第7号 令和7年5月22日(木曜日)
令和七年五月二十二日(木曜日)午前十時開議
出席委員
会長 枝野 幸男君
幹事 上川 陽子君 幹事 寺田 稔君
幹事 船田 元君 幹事 山下 貴司君
幹事 武正 公一君 幹事 津村 啓介君
幹事 山花 郁夫君 幹事 馬場 伸幸君
幹事 浅野 哲君
井出 庸生君 稲田 朋美君
井野 俊郎君 大野敬太郎君
黄川田仁志君 小林 鷹之君
柴山 昌彦君 新藤 義孝君
葉梨 康弘君 平沢 勝栄君
福田かおる君 古川 禎久君
古屋 圭司君 細野 豪志君
三谷 英弘君 森 英介君
山口 壯君 山田 賢司君
五十嵐えり君 岡田 悟君
奥野総一郎君 階 猛君
柴田 勝之君 平岡 秀夫君
藤原 規眞君 松尾 明弘君
谷田川 元君 吉田はるみ君
米山 隆一君 青柳 仁士君
阿部 圭史君 和田有一朗君
岸田 光広君 福田 徹君
河西 宏一君 浜地 雅一君
平林 晃君 山口 良治君
大石あきこ君 赤嶺 政賢君
北神 圭朗君
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参考人
(東京大学大学院工学系研究科教授) 鳥海不二夫君
参考人
(桜美林大学リベラルアーツ学群教授) 平 和博君
衆議院憲法審査会事務局長 吉澤 紀子君
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委員の異動
五月十四日
辞任 補欠選任
平岩 征樹君 岸田 光広君
同月二十二日
辞任 補欠選任
小林 鷹之君 福田かおる君
高市 早苗君 黄川田仁志君
浜地 雅一君 山口 良治君
同日
辞任 補欠選任
黄川田仁志君 高市 早苗君
福田かおる君 小林 鷹之君
山口 良治君 浜地 雅一君
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本日の会議に付した案件
日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(憲法改正国民投票法を巡る諸問題(ネットの適正利用、特にフェイクニュース対策))
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○枝野会長 これより会議を開きます。
日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件、憲法改正国民投票法を巡る諸問題、ネットの適正利用、特にフェイクニュース対策について調査を進めます。
初めに、去る四月十七日、国民投票広報協議会の具体的なイメージについて、会長、会長代理、幹事、オブザーバーによる意見交換会を行いましたので、その議論の概要を御報告いたします。
最初に、広報協議会の事務に関する議論を御報告いたします。
まず、議論を行うに当たっての視点として、広報協議会の性質を踏まえるべきとの指摘がありました。具体的には、広報協議会が憲法改正の発議後に設置され、事務局も臨時的に置かれること、つまり、ガイドライン策定などが現実的に可能なのかという点、政治家が、発議直後の状況下で、かつ、反対会派が少ない構成となり得る場において決定する機関であること、賛否平等の広報を行うことが法定されていること、以上の三点が挙げられました。
なお、憲法改正の必要がない以上、広報協議会の議論も不要であるという意見や、広報協議会における公平公正の確保に疑義を呈する意見なども述べられました。
また、現在議論されている広報協議会の事務は二つのカテゴリーに分けられることが指摘されました。すなわち、現行の国民投票法に規定された、広報協議会自身が行う広報、すなわち広報機能の具体化というカテゴリー、現行の国民投票法に規定されていない、広報協議会が他者の意見表明に何らかの形で関与する事務、すなわち新たな機能の追加というカテゴリーの二つです。
これを踏まえ、以下、このカテゴリーごとに御報告していきます。
まず、一つ目の、広報機能の具体化についてです。
現行の国民投票法十四条一項において、広報協議会の事務として、国民投票公報の原稿作成、憲法改正案の要旨の作成、放送、新聞広告による広報に加え、同項四号に、その他の憲法改正案の広報に関する事務が規定されています。審査会の議論では、その他の憲法改正案の広報に関する事務として、インターネット広報や説明会の開催が提起されてきましたが、意見交換会でも、これらを含め、この四号の事務として実際に何を行うのかを具体的に議論する必要性が改めて指摘されました。
次に、二つ目の、新たな機能の追加についてです。
この議論に当たり、総論として、次のような指摘がありました。
まず、この新たな機能の議論は、広報協議会の細目的事項を定める規程の詳細や、事務局の体制の在り方、つまり必要な人員等に影響するという点です。
また、審査会でこれまで議論されてきた国民投票における放送、ネット等の問題と関連している、つまり、広報協議会の新たな機能として何を行うかは、放送、ネットの問題に関して、法規制を行うのか否か、どのように対応するのかについての結論と関連するという点です。
さらに、特にフェイクニュース対策などSNS関係の議論は公職選挙法や社会問題にも関わるので、国民投票法に限った議論を行うべきであるという点や、客観的、公平公正という性格を有する広報協議会にふさわしい事務かという観点から議論を行うべきであるという点です。
次に、広報協議会の新たな機能の具体的な内容についてです。
これまでの放送、ネット等に関する議論の中で、広報協議会によるガイドラインの策定等の自主的取組の後押しや、事業者からの報告聴取、広報協議会のURLの優先表示等の一定の法的な義務づけなど、様々な方策が提起されており、意見交換会でも改めて各会派から提起されました。他方で、審査会で言及されていた広報協議会による削除要求については、表現の自由の観点から困難ではないかとの指摘がありました。
また、国民投票への外国の干渉は重要な論点であり、憲法審査会を起点として、幅広く他委員会や各政党を巻き込んだ議論を提起してもよいのではないかとの指摘もありました。
新たな機能に関し、意見交換会で特に議論があったのが、ファクトチェックとの関わり方です。
この点、少なくとも投票過程に関する偽情報に対しては広報協議会が自らファクトチェックを行うべきとの意見もありましたが、広報協議会が自らファクトチェックを行うことは、表現の自由等の観点から困難ではないか、公権力の行使に当たるのでかなり精緻な議論が必要ではないかとの意見が述べられました。
また、広報協議会がガイドラインでフェイクニュースの具体例を示すことは必要との意見が改めて述べられた一方、フェイクニュース対策は国民投票法に限らない議論が必要であることから、広報協議会がガイドラインを策定するかは議論が必要であることなど、ガイドラインの射程は論点の一つとの意見もありました。
さらに、ファクトチェック団体と広報協議会との連携や、広報協議会が真偽の判定をするのではなく、事業者の通報を受け、必要に応じて正しい情報を公表すること、いわゆる付随的情報提供も改めて提起されました。この付随的情報提供のように、正しい情報を公表するという行為は、事前に基準を定めれば、ファクトチェックではなく、広報協議会自身が行う広報と位置づけることも可能かもしれないとの意見もありました。
なお、新たな機能の条文の定め方については、新たな機能は国民投票法十四条一項各号の広報協議会自身が行う広報とは性質が異なることから、国民投票法に新たな条文を規定することも考えられるという指摘があった一方、諸外国の規定や、各省庁がガイドラインの策定等を行う根拠規定を参照して新たな規定の必要性を検討すべきとの意見もありました。
これらに関連して、諸外国の国民投票運動における偽情報等対策について、国立国会図書館に調査をお願いしましたので、本日、調査報告書をお配りしています。
以上の、広報機能の具体化と、新たな機能の追加の二つのカテゴリーの議論の順序についても意見が述べられました。
ここまで御報告した議論を踏まえて、放送、ネット等に関する規制に広報協議会が関わること、すなわち、新たな機能の追加は簡単ではないという点は、意見交換会において大分集約できたところであり、まずは広報機能の具体化から議論を進めてはどうかとの提案がなされました。
また、その他として、選挙管理委員会が行う国民投票の周知に広報協議会が連携することの議論の必要性、賛否平等の広報の在り方について検討するに当たり、公的広報に賛否平等の縛りがなかった大阪都構想の住民投票について検証する必要性、広報協議会の活動に必要な予算を積算して国民に明らかにする必要性も指摘されました。
なお、審査会の毎週開催は不要であるとの意見や、最短で憲法改正発議をする場合のスケジュール感を示してほしいとの意見もありました。
以上の広報協議会の事務そのものに関する議論とは別に、今後の議論の進め方についても議論がなされました。
まず、改めて、憲法改正に対する考え方を問わず、広報協議会の細目的事項を定める規程の整備は必要であり、また、事務的な手続の整備なので、できるだけ早く行うべきであるとの意見がありました。
規程の整備を含む広報協議会の議論については、審査会本体以外の場で制度設計等を議論すべきとの意見がありましたので、引き続き、幹事懇談会メンバーによる意見交換会の形式で進め、必要に応じて審査会本体に報告することとしたいと思います。
また、広報協議会に関する諸規程は、両院議長協議決定という法形式で定められることになっているため、ある段階で衆議院と参議院で足並みをそろえる必要があることも、改めて認識を共有したところです。
以上、意見交換会の概要を御報告いたしました。
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○枝野会長 次に、参考人からの意見聴取及び参考人に対する質疑を行います。
本日は、参考人として東京大学大学院工学系研究科鳥海不二夫教授及び桜美林大学リベラルアーツ学群平和博教授に御出席をいただいております。
この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。参考人それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、調査の参考にいたしたいと存じます。
本日の議事の順序について申し上げます。
まず、鳥海参考人、平参考人の順に、それぞれ御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対しお答え願いたいと存じます。
なお、発言する際はその都度会長の許可を得ることとなっております。また、参考人は委員に対し質疑することはできないこととなっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。
御発言は着席のままでお願いいたします。
それでは、まず鳥海参考人、お願いいたします。
○鳥海参考人 東京大学の鳥海です。よろしくお願いいたします。
本日は、憲法審査会という非常に重要な場にお呼びいただきまして、ありがとうございます。
それでは、私の方から、本日は、デジタル情報空間における偽・誤情報の拡散ということにつきまして、データ分析の観点から、我々が持っている知見についてお話しさせていただきたいと思います。
なお、私は、計算社会科学という分野の研究を行っておりますので、そのほかの部分につきましてはなかなか、政治等、法律等については専門ではないので、その辺に関しては余りお答えできない部分もございますけれども、御了承いただければと思います。
それでは、資料の方を御覧いただければと思います。
まずは、「偽誤情報の拡散ルート」というページがございますので、そちらを御覧いただければと思います。
現在、様々な調査によって、偽・誤情報がどのように国民に伝わっているのかというところを調査されておりますけれども、調査の結果から、偽・誤情報の受信は主にSNS、ネットニュース、動画共有サービスといったところが多いということが分かっております。
発信する側は対面等での発信が多いということが分かっておりますが、対面は家族等に個人的に伝わるだけなのに対して、SNS上に拡散されたものというのは大量の人に伝わるという意味で影響力が大きいということが現在分かっております。
次のページに行きまして、「偽誤情報の拡散の性質」というところについての、サイエンスという論文誌に掲載されている論文のデータを少し御紹介したいと思います。
こちらは、偽・誤情報といったものと正しい情報といったものがインターネット上でどのように拡散しているのかというものを調査したものになりますが、ここで、偽・誤情報の方は、深さ、どのぐらいの人まで何ステップで伝わっていくのかといったことであったり、その規模、幅、速度あるいは到達人数等の観点で、そういった偽・誤情報の方が正しい情報よりも広がりやすいということが分かっております。
偽・誤情報というのは、偽物の情報ですので自由につくれるということから、より人々の心に訴求するような内容を多く入れることができるということで、人々の関心を得やすいというのが大きな要因ではないかというふうに考えられております。
続きまして、「偽誤情報の拡散の背景要因」というところを少しお話しさせていただきたいと思います。
現在の情報空間というのは、通常の、これまでのいわゆるオールドメディアと言われるマスメディアのほかに、ソーシャルメディアであるとかネットメディアと呼ばれるようなものが複雑に絡み合って存在しているわけですけれども、そういったものが存在することによって、これまでになかった新しい社会現象というのが生まれております。
その中で、キーワードとなるものが三つございます。
一つが、アテンションエコノミーと呼ばれるもので、関心経済と日本語では言いますけれども、これは、ネット空間の情報というのが広告収入モデルによって人々に伝えられているというのが大きな要因で起きている、現在のネット空間を支配している経済原理ということになります。
広告収入のモデルによって我々は情報を見ているのですけれども、それによって、人々の関心を集める、特定のところにアクセスが増えることによって経営している人に収入が入るというようなシステムに現在なっております。そのため、我々の関心をいかに得るのかということが経済的なインセンティブに直結しているというのがこのアテンションエコノミーの本質ということになります。
ただ、これによって、関心さえ得られれば質を問わない情報提供というのを求めてしまうということがございます。これがアテンションエコノミーという一つ目のキーワード。
二つ目が、エコーチェンバーと呼ばれるものになります。
人々は同じような価値観の意見を好むために、同じような意見を持った人たちが集まりがちであるというところで、特に現在SNSが様々なところで利用されておりますけれども、SNSでは同じ価値観を持つユーザーが容易に発見できることから、同じ人たちが集まりがちであるということになります。そのため、同一の価値観を持つコミュニティーが形成されるということが起きまして、これをエコーチェンバーというふうに呼んでおります。
エコーチェンバーの中にいますと、視界に入る範囲では皆同じ意見を持っており、多様な意見に接する機会を喪失するというおそれがあると言われております。
三つ目が、フィルターバブルと言われる現象です。
こちらは、エコーチェンバーと類似してはいるんですけれども、同じように、多様な情報に接する機会を喪失するものではありますが、その要因が、推薦システムなどのアルゴリズムによってつくられる、AIによって、我々が情報に接触するところが制限されてしまうといったところがございます。つまり、AIによって、我々が見る情報に偏りが生じてしまうという現象ですね。これをフィルターバブルというふうに呼びます。
これら三つのものが要因で偽・誤情報というのが拡散しがちであるということが言われております。
一つ目、アテンションエコノミーについてもう少し詳しく説明させていただきます。
「アテンションエコノミーと情報提供」というページでございますけれども、右側にグラフを描いておりますけれども、こちらはユーチューブの動画の投稿数と再生数というふうに書いております。
右側のグラフの上側が、とある選挙において候補者Aを支持するような動画の投稿数を示したものになりますけれども、再生回数が増えると動画の投稿数が増えているということがこちらから見て取れます。下側は、この候補者に対して支持しない動画の再生数と投稿数なんですけれども、再生数が伸びないと投稿数が増えないということが実際に起きていました。こちらは必ずしも偽・誤情報の話ではないんですけれども、再生数が増えると動画の投稿数が増える、これはまさにアテンションエコノミーの影響ということが言えるかなと思います。
この際、特定の内容であれば偽・誤情報であっても再生数が伸びるということであれば、そちらを投稿するインセンティブがここに存在してしまうということを示しているかなと思います。つまり、アテンションを獲得できる情報が大量に投稿される、これが偽・誤情報が広まる要因になり得るということになるかなと考えられます。
このとき、動画投稿サイト等の問題点といたしまして、信頼の非対称性というのがございます。マスメディア等では、信頼確保のために十分に裏づけを取った情報というのを発信しているわけですけれども、そのためには非常に大きなコストがかかるということで、多くの情報を提供できない。一方で、動画サイト等では、余り正しくないかもしれない情報であってもそれほど気にせずに投稿することができるために、しかも大量の人が投稿することができるということで、誤った情報であっても大量に投稿されてしまうということが生じ得る。わざわざ投稿するのは金銭的な収入のためであるということを考えますと、アテンションエコノミーは大きな影響を与えていると言うことができるかと思います。
次のページに行きまして、こちらはエコーチェンバーの話となります。
このエコーチェンバーという現象が発生しますと、我々は特定のコミュニティーの中に入ってしまう可能性があるんですけれども、ここで、偽・誤情報をよく拡散する人たちのコミュニティーというのが実際に存在していることが分かっておりまして、かつ、そのコミュニティーにおいては、特定の偽・誤情報だけではなくて、それ以外の偽・誤情報も発信しがちであるということが分かっております。
右側のグラフは、ワクチンに関係するような情報に関する発信者がそのほかの偽・誤情報に対してどのような態度を取っていたのかというのを示しているものですけれども、ワクチンに関する偽・誤情報、ここで偽・誤情報と言っているものは、国や公的機関が発信している正しいと言われている情報ではないものを偽・誤情報としておりますけれども、そういったものを発信している方というのは、それ以外の情報に関しても偽・誤情報を発信しがちであるということが分かっております。
こういったコミュニティーにいることによって、偽・誤情報の連鎖にのまれる可能性というのがあります。訂正情報に接する機会がない、訂正情報との接触を避けるようになる、あるいは、確証バイアスと呼ばれるものが人間にはありますけれども、信じている情報と矛盾しない情報を信じやすいということで、そういう情報がたくさん来ることによってより信じるようになったり、そのコミュニティーの中で信じられているものを外部から否定されると、自分が好きなものを否定されると否定してきたものを拒否するという認知的均衡と呼ばれる人間のバイアスが働いて、より強固に反対するようになってしまうといったような可能性が考えられます。
そして、次のページですけれども、こういったコミュニティーに入った場合、この偽・誤情報コミュニティーからの脱出は非常に困難であるということが分かっています。
こちらは先ほどと同じワクチン関連情報のコミュニティーの方たちについて分析したものですけれども、二〇二〇年の一月に偽・誤情報発信率の高いグループに所属していた方は、二〇二一年の十二月にも同じグループに存在し続けている、九五%は変化がないということが分かっております。この間に様々なことがあったにもかかわらず、一度こういったコミュニティーに入ると、なかなか出づらい。これは様々なところで、家族でさえこういったものは説得が難しいということが分かっておりますので、こういったコミュニティーというのは一度入るともう出ることはできないというふうに考えた方がいいかなと。
一度落ちた人を救うためには非常に高いコストがかかるため、こういったコミュニティーにそもそも入らないようにするためのコストをかける必要があるのではないかというふうに現在考えられております。
次のページに行きまして、こちらはフィルターバブルのお話となります。
こちらは、フィルターバブルというものが情報を偏らせるよというお話なんですけれども、この右上のグラフは、動画共有サイトで特定の動画を見るとどのような動画が推薦されるのかというのを示したグラフになりますが、とある何らかのカテゴリーの動画を見ると、推薦される動画のほとんどがそのカテゴリーになるということがこちらの調査から分かっております。
さらに、こういった偏った情報ばかりが動画サイト等で提供されることによって、これが特定の、例えば先ほど申し上げたような偽・誤情報のコミュニティーへの入口になってしまうというような可能性があるということが分かっております。
我々の調査でも、不誠実な陰謀論者というふうに呼んでいますけれども、初めに申し上げたアテンションエコノミーのために、陰謀論のようなものをお金もうけのために投稿している方たちというのが一定数いるんですけれども、そういった動画を楽しんで見ているうちに、本当の陰謀論を信じている方たちの動画まで到達してしまって、そちらのコミュニティーにのまれてしまうことがあるということで、フィルターバブルというのが偽・誤情報の拡散に大きな影響を与えているということが分かっております。
では、続きまして、偽・誤情報に対して訂正をするというお話と、その限界についてお話ししたいと思います。
まず、偽・誤情報と訂正情報ということを考えますと、偽・誤情報に対しては、やはり訂正をするということが最も重要であるということは分かっております。
その訂正情報をどこから見ているのかというのに関しましては、調査の結果から、やはり旧来のメディア、テレビや新聞というのが正しい情報の主な情報源になっているということが分かっております。これは、必ずしもテレビや新聞を見るということではなく、こういったところがネットに発信しているものを見るということも多々含まれてはおりますけれども、こういった信頼性の高いメディアというところが重要な情報源となっており、特に日本はメディアの信頼性が諸外国に比べると高いということが調査で分かっております。ニュースを信頼する方が四三%、信頼しないという方は一六%しかいないということで、現在でもマスメディアへの信頼は高いので、これを維持するというのは、訂正情報を流す上で非常に重要なことかなというふうに考えられております。
また、日本特有の条件でいいますと、日本においては、先ほど偽・誤情報の方が拡散が早いというお話をしましたけれども、特定のジャンルの話に限るのかもしれませんけれども、必ずしも偽・誤情報の方が拡散が早いというわけではないということも分かっておりまして、訂正情報が比較的早く日本では拡散されているという事実もございますので、やはりファクトチェックというのは一定の効果があるということが考えられます。
ただ一方で、ファクトチェックがあれば全ての問題が解決するかというと、そうではないということも分かっておりまして、例えば、訂正情報がかえって社会的混乱をもたらすという事例も存在しました。
これは、具体例としましては、二〇二〇年、新型コロナが始まった頃、トイレットペーパーが品切れになるというようなデマが出回ったことがあるんですけれども、その際に、すぐに訂正情報が拡散されたにもかかわらず、トイレットペーパーの品切れが各所で起きたという事実がございます。これは、訂正情報がかえって人々の行動をコントロールしてしまったというところがございます。
その要因としましては、例えば、多元的無知と呼ばれる人間の心理的バイアス、つまり、自分は正しい情報を知っているけれどもほかの人は知らないに違いないと思うと、知らない人が多数の場合に、正しい行動というのを取ってしまうというようなことがあり得るであったり、トイレットペーパーの案件は多元的無知と呼ばれるものがあったのかなと考えられますけれども、それ以外の場面でも、バックファイア効果、例えば、自分の考えを否定されると、かえって強固にそれを信じてしまうであるとか、個人の認知要素間の整合性を保とうとする、要は、信じている情報を偽・誤情報だとするメディアにかえって不信感を持ってしまうというようなことが起きてしまうということが分かっております。
次のページに行きまして、またもう一つ、情報訂正の限界というものに時間的限界というのがございます。
訂正情報というのは一定の効果があるということは分かっておりまして、こちらは新型コロナのワクチンに関する偽・誤情報に関するお話ですけれども、右側にグラフを示しておりますが、これは、ソーシャルメディアのX上、当時はツイッターですね、に流れた偽・誤情報が全体の関連する情報の中に占める割合を示したグラフとなります。二〇二一年頃から新型コロナワクチンに関する情報がたくさん出始めまして、その中に一定数の偽・誤情報があったんですけれども、ある程度、訂正情報を国等が出すことによって訂正ができたということが分かっております。
ただ一方で、その後、ワクチンに関する話題が低下すると、皆さんが興味をなくしてくると、反対する側の方たちだけが、自分たちの意見が通っていないので情報を発信し続けるということが起きまして、現時点では、反対派の情報、ワクチンに関する偽・誤情報の方がより多くネット上には拡散しているという状況になっております。ですので、今からワクチンに関して情報を調べると、多くの場合、誤った情報に接してしまう可能性があるということが分かっております。したがって、コストをかけて長期の訂正というのは行っていく必要がある。偽・誤情報の根絶は極めて困難であると言うことができると思います。
では、こういった偽・誤情報に対する包括的な対策として何が必要なのかというところを考えていきたいと思います。
大きくは、ユーザーリテラシーを向上させること、また、ユーザーをきちんと支援すること、そして、プラットフォーマーへの規制を行うことという三点が考えられるかと思います。
では、リテラシー向上の方に行きたいと思います。
リテラシーの向上という観点から考えますと、現在のリテラシー状況がどうかということを考えますと、右上にグラフを描いておりますけれども、フェイクニュース、偽・誤情報といったものに関しては認知率は高いんですけれども、先ほど御説明しました例えばアテンションエコノミー等の認知率というのは二〇%を下回っているということで、現在、そこまでリテラシーが高いとは言えない。ちなみに、他国での調査ですと、アテンションエコノミー等の認知率は五〇%程度あるということで、日本は極めて低いと言えるかなと思います。一方で、不安は感じているというところではあります。
では、プラットフォーマーが偽・誤情報の対応ができるのかということに関しましては、メタ社が第三者ファクトチェックプログラムに関して方針を転向するなどのこともございまして、こちらに全てをお任せするのはかなり難しい状況ということで、やはり、情報リテラシー、メディアリテラシーというのをきちんと考えていく必要はあるだろうと考えられます。
ただ一方で、こちらもやはり限界がございまして、人間は理性的な行動を取るのが苦手というふうに言われております。人間の考えには、二重過程理論と呼ばれる行動経済学の理論によると、本能であるシステム1と、理性であるシステム2という二つのシステムがございますが、基本的には本能で動いてしまうために、理性的に一々ファクトチェックをするというのはなかなか難しいということで、事実、ファクトチェックを行ったことがない方が四七%、そもそもファクトチェックのやり方を知らない方が六四%ということが分かっております。したがって、ファクトチェックができないという状況下で我々は支援をする必要があるのではないかというふうに考えられておりまして、ネット上の情報に信頼性を確認できる仕組みがあるとよいと考えている方が六五%いるということになります。
そこで、支援が必要ということで、次のページ。
「情報的健康とその支援」ということで、情報的健康というのは、私と慶応義塾大学の山本龍彦先生、憲法学者と提案している考え方でありますけれども、肉体的健康を支援するということは、現在、食育、食品表示法、健康増進法等で様々行われておりますし、フードテック等のビジネスもあるので、肉体的健康のためには我々はかなり支援をされているということになりますが、同じように、情報のためにも、よりよい情報を得るために何か支援をする必要があるのではないかというふうに考えられます。
一つは、例えば、我々が何か物を買うときにカロリー表示を見たりアレルゲンを確認したりするということと同じように、何か情報を見るときには、その情報に関して何らかの付加情報がついているような状態になるとそれが支援になるのではないかというメタ情報の可視化というものと、健康診断や人間ドックを受けるように、現在の自分の情報空間がどのようなものか、自分の情報に対する態度がどのようなものかを理解する情報ドックと呼ばれるものを実現するといったことが考えられ、そういったものを支援するということがあり得るのではないかと考えられております。
また、プラットフォーマーへの規制という観点に関しましては、プラットフォーマーへの規制は様々なものがあると思いますけれども、偽・誤情報対策は、検閲するというのはなかなか難しいので、ユーザーの判断材料を提供するといったところが重要ではないかというふうに考えられております。例えば、訂正情報を提示する、エンゲージメント制御をする、リテラシーを支援するといった形が考えられるかなと考えられております。
また、場合によっては、選挙や災害時などは、そのときだけでもプラットフォーマー側に非日常モードというのを要請しまして、より偽・誤情報が広がりづらいようにするということが必要かなと思います。
また、最後に、最も重要なポイントとして、データ、情報の提供を促進するということが考えられるかなというふうに考えられます。現在、多くのプラットフォーマーがデータ等を自分たちのところに、手元に確保しているという現状がございますので、そういったところを開放することによって様々なビジネス等も展開されると期待できますので、その辺をプラットフォーマーに期待するということが重要かと思います。
最後に、データ分析の重要性ということで、データ分析を行うことによって様々な偽・誤情報対策ということが見えてくるというのもございますので、こちらも、例えば、偽・誤情報の訂正の一番よい出し方というものの一つとして、偽・誤情報を見たユーザーだけが改めて訂正をするといったことが最も効率的であるということが分かったり、あるいは、災害時の偽・誤情報の多くが実は被災地以外で拡散しているということが分かったりということがございますので、プラットフォーマーにデータの提供を依頼するというのが必要かなと思います。
最後になりますけれども、我々自身、国民一人一人もそうですけれども、社会全体としても、様々な偽・誤情報に関しての知識を得る、知るということ自体が最大の対策になるのではないかと考えております。
以上をもちまして、私の方からの報告を終わりたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
○枝野会長 ありがとうございました。
次に、平参考人、お願いいたします。
○平参考人 桜美林大学の平でございます。
本日は、このような貴重な機会をいただき、誠にありがとうございます。
私は、メディア環境の変化を、シリコンバレー駐在を含め、三十年以上にわたって取材をしてまいりました。本日は、その観点から、憲法改正国民投票をめぐるいわゆるフェイクニュースそれからファクトチェックの課題について意見を述べさせていただきます。
まず、お断り申し上げます。
私は、メディア論を専門とする実務家教員であり、法律論については十分な専門的知見を有しておりません。また、本日の発言は、あくまで私見であり、関連団体を代表するものではないことをあらかじめ御了承ください。
それでは、五ページを御覧ください。
本日は、この五つの論点を中心に御説明をいたします。
まず第一に、ファクトチェックは、広報活動とは切り分け、民間主導で進めるべきだと考えます。マスメディアによるファクトチェックの取組強化も重要です。
第二に、ファクトチェック団体と国民投票広報協議会の直接的な連携は難しいと考えます。一方で、幅広いステークホルダーによる透明性の高い情報共有の場の設定は選択肢となり得るのではないかと思います。
第三に、偽情報の拡散は、生成AIによる高度化、サイバー攻撃との連動などで対応のハードルが上がっています。安全保障の文脈では、政府機関との連携、国際的な連携も重要です。
第四に、ネット広告を用いた偽情報の拡散は、いわば見えない拡散です。透明性確保のため、日本においても広告ライブラリーの整備が求められます。
第五に、偽情報、誤情報対策に決定打はなく、社会のレジリエンス、すなわち強靱性に着目した総合的で継続的な取組が不可欠となります。
以下、具体的に御説明いたします。
六ページを御覧ください。
まず、フェイクニュースとファクトチェックにまつわる用語の整理をいたします。
フェイクニュースという言葉は、偽情報、誤情報、さらに、デマ、流言なども含む幅広い意味で使われております。ここには、法令違反の違法情報、違法ではなくともプラットフォームの利用規約に違反する有害情報、あるいは誹謗中傷などにおける虚偽情報も含まれます。
政策の焦点は、多くの場合、偽情報、誤情報対策です。特に、意図的に拡散される有害な虚偽情報である偽情報対策が喫緊の課題です。ですので、本日の説明も偽情報対策を軸に進めさせていただきます。
問題の中心は、このような虚偽情報が社会に分断や混乱、扇動、人権侵害といった深刻な危害を及ぼす点にあります。
欧州連合、EUのデジタルサービス法、DSAは、規制の中心を違法情報とし、必ずしも違法ではないが有害な偽情報には、主に、DSA、デジタルサービス法と連動するプラットフォームの自主規制、偽情報に関する行動規範で対応をしております。
日本では、違法情報を規制する関係法令に加えて、今年四月に施行された情報流通プラットフォーム対処法により、権利侵害情報などへの大規模プラットフォームの対応も整備されました。
七ページです。
次に、ファクトチェックの定義と規律について御説明いたします。
ファクトチェックは、欧州ファクトチェック基準ネットワークの定義によれば、公共空間における言説の正確性をエビデンスに基づく手法で検証することとされています。
また、ファクトチェック団体の信頼性担保の規律として、国際ファクトチェックネットワークが掲げる非党派性と公正性、情報源の基準と透明性、資金源と組織の透明性、検証方法の基準と透明性、訂正方針のオープン性の五原則が国際的な基準となっております。
八ページです。
続いて、偽情報、誤情報へのファクトチェックの主体についてです。
公的機関による正確な情報の発信と、非党派性、独立性、透明性が求められるファクトチェックとは、区別した議論が必要だと考えます。
公的機関がファクトチェックを掲げて情報流通にラベルづけをすることは、表現の自由を侵害するリスクをはらみます。
また、憲法改正発議によって設置される広報協議会のような組織で、ファクトチェックの規律にのっとったノウハウが蓄積されるということは現実的には想定しづらいのではないかと考えます。
九ページ。
ただし、公的機関の情報発信が高い信頼を得ていることも事実です。総務省のICTリテラシー実態調査によると、ソーシャルメディアやネットの情報を正しいと判断する基準として、公的機関が発信元、情報元であるとする回答が最も多かったという結果も示されております。
公的機関などの成り済まし、災害時の被害状況や避難、救助の虚偽情報、あるいは制度や手続に関する虚偽情報など、公的機関による正確な情報発信が必要とされる場面もあります。
厚生労働省の新型コロナワクチンQアンドAや外務省のALPS処理水をめぐる偽情報対応のような取組の事例もあります。ただ、これらは、一定の規律に基づいて情報の正確性を検証するファクトチェックとは異なり、正確な情報の流通で正しい理解を促す広報の範疇と見ることができます。
国民投票における広報活動についても、正確な情報をより広く流通させることに重きを置き、ファクトチェックとは区別した方が国民にも分かりやすいのではないかと考えます。
十ページ。
次に、広報協議会とファクトチェック団体が直接連携すること、これは難しいと考えております。ファクトチェック団体はメディアの一形態であり、国家からの統制を受けない独立性、非党派性、透明性が基本となります。ファクトチェック団体が国家機関と一体となるような取組は望ましくないだろうと思います。
ただし、偽情報、誤情報対策に関する国と民間の情報共有の場が必要だとすれば、政府関係機関、プラットフォーム、マスメディア、ファクトチェック団体、学術界、市民団体など、幅広いステークホルダーが参加する、透明性を担保したラウンドテーブル形式の場の設置は選択肢となり得ると考えます。
偽情報、誤情報対策は国民投票に限ったものではありません。このような情報共有の場は、選挙への対応も視野に設置を検討してもよいのかもしれません。
十一ページです。
国民投票にまつわる偽情報の流通は、広報協議会の設置以前、憲法改正原案提出の機運が高まる段階から拡大する可能性があります。したがって、広報協議会設置時点では、既にファクトチェック結果が一定程度蓄積されていることも想定されます。広報協議会がこれらの蓄積を整理し、国民への啓発に活用する広報活動は考えられます。
プレバンキングという手法もございます。想定される偽情報、誤情報に関する主な検証結果をあらかじめ公表しておくことで、社会の免疫力を高めるという手法です。国民投票運動の本格化前にファクトチェック団体が取り組むことも想定されますが、広報協議会の発信でその後押しをすることはできるのではないかと考えます。
ロシアによるウクライナ侵攻時、ウクライナのゼレンスキー大統領のAI偽動画、ディープフェイクスが拡散されました。しかし、その二週間前にウクライナ政府は偽動画の情報を把握し国民に注意喚起をすることで、実際に拡散した際の混乱を抑制することができたとされています。
十二ページ。
社会全体のファクトチェック機能の強化には、マスメディアの積極的な取組も期待したいと思います。ファクトチェックは、専門団体だけではなく、海外ではマスメディアも広く実施してまいりました。
国際ファクトチェックネットワークには、AFP通信、ロイター通信、AP通信、ワシントン・ポスト、USAトゥデー、ドイチェ・ベレ、フランス・バンキャトルなどのマスメディアが参加をしております。
二〇二四年のアメリカ大統領選では、候補者のテレビ討論会において司会者によるリアルタイムのファクトチェックが行われるなど、迅速かつ積極的な取組も目立ちました。
ファクトチェック機能の層が厚くなることで、更に迅速な対応が期待できます。
十三ページ。
重要なのは、ファクトチェックが実際に国民に届き、対象となる偽情報、誤情報の拡散が抑制されることで初めてその効果が発揮されるという点です。
そのためには、プラットフォーム事業者によるファクトチェック結果の優先表示や、偽情報、誤情報表示の抑制策も不可欠です。
しかし、残念ながら、先ほど鳥海先生の御指摘もございましたけれども、プラットフォーム事業者のコンテンツモデレーション、すなわち利用規約違反の有害情報の管理、対処や、ファクトチェックの取組における後退の動きも見られるところです。さらには、プラットフォーム事業者が集中するアメリカの現政権が偽情報、誤情報対策を検閲であると位置づけていることが問題を複雑にしております。
偽情報、誤情報対策は、検閲では決してなく、国民一人一人の判断の土台となる正確な情報の流通を支えるものです。
十四ページ。
偽情報に関しては、外国による情報操作と干渉、いわゆるFIMIの論点もあります。偽情報は、情報戦の一環として外国勢力が拡散する場合があります。日本も、二〇二二年の国家安全保障戦略などで偽情報対策を明記しております。
生成AIの進化によって、偽情報は大規模、安価、高速、巧妙となり、偽装ニュースサイトが三日間で百二十件も開設された事例も報告されております。AIの活用は、偽アカウント登録、偽情報コンテンツ作成、拡散におけるエンゲージメント、いわばシェアとか「いいね」、こういったリアクションのエンゲージメント獲得まで、急速に拡大しております。
十五ページ。
偽情報の拡散にはサイバー攻撃が連動する場合もあります。
二〇一六年アメリカ大統領選、翌年、二〇一七年のフランス大統領選、二〇二二年のウクライナ侵攻、そして昨年、二〇二四年のルーマニア大統領選などでは、サイバー攻撃と偽情報拡散が併せて行われたと言われております。
サイバー防御と偽情報対策が重なる場面では、国家安全保障戦略に基づく政府機関との連携も重要になるかと思います。
また、G7即応メカニズムなどの国際連携の枠組みも重要です。
十六ページでは、ネット広告の課題について取り上げています。
ネット広告は、個別ユーザーに特化したマイクロターゲティングのために、そこに偽情報、誤情報が含まれていた場合、社会、すなわち一般ユーザー、メディア、研究者からは遮られた、見えない拡散となってしまう問題点があります。
この問題への対応策として、EUのデジタルサービス法では、メタ、グーグル、ティックトック、Xなどの超大規模プラットフォームに広告ライブラリー、すなわちデータベースを整備し、掲載された広告を一年間保存、公開して、誰でも検証できるようにすることを義務づけております。また、今年十月に全面施行される政治広告の透明性とターゲティングに関する規則では、政治広告に関しては七年間の保存、公開が義務づけられております。
十七ページ。
現在、情報流通プラットフォーム対処法の大規模プラットフォームとしては、グーグル、LINEヤフー、メタ、ティックトック、Xが指定されていますけれども、日本で広告ライブラリーに対応しているのはメタとグーグルのみです。
メタは、社会問題、選挙、政治関連広告を七年間保存しておりますが、それ以外は日本では広告掲載終了とともに非公開となります。グーグルは、一般広告では一年間、政治広告は七年間の保存を行いますが、政治広告は日本では未対応です。ティックトックやXも広告ライブラリーを設けておりますけれども、日本には対応しておりません。
ネット広告の透明性確保には、まず広告ライブラリーの整備が求められると思います。
十八ページ。
収益目的での偽情報拡散も課題となります。投資詐欺などのアクターが国民投票を、社会の注目を集めるアテンション獲得のための素材として取り込む可能性もございます。
二〇一六年のアメリカ大統領選では、ロシアによる政治介入に加えて、マケドニアの若者たちが広告収益目的でフェイクニュースサイトを立ち上げていたことが判明しております。最近でもカナダの総選挙で、暗号資産投資詐欺の広告がニュースメディアを偽装し、政党党首らに関する偽情報を拡散する事例も報じられました。
生成AIを駆使した詐欺広告はグローバルに展開をされているところです。日本国内でも、選挙関連の切り抜き動画が広告収益目的で制作される事例もあります。
十九ページ。
ネット上の政治広告規制強化は一つの対応策だと考えます。
旧ツイッター、現Xは、誤解を招く情報、さらにはマイクロターゲティングの問題を受けて、二〇一九年から全世界を対象に政治広告を禁止した経緯があります。ただし、イーロン・マスク氏による買収後の二〇二三年には禁止を解除して、現在は日本などでも政治キャンペーン広告が可能となっております。
偽情報、誤情報を含む政治広告、さらには広告収益を狙う虚偽の政治コンテンツは、国民投票に限らず選挙においても、現行法の適用強化を含めて一定の対処は必要だと考えております。
対策の柱となるのは、広告掲出の舞台となるプラットフォーム事業者による抑制です。旧ツイッターのような政治広告禁止の前例もあります。加えて、偽情報、誤情報を含む政治コンテンツへの広告配信を停止することは収益化の歯止めにもなると考えます。
二十ページ。
最後に、社会のレジリエンス、強靱性に着目した総合的な取組の重要性について述べます。
偽情報、誤情報対策は総務省の検討会などでも長く議論され、研究開発へのファンディングも、新エネルギー・産業技術総合開発機構、NEDOや、総務省、科学技術振興機構社会技術研究開発センター、JST―RISTEXなどで進められてきました。
ただ、民主主義社会において、強権国家のような特定の情報の即時排除は困難であり、オオカミ男を倒す銀の弾丸は存在しません。したがって、偽情報、誤情報の一定程度の流通を前提に、社会のレジリエンス強化、すなわち、コンテンツモデレーション、ファクトチェック、法整備、研究開発、リテラシー向上など、継続的かつ総合的な取組が肝要です。
これまでの取組との連続性を踏まえた、バランスの取れた対策を講じていくことを強く期待いたします。
以上、甚だ雑駁ではございますけれども、国民投票におけるいわゆるフェイクニュース対策とファクトチェックの在り方について意見を述べさせていただきました。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
○枝野会長 ありがとうございました。
以上で両参考人からの御意見の開陳は終わりました。
―――――――――――――
○枝野会長 これより参考人に対する質疑を行います。
質疑の申出がありますので、順次これを許します。寺田稔さん。
○寺田(稔)委員 両先生におかれては、大変お忙しい中、当憲法審査会にお出ましを賜り、貴重な御意見を賜り、誠にありがとうございます。
それでは、限られた時間ですので、早速質疑の方を進めさせていただきます。
まず、鳥海先生にお伺いをさせていただきます。
先生は、今の意見陳述でも、ビジネスモデルとしてのアテンションエコノミーの問題点また影響について陳述をされました。事業者の経済的利益を最大化するアルゴリズムの構築によって、各ユーザーが自律的ではなく他律的に情報を摂取させられている、これは情報的健康を害するんだという御主張であり、まさしく私も賛同するものでございます。
したがって、民主主義あるいはまた憲法改正の国民投票という場面においても非常に不可欠な情報的健康、インフォメーションヘルスを実現するためには、今のDPFのビジネスモデルであるアテンションエコノミーに代わる別のビジネスモデルの構築、先生は非日常モードのことについてもお触れになられましたが、これを是非構築していく必要があると思いますが、この点についての御所見をお伺いいたします。
○鳥海参考人 ありがとうございます。
アテンションエコノミーに対する、それに代わる新しいビジネスモデルというのを考えるというのは現状ではまだ少し見えていないところでありますので、直近で何かこれを全て解決するというのは難しいというふうに考えております。
ただ、先ほども申し上げて、御指摘もありましたとおり、非日常モードであるとか、今回はお話ししませんでしたけれども、例えば未成年者に対するモードであるとか、そういった対処すべき問題がある場面において何らかの規制をかけるということは可能ではないかと思いますので、そういった形で、単なるアテンションエコノミーではない形というのをつくっていくことはできるのではないかと考えております。
○寺田(稔)委員 ありがとうございます。
平先生に対してお伺いいたします。
先生、今の陳述にも、また先生の著書の生成AIと認知戦の中でも、生成AIの問題について深く触れておられます。生成AIが、大規模化、低コスト化、巧妙化、迅速化の四つの点について大変大きな影響を及ぼしているんだということで、そのインパクトは、情報の真贋、真偽の境界を非常に曖昧にして、その判別を大変困難にしています。そのことは、偽・誤情報を本物だと信じてしまうという現象に加えて、先生も触れられたとおり、本来本物なのに、実はそれが偽物だと誤認をさせる、いわゆるうそつきの分け前、ライアーズディビデンドを引き起こすというふうに先生も著書では指摘をされております。こうした、例えば戦争にまつわるディープフェイクの拡散や、あるいは、政府の意思決定や国民の意識に多大な影響を与えるAIです。
しかし、生成AI自体はもはや相当普及しておりまして、グーグルで何かを検索しても、これは生成AIによる用語ですというふうに出てまいりますが、この生成AIの悪影響を防止をする、防ぐことの方策について、御所見をお伺いいたします。
○平参考人 ありがとうございます。
生成AIのリスクとしては、先ほど説明の中でも触れましたけれども、従来、偽情報、誤情報というのは、労働集約型で、ローテーションを組んで人間が発信をするということが行われていましたけれども、それが生成AIの利用によって、全体的に自動化をする、しかも非常に人間らしい形での文面、あるいは画像、自然な動画、こういったものになってくる。
これに対しては、人間の力でそれを判別する、見破るというのはなかなか限界もございますので、技術的な進展、開発の促進、そういったものを検知する、そこにもAIを使っていって検知を進めていくというようなことも重要になってくるのではないかと考えています。
先ほど少し触れましたけれども、国内では、新エネルギー・産業技術総合開発機構のプログラムで、昨年から二〇二七年までの予定で偽情報の検知・評価・システム化に関する研究開発も行われており、要素技術についても総務省のファンディングで開発が取り組まれておりますので、そのような研究開発の進展に期待をしたいと考えております。
○寺田(稔)委員 ありがとうございます。
それでは次に、かつてこの場でFIJの楊井参考人にお越しをいただき、これはファクトチェック・イニシアティブというファクトチェック機関の方でございます。ファクトチェックの活性化が望ましいんだけれども、日本では人材あるいは資金が非常に不足をしていて、十分なファクトチェック体制あるいはファクトチェック機関の整備が進んでいないという問題点を指摘になられました。
ではどういうふうにすれば、日本で、ファクトチェック団体あるいは機関、またファクトチェック体制が整っていくようになるのでしょうか。もちろん政府の直接介入はしないという前提の下で。これについては、両先生に御所見をお伺いをいたします。
○鳥海参考人 非常に難しい問題ではあると思いますけれども、やはり一つはビジネス化をきちんと行うということではないかと思います。
現在は、ファクトチェック団体というのは恐らく資金提供を受けて行っているのではないかと思いますけれども、一定のファクトチェックを行うことによってのビジネスというのが成り立つ、新聞社等が海外でやっているのは、そういったビジネスの中でファクトチェックを行うことが企業のインセンティブになっているということがあるために行っているんだと思いますけれども、そういったような形というのが取れることは一定必要ではないかなというふうに思います。
○平参考人 社会全体のファクトチェック機能を強化するためには、何らかの公的な支援も選択肢には入ってくるんだろうと思います。ただし、その支援は、ファクトチェック団体が最も重視すべき非党派性、独立性を損なわない形で、具体的な支援方法としては、例えば、特定の団体を直接的に財政支援するのではなくて、偽情報対策のリテラシー啓発などプロジェクトベースの公募型のファンディング、あるいはガバナンス構造を持つ第三者機関を通じた支援など、こういった形で、ファクトチェック団体の独立性、非党派性を損なわない支援策というものを考えていく必要はあるのかなと思っております。
○寺田(稔)委員 ありがとうございます。
それでは、時間の関係で、もう最後になります。本当に簡潔に、一言でお答えいただければ結構なんですが、政府の直接的介入はよろしくないという前提、そうした政府の関与については否定的な意見が多いわけですけれども、国民投票の広報協議会という場面を考えた場合、政府として一体何をなすのがベストであるか、これも両先生に、一言で結構です、お伺いしたいと思います。
○鳥海参考人 先ほど平先生からファクトチェックと信頼できる情報の発信は異なるというお話がありましたけれども、きちんと信頼のできる情報を発信し、それが国民に届くように発信するということが一番重要ではないかと考えております。
○平参考人 誤った情報というのは情報の空白に浸透しやすいということが複数の研究で指摘をされております。正確で分かりやすい情報、特に国民投票に関する、憲法改正に関する正確で分かりやすい情報が十分に行き渡ることというのが非常に重要な点になってくるかと思います。
○寺田(稔)委員 ありがとうございました。終わります。
○枝野会長 次に、奥野総一郎さん。
○奥野委員 立憲民主党の奥野総一郎でございます。
両先生、今日は貴重なお話、ありがとうございます。
私はルーマニアについてまず伺いたいんですが、平先生も触れておられましたけれども、ルーマニアの大統領選挙は昨年十二月に行われまして、ロシアの情報操作あるいは資金提供等の疑惑があってやり直しになりまして、今週、決選投票が行われて結果が出たということでありますが、我が国もサイバー攻撃をしかけてくる近隣の国があるわけですから、他人事ではないような部分もあると思います。
そういう意味で、参考になる部分、ならない部分はあると思うんですが、このルーマニア大統領選挙における偽情報対策について、DSAに基づく部分とルーマニア独自の部分もあると思うんですが、それぞれに分けて評価を聞かせていただきたい。そして、そのうち日本で参考になる部分があれば、お話しいただきたいと思います。両先生、お願いします。
○鳥海参考人 その件に関しましては、存じ上げてはいるものの、私はそこに関してはちょっと専門ではないということで、少しお答えは控えさせていただければと思います。
○平参考人 冒頭に申し上げましたように、法律論に関しては専門的な知見は有しておりませんことを御承知おきください。
その上で、御指摘の内容については、やはり報道ベースでは承知をしております。これについては、ルーマニア国内のファクトチェック団体からも表現の自由への侵害リスクについての批判的な指摘があるとも報道では取り上げられております。
DSAとの関係ですけれども、今回、ルーマニアでは、一月に緊急政令を出しまして、その中で、選挙管理委員会から通知を受けて、政治広告の表示義務を果たしていないものについては、五時間以内に削除されない場合、超大規模プラットフォームに対して売上高の一%から五%の制裁金を科すというような内容の政令が出されておりますけれども、DSAでは、違法コンテンツを覚知した場合に、迅速に削除若しくはアクセス停止措置を取るということを求めているだけで、具体的な期限は設けておりませんので、その点では、DSAを超える規定がルーマニアでは行われているのかと承知をしております。
ただ、ルーマニアの事例については、先ほどお話をしたように、表現の自由への萎縮効果をめぐって物議も醸しておりますので、日本における偽情報、誤情報対策の議論とはかなり距離があるのではないかと考えております。
改めて申し上げますけれども、専門外のお尋ねですので、これはあくまで個人的な感想レベルになってしまいますことをお許しください。
○奥野委員 ありがとうございます。
かなり踏み込んだというか逸脱した部分もあるにしても、DSAが基にあって、そこから動いているという話だと思うんですが。
ドイツも連邦議会選挙がこの間行われていますが、ドイツにおいてこのDSAはどのように機能したのか、とりわけファクトチェックについてどういうふうに行われたのかということはお分かりになるでしょうか。平先生、鳥海先生も分かれば、お答えいただきたいと思います。
○平参考人 これも法律のお話になりますけれども、ドイツにおいては、DSAに先立って、ネットワーク執行法という法律ができ上がっております。これは、偽情報対策というよりも、ヘイトスピーチ、あるいは名誉毀損、扇動、こういったものへの対策が主眼とされた法律ですけれども、明らかに違法なコンテンツについて指摘を受けた場合に、指摘から二十四時間以内に削除する義務、あるいは、違反に対しては最大五千万ユーロの制裁金ということを定めております。この点でも、先ほどのDSAの迅速にという対応からは、かなり厳しい内容になっているかと思います。
こちらについても、やはり表現の自由への萎縮効果に関して物議を醸しているところではありますので、先ほどと同様、やはり日本における対策の議論とは距離があるのではないかと考えております。
○奥野委員 それをどう考えるかですが、それなりにロシアが身近にあるということで厳しい対応をそれぞれ取っているのかもしれませんし、日本が今そういう状況ではないということであれば、おのずと違うのかもしれませんし。研究していく余地はあると思うんですが。
その上で、DSAはほかに、先生がおっしゃっていた広告ライブラリーの問題や、選挙運動であることの表示の義務づけなども規定をしているはずですし、あと、アルゴリズムの透明性や説明責任をプラットフォームに求めているというようなこともあると思うんですが、こうしたDSAの在り方というのは、広告の透明性あるいはコンテンツ掲載の透明性の確保という意味で日本も行うべきだと思うんですが、いかがでしょうか。
○平参考人 先ほど鳥海先生のお話の中でも出てきましたけれども、フィルターバブルやエコーチェンバーという問題ですね。
特に、ネット広告のマイクロターゲティングは、収集された個人データに基づいて、個人の関心、趣味、嗜好に合わせて最適化されたものがピンポイントで配信をされます。これによって、ユーザーがフィルターバブルに陥ったり、あるいはエコーチェンバーが増幅されたりというようなリスクはあります。ましてや、そこに悪意のある偽情報がマイクロターゲティングされて特定の層に集中的に社会から見えない形で届けられると、国民の冷静な判断をゆがめ、社会を分断させてしまうというような可能性もございます。民主主義のプロセスそのものに影響を与えてしまう。
そのような考え方をベースに、DSAでは、アルゴリズムの透明化あるいは広告の透明性、こういったものを定めているかと思います。
広告ライブラリーは、ネット広告の透明性を向上させる上で一定程度有効な手段だと考えております。これによって、少なくとも、国民投票運動期間、あるいはそれ以前に配信された広告の内容、広告主、それから配信期間、費用の情報などがデータベースとして公開されて、市民、ジャーナリスト、研究者などが、どのようなメッセージが誰によってどのぐらいの規模で拡散されたのかを検証することが可能になるという点では、非常に日本にとっても参考になるのではないかと思います。
○奥野委員 最後に、両先生に伺いたいんです。
憲法改正国民投票もそうなんですが、選挙、投票行動全般について偽情報対策というのは必要であることは間違いないんですが、EUではDSAがワークし出して、これがかなり厳しい、日本にそのまま持ち込めるかどうかというのはあるんですが、そうした一般的な規範をちゃんと作った上で、それと整合的な国民投票法の制度の在り方、国民投票広報委員会も含めた制度の在り方を模索すべきだと思います。
それで、ちょっと漠然とした言い方になるんですが、DSAなどを参考にした、今の広告の透明性もあるんですが、投票について、偽情報対策としてどういった仕組みを日本の選挙制度に持ち込むべきだと思われますか。
○鳥海参考人 選挙等の期間というのが非常に短いということを考えますと、その短い期間での対策を打つというのは、例えば、透明性があったとしても、それを調査する期間もなかなか取れないというところもありますので、難しいところではあると考えております。
その上で、やはり、先ほどウクライナのプレバンキングというお話もございましたけれども、こういった広告がこれから出るかもしれないといったことを国民に知らせるとか、そういった形での対策の方が効果があるのではないかというふうには考えております。
○平参考人 国民投票に関して申し上げれば、国民投票法に規定のある、憲法改正案の分かりやすい説明と周知、これがやはり基本になるのではないかと思います。
先ほど情報の空白というお話をいたしましたけれども、例えば災害発生直後など、それについての情報が希薄な期間、ここに偽情報、誤情報、陰謀論、こういったものが広がる余地があると考えられております。逆に言いますと、正確で分かりやすい情報が十分に行き届いている情報環境の場合には偽情報は広がりにくいとも言えます。
そういった点で、まず、法に規定のある広報協議会の役割をしっかりと果たしていただくところが基本になるのではないかと思います。
○枝野会長 次に、和田有一朗さん。
○和田委員 両先生、本当にありがとうございます。大変勉強になりました。
私は、非常にこういうことには知識が薄いもので、できるだけ前もって先生方のお書きになっているものなどを取り寄せて読んだりもしたんですが、なかなか薄い質問になるかも分かりませんし、あるいは、もう既に今日、二人の委員からの質疑の中で明らかになったことも結構あって、かぶるかも分かりませんが、そして、専門分野に関して、先生方について、逆の方に逆のことを聞いているかも分かりませんが、お許しいただいて、お聞きしたいと思います。
まず一つは、鳥海参考人への質問でございます。ファクトチェックの限界についてお伺いしたいと思うんです。
私もそうですが、今、毎日メールをチェックしますと、恐ろしいぐらいフィッシングメールや迷惑メールがやってまいります。もう片っ端から、私、迷惑メールを、あれをつけて消すことにしているんですが、追っつかない。一回、一日どれぐらい来るのかと思ってほったらかしたときがありましたが、もう百や二百来ているんですね。これを全部チェックして見ていくわけですね、必要なものを消したら困りますから。
こういう状況の中で、まさに、フィッシングメールなどが増加している、こんなのと同じように、フェイクニュースも拡散していっている。
AIの発達によって、大規模化、低コスト化、巧妙化、迅速化している。対策としてファクトチェックが必要だ、こういう声が出てくる。こうした状況下で、私なんかは自分で目で見て消すわけですけれども、こんなように人の手でファクトチェックをしていたら、これはもう限界があるだろうと。
AIでファクトチェックをするということになってきているようですが、これも有効でしょうけれども、AIが作成したフェイクニュースをAIがチェックしているというのも、私、ぴんとこないというか、何かばつの悪さを感じてしまうところもあります。
そもそも、ファクトチェックはフェイクニュース対策としてどこまで有効なんだろうかと。誤った情報を信じている人に間違っていると否定するだけでは考えを変えてくれるものではないというのも、いろいろなところでお話もありました。
フェイクニュース対策としてファクトチェックはどの程度有効性があるのか、今後のファクトチェックの在り方はどのようなものになってくるのかということをまずお伺いします。
○鳥海参考人 ありがとうございます。
ファクトチェックの限界があるというのは、おっしゃるとおり、間違いないところではございますけれども、逆に言うと、ファクトチェックが存在しない場合というのも、やはり和田委員のおっしゃるとおり、自分で全てやらなければいけないということで、これは国民に対して非常に大きな負荷をかけることになるかと思います。
ですので、やはり、ファクトチェックというのは、まず、あって当然、なければならないものであるという認識を持っていただくことは必要かなと思います。
その上で、ファクトチェックにある様々な限界に対して、それを一つ一つどのように対処していくのかということを考えていく、そういう形になるのかなと考えております。
○和田委員 ありがとうございます。
ある意味、ファクトチェックは社会の公共インフラであるというような考え方に立って取り組んでいくべきだろうということだと理解しました。
それで、次に平参考人にお伺いしたいんですが、ネットでの情報発信が容易になって、選挙や国民投票の場面でも政策論が活発化するようになっていくことが期待されているわけです。そういう中で、ただ、言えることは、ネットの中で敵味方の対立をあおってしまうという負の側面もあるだろう、そういうふうに私は危惧する面もあります。
そういう中で、インターネットやSNSの現状を見ると、比較的公正中立で正確性の高い情報を提供する既存メディアの役割というのは、私は実は極めて重要だろうと認識し始めています。情報リテラシーを向上させるということも大事ですし、個々人がファクトチェックするための基盤として、そのベースになる基礎インフラとしての既存メディアの存在というものがあるのではないか。記者が地道に裏を取って、丁寧に現場でニュースを集めて配信するというこんな作業、機関、組織、これは社会にとって大切な基礎的なインフラだと私は思い始めています。
そういう意味で、既存の報道機関を更に公正中立なものにして健全に保護、育成する新たなフレームづくりが必要だと私は実は今思っています。今のままなら、いずれ既存の報道機関というのは成り立たなくなるのではないかというぐらい、現状を危惧しているんです。それは、新聞の折り込み広告の激減しているさまを見て、私は毎日実は感じています。
こういった考えを私は持っているんですけれども、また、国民投票では、国会に憲法改正案の広報を行う機関としての国民投票広報協議会が設置され、広報協議会の広報は、客観的、中立的、公正かつ平等なものであることが求められるわけですが、こうした既存メディアや広報協議会が適宜適切に、かつ効果的に情報を届けていくためには、どういう情報提供の在り方、効果的な手法があると思われるか、お伺いします。
○平参考人 ありがとうございます。
御指摘いただいたように、マスメディアによる報道が重要であるということは間違いないと思います。これは、国民投票に関するファクトチェック、あるいはその他の選挙に関するファクトチェックも含めて、現状でもマスメディアは取り組んでおりますけれども、それを更に強化をしていただくということも非常に重要なポイントであろうかと思います。それによって、読者、ユーザーの信頼、こういったものを更に高めていくということも重要だと思っております。
先ほどの総務省のICTリテラシー実態調査でも、偽情報、誤情報を拡散してしまったことがあるという方々がそれを誤りだと気づいたきっかけというのは、テレビ、新聞で誤りと報じられていたからが最多になっておりました。先ほどの説明でも触れましたように、海外ではマスメディアも積極的にファクトチェックに取り組んでおり、信頼も獲得しているところです。日本でも更に取組が強化されることを期待をしたいと思っております。
○和田委員 ありがとうございます。
最後に、そういったことも踏まえながら両先生に改めてお伺いしたいんですが、我々憲法審査会というのは、憲法を考えながら、そのためのいろいろな仕組みを考えているわけですが、広報協議会の役割とはどういったものがあると。意見交換会でいろいろと議論がなされたようですが、今日の参考人の両先生から見たときに、広報協議会の役割というものはどういうものがあり、必要性があるとお考えになるか、お伺いしたいと思います。
○鳥海参考人 ありがとうございます。
偽・誤情報という観点からのお話になりますけれども、やはり、確固たる正しい情報を発信する信頼の置ける機関というのは、どうしても偽・誤情報が氾濫する現在では必要となってくるかと思います。もちろんマスメディア等もそうですけれども、こういった公的機関ですね、広報協議会のようなところがきちんと情報を発信する、そしてそれが多くの方にきちんと届く。発信するだけではやはり意味はなくて、それが届くというところまできちんとお考えいただけると非常にいいのではないかというふうに考えております。
○平参考人 やはり、憲法改正案あるいは国民投票の仕組みについての分かりやすい、正確で十分な量の情報発信、これが重要になってくるだろうと思います。その発信先には、先ほど来お話の出ているマスメディアもそうですけれども、特に、大学で教えておりますと、学生たちはなかなかテレビも紙の新聞も目にしません、そういった意味では、ソーシャルメディアなどのネットへの発信も含めた十分な情報発信ということが重要になってくるかと思います。
○枝野会長 次に、浅野哲さん。
○浅野委員 国民民主党の浅野哲でございます。
本日は、お二人の参考人には、大変お忙しいところ、とても分かりやすい資料にまとめていただきまして、御説明もありがとうございました。
私からは、今、和田委員の方から広報協議会の役割についての御質問がありましたけれども、少しそれを深掘りする形で、質問をお二人に二問ずつさせていただきたいと思います。
まず、鳥海参考人への質問です。
鳥海先生の御説明では、誤った情報が正しい情報よりも早く広く広がってしまうこと、そして、その情報が間違っていたと気づいても、なかなか信じ直せないという心理的な側面があるということを具体的にお話をいただきました。
こうした中で、有権者が正確な情報に接し、自ら考えて判断できるようにするためには、いわば情報的健康を保つ、そのための予防策が必要だという指摘でありまして、私も大変共感をいたします。
国民投票に関する広報活動を行う広報協議会として、今お二人の参考人からありました、正確な情報を分かりやすく伝えるというのはもちろんそのとおりだと思いますが、冒頭、会長からも、これまでの幹事懇での意見交換の中で、新たな機能というものの報告がありましたけれども、例えば、情報的健康を保つための対策、様々な誤情報から、国民の情報に対する認識をしっかり正しく持っていただく、そのような観点から、どのような活動が期待されるのか、まず鳥海参考人のお考えを伺いたいと思います。
○鳥海参考人 まず、どこまでの権限を持てるのかというのが私はちょっと把握し切れていないところがありますので、ちょっと逸脱してしまうところもあるかもしれませんけれども、こういった重要な場面においては、情報空間において様々な偽・誤情報が拡散するであろうということが事前に予期できているということを考えますと、そういった状況になるということをまず国民が知っておく、プレバンキングというのは、一つ重要なことになるのではないかと考えておりますので、そういったことを国民に事前に知らせておくというのが一つあるのではないかと思います。
その際に、偽・誤情報がなぜ広まってしまうのか、単に広がりますから気をつけてくださいねと言うだけではなかなか対応策は取りづらいですから、なぜ広がるのか、あるいは、どういった場面でそういったものに接触してしまいがちなのか、あるいは、基本的な、現在の情報空間の、例えばアテンションエコノミーであるとかフィルターバブルであるとか、そういった用語、認知率は今二〇%ですけれども、そういったものをきちんと御理解いただくということによって、自ら気をつけて情報を見るようになっていただくというための情報発信を行うというのが、まず一点あるのではないかと思います。
また、もう一点、先ほど既存メディアの信頼性というお話がございましたけれども、やはり、広報協議会が信頼を得るということは非常に重要ではないかと考えております。
恐らく、広報協議会の方で何らかの情報を発信した際に、必ず、広報協議会が虚偽の情報を流しているというふうに言い出す方たちが発生すると考えられます。そういった場合に、どちらを信じるのかという信頼度の勝負になると考えられますけれども、その際に、必ず、広報協議会が出している情報が正しいと皆さんが感じてくれるような状況というのをきちんとつくり出しておく、そういったことが非常に重要になってくるのではないかと考えております。
○浅野委員 ありがとうございました。
プレバンキング、そして、その具体策としての、なぜ広がるのかというような部分についての基本的な情報の発信、また、それを信じてもらうためにも、広報協議会の信頼獲得の対策が大事だということで理解をいたしました。
二問目なんですけれども、その上で、予防的情報発信や信頼確保というものに加えて、やはり、偽情報や誤った情報が拡散しやすい土壌が今のネット社会全体には存在しているようにも感じておりまして、それをどうやって改善をしていくかという視点でも少し質問したいと思います。
拡散の連鎖を断ち切るためには、ある種の指針のようなものが必要ではないかという意見もこれまで出されてきました。社会全体で共有すべき指針あるいはルール、そういったものについて、鳥海先生のお考えがあればお話をいただきたいと思います。
○鳥海参考人 まず、一つ確認しておきたいのが、先ほど平先生もおっしゃったとおり、こういった問題に対しての特効薬というのがまず存在し得ないというところでございます。ですので、その意味では、なかなか、これさえやれば大丈夫というところは難しいというのがまず一点ございます。
さらに、それを助長している点として、現在の情報空間というのが日々変化しているという点がございます。例えば、AIの発展というのは、偽・誤情報を作成することに使われたり、ディープフェイクを作ることに使われたりと、それ自体もいろいろな悪影響を与えておりますが、逆に、AIを使うことによって偽・誤情報を早期に発見できるといったような変化も現在起きております。
その意味では、一定のルールというのを作るということになりますと、これから例えば五年、十年先というのを見据える必要が出てくるかと思いますが、そこがかなり難易度が高いのではないかというふうに考えております。
ですので、その意味では、指針としましては、やはり情報空間そのものが大きく変動していく、その中で、その都度きちんと対策が取れるような指針というのを制定していくということが必要なのではないかというふうに考えております。
○浅野委員 ありがとうございました。
続いて、平参考人にもお伺いしたいと思います。
まず、平先生の資料では、偽情報や誤情報、違法情報、有害情報、様々な情報の分類があり、段階的な対応が必要だというふうにお話をされていました。私も、全ての情報を一律に対応するというのは余り現実的ではなく、リスクの高さや拡散の影響度に応じて、できることから取り組むことが大事だと感じます。
そのために、広報協議会というのはどのような役割を果たせるのか。先ほど、ラウンドテーブルですとか、あるいは、事前に集まった事例を整理して啓発に生かすといったような、いわゆるプレバンキングについても言及をされておりましたけれども、広報協議会がどのような役割を果たせるのかについて、改めてお考えを聞かせていただきたいと思います。
○平参考人 先ほど来お話をしているように、まずは、国民投票法に規定のある、憲法改正案の分かりやすい説明と周知がスタート地点にはなるかと思います。ただし、今お話にもありましたように、偽情報、誤情報といったもののパターン、あるいは事前に分かるような内容といったものの啓発活動、こういったものも重要になってくるかと思いますけれども。
もう一つは、先ほどの鳥海先生の御研究の中でも指摘をされていましたけれども、このような偽情報、誤情報対策の情報発信というのは、社会の免疫力を高める一方で、ほかの、ワクチンなんかと一緒で、有効期限がある。数週間、あるいは長くて数か月たつと、そのような啓発自体も忘れられてしまうというか、効果が薄れてしまうという面がございます。
実際に、国民投票運動の期間はどれぐらいになるか、法の規定の範囲ということになるかと思いますけれども、その間でも、基本的な部分については繰り返して情報を発信をしていく、同じ内容であってもしっかりと届くように丁寧に繰り返して情報発信を行うということが、免疫力の効果の期限切れということへの対策にはなるのではないかと思っております。
○浅野委員 時間が参りましたので、終わります。
○枝野会長 次に、河西宏一さん。
○河西委員 公明党の河西宏一でございます。
本日は、両先生から、フェイクニュース対策またファクトチェックに対しまして大変示唆深いお考えの御開陳をいただきました。心から感謝を申し上げます。
特に、両先生それぞれ、例えば鳥海先生は、情報的健康、これだけ複雑な背景のある問題を、その本質をこれだけ一言で表現をした言葉もないんだろうということで、私も、様々この件について調査をしていたときにこの論文に出会いまして、大変感動した覚えを今も持っております。また、平先生からは、ファクトチェックを行うべき主体について、必要性と共有性の観点から大変明確に整理をして御意見をいただきました。立法府が持つべき大変重要な視点であろうかと思っております。
その上で、憲法改正の議論また国民投票に関して、なぜこれだけフェイクニュースが問題になっているか。それは、今の情報空間におきまして、情報的健康がいわば情報偏食によって大変害されているということであります。
まず初めに、これは鳥海先生にお伺いをいたしますが、これを生み出しているのがアルゴリズムであります。以前は、メディアは人間である編集者がトップニュースを決めていたのが、今は、AIというアルゴリズムが裏で動いていて、自分の好みに合ったコンテンツがトップラインに流れてくるということであります。そのことによって、エコーチェンバーあるいはフィルターバブルが生まれていくということであります。
確かに、これは、プラットフォーム事業者にとっては経済合理性上あるべき判断なのかもしれませんが、公共の福祉から考えてどうなのかなと。フェイクニュースがもたらす経済的損失、あるいは人や国同士の信頼関係に与える損失というのは大変大きなものがありますので、この点についてはよくよく検討していかなきゃいけないというふうに思っております。
その上で、まずはしっかり民において対応していくということでありますが、このアルゴリズムにつきまして、私は、より選択できるような環境の提供が民間からもたらされるべきではないかというふうに思っております。例えばエコーチェンバー抑制型のアルゴリズムとか、今一部開発あるいは検討されているやに伺っておりますけれども、こういった、今後の民間のプラットフォームが提供するアルゴリズムの在り方について、工学の専門家である鳥海先生からも御所見をいただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
○鳥海参考人 ありがとうございます。非常に重要かつ的確な御指摘をいただいたと考えております。
我々もまさに、現在の状況を解決する一つの策としまして、推薦システムの選択制というようなものがあるのではないか、我々はこれをミドルウェアというふうに呼んでおりますけれども、このミドルウェアという考え方を適用することによって、例えば、特定のSNSを使っている際も、出てくる情報を信頼性順に並べるであるとか速報性順に並べるであるとか、そういったことを自分で選ぶことができるというのが情報的健康を実現するためには非常に重要ではないかというふうに考えております。
○河西委員 ありがとうございました。
続きまして、ちょっと同様の文脈で平先生にもお伺いしたいと思います。
本日、六ページの資料にも、フェイクニュースがもたらす危害性、先生は口頭で深刻な危害性があるということで、私は全く同じ認識を持っております。
確かに、ファクトチェックまたフェイクニュース対策につきましては、基本的には民間でやっていくことが望ましい、公の関与というのは、やはり憲法二十一条の表現の自由あるいは検閲のおそれもありますので、抑制的に慎重にやるべきである、これはそのとおりかと思います。
その上で、この資料でも六ページの最後のところに情報流通プラットフォーム対処法の御紹介があります。我が国におきましては、権利侵害情報に関する対処は立法措置がなされたわけでありますが、それ以外の、例えば偽情報でありますとか、こういったことについては特段立法措置はなされていないということがあります。
この現状について適切であるのか、また、今後更に何か検討すべき余地があるのか、この点について御所見を賜りたいと思っております。
○平参考人 ありがとうございます。
私、先ほども申し上げましたけれども、法律の専門的知見を有しておりませんので、法のたてつけ自体については特段のコメントはしかねますけれども、この情報流通プラットフォーム対処法については四月に施行されたばかりですので、この法整備がどの程度の効果を持つものなのか、今後の、例えば選挙などにおいて偽情報、誤情報が広がった場合にこの法律がどれだけ有効に機能するのかということも見極めた上で、更なる手当てが必要なのかどうかという議論にもつながっていくのかとは考えております。
○河西委員 ありがとうございます。
先般の憲法審におきましても、他国の事例もいろいろ踏まえて検討いたしたわけでありますが、海外も結構、運用の方で様々検討がされているということでありましたので、我が国としてもしっかりとそこは検証していくべきなんだろうという認識を持たせていただきました。
続きまして、これは鳥海先生、平先生、両先生にお伺いをしたいというふうに思っております。
今日、鳥海先生からも、偽・誤情報の根絶は極めて困難である、また、情報訂正の時間的限界についても言及をいただきました。また、平先生からも、レジリエンスのある社会の構築ということで御所見をいただきまして、全くそのとおりであります。
やはり、フェイクニュースに関しましては、人的コスト、時間的コスト、また精神的コストに大変限界があるというふうに思っております。私も、またここにいる各議員の皆様も、政治家としてもこれは非常に実感をしていることかと思います。ですので、ゼロフェイクよりもウィズフェイクを前提として我々はこの情報空間での生活を考えていかなければならない、このように思っているわけであります。
その中で、私は、オンライン空間で様々対話をすることも大事なんですが、対面の、オフラインのリアルな空間の価値ももう一度見直されるべきではないかというふうに考えております。
先日、超党派で活動する若者団体の方からいろいろお話を伺う機会がありました。今、若者の皆様は、ユーチューブなどでエコーチェンバーまたフィルターバブルの影響を相当受けた状態で、当初は相当とんがった状態で活動をスタートされたそうなんですが、超党派でいろいろとその団体の中で会話、対話をしていくと、かなり中道にそれぞれ寄っていくんだというような率直な感想をいただきまして、非常に重要なお話だなというふうに思いました。
私は以前も、この憲法審で、国民投票においても、オフライン空間における多様な意見の持ち主との対話を交わす機会、例えばタウンミーティングでありますとかあるいは公開討論会、これはハイブリッドで様々にその場を提供していくと。こういったところにきちっと広報協議会も重きを置いて、正しい情報といいますか、バランスの取れた情報といいますか、そういったものを提供していくべきではないか、このように考えておるんですけれども、両先生の御所見をそれぞれいただきたいというふうに思っております。よろしくお願いいたします。
○鳥海参考人 ありがとうございます。
まず、ネット上の情報と対面との違いというのはやはりかなり大きくあるのではないかなとは考えております。
ネットで目立つ情報というのがどうしても非常に偏ってしまっているものが多いということも分かっておりまして、実は、中道の意見というのはほとんどネット上には展開されない、特にソーシャルメディアではほぼ展開されないということが分かっております。その意味で、そこを補完するという観点からの対面というのは非常に有用ではないかと考えております。
一方で、対面ですと、やはりコストであるとか、そういった観点からいろいろな制限がございますので、全ての人たちに対面で何らかの情報をお伝えするというのもやはり難しいということも考えられますので、対面のよさ、ネットのよさ、それぞれございますので、それのハイブリッドというのが目指す理想的なところではないかなと考えております。
○平参考人 先生がおっしゃること、私も全くそのとおりだと思います。
特に今、若い世代は、コミュニケーションにおいて、顔が見える、あるいは人間らしい声が聞こえるというところに非常に共感を覚えるという点がございます。ですので、広報協議会の広報の在り方としても、顔が見える広報ということも若い層にアピールする点では一つ重要なポイントかと思っております。
以上です。
○河西委員 終わります。ありがとうございます。
○枝野会長 次に、大石あきこさん。
○大石委員 れいわ新選組、大石あきこです。
先生方、よろしくお願いします。
鳥海先生と平先生にお伺いしたいんですけれども、デジタル情報空間におけるフェイクニュースというのは本当に日々あふれていますし、日本もそうですけれども世界中もそうで、この状況はどうしたらいいのかなと。でも、やはり世界中の人々が、政治不信だったり、あるいは権威、オーソライズされたものへの不信というのが高まっていて、それは一人一人の経済状況だったりとか、何か被害感情というところで情報を渇望して、新聞もテレビも信頼できない、あるいは読まないという中でネットに情報を渇望して求めていくのではないかなと思いますので、そういったところの対策というのが私は必要だと思っています。
また、こういったフェイクニュースとかのやり合いですね。AIでどんどんやっていきますよ。それに対抗するAIというのも必要だと思うんです。だけれども、結局は、これをやり続けても、大きくはお金がある人たちが勝つんじゃないのかなという、そこに政治的ゆがみ、世論形成にゆがみが生じてしまうのではないかと大変懸念しています。
それで、お伺いしたいんですけれども、二〇二一年の十一月二十七日に、鳥海先生が朝日新聞の論考でDappiについてお示ししてくださっているんですね。Dappiというのは、X、旧ツイッターのインフルエンサーだった方、そのアカウント名なんですけれども、鳥海先生がこのようにおっしゃっています。Dappiの投稿を他人と共有した約百七十八万件のリツイートを分析したところ、その約半分が、使われていた全アカウントの僅か約三%によって拡散されていました、一般的に、全アカウント数の一五から二〇%がリツイートの約半数を担っていることが多く、三%はかなり低い数字です、極めて少数の人数が積極的に与党を応援し、野党を批判するメッセージを拡散していたということを論考でお示しされていて、非常に重要な分析であったと思います。
私は、こういったことが世論形成のゆがみになっていて、Dappiだけではなくて、たくさんのDappiみたいなものというのがSNSなり、SNSだけでもないと思いますけれども、たくさんあふれて、現在もあふれているものと思います。それの再発防止を考えるに、お二人の、鳥海先生、平先生の専門から何か御示唆をいただけたらと思います。
○鳥海参考人 ありがとうございます。
少数の人たちが多数の情報を拡散するというのは多くの場面で見受けられまして、例えば、新型コロナワクチンの偽情報が広まった際も類似したような状態というのはございました。ですが、実は、これは必ずしも偽・誤情報にだけ起きるということではないということも一点お伝えしたいと思います。逆に、ワクチン関連の正しい情報の拡散も、同様に、少数の人たちが多く拡散することによって広がったということがございます。
ですので、こういった、少ない数の方たちが頑張るということが必ずしも悪いこととは言えないということがございますので、その意味で、この事象自体に対して何かしらの対応が必要であるかと言われると、そこはちょっと難しいのではないかと私自身は考えております。
一方で、偽・誤情報でもこれが起きているということですので、それに対しては対応は必要でありまして、その意味でいきますと、逆に、少人数でたくさん広めているということは、その少人数さえきちんと抑えてしまえば偽・誤情報の拡散を容易に抑えることができるという意味合いでもございますので、逆に有効に利用することが可能な事象であるというふうに言えるかなと思っております。
○平参考人 二つの点があるかと思います。
最初に御指摘をいただいた権威への不信という部分、これは、偽・誤情報の広がり、それから陰謀論の広がりの根本的な背景とされています。そういったものを信じてしまうということの背景に、その真偽の見極めという能力以前に、従来の体制、メディア、政府、そういったものが信じられないという不信感が根本にあるということは、グローバルな様々な調査の中でも指摘をされているところではあります。
その点でいうと、私はメディア出身の人間ですので、先ほどお話があったように、メディアなども、権威の側として見られるのではなくて、しっかりと読者、社会とつながっていって信頼を確立するということ、その根本のところがネット以前の取組として重要ではないかとは思っております。
もう一点、いわばネット世論が機械などで粉飾をされるという部分ですね。いわゆるボットと呼ばれるものです。自動的に意見を、例えば最近であればAIなどを使って、実際は人間ではないアカウントが「いいね」を押したり、コメントを書き込んだり、拡散をさせたりというようなこと、こういったことについては、技術的な対応、開発、研究は必要になってくるだろうと考えております。
以上です。
○大石委員 引き続き、鳥海先生と平先生にお伺いします。
受け手側が非常に権威不信だったり、国が信じられないという要素が私は大きいと思っているんですね。そういったときに偽・誤情報だと言われちゃったら、鳥海先生のプレゼンの中にもありましたが、ますますかたくなに信じてしまうというのがありますよね。
ちょっと事例で考えたいと思うんですけれども、鳥海先生のプレゼンの中でも、新型コロナのワクチンに関する偽・誤情報というのをプレゼンされていましたけれども、反対派というふうに一くくりになった場合に、反対して何が悪いんだというふうに、反対派の方も意見がいろいろだと思うんですね。
私自身も、ワクチンの後遺症に関して、やはり政府が不信に思われても仕方がない、情報を非常に偏った形で流していたり、何らかの強制力があったりというのが働いていたと考えています。つまり、何が言いたいかというと、ワクチンを打ちたくないという国民感情というのはまず理解されるべきものであって、特に権威の側がそれをちゃんと、なぜその人たちは打ちたくないんだろうというところを反省したり、振り返ったり、受け止めたりするという関係性がなければ信頼醸成はないと思うんですね。
ワクチンでいいますと、なぜそんなに信じられないかというと、例えば厚労省のホームページとかでも、ワクチンの副反応で亡くなった方の死亡例は二件ですと、ずっとホームページで表示されていたんですね。でも、それは雑過ぎるというか、少なく見せているだろうというのは私も国会の質疑でやらせていただきました。実際には、副反応疑い報告というふうにお医者さんが報告する中での死亡例は二千百九十二件あったんです、その当時は。だけれども、多くの九九%は因果関係が分からない、亡くなっているけれども分からない。死亡の因果関係が否定できないが二件だったんですね。
だから、その分からないの中で、もっと突き詰めれば、副反応によって亡くなった人は増えるのではないか。実際にその時点でも亡くなったという被害救済の認定件数は五百件を超えていましたので、やはり国民感情からしても、それでもホームページで二件しか死亡例はありません、安全ですと言い続けるということに不信が高まるというのは、私は非常に納得がいくものなんです。なので、そういった、政府側の今やっていることということにも、より誠実な姿勢を何度も何度も見せ続けるということなしに信頼醸成はないのかなというふうに思うんです。
広報協議会においても、これは平先生のプレゼンが分かりやすかったなと思っているんですけれども、EUで着目されているものですかね、党派性とか、独立性の、排除というところが非常に大事なんだよというふうにまとめていただいていたので、そういった国際標準で、人々が、信用できない、だからほかの情報を求めるということに着目した制度設計なりアプローチが大事なんだろうというふうに考えました。
時間が来ましたので、終わります。ありがとうございました。
○枝野会長 次に、赤嶺政賢さん。
○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
両参考人には、大変貴重な御意見をいただき、ありがとうございました。
まず、鳥海参考人に伺います。
情報的健康に関する共同提言では、インターネットの普及により言論空間がビッグバンのように膨張した中で、情報操作や世論誘導のリスクが増大していると指摘されております。その上で、憲法二十一条の知る権利や憲法二十五条の生存権に立脚して、人格的発展と民主主義社会の維持のために様々な意見に接し、これを摂取する機会を持つことは憲法上の権利だと述べておられます。
私はこれを読みまして、こうした憲法に基づく言論空間の捉え方は極めて重要だと改めて感じました。参考人はなぜこうした捉え方をするようになったのか、その核心は何なのか、詳しくお話ししていただけたらと思います。
○鳥海参考人 ありがとうございます。特に、深いところまでお読みいただきまして、感謝いたします。
ただ、こちらは共同提言ということでして、私と憲法学者の山本龍彦先生との共同での執筆となっておりまして、憲法に関する箇所につきましては山本先生の方で主にそちらの方を議論していただいているところでございますので、私は憲法については素人も同然ですので、山本先生からいろいろ教えていただきながら共同提言の方を書いたという次第でございます。
ただ、憲法に立脚することによって、より国としてはこういった宣言というのがきちんと動くのではないかというふうには考えておりますが、それ以上のことにつきましてはちょっとお答えできないというところで、申し訳ございません。
○赤嶺委員 ありがとうございました。
私たちも、今、現行憲法を擁護していくべき、守るべきという立場からも、この問題を深めていきたいなと思います。
次に、両参考人にお伺いをいたします。
国民一人一人が様々な情報や意見に接する機会を保障するためには、政治が果たす役割も重要ではないかと思います。
デジタル空間やネット空間の情報の在り方について議論をするときに、よくEUの取組が参考として挙げられます。例えば、EUでは、忘れられる権利や、プロファイリングに異議を唱える権利、自動処理のみで重要な決定を下されない権利などを個人の基本的人権として位置づけて、これを保障するためにプラットフォーマーにも責任を果たすよう求めています。例えば、プロファイリングを含む自動的な決定に関して、アルゴリズムの存在や決定の論拠や基準、それによって引き起こされるリスクの説明や透明化、プロファイリングなどに基づかない選択肢の提示などを課していると聞いております。
参考人両先生は、日本とEUではこの問題に対する取組の到達点についてどのような違いがあるのか、また、EUと比べたとき、日本が個人情報の保護を強化し大規模プラットフォーマーに責任を果たさせる上でどのような課題があるとお考えでしょうか。
あわせて、共同提言では、政府が行うべき取組として、プラットフォーム事業の透明性や説明責任が担保されるための立法化にも言及しておられますが、具体的にどのような内容の法律が必要だと考えておられるのか、意見をお聞かせください。
○鳥海参考人 ありがとうございます。
まず、EUとの関係性で考えますと、日本の立場というのが当然EUとは異なるということですので、ここは私の専門ではないため余り大したことは言えないですけれども、EUと日本との違いを考えつつ、ただ、一方ではやはり、個人がいろいろな権利をプラットフォーマーに握られている状況というのは世界どこでも同一ですので、それに対して一定の対応策を取るということはこれから必要になってくるのではないかとは考えております。
政府が行うべき対策としましては、やはり、透明性等の確保に関しては、プラットフォーマーに対する規制をかける、規制までいくかどうかは分かりませんけれども、何らかの制限をかけるであるとか指示を行うということは必要だと考えております。
先ほどのお話の中にもございましたけれども、私としては、やはりプラットフォーマーがデータ等をきちんと出すということが重要ではないか、現状どうなっているのかということを我々がきちんと理解できるような状態をつくることは必要ではないかと考えておりますので、そういった状況をつくれるような形で政府の方で動いていただくとよいのではないかと考えております。
○平参考人 御指摘の内容は、EUのいわゆるGDPR、一般データ保護規則のお話かと思いますけれども、忘れられる権利、それからプロファイリングの問題。
この点については、日本においても、個人情報保護委員会を中心に、個人情報保護法の見直しの中で議論はされてきているかと思いますけれども、何分、私も専門外の部分ですので、私の持っている乏しい知見から申し上げると、そのようなデジタルプラットフォーム事業者に膨大ないわば個人情報を握られて、その処理の実態、どのように使われているかということが一般ユーザーははっきりとは把握できていないという現状に対して、しっかりとアルゴリズムあるいはデータの取扱いについての透明性を担保するというような対処が必要になるのではないかという、極めて一般論の部分でしかお答えできませんことをお許しください。
○赤嶺委員 時間も迫っていると思うんですが、平参考人にあと一問お伺いします。
今日の意見の中で、プラットフォーム事業者がファクトチェックの取組を後退させていることや、アメリカのトランプ政権の姿勢についても言及して、平参考人の別のところでもそういう言及があったことを承知しています。
参考人が言われるように、今アメリカでは、トランプ大統領が自身の発言に対するファクトチェックやテレビメディアの検証報道などを敵視する下で、大手プラットフォーム事業者も偽情報への取組を後退させています。トランプ大統領は、移民はペットを食べると発言するなど、事実に基づかない言動がアメリカ国内でも問題視されております。
大きな影響力を持つアメリカの大統領自身が情報の検証やファクトチェックを検閲やフェイクだと攻撃し、大規模なSNS事業者もこれに迎合している現状、これをどのように見ておられるのか、またこれに対抗するためには何が必要だとお考えなのか、改めて御意見をお聞かせください。
○枝野会長 平参考人、時間の関係で短く、申し訳ありません、お答えいただければと思います。
○平参考人 はい。
私が関わっている日本ファクトチェックセンター、それから私のバックグラウンドである新聞記者の立場から申し上げると、対抗できるのは事実のみかと思います。事実に基づいて情報発信をする、情報を吟味するということに尽きるのではないかと思います。
以上です。
○枝野会長 次に、北神圭朗さん。
○北神委員 有志の会の北神圭朗です。
両参考人の先生方には、本当に勉強になるような御説明をいただきまして、心から御礼を申し上げたいというふうに思います。
私、広報協議会に関心がありますので、平先生にちょっと質問が集中すると思いますけれども、よろしくお願いしたいと思います。
まず、先生、広報協議会について、ファクトチェックは駄目だ、ただ、正確で分かりやすい事実をできるだけ国民に届くようにすることは大事だという話なんですが、具体的に、例えば、こういう情報がSNSで流れているけれども事実はこうですよというような広報を出すということはいわゆる表現の自由との抵触は問題ないのかということをお聞きしたいと思います。
○平参考人 内容次第だろうと思います。説明の中でも厚生労働省あるいは外務省の事例を取り上げましたけれども、訂正情報を出す、あるいは補足的な情報を出す場合でも、例えば広報協議会の場合であれば、国民投票の在り方そのものに関する事実に反する情報、あるいは、広報協議会をかたる偽広報協議会サイトなるものが登場をする、ソーシャルメディアのアカウントが登場をするといった場合、これに対して否定の情報が出せる当事者というのは広報協議会なわけですね。ということでいいますと、そのような、広報協議会自体が逆に言うと説明責任を問われるというか、否定の主体になるような事案であれば、それまでを否定するものではないと思います。
というのも、ファクトチェック団体あるいはマスメディアがそのような情報を覚知して検証を行う場合、取材先というのは広報協議会になるわけで、これは本物ですか、このような情報は出していますかと取材の電話をかけるのは広報協議会事務局になるかと思いますので、広報協議会がその案件について自身で情報発信をされるということは、私の整理の中では、広報の活動の一環として整理できるのではないかと考えております。
○北神委員 もう一点、今の質問で特にお聞きしたかったのは、表現の自由との関係でいうと、萎縮効果をもたらすと。
ですから、おっしゃるように、広報協議会に関する情報を流すときに、例えばですよ、郵便投票は不正が行われているとか、これはやはり広報協議会がちゃんと説明すべきだと私は思うんですが、それについて、これをただ一般事実として言うのか、それか、こういう情報が流布されているけれども事実はこうですよという言い方はいわゆる萎縮効果には結びつかないのかどうかというのをお聞きしたいと思います。
○平参考人 そのようないわば補足情報を発信をされるということを想定されるのであれば、どのような情報について補足、参考情報を発信をするかというようなガイドラインなりあらかじめの方針を示された上で、その範囲内で、国民投票法に関わる事務、あるいは、国民投票法の中の広報協議会の業務が規定された条文の中で読める内容については、情報発信を、事実に基づいた補足情報の発信を行うというようなことが明確になっていれば、国民としても、不安を抱かないでその情報を受け止めることができるのではないかと考えます。
○北神委員 ありがとうございます。
先生の資料の十四ページ、十五ページに、外国からの偽・誤情報、これに対しては割と、ほかのところの論調と違って、政府と連携すべきだし、国家安全保障戦略に基づいて対処すべきだと。
そのとおりだと私は思うんですが、これはやはり外国勢力に対しては別基準で考えるべきなのか、つまり、表現の自由でいうと、国民の表現の自由の侵害にはならぬということで違う基準でお考えになっているのか、お聞きしたいと思います。
○平参考人 外国による情報操作と干渉、いわゆるFIMIの問題点については、例えばファクトチェックの論点で考えていくと、事実に基づいて、流通している情報の正確性までは検証できますけれども、これが情報戦の一環であるというような位置づけを行うためには、その拡散経路であるとか、それに関わった特定のアカウント、こういったものの蓄積あるいはその分析のノウハウ、こういったものも必要になってきます。
そして、ファクトチェック団体あるいはメディアが検証を行えるのは、やはり流通している情報の真偽までであって、その裏側にある拡散の仕組み、経路、関与しているアクター、こういったことについては、こういった安全保障の分野での専門知識なしには特定はできないのではないかと考えております。
という意味で、ましてや広報協議会が立ち上がった後、そのようなスキルまでを、あるいは情報までを獲得するというのはなかなか難しいことであろうと思いますので、その点では、その分野を担当をしている安全保障の関係機関との連携なしには、このようなFIMIの動きがあった場合に、動きの検知あるいは対処ということは難しいのではないかという趣旨でございます。
○北神委員 次に、これは外国の話は除いて、我が国は、私の印象では、非常に表現の自由というものを、優等生というか、重視される方が多い。
それで、今日の資料にも出てきた六ページのデジタルサービス法、これも自主規制とみんな言うけれども、かなり厳格な罰則がついている。だから、まあ自主規制といえば自主規制ですけれども、そのガイドラインに従わないと世界の総売上げの六%ぐらいの罰金が来ると。かなりの金額です。
例えば、先生の八ページに、ラベルづけとかそういうのは駄目だという話なんですけれども、カリフォルニア州は、昨年の九月に法律で、コンテンツの削除、それからラベルづけというものに対して、規制をするというような法律を出しています。メディアリテラシーの世界一と言われるフィンランドでさえ、国が人工知能を使ってボットとかアカウントというものを特定して国民にこれを公開する、こんなやつら怪しいぞ、こんなやつらの情報は信用したら駄目だぞというようなことをしている。
これは全部三つとも国家が関与しているということで、要するに、我が国はやはり表現の自由についての優等生なのか、それともこういう偽情報に対する危機感が薄いのか、これは両方の先生にお聞きしたいというふうに思います。
○鳥海参考人 ありがとうございます。
日本において表現の自由が非常に優遇されているというのはそのとおりではあるかなと思いますけれども、今後、それに対して一定の、規制ではないですけれども、偽・誤情報に対してまで表現の自由を認めるのかというところはまた異なる問題かとは考えておりますので、これからこういったところは、先ほども申し上げましたけれども、情報空間というのは常に変化し続けるものでありますので、これまでこうだったからといってそれが継続するものでもないと考えておりますので、これから新たなことを考えていく必要はあるのではないかと考えております。
○平参考人 日本が現在置かれている状況、それから脅威の実態、これとのバランスをどう考えるかということ。そして、現在の日本の社会として、例えばEUのような、あるいは先ほどお話をしたルーマニア、ドイツ、そしてお話のあったフィンランド、こういったそれぞれの事情の違う国々と比べて日本の社会としてどこまでそのような規制のバランスというものを考えていくのか次第かとは思います。私はメディア出身の人間ですので、個人的には、表現の自由は最大限に担保をしていく社会であってほしいと考えております。
○北神委員 終わります。ありがとうございます。
○枝野会長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
この際、一言御挨拶を申し上げます。
参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、また、それぞれの御専門を超えた御質問、お答えにくい質問もあったかと思いますが、真摯に、また分かりやすくお話をいただきました。誠にありがとうございました。憲法審査会を代表して、心から御礼を申し上げます。(拍手)
次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時十二分散会