利益のある制度にもかかわらず、強制加入はやめてほしいという声すらありました。世代間の格差を強く感じており、子育て世代の負担は重過ぎるとの声が多く見受けられました。
二つ目、政策検討プロセスへの若者の参加の必要性です。
年金制度には、若者世代も負担者、将来の受給者として大きく関わっているにもかかわらず、年金部会の議論に当事者たる自分たち若者世代はほとんど参加していません。もっと政策検討プロセスに若者の声を反映する仕組みが必要だと思います。そのほかに、専業主婦などの三号被保険者の当事者、障害者、遺族、貧困の高齢者、子供なども政策検討プロセスの会議に入るべきだと思います。
三つ目、政府、政治による情報発信の必要性です。
納得感のある説明がなされていないことが社会保障制度への不信感につながり、先ほどのような強制加入反対といった声にもつながっています。同じ改革でも、理解、納得感を高めることが必要です。国民目線での情報発信に取り組むべきだと考えています。部会、党、国会の意思決定の透明化、情報の積極的な発信に努めるべきだと考えています。
続いて、法案についてですが、基本的に私は法案に賛成です。男女の格差を解消し、働き方に中立的な制度へと転換している点は大きく評価できると思います。
その上で、今大きく議論になっている点について述べたいと思います。三つほど述べます。
一つ目は、調整期間の一致についてです。
今、国会やメディアの中で議論となっている国民年金、厚生年金のマクロ経済スライドの調整期間の一致を通した基礎年金の底上げについて意見を述べたいと思います。
調整期間の一致により、マクロ経済スライドを早期に終了することで、将来の給付水準が上がり、給付水準の世代間格差をなくすことにつながります。そのため、調整期間の一致について私は賛成です。しかし、若者世代の負担感や将来不安に寄り添うための施策が更に必要だと考えます。
調整期間の一致に関しては、将来、一から二兆円単位で増えていく国庫負担の財源にめどをつける必要があります。現役世代の間では、社会保険料の負担の重さから、不安や不満が広がっています。今の現役世代の給付水準を上げるためであっても、現役世代に更なる負担を求めることは望ましいことではないと思います。将来の給付水準を引き上げるためには、国庫負担の財源を確保することが必要です。そのためには、年金課税の見直しや、高所得者への年金給付の在り方を見直し、例えば在職老齢年金の見直しやクローバックの導入などを行い、負担能力がある高齢者の方に負担をお願いするなどということも一案として検討するべきだと考えています。高齢者の方についても負担をお願いするのは、世代間格差や世代内格差をなくすということにつながっていくと思います。
また、調整期間の一致は、一階部分を厚くすることで年金の給付水準全体を上げていくことに狙いがあります。しかし、加入期間が短いために低年金となってしまった人には別途対策が必要です。元々加入期間が短い方は、給付額が底上げされても、その影響は大きくありません。そのため、住居、福祉、医療、介護などの側面においても、低年金の人をどのように支えるのかということについては議論する必要があると思います。
二つ目は、適用拡大、企業規模要件撤廃に十年もかけて本当にいいのかということです。
適用拡大は、年金部会で議論されていた時期よりも遅れていると思います。年金部会では、次の財政検証の二〇二九年頃までに企業規模要件を撤廃すべきとの意見もありました。働き方改革関連法でも、中小企業への導入を遅らせましたが、そのことによってかえって大企業との差を生み出してしまいました。適用拡大についても、企業規模要件撤廃を遅くすればするほど、中小企業の人材獲得において大企業よりも不利にしてしまうことが予測されます。二〇三五年には、非正規雇用の人が多かった氷河期世代の先頭が既に六十代に入ってしまいます。いち早く適用拡大を進めることで、中小企業に勤める非正規の氷河期世代の人を救うことにつながると思います。
三つ目は、三号被保険者制度についてです。
今回、法案の附則に、今後、第三号被保険者制度の調査、検討をするという規定が入りました。改正案は働き方に中立な年金制度を目指しているにもかかわらず、第三号被保険者制度は時代にそぐわない制度となっています。しかし、審議会においても、廃止する方向性ではまとまりませんでした。三号被保険者にとどまるように、年収を百三十万円以内に抑えようと働き控えをする方がいます。こういった就業調整は女性の社会進出にとっても足かせになります。就業調整しなければ将来の給付水準の向上が見込まれるため、高齢女性の貧困対策にもつながります。
しかし、第三号被保険者から外れてしまうと保険料を自分で払わなければならないというふうに考え、就業調整する人がいまだにたくさんいるのが現実です。そこで、廃止の方向性を示し、段階的になくす見通しをつけるだけでも、女性の就労を後押しすることができると思います。
他方で、三号制度を廃止する上でも、十分に働くことができない人への配慮というのは当然必要です。例えば病気、障害、育児、介護、不妊治療など、様々な理由から十分に働くことができない人がいます。そのため、そのような事情がある人に対する給付や支援は別途考える必要があります。
所得や結婚しているかというところでしか実態が分からず、育児や介護などで困っている人がいるかもしれないからということで残すというのは、本質的ではないのではないかと私は考えます。今後、マイナンバー等を利用することで、資産やその他、支援する必要があるかどうかを判断できると、より支援が手厚く、より困った方に政策が届くと思います。
続いては、法案に盛り込まれていない点について、五つほど述べたいと思います。
一つ目、若者世代の声についてです。
若者世代の不満や不信の声が高まり、心理的な安心という観点では、セーフティーネットがうまく機能していません。審議会の透明性を上げる、当事者の声を入れるというのはもちろんのこと、広報に力を入れるということなどをするべきです。また、子育て政策や女性のライフスタイルの中で、年金政策をセットで論じる必要があるというふうに考えています。
二つ目、学生の納付率についてです。
学生納付特例については、追納率が一割以下ととても低く、抜本的な見直しが必要です。年金の加入年齢を一般的な大学卒業年齢である二十二歳にすることなども含めて、検討していただきたいです。
三つ目、家族の多様化についてです。
LGBTQプラスカップルについて年金がどのように権利保障していくのかというところは、部会でも余り議論されなかった点です。この点についてもしっかりと議論を進めていただきたいです。
四つ目、障害年金についてです。
障害年金の論点整理は複雑で、今回は部会でも取りまとめることができませんでした。なので、五年に一度の改正の時期にこだわらずに、別途進めるべきだと思います。当事者、医師、実務家などを交えた会議を設けたり、見直したりすることなどを附則に追加できないか、検討していただきたいです。
五つ目、委員の誹謗中傷対策についてです。
私が年金について情報発信したところ、殺害予告が届き、事務所の郵便受けが壊されるなど、事務的にも、精神的にも、金銭的にも相当の負担が生じました。これから、こども基本法により、子供の意見表明の機会を確保するということが必要となってきます。子供たちが政策的な議論に関わっていく中で、子供たちの安全を守る必要があります。これを機に、子供たちに限らず、審議会の委員を安全にしっかり守っていくことについても検討していただきたいと思っています。
今回、厚生労働省の担当課の方とも密に連携し対応しましたが、やはり、担当課は法案の折衝もありますので、誹謗中傷や暴力に対して毅然とした態度を示すことができるような支援体制を政府の中で設けてほしいと思います。開示請求の予算をプールする、相談できる窓口を別途独立して設立するなど、検討をお願いします。
最後に、私から伝えたいことです。
若者の漠然とした将来不安や年金不安、それらを知識不足や誤解だと決めつけるのではなく、若者世代の不安に寄り添って制度改正を進めることが重要だと考えています。年金制度があるのに将来の不安が大きいと、今使えるお金が使えないというふうに考えてしまい、そのことから、結婚や出産をしたいのにためらうことにもつながります。高齢者の中での支え合いがもう少しできないのか、子育て支援を充実させることはできないのか、例えば、子供を持つ世帯に向けて社会保険料を軽減したり、更に広報を強化するなど、いろいろな考え方ができると思います。是非、若者世代の不安に寄り添っていただきたいです。
以上で私の意見を終了します。ありがとうございました。(拍手)
○藤丸委員長 ありがとうございました。
次に、井上参考人にお願いいたします。
○井上参考人 経団連の専務理事の井上でございます。
本日は、年金制度改正法案の審議に際しまして、意見を申し述べる機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
本法案は、政府の社会保障審議会年金部会における検討を踏まえつつ、これを修正して提出をされた法案と理解をしております。審議会での検討の段階でも私どもから種々御意見を申し上げたところでありますが、本法案が目指す改正の方向性に賛同する立場から、総論、各論、そして残された課題などにつきまして、意見を申し述べさせていただきます。
まず、総論を申し述べます。
ここ数年、成長と分配の好循環の実現、継続を目指しまして、官民が連携をして、投資の拡大、賃金の引上げに取り組んでおります。私ども経団連といたしましても、賃金引上げのモメンタムの継続は企業の社会的な責務と位置づけまして、会員企業に強く呼びかけを続けた結果、一昨年を起点といたしまして、昨年加速をさせ、そして本年と、大手企業では二年連続で五%を上回る賃金引上げが実現をしております。
この賃金の引上げが手取りの増大に結びつき、そして、安心して消費に回り、更なる成長へ循環していくことが不可欠と考えております。そのためには、年金制度を始めとする持続可能な全世代型な社会保障制度の構築が不可欠であり、繰り返し訴えてきたところでございます。
私どもは、企業として従業員の社会保険料の半分を支払う立場であると同時に、社会保障制度を成長と分配の好循環の基盤としていくという立場で意見発信に努めております。老後の生活と若年層の将来に対する不安を払拭するために、今回の改正を着実に前に進めると同時に、更なる改正も検討を継続すべきと考えております。このような観点から、今回の制度改正に当たり、私どもは、年齢にかかわらず、働き方に中立で労働参加促進型の制度、そして、公正公平で予見可能性のある仕組みの実現を訴えてまいりました。
次に、各論といたしまして、改正法案に盛り込まれている主要項目について申し述べます。
第一に、被用者保険の適用拡大でございます。働き方が多様化する中で、中立な制度を構築するという観点、また、被用者保険に加入することで老後の生活基盤をより充実させる観点から、企業要件や賃金要件の撤廃については妥当であるというふうに考えております。また、適用拡大の進め方につきましては、中小零細企業等の負担に配慮された結果と認識をしております。
第二に、在職老齢年金の見直しでございます。年齢に関わりなく高齢者が就労できる環境の整備という観点から、支給停止となる収入基準額を引き上げ、対象者を縮小することは妥当であるというふうに考えております。
第三が、標準報酬月額の上限の段階的な引上げでございます。改正案では、負担能力に応じた負担を求めることを基本としながら、今後の引上げに関しても、予見可能性を高めるルールを創設するものであります。また、これによる個人及び我々事業主に対する保険料負担増についても、段階的に引き上げることで激変緩和が図られており、合理的な内容と受け止めております。
第四といたしまして、法案には含まれておりませんが、将来の基礎年金の給付水準の確保につきまして申し上げます。現役世代の老後への不安を低減する観点から、基礎年金の給付水準の確保は極めて重要であると考えております。
これにつきましては、政府審議会の検討段階では改正項目として盛り込まれていた。その段階で、私どもとしては、その必要性を主張しつつ、一方で、厚生年金と基礎年金の関係が一般的には極めて理解が困難であり、丁寧な説明が必要であると申し上げてまいりました。
年金は、長期間にわたり国民や企業が巨額の保険料を納め、老後に長期間にわたり受給を受けるものでございます。現在、政党間で法案の修正の議論が行われていると認識をしておりますが、是非、国民一般に分かりやすい説明、納得が得られる協議をお願いしたいというふうに思います。
最後に、今回の制度改正を着実に成立をさせていただいた後、更に次の改正で実現をお願いしたい事項を申し添えます。
第一に、適用拡大につきましては、引き続き、働き方の多様化や今回の適用拡大の影響を検証しつつ、労働時間要件についても見直しを進めるべきと考えます。
第二に、在職老齢年金につきましては、廃止すべきと考えております。
第三に、高齢者の就業の状況、年金の充実を考えますと、基礎年金の拠出期間の四十五年化をできるだけ早く実現すべきと考えております。
第四に、第三号被保険者につきまして、既に専業主婦世帯が三割を切るという状況の下、私どもとしては、まずは適用拡大を進めつつ、残された第三号被保険者の個々の状況を速やかに精査の上、制度の見直しを図るべきと考えております。
最後となりますが、経団連では、フューチャーデザイン二〇四〇という提言の中で、成長と分配の好循環を回し続けるためには、年金のみならず、医療や介護などを含む全世代型社会保障制度改革が不可欠と指摘をしております。現役世代に負担が偏っている社会保険料のバランスを是正して、持続可能な社会保障制度を確立するためには、税制も含めた見直しが欠かせません。
税、財政、社会保障制度の一体改革を推進するための会議を設置をし、また、複雑な社会保障制度について国民全体に分かりやすい説明を行い、納得性のある、公正公平で持続可能な全世代型社会保障制度改革を実現するよう切にお願いを申し上げまして、私からの意見を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
○藤丸委員長 ありがとうございました。
以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。
―――――――――――――
○藤丸委員長 これより参考人に対する質疑を行います。
質疑の申出がありますので、順次これを許します。草間剛君。
○草間委員 おはようございます。自民党の草間剛と申します。
先生方、今日は、大変お忙しい中、貴重なお話を本当にありがとうございました。大変参考になりました。年金制度改革の議論も本委員会では中盤に差しかかっておりまして、先生方の御意見を参考に、今後とも議論を深めていきたいと思います。
そして、今日は、私からまず初めに質問させていただきたいんですけれども、私、実は、昨年当選した一期生でございまして、今四十三歳でございます。
就職氷河期では最後の方だと思うんですけれども、多くの先輩方や仲間も就職難にあえいで、私自身も、大学院を出てそのまま早稲田大学に就職をしたんですけれども、その研究所で非正規で五年間勤めておりまして、マニフェスト研究所というところなんですけれども、ボーナスもなくて、お金がないから、年末年始とかはコンサート会場でアルバイトをしながら何とかやっていたということで、当時の仲間たちと話しても、やはり年金不信という言葉を同世代はよく使っております。
玉木先生には、長年、年金制度に携わられておりまして、特に年金不信という言葉に対して、事態に対して、長年これに真正面から取り組んでこられたと思います。この年金不信というのは、まさに政治が解決しなければいけないというのはもちろんなんですけれども、じゃ、今の状況下で、具体的に、この年金不信、どのように解消していけばいいのかという御示唆を玉木先生からまずいただきたいと思います。
○玉木参考人 御質問ありがとうございます。
年金不信、多分、我が国が直面する最大の課題のうちの一つではないかと思います。
この点につきましては、私、短期大学部の教員でございますので、十八歳あるいは二十歳ぐらいの女性たちと毎日接しておりますけれども、若い方々というのは、やはり目先の数年間を見ながら生きております。私は六十九歳でございますので、そろそろ自分が認知症になることを考えながら生きているわけでございますけれども。
人間というのは、やはり目先の数年間の短い期間しか、なかなかタイムホライズンに入れて行動できないんだろうと思いますので、私は、十八とか二十歳とかといった若い方々に年金について細かく理解するようなことを求めるというのは、コストパフォーマンスがよろしくないやり方だろうかと思います。
むしろ、社会としてこの世の中は割と合理的にできているとか、割とうまくいっていることがよくあるんだといったことについて気づいてもらえるようなことをやっていくということが、恐らく、回り回って年金不信の軽減又は信認の増大に達していくんだろうと思います。
過去二十年、三十年を振り返りますと、いろいろな問題がありましたけれども、なるべく年金については、先生方、委員の皆様に御尽力をいただいて、長期的な観点から大人たちはしっかり考えているんだといったメッセージをいろいろな場で発していただきたいと思うところでございます。
以上です。
○草間委員 先生、ありがとうございます。
重ねて、玉木先生、先生には、年金リテラシーというものにもお詳しくいらっしゃると思いまして、十年前ですかね、年金リテラシー研究会というものの主査もされていらっしゃったとお聞きしまして、私も報告書を拝読をさせていただきました。
この委員会では、与野党共に、年金報道の難しさについて議論が多くございました。私は自民党なんですけれども、例えば、先日の委員会では立憲民主党さんからも、ネットでぼこぼこにされているというような事実が山井先生からもございまして、様々な、やはり、先ほど、たかまつななさんからもネットでいろいろな意見があるということがあって、このリテラシーといいますか、報道の難しさというのに今直面していると思います。
先生から見た今回の年金改革における報道の難しさと、議論する側はどのように伝えていけばいいのかということも教えていただきたいと思います。
○玉木参考人 年金リテラシー研究会の報告書を読んでいただきまして、誠にありがとうございます。
実は、あの報告書は、百ページぐらいありますでしょうか、私ども、研究会で議論し、また執筆しております中で、是非、この報告書は高校の先生方に読んでいただきたい、高校の社会科あるいは家庭科の先生方に読んでいただいて授業に役立てていただきたいなと思いつつ書きました。実際、その目的の下、各チャプターの後ろに、先生と生徒とか、あるいは、ある教員と別の教員の高校の職員室の会話といったものを想定しながら、各章の同じ内容を、対話形式、対談形式で書いたりもいたしました。様々な方法はございます。
今回の法案、特に調整期間の一致という点は、非常に難しいところではございますけれども、先ほど駒村教授から御指摘のあった流用という誤解については、まずこれは一丁目一番地、排除していかなければいけないなと思うところでございます。
流用というのは非常に情緒に訴える言葉でございまして、これは生産的な言葉ではないと思います。したがって、なるべく冷静な、情緒に動かされない、中長期的な観点からの合理的な議論が行われているということを是非国民の皆さんに知っていただくようにお努めいただきたいと思うところでございます。
以上です。
○草間委員 ありがとうございました。
本当にこれは難しいといいますか、今日、恐らく、先生方からそういった御発言があることも、もしかしたら報道されるかどうかも分からないというところがあると思うんですけれども、本当にこの積み重ねをしっかりしていかなければいけないなと思いました。
各論に少し入らせていただいて、経団連の井上参考人にもお聞きしたいんですけれども、先ほどおっしゃられたように、経団連としては、昨年ですか、九月三十日に、年金制度改正に向けた見解を公表されて、高齢者が一定以上の賃金を得ている場合に年金額が減る在職老齢年金制度について、将来的に廃止すべきだと打ち出された。先ほども御発言がございました。
井上参考人には、その背景といいますか、もうちょっと詳細をお話をいただきたいと思います。
○井上参考人 一つは、やはり今、非常に厳しい人手不足の中で高齢者の就労も拡大しつつあるわけなんですけれども、やはり高齢者の中にも、在職老齢年金の金額を気にして就業調整をする方もいらっしゃるというのは事実であります。
したがいまして、人手不足の中、また、本人が働きたいという意思を持つ方、こういう方にとって中立な制度ということであれば、やはり在職老齢年金自体は廃止をして、自由に働いて、それで、年金は、納めた者としても年金の権利はあるわけですから、それはそれでもらう、いただくということで、高齢者の就労促進型の制度という面からして、この在老の廃止が重要であるというふうに考えております。
以上でございます。
○草間委員 同じく、先ほどの御説明の中に玉木先生も、この点については強く、在老の廃止、見直しですか、御発言されておりましたので、もうちょっと補足をして、なぜ廃止なのかということをお伝えいただきたいと思います。
○玉木参考人 まず、在職老齢年金という制度は、六十五歳を境にして生ずる制度でございますけれども、今の世の中、能力があって、意欲があって、世の中にとって大変貴重という方が、六十五歳を超えてたくさんおられるということでございます。特に、六十五歳以上の、あるいは六十代後半の就業率というのは、大体十年から十五年ぐらい前から劇的に上昇しておりまして、世の中におけます六十代後半の方々の働く人としてのポジションというのは様変わりをしてございます。
また、三十年前ぐらいですと、例えば六十代後半で日本人の平均並みの給与が得られるということは余りなくて、そういった方々は、例えば会社の役員とか、特に恵まれた方というイメージで捉えることができたかと思いますけれども、今では、ごく普通の方でございます。そういった方に何かペナルティーみたいなものが加わるというのは、ちょっといかがなものかと。
確かに年金財政は大変ですし、若者の負担を軽減するというのもございますけれども、この点については、先ほど、たかまつさんからも幾つも御提案があったように、ほかに幾らでもやりようはあるだろうと思いますので、在職老齢年金を支給停止にすることによって何か財源をつくるという発想はおかしいなと。むしろ、これがあることによって人々が違和感を持ってしまうという点のマイナスを是非お考えいただきたいと思うところでございます。
以上です。
○草間委員 ありがとうございました。
実は、私、自民党の中では青年局の学生部副部長というものを務めておりまして、日曜日には自民党の学生部の全国大会がございまして、党本部でやらせていただいて、マスコミフルオープンで、自民党の小野寺政調会長と学生が五十分間ぐらい議論をするという機会がございました。学生が二百人ぐらいですか、集まって、二十人、三十人の学生が質問をしていたんですけれども、安全保障とか選挙権の引下げとか、そういった質問はあったんですけれども、年金のネの字も出ませんでした。小野寺政調会長がわざわざ、今、国会では年金法案が山場になっていましてみたいな話もしているんですけれども、質問はゼロだった。
これはやはり、先ほど玉木先生からありましたけれども、私もそうでしたけれども、学生時代に年金に関心を持つというのは、なかなか難しさがあるかもしれません。
駒村先生は慶應大学で御教授をされているということでございまして、ゼミや授業、まあ、授業ではなかなか難しいかもしれないです、先生のお近くの、まさに大家である先生の周りの学生たちは一体どのように考えているのかというのと、どうやって学生たちにアプローチしていけばいいかというのもちょっと教えていただきたいと思います。
○駒村参考人 ありがとうございます。
うちのゼミは年金を主要テーマとしてやっておりますが、ほかにもやる研究を認めているんですけれども、やはり、私も若いときはそうでしたけれども、四十年も先のことを考えて生活するのはなかなか難しいかなと思っています。
したがって、まず二十歳になれば払います、何がもらえるのかということで、先ほどもリテラシーをちゃんとつけるということで、やはり市民として年金制度をどう考えていくのかということを勉強する機会を、実は学生版の年金学会がありまして、そこにエントリーする形で、とにかく報告書を書かせるという中で、自分たちの頭で考えさせるという機会を与えていますが、正直なところ、なかなか一般的には、はるか先のことを考えるのは人間としては難しいと思います。
だから、ある種、強制加入、先ほども、たかまつさんから、どうかという話もありましたけれども、だからこそ、四十になって後悔しないように、強制加入の制度とさせていただいているんだと思っております。
ありがとうございます。
○草間委員 たかまつさん、先ほど、誹謗中傷があるというのは、もう絶対にこれはあってはならないことなので、対策を進めなければいけないと私も思いました。
その中で、広報ということにたかまつさんは触れていただいたんですけれども、前回も委員会で森下千里議員の方から、これをしっかりやらなくちゃいけないということはあったんです。でも、年金の広報って一体どうやればいいのかなというのがずっと考えていたことなんですけれども、たかまつさん、何かアイデアがありましたら、最後にお願いしたいと思います。
○たかまつ参考人 ありがとうございます。
年金の広報について私が一番有力だなと思うのは、やはりSNSでデマが広がっているので、SNS上に年金不信の若者がたくさんいるということなので、そこに直接呼びかけていただきたいなと。広報をやるというと、何か新しいパンフレットを作るとか動画を作るとか、そういうことで、見てくださいという構えなんですが、そうじゃなくて、年金不信の若者に直接アプローチしていただきたいなと思っています。
厚生労働省は、年金の中で広報を独立して持っている、それは非常に珍しいことなので、それをしっかりと生かしていただきたいなと。私は、SNSで誹謗中傷とかデマの方が物すごく広がるスピードが速いので、それに対して打ち返す、言い返す人というのは、社会保障とか年金の分野においてはフォロワーの方が多くて、そのデマを打ち返す人はそんなにいないなと思うので、なので、厚生労働省の年金局の広報がしっかりとそれを担うべきではないかなと。ちょっと難しいところもあると思うんですけれども、やっていただきたいなと思います。
○草間委員 ありがとうございました。
そうですね。僕の質問調整をいただいた厚労省の方々がこれができるかというところはあるかもしれないんですけれども、どうもありがとうございました。これは大変重要なポイントだと思いますし、先生方の御意見を参考に今後とも議論させていただきます。
今日はどうもありがとうございました。
○藤丸委員長 次に、井坂信彦君。
○井坂委員 立憲民主党の井坂信彦です。
参考人の皆様には、本当に多様な知見を授けていただき、ありがとうございました。
まず、駒村参考人に伺います。
いただいた資料は大変気づきが多かったです。例えば、この五ページの二番のところで、基礎年金の給付水準は、このままいくとどんどん、いわゆる基礎年金、全員の基礎年金が、厚生年金の人も三割下がってしまう。これは普通の老齢基礎年金のみならず、障害基礎年金とか遺族基礎年金も同様に低下する。あっ、確かにそうだなと気づきがありました。
これについて、本当に、これも同じように、今回修正しなかったら、障害基礎年金、遺族基礎年金も今後三割減ってしまうということなのかということをお伺いしたいと思います。
○駒村参考人 基礎年金、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族年金、共にマクロ経済スライドの対象になりますので、同じような下がり方になるという認識です。
日本の所得保障制度は、基礎年金をベースに、障害があっても基礎年金があるはずだ、主たる働き手が亡くなっても遺族年金があるはずだ、ここがまず基盤になっていますので、ここが崩れていく。老齢年金は確かに働く期間を延ばせれば何とかなりますけれども、基礎年金はなかなかそうはいかない部分がある。障害年金、遺族年金はそういう弱い部分があるだろうと思いますので、共に下がるのは大きな問題だと思っております。
以上です。
○井坂委員 ありがとうございます。
確かに、本当にこれは大問題だというふうに思います。
もう一つ、この五ページで、三番で書いておられる生活保護受給。放っておくと、やはり生活保護受給が増える可能性が高まると。現在は、マクロ経済スライドで、副作用として、貧困の上昇とか生活保護給付の増加というのが十分考慮されていないというふうに書かれております。
財源の問題のときも我々考えるんですけれども、国庫負担、新規財源かどうかは別にして、仮に必要だとしても、じゃ、このまま放っておいたら、やはり生活保護に行く人が間違いなく増えて、そっちの方で国庫負担が増えるだろう。この辺りの将来見通しをやはりしっかりすべきだと思うんですが、駒村参考人も、生活保護の、あるいは老後の貧困の将来見通しというのを、やはり年金を考えるときは後々までしっかり推計をすべきかどうなのかということをお聞きをしたいと思います。
○駒村参考人 社会保障の将来推計の中で、マクロ経済スライドをやれば、年金の対GDP比は抑えられていくということになっています。一方で、福祉系の予算はほとんど増えないような設計になっているわけですけれども、本来は、年金を下げれば生活保護等の福祉系の予算が増えてもいいというふうに考えますので、やはり年金を下げると、特に生活保護に該当するような方が増えてくるのではないか。
これは、国内のみならずOECDの研究の中でも、年金の給付水準を下げるとやはり高齢者の貧困率は上がるということはほぼほぼコンセンサスを得ていますので、年金制度の設計次第によって、どのくらい上がるかとか、生活保護の水準次第によって、国によってそれぞれですけれども、しかしながら上がってくるだろうと。
今後、見通しとして心配なのは、氷河期、団塊ジュニア世代が一学年二百万人ぐらいいる世代もある。それから、この世代の五十歳時点未婚率は男性が三〇%近くまで来ている。生活保護の受給状況を見ると、やはり単身なんかは非常に保護率が高いというのもありますので、そのウェートが増えつつ、更に基礎年金が三割下がるというと、かなり生活保護制度に負担をかけてくるのではないかと思われます。
以上です。
○井坂委員 ありがとうございます。
本当に、財政の将来見通し、年金の将来見通しだけでなく、今回、マクロ経済スライドの早期終了をしなかった場合に、別のところで莫大な、生活保護費を始めとする国庫負担が生じるのではないかということも、やはりしっかりと推計をして比較して考える必要が私はあるというふうに思います。
ちょっと、駒村参考人にまた続けてお聞きをするんですが、今回、やはりマクロ経済スライドの早期終了というのは、二つのリバランス、バランスの取り直しではないかというふうに考えています。
一つは、これは玉木参考人もおっしゃった、いわゆる報酬比例部分、厚生年金の二階部分と一階部分、基礎年金部分のバランスの取り直しではないかということです。
駒村参考人に伺いますが、四ページのこの図、これは厚労省も時々出してきますけれども、やはり、厚生年金の人の基礎年金部分とその上に乗っている報酬比例部分、これは六対四ぐらいで元々制度をつくっていましたね。それが、マクロ経済スライドが同時に減っていって、同時に終わって、やはり多少減っても六対四、土台が六、どっしり基礎年金があって、その上にたくさん掛けた人はたくさんもらえるという報酬比例部分が四割あるというはずだったのに、今このまま放っておくと、それが、基礎年金部分、土台の部分ばかりがこれからどんどん減ってしまって、五対五になってしまう。それを六対四に戻す必要があるのではないかということだと思うんですけれども、この一階部分、厚生年金の人の基礎年金部分、一階部分と二階部分のバランスの取り直し、リバランスが必要だということについて、もう少し詳しくお聞かせいただきたいというふうに思います。
○駒村参考人 今委員がお話しされたように、このままいくと、基礎年金、正確に言うと国民年金が、非常にこれは、納付額が少なかったとか未納が多かったとか免除が多いから国民年金の財政状況がよろしくないというわけではなくて、デフレ調整能力がなかった。これは、二〇〇四年年金改革のときのある種のバグみたいな部分がありまして、デフレのときに十分調整できない構造になっていた。だから宿題だったんですけれども、それが今出てきてしまって、どうも上半身部分はちゃんと体に肉がついて、むしろどんどんどんどん上半身部分に肉がついちゃって、下半身部分はどんどんどんどん痩せていくという構造になってしまったので、ここは一回そのバランスを本来あるべき体のバランスに戻す。上半身につき過ぎた肉を下半身の方に回そう、こういう効果を目指しているということでございます。
ありがとうございます。
○井坂委員 ありがとうございます。
もう一つのバランスの取り直しというのは、世代間のバランスの取り直しの要素もあるのではないかと思っています。
駒村先生の資料の十一ページなんですけれども、世代間連帯、そして氷河期世代を始めとする世代ガチャというような言葉が書いてあります。これまでは、やはり年金制度というと、現役世代、若い世代が今、年金を受け取っておられる世代に一生懸命保険料を払ってやっているという、何かどっちかというと、若い世代、現役世代が、言い方は難しいですけれども、損をして、高齢世代がやや、払った年金保険料より多く受け取っているんじゃないか、こういう話があったと思うんです。
駒村先生のこの十一ページを拝見して、ああ、なるほど、そうだなと思ったのは、今回、我々は今、修正案を検討しておりますが、マクロ経済スライドの早期終了をやると、本当にこれまでと逆の高齢世代から、今大変手薄になってしまっている現役世代、また若者世代への逆支援というか、そういうお金の流れに、もしかしたら年金の仕組み上初めてこういうことになるのかなというふうにちょっと気づきがあったんですけれども、その辺り、もう少し詳しくお聞かせいただきたいと思います。
○駒村参考人 ありがとうございます。
そこに関する記述は十一ページ、十二ページ、三十三ページ、それから最後の中日新聞の記事でも書いてあります。
基本的には今委員がおっしゃったとおりでございまして、まず十二ページにありますように、今の氷河期世代に相当する世代、いろいろな時代でそれぞれ苦難というのはあるんですけれども、社会経済構造、働き方の構造改革に直面して非常に不利な時期が長かった、こういう世代でございます。本来、この世代の前に、リタイアする前にマクロ経済スライドは終わっているべきだったものが、これが、よりによって基礎年金だけ、しかも長くなって直撃するということが明らかになってきたということになります。
年金というのは、若い世代から高齢世代に回すだけではないんじゃないのか。この十二ページに書いてありますように、これは、ある段階、氷河期世代の上の、ちょうどその親の世代を上から遡ったものでございます。例えば、どの時代に生まれるかなんて、本人は選ぶことはできません。
三十三ページに書いてあるのは、まさに大正世代、今の氷河期世代から見ると祖父の世代に当たりますけれども、これはどういう目に遭ってしまって、その人生を社会保障制度が戦後どう対応してきたのかというのを考えると、社会保障制度それから年金制度全体も、不幸にして自分の生まれてくる時代は選べませんから、不幸な世代に遭った世代を、世代ガチャの部分をちゃんとならす効果があるというふうに考えると、今回は、実はやや、しかもマクロ経済スライドが遅れることによって期せずして利益を得た分を少し御遠慮いただく、氷河期世代より上の方に御遠慮いただいて、その分を氷河期世代より下の方に回して、世代間移転でいうと逆の流れでありますけれども、世代間のリスク分散機能を発揮させようという性格もあるのではないかと思っています。
以上です。
○井坂委員 ありがとうございます。
ちょっと、たかまつ参考人に一問だけ今の話をお聞きしたいんですけれども、要は、高齢世代から今現役世代への逆のお金の流れを、もしこの底上げをやろうとしたら、そういうことが起こるという話でありました。
たかまつ参考人は、まず、基礎年金底上げについては賛成だというふうにおっしゃっていたんですけれども、若い世代、現役世代の目線で、この基礎年金の底上げ、厚生年金の人も含めて、基礎年金の底上げをやるとどういういいことがあると考えておられるのか。
また、今陳述でおっしゃった、高所得の高齢世代から少し財源をいただいたらいいんじゃないかという御提案もありましたけれども、今の話では、まさに高所得の高齢世代が、今回、基礎年金底上げをすると、申し訳ないけれども僅かに減ってしまうんですね。高所得高齢者が、減ってしまう。しかし、現役世代、若者世代は、基礎年金、これは厚生年金の人も大幅に増える。この構造について、御提案の内容に近いものとして評価いただけるのかどうか、お伺いしたいと思います。
○たかまつ参考人 基本的に基礎年金の底上げの案について私は賛成しているんですけれども、将来の給付水準が上がるということで、やはりそれは、現役世代の人とか若者世代の人にとっては将来の給付水準が上がるということで、とてもいいことだと思いますし、一部報道とかSNSの方で、それが流用じゃないかというような声というのもあふれていますが、厚生年金に入っている人は皆さん一階の部分にも入っているので、自分の元にも還元されるということは、これは正しくもう少し周知していただく必要があるかなと思うんですけれども、若者世代にとっては基本的に利益になるのではないかなと思って、私は賛成の方をしています。
○井坂委員 ありがとうございます。
駒村参考人に伺いたいんですけれども、あと、いただいた資料でこれもなるほどと思ったのが、七ページ目の選択肢ですね。年金改革、いろいろな手段が今もたくさんあります。例えば、四十五年加入、期間の延長というのはあるんですけれども、伺うと、四十五年加入で上がる所得代替率は四%。一方で、基礎年金の底上げ、我々が今修正案を考えていることでやると、所得代替率で七・七%、それだけで上がる。
ということは、要は、四十五年加入もいいんだけれども、やはり基礎年金底上げは四十五年加入よりも約倍近く効果がある、現役世代と若者世代の厚生年金も含めた年金の底上げには倍近く効果があると単純に見てよいのかどうか、お伺いをしたいと思います。
○駒村参考人 七ページの資料は、これは公表されている厚生労働省の予測から抽出して作ったものでございます。放置しておくと基礎年金の所得代替率が一〇・七下がる、これをどう回復するかという選択肢があるというふうに解釈しますと、今お話ししましたように、適用拡大、それから四十五年、それぞれ効果はあるわけですけれども、一〇・七%の引下げをキャンセルアウトするだけの効果はない。一番大きいのが、やはり七・七%の効果があるマクロ経済スライドの短縮。これに今回、二百万人の適用拡大が加わると九・四%まで回復してきて、あともう一息ということになると思います。もちろん私も、四十五年、延長は賛成でございますので。
まあ、これを全部やれというわけにはいかないと思います。組合せをやって、どうなっていくかを次の財政検証のところでもう一回確認してみるというわけで。ただ、その間も、厚生年金のマクロ経済スライドは止まっちゃうかもしれないので、それは止めないようにしておかなければ調整ができなくなっちゃいますので、そういう動きを眺めながら、組合せを考えていくということになってくるのではないかと思います。
ありがとうございます。
○井坂委員 大変多様な知見を本当にありがとうございました。また明日以降の質疑に生かしてまいります。
失礼いたします。
○藤丸委員長 次に、梅村聡君。
○梅村委員 日本維新の会の梅村聡です。
今日は、五名の参考人の皆様、貴重なお話をありがとうございました。
早速ですけれども、質問に入らせていただきたいと思います。
今ちょうど、井坂さんからお話がありました。今回の基礎年金の底上げについて、これをもう少しお聞きをしておきたいなと思います。
今、井坂さんからお話があったように、今回どれぐらい底上げする効果があるかという話がありましたけれども、やはり今の制度を前提とするならば、保険料支払い期間四十年から四十五年をまず実現をして、その上で様々な選択肢を検討していくということが、私はこれが王道だと思うんですけれども、その王道が今回外されて、そしてマクロ経済スライドに偏っていったというふうに私は認識をしておるわけなんです。
玉木参考人そして駒村参考人、お二方に改めて、今回その王道の部分が、まあ王道かどうか分かりませんが、外された、これに関する御所見をお伺いしたいと思います。
○玉木参考人 今、王道という単語をお使いいただきましたけれども、やはり私は、四十五年加入というのは非常に素直なやり方であり、また国民の理解が非常に得やすいという点で、制度改正をした結果としての国民の信認の在り方まで含めて考えると、これが一番パフォーマンスとしてはよろしいかと思うところでございます。
早期終了の方につきましては、積立金を使うわけでございますけれども、これを活用というか流用というか、そこで言葉の混乱が生じてしまいますので、なるべくなら、四十五年加入というところで、基礎年金を上げるんだという国民的合意ができたところでやりたかったなといったところもないではない、これが私の率直な感想でございます。
○駒村参考人 今回、四十五年の方よりも短縮を優先したというのは、これは、厚生年金報酬比例部分のマクロ経済スライドが二年で止まってしまうというところで、それが止まってしまうと、上から下に動かす栄養がなくなっちゃうということでございますので、急ぎはやはり短縮の方なんですね。
もちろん、同時にやるという方法もありましたけれども、まずどっちか一つということであれば、今お話があったように、素直に考える部分では四十五年、寿命が延びていきますので、加入期間を延ばしてくるのは、これは王道、おっしゃるとおりです。これは世界の流れだと思います。ただ、今の構造上の問題、デフレが続いた構造上の問題を考慮すると、急ぎという点で見ると短縮の方をやらなきゃいけない、さらに、インパクトも短縮の方が大きいということでございます。
ありがとうございます。
○梅村委員 ですので、この選択肢は、きちんとやはり議論をして前に進めていくべき点だと思っておりますので、そのことは、我が党としても、我が党の議論の中で出ているということも、また皆さんで共有をさせていただきたいなと思っております。
その中で、八代参考人からお話がありました支給開始年齢、これに対する議論をどうしていくのか。
確かに、今日、八代参考人からいただいた資料でいきますと、平均寿命と支給開始年齢のこの期間を比べていくと、例えば、六十七歳のアメリカですと、この差が六年間なんですね。イギリス、ドイツは、この差が十一年間。日本は六十五歳、やっと六十五歳に到達しましたけれども、支えなければいけないこの差でいったら十七年あるわけなんです。ですから、これは非常に大きな効果というか、インパクトがあるところだと思っております。
実は、このことを衆議院の本会議で、石破総理にも、引き上げろと言ったわけじゃないんです、引上げも選択肢に入れて議論をすることが大事じゃないかという質問をしたわけです。その結果、答弁は、現在の年金制度は、保険料の上限を固定しつつ、その範囲で給付水準を調整するマクロ経済スライドを導入いたしました結果、六十五歳の支給開始年齢を維持した場合でも、年金財政の長期的なバランスが取れるとなっていますので、今回の年金制度改革で、年金の支給開始年齢の引上げを行うべき、このような議論にはなっていないんだ、こういう答弁なんですけれども、私、答弁が逆だと思っていまして。そもそも、保険料の上限を先に決めて、そして支給開始年齢も固定をしたがために、マクロ経済スライドのここをいじらないといけないという話を、原因と結果を入れ替えて答弁をされている、私はそのように認識をしておるわけなんです。
それで、まず、もう一度、玉木参考人と駒村参考人にお伺いをしたいと思いますが、私は、この答弁は、支給開始年齢の引上げは議論しないんだということが前提の議論のように思うんですけれども、仮に前提を自由にするのであれば、この日本の年金制度の中でも、支給開始年齢の引上げというのは選択肢としては考えなければいけないのかどうか。この点に関して、お二方からもう一度答弁をお願いしたいと思います。
○玉木参考人 ありがとうございます。
今の制度ができました二〇〇四年の当時の議論でございますが、それ以前は給付とそれから拠出を同時決定していたわけでございます。
それに対しまして、保険料率がどこまで上がるか分からぬじゃないかという不安が社会に高まってきたので、上限を固定しよう、どこまで上げて上限を固定すればいいのかということを二〇〇四年改正で決めて、当時一三・何%だった厚生年金保険料率を一八・三まで、二〇一七年までに上げるということを決めたということでございまして、これによって、払う方についての透明性が確保されたということで人々が安心をした。
これを決めてしまいますと、あとは、マクロ経済スライドをするのか、あるいは、ほかの国で一部やっておりますような支給開始年齢を上げて、例えば、今、六十五歳からもらえるやつを、六十七歳とか六十六歳までもらえませんよとするか、どちらかの選択であっただろうかと思います。
ただ、その中で、国民生活にとって影響が少なく、少しずつ少しずついくという観点からいきますと、現在の、物価連動をフルにはやらないで、部分的な連動にとどめるということを一定期間続けるというのは、それなりにうまい方法であったのではないかと思います。
ただ、もちろん、委員御指摘のとおり、理論的な選択肢としてはあったんだろうと思いますが、諸外国において、支給開始年齢を上げるときのポリティカルエネルギーといいますか、そういったものを考えますと、どちらがよかったのか。これもまさに、立法府の皆様の御判断ということになるのではないかと思います。
○梅村委員 駒村参考人にもお伺いします。
○駒村参考人 賦課方式の年金を高齢化社会に対応させるためには、保険料を上げるか、給付を下げるか、支給開始年齢を上げるしかない、この組合せしかないわけです。
二〇〇四年は保険料を固定しました。支給開始年齢も固定しました。その中でつじつまが合うように、年金の給付水準を調整する、高齢化のピッチに合わせて調整する、これがマクロ経済スライドということでございます。その性格は、今、玉木先生がおっしゃったとおりの性格でございますけれども、一方で、今後の将来の選択肢としては、マクロ経済スライドというのは、なかなか個人にとって用意しづらい、予期しにくい、分かりにくい部分もあります。
むしろ、支給開始年齢を少し上げるというターゲットを出した方が、人々の行動が変わる可能性もある。これは、私の資料の中にも、そういう誘導をするときも来るかもしれないという話はしておりますので、将来の選択肢としてあるとは思いますけれども、現時点では、今回の改革の中ではそこまでまだ至っていないんだろうなと思っておりますが、将来の選択肢としては可能性はあると思っております。
ありがとうございます。
○梅村委員 ですから、今おっしゃった三つのファクターを、どうバランスよく国民の皆さんにも理解をしてもらうことが大切なのかということだと思っております。
ここで、次は八代参考人にお伺いをしたいんですが、じゃ、仮に将来というか、検討を含めて支給開始年齢を引き上げていくとなりますと、例えばそのときの与党が、今だったら自民党さんが、仮にそれを国民のためだと思って出したとしても、実際、選挙だとかあるいは世論ということから考えると、言い出した方が負け、こういう政治的な状況というのも私はあると思うんです。でも、海外は六十七歳へ引上げ、いろいろなあつれきがある中で引上げが実現していったという面もあると思いますが、こういったポリティカルな問題になるということと、でも、一方で選択肢を入れないといけない。
どういう解決方法というか、合意を得ていく方法があるのかどうか、もし先生の私見がありましたら、お伺いしたいと思います。
〔委員長退席、長坂委員長代理着席〕
○八代参考人 御質問ありがとうございました。
おっしゃるように、支給開始年齢の引上げというのは物すごいポリティカルエネルギーが必要なわけです。だけれども、ほかの国は実現したわけなんですね。フランスでも、物すごいデモが起こりました。だけれども、マクロン大統領は、これはフランスの年金制度を守るために不可欠だということで、不退転の決意で実施したわけで、なぜそういうことが我が国だけできないのか。日本人のやはり常識というのをもっと政治は信頼すべきじゃないかということですね。
先ほど、国会討論、私も拝見していましたが、石破総理のおっしゃったことは基本的な形式論であって、保険料を固定する、支給開始年齢も固定する、だからあとは全部給付で調整する、その結果がこの三割の基礎年金の減額なわけで、そういう国民窮乏化というのは、どこまでみんなが分かっているか。これまで分かっていなかったのは、マクロスライドが動かなかったからであって、二十年間失敗したわけですね。それが何で今後うまくいくと思っておられるのかということです。
それで、今回の底上げ案というのも、余り今まで議論に出ていませんが、膨大な財政、一般会計からの財政の支援で実現しているわけですね、実際には。だから、厚生年金の報酬と基礎年金を入れ替えることで、基礎年金の方は補助金がつく、報酬比例は補助金がつかないから、そういう意味で、一般会計からの二・六兆円の負担を入れて初めてその効果があるわけで、これは平等な評価じゃないですよね。ほかの、四十年を四十五年にするとかというのは別に、年金制度の改革の問題。
だから、私は、今回の改革案というのは、本来、年金制度の改革でやるべきことを、財務省からなし崩し的に、財源をまさに流用してやったわけで、これは非常に卑劣なやり方だと思います。卑劣というか、非常に大変なやり方だと思います。
ですから、その前にやはり、第一号被保険者で、どんどん免除して半分の人が保険料を払わないということは、将来、国民年金を半分しかもらえない、まさに失業者予備軍、生活保護の予備軍になるわけですね。こういう問題を放置しておいて財政に依存するというのは、非常に私はいいやり方ではないと思います。
だからこそ、次期年金制度じゃなくて、今回なぜそれを議論しないのか。過去は議論していたんですよね。それで、六十歳から六十五歳まで年金支給開始年齢を上げるときも、国会で乱闘が起こったぐらいなんですよね。だけれども、過去のリーダーはそれをやったわけで、なぜ今できないのか。なぜ、どんどん先延ばしばかりするのか。
出生率はどんどん下がっている、財政は悪化している、そういう状況の下で、是非、今からでも遅くはない、今後一年かけて、ちゃんと真剣に年金財政の問題を考えるべきときが来ていると思います。国民窮乏化につながる年金減額制度はもうやめるべきだと思います。もちろん併用も可能ですけれども、それだけでやるというのはおかしい。支給開始年齢というほかの国ではできることが、なぜ日本だけできないのか、その理由を是非教えていただきたいと思います。
以上です。
○梅村委員 ありがとうございます。
たかまつ参考人、井上参考人にもお話をお伺いしたかったんですが、ちょっと時間が来ましたので、これで終わります。
やはり選挙が行われるときに年金が話題になって、しかもそれが争点になるということは、これは一ついいことでもあるし、長い目で見たときに不幸なことでもあるのではないかな、私はそのように感じております。是非争点とすべきことと、政党にかかわらず、争点とすべきでなくて解決していくこと、このバランスをやはり少し欠いているのではないかなと私は考えておりますので、また立法府の人間としてこれから頑張っていきたいと思っております。
今日は、五人の皆様、本当に貴重なお話をありがとうございました。
○長坂委員長代理 次に、森ようすけ君。
○森(よ)委員 国民民主党の森ようすけでございます。
本日は、参考人の皆様、貴重なお時間をいただいて御説明をいただき、大変ありがとうございました。
まず、五名の参考人、皆様にお伺いさせていただきたいんですけれども、ただいま国会においては、与党、野党第一党の間で、マクロ経済スライドの調整期間の一致を入れるかどうかというところで議論が進んでいるところであるんですけれども、このマクロ経済スライドの一致というのは、あんパンのあんこだとかとよく言われているんですけれども、私として問題意識を持っているのが、これがそもそもあんこになり得るものなのかというところを問題意識として持っているところでございます。
それ以外のあんこが必要じゃないかというような観点でお伺いしたいんですけれども、マクロ経済スライドの調整期間の一致によって、多くの方の将来の年金の受給額が増えてくるというふうに言われているんですけれども、一方で、その効果を見ると、どちらかというと、国費の負担が増えることによる効果が大きいというふうに数字上も出ているところです。財源の移転効果が一・九%で、国庫の負担増による効果が三・九%というふうにデータ上は言われているところでございます。なので、国庫の負担の効果の方が大きい。
あと、国庫の負担が増える、増えると言っているけれども、現在価値に直すと税負担は増えないんですよというふうな説明はされているんですけれども、これは、現在価値に直しているので、名目の金額で見ると、間違いなく増えるわけでございます。なので、やはり将来の税負担を誰が負担するのかというところはしっかりと見て議論をしていかないといけないというふうに考えているところでございます。
こうしたことも加えて、マクロ経済スライドの調整期間の一致というのは、あくまで五年後の財政検証を踏まえてやるかやらないかを判断するという検討事項になっているところでございまして、本当だったら、このあんこのほかに、いろいろ説明もいただきましたけれども、例えば、国民年金の期間を四十年から四十五年に延ばすことであったりとか、あと、第三号の被保険者の問題を廃止にするかどうなのかという検討をすることでしたり、あと、少し議論は飛びますけれども、カナダのクローバック制度みたいな話もありますし、高所得の年金受給者の基礎年金部分の国庫負担については、それを低年金の方に回してあげるとか、あと、アメリカで二〇二七年から導入される予定のセーバーズマッチみたいな、確定個人拠出年金の部分を国が一定程度支援をするとか、何かそうした別のあんこが必要ではないかというふうな問題意識を持っているところでございます。
そこで、皆様にお伺いしたいんですけれども、今回の調整期間の一致というところは、あんことして足り得ると考えているのか、そもそも別のあんこが必要というふうに考えているのか、その点についてお伺いいたします。
○玉木参考人 様々なあんこがあった方がおいしいだろうとは思うところではございますけれども、なかなかそれは、いろいろな国民的な合意の形成上大変であるといったことも事実ではないかと思います。
先ほど、私、素直という言葉を申し上げましたけれども、四十五年加入というのは、厚生年金は六十九歳まで加入でございます。他方で、例えば農家の方は、普通にいけば、二十歳から五十九歳まで。ただ、専業農家に近い概念かと思いますが、今、基幹的農業従事者という方々の平均年齢は六十七とか八だそうでございまして、こういったことはやはり四十年前、五十年前の世の中とは全然違ったものになっている点を踏まえますと、社会の実態に制度を合わせていくという観点からすると、まず四十五年というのが一番素直だ、こういう意味で私は申し上げたわけでございます。
あと、実は、デフレというのが二十数年前から起きたわけでございますけれども、恐らく、当時の日本国民は、デフレが長期的に持続するといったことは多分視野に入っていなかったんだろうと思います。これは、今の物価の上昇を五年前、十年前に皆様が多少なりとも予想されたかというと、そうではないわけでございますので、そういった予想外のことが起きたことに対しては、やはりこれも対処していかなければならないなというところでございまして、この点は、先ほど駒村参考人からありましたように、切迫感を持つということからいきますと、この手のあんこも是非必要かなというふうに思うところでございます。
○駒村参考人 ありがとうございます。
国費の件でありますけれども、マクロ経済スライドがこれほど厳しく基礎年金に利いていなければ、本来発生していた部分でもあるということはちょっと考慮しなければいけないのと、じゃ、止めたらどうなるかというと、先ほども申し上げているように、かなりの生活困窮の方が出てくる可能性があって、そこの手当てもする国費はまた別途考えなければいけなくなるという点が一つあると思います。
じゃ、あんことしてどうなのか、いろいろなあんこの種類があるということはお話のとおりでありますけれども、具体的に検討されている主たるあんは先ほど私が御紹介したとおりで、あのレベルで大きさ、インパクト感があるわけですね。インパクト感が一番大きいのが同時停止ということでありますけれども、王道はやはり四十五年だとは思います。
ただ、今、玉木さんがおっしゃったように、急がなければいけないという部分がありますので、じっくり議論しているわけにはいかない。マクロ経済スライドの所得比例年金の部分をまず止めて、上半身の余裕を下に回す準備をしなければいけないので、まず急ぐ準備で、そこも考慮して、あんことしては早期停止が望ましいということになります。
以上です。
○八代参考人 調整期間の一致というのは、私は、本来極めて技術的な問題で、なぜそんなにまず年金を減らさなきゃいけないのかが大事だと申し上げました。
ただ、そうはいっても、今これが大きな問題なわけなんですけれども、一つは、マクロ経済スライドが長引いたからこういう問題が起こったという説明なんですが、なぜ長引いたんでしょうか。デフレだったから。
デフレだってマクロ経済スライドは使えるはずだったんです。それは、名目下限措置という非常にこそくな手段があったからできなかったわけで、本来、マクロ経済スライドというのは、デフレであろうがインフレであろうが、ちゃんと年金支給額を減らさないといけないわけですね、そうでなければ年金制度はもたないわけですから。だから、名目下限措置をまず撤廃しなきゃいけないんですけれども、そういう議論は全くないわけです。だから、今後の二十年に全く同じ問題が起こる可能性がある。
それから、マクロ経済スライドが失敗したことによって、多くの過大給付が発生しているんですよね。これはもう取り返せないわけで、その分、後の世代に負担が大きくなっている。だから、一般会計からの財政負担もさることながら、二十年間のマクロ経済スライドの失敗で、既に多くの世代間の、勤労世代から高齢世代への移転も起こっている。
そういうことにもかかわらず、何でそこまでマクロ経済スライド一本やりに固執するのかというのが私の疑問であります。ほかの、支給開始年齢の引上げ等も併用すべきである。
先ほど、四十年を四十五年に延ばすのは、ある意味で、高齢化を目指せば当たり前のことだ、時間はかかるけれどもと。同じことが厚生年金だって言えるはずなわけで、今後、高齢者の平均寿命は二歳ぐらい延びるんですね、あと二十年そこそこで。それに対応するためには、やはりマクロ経済スライド一本やりでは余りにも国民は窮乏化してしまうというのが私の考え方です。
○たかまつ参考人 私もあんこの種類を増やしてほしいなと思っています。私は、先ほども述べたとおり、現役世代、若者世代としては、もっと高齢の方でも負担できる方がいるから負担してほしいという思いが物すごくあると思うので、そこをできないかなと。
例えば年金課税の見直し、公的年金控除ですとか給与所得控除の両方を受けている人に対してその控除額を減らすみたいなことができるかもしれないですし、今回は在職老齢年金、どちらかというと皆さんは撤廃の意見が多いかもしれないですけれども、私は逆に、見直しをするというようなこと、もっと負担ができる方には負担をしていただくということですとか、クローバックの導入みたいなこととか、そういうことをやっていくということが必要じゃないかなと。
あとは、やはり一番私が問題だなと思っているのは、困っている人を本当に救済できるのかというのは、これだけでは足りないというふうに思っています。
というのは、やはり、加入期間が元々短い方というのは、どうしても年金は基本的に自分が掛けた保険に対して戻ってくるものなので、そもそも加入期間が短い人というのは困るので、やはり、住居とか福祉、医療、介護とかの側面において、低年金の人をそもそもどう支援するかということも必要だと思いますし、例えば年金生活者支援給付金というもの、これだけで足りるのかということですとか、あとは、所得とか年金の支給額だけじゃなくて、資産をしっかりと管理するという方法も必要だと思うので、資産を把握する仕組みというのは現状ないと思うので、資産を把握するというような仕組みをつくっていくということも必要だと思います。
あとは、私は拠出期間の四十五年間への延長については賛成していまして、やはりそれは将来の給付水準というのが上がっていくからですけれども、これは、でも、五年ほど延びる、百万円ほど負担が増えるということなので、財政検証の結果、そこまで結果が悪くなかったというような見解が多い中で、百万円の負担を今国民の皆さんにお願いするということがふさわしいのかというので意見が分かれるところかなと思います。
以上です。
○井上参考人 委員御指摘のとおり、また、私が先ほどの陳述で申し上げたとおり、今回の改革で全て終わりということではありません。継続してこれは改革を進めていかなくてはならないと我々としても強く思っております。
ただ、全てをやることで何か改革が止まってしまうということは、これは避けなくてはなりません。特に重要なのはやはり基礎年金の充実の部分だと思いますので、今回提出されている、今修正に入っているところで、まずはマクロ経済スライドの一致もやる、その後に、やはり我々としては、四十五年間の話であったり、三号の話であったり、名目下限措置をどうするのかということも含めて議論をしていくべきだということだと思います。
〔長坂委員長代理退席、委員長着席〕
○森(よ)委員 御答弁いただき、ありがとうございます。
皆様から共通しているのは、マクロ経済スライドの一致というのも必要だけれども、それだけではなくて、ほかの施策も必要だよねというところが共通していたのかなというふうに捉えさせていただきました。
玉木参考人の方は四十五年に延ばす方が素直である、駒村参考人からは王道は四十五年である、八代参考人からはマクロ経済スライド一本やりというのは何でなのか、やはりほかの施策も併用すべきではないか、こういったふうな御答弁をいただいたところでございます。
最後、改めて、玉木参考人、駒村参考人、八代参考人、お三方にお伺いしたいんですけれども、今回、スピード感が必要なのでマクロ経済スライドの一致というのはもちろん議論していかないといけない一方で、いずれにせよ、五年後に導入の可否を検討するわけです。なので、その五年間の間に、四十年を四十五年に延ばす検討をやることであったりとか、第三号被保険者の問題だったりとか、こういったことも一緒に併せて検討すべきと考えるのかどうか、この点についてお伺いできますでしょうか。
○玉木参考人 ありがとうございます。
先ほど四十五年について御言及いただきましたけれども、四十五年加入が世の中に出たときの世の中の反応としては、五年間の保険料負担が合計百万円ぐらいになる、ここに圧倒的にフォーカスが当たったわけでございますけれども、ただ、これは、その後の六十五歳以降の給付が四十分の四十五倍、一二・五%増える、年間八十万ちょっとが九十万ちょっとになるということもセットの話だったんですが、国民に対してセットで情報を頭に入れていただくというのは、なかなかコミュニケーションの困難がございます。
したがって、今後、五年間という時間があるのであれば、落ち着いた環境で、国民にとって、ライフプランニングにとってプラスになるような、まとまった包括的な情報提供を是非進めていくべきだというふうに思っております。
以上です。
○駒村参考人 おっしゃるとおり、実際にあんこを詰める作業は五年後なんですけれども、今、報酬比例部分のマクロ経済スライドを止めて、さらにその材料をちゃんと維持しておかなければ、底上げあんこの主力部分がつくれませんので、順番は、今回の修正協議で必ずまず底上げ、積立金を活用した底上げは必ずやる、このフレームは入れておく。詰める作業は五年間のどこかに出てくるかもしれませんし、五年後かもしれない。しかし、今やらなければいけないのは材料の確保なので、それはまず確保していただいて、そして、その後に、次のステップで四十五年をやればいいと思っていますので、四十五年は大事ですけれども、緊急性と考えれば底上げ、積立金を使った底上げが緊急性、これは今やらなければ絶対にいけないと思っています。
以上です。
○藤丸委員長 八代参考人、簡単にお願いします。
○八代参考人 私は、やはり四十年、四十五年を最優先すべきだと思います。これは、もちろんコストはかかりますけれども、補助金がついてくるわけですから倍になって返ってくるので、これをきちっとやる必要がある。
マクロ期間の一致というのは、一般財源を必要としますので、それはやはり私は望ましくないと思います。別の手段でちゃんと基礎年金の底上げをやるべきだと思っております。
以上です。
○森(よ)委員 ありがとうございます。あした以降の質疑に参考にさせていただきます。
ありがとうございました。
○藤丸委員長 次に、浜地雅一君。
○浜地委員 公明党の浜地雅一でございます。
五人の参考人の皆様、今日は本当に貴重な意見をありがとうございました。
まず、冒頭、たかまつ参考人にお伺いをしたいと思っております。今回、若い方の代表として年金部会に参加をいただきまして、非常に貴重な御意見をいただいたと思っています。
二〇〇四年に年金改革が行われて、大分昔なんですけれども、私は、当時、たかまつさんと、余りちょっとお年のことを言うとあれなんですけれども、多分一緒ぐらいの年でした。あのときにどう感じたかというと、私も、証券会社に勤めたり会社の経営をしていたので、その後法曹資格なんですけれども、だから、世の中でいうと、多分年金制度とか税とかには若干同世代の割には詳しい方だと自分では思っておりましたけれども、あのときの二〇〇四年の年金改革を思い出すと、当時はまだ三十前半、恐らく年金は将来かなりもらえなくなるんじゃないか、破綻とまでは思わなかったんですけれども、当時のテレビを見ていると、余り詳しくない方は、もう年金は破綻してしまうみたいな報道ぶりがあったわけであります。
その上で、今回、たかまつさんも非常に博識があって若者に発信力がある方なんですけれども、年金部会に出てみて、いろいろ勉強もされて、若い方が思っていらっしゃる年金制度とは違う、私はむしろ、意外と日本の年金制度というのは非常に強固で、百年後まで考えてつくられている制度だということを恐らく感じられたんじゃないかと思っているんですが、ちょっと済みません、勝手に言っておりますが。
いわゆる若い方から通した、年金をしっかり議論してみて、今の年金制度、若者に対してどういう発信をされたいですか。どういう変化がありましたか。ちょっと済みません、非常に漠とした質問なんですが、若い方に対するメッセージとして非常に大事なところだと思いますので、少し思いのたけを語っていただきますと幸いでございます。
○たかまつ参考人 まさにおっしゃるとおりでして、私も年金に対するイメージがかなり変わりました。
というのは、審議会というのは一体、じゃ、どういうところなのかと、今まで私も取材とかをしたことがあるんですけれども、もう少し、御用学者みたいな人とかがたくさんいたりとかするのかなと思ったんですけれども、年金部会では、割と皆さんが、じゃ、こういうデータはありますかとか、そういうデータがないから私は判断できませんみたいな意見もありましたし、やはり、財政検証というものを五年に一回、百年の見通しを通してやっているということなので、個人の人の強い主張とか思いみたいなところで左右することは逆にできないというか、物すごい強固なデータに基づいた制度なんだなと思って、そこはすごくびっくりしました。
逆にそれが若者に全然届いていないので、やはり、私の炎上もそうですし、少子化によってこのまま年金というものが破綻してしまうんじゃないか、生理的にそう思ってしまうのは仕方ないと思うので、なので、私は、学校の教育現場とかでもう少し年金制度についてやるということですとか、社会保障制度についてやらないと、今の自分の将来が不安だ、日本で生きていくことが不安だと思うと、いろいろなことにチャレンジとか、結婚もそうですし、出産もそうですし、できなくなると思うので、やはり年金不信というものを取り除くということはより一層力を入れる必要があるんじゃないかなと。
そのために、厚生労働省は今学生との対話集会とかをやっていて、これは私も取材して物すごくいいなと思ったので、これをもっと、今一部の人しか受けられない状況なので、もっとほかの団体、市民活動とか市民団体が担えるように、例えばそこに予算をつけるみたいなことかもしれないですし、それをもっと開かれた、市民、もっとたくさんの人が参加できる対話集会にするとか、そういうことをしていくといいかなと思います。
○浜地委員 たかまつ参考人、ありがとうございます。
本当は政治家及び役所が広報を頑張らなきゃいけないんですが、たかまつ参考人のような方が年金部会を通していろいろ感じられたことを発信していただくことも、恐らく若い方はそちらの方が耳を傾けるんじゃないかなと思っていますので、まだお役目はございますけれども、是非そういった発信をしていただければ大変助かるところでございます。
次に、玉木参考人にお聞きをしたいと思っています。
先ほど、今回のマクロ経済スライドの調整期間の一致、いわゆる厚生年金の積立金を活用しての基礎年金の給付水準の引上げについて、流用ではないということを言っていただきました。
ここは私自身も流用ではないというふうに当然思っておるわけでございますけれども、流用と言われている方が、恐らく二つの理由があろうかと。一つは、厚生年金の方は必ず基礎年金に入っているということをまだ理解がされていないという意味で、自分たちの厚生年金がなぜ基礎年金に使われるのかという誤解だと思っています。ここは誤解ですから、誤解というふうにはっきり答えたいと思うんですが。もう一つは、基礎年金だけ、いわゆる国民年金だけで実は加入期間を過ごされた方が全年金受給者の約五%いらっしゃる。ここに対しては、やはり厚生年金の一部が、積立金を基礎年金に回すことによって給付水準が上がるので、やはりこれはプラスになるわけであります。
こういう観点を捉えても、流用ではないというような説明を我々政治家もしていかなきゃならないんですが、やはり専門家の先生の御意見もきちっとこの場で伝えていただくことが大事かなというふうに思っておりますけれども、二番目の、いわゆる約五%いらっしゃる国民年金だけで受給期間を過ごした方に対しては、やはり裨益する部分はあろうかと思います。
これについてどういう御意見をお持ちなのか、御意見を頂戴したいと思います。
○玉木参考人 ありがとうございます。
その点は、非常に、考えると面白いといいますか、チャレンジングな部分であろうと思うんですが、これについて考える上で、まず基礎年金とは何ぞやということでございまして。
基礎年金というのは、二十歳から社会人になって、その後いろいろなコースを歩むわけですけれども、最後、基礎年金だけはみんな同じというのが基礎年金なんですね。ですので、みんな同じ基礎年金をどうやって賄いますかというと、みんなで出しましょうという仕組みになってございますので、国民を一号、二号、三号とかに分けて考えるということは、ちょっと私はなじまないといいますか。
何でそんなことを考えなければいけないかというと、私は厚生年金だから、払った厚生年金保険料は私のものだという感覚はあって当然なんですけれども、事基礎年金に関しては、プールするんだ、それがそもそものお金の性格なんだといったところの御理解といったものは、いろいろ、得るのは大変難しいのですけれども、何とかして得てまいりたいと思うところでございます。
○浜地委員 ありがとうございます。
次に、駒村参考人にお聞きをしたいと思っております。
今の、現在の受給者の給付水準が高止まりしている一つの原因は、マクロ経済スライドという装置があったわけですが、それが十分発動してこなかった。特に、名目物価、名目賃金が下がった場合には、マクロ経済スライドは停止をする仕組みでございます。これについて、当然、景気の悪いときに名目が下がってしまうと、世の中、非常に難しいのは私も分かりますけれども、一つ、所得代替率が高止まりした原因はこのことだろうと思っています。
したがいまして、マクロ経済スライドの発動を停止をするという、名目賃金や物価が下がった場合の措置、これについては今後どのように考えたらよろしいでしょうか。
○駒村参考人 今先生がおっしゃるように、代替率というのは分母と分子の比率ですので、賃金デフレで分母が下がっているときに、分子が調整できないから上がっている。どんどんどんどん名目額が増えているわけではない、比率が上がっちゃっているということでございます。
そして、二〇〇四年にこの制度ができたときに、先ほども話がありましたが、これほど長くデフレが起きるのか、しかも、デフレの中に、賃金のデフレ、物価のデフレよりも更に賃金がデフレするという、ちょっと余り考えられない状態が続いていた。これについて、やはり対応措置が不十分だったということがあります。この辺は資料の二十ページ、十九ページに詳しく説明してあります。はしょりますけれども、今の基礎年金の長期化については、まさにこの部分、特にデフレに、賃金デフレに国民年金の財政が弱かった部分が加わったというところがございます。
この名目下限をまず、そのうち、デフレが深く、賃金デフレが大きい場合については実は措置が行われていますけれども、ごく最近発効されたばかりなんですね。デフレに対して名目下限をどうするかというのは、恐らく当時の政策判断は、デフレで年金がマイナス二%になっている、この状態で更にマクロ経済スライドで一%下がったら合計三%、これは何でも国民は納得いかないんじゃないかということで導入したと思いますけれども、やはりその結果、こういういびつな問題が起きていることが分かったので、名目下限については政府の方でも勇気を持って撤廃の議論をしてもよろしいかと思います。
以上です。
○浜地委員 ありがとうございます。
続きまして、八代参考人にお聞きをしたいと思っています。
先生の問題意識、大変私も勉強になりました。特に、支給開始年齢を引き上げていくこと、一つの御示唆だなというふうに私も思ったわけでございます。
先生の資料の七ページを見ますと、今、日本は六十五歳で、代替率が個人単位で男性が三八・八%ということなんですね。二歳上げると、米国あたりは五〇・五まで上がってくるんですけれども、果たして日本は、逆に、一歳上げるごとに、これは前提の数字なんですが、どれぐらいの所得代替率がまず上がってくるのかということをちょっとお聞きしたい。要は、欧米のような所得代替率の上昇にならないと効果として意味がないので、そこが一点。
あとは、受給開始年齢がいつ上がるか分からないとなると、現役世代のときに、どうしても、自分たちがなるときは、今は六十五歳ですから、六十五歳まで何とか頑張れば、預貯金も含め、若しくは仕事の労働も含め、ここまで頑張れば年金がもらえるけれども、さあ、六十を過ぎて、自分たちがもらおうと思ったときには、国会で審議されて六十七になっちゃった、それだったら生活設計が狂うよというようなことも、そういうマイナスのデメリットもあるかと思うんです。
まず一点目の、日本の代替率がどれぐらい上がるという御試算をお持ちなのかと、先ほど私が言いましたとおり、年齢が上がってくると、ライフプランも含めていろいろなデメリットがあることについてどのようにお考えか、お答えいただければと思います。
○八代参考人 今、支給開始年齢を上げたらどれだけ所得代替率が上がるかというのは極めて専門的な計算で、私は、恐縮ですが、そういうことは自分ではやっておりません。
ただ、アメリカの年金制度は日本と基本的に同じやり方をやっているわけですし、これを見ても、アメリカもイギリスもドイツも、日本の六十五に対して六十七。二歳高い。それで日本の三九に対して五四ですから、少なくとも一〇%ぐらいは上がるんじゃないか、長期的に見て。これは目の子算であります。
それから、これと関連して、やはり、先ほど御質問があったマクロスライドの名目下限措置の問題なんですが、デフレの中で名目下限措置を外したら国民はとてもたまらない、だからできないと。だけれども、それが本来のマクロスライドの厳しいところなんですよね。だから、一方で支給開始年齢は嫌だ、年金の減額で調整するといいながら、デフレになったら、これも嫌だと。もう駄々っ子ですよね。だから、それほどマクロスライドというのは厳しいものだということを分かった上で、それならばもう一年余分に働きましょうというのを国民に選択してもらうわけですよね。
だから、そういうことを急にやられたら困る、それはそのとおりです。だからこそ、年金の支給開始年齢の引上げはもっと前から議論すべきだったんですよね。今でも遅いぐらいですけれども、今六十に達して、これ以上やらないというんじゃなくて、三年後は六十六にしますということを今から言っていれば、少なくともそれだけの余裕があるわけですから、早めにやるということ。
それから、やはりこういう問題は与野党が合意してやらないと絶対にできません。今、幸いにして調整期間の一致ということで与野党が合意されるそうですので、年金改革についてもっと大事なことについても与野党で合意していただきたい、そういうふうに私は考えております。
ありがとうございました。
○浜地委員 ありがとうございます。
時間になりますので、終わります。
井上参考人、我が会派が御推薦しておきながら、ちょっと質問する時間がなく、大変申し訳ございません。
五人の先生、大変参考になりました。ありがとうございました。失礼します。
○藤丸委員長 次に、八幡愛君。
○八幡委員 れいわ新選組の八幡愛です。
本日は、参考人の皆様には、早朝から貴重な御意見を賜りましたこと、深く御礼を申し上げます。ありがとうございます。
特に、たかまつななさん、本当に、ほかの委員の質問の中でも誹謗中傷みたいな話も出てきましたけれども、厚労省の年金部会に参加しただけでいろいろ言われてしまうと。でも、この世の中は、若者の政治参加とかいうのに参加した途端に、おまえに何が分かるんやみたいな。私も三十七で、たかまつさんよりは年上ですけれども、やはりちょっと何か言うと、この委員会の中でも、すぐに新聞記事になって、ぼろくそたたかれたりとかするんですけれども、それでも今日来てくださったというのは、すごく、本当に敬意を表します。
これは諦めたらもう終わりなので、なので、一緒に引き続きやっていきたいなと思いますので、よろしくお願いいたします。来ていただいて、ありがとうございます。
ということで、今日は、まず参考人の方五名に、全員の方にお尋ねしたいことがあるんですが、五年に一度の財政検証に基づく改正法案の提出なんですけれども、国会で議論すべきは、財政検証で出てきた論点、閣法もそうです、あと、今出されている立憲法案もそうなんですけれども、でも、私は年金の抜本的な改革であると考えております。これについては、以前の委員会でも何度も申し上げてきました。何か、あんこの話をするじゃないですか、中身が詰まっているとか、抜いているとか、詰めるんやとか、何かいろいろ言っているんだけれども、そもそも、そのパンを作った人は手を洗っていますかという話に立ち返りたいと思って質問をします。
つまり、無年金と低年金の問題、これは避けては通れない。年金保険料の支払いが厳しいという現役世代の問題もしっかりと向き合っていかないといけないと思っております。
無年金について、厚生労働省の調査によりますと、年金が全く受け取れない無年金者の数は四十九万人です。六十五歳以上の人口が約三千六百万人なので、無年金の比率というのは一・三%、高齢者の百人に一人が年金を一円ももらえませんという状態が続きます。
そもそも、無年金者への支援をどうするかという大問題、そして低年金です。基礎年金の最大の課題、これは、満額でも六万九千三百八円、六万九千三百八円でどうやって生活するんですかというところです。これは生活保護の扶助費の水準を下回っています。これは、年金額もそうですが、物価高騰に合わせて、れいわ新選組としては、生活保護も上げていかなあかんでというのを併せて訴えているところではあるんですけれども、現役時代に収入が少ないために年金保険料の免除を受けると、年金額が結局減額されるという今の仕組み、これで大丈夫なのかなと私は疑問に思っております。
当然、繰り返しになりますが、給料の手取りが少なくて年金保険料の支払いが厳しいという現役世代もあります。私もそうです。私たちれいわ新選組は、低年金、無年金者の生活を支える最低保障年金を創立する、年金を底上げする、社会保険料を下げるべきだと訴えているんですが、まずは、無年金と低年金の問題、年金保険料の支払いが厳しい現役世代の問題についての見解をそれぞれお知らせください。お願いします。
○玉木参考人 私も日々学生に接しておりますので、彼女らが低年金、無年金になることが決してないようにしていただきたいと思うところでございます。やはりそのためには、勤労するということについてポジティブになっていただくしかないわけですけれども、その際に、年金は駄目になるとかというふうな言説が流布するわけですね。
社会において弱い立場の方の中に、二号被保険者にならない、つまり一号被保険者である、例えば、いわゆるフリーターという方、こういった方は二号被保険者になりませんので、一号被保険者として自分で手続をしないと年金に入らないわけですね。
ところが、そういった方々に対して年金は駄目らしいぜという話が伝わるのは、非常に非生産的あるいは有害であるというふうに思いますので、この点は、年金というのは、ともかく入れ、入って損することは絶対ないといったことを、我々大人たちがみんな寄ってたかって言っていくといったことが必要ではないかと思います。
○駒村参考人 ありがとうございます。
玉木教授がおっしゃったことと基本的には同じなんですけれども、残念ながら、無年金の方は一定数いらっしゃる。これは、やはり原因は、当時の年金徴収が徹底的になっていなかった部分もあるのかなと思います。この方たちは生活保護の方で対応するというのが日本の所得保障だと思います。
最低保障年金については、これは将来の課題として、今、年金生活者支援給付金がありますから、これをうまく使って、将来は最低保障年金の性格を持たせるという手はあるのかなと思います。
以上です。
○八代参考人 ありがとうございました。
この無年金、低年金問題というのは極めて重要な問題なんですが、今の国民年金というものの保険料の徴収方法では、この解決は無理だと思います。サラリーマンのように強制徴収できないわけですから、だから、どうやったら徴収できるかということを考えたのが福田内閣のときの社会保障国民会議で、年金目的消費税というのをやるわけですね。ただ、消費税を上げるというと反対が多いんですが、これは増税ではない消費税なんです。つまり、それまで真面目に保険料を払っていた人は払わなくてよくなるわけで、それをバランスを取ってやったわけです。
そもそも、年金制度の一番大きな目的の一つは強制貯蓄なんですね、働いているときに老後のためにやると。それが今の国民年金はもうほとんど破綻していて、半分以上の人が払っていない。免除といいますけれども、どういう基準で免除しているのか。数百万の免除者がいるというのは、これはやはりおかしいわけで、しかも、そういう人たちは後で低年金になる。
だから、そういうことができないような、目的税の形で強制的に保険料を徴収する、こういう案がちゃんと前の福田内閣のときには議論されたので、なぜこれをもう一度議論しないかというのが私の答えであります。よろしくお願いします。
○たかまつ参考人 非常に問題だなと思っています。
私は、まず年金部会で感じたことなんですけれども、やはり、この制度についてどう議論しましょうかというような論点設定になっているので、女性のライフスタイルを一生で見るとか、そういう形にはなかなかなっていないので、そういうところが一つ問題なのかなと思いました。
今、生活保護の方、高齢の女性は非常に増えていますけれども、年金を通して見ると、そういう方が、例えば、学生のときは延納していて、それに対して、今学生の納付特例について追納率が一割以下ということで、親が払っている方とかも非常に多いと思いますし、そういう親の格差というのが学生時代からもう年金の格差としてスタートしているかもしれないとか、その後、就職して、結婚して、三号被保険者に事情があってなって、就業調整した方がお得だと勘違いしてなるような方もいらっしゃると思いまして、そうすると、将来の自分の年金額に関わってきます。
そのようなことで、やはり女性のライフスタイルの一生とかを見ていかないと、この低年金の問題というのはなかなか見えてこないと思いますし、年金だけでは、やはり私は解決できないと思っているので、先ほども申し上げましたけれども、住居とか福祉とか医療、介護とか、そういう側面からどういったことをやるのかというのも年金の議論とセットでやらないと、低年金の方の生活というのがなかなか改善されないし、老後に不安があるというのは改善されないんじゃないかなと思います。
以上です。
○井上参考人 極めて重要な課題だと思います。
これはやはり、若い方は、学生時代から年金に対するリテラシーを高めていくということが非常に重要だと思います。何か、やはり年金というのは支払うと損してしまうという目先の、当面は支払うだけなんですけれども、将来のメリットあるいは社会を支えているという責任感というか、そこを醸成していくということが非常に重要だと思います。
あともう一つは、やはり徴収方法の問題というのは、もう一回、どういう方法がいいのかということは検討すべきであるというふうに思います。
○八幡委員 ありがとうございます。
皆様のお話を聞かせていただいて、私自身は、この年金制度であったりとか、あと、それこそ雇用保険もそう、厚生年金も全てそうですけれども、保険に関して否定をしている立場ではないんですよ。ただ、入りたいのに入れないとか、払いたいのに払えないという人たちが今いらっしゃる。ここにいらっしゃる先生方に言うのもおかしいんですけれども、抜本的に、この世の中の経済がやはりおかしくなっている、もうかなり疲弊しているというところに問題が尽きるのかなと聞いていて思いました。
徴収方法とおっしゃるんですけれども、私自身は今三十七歳で、二十歳のときから払い出したときに、当時で一万四千百円ですか、払っていたんですけれども、この一万四千百円がめちゃくちゃ苦しかったわけですよ。これをむしろ引き出しに入れていた方が楽なんちゃうかなと。それぐらい、社会の老後に関する年金制度というもの、リテラシーという言葉も出てきましたけれども、それぐらい不信を持っていたというところで、やはり、まずは経済がよくならないといけないなというのは改めて痛感しました。
そして、たかまつさんもおっしゃいましたけれども、セットで、年金だけじゃなくて、例えば、奨学金を返している人たちもいるんだから、その奨学金に対してどうするのかとか、あと、子育てしている人たちに対してどうするのかというところもセットで併せて考えないといけないなということが、改めて、皆様、五名の方に聞いて課題が浮き彫りになったので、ありがとうございます。
続いて、ほかの委員からも御指摘がありましたけれども、やはりマクロ経済スライドについて、今日お越しいただいた皆様に聞きたいと思います。
私は、これまで、マクロ経済スライドというのは逆進性があると訴えてまいりました。昨今、やはり物価の高騰が続いております。年金生活、年金だけで生活している方たちも直撃をしております。物価高なら、それに応じて年金の給付額を増やしていくというのを考えた方がいいと私は思うんですけれども、実際には、マクロ経済スライドというのがあることによって、給付額を抑制するというかカットしているという状況にあると思うんです。
本来、年金受給者の生活を第一に考えて、経済的な社会的状況に応じた基礎年金の給付額を決定するということが重要だと思うんですけれども、政府は、保険料をまず固定をしている、そしてマクロ経済スライドを続けていくと。これは立憲さんから出された修正案にも、マクロ経済スライドを結果としてやめたいんだけれども、今すぐにやめるということまでは書かれていないというところで、私たちは、やはりちょっとちゅうちょをしてしまうというところがあるんですけれども。
やはりこれは、国民生活よりも財政規律を重視しているのかなと思うんですが、このマクロ経済スライドについて、私は逆進性があるなと思うんですが、それぞれの皆様、改めて御見識をお伺いしたいです。お願いします。
○玉木参考人 確かに、マクロ経済スライドは、物価上昇ほどには年金給付を引き上げないというものではございます。ただ、人々の暮らしは長く続くものでありまして、何十年も先の自分の暮らしを考えたときに、年金の最後の着地点がどうなるかといったところも人々は関心を持つはずでございます。
長い目で見て本当に安心なのは何かといった観点から年金制度について考えてみますと、今議論されておりますマクロ経済スライド調整期間が一致というのは、それなりによく考えられた案ではないかと思っております。
○駒村参考人 今日お話ししたように、マクロ経済スライドは特に基礎年金に大きく長く利くというのがまさに逆進性でありますので、先生おっしゃるように、この部分を何とかするとなれば、まさに基礎年金に対するマクロ経済スライドを早く止めるということに、先生、同意していただくのではないかなと思います。
一方で、マクロ経済スライドそのものをどうしようかという話になってくると、選択肢は、先ほど申し上げましたように、保険料を上げるか、支給開始年齢を上げるというぐらいしか、今のところの選択肢はないということでございます。
ゼロから新しいものをつくるという余裕は、もう既に、状況ではなくなっていまして、年金は対GDPに対して一〇%を超えていますので、イメージとしては、船はもう出港してしまっている、客を満載して。だから、五年に一度どこかに寄港するときにどういう修理ができるのかというレベルの議論になってきていると思います。
ありがとうございます。
○八代参考人 議員がおっしゃるように、マクロ経済スライドというのは、逆進性どころか、年を取って働けなくなった人たちの生活を破壊するものなんですよね。
年金を守るというためには大事ですけれども、それを守るためには、やはり、長生きすること、高齢者が長生きするといういいことをどうやって負担していくかということをまず国民に訴えなきゃいけない。年金を減らすことで対応するのか、長生きの利益を使ってもっと長く働くか、それを国民にちゃんと訴えるという形で、私は、マクロ経済スライドという逆進的なものをやめることが望ましいのではないかと思っております。
○たかまつ参考人 ありがとうございます。
高齢者の方の生活が苦しいという問題意識はそのとおりだなと思うんですけれども、やはり年金制度を、より持続可能性を強固にしていくというためには、私は必要な制度じゃないかなと考えています。というのは、今の高齢の方に少し、我慢という言い方がいいのか分からないですけれども、していただくことによって、将来、その分を積み立てることによって年金財政を安定させたりとか、将来の給付水準を上げていくということはすごく必要なことだと思います。
ただ、じゃ、そこで生活が苦しい高齢の方を見捨てていいのかというと、そういうわけでは当然ないと思いますので、低年金の方をどうするのかとか、私は、そういう方々が意思決定プロセスに入っていなかったということは非常に問題だと思うので、そういう方にお話を聞いたりとか、皆さん、それを参考にして、そういう方の生活保障をどうしていくかということも議論をしていただきたいです。
以上です。
○井上参考人 やはり、この年金制度というのは、五十年、百年という単位での制度設計というふうになりますので、その観点からすると、やはり景気の波というものを考えて、さらに、年金の持続可能性を高めるという観点から、マクロ経済スライドという仕組みが導入されているというふうに理解をしております。
ただ、もちろん、先ほどの繰り返しになりますけれども、マクロ経済スライドの一致だけで全ての改革が、解決されるということではございませんので、先ほど申し上げたように、例えば四十五年化の話であるとか名目下限措置をどうするのかということも、併せて今後検討していくべきだというふうに思っております。
○八幡委員 時間になったので終わるんですけれども、皆さんの意見を参考にして次も質問していくんですが、最後に国庫負担について聞こうと思ったんですが、年金における国庫負担、これを消費税に頼るというのは私たちとしては絶対大反対ということを伝えて、質問を終わります。
ありがとうございました。
○藤丸委員長 次に、田村貴昭君。
○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
今日は、五人の参考人の皆さん、ありがとうございます。
最初に、玉木参考人にお伺いします。
毎日新聞の記事を読ませていただきました。現役世代を自由にするという見出しもあったんですけれども、やはり個人や家族にしわ寄せが来るリスクを回避するためには、医療保険とか年金とか介護保険、こうした社会保障制度というのは非常に重要な制度だというふうに私も思うところです。
ところが、やはり、今日も議論になっていますマクロ経済スライド制は、公的年金の実質価値を減少させる、それから老後の生活資金が減少していく。そして、今、政府の方も推奨しているiDeCoなどによって自分で備えるという対策が強調されているという流れになっています。
これはやはり、家族主義とか個人主義への回帰とも取れないような流れではないかなとも私は思うんですけれども、現役世代を自由にするという観点から、先生の御所見をまず伺いたいと思います。
○玉木参考人 ありがとうございます。
現役世代を何から自由にするかというと、いわゆるガチャですね。例えば、介護保険があります。それで、介護保険がもしなかった場合、年老いた親の介護の負担は、両親が長生きをする子供、かつ、一人っ子に一番多くかかるわけでございます。こういったものは、当該一人っ子におきましてはまさに偶然の産物以外の何でもありませんけれども、ある特定の若者に大きな負担がかかっていくということになります。
それを、どの若者も政府に対して一定の保険料を払うと保険が平準化されるといった意味で、若者たちは、自分はどれぐらい負担すればいいのかということについて予測をすることができる。これが自由にということの根源でありますけれども、こういったものを、やはり世の中の摩擦を少なく、信頼されるものとして人々に提供していくといったことが政府として最も大事ではないかと思います。
他方で、iDeCoのような自助、これについては、やはり必要な部分は相当ございますし、また、iDeCoにつきましては、要するに税制優遇の手だてでございますので、これについても、国民的な合意を経て、ある程度のところまでは充実させていくということが賢明な方法ではないかと思うところでございます。
○田村(貴)委員 私は、今の年金制度の最大の問題はマクロ経済スライド制にあるというふうに考えております。二〇二三年に終了するとされていたんですけれども、これから二十五年間続いていきます。これについて、五人の参考人の皆さんにそれぞれ伺います。
やはり、物価や賃金の伸び、それ以下に抑えていく、それから自動的に年金が削減されていくと。今、物価高騰が異常な高さで続いている。この中で、自分の唯一の収入が年金だという高齢者の生活はかなり逼迫しているところにあります。
先ほど、マクロ経済スライド制に対する皆さんの御所見は伺いました。やはりこの制度は仕方がないと考えておられるか、しかし、速やかに終わらせていかなければならないという立場にお立ちか、また、そのためには何が必要かということについて、できれば簡単にお答えいただければと思います。
○玉木参考人 私としては、マクロ経済スライドというものは必要であろうと思いますし、また、これがスムーズに国民の間に浸透し、よい結果を将来残すために必要なことは、国民の生産性が上がるというようなことでございます。
あと、寿命が延びているという中で、実は、我が日本国民は大変顕著な対応を示しました。それは何かというと、高齢者の就業増加でございます。また、これによって高齢者の就業の機会が増えている、それが当たり前になっているということによりまして、年金の受給開始をいつにするかというチョイスも非常に広がっておりますので、この辺を十分に活用したライフプランニングを国民にしていただく、これが一番大事かなと思っているところでございます。
○駒村参考人 端的に答えますと、保険料を固定して支給開始年齢を変えないならば、これはマクロ経済スライドを続けるしかないと思います。
止めるならば、保険料を上げるか支給開始年齢を上げるしかないんですけれども、選択肢としては、寿命が延びている、それから働く高齢者が増えているということを考えると、支給開始年齢の引上げは、一個の、マクロ経済スライドを止める代わりの選択肢だと思います。
以上です。
○八代参考人 私は、もちろんマクロ経済スライドというのも有用だと思いますが、それ一本やりは余りにもひどいじゃないかと。議員がおっしゃったように、これはやはり公的年金の価値を損ねるわけですね。公的年金というのは、物価が上がっても実質価値が保証されるというのが一番大事な点で、それを毀損させる。仕方がないということですが、なぜ、他国では当たり前の支給開始年齢の引上げを考えないのか。
それから、先ほどもありましたが、それは本人が勝手にやればいい、六十五歳以上も働けばいいんじゃないか、私は、これは無責任だと思います。政府として、みんなが長く働けることをデファクトスタンダードにして、早く引退したい人はそれを認める、それと、六十五歳支給を固定して働きたい人は勝手に働けばいい、どっちがいいのかということなんですよね。
今の政府の年金局の考え方は後者であって、それはやはり労働市場政策と一体的にやらなきゃいけませんから、ちゃんとデファクトスタンダードを、支給開始年齢の引上げにおいてマクロ経済スライドも必要に応じて併用するということが望ましいと思います。
○たかまつ参考人 私は、年金を持続可能にするために、やはり必要だなと思います。本当に今、日本経済が苦しくて困っている方というのは、高齢者の方もそうですし、現役世代の保険料を納める方もそうですし、もしかしたら将来の子供たちがそうなってしまうかもしれないという中で、マクロ経済スライドは、私は、年金を持続可能にする優れた仕組みじゃないかなと思います。
でも、御指摘いただいたとおり、高齢の方の、物価高で生活が苦しいというのはそのとおりだと思うので、その対策も、年金だけじゃなくて、併せて検討をお願いしたいです。
○井上参考人 私も、先ほどの繰り返しになりますけれども、現行の制度の下では、やはりマクロ経済スライドは必要だというふうに思います。
ただ、これだけで問題が解決するわけではございませんので、先ほど申し上げたような様々な継続した検討が必要だというふうに思います。
○田村(貴)委員 今日も議論になっていますけれども、やはり低年金、無年金の問題というのがあります。
日本の年金は最低保障機能がありません。そして、国民年金に加入して、国民年金だけしか加入できないという方もおられるわけであります。既に二十六万人の無年金者がいるとも言われています。今後も増える可能性があります。今のままでは、就職氷河期世代などが低年金に陥っていくということも十分予測されるわけであります。
私は、抜本改革のためには、いつか日本も最低保障年金制度に踏み出さなければいけないというふうに考えています。もちろん、財源の手だても要ると思いますけれども。駒村参考人にお伺いします。これまで議論もあったかと思いますけれども、最低保障年金についての先生の御所見を伺います。
○駒村参考人 まず、国民年金、一号だけの人を減らすというのは、今回の適用拡大もありますので、ここに、厚生年金にも入れるような工夫をするという上で、さらに、どうしてもやはり基礎年金が不十分な方については、今、年金生活者向けの給付金は一応ありますけれども、これを充実していくことによって最低保障機能を持たすことができるのではないかと私は考えております。
以上です。
○田村(貴)委員 年金の流用という議論があります。これについてもちょっとお伺いしたいというふうに思っています。
基礎年金の底上げ、これは当然であります。そして、厚生年金の加入者を増やしていくということもあります。しかし、そうしたら、厚生年金の流用になるじゃないかというような意見があって、私は、これについては流用ではないと。基礎年金は年金の一階部分であります。ですから、ここに使うことは流用ではないというふうに考えています。
たかまつ参考人にお伺いします。
いろいろと、年金部会に入られて考え方を新たにしたとかあろうかと思うんですけれども、非正規雇用の労働者が国民年金に入っている。そして、厚生年金の流用という誤解の問題もあります。非正規雇用の労働者が国民年金に入っていて、国民年金だけを助けるだけじゃないかという、そういった誤解もあるんですけれども、この年金制度を正確に伝えていくには、若い世代のたかまつさんの世代からは、どういうふうに方策を考えたらいいか、教えていただけますか。
○たかまつ参考人 ありがとうございます。
やはり地道にやっていくしかないなというところと、やはり国会の議論とか今ここでの議論とSNSの議論というのは、もう全く別のものなんですよね。それを皆さんにもう少し理解をしていただきたいなと思いまして。
ネット上の声というのは、本当に一部の声だという見方もあると思いますし、私もそうだなと思うんですけれども、でも、その一部の声も放置していくと、やがて大きなデマとか間違った情報が広がって、それが世論となっていくということをもう少し危惧してやっていただきたいので、是非、ここでの議論とか、皆さん、少しでもSNSの方で、年金という制度が安心できると思う制度だと思うのでしたら、それを発信していただきたいですし、今、それは流用じゃないと思われるのでしたら、それは流用じゃないということをやっていただいて、これだけたくさんの方がいらっしゃれば孤立になることもないと思うので、ネット上でもそういう発信を、私も頑張りますけれども、皆さんの方でもしていただけるとうれしいです。
○田村(貴)委員 この問題で井上参考人にもお伺いします。
厚生年金積立金の流用という批判があるんですけれども、この点について、事前資料を読ませていただいたんですけれども、基本的見解、概要では明確に示されていないように思います。
一九九〇年代から、国民年金に加入する非正規労働者が国民年金の財政状況を厚生年金と比較して相対的に悪化させてきたんじゃないかなと思うんですけれども、非正規雇用労働の在り方と、そして年金の問題についてどのように考えておられるか、教えてください。
○井上参考人 今、非正規雇用の方を正規化するという取組も、我々としても続けているところでございます。
非正規雇用の方の年金の問題というのは、まずは正規化、特に不本意の非正規の方、この方々を正規化することによって、また適用拡大を進めることによって、厚生年金、しっかりとした被用者保険に入っていただいて、将来の不安を少しでもなくすという方向に取り組んでまいりたいと思いますし、そのような今回の改正の内容になっているというふうに考えております。
○田村(貴)委員 正規化については、経済界も是非大きな支援をお願いしたいと思っております。
先ほどマクロ経済スライドの話をさせていただいたんですけれども、年金の財源について、駒村参考人にお伺いします。
いろいろと考え方はあると思うんですけれども、例えば、積立金、かなり膨れ上がりました、この点での活用、あるいは、頭打ちになっている高額所得者の保険料、健康保険料並みに引き上げていくというのも一つ手段かなと思うんですけれども、年金財源についていかがお考えか、教えてください。
○駒村参考人 ありがとうございます。
年金については、基礎年金は半分国庫、半分保険、厚生年金は全額保険という形になっております。これを百年安定させるために積立金をどう使っていくのか、百年後に一年分だけ取っておくということで。
現在、GPIFは、かなり利回りが出ておりまして成績がいいわけでございますけれども、一方では足下の出生率の低下も厳しい状態でございますので、なかなか安心できる状況ではない。今回の財政検証でも積立金依存率がかなり上がってきていますので、にわかに取り崩すようなことをすると、本当に、先ほどお話ししたように、船が途中でエンジン不足になる可能性も、エネルギー不足になる可能性もありますので、そこの判断は難しいかなとも思っていますが、しっかりと運用利回りもモニターしていく必要はあるだろうと思います。
保険料を上げるということになると、上限を上げると給付も上がるということになりますので、その場合、行って来いになりますので、年金財政には多少のプラスアルファ効用もありますけれども、諸外国でもやっているように、上を上げて、それを給付に一部反映しないということをやっている国もありますので、これはまた将来の議論としては私はあり得るのではないかと思います。
以上です。
○田村(貴)委員 時間が参りました。
以上で質問を終わります。ありがとうございました。
○藤丸委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。
参考人の方々におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございます。
次回は、明二十八日水曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時七分散会