衆議院

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第10号 令和7年5月22日(木曜日)

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令和七年五月二十二日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 金子 恭之君

   理事 古賀  篤君 理事 土屋 品子君

   理事 平沼正二郎君 理事 小熊 慎司君

   理事 近藤 和也君 理事 森山 浩行君

   理事 林  佑美君 理事 田中  健君

      尾崎 正直君    鬼木  誠君

      梶山 弘志君    工藤 彰三君

      小池 正昭君    小寺 裕雄君

      後藤 茂之君    小森 卓郎君

      島田 智明君    田畑 裕明君

      西田 昭二君    根本 幸典君

      松本 洋平君    簗  和生君

      阿久津幸彦君    梅谷  守君

      岡島 一正君    金子 恵美君

      小宮山泰子君    齋藤 裕喜君

      竹内 千春君    馬場 雄基君

      福田 昭夫君    柳沢  剛君

      市村浩一郎君    杉本 和巳君

      菊池大二郎君    鳩山紀一郎君

      中川 宏昌君    西園 勝秀君

      櫛渕 万里君    堀川あきこ君

      北神 圭朗君

    …………………………………

   参考人

   (名古屋大学名誉教授)  福和 伸夫君

   参考人

   (関西大学社会安全学部教授)           山崎 栄一君

   参考人

   (常葉大学名誉教授)   重川希志依君

   参考人

   (東京大学生産技術研究所教授)

   (東京大学社会科学研究所特任教授)        加藤 孝明君

   衆議院調査局第三特別調査室長           南  圭次君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十二日

 辞任         補欠選任

  尾崎 正直君     島田 智明君

  小森 卓郎君     小池 正昭君

同日

 辞任         補欠選任

  小池 正昭君     小森 卓郎君

  島田 智明君     尾崎 正直君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 東日本大震災からの復興・防災・災害に関する総合的な対策に関する件


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     ――――◇―――――

金子委員長 これより会議を開きます。

 東日本大震災からの復興・防災・災害に関する総合的な対策に関する件について調査を進めます。

 本日は、本件調査のため、参考人として、名古屋大学名誉教授福和伸夫君、関西大学社会安全学部教授山崎栄一君、常葉大学名誉教授重川希志依君、東京大学生産技術研究所教授、東京大学社会科学研究所特任教授加藤孝明君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からそれぞれ十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 それでは、まず福和参考人にお願いいたします。

福和参考人 おはようございます。福和でございます。

 こういった貴重な機会をつくっていただきましたこと、まずは感謝申し上げます。

 私、専門は建築の耐震工学とか地震工学でございます。ちょうど今ここにもいらっしゃる加藤委員と一緒に、南海トラフ地震の対策とか、あるいは防災庁の設置の検討会に加わっておりますので、それに関連したお話を、建築という立場からさせていただきたいと思います。

 まずは、一枚目の下側、二ページ目のところに書いてございますが、これは三月末に公表いたしました南海トラフ地震での被害の推定結果でございます。左側が十二年前に出した結果、右側が今回の結果でございます。

 赤字で書いてあるところが少し大事なところでありますが、残念ながら、死者は八%程度、全壊焼失家屋はほぼ変わらないという結果になりました。十年前に減災目標として出しておりましたのは、死者は八割減、そして建物全壊は半減でありましたが、全くこれが進んでいない。十年間の成果がほとんどなかったということが明らかになりました。

 こういったことを続けていますと、これだけの被害を出せば、当たり前ですが、国家として存続できない結果になります。ですから、何としてもこの被害を減らさざるを得ないという立場でお話をさせていただきます。

 ページをめくっていただきまして、上側、南海トラフ地震のこれまでの活動履歴と、右側に、その前後に起きた歴史的転換期を書いてみました。

 南海トラフ地震は、我が国の西日本全体を襲います。国民の半分が被災をしますので、当然大きな影響を持ちます。前後には直下地震も頻発しますから、基本的に歴史の転換期と重なります。

 下側、四ページのところを見ていただきますと、例として、安政の東海地震と南海地震の前後の地震の発生の仕方と歴史の転換が上側に、昭和の東南海地震と南海地震の前後の歴史の転換の様子を下側に書いてみました。

 左側の上側を見ていただきますと、十二月二十三日と二十四日、一八五四年に東海地震と南海地震が起き、翌年は余震だらけで、その余震が続く中、江戸直下地震を始めとする誘発地震が起きています。こういった後に、コレラの大流行とか、あるいは江戸を大暴風雨が襲ったりしていて、そのときに江戸幕府はすごく大きく痛手を受け、その後、歴史の転換期として、大政奉還へとつながってまいります。

 下側を見ていただきますと、関東大震災が起きた後、ほぼ毎年のように地震がやってきて、そして、戦争を始め、戦争のさなかに東南海地震が起きて、名古屋に集中していた軍需工場が大きく痛手を受け、飛行機が造れなくなり、一か月後に三河地震が起き、戦争に敗れていくという歴史を我々は経験しております。

 ですが、残念ながら、こういった歴史教育は今ほとんど行われていません。歴史教育の中に残念ながら災害史の教育が行われていないので、こういった事柄を我が事と思っている国民はほとんどいない。ですから、結果として、南海トラフ地震の怖さを甘く見ている国民が多い可能性があります。

 ページをめくっていただきまして、五ページのところに、左上が能登の地震のときの震度分布です。右下側が、南海トラフ巨大地震での震度分布。

 そこに主たる被害の違いを書いてございますが、能登は、現時点、死者二百二十八、行方不明二、そして関連死、おおむね今、三百五十ぐらいであると思います。それと、右下にある数字と比べていただければ、いかにこの地震の問題が大きいかが分かります。おおむね全てが三百倍です。地震の放出エネルギーは百二十五倍ぐらいになりますから、当然、相当な痛手となります。

 先ほど申し上げましたように、南海トラフ地震の前後には、直下の地震も起きます。

 下側の六ページのところ、左側が、能登で今回被災をしたおおむねのエリア。このエリアにお住まいの方は、おおむね十二万人強です。これと比べて、全く同じ大きさなのが、私が住んでおります愛知県の西三河になります。西三河には百六十万人ぐらい住んでおりまして、製造品出荷額は百倍を超える二十五兆円であります。製造業が集中していることもあって、万が一同じようなことが別の地域で起きたらどういうことになるかが想像されますが、実はこの場所では、一回前の南海トラフの地震の一か月後に三河地震が起きています。

 さらに、その右側、東京の様子が書いてありますけれども、東京は、おおむね能登の三分の一の面積のところに一千万人が住んでいて、高層ビルが林立している状況になります。この東京は、二回前の安政東海地震、南海地震の一年後に江戸直下地震が襲っているということになりますので、我々としては、南海トラフ巨大地震のみではなく、前後に起きる直下の地震並びに風水害、健康状態が悪化すれば感染症、こういったものに向かっていく必要があるということになります。

 ページを繰っていただきまして、次のところは、能登の地震で観測された長周期地震動階級の絵を載せてみました。黄色が長周期地震動階級が大きいところですが、関東地域が広く黄色になっています。能登という相当離れたところの地震で関東平野一円が強く長周期で揺れましたが、元日であったことで、ほとんどの超高層ビルには人がいなかった。タワマンの人たちだけがこの揺れを経験しました。

 長周期の揺れというのは、地震規模が大きければ大きいほどたくさん出ますし、長周期の揺れは遠くまで遠くまで伝わります。そして、我々が住んでいる大規模堆積平野というのは、長周期の揺れを大きく増幅させます。そこに長周期の揺れがとても苦手な高層ビルや大型石油タンクがたくさんあります。この問題は、そろそろ真剣に考えないといけない問題であると思います。

 これが顕在化しましたのは、十四年前の東日本大震災のときの、大阪にあった高さ二百五十六メートルのビル。震源から七百七十キロも離れていたのに、大きく、三メートル弱、往復で揺れました。同様に、今年、ミャンマーで地震が起きたときに、千キロも離れた場所、タイで高層ビルが倒壊をしたり、大きく左右に揺れました。こういったことを我々は見ているわけですから、そろそろこの問題にも本気で取り組む必要があるというふうに思っております。

 結果として、結局は、南海トラフ地震というのは、これだけの被害を出したら、残念ながら日本の持っているリソースでは全く対処できないので、何としても被害を減らすということしか答えはありません。すなわち、事前防災であります。

 徹底的に被害を減らすということは、三つの要因が必要であります。一つ目は、バルネラビリティー、脆弱性を何とか直す。二つ目は、ハザードの大きなところは避ける。三つ目は、エクスポージャー、たくさんの人たちが同時に被災をしない。この三つを成し遂げない限り、被害は減らせられません。

 まず一つ目は、耐震化と強靱化であります。国を挙げて強靱化施策は先導していただけましたが、一方で、民間の建物の耐震化は本当に進んでいません。

 二つ目は、土地利用であります。残念ながら、戦後、とても地盤の軟らかいところに町を広げました。これは、堤防がきちんと造られたおかげで危険なところに住むことができるようになったことによります。

 三つ目は、相変わらず大都市への一極集中が止まりません。特に東京の一極集中が進めば進むほど、ハザードの高いところに揺れやすい背の高い建物を造るということで同時被災者が増えるということになります。

 ページをめくっていただきまして、耐震化の現状でありますが、今、一応国としては耐震化率九〇%程度ということになっていますけれども、私自身はちょっと微妙に、あるんじゃないかと感じています。

 まず一つは、西日本の耐震化率は圧倒的に低いです。この耐震化率は戸数ベースであって、棟数ベースではありません。ですから、大規模マンションが建っている場所は圧倒的に耐震化率が高くなります。

 それから、もう一つは、隠れ耐震というものが含まれています。古い建物のうち、戸建て住宅は四割、集合住宅は七割が耐震性があるという仮定の下で出されていますが、恐らく、古い建物でそんなにたくさん耐震性があるものはなさそうに感じます。現に、沿道建築物の耐震診断結果は、公表されていますが、東京以外の沿道建築のビルの耐震性はおおむね二、三割しか確保されていません、古い建物に関しては。

 ということは、こういったものは、ひょっとしたら、特に西日本のように人が余り住んでいないところでは、九〇%という数字とは全く違う数字が予想されるわけです。でも、残念ながら、今のところは、都道府県別あるいは市町村別の耐震化率というのはなかなか公表されていない実情があります。

 耐震化については、是非これを進めない限り、被害は減りません。これは地震対策の一丁目一番地であります。先ほども申し上げましたけれども、最も重要な緊急輸送道路沿いの沿道建築の耐震化が本当に進んでいません。

 耐震基準というものはあくまでも最低基準です。耐震基準を満足していれば命はある程度救いますけれども、使用継続ということは保証はしていません。一度の地震に対して命を守ればよいという最低基準になっています。これは憲法の考え方にのっとっていると思います。財産権を侵してはならないので、必要以上に制約をかけられないということであります。

 それから、輪島で顕在化したことでありますが、残念ながら軟弱地盤に建っている建物ですが、くいで支えられています。くいは重さを支えるものであります。くいは大地震動に対しての耐震設計は義務化されておりません。ですから、強い揺れを受けたとすると、くいは損傷することは、現状の耐震設計では許容されています。ということは、建物を支えることが難しくなって、多少沈んだり傾いたりするおそれがある。ですから、輪島の建物の多くは、くいが損傷していたように感じられます。

 こういった課題は、残念ながら、これは相手が民間ですからなかなか申し上げにくくて、なかなか前に進みにくい。公共のものは相当に国が頑張ってくださいましたが、国民が努力することとか産業界が努力するところは、残念ながらそんなに進んでいないということであります。

 次が、下側ですが、万が一、一軒全壊したらどのぐらいの金が出るかです。全壊させないようにするための耐震補強には百万から二百万しかかかりませんが、ここにある数字全体を見ていただくと数千万円になります。

 今までの災害は、小規模災害でしたから局所的なので、事前に全部を直すのには金がかかるから、起きた後で対処すればいいという考え方だったと思いますが、南海トラフ地震は国の半分がやられるわけですから、後で莫大な金を出すことは到底無理ですし、そもそも建設業はそんなに力がありませんから、これは、もしも全部直そうとすると数十年の仕事になると思います。ですから、そろそろ本気で事前対策が必要であるということになります。

 ページをめくっていただきまして、上側。

 産業界は今のようなものに立脚してできていますから、実はボトルネックだらけであります。例えば自動車を造って輸出するためには、ここにあります青色のようなボトルネックが全て解決されないと、残念ながら、車を造って売るということはできなくなります。

 これを探そうとすると、この国の急所を探すしかありません。急所を探すというのはなかなか大変で、みんなが自分の具合の悪いことを白状し合いっこしないといけないわけです。そういうことができるような社会をつくっていく必要があります。

 島国の日本の急所は港であります。ですが、港というのは、残念ながら、関係者の連携がそんなにできていません。港には日本で最も重要なものが全てありますし、危険物もあります。例えば港を本気になって安全にしていく、そういうような動きが必要になってくるということであります。そのためには、見たくないものを見る力とか、互いに具合の悪いことがしゃべり合える信頼関係とか、この国をみんなで何とかしていきたいという思いとかを共有する必要があるということであります。

 そういったことに基づいて、今、南海トラフ地震対策というのは進められておりまして、それが十三ページに書いてあります。

 とにかく国難回避のために被害を減らす、社会機能も維持する、国民と産業界を本気にさせる、その上で民間の力をかりて災害対応をする、産業の早期回復のために、全力で、みんなで本気になって具合の悪いことを共有する、社会の急所を見つけてすぐに改善する、弱みを強みにする防災ビジネスを育成して被害を減らす、産官学民が本気になって、一緒になって頑張れる地域のプラットフォームをつくって地域の力を結集する、そういう総力の結集が必要でありまして、その上で、南海トラフ地震に対しては、今までの戦略では無理なので、全く新しい戦略をこれから構築して、実践を先導していくような司令塔が必要である、そういう思いで今議論されているのが防災庁であるというふうに思っています。

 防災庁、今は、残念ながら、議論の真っ最中。この国は、毎回、地震が起きるたびにいろいろな法律を作り、いろいろな仕事をつくってきていて、残念ながら、物すごくいろいろなところに散らばっています。そろそろあらゆることを一旦整理をしないといけないということで、例えば整理の一例を最後のページ、十四ページに作らせていただきました。

 比較的規模の小さい災害に関しては緑色をやればいいですし、更に大きな規模の地震に関しては被害そのものを減らす黄色。ですが、南海トラフ地震のようなものについては緑や黄色ではまだ無理で、本気になって、どうやってこの国を将来につなげるかということで、残念ながら全てはできないので、何が重要で、そして何を優先すべきかというようなことを議論するようなことができればと思います。

 最後に、ちょっと言いにくいことを申し上げますが、こういったことは自ら動くことが初め、大事なんですが、申し訳ないのですが、この建物の事務室を点検させていただきました。家具の固定ができておりませんでした。ですから、ここは最も重要な場であります、まずは足下の建物の中の家具固定から始めていただけると幸いであります。

 ありがとうございました。(拍手)

金子委員長 ありがとうございました。

 次に、山崎参考人にお願いいたします。

山崎参考人 皆さん、おはようございます。

 本日は、参考人招致にお招きいただき、ありがとうございます。このような場におきまして発言のきっかけをつくってくださいましたことにつきまして、心より感謝申し上げる次第でございます。

 私は、阪神・淡路大震災以降、被災者支援の法制度の在り方について調査研究をしてまいりました。今回、私に与えられた十五分間でお話ししたい項目といたしましては、一つは災害救助の実施に関する課題、二つ目は被災者総合支援法案の提案の二点でございます。

 まず、災害救助の実施に関する課題ということで、能登半島地震の現地調査を踏まえながら言及をしておきたいと思います。

 第一に、災害救助を実施するに当たって、柔軟な運用ができるように、特別基準という仕組みが設けられております。ただし、実際に災害救助に当たっている市町村なんかは、どういうふうに特別基準を設定していったらいいのかなというノウハウがありません。

 そうすると、都道府県が寄り添うような形で市町村にアドバイスをするとか、国としては、特別基準ができるかできないかについて迅速に回答するといった形で、市町村に対して支援をしていくことが求められるわけです。そういった支援を今後はしていただきたいと思います。

 これから更にできることといたしましては、過去に採用された特別基準の詳細な公表を積極的に行うなどの措置が求められるところでございます。具体的には、特別基準のデータベース化とその公開といった施策が求められます。

 第二に、災害救助の運用に当たりましては、実務マニュアルとして災害救助事務取扱要領というものがあるのですが、そこの一番最初に書かれてある法による救助の原則というところに必要即応の原則というのがあるのですが、そこには、必要なものについては必要な程度行わなければならないが、それを超えて救助を行う必要はないと書かれております。

 確かにそうかもしれませんが、表現として、これは私、上から目線の感じをせざるを得ないんですよね。ほかの記述においてもそういった上から目線的な表現が見受けられます。実務マニュアルなので、国民の皆さんが見ることを前提とはしていないかもしれませんが、もうちょっと被災者に寄り添うような形の原則といいますか表現に直していただきたいわけです。

 このような中で、現在行われている災害救助法の改正案におきましては、福祉サービスの提供が支援メニューに盛り込まれているわけなんですが、必要という言葉の解釈について幅があるんですけれども、余りにも必要性の有無について過小評価してしまうことによって、不十分で中途半端な福祉サービスの提供に終わってしまわないかと危惧いたしております。

 第三に、能登半島地震におきましては、ホテル、旅館等への二次避難が積極的に展開されてきました。その中で、被災地外での生活ということなので、現金支給による避難生活支援が妥当ではないかと考えているのですが、そこには、救助の原則の一つとして、現物給付の原則というのが立ちはだかっているわけです。そこでは、金銭を給付した場合には、その金銭が救助と異なる使途で用いられる可能性も生じてしまう、だから現物給付が原則だと書いているんですね。これなんか、言ってみたら、被災者をそういう目で見ているのかと思ってしまうわけでして、こういう見方の下で、被災者に寄り添うような救助なんか考えられないわけです。

 この辺り、そろそろこの事務取扱要領も更新される時期に差しかかっております。これらの救助の原則は、災害救助の運用においてはDNA的な存在と言っても過言ではありません。国民の皆さんには、このような考え方の下で災害救助が行われていることを知ってもらいたいわけです。こんな考え方の下で果たしていいのかというのをみんなで議論してもらいたい。そうしないと、いつまでたっても避難所は阪神・淡路のときの風景と変わっていないというような状況が続いてしまいかねません。私といたしましては、そのほかの原則も含めまして、被災者に寄り添うような原則あるいは表現への見直しを図っていただきたいとお願いする次第でございます。

 続きまして、二番目の項目は、被災者支援法制の一本化を目指した被災者総合支援法の提案でございます。

 私は、関西学院大学の災害復興制度研究所の研究員も兼務しておりまして、そこの研究所に設置する法制度研究会に属しておりまして、以下に紹介する被災者総合支援法の作成を手がけてまいりました。

 被災者総合支援法は、既存の被災者支援法である災害対策基本法、災害救助法、災害弔慰金支給等法、被災者生活再建支援法を棚卸しして、包括的で体系性のある全く新しい法制度として被災者支援法制を再構成するものであります。

 被災者総合支援法は、総則編、応急救助編、生活保障・生活再建編、情報提供・相談業務・個人情報編、権利保障編、その他項目、附則から構成されており、災害直後の応急救助から本格的な生活再建のフェーズに至るまでの被災者支援をカバーしつつ、被災者支援にとって重要な基本理念、基本方針や被災者支援の担い手、各種情報の活用、相談業務、権利保障に関する規定を設けております。

 以下におきまして、時間の制限もございますので、それぞれの編についての特徴を述べさせていただくことにいたします。

 まず、総則編におきましては、総合支援法を被災者支援の基本法として機能させるために、被災者支援の在り方を示すべく、基本理念並びに基本方針に関する規定を設けております。

 また、総合支援法における被災者支援の実施主体として被災者支援運営協議会を設け、公助と共助組織が協働して被災者支援に取り組むようにしております。

 応急救助編の部分は、従来は災害救助法がカバーしていた部分でありますが、総合支援法におきましては、大幅な見直しを図っております。応急救助編が担当する被災者支援のメニューをまさに災害直後の応急救助に限定をし、長期的な避難生活に係る支援や瓦れき撤去など応急救助を超える支援メニューを第三編の生活保障・生活再建編に移行させております。

 他方、避難行動、予防医療、福祉サービスなどを新しい支援メニューにつけ加えるとともに、一般基準、特別基準をより柔軟に運用できるようにしております。

 生活保障・生活再建編におきましては、まず、支給要件・基準といたしまして、全壊、半壊、一部半壊に基準を単純化するとともに、災害救助法の支援メニューの一部に存在していた資力要件を撤廃することで支援対象の拡大を図りました。

 以下におきまして、具体的な支援メニューの特徴を紹介することにいたします。

 被災者の死亡、障害につきましては、一時金にとどまらず、定期給付金を支給することとし、障害につきましては、障害等級の七級までは支給措置を行うこととしております。

 生活財の保障につきましては、家屋の損壊度を基準に、生活財の購入に対する支給を行うこととしております。ここでは、世帯人数を反映する形で支給額を決定することにしております。

 住宅の修理につきましては、在宅避難を可能にする程度の居住応急修理、安定した居住空間の確保を目指した居住安定修理の二種類に分けて支援することにしております。

 仮の住居の保障措置として、家賃補助、仮設住宅の提供をすることにしております。仮設住宅は買取りを可能とし、恒久住宅として提供しても構わないこととしております。

 住宅の再建、購入に対しては、最大六百万円を支給することにしております。六百万円の根拠ですが、再建に要する費用を一千八百万円と想定して、支援金六百万円、強制加入の保険六百万、自己調達による六百万、これは民間保険による補填を想定しております、そういうスキームに基づいております。

 世帯における収入の減少により、収入が政令で定める基準を下回った場合、生活支援金を支給することにしております。

 そのほかの支援メニューとして、土砂、瓦れきの撤去、就業支援プログラム、生業支援プログラム、コミュニティー再建支援プログラム、教育サービスの保障、債務整理、融資、ローンなどを掲げております。

 情報提供・相談業務・個人情報編は、災害対策基本法の条文を踏まえつつ、被災者支援を適切に実施するための条項を追加したものであります。

 情報提供や相談業務につきましては、情報提供や相談業務が被災者支援の一手法であることを確認するとともに、災害ケースマネジメントを念頭に置いた避難支援、生活再建支援が実施されるようにしております。

 個人情報の積極的活用に向けて、避難行動要支援者名簿や被災者台帳がより整備しやすく、かつ情報共有がしやすいようにしました。安否情報の提供についても規定を設けております。

 これまでにない新たな追加項目としましては、災害前における事前アセスメントと災害後における被災者ニーズアセスメントがございます。これは、被災者支援が被災者の実態や意見を取り入れないままに実施されがちであることを踏まえ、被災者一人一人に配慮や支援が確実に届くような仕組みを探求した結果、設けられた規定です。

 また、広域避難者対策につきましても、広域避難者の把握と相談支援が重要となりますので、この第四編で規定することにいたしました。

 権利保障編は、これまでの被災者支援法制にはなかった項目であり、総合支援法案の重点項目の一つであります。

 被災者支援の権利利益を擁護し、被災者支援を監視し、被災者支援の改善を図るために、オンブズマンを設けることといたしました。オンブズマンは都道府県の議会を事務局として、議員、専門家から構成されるものといたします。

 被災者支援として行われる業務について、実質的に申請に基づいて行われてきた業務は全て不服申立ての対象とするとともに、被災者支援をめぐる訴訟への道を開くことといたしました。また、建物被害認定調査の結果も不服申立ての対象としております。長期的な避難生活に伴うトラブルも不服申立ての対象とし、訴訟の道を開くことができるようにしました。

 この辺り、救助の原則の一つとして掲げられている職権救助の原則の見直しを迫る提言でもあります。言い換えますと、被災者支援は、恩恵的な措置ではなくて、権利として受けるものとして、再構成を図るべきであるという提言となっております。

 これにより、行政、議会、司法が、被災者支援の実施、オンブズマン組織による監視、被災者の権利保障といった形で、それぞれ被災者支援の運営に関わることになります。

 その他項目、附則といたしましては、罰則や経過措置について規定をしております。

 それ以外にも、法制度研究会におきましては、大規模災害における対応、財源、負担割合の詳細などについても議論をいたしましたが、コンセンサスが得られなかったり、議論が未成熟であったため、支援法案に記載するには至っておりません。

 以上が、被災者総合支援法の概要となります。

 実際のところ、この法案は二〇一九年八月に完成したもので、既に六年の年月が経過しておりますので、その一部が実現されていたり、まさに現在進行形の災対法や災害救助法の改正案として盛り込まれているものもございましたが、法制度研究会で議論された様々なアイデアが、いまだにもって現在においても通用し得る内容になっておりますので、皆様に御披露させていただきました。今後の法制度設計の参考にしていただければ幸いでございます。

 以上です。御清聴ありがとうございました。(拍手)

金子委員長 ありがとうございました。

 次に、重川参考人にお願いいたします。

重川参考人 おはようございます。

 まず、国民を代表する立場の皆様に私たちの研究成果をお話しする機会を与えていただいて、大変ありがたく思っております。よろしくお願いいたします。

 私自身は建築の出身です。三十年前に起きた阪神・淡路大震災では、全壊、半壊合わせて四十何万の住宅が大被害を受けました。これだけたくさんの人が住まいを失ったことについて、私たち建築を学ぶ者として、考えるところがたくさんありました。結果、そういう方たちがどうやって生活を立て直していくのか、そして、基礎自治体である市町村を中心に行政としてどういうことができるのか、それをずっと調査研究を続けてきました。その中で、今日は、住まいの再建、暮らしの再建の視点からお話をさせていただきます。

 まず、東日本大震災で、実は、予想もしなかったような被災者像を見ることができました。

 一ページおめくりください。

 前からそうなんですが、応急仮設住宅は二種類あります。災害が起こった後にわっと建てられて、集まって住むタイプと、それから、空いている賃貸物件を借りて、そこにばらばらに入る。東日本大震災では、この借り上げ型、ばらばらに住むタイプの仮設に入られた方の方が多かったです。

 当初、私たちは、ばらばらに住んじゃうと、まず、行政から情報が行かないじゃない、ボランティアの支援とかが届きにくい、いろいろ生活再建上課題があるんじゃないかという仮定の下に、そういう方たちを対象に、約六、七年間、詳細な聞き取り調査をしてまいりました。

 そんな中で見えてきた一つ目、まず、公助を当てにしない被災者です。

 借り上げ仮設住宅に入っている方たちに話を聞く中で、同じようなことを何遍も聞きました。まず、地震が起きた直後、避難所にも仮設住宅にもお世話になるつもりはありませんでした。自腹で買物、自力で移動、その間、不動産屋さんを走り回って、とにかく空いているアパートがあったらすぐ契約をする。それから、何でそういう思いでとお聞きしたら、とにかく地震なんかで自分のこれまでの人生を折り曲げられるのは嫌だった、だから家族全員で前を向いて進むしかなかったというお話でした。

 おめくりください。

 実は、こういう公助を当てにしない被災者はどれぐらいいたかというと、約四割と推計しています。宮城県で提供した借り上げ仮設住宅は二万六千戸ありますが、そのうちの一万世帯は、賃貸物件が仮設住宅になりますよと厚労省が言う前の段階で、そんなことも知らず、自分でさっさと見つけ、さっさと契約し、さっさと家賃を払っていた人たちが四割に達していました。恐らく、過去の災害でも、そういう人たちは多分これぐらいの割合いたんだろうと思います。

 この方たちに特徴的なのは、速い復興のスピードです。全員、津波で家を流されています。自宅の再建、二年以内。そして、自分たちの住宅再建は自分たちで考える。よく、復興計画がまだできていないから決まらないんですという話を聞くんですが、行政の復興計画は全く念頭になく、とにかく自分たちでやった。

 ただし、こういった優位な面もあります。まず、住宅ローンを抱えていなかった。東北ですから、親の代からの土地、家屋で、ローンを組んでいない。それから、これが多かったです、地震保険に入っていました。これはたくさんの方から聞きました。大体、最低でも一千万ぐらいはつけていますから、中には、こんなことは許されるはずないんだけれども、なぜか二か所の地震保険に入っていた、だから合わせて二千万もらっちゃったんですよという人もいました。あと、職を失わなかった。これは住宅ローンを組むために必要です。さらに、この際、息子が帰ってきてくれたので二世代ローンが組めた。つまり、大金持ちだったわけでは決してないです。こういった条件が経済的優位性に働きました。

 それから、次のページをお願いします。

 支援が復興を遅らせるという意見、これもたくさん聞きました。支援が邪魔すると言った方もいました。よく、行政の支援の遅れが被災者の復興の遅れと言われるんだけれども、違うんじゃないかと私は思っているんです。本当だったら、お役所に全部任せていれば楽かもしれない、早いかもしれない。一番それが楽です。

 次のページです。

 ただ、被災者の周りには、取り巻くいろいろな人があります。それが、せっかく自分たちで考えてやっていこうとしている解決しそうな問題を、また蒸し返してくる。NPOとか、いわゆる専門家と言われる人たち。でも、よくよく見ると、何か後ろに利害関係の影が見え隠れする。

 今までの生活はリセットして次だよと気持ちを切り替えなければやはり進んでいかないからねということで、今まで余り被災者の口からこういうことが出ているとは言われてこなかったんですが、公助の充実に対して、ありがたいではなく、むしろ問題提起、逆の面も、マイナスに働く面もあるんだということを聞きました。

 このお話にあるように、実は、住まいの再建というのは基本的には自助です。そのための資金調達力として、二重ローンがない、二世代ローンが組める、保険、貯蓄などです。

 実は、こういうものを可能にするためには共助が必要です。何の共助かというと、家族縁、親戚縁、職場縁、学校の縁、やはりそういった縁を基に、皆さん、自力だけで頑張っているわけじゃない。

 一方、ここに限界のある被災者も必ずいらっしゃいます。具体的には、年齢、資金、障害、それから、いろいろな事情で家族との縁を切らなきゃいけない、社会とのつながりが持てない。特に、高齢者になると、現役でなくなりますから、現役だった頃にはいろいろな縁があった、それが一個ずつ失われていきます。特に高齢者がつらいと言われるのは、助けてくれる縁がどんどん減っていく。

 いずれにしても、こういう方たちには公助が非常に重要になってきます。ただし、住まいを探す、仕事を探す、あるいは心と体の健康を維持していく、そういったサポートというのが、実は生活再建に非常に重要だということが分かりました。

 次をおめくりください。

 そんな中で、被災地の一つである仙台市の被災者生活再建支援の担当の方たちを、私たちは、五年間ずっとそばで黙って見させていただいてきました。

 仙台というのは、被災地最多の仮設住宅を抱え、しかも、市外居住者がたくさん入り込んでいます。ただし、仙台に住んでいる限り、この人たちの生活再建をきちんとサポートするという目的で、震災の年の夏から、全戸、幹部職員が訪問調査をして、どこに誰が住んでいるのか、どういう状況なのか、情報収集を行いました。二年後には、いろいろな方たちを使って、全戸訪問を開始しました。

 そんな中で集まってきた、被災世帯八千五百の情報が取れていたんですが、まず最初に、どうするかねと考え、まず分類しようということで、スクリーニングをしました。いろいろ試行錯誤があったそうなんですが、最終的に、ここに書いてある四分類、円グラフです。

 まず、取りあえず何とか自分たちでいけるね、問題なしの方たちが六割です。一方、住宅再建どころか、そもそも、障害とか生活保護とか、日常生活がしんどいよという人が六・七パー。それから、生活は大丈夫なんだけれども、どこに住むか決まっていないとか、大工さんの手当てがつかない、つまり住まいを再建するということだけが問題、この方たちが三〇・四%。そして、生活もしんどい、ましてや住宅再建もしんどい、両方しんどいという一番大変な人が四・二%でした。

 ということで、仙台市は、ここでスクリーニングをかけ、次のページをお願いします、問題なしの方、それと住まい再建だけにネックを持っている人に対しては、三年目に生活再建推進プログラム、四年目に生活再建加速プログラムというものを提供しています。

 ちょっとめくっていただいて、二十二こま目の折れ線グラフを御覧いただきたいんですが、二〇一四年、二〇一五年にぐぐっと仮設住宅入居者数が減っています。これがこのプログラムを展開した時期なんです。

 中身は何かというと、不動産屋さん、それから土地家屋調査、弁護士さん、それから金融機関でローンを組む、そういった具体的な住まい再建に困っている問題を解決できる人を集めた相談窓口をつくる。唯一私が知っている、お金を払ったのは、仮設住宅から出る引っ越しのために、五万円だったと思います、引っ越し支援金というのを渡していますが、それ以外は全部、そういった困ったことを解決する手当てを提供するという支援に徹しました。

 一方、五年後に自力再建できない方たちについては、公的な支援としてターゲットを絞り、官民挙げて支援をしました。ただし、やったのは、被災者、防災の支援ではなく、今ある様々な福祉の施策に適切につなぐということです。

 次をおめくりください。

 そのために、支援団体、役所だけではないです、ホームレスを支援、自立支援のためのNPOもありました、社会福祉協議会もありました、様々な、官民挙げて、一人一人ケース会議を開きながら、施策につないでいきました。

 結局、自助に限界がある被災者というのは非常に、今言ったような公助によって災害前よりいい生活環境を手にした方がたくさんいます。元々生活保護でアパートを借りる契約ができないとか、お母さんも精神障害、娘さんも精神障害、なのに手帳をもらっていない、そういう人もいたんです。そういう方が初めて、仮設住宅に入居したことで、市の方でここにこんな人がいたということが分かり、災害公営住宅に入れました。今まで受けられなかった福祉の支援も受けられるようになり、災害をきっかけに、よりよい生活にスタートを切れたということです。

 ということで、最後、行き過ぎた公助と足りない公助と書きました。

 最終的には、被災者なんという名札を早く外して普通の市民として新しく生活をする、それが最終目標です。中には、自分で名札を外せる人もたくさんいます。あるいは、自分で名札を外そうと努力をしている人もたくさんいます。そういう人たちに同じように公的な支援は必要ではないと思っています。必要でない人は自分で頑張ってもらう。それから、必要だけれどもちょっとこれがあれば、そういう人には個別にきちっと適切に支援をする。

 私は、例えば何百万お金を渡したらそれが進むという例は今まで見たことがないです。そして、インタビューの中で、被災者生活再建支援金という言葉、実は一度も聞きませんでした。こっちから話すと、そういえばそういうものももらいましたとはおっしゃるんですが。

 そして、最後です。

 ただし、自分で名札を外せない人も必ずいます。そういう人たちが取り残されないように、そういう人たちが災害をきっかけに少しでもいい生活にたどり着けるように、そこにこそやはり公的支援というのは重要なんじゃないかというふうに思っています。

 どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)

金子委員長 ありがとうございました。

 次に、加藤参考人にお願いいたします。

加藤参考人 東京大学の加藤です。

 まず、今の重川先生のお話が心に刺さりました。ありがとうございます。

 まず、簡単に自己紹介させていただきたいと思います。

 今、東京大学の生産技術研究所、これは理科系の研究所です。それからもう一つ、社会科学研究所、これは文科系の研究所です。文科系、理科系の研究所に在籍しているのは、多分、日本で僕一人かもしれないです。都市計画とか地域づくり、これを本来の専門にしております。都市計画にしろ地域づくりにしろ、総合的に地域を考えていく。ですから、要素技術で縦割り的に考えるのではなくて、都市とか地域を俯瞰的に眺めながら、ある意味それらをシステムとして捉えて、なおかつソフトもハードも視野に入れながら、最適な形というものを日々考えているところです。

 国の省庁関係は、福和先生と同じように、内閣府防災とか、それから強靱化、あと国交省、環境省などの委員会に入れさせていただいて、日々議論をさせていただいております。

 今日は、四つの話をしたいと思います。

 一つが、事前の防災、減災から復興までをトータルに考えた上で戦略を考えていくべし。それから二つ目が、災害関連死に見られるように、急性期を今乗り切れていない状況ですので、それを乗り切るためにどうしたらいいのか。そして三番目ですが、南海トラフの巨大地震の被害想定が出ました、その超大規模災害にどう備えていくのか、この戦略づくりをある意味新たに発明していく必要があるんだという話です。そして最後、四番目が、どうしても、過去の日本社会を振り返ると、災害を経験して、その後追いをしている、そうではなくて、次の災害に向けては是非先取りをしていくべきだ。この四つの話をしたいと思います。

 それでは、ページをめくっていただきたいと思います。

 これは、災害発生から急性期、復旧復興期までを模式的に表したものになります。デフォルトは一番ボトムのラインです。災害が発生して機能が低下し、急性期においては更に被害が拡大する。災害関連死もこの間に多く発生していく。そして、今、向こう二十年で人口が半減するところは珍しくないという状況の中では、もはや復興ができないというのがデフォルトの状態だと捉えるべきだと思います。

 今の構造的な大きな問題は二つあります。一つは、急性期において被害が拡大して、災害関連死を含めた様々な苦難が生じるということ。そしてもう一つが、復興できない状況に陥ってしまう。この二つを何としてでも避けなければいけない。

 そのためには三本柱が必要だ。一つ目が、急性期を上手に乗り切って復興可能なレベルになるように事前に被害を減らしておくという対策です。それから二つ目が、急性期を乗り切る方策。そして最後が、適切かつ円滑かつ速やかに復興できる状態をつくっていくということです。

 被害が減れば、緑の下の、右肩下がりの点線のラインに乗っかる。急性期を乗り切れる対策をすることで水平のラインになる。ここから復興なんですけれども、右肩上がりの赤線のラインに乗っかるんですけれども、その途中でボトルネック、障害があって、それにひっかかって、また復興できないというラインに乗っかってしまう。ですから、この障害を取り除く必要があるということです。加えて、復旧復興の加速化、円滑化ということで、緑のラインに乗っけていく。

 ここで重要なのが、復興像として何を目指すのかといったときに、僕は先取り適応と呼んでいるんですけれども、元の右肩下がりの社会に戻しても、いずれまた右肩下がりになってしまう。要するに、時代を先取りして適応、つまり環境の変化に合わせて未来の姿も変えていく、そういう形の復興が必要だと思っています。

 次、お願いします。

 まず、事前に被害を減らしていくということなんですけれども、強靱化、防災、事前復興、いろいろな言葉があるわけなんですが、これに係る投資というのは、基本的には、明るい未来を開く投資であるべきだというふうに考えています。ですから、危ないからマイナスをゼロに近づけましょうというだけではなくて、むしろプラスをつくり出すことでマイナスもゼロに近づけていく、こういう考え方が必要だと思っています。

 私自身は、防災もまちづくりという言葉を提唱しています。これは、反対語は防災だけです。むしろ、防災だけに焦点を当てることが、防災の持続性、推進力を乏しくさせていく。つまり、防災を主軸にしながらも、総合的によりよい地域をつくっていく。ですから、ほかの要素と組み合わせながら防災を進めていくということが、遠回りに見えて最も近道だというふうに思っています。

 例えば、左下ですと、伊豆市土肥地区、観光防災まちづくり、観光も防災もと。昨年の七月に写真のような避難タワーができました。これは夕日が見える展望レストランつきの避難タワーです。ここは、三千数百人いて、毎年百人ずつ人口が減少している、三十年間津波が来なければ人的被害がゼロになるんじゃないか、そういう地域なわけですね。ですから、単に避難タワーを造るだけではなくて、交流人口を増やして観光振興を図りながら地域の持続性を高めていく、そういう形のものになっています。

 右側は東京の海抜ゼロメートル地帯なんですけれども、河川が氾濫する、あるいは高潮被害に遭えば大変な状況になってしまう。危ないからといってその土地を使わないようにしていこうというと、寂れた町が延々続くことになってしまう。そうではなくて、積極的な投資を行って、浸水したとしても大丈夫な状態をつくっていく、その布石を今から打っていくんだと。これは国交省の高台まちづくりにつながっています。

 次が、復興のところに入ります。

 まず、復旧復興の障害の除去ということで、これは徳島県の美波町の事例ですけれども、ここは津波でほぼ可住地域が浸水してしまう。復興の障害は、応急仮設住宅用地を確保できないというのが障害になる。事前にこの町では、山を開いて防災公園を造る、いざとなればここに応急仮設住宅用地を確保することで人口の流出を止めていこうと。こういった取組、まだ一例しかありませんけれども、ほかでもやれる余地があるというふうに思っています。

 それから、下の、先ほどの先取り適応ということなんですけれども、復興まちづくりのビジョン、どういう姿を目指していくのかということを事前に考えていく必要があるだろう。この先二十年で半減、もしかすると、被災するともっと減るかもしれないという中で、例えば、将来の縮小に見合ったインフラ像の検討などもしていくことが非常に重要かと思います。

 右側を見ていただくと、これは常磐炭鉱の例なんですけれども、かつて、石炭から石油へということでエネルギー革命が起こりました。これはいわばゆっくりとした災害に直面していたとも言えるわけです。こういった中で、常磐炭鉱は、常磐ハワイアンセンター、スパリゾートハワイアンズというものを開業して、都市の特性をがらっと変えていった。

 つまり、先取り適応の適応という言葉の中の変わるということが、やはり復興において非常に重要になってくるであろう。翻って日本全国見渡してみると、向こう二十年で人口が半減になるようなところも珍しくない。言ってみれば、今現在、地方の過疎地域においては災害に直面している、そういう見方もできるということです。

 次が、急性期を乗り切るためにどうしたらいいのかということです。

 急性期の根幹的な問題は何かというと、この写真を御覧ください。この写真は、災害時の避難所の写真ではなくて、娘が小学校六年生のときの運動会のお昼御飯の様子なんですね。実は、この日は非常に日差しの強い日で、運動場で御飯を食べ始めたら、結構暑かったんです。暑かったので、体育館でやはり食べようかと出遅れて行ったらこの状態です。つまり、学校の体育館に小学校の六、七割ぐらいの家庭が入るとこんな状態になるわけです。つまり、災害時に必要とされる対応ニーズに対して、対応資源、リソースが極めて少ない、このアンバランスが急性期の根幹的な問題になっているということです。

 例えば、東京消防庁の救急車、約三百五十台ぐらいあるそうです。一人当たり二時間、病院に運ぶのにかかる。そうすると、発災十二時間で搬送可能人数というのは二千人前後ぐらいなんですね。一方で、東京都の地震被害想定を見れば、負傷者は九万人。これは頑張ればできるというギャップではないわけですね。

 ですから、何をしなければいけないかというと、災害時にできる限り自立していこうという生活圏域を全国でつくっていくということが非常に重要だというふうに思っています。こういう努力を全ての地域が行えば、なけなしの公の資源を本当に必要なところに投入できるということになります。それをするためには、需要を減らして資源を増やすということが必須になってくるということです。

 次、おめくりください。

 需要に関しては、需要のダイエットあるいは省需要ということが必要である。これをするためには、自助ができる人の自助を強化する、共助を強化していく。一方で公については、弱者救済、弱者に対して丁寧に支援をしていく。つまり、不要不急の需要をできる限り抑制していくということが必要かと思っています。あわせて、災害時のシビルミニマムをきちんと設定して、それに対して社会的な合意を図っていくということが重要だというふうに思っています。

 次に、対応資源の最大化ということです。リソースが、今、公だけでは全く足りない状態である、桁外れに少ない状態である。一方、全国見渡せば、民間にはたくさんのリソースがある。ですから、できる限り民間リソースを活用していく必要があるだろう。ただ、国が協力しなさいと言う話ではなくて、むしろ企業側が内発的かつ本業を生かした支援をやりたくなるような、そういう環境をつくっていくことが非常に重要だと思っています。

 そして、被災地内においては、これは災害時遊休施設と私は呼んでいるんですが、災害時に本来目的で使わなくてもいい民間施設というのが、実は、探せばいろいろ、たくさんあるわけですね。そういったものを徹底して活用していくということです。

 次に、現状の対応の効率化を図っていく必要があるだろうというふうに思っています。

 最後、地域の機能の事前拡充ということで、あらかじめ地域内の機能を高めていくことで需要を減らしていくという考え方になります。

 ページをめくっていただきたいと思います。

 今、南海トラフ巨大地震、首都直下地震のリスクに直面しているわけですけれども、想定される超大規模災害の被害量というのは、能登半島の地震と比べると、一桁、二桁、三桁、それぐらい違うわけですね。ですから、全く違うモードの対応が必要だというふうに思っております。これもある種の発明が必要だというふうに思っています。

 支援のニーズに対して、全国の支援能力をかき集めたとしても、やはり桁外れに支援能力が小さくなってしまう。そうすると、ある種の地域のトリアージ、どうしても助けに行けない場所というのが必ず出てくるというふうに思っています。ですから、トリアージによって支援が困難とされた地域に対しては、これは切り捨てるという話ではなくて、事前に、重点的に事前投資を図っていく。要するに、仮に孤立したとしてもきちんと自立できるような仕掛けを地域の中にあらかじめつくっていく、こういった方向性の検討も必要だというふうに思っております。

 そして、最後です。

 経験の後追いではなくて、先取り。未知、未経験の状況というものが次に控えていますので、それをきちんと想定して備えていくということが必要だし、あとは、公助の力をいま一度、客観的、冷静に評価をしてみる。頑張ればできる状態でもなさそうな気がしますので、そこは客観的、冷静にいま一度見詰め直した上で、違うモードを発明していく必要があるというふうに思います。

 以上です。ありがとうございました。(拍手)

金子委員長 ありがとうございました。

 以上で各参考人からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

金子委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。平沼正二郎君。

平沼委員 皆さん、おはようございます。自由民主党の平沼正二郎でございます。

 今日は、四名の参考人の皆様方、本当にそれぞれの視点から、また幅広く、そして知見に富んだ御意見をいただいたこと、改めて感謝と御礼を申し上げます。

 非常に私も勉強になる部分もありましたし、私自身、さきの内閣で内閣府大臣政務官で能登半島地震の対応にも当たらせていただいておりましたし、同時に復興の政務官でもありましたので、東北三県の復興の件に関してもいろいろな知見を今日も授かったのかなと思っております。

 その上で、いただいた意見の中からちょっと御質問をさせていただきたいと思います。

 これは四名の参考人の皆様方お一人ずつにお伺いをしたいと思っておりますけれども、いろいろキーワードとして出てきたのが、やはり自助と共助と公助という部分であったのかなと思っております。やはり、このバランスというのをどう整えていくのかというのが非常に今後の課題の一つでもあるかなと思っております。

 これも福和参考人等からもありましたけれども、やはり、南海トラフみたいな非常に大規模な地震になったときに、果たして公助が今の状況で果たし得る力を持っているのか。先ほど加藤参考人の方からもありましたけれども、やはりここを少し、バランスをどう考えていくか。やはり、自助をもう少し厚くしなきゃいけないのかという部分と、その後で共助の部分をどうやって地域の中でつくっていくのかというところが非常に重要かなと思っておりますので、このバランス感について、いま一度、四人の参考人の皆様方からお伺いできればと思います。

福和参考人 福和でございます。

 一般には、公助と共助と自助の割合は一対二対七と言われております。圧倒的に自助が大事である。災害が起きた後は、やはり公助の力は圧倒的に足りません。我々は平時に持っている力しかありませんから、その力以上のものを災害が起きた後に使うことはできません。

 ですから、公助はどこで使うかというと、平時に使うべきだと思います。平時に自助がちゃんと育つように、徹底的に公助の力を入れる。できる限り自助を促すように公助が入り込んでいく。その仕組みは比較的難しいわけではなくて、皆さんのやる気を育むような、あるいは教育とか啓発みたいなことをして少しでも自助が進む、特に耐震化とか家具固定が私は大事だと思っていますし、逃げるという訓練も大事だと思いますけれども、そういったことがしやすくなるようにしてあげるべきだと思います。

 今は、残念ながら、耐震化補助は申請主義です。この申請書類を書くのが極めて面倒です。それから、一般に八割までしか補助しません。これは、一〇〇%補助してあげた方が多分圧倒的に進みます。その代わり、補助金額を減らせばいいんです。補助金額を減らせば、そうしたら、創意工夫で安い耐震化工法をみんながつくります。お金が出なくて、申請主義じゃなくて、公的の方から、やってあげるよ、診断もしてあげるし、そのまま手続として改修もしてあげるよと。

 今は、診断だけして改修しない人がほとんどです。これを一気通貫にして手間を省いてあげて、一〇〇%にしてあげて、住民の人たちがそんなに負担に思わないようなやり方。私だったら、中をいじるのは嫌なので、外側からバッテンのワイヤ補強をするだけだったら多分物すごく安くできるわけです。そうすると、みんな住み続けられます。

 そういった形で公助を上手に使って、そうすれば自助だってずっと進むわけですから、事前に投資をすることで、事後の、我々が持てる力をより大事なことに生かしていくような時間軸上のバランスを取りに行くということが私は大事だと思っております。そうすると、今の公助の力でも相当にやれることはあるというふうに信じています。

 以上です。

山崎参考人 公助と共助と自助の関係なんですが、憲法とかを見てみると、憲法では自立した個人というのを前提に考えているんですね。災害が起こると、そういう自立というのがなかなか難しくなる場面というのが出てきて、そういう自立をまた回復するために公助というのが使われる、そういうイメージです。

 ですから、基本的には自助を前提に、まさに自助を促進するとか支えるような形で公助というのは使われるべきで、共助というのも、とどのつまりは、結局、自助の促進につながっていくわけですから、共助に対しても公助はある程度そういう支援をする、そういう余地もあるかと思います。

 以上です。

重川参考人 基本的には、私は、社会で考えられているよりも自助で頑張っている人というのは多いと思っています。例えば、被災地なんかに行きましても、何も言わず、みんな一生懸命黙々と努力している。ただし、そういう人の声は表に出てきません。サイレントマジョリティーとよく言われるんですけれども、そうじゃない人の声、あるいは、そうじゃない人をあたかも代弁するかのような外からの声というのが一般的には大きく聞こえてきます。まだまだ、やはり日本人というのは黙って一生懸命頑張る、そういう人がいっぱいいると思っています。

 あと、共助についてなんですが、共助は時期によってどういう共助が大切か違ってきます。直後は、やはりその場にいる人と助け合わない限り、待っていても、自衛隊、消防、警察が数時間後に来るはずがないです。そうなってくると、隣の人と、顔を知っている、名前を知っている、挨拶をする、その関係性さえできていれば必ずやはり声をかけ合えるんですね。だから、自分が生き残るために、まず隣の人に気持ちよく挨拶する、エレベーターに乗ったら挨拶する、そこからでいいと思っています。

 避難所とか仮設住宅へ行くと、今度は、見ず知らずの人が、暮らしも違う、考え方も違う、全然違う人たちがいきなり顔を突き合わせて暮らすようになります。ここで問われるのは、やはり防災云々ではなくその人の持つ社会性なんですね、市民性というか社会性。そういった市民性、民度の高い教育をするというのは防災ではなく学校教育、そういったところでやはり非常に重要。それがなければ、どんなに練習したとしても避難所なんというのはうまく運営できません。

 そして、復興になってくると、さっき申し上げたように、地域コミュニティーが助けてくれるわけではありません。ここは非常にパーソナルな問題になってきます。そういうものを考えると、そこに必要な共助、やはり親戚と年賀状のやり取りとかは大事だと思います。学縁も大事、職場縁も大事です。そういうふうに、どういう共助が重要かということを認識してふだんの生活の中で培っておくというのは、まさにそれが自分自身が生き残るための自助努力だと思っています。

加藤参考人 バランスというよりかは、基本的には自助、共助、公助、最大限の努力をしていくというのがまず大前提である。

 まず、やってはいけないこととして、やはり相互依存関係があると、互いに頼り合って結局誰も努力をしないという状態になっている。もしかすると、今の日本社会の多くはその状態に陥っている可能性があるかもしれない。

 それから、自助、共助、公助の関係としては、先ほど福和参考人が言われたとおり、共助は共助として独立して頑張る要素もあるんだけれども、自助の支援を共助がしていく、地域ぐるみで何かに取り組んでいく、公助は自助、共助の支援をしていくという関係が重要である。

 伸び代としては、僕は共助というのが非常に大きいかなと思っています。ただ、今までの共助というのは、みんなで助け合いましょう、みんなで仲よく頑張りましょうと、ソフトに偏重しているのではないかというふうに感じています。災害を乗り越えるためには、例えばエネルギーの拠点とか生活インフラが災害時にも確保できるようなハード、それが重要だと思っています。そういうハードとソフトを組み合わせることで、共助の力の伸び代というのがより大きくなっていくのかなというふうに思っています。

 加えて、持ち寄りの共助という言葉を最近使っているんですけれども、地域社会の中には実は使えるものというのは結構いろいろあると思うんですね。それは、人の持っているスキルも含めて、物も含めて考えていくと、そういうものを地域の中で上手に寄せ集めることで災害時に役立つものに変えていく、そういう方向性もあり得るというふうに思っています。

 以上です。

平沼委員 ありがとうございます。非常にこれも大変参考になる御意見をいただいたかなと思っております。

 その上で、福和参考人にちょっとお伺いをいたしたいんですけれども、先ほど自助、共助、公助の話もしましたけれども、例えば、今、支援法みたいなものを拡充して例えば六百万円にしようみたいなお話があったりとかしていますけれども、建て直しという金額に関しては非常に、多分これだけだと難しいので、元々の支援金の目的というのは、どちらかというとお見舞金的な立場というか、たてつけになっているんです。

 一方で、自助というところでは、やはり自分で保険に入るとか、何かそういうのが結構私は重要だと思っていまして、今、日本の地震保険への加入率は三五・一%ということで非常に低くて、先ほどお話にもあった西日本の方、私は西日本の岡山でございますけれども、地震とかが少ないという県もあって、やはりこういうところがかなり如実に数字にも表れていると思うんですけれども、ここはやはり自助的な立場を広めていって、地震保険みたいなところの拡充というところに関してはどういった御意見をお持ちか、教えてください。

福和参考人 まずは、事前にお金を使った方が圧倒的に失うお金は少ないということが大前提であると思います。先ほども申し上げましたけれども、耐震補強にかかるお金は多分百万円から二百万円程度です。これは出しておけば、生活も維持できますし、財産も保全できるし、命も守れます。これは関連死を防ぐ上でも圧倒的に重要なので、今の御質問に対しては、まず最初に、後のことを考えるよりも事前に被害を減らす努力をしないと、後で使うお金は事前に使うお金の恐らく十倍以上。

 ですから、それはこの国として出せる金額ではないので、どうしても金額を減らさなくちゃいけなくなります。金額を減らすためにはどの程度の被害なのかを調べなくちゃいけなくて、減額支給をするためには、全部を調べ切らない限り、減額支給もできません。ですが、被害認定をしたり、応急危険度判定をしたり、罹災証明書を出す人の人数は圧倒的に少ないので、これを把握することは恐らく大規模地震では不可能だと思います。

 地震保険に関しては、できる限り入っていただくこと、これは、相互に支援し合うという相互扶助という立場では物すごく重要であると思います。

 ただ、地震保険は、あくまでも国のお金は貸与でしかなくて、基本的には地震保険加入者がみんなでお金を出し合っているもので、上限金額も十数兆円と決まっています。これは、一度の地震に対して十数兆円であって、今は二回分ぐらいまでしか無理で、二つの地震がどれだけの時間差があるかによって一つとしてみなしたりとか、地震保険そのものの制度もなかなか難しいということと、実は、じゃ、地震保険が満額払えるのかという問題もあります。それから、地震保険を払う手続の問題もあります。

 そういう意味でいうと、私自身は、地震保険というのは、ある程度の規模までの地震災害に関しては物すごく有効だと思いますけれども、南海トラフ巨大地震のような災害に関しては地震保険では手当てが難しい可能性が高いので、むしろ、地震保険の限界も我々は理解した上で、自助にかじを切るというようなことの判断も必要ではないかというふうに感じています。ですから、地震保険はすばらしく、大事だけれども、一方でそこには限界があるというふうに考えているということになります。

 以上です。

平沼委員 ありがとうございます。大変参考になりました。

 本当はいっぱい聞きたいんですけれども、もう時間がないので最後の質問にいたしますけれども。

 重川参考人の方から、やはり最後までちゃんとケアが必要な人は見極めてやっていかないといけないということで、東日本でもそうなんですけれども、心のケアというのは、今回、救助法でいわゆる福祉も入れましたけれども、やはり心のケアというのは非常に重要になっていて、その辺り、現場にいっぱいいらっしゃってどう考えていらっしゃるか、最後に伺わせていただけますか。

重川参考人 よく心のケアと言われていて、症状にもよると思います。本当に、日常的にもそうなんですけれども、専門家のカウンセリングなり治療が必要な状況の人もいらっしゃいます。

 そうじゃなく、やはり、特に子供たちなんかを見ているとそうなんですが、子供の心のケアといったときに、カウンセラーなんかの派遣とすぐ思われるんですが、一番子供のケアになったのは、まず学校に来させる、いつもどおり来させる、授業ができなくても来る、先生と会う、友達と会う。あっ、子供たちが学校に行き出したねと、地域の人もまた元気になるんですね。私は専門的なケアの知識はないんですけれども、一般的な被災地対応を見ている中で、そういったことというのはすごく大事だなというふうに思いました。

 十分なお答えになっていません。申し訳ありません。

平沼委員 ありがとうございました。終わります。

金子委員長 次に、近藤和也君。

近藤(和)委員 立憲民主党、石川県能登半島の近藤和也でございます。

 皆様、被災地能登に様々な研究そして御支援をいただきまして、ありがとうございます。

 私も現地にいる人間として、やはり公助を求める声というのは必然的に高くなってきますので、公助に関しての質問が中心になってくると思いますが、まず、山崎先生にお伺いいたしたいと思います。

 先生が提唱されていらっしゃる被災者総合支援法の中で、生活保障・生活再建編で、支援金として六百万円が必要である、このようなことを御提唱されていらっしゃいます。現状の被災者生活再建支援金は三百万円、そして、地域福祉推進支援臨時特例給付金、今回、能登半島地震を受けて石川県のみに今運用していただいている、家財五十万、車が駄目になったら五十万、プラス二百万円、合わせて三百万円、実質倍増の制度ができましたが、あわせて、これらの現状の制度の足りないところをいかに増やしていくべきか、先生の研究を基にまた教えていただきたいと思います。

山崎参考人 現在、石川県には、そういう特例給付金という形で、被災者生活再建支援法があって、その上にそういう給付金というのが今出されているところなんですけれども、一応、障害者とか高齢者の方とか経済的にちょっと大変な人たちに対する支援ということで、上乗せ、横出し的に出ているところにつきましてはすごく大きな一歩だと思います。

 この給付金なんですけれども、財源のほとんどが国から出されているわけなんですけれども、位置づけとしては自治体の独自施策ということで展開されていまして、昔から、支援法というものだけでは不十分で、そういう独自施策で自治体とか復興基金からそういう支援金というものが上乗せとか横出しされてきたという、ずっと積み重ねがあるわけですよね。

 そうすると、支援法もそうなんですけれども、過去のそういう独自施策というのを踏まえながら少しずつ成長していったというところがありまして、今回の施策というのは、石川県から皮切りに始まっていっているわけなんですけれども、今後は、よく似たそういう独自支援策というのが同等の災害においても支給されるだろうという期待が出てくるわけですね。そうすると、少しずつそれが既成事実化していって、将来的にはそれが言ってみれば支援法の制度の一部になっていく、そういう感じで支援法が少しずつ改善されていく、改正されていくということになると思うんですね。

 ですから、今回の石川県の給付金というのはその第一弾として捉えていって、それに対して、今後の災害が起こったときも、国とか政府は同等のそういう施策とかそういう独自の施策の後押しをしていただきたいと思います。

 あと、六百万円という金額なんですけれども、これまでのそういう支援法とそういう独自施策というものの実績を踏まえますと、もう既に三百万円があって更に上乗せ三百万円、特に東日本大震災だったら復興基金で県と市町村で足して三百万円、そういう実績がありますので、そうすると支援法でも六百万円ぐらい出してもおかしくないわけですよ。要するに、そういう独自施策の積み重ねが既成事実化して、それが恒久的な制度になっていくということで、そうすると、今支援法の改正案が出ていますけれども、六百万円ぐらいまではそういう支援法で出すというのは特に不自然なことではないと考えています。

 以上です。

近藤(和)委員 ありがとうございます。

 実際、今、能登では、地震前までは一坪七十万円だったのが百五十万円を超えてきておりまして、今回の新しい制度で満額三百万円、増えたは増えたんですけれども、それでも全然追いつけない。そもそも、二十一年前に百万から三百万に上げられてから全く動いていない。特にこの三年、四年で急激な物価上昇がございますので、国の制度として、私たちも倍増法は出しておりますけれども、物価上昇を加味した形も含めて動かしていく必要があるのかなと思います。

 そして、先ほど平沼委員の質疑の中でも、自助、共助、公助の順番のところにも少しつながりますが、どれもが大事という中で、ちなみに、今回新しく三百万円、つくっていただいた地域福祉推進支援臨時特例給付金、このおかげで家を建てられたという方は何人もいらっしゃいます。ちなみに、満額で、車が壊れていない方なんですが、二百五十万なんですが、この二百五十万がプラスアルファ家にかけられるから建てられるんじゃなくて、この部分を使わないで済むから家を建てることができた、いわば公助が自助を促した、こういう事例もございます。

 また、やはり高齢化率が五〇%を超えております。七十五歳以上の方が二五%を超えています。四人の地域があるとすれば、七十五歳以上の方がお一人、六十五歳の方が一人、現役世代が一人、そして子供か現役世代になりかけの方が一人ということで、地域によっても自助、共助、公助の在り方も変わってくるのかな、これはこれから国会での議論として大変重要なことではないかなというふうに思っております。

 そして、地震保険のお話が先ほどございました。福和先生ありがとうございます。改めて、この地震保険についてですが、重川参考人も、私も少し拝見させていただきました。この地震保険の在り方について、やはり私も、入って助かったという方と入っていない方の差がかなり生じてきましたので、強制的であるべきなのか、自賠責のような形がいいのか分からないですが、何らかの形で広がっていかなくてはいけないのかなというふうに思います。

 それで、福和参考人、山崎参考人、重川参考人に、あるべき姿ということを少しお願いいたします。

福和参考人 地震保険はある種の互助であるというふうに考えると、あらゆる人が地震保険に加入する制度設計というのは非常に重要であるというふうに思います。ただ一方で、地震保険に入っていれば大丈夫であるというわけではなくて、今は地震保険は基本的に火災保険の半額で、これも満額を保障するわけではなくて、再建を促すという立場であるということが一つ大事なことだと思います。

 それから、先ほども少し申し上げましたけれども、地震保険に入っていたとしても、お金はもらえても実は再建ができないんです、大きな災害では。それは、先ほどの議論にもありましたけれども、実は建設業がそんなに力がないんです、それから資材もないんです。ですから、お金をもらったから解決する問題ではなくて、我々が持っている、民間も含めた力の中で対応できるところまで被害を減らすという努力をしない限り、地震保険でお金は出たとしても非常に厳しい。

 特に、インフレが起きがちである。今の能登の状況というのは、残念ながら、価格が高騰しているところは、人もいない、資機材もないということもあるわけですから、できる限り地震保険には期待したいものの、これはみんなで入っていることが望ましいものの、私としては、地震が起きた後のことを考えることは、今の災害については大事ですけれども、これから起きる災害については、起きた後のことを考えるよりは起きる前にやらなくてはいけないことを議論するということを考えたいなというふうに感じております。

 ですから、制度設計という意味では、地震保険の制度設計の在り方を事前に考えておくということも事前準備としては十分に大事なことだと思っています。

 以上です。

山崎参考人 地震保険への加入率が低いということなんですけれども、そういった場合、一つは、金銭的なインセンティブとか、そういうインセンティブでもって加入率を高めるというのがあるんですけれども、それもなかなか限界があるということになると、例えばニュージーランドとかだったら、実質強制加入の自然災害保険というのがあるんですね。そう考えると、日本でもそういう地震保険の強制加入というのも検討する余地があるんじゃないかなと思っています。

 ただ、財政的に破綻しかねないという点からすると、今だったら火災保険の半額までは保障するという話なんですけれども、そうじゃなくても、今回、総合支援法案でもちょっと言わせていただいているんですけれども、例えば六百万円程度だったら強制加入ということにして、少なくとも生活再建とか将来の生活が破綻しない程度のそういう保険制度、それを強制するという方法もあるんじゃないかなと思います。

 以上です。

重川参考人 保険制度というのは、やはり責任の所在を明確にする、つまり、契約者が自ら責任を持ってという、そういう意味では、防災意識、我が事意識が非常に重要だと思っています。

 さっき福和参考人がおっしゃったとおり、保険の設計、保険そのものが上限、頭打ちで決まっている。それから、保険の加入率、もしこれが一〇〇%入ったら、今ぐらいの規模の地震でも全部契約額どおり払い切れるかどうか分からないんですね。そういった保険の設計制度そのものにあやふやさがあるまま、今までは、たまたま賄えるほどの被害だったから破綻しなかったというだけで。

 ただ、どう考えても破綻してしまうケースもあり得るということが分かっているわけですから、一つは、今のような保険制度で、通常、これまでのような規模であれば払える。ただし、契約をするときにやはりきちんと知らせるべきだと思うんですね、こういう商品であり、こういう条件のときには契約の金額がこうなるとか。それをうやむやにしたまま、知っている人だけ知って、何となく加入率を上げよう上げようというところが、もしこれで本当に破綻したら、それに気づかないままというと、契約者というのは本当に怒ると思うんですよ。

 だから、そこら辺の合意形成をきちんと事前に図っておく、覚悟しておくということを是非やっておくべきだと思っています。

金子委員長 参考人に申し上げます。

 発言の際は事前に挙手をお願いしたいと思います。

近藤(和)委員 加藤参考人に伺います。

 能登は、先生が言われていましたように、災害が起きる前から急激な人口減少がずっと続いておりまして、ある意味災害に近いような状況の中で、この下り坂をどう耐えていくかということで頑張ってまいりました。

 そんな中で、防災もまちづくりというのは本当におっしゃるとおりだと思います。今、能登にあれができていたら、これができていたらと本当に悔やむばかりなんですが、私たちのこの悲しい経験を南海トラフまた首都直下、特に南海トラフは能登のような田舎、不便なところ、高齢化の高いところが相当あると思いますので、全部が全部事前に準備は、福和先生が言われたように、全部が全部が理想なんですが、恐らく全部が全部、じゃ、五年、十年でするというのは難しいのではないかなと。ごくごく一部の地域だけでも先端的に、防災もまちづくりを国と自治体、一部のところで進めていった方がいいのではないかなと私は思いますが、その点について先生はどう思われますでしょうか。

金子委員長 加藤参考人、挙手をお願いしたいと思います。

加藤参考人 それは是非、先駆的な事例をこれからつくっていくべきだと思います。

 やはりその中で重要なのは、地域の人たちの問題意識を十二分に高めて、地域の担い手と一緒になって取り組んでいくということが必要条件だというふうに思っています。大分過疎化が深刻化してきて、もう終わりが見えている状態の中で、ここで一踏ん張り、上向きのベクトルをつくろうとするかどうかで、多分、その地域の行方が、先行きが決まってくると思うんですね。

 ですから、そういう意味では最後の正念場かなというふうに思いますので、南海トラフへの備えをきっかけに、是非そういう地域が増えていくことを期待しております。

近藤(和)委員 ありがとうございます。

 手挙げ方式でもいいのではないかなというふうに思います。国としては、公平性を気にするばかり、どこも進まないということがないように、参考人、全ての皆様にもまたお力添えをいただければと思います。

 ありがとうございました。

金子委員長 次に、市村浩一郎君。

市村委員 日本維新の会の市村でございます。

 本日は、参考人の皆様に貴重な時間をいただきまして、こうしてお出ましいただきましたこと、まずもって心から感謝を申し上げます。

 まず、私、福和参考人にお尋ねしたいんですが、福和参考人はずっと、事前の備えが必要だということでおっしゃっておられます。十年前の想定、南海トラフの犠牲者の想定、結局はほとんど変わっていないということをさっきおっしゃいました。

 この十年間、じゃ、何が起きていなかったのか、起こったのか、教えていただけますでしょうか。

福和参考人 被害が減っていないところはどこかというと、先ほど申し上げましたように、家屋の耐震化が進んでいないということと、それから、津波からの避難意識が向上している証拠がしっかり見つからなかった、この二つであります。

 この国は、主として公助の部分については非常に責任を持って役所が前を向いて、強靱化というのはほとんど進みました。ですから、公共施設についてはほぼ一〇〇%耐震化や強靱化が終わりつつあります。

 一方で、進んでいないのは、私たち国民が、一人一人が努力をする部分が進んでいません。何が足りなかったかというと、国民の方々やあるいは産業界の方々に、まずは今自分が置かれている災害の危険度の状況、これをきちんとお伝えすることができていない。それから、やろうと思ったときに、それを支援する仕組みがないんです。

 何かをやろうとしたときには、理屈では分かっているけれども、何となく動かない人がほとんどです。その次に、納得すれば、頭で分かるんじゃなくて、何となく体で分かってくれば、一歩進みます。それでも大体進まないんです。それは、我が事感がないと前に進まないんです。ここまで来ても、建物を直すというのは、だまされるかなと思う人は結構多いんですよね、やはり。

 ですから、そこで、後ろから一歩押してあげる人とか、あるいは、解決策として、こういうふうに直してあげれば安くできるし効果もあるよということを教えてあげる、その上で、実際に実践するというところまで、全部のステップを支援してあげるような公助の力が要ると思うんです。

 最後は自助なんです。でも、自助を促すには、周辺の人たちがやった方がいいよと言うような共助が必要で、最後にちゃんとやってくれるように持ち込むために後ろ側から支援してあげる公助が必要で、こういった事柄が産業界に対しても必要です。

 産業界も今の経営にすごくあっぷあっぷしているので、長期的に損失を被る災害に対してお金を入れるということは非常に苦手なんです。これを、長期ビジョンで物事を考えなくちゃいけないという仕組みを公助側でつくってあげる。例えば、それぞれの経営判断をするときに、今の経営の判断だけではなく、長期的な災害に対しての判断ということも指標として出すような仕組みを国の方でつくっていただければ、産業界の自助も進むのではないかというふうに思っています。

 結局は、産業界と国民の自助を促す政策が望ましいというふうに思っています。

 以上です。

市村委員 感謝いたします。本当に今日は四人の方とも、示唆に富む話をしていただいています。本当に感謝を申し上げます。

 私は、三・一一の現地対策本部長代行ということで、一か月間、発災の日から陣頭指揮を執ったような経験もあります。また、ほかにも、中越地震や阪神・淡路大震災の復興事業にも携わってきたという経験もありまして、非常に現場力というのが大切だというふうに思っている者でございまして、今回、防災庁ができるに当たっては、ここの特別委員会でもかなりいろいろ議論していますが、やはり人間力が問われる。最後は結局、今日の話は事前の防災、減災の話とか自助、共助、公助の話なんですけれども、いざとなったときの、加藤参考人からは急性期の話もしていただきました、やはり急性期に特に問われるのが、その現場を仕切る人の人間力といいますかね、現場力というのが大変重要で、幾ら制度ができていても、その制度の存在を知らないとか、そういう意識がない方が現場にいると余計混乱になるということをもう何度も見てきております。

 その意味で、加藤参考人にお尋ねしたいのは、想定し備えるというお言葉もいただいておりますが、やはり想像力なんですね。さっき福和参考人からも、見えないものを見る、見たくないものを見るというお話もありましたが、やはり、そういうものを、そういう人間力を持った人が現場にいないと、また今回防災庁ができても、そういう人が防災監とか地域担当に就かないと、かえって屋上屋を重ねて、山崎参考人からは上から目線だと先ほどお話もありましたが、結局、上から目線の人間が行ってしまうと話にならない。屋上屋を重ねて、かえって混乱するということを私は思っておるところもありますので。

 是非とも、想定し備えるというところについて、特に加藤参考人は共助の力が大きいということをおっしゃっていただきました。共助のシステムということでは、NPOというのは、私はずっと、三十年以上、日本で言い続けて、大分今発展しているところなんですが、やはり共助のシステムというものを備えていくことが、いわゆる人間力、現場力だけじゃなくて、システムとして備えておくことが必要だというふうに思っておるところがありますが、加藤参考人、いかがでございますかね。

加藤参考人 おっしゃるとおりだと基本的に思いました。

 その中で、公助の現場での伸び代をいかにつくっていくのかというのが僕は非常に重要だと思っています。

 端的に言えば現場力、人間力が重要だという話になってしまうんですが、これまでの災害経験、災害対応の経験を積み重ねて、効率的に仕事をするために役割分担がなされて、それがいつの間にか役割が固定化して、マニュアルなどもしっかり作られていくようになる。そうすると、逆に、未知、未経験の状況を目の前にしたときに、それが手かせ足かせになってしまうような場合もあるような気がするんですね。

 むしろ、共助とか本当の現場力というと、今これをしなければいけないミッションがあって、そのミッションを達成するために、何とか手に入るもので何とか乗り越えていく。だから、そういう動き方ができるような柔軟性をつくっていく。それを具体的にどうつくればいいのかはこれからの議論かと思うんですが、そういう方向性が一つ重要だなというふうに思っています。

 これは専門用語で言うとブリコラージュという言葉らしいんですけれども、決められたとおりに動くのではなくて、その辺にあるものを上手に組み合わせて目的を達成していく、そういう概念が非常に重要だと思っています。

市村委員 まさに、本当におっしゃるとおりだと思います。

 やはり、意外と身近にあったりします。私も、陣頭指揮を執らせていただいたときは、はっきり言って、制度のことなんて考えていません。目の前にあるものをどう解決するかということで考えました。

 そのときに、担当の皆さんは、いや、先生、それはちょっと、政務官と。私は政務官でしたから、政務官、それは法律的にどうなんでしょうかと言うから、いや、そんなことを言っている場合じゃないだろうということで、とにかくやるんだ、今ある状況をどう改善するかということでやらなくちゃいけないんだということで話をしました。そうしたら、後から、いや、政務官、ここにちゃんと条文がありましたと。結構、法律というのは、緊急時、災害時には原則を取らないでいいような条項を持っているんです。これで大丈夫ですと言っていて、今そんなことをやっている暇があるのかと私は思っていましたが。

 そういうことで、結局、ちゃんと真っ当なことをやっていれば、法律に背くはずがないんですよね。そもそも法律というのは道徳の集大成というか最大公約数ですから、真っ当に人間の気持ちを持って、今、目の前にある人を助けたいと思う気持ちがあれば、その気持ちでやったことが法律に背くはずがないわけで、私はそう信じています。法律はそういうものだと思っていますので。

 だから、やはりそういう人間力を持った人が現場にいなくちゃいけないと思っております。

 その意味で、重川参考人に、私は非常に、まさに三・一一の現地対策本部長代行でしたので、先ほどは、その後の調査をしていただいて、仙台市にも大変関わっておりましたので、すばらしい結果を、社会科学的なレポートを出していただいたなと思っております。本当に感謝を申し上げるところです。

 やはり、自助というのが、真っ当な人間は自分で、自力で何とかしようと思うはずなんです。真っ当と言っちゃいけないけれども。だから、どうしても公助に頼らなくちゃいけないという方がいらっしゃるということで、高齢者の方とか障害の方とか、先ほどそういう話もありました。だから、そういう方は公助で支えなくちゃいけませんが、何とか自分でやれる人たちは、それこそ、その人たちは事前に備えるわけですよ。

 先ほど福和参考人が、民間の個人の力、努力が足りないということをおっしゃいましたが、だから、そこに対して、努力が足りないというのもありますけれども、やはり情報をちゃんと与えていないというのもあると思うんですよね。たしか、山崎参考人は情報というところもおっしゃっておられたと思います。

 だから、そういうふうに、ちゃんときちっとした情報、やはり、南海トラフがどれだけすごいことか、つまり、見えないもの、あるいは、はっきり言って見たくないものを、しかし見なくちゃいけないんだ、そこで、自分もまず自分の足下を見詰めてください、自分の地域を見詰めてください、そしてやれることをやってくださいというふうに持っていかなくちゃいけないと思っておるんです。

 そこで、まず、じゃ、山崎参考人に、情報の大切さというのをちょっと教えていただけませんでしょうか、情報伝達の大切さ。

山崎参考人 被災者というのは、被災した直後から、自立的に考えて生活して、自分なりの生活再建ストーリーというのをつくって、ちょっとずつ再建を果たしていくわけです。そういった中で、どのように生活して再建していったらいいのかについての様々な情報提供というのが不可欠なわけです。

 それプラス、情報だけでは、災害が起こったらいろいろな制度とかがあるんですけれども、そんなものはなかなか平常時に知っているわけじゃないので、そうすると、専門的な知見からの助言が得られるような、そういう相談業務というのも必要になりまして、そうすると、単なる情報提供、プラス、そういう相談業務というのがうまく合わさって、情報というものをうまく活用して、そういう生活再建につなげていくことができる。

 そういった意味では、情報提供というのがまさに自助を促進するための必要不可欠な要素だということが言えます。

 以上です。

市村委員 ありがとうございます。

 まさに、本当に、そういうふうに、個人、産業界、確かにいろいろみんな厳しい状況にありますけれども、やはりそこに対してきちっと、これから起こるだろうと強く想定されていることを伝えていく努力が必要であります。

 そのときに、まさに事前防災なんですが、まさに先ほど重川参考人から、やはり生き残るためには隣の人にちゃんと挨拶しましょうと。これは結構やはり重要なんです。私も地域のコミュニティーの相談役もさせていただいておりますが、自主防災会もつくっているコミュニティーなんですけれども、やはり、だんじりとかお祭りとかをやって、いろいろなイベントをやって、ふだんから顔の見える関係をつくりましょうね、それがいざというときに役に立つんですよということでやっております。

 だから、やはり、まずそこがないと、幾らどんな制度をつくってお金を出しても、さっき、まさに福和参考人がおっしゃるとおりで、供給力がないんです、絶対に。南海トラフが起きたら、どう考えても供給力はありません。だから、そういうときに、やはり地域で助け合うということがまず基本にないとと思っておりますが、そこを最後、重川参考人の方から、ちょっとその思いをもう一度ここで御披露いただけませんでしょうか。

重川参考人 ありがとうございます。

 思いというか、今まさにおっしゃったとおり、人のために何かをさせられるという昔ながらのコミュニティーから、そうじゃない、やはり自分たちが安心して暮らすために、自分から積極的に関係をつくっておく。

 さっき言いましたが、顔と名前ぐらい知っていれば、必ず心配して、例えば、まだロビーに降りてきていないじゃない、あの人とか、小学校で顔を見かけないじゃないと、必ず心配してくれる。この、ちょっとでもいいから自分を心配してくれる人を何人つくっておくか。

 困っていないときはつき合わなくていいんです、べたべたと。それを強制されるのは、やはり今の人は合わない。ただし、困ったときには必ずちょっと気にかけてあげる、そういう大人のつき合いというか、そういうふうなつき合い。それで、あくまでも自分のため。でも、その相手も困ったらもちろん何かしてあげたい。そういう関係性をつくっていくということが、やはり今の私たちには合うのかなと。昔ながらのコミュニティーというのは、やはりなかなか皆さん、反発が多いです。

市村委員 人間味のある防災庁を願って、質問を終わらせていただきます。

 感謝申し上げます。ありがとうございました。

金子委員長 次に、鳩山紀一郎君。

鳩山(紀)委員 おはようございます。国民民主党・無所属クラブの鳩山紀一郎と申します。

 本日は、皆様におかれましては、貴重なお時間をいただきまして、私どものために参考人としてお話をくださいましたこと、改めてお礼を申し上げます。どうもありがとうございます。

 それでは、早速質問をさせていただきたいと思います。

 まず、福和参考人にお伺いしたいと思います。

 先ほども御紹介ありましたが、令和七年の被害想定で、全壊の棟数というものがほとんど変わっていないというお話がございました。なぜこんなに減っていないのかなというのを考えたときに、例えば、今回のシミュレーションを行うときに、きちんと、どれぐらいの建物が耐震性を向上させているかというのを把握できていなかった、あるいは難しかったという側面があるのかなとちょっと思ったんです。

 例えば、民間のそれぞれのお宅がどれぐらい耐震化されているのかというのはきちんと正確に把握することは難しいので、恐らく何らかの割合を掛けているであるとか、公的な施設に関しては一〇〇%把握できるかもしれませんけれども、民間の部分でなかなか難しかったなどの側面もあるのかなとちょっと思ったものですから、そこについてお伺いできればと思います。

福和参考人 御指摘の部分はそのとおりであると思います。

 残念ながら、今の日本の現状は、国は、市町村の情報とか都道府県の情報、特に建物について、詳細に把握しているわけではありません。限られた予算と限られた人数で被害想定というのはやっております。ですから、被害想定のためだけに耐震化の現状を詳細に調べるということは事実上難しいということもあって、被害予測に使っているデータというのは、例えば、総務省が常時行っているような、都道府県からもらってくるようなデータに基づいております。

 これは、必ずしもどこにどれだけの建物があるかというよりは、全体としてこのぐらいの建物があるということをある程度都道府県別、市町村別に見ておりまして、それに対して、人口のデータは比較的詳細にありますから、人口はどのぐらいどこに住んでいるかということを勘案して、どのぐらいの建物がどこにあるんだろうということを見る。それに対して、どのぐらいの揺れがあるから被害がこうなるんだということを試算しています。ですから、本当にそこにそれだけの建物があって、どれだけ耐震化されているかが完全に把握できているわけではありません。

 ただ、概数としては、例えば、耐震化の予算はどのぐらい補助で使っているかというようなことは概算として見ていますから、詳細な、ミクロな部分での精度には問題があるものの、全体としてマクロで見たときの数字の押さえは大きく違っているわけではないだろうと思います。

 今回、被害が大きく減らなかった理由は、実は、データが詳細になってくると、例えば標高のデータなんですが、標高のデータが詳細になってくると、昔は、粗かったデータですと、こことここを結ぶときはこう結んでいたわけです。それが、詳細なデータになると、こういうデータが出てくるわけです。結果として、きちんとデータが取れてくることによって、浸水しやすい場所の面積が増えてしまったんです。結果として、浸水に伴う被害が増大しています。

 耐震化に対しては、耐震化は、進みにくかったとはいっても、ある程度進みましたから、耐震化に伴う建物の揺れの被害は若干減っていますが、残念ながら、津波浸水に伴う被害が増えている。そういうようなことがあって、余り変わっていない。でも、全体としては、家屋の被害はあの程度で、死者が減らなかった一番の理由はやはり家が壊れるからであり、それから、けがをして逃げられない、逃げる意識が足りないというところで、やはり、圧倒的に国民の皆さんにその気になっていただくような、そういうような施策が大事であるというふうに思っています。

 以上です。

鳩山(紀)委員 ありがとうございます。

 今回のシミュレーションで、精度が高まったがゆえにこのような結果になった側面もあるということで理解をいたしました。どうもありがとうございます。

 続いて、福和参考人それから重川参考人にお伺いをさせていただきたいと思うんです。

 住まいの再建は自助が基本で、地震保険の加入率を高める必要があるという一方で、壊れたときに直す費用を捻出するよりも、耐震化をした方が安く済むのではないかというようなお話もありました。

 そこで、これをどういう仕組みでやったらいいのかなというのを考えたときに、例えばですけれども、自治体が地域全体の耐震性向上事業みたいな形の委託事業をやって、それを地域ごとに耐震補強をしてくれる事業者などに委託をして、その地域の耐震性を向上させるというようなこと、そのコストに関してはできるだけ入札によって抑える中で耐震性を向上させていくというような仕組みがあり得るのかななんということを考えてみたんですが、それについて御意見をいただければと思います。

福和参考人 おっしゃるような仕組みは大事だと思っています。

 いきなり全部をやるというのは、今の建設業者の数では無理ですから、まず一歩目の前進として私が大事だと思っていますのは、残念ながら、次の南海トラフ地震で孤立せざるを得ない場所というのはあらかじめ分かっています、これは頑張って調べれば、恐らくこことここは土砂災害とか津波ですぐに支援は無理であろう、それから支援の力も全体としては足りないだろうということも分かりますから、そういう、災害が起きた後では助けにくい場所に関しては、事前に全て、行政が主導で耐震化を進める。それに当たっては、今議員がおっしゃったような仕組みが有効であるというふうに思います。

 残念ですが、我々、限られた力ですから、後ではできないところについては事前に全て投入しておいて、助けなくてもいい場所をつくっておくというふうにしないとこれは無理であるというふうに思います。ですから、家屋の耐震化だけではなくて、エネルギーの自立化あるいは通信の自立化ということも合わせてセットメニューとして、後で助けにくいところについては今議員がおっしゃったとおりのことをやって、建設力をアップさせないと、後で助けられないんです。

 ですから、事前に被害を減らすために耐震化するとともに、後で使える建設の力をアップするためにも、全体として社会が潤うようなことも併せながら進めていくことで、事前と事後の力をバランスをさせて、全体として仕事量を平滑化する、お金の出方も平滑化するというような仕組みが望ましいのではないかと思っています。

重川参考人 御質問された内容は、私もそのとおりだというふうに思っています。

 建物の耐震化は、ちょっと御質問からは外れてしまうかもしれないんですが、実は私は、耐震化のみではやはり駄目だと思っています。例えば液状化に伴う被害とか土砂災害、津波災害、つまり、揺れそのもので住宅が被害を受ける、それが一番多いんですけれども、それ以外のものが付随して大切な住まいを失うという方もたくさんいらっしゃいます。

 そうなってくると、個別の建物だけ堅くするというよりも、例えば、事前に分かっているその土地の条件、例えば液状化しやすいとか、宅地開発するときには、もちろん宅地造成の基準はありますけれども、もうちょっと足下の安全性を、宅地開発あるいは事前に、浦安でも、大変な目に遭われた液状化、広いエリアでありましたけれども、そういうところはやはり、場所がよければ高くてもかなりの値段で売買されるわけですよね。

 ですから、そういうときには、もうちょっと公的に、面的に、そもそも土地の安全性をまず上げるとか、きちんと宅地造成のときに、地震の揺れが加わったときに大丈夫なように、そういう、少し面的に、出すのであれば、あくまでも個人の財産ですけれども、面として公的に支援をして地震時の安全性を高めると同時に、個別の建物は個々の方たちが耐震補強をする。

 住宅というのは、実は非常に使用年数が、地方のすばらしい住宅でない限り短いんですね。二十年、三十年で更新しますし、当然、家族構成が変わってリフォームもします。実は住宅をいじるチャンスというのはたくさんありますし、その世帯の状況によって、どういう形で災害後に住宅再建をするのか、造るのか、借りるのか、あるいは公営住宅、これは本当に千差万別です。

 ですから、一言で、例えば大規模半壊以上はこうだではなく、かなりきめ細かい個々の問題に対応するように、先ほどありましたけれども、情報の提供とか、単にお金を事後に出すだけではなくて、いろいろなものを組み合わせて住まいの安全性を確保するということは非常に重要かなと思います。

鳩山(紀)委員 ありがとうございます。

 今おっしゃいましたとおり、場所を選んで、助けにくい場所に関して、特にそのような、事前に耐震化をとにかく進めるということをやるべきではないかというのは、非常に合理的だというふうに感じましたし、また、当然、地震による被害だけでなく、津波等の被害もあります、液状化等の被害もございますので、そういったものに関しても、これは公的なお金で全体としての強靱化を図っていくということは必要なのかなというふうにお伺いをいたしました。どうもありがとうございます。

 それでは、加藤参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。

 お話の中で、防災もまちづくりということで、防災だけをやるのではなくて、まちづくりの中でいろいろな要素を見つけて、それと組み合わせることによって防災をまちづくりの中に組み込んでいくというような、そういう御発想かと思います。

 その掛け算をすべき対象、町づくりの要素というものが必ずしもあらゆる地域で見つかるかどうか分からないみたいな状況もあると思うんですが、それはどのようにして見つけていけばいいかというところについて、もしアイデアがありましたらお聞かせいただきたいと思います。

加藤参考人 基本的には地域特性に応じてということだと思います。

 ただ、南海トラフ地震をにらむと、共通の課題として、まさに地方創生、過疎化への対策と考えると、やはり交流人口を増やしながら災害にも備えていくというのは共通の基盤としてあるだろうというふうに思います。

 一方で、都市部においては、昨今のスマートシティーとか、あるいはDXとかGXとか、そういったものとの掛け算というのもあり得るかなというふうに思っています。

 まだちょっと研究途上で、アイデアレベルなんですけれども、インフラの従来の復旧の仕方を考えると、数十年前の人口ピークのときのインフラに戻していく、事後ではそういう形にならざるを得ないんですけれども、事前に自立分散型のインフラの種をつくっていくことで、縮小社会に対応できるようなインフラとして復旧できる可能性もある。それがカーボンニュートラルにつながっていくなんというストーリーが描けたりすると非常にすばらしいかなとも思ったりもしております。いろいろ工夫の余地はたくさんあると思います。

 以上です。

鳩山(紀)委員 ありがとうございます。

 いろいろな工夫の仕方は、確かにおっしゃるようにあるかと思います。一方で、どうしても見つからないみたいなこともあるかもしれませんので、そこは、先ほどのお話にもありました、場所を選ぶ、助けにくい場所を事前に助けるというようなところも組み合わせてやっていくのかなというふうに思っている次第です。

 皆さんのお話を総合いたしますと、やはり事前に関しては自助努力を向上していくというところが重要で、それも、自助努力の中には、耐震性を強化していくというところと、避難に対する備えをしていく、いろいろな備蓄品をそろえるとかそういうことだと思いますけれども、こういった自助努力については、これには公的なお金も入れて、いわゆる自助向上のための公助みたいなことを国としてはやっていけばいいのかなというふうに思いましたというのが一つと、それとプラスして、避難所の環境に関しては抜本改善していく、この二本立てが今の日本には必要な要素なのかなというふうにお伺いをした次第です。

 これについての御意見を皆さんにお伺いしようかと思ったところですが、時間も参りましたので、山崎参考人にもしお伺いできればと思いますが、このような形はいかが思いますか。

山崎参考人 特に避難所生活の在り方ということでちょっと言わせていただきたいんですけれども、なかなか、先ほども申し上げましたように、いつまでたっても阪神・淡路大震災のときと風景が変わらないじゃないかとよく言われるんですけれども、この辺り、本当に国民全体で、災害救助法とかあるいは避難生活の在り方がどうあるべきかという議論をやはりやらなきゃいけないと思うんですよね。

 多くの被災者の方は、災害救助の仕組みとか法律がよく分からないまま避難所に入ってしまって、そのまま翻弄されていくというところがあって、その辺り、民主主義の国なので、避難所の在り方自体も自分たちで決めていかなきゃいけないわけです。これまでそういうことが起こってしまった原因というのは、やはり、災害救助とか避難生活というのを他人事で見てしまって、無関心というのがすごく原因だと思います。

 今後は、そういった避難所生活の在り方についても国会で議論していただいて、国民の関心を集めて、よりよい避難生活というのを自分たちでかち取っていく、そういう姿勢というのが大事なんじゃないかと思いました。

 以上です。

鳩山(紀)委員 ありがとうございました。

 避難所生活の抜本改善などについても積極的に取り組んでまいりたいと思います。

 以上で終わります。どうもありがとうございました。

金子委員長 次に、西園勝秀君。

西園委員 公明党の西園勝秀です。

 福和先生、山崎先生、重川先生、加藤先生、本日は、それぞれの御専門のお立場から大変示唆に富むお話、誠にありがとうございました。

 四人の先生方それぞれにお伺いしたいと思います。

 防災庁が令和八年度からできるということで、現在、赤澤大臣の下でいろいろな準備が行われているところでございます。

 本日、先生方それぞれのお立場でお話をいただきましたが、まさに今、防災庁設置準備室が議論をしているときに、これだけはしっかりやっておいてくれとか、あるいは、令和八年度から防災庁が始まりますので、防災庁ができたらまずこのことをやるべきだという、何かそういう御示唆を御指導いただければというふうに存じます。

 それぞれ、福和参考人からよろしくお願いいたします。

福和参考人 福和でございます。

 今、防災庁の議論はまさにやっているところで、報告書がそのうち出てくると思いますので余り詳細なことはしゃべりにくいんですけれども、基本的には、先ほど申し上げましたように、日頃起きている災害に対しては、一人も命を失わないように頑張るということをしなくちゃいけない。先ほど来出てきていますように、災害後に対してきちんと対処できる仕組みをつくる、これは可及的速やかにやるべきだと思います。これは、被害をゼロにするというか、死者をゼロにするためのことであります。

 一方で、我が国としては、国家存続ということがもう一つ大事であります。そのためには、何としても南海トラフ巨大地震や首都直下地震のような超巨大災害を乗り越える準備をしないといけません。残念ながら、これは今まではきちんと本気の議論ができていなかったと思います。これは今までの施策では成り立たない、抜本的な検討の在り方が必要なので、これを何としてもやらないといけないと思います。

 ですから、前者に関しては、今持っている力を最大限発揮する仕組みづくり、今のところ、法理体系もそれから防災施策も余りにもいろいろ散らばり過ぎているから、これがちゃんと効率よく総力が結集できるような形に見直していくということが必要ですし、本当にでかい災害に対して、一体この国が持てる力はどれだけで、それに対してどういうふうにすることで国そのものの存続や社会そのものの存続をするか、ここはまだ分かっていることじゃないので、それを本気で考える。

 考えるためには、考えることができる人育てがどうしても必要であります。残念ながら、非常に言いにくいんですが、現状、国にいらっしゃる防災の専門性の高い官僚の方々は非常に少ないです。それは、内閣府防災のようなところを経験されることで徐々にそういう人が育成されていっておりますが、何としても人数が圧倒的に少ないので、いきなり体制を強化するといっても、その中にお呼びできる人がほとんどいないんです。これを地方自治体から持ってくると地方自治体が更に弱っていくということなので、全体としての我が国の防災を支える人育て、ここを徹底的にやらないといけないと思っています。

 以上でございます。

山崎参考人 四人もとなると話がかぶってしまうのでちょっと恐縮なんですけれども、防災庁がつくられて、じゃ、何が大事かというと、やはり人が大事でして、専門的知識を持ったエキスパートによる実践というのが求められると思います。ですから、防災担当という肩書の素人がしてもらったら困るわけでして、この辺りの人材の確保とか育成というのは特に取り組んでいただきたいと思います。そういった専門的な知見に基づいて、指示、調整であるとかサポートというものが実施される。

 あとは、そういう防災の担い手の育成ということで、例えば自治大学校のような、防災大学校のようなものをつくって育成していくとか、そういった教育システムというもの、担い手を育てるシステムというものの整備も重要じゃないかなと思います。

 以上です。

重川参考人 私も、実は人の問題を一番懸念しています。やるべきことというのはもう十分に議論され、間違ったことは何も書かれていないんですが、それの体制。

 恐らく、新しい省庁ですから、プロパーの職員はまだゼロですよね。そうすると、各省庁からの出向、今の内閣府防災と同じ形になると思います。これは国だけではなく、都道府県、市町村も、実は、建築職とか土木職のように、防災職で人を採用しているところは、どこかの県で始める、始めたというのは一例ぐらいあるんですが、ありません。つまり、実は昨日まで教育委員会にいて今日から防災課長ですというのが、本当にほとんどなんですね。そうなってくると、防災庁という、今まで以上に大きな権限を、命と財産を守るための権限を与える役所に、今までと同じ、あるいはそれよりももっと弱い専門性の人しか来ないということになると、やはり、せっかく役所をつくっても十分に機能が発揮できない。ということで、そこが一点です。

 もう一点は、実は、東日本大震災の後、復興庁という役所がつくられました。時限ですが、もちろんプロパーの人なんかおらず、各省庁から人が出てきたんですね。でも、あのときには、やはり大震災という大事態を前に、復興庁に来られる職員の方皆さん優秀で、しかもやりがいがある。すごく、国家公務員のキャリアでもこんなに一生懸命熱くなるんだと思うぐらい、皆さん本当に一生懸命やられた。今までの中で一番やりがいがあった。

 防災庁も、災害が起きると、やはり皆さんスイッチが入るんです。なんですが、災害がない時期の方が実は多いんですね。その時期にどうやってモチベーションを持って働けるか。やはり、そうなってくると、出向元の方を見ちゃうわけですよ、自分の人事に関わる。

 ということで、仕組みとしてそこら辺をきちっとしておかないと、何をやるにしても間違ったことはないです、ただ、本当に国の省庁をつくっただけのことはあったという動きができるためには、その人事の体制を抜本的にやはり考える。本気でやるならプロパーの職員をちゃんと雇っていく、育てていく、その中でキャリアアップしていく道がある、これがなければ、箱はできたけれどもになってしまうと思います。

加藤参考人 三点挙げたいと思います。

 一つ目が、今、防災に関しては役割分担がかなりきちんとできていますので、ある意味、部分最適はかなりきちんとできるようになっている。ところが、それを組み合わせたら全体最適になっているかというと、なっていない。防災庁は、部分最適を集めて全体最適に持っていくというのが、一つ大きなやるべきことだと思っています。

 それから二点目は、やはり時代の変化への対応かなと思っています。

 災害救助法の原型は昭和二十二年ですね。災対法も一九六一年。管轄は総理府、国土庁、内閣府、今の体制になったのが二〇〇一年です。過去二十年を振り返ると、やはり時代観が相当変わっている。これからの時代を見据えたときに、どういう形が望ましいのかということを改めて考えるいい機会だというふうに位置づけています。

 それから三つ目が、これは新しい組織をつくりますので、何かを変えるわけですね、抜本的に。そうすると、メリットもあるけれどもデメリットもあるので、デメリット、メリットというものをきちんと同定した上で、できる限りメリットは大きくデメリットは小さくしていく、そういった峻別をしていくことが、やはりまずやるべきことかなというふうに思います。

 以上です。

西園委員 貴重な御指摘、ありがとうございます。

 私も、議員になる前は国土交通省に二十八年勤めて、復興庁にも出向しておりましたので、今の先生方の御指摘、本当によく分かります。内閣府防災もまさに出向者の固まりで二年とかで異動してしまう、そうなるとノウハウが蓄積されず、やはり今、防災のプロフェッショナルということで育っていかないということかと思います。

 先ほど防災大学校みたいな話もありましたし、また、キャリアアップの評価制度というんですか、これは大変示唆に富むお話かなと思いますので、今日も恐らく国会中継を防災庁設置準備室は聞かれていると思いますので、是非これは取り組んでいただければなというふうに思います。

 もう時間がないので、福和参考人に。

 先ほどのプレゼンの中でもお話があったんですけれども、ミャンマーの中部で地震が起きましたということで、これはマグニチュード七・七で、そこから千キロ離れたタイのバンコクで要は建物が倒壊した。これは、いわゆる地震波の周期と建物の固有周期が共振した、そういう現象だということでお話がありました。

 東京というのは、まさに埋立地が地盤であって、そこにいわゆる超高層ビルが乱立している状況で、今先生のお話を伺ったら、本当に東京の建物は果たして震度七とかの地震にも耐え得るんだろうかという、すごく不安を持たれている方も多分多いと思うんですけれども、今の基準で果たして大丈夫なんでしょうかという、ちょっと素朴な質問をさせていただければと存じます。

福和参考人 言いにくいんですけれども、私は高層ビルは余り好きじゃありません、私は建築屋ですから。なぜかというと、あくまでも最低基準だからです。建築基準法第一条に明確に、構造に関して最低の基準しか定めないと書いているわけです。

 これはなぜかというと、我が国は、最低限の生存権は保障しつつ、一方で財産権は侵してはならない国ですから、民間の人たちが造る建物に関しては、行政が造るインフラとは違って、最低のことしか記述できていないんです。

 ゆえに、まずは絶対に安全ということはなくて、元々、一般の建物も超高層の建物も、震度七という揺れに対して安全性を確認しているわけではありません。あくまでも過去の震災の経験の中で現状があるというふうに思ってください。

 戸建て住宅の場合は、一般に、きちんと構造計算をしません。それをやってしまうと、大変な設計費がかかります。一方で、膨大な震害経験があります。ですから、たくさんの経験をする中で、どのぐらい壁を入れておけば家が壊れないかということを基準として定めています。ですから、計算はしないけれども、それなりにたくさんの壁を入れていて、その壁を入れている二〇〇〇年以降の建物については、能登でも熊本でもほとんど壊れていないんです。これは災害被害に基づいてちゃんと検証された設計になります。

 一方で、ビルに関しては、残念ながら、そんなに震害経験が多くありません。一方で、ビルというのはちゃんと構造計算しています。ちゃんと構造計算するときに、どういう建物を造るかは、それは発注者の意向に沿います。発注者がどういう意識を持っているかです。発注者が何としても安全な建物という価値観を持っている場合には、設計者は本気になって安全な建物を造りますが、発注者が、やはり安い方がいいな、便利な場所がいいな、それから見栄えがいい方がいいぞ、広い建物がいいぞ、設備が整っていた方がいいぞとやると、場合によっては、いわゆるバリューエンジニアリングになります。バリューエンジニアリングの中にバリューが入っていないとすると、安全性は法基準をぎりぎりで満足するというふうに造っている建物も、当然ですがあるわけです。

 これは、ある種経済行為として行われているのが民間の建物でありますから、その延長線上で、今の質問に関しては、それぞれの人たちが想像するということが大事であります。これは、安全、危険ということは相対的な問題である。

 基本的に、今のほとんどの建物の耐震設計は、建物の揺れがおおむね同じだと思って設計しています。建物の揺れが同じであるということは、揺れやすい建物は小さな揺れで壊れるんです。揺れやすい地盤は強く揺れますから、やはりよく壊れるんです。ですから、被害想定というのは建築設計とは違って、被害想定はそれを忠実にやりますから、残念ながら、軟弱地盤のところのそれなりの高さの建物は、よく壊れるような被害想定になっています。

 ですが、一方で、建築設計というのはそういう考え方では行われていないので、ここは国として、我々の国の安全性のレベルはどのぐらいにするべきだろう、特に、軟弱地盤に高い建物がたくさんある東京のようなところの安全性というのはどういうふうに構築していくべきだろうということを考えるべきだと思います。

 最後に、超高層ビルだけは、一般の建物と違って、特別な設計方法を使っています。揺れをある程度評価しながら、その揺れに対して応答計算をして計算をしていますから、最も科学技術を入れています。科学技術を入れるときは、科学技術を使う人の価値観によって、コストカット側に持っていくか、安全性向上の側に持っていくか、これは当然ですが左右されますから、そのことも含めて、国民の皆さん、産業界の皆さん全体の防災の意識を高めることが極めて重要で、意識が高くなってくると、まずは安全が大事だよというような建物を増やす方向に行きます。

 最後に、建物の基準というのは時々変わりますから、残念ながら、今の基準を満足していない、少し安全性が気になる問題の建物はたくさん残っています。超高層ビルに関してはその問題は長周期地震動であって、昔の超高層ビルは、長周期地震動に関して十分に検討をせずに造られています。

 ですから、望ましいのは、過去の長周期地震動を余り考慮せずに造った超高層ビルについて、できれば国で支援をする形で、それの評価を今の技術で行い、それを直すことに対してちゃんと一般の建物と同様に支援をするというような仕組みをつくることで、特に、重要なものがたくさん入っている超高層ビルについては、確実に安全である町をつくる方がいいと思います。

 もしも日本の国で一本でも超高層ビルに変なことがあったとしたら、日本の科学技術に対する信頼は失墜いたしますから、ここは是非、高層ビルとか、もう一つは大型の石油タンクですけれども、長周期の揺れによって問題となるのは極めて重要なものばかりですから、ここは何かちゃんと考えてもいいのかもしれません。これは是非国会の方で主導していただければありがたいと思っております。

 以上です。

西園委員 ありがとうございます。

 長周期地震動の問題、しっかりこれは国が対応すべきだと思います。

 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

金子委員長 次に、櫛渕万里君。

櫛渕委員 れいわ新選組の櫛渕万里です。

 たった今の福和参考人のお話は、私は東京の議員ですので、大変興味深く、また勉強になりました。むしろ、委員長、首都直下型地震をテーマにした参考人質疑と委員会だけでも開いてもいいのではないかと思わせられました。ありがとうございました。

 また、今日、ほかの参考人の皆様もありがとうございます。

 まず、全ての参考人の方にお伺いをいたします。

 今お手元に、被災者生活再建支援法への修正案概要という資料をお配りいたしました。野党が昨年提出した被災者生活再建支援法という議員立法がありますが、それについて、今、国会で審議が行われる見込みという流れを聞いていたんですけれども、なかなか日程上厳しいという話も漏れ聞こえてきております。一方、れいわ新選組としてその議員立法に対する考え方をまとめたのが、この資料でございます。

 山本太郎代表は、能登半島地震始め、各地の被災地にも何度も足を運び、また私自身も、議員になる前、NGOで被災者の支援や海外での災害対応に携わってまいりました。議員になってからも度々現地を訪れておりますが、阪神・淡路大震災のときの現行法のままでは、その後、二一年にも一度改正されていますけれども、支援金が余りにもやはり少ない、生活の再建ができない、さらに、今回、野党の議員立法でも対策が不十分というふうに我々は考えております。

 そう判断してのこの修正案の考え方のまとめでありますが、れいわ新選組として議員立法を出せればベストなんですけれども、現状、まだ法案提出をする人数に至っておりませんので、修正案という形で提案しようとしたものが、この資料でございます。

 なお、議員立法の質疑について早期に行うよう、委員長、お取り計らいを重ねてお願い申し上げます。

 さて、この修正案の内容、大きく三つの柱から成っております。

 最初は、中規模半壊以上の被災住宅の再建費用は実費を勘案して国によって支給できるよう制度改正を早期に検討することです。本来、再建費用は、現行法のように一律ではなく、実費ベースで考えるべきだという考え方です。

 次は、住宅再建方法によらず、一律六百万円を支給するという内容です。実費ベースが実現するまでは一律の給付となりますけれども、現行法の最大三百万円の額が少な過ぎることに加えて、加算支援金のように住宅の再建方法によって支給に差があるのも煩雑過ぎます。基礎支援金と加算支援金を統一することを盛り込んでいます。また、単身世帯が減額されるのも不合理なので、削除すべきです。

 そして三点目は、中規模半壊未満の被災世帯にも一律三百万円の支援金を支給する規定です。中規模半壊未満と判定されても、屋根が壊れていて雨漏りするなど、実際には家に住めないことが少なくありません。

 この六百万円、そして三百万円は、被災して様々な費用がかかり、収入も減収してしまうことが多い被災者に対して、まず一年間、地元での生活再建にお金の心配をせずに取り組める資金といった意味合いです。繰り返しますが、本来は、住宅再建費用については実費ベースで支援すべきです。

 以上が、被災者生活再建支援法改正案修正案の内容となります。

 今後議員立法が質疑される場合に備えて先生方からそれぞれ御意見を頂戴したいと思いますが、いかがでしょうか。

福和参考人 このようなことが実現できれば被災者は大変ありがたいだろうと思いますけれども、これができる災害規模というのは、恐らく限定的なものしかできないと思われます。

 私たちが考えますのは、やはり、起きた後で幾らお金があったとしても、そのお金を使って再建をする人もいないし、人というのは、国として、再建ができる工事業者の数それから資機材の数、そういったものに限界があります。ですから、このお金が出せるのであれば、被害を減らす方向にお金を是非使いたいというふうに私は思っています。

 まずは、この実費を勘案するということなんですが、実は、実費を出すためには、専門家がいないと実費が出せないんです。見積りのお金を出さないといけない。これはとても今の実情では、非常に小規模な災害だったらいいんですけれども、私たちがこれから何とかしないといけないと思っている大規模災害では非常に難しいと思います。

 それから、現状、再建に関わる費用は幾つかの法体系で複数出ていますから、もしもこれを全部やるんだとしたら、ほかの法律も見ながら、全体としてそごがない形で組み立てる必要があると思いますから、一度、救助法とかも含めながら見た上で、全体としてそごがない形にしていただけるとよいのではないかというふうに今は思ってきておりました。

 私自身としては、できれば、壊れた後のことを考えるよりも、壊れないように全力を尽くし、みんなが生活をし続けられ、そして仕事もし続けられるような社会になるように知恵を出すところも一緒になって考えていただけるとうれしいなと思ったという印象でございます。

山崎参考人 修正案の方を拝見いたしましたけれども、確かに、半壊とか中規模半壊とかでも、実際支給される額以上にはるかに高額の費用がかかったりする、そういう案件というのはよく見られますので、それでいうと、実費を換算した上での、実際に必要な、修理にかかった費用とか、それを反映しての支給というのは、制度設計としてはあり得るんじゃないかなと思っています。

 こういうどこまで公助で出せるかという話でやはり念頭に置いておかなきゃいけないのは、他方、そういう損害に関しては保険で賄うというのが基本なので、保険に入っている、入っていないという話で、例えば、保険に入っていないから困っているから支援金をより高くしよう、そういうアイデアというのはどうかなというのがあって、その辺り、公助の制度設計については、保険制度との絡み合いをある程度説明しながら、支援金の金額の在り方とかを提唱していただければと思います。

 あと、一律三百万円という話で伺ったのは、生活にも困っているだろうというお話を伺っているので、そうすると、実は、被災者生活再建支援法って看板に偽りありというところがありまして、これは住宅再建なんですよね。だから、本当に収入が少なくなったとか生活に困ったというところについての支援というのがないわけでして、その辺り、一緒の制度で一律三百万円というよりは、実際にどれだけ生活に困っているのかに対する支援金とか支援制度の設計をしていただければと思っております。

 以上です。

重川参考人 私も山崎参考人と同じ意見です。

 まず、被災者生活再建支援法が、結果的には住宅の再建の方法により金額が決まっているんですけれども、あくまでも見舞金なんだという性格なんですね。

 そんな中で、今までずっと言われてきたのは、生活再建支援法、それから救助法の住宅の応急修理、さらに、さっきおっしゃった、住宅だけじゃない、仕事が大事だよと。実は、就労の方というのは非常に手薄いんですね。なぜか、今の日本の被災者支援というのは、現に住んでいた家がどれぐらい壊れたかによって、これだけと。

 そうじゃなくて、最初の発表のとき申し上げたんですけれども、じゃ、これだけ以上壊れた人が一律、全員それを欲しているか。それは打ち出の小づちがあれば、お金がもらえるのを嫌という人はいないです。みんな喜びます。でも、本当に貴重な税金を使ってまく必要があるんだろうかといったときに、やはり、一律、住んでいた家の壊れ方で何百万というお金を渡してしまうのは、私は、それはその人の自立再建を助長する場合もあるかもしれませんが、逆にそれにつながらないことも多いと思っています。現に、もらったお金が振り込まれたらそっくりそのままパチンコ屋さんに行ったり飲みに行ったりというのはいっぱい見てきました。

 ですから、それだけのお金を渡すのであるならば、本当に、住まいの再建、あるいはそれに必要な仕事、なりわいの再建、そっちと、やはり少し法律を見直して、総合的に、住まいとなりわい、暮らしをどう立て直していくか、そこに公的資金をどう投入するかということをもう一度考え直さないと、今までその場限りで支援法だけがちょこちょこちょこちょこ変えられてきたんですが、それではもう対応してはいけないんじゃないかというふうに思っています。

加藤参考人 一つ目が、やはり支援の目的というか理念をどう考えるか。

 災害、そして復興には社会階層性というのがあると言われていて、災害の被害の受け方についても、あと再建に関しても、格差が広がっていくんですよね。ですから、災害、それから再建、復興という時間経過の中で、セーフティーネットが必要な層が表れてくる、そのセーフティーネットとしてこの支援があるんだと考えるのか、あるいは、被災者の生活を元に戻すことをある意味公が保障するのか、これは大分考え方が違うと思うんですね。

 ですから、今回の被災者生活再建法というのがどちらのスタンスにあるのか。過去を振り返ってみると、様々改正されて、簡素化されたり増額されたりしてきているんですけれども、そこの辺りがやや何かはっきりしないなという感じを持っています。

 仮に、保障するんだというところになってしまうと、むしろ事前対策の促進の阻害にもなるような気がするんですね。ですから、最終的にでき上がる、あるべき支援の方策というのは、事前の防災、減災から復興まで全てにらんだときに、やはり事前対策の促進につながるような仕掛けになっていることが望ましいかなという気がいたしました。

 最後に、これは一国民、あるいは一被災者になったとしたときに感じることだと思っているんですけれども、事後にお金を使うときに、やはり持続性の高い地域社会として復興していくためにお金を使いたいなというふうに私自身は感じています。

 以上です。

櫛渕委員 ありがとうございます。

 ほかにも三つ、四つ質問を用意していたんですが、これだけであと二分ぐらいになってしまったんですけれども、大変重要な点、それぞれ皆さんからいただいたと思います。

 今回、我々の修正案の目的は、れいわ新選組は防災省の設置も公約に掲げているんですが、やはり被災者の生活再建を国が面倒を見る、しっかり責任を最後まで持つんだと。それは非常時も平時もなんです。ですから、事前の対策も含めてしっかり公助を投入し、そして災害時、あったとしても、何があっても心配するなと言えるぐらい、被災者の皆さんに、人権保障も含めて、国が生活再建、責任を持つんだという理念でこの修正案も出させていただいております。

 今日、そういった意味では、住まいは権利ですから、しかも六百万円上限で、しかも一千万円以上絶対かかるわけですので、先ほどの、就労とかほかの生活支援が薄いというのもおっしゃるとおりなんですよ。そのためにも、まずは住まいは権利を基本に置いた上で、この住宅の再建ということをベースに置いた形で、更にほかの法制度の見直しということにも是非取り組んでいきたい、このように思っています。

 最後、あと一分なので、一つだけ。

金子委員長 いや、もう終了しました。

櫛渕委員 あと一分ありませんか。分かりました。

 最後、じゃ、一言だけ山崎参考人に。救助法の見直しについて、支援をする人に対する救助法の拠出というのが災害救助法でまだ認められていないという点について、被災者を助けるために救助する人への救助法の拠出について、一言お願いできませんでしょうか。

金子委員長 申合せの時間が来ておりますので、簡潔にお願いしたいと思います。

山崎参考人 やはり支援する人に対しての支援というのも大事なので、そういうものも救助法から拠出できるような制度設計が望ましいかと思います。

 以上です。

櫛渕委員 ありがとうございました。

金子委員長 次に、堀川あきこ君。

堀川委員 日本共産党の堀川あきこです。

 今日は、四人の参考人の方々、貴重なお時間をありがとうございます。

 先ほど来から、本当に重要な御意見をお伺いしているというふうにお聞きをしておりました。最初の方で自助、共助、公助という話がありましたけれども、やはり、自助を促す、その公助を担うのが政治の役割だというふうに私は認識しております。

 最初に、山崎参考人と重川参考人にお話をお聞きしたいというふうに思うんですけれども、山崎参考人、被災者総合支援法の提案をしていただいて、公助の力が本当に求められているなというふうに感じました。重川参考人、自助できる人はというふうなお話がありながらも、やはり支援を必要としている人にはということで、仙台市の事例を大変興味深く聞かせていただきました。

 それぞれ指摘されている課題について、やはり、誰がその解決に当たるのか、担うのかということが共通しているのかなというふうに思っています。この間の災害でもその問題は課題ではなかったのかなというふうに思っています。

 今回、災対法の改正で、ボランティア団体との連携を強めるというふうなことはあるんですけれども、やはり、応急の復旧期だけではなくて、復興期も継続的な支援というのは必要だというふうに思います。つまり、被災コミュニティーでの担い手の確保というのが課題だというふうに思っているわけなんですけれども、この課題について、お二人のそれぞれのお考えをお聞きしたいということと、併せて、自治体の職員の現状についても、お考えがあればお聞かせいただきたいというふうに思っています。山崎参考人からお願いします。

山崎参考人 まず、国家の責任ということで、最終的にはそういう被災者支援とか生活保障というのがなされなければならないということなんですけれども、実際の被災者支援となると、行政はそういう点では素人なので、どちらかというと、民間の支援団体とか、民間のそういう力を用いてそういう支援を進めていくということが大事かと思います。

 なので、先ほどもれいわ新選組の方がおっしゃっていただきましたけれども、救助法の中で、そういう支援するところに対してもやはりお金というのを支給するということは重要なんじゃないかなという話です。

 あと、コミュニティーなんですけれども、コミュニティーというものの支援というのもやはり大事だというところがありまして、総合支援法の方でもコミュニティー再生支援プログラムというのを一応設けていまして、やはりコミュニティーの回復というのも被災者支援に重要なんじゃないかなというふうにちょっと位置づけております。

 以上です。

重川参考人 今委員御指摘があったように、高齢化が進んでいきまして、いわゆる社会的な弱者という方、発災時あるいは発災前から、住んでいる地域のコミュニティーでの守りというのは物すごく重要になってくると思います。ただし、要配慮者も、実は自分でできる自助を果たす必要があると思っているんですね。

 例えば、私ごとで恐縮ですけれども、我が家には要介護四の親が在宅で暮らしておりまして、そうなってくると、個人情報なんて言っていられない。やはり、誰もいないときに何かあったらということで、積極的に周囲の方にお願いしたり、あるいは区役所から調査が来たらちゃんと情報提供したり、そういう自助努力をして、自らもコミュニティーを形成していく。それが、実際災害が起こったときにもいろいろなつながりとして役に立つんじゃないか。

 コミュニティーというのは一方的に与えられるものではなくて、弱者は必ず助けられるわけではなく、そういう人と触れ合って、お互い元気をもらったり学んだりする子供もいるわけです。だから、常に、守られる人、守る人、弱者と健常者ではなくて、対等に補える、それは平常時、災害時共にあると思っています。そういう社会を目指すべきだと思っています。ちょっと時間はかかるかもしれないですけれども。

 あともう一点、行政についての実態なんですが、実はどんどん定員が削減されています。

 そもそも役所というのは、平常業務をこなすために雇われている人たちです。災害時というのは、平常業務ではないものが平常業務に加えて大量に加わってきます。ということで、膨大な仕事量が増える。それから、被災地では五年、十年とそれが続いていく。なのに、役所の人というのは、皆さんおっしゃるんですが、怒られることはあっても、何をやっても褒められたことがないとおっしゃるんですね。例えば、被災者からありがとうと言われただけで、彼らはもう涙が出るぐらい喜ぶんです。すごくやる気になる。

 だから、やはりここも、役所と市民、行政と被災者ではなくて、お互いしんどい思いをしているんだから、常にお互い感謝の気持ちを持ってやっていけば、行政の人だってもっとパワーを発揮できる、よりよいサービスをしてくれることができる。いつでも批判をし合うではなく、そういう関係をつくっていくことがやはり大規模災害の長丁場をベストに乗り切るためには必要かなと思っています。

堀川委員 そのためにも、やはりふだんから自治体職員の人員の確保というのが必要じゃないかなというふうに思いました。

 続いて、福和参考人にお伺いをしたいというふうに思うんですけれども、福和参考人は防災庁設置準備アドバイザー会議の主査を務めておられるということで、この間、防災庁の設置に向けた準備会議でいろいろ議論をされているというふうに思うんですけれども、今もありましたような、能登でも、自治体の職員自身が被災をして、なかなか対応が困難になっているというふうな課題がある。

 被災地自身のこの担い手の課題について、防災庁設置に向けてどのような議論がされているのか。防災庁の、国の方の人を増やすというお話は存じ上げているんですけれども、現場の方の担い手の確保というところでどんな議論がされているのか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。

福和参考人 もしも可能であれば地方自治体の防災関係の職員を増やしてほしい、これは誰でもが思うことであります。ですが、現状の全体としての財政状況の中でそれがすぐにかなわないとすると、地域にある資源を最大限活用するということが何よりも必要になります。地域には、行政職員だけじゃなくて、そこに暮らす人たちがたくさんいます。産官学民の力をとにかく結集して、地域としての力を少しでも高めるということが何よりも必要です。

 ですが、それをするためには、地域に人がいなければ無理なんです。残念ながら、例えば奥能登は、最大時の人口に比べて四割まで減ってしまいました。ですから、若い人がいません。ということは、こういう人たちが戻ってくるようにしないといけません。

 ですから、防災の問題というのは、防災だけじゃなくて、地域そのものの力を上げていくということと当然セットになります。

 じゃ、その人たちがすぐに戻ってくれるかというと、なかなか難しいから、国土形成計画の中では、二地域居住のような形で交流人口を増やして、都会の若い人たちの力が地域にも戻るようにしよう。ということは、これは、地域での力を結集することを介して、都会の人たちが地域を助けるという仕組みにつながっていきます。

 さらに、もしも可能であれば、私自身は、できれば、防災ふるさと納税とかあるいは耐震ふるさと納税とか。今は返礼品のために何かふるさと納税をしていますけれども、そうではなくて、自分が生まれ育ったふるさとの安全性向上のためにふるさと納税ができるようになれば、これは、大都市に出てきた人たちの力を、平時からお金の面でもサポートできるようになると思うんです。

 耐震化というのは壊れるものを減らす、防災ふるさと納税というのは、ひょっとしたら、防災担当職員を増やして、地域の防災力を向上させるということにつながるかもしれません。ただ、行政職員を増やすのが本当にいいのかどうか、ここは悩ましくて、地域の力を、地域の人たちの力を引き出すという仕事の方がより大事で、みんなの力をどうやって引き出して地域力をアップするか、そういうような組織体を各地域につくっていきましょうよ、そういうようなことができれば、結果として地域の担い手が増えていくのではないかと思います。

 要は、地域にみんなが力を合わせることができるような場づくりをして、それをうまく調整できる、コーディネートできるような人材を探していくということができればまだ何とかなると思います。まだ今は、ぎりぎりですが、日本に力が多少は残っています。多少この力が残っている段階であらゆることをちゃんと直しておかないと、これから人口が減っていくので、今がラストチャンスだと思って今のようなことができればいいなと思っております。

堀川委員 ありがとうございます。

 続いて、山崎参考人にお伺いしたいと思うんですけれども、実は、ちょっと先日、能登に行ってきまして、珠洲市の副市長さんにお話をお聞きしました。そのお話の中で、今後の災害公営住宅についても伺ったんですけれども、様々今計画が進められておりまして、公営住宅の建設に当たって、やはり被災者の方々から、三年後の家賃の値上がりというのをすごく不安に思っているというふうな声を聞いておられるということで、珠洲市は市営の賃貸住宅の建設というのも視野に入れているというふうなお話でした。高齢の方はもちろんなんですけれども、やはり仕事の見通しがつかない現役世代の方にとっての選択肢を増やすことを目指されているというふうなお話だったんですね。

 先ほど山崎さんが御提案された総合支援法の中での、様々、生活再建の中での住宅再建というふうな視点だったかと思いますけれども、住まいの再建に関しての山崎参考人のお考えについて、ちょっとお伺いをしたいというふうに思います。

山崎参考人 住まいの再建ということなんですけれども、被災者個人のレベルでいうと、年齢であるとか、収入であるとか、保険に入っていたとか入っていなかったとか、そういう事情に応じて今後の住まいの在り方というのはやはり左右されるのかなと思います。

 今、災害公営住宅のお話なんですけれども、三年後になったらひょっとしたら家賃が物すごく上がるかもしれないということで不安だということなんですけれども、先ほども、被災者の生活再建の部分とか収入減についてのお話をしたんですけれども、日本のふだんからの社会保障とか社会福祉システムがちょっと貧弱過ぎまして、災害が起こったときでもそういう貧弱なシステムの下でしか救済がされないので、だから本当に、三年後の姿となると、普通は平常時の社会保障とか社会福祉制度につなげていって何とか進んでいくとかやっていくということが期待されるんですけれども、そういった平常時の社会福祉とか社会保障というのがいまいち充実していないというところがありますので、こういう被災者支援というのを考える際にも、平常時の社会福祉とか社会保障システムが果たして今いいのかということも含めて議論していただきたいと思います。

 以上です。

堀川委員 ありがとうございます。

 最後に、加藤参考人にお聞きしたいと思います。

 事前にいただいた資料の中で、事前復興計画の作成について重要だというふうに御指摘があるんですけれども、実際に作ってみると、災害時の復興課題や弱点が浮き彫りになり、事前に検討すべき問題や弱点が明らかになる意義があるというふうに加藤参考人は述べられているんですけれども、この事前復興計画作り、なかなか自治体の中で進んでいかないという御事情があるみたいなんですけれども、今把握されている範囲で結構ですので、今現在で見えている課題や弱点があるというふうなことで指摘されているんですけれども、その中身について、どのような傾向があるのか、ちょっとお聞かせいただきたいというふうに思います。

加藤参考人 事前復興の取組は徐々に進みつつある段階で、まだ全ての自治体が取り組んでいるという状況にはないというふうに思っています。

 その理由は、特に中規模、小規模な自治体においては、ほかにやるべき仕事があって、優先順位としてはかなり後ろの方に持っていかれているということなんですが、冒頭のプレゼンでもお話ししたとおり、復興できないという致命的な状況があり得るので、やはり優先順位を高めていく必要があるというふうに思っています。

 最初のプレゼンのこの絵にあるとおり、概念的にはこういうことで、いろいろな落とし穴がそれぞれの自治体にあり得るんですけれども、それをやはり発見することが、漫然と考えていては見えてこない。そうすると、一度被災したつもりで復興計画を作ってみるという経験をそれぞれの自治体でやってみると、そのプロセスの中でボトルネックとなるような弱点が見えてくる、課題が見えれば次に解決していこうかというモチベーションが高まっていきますので、事前復興としてのレベルが順次高まっていくかなということを今期待しております。

 以上です。

堀川委員 済みません、終わります。ありがとうございました。

金子委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。

 この際、参考人各位に一言御礼申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきました。誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 次回は、来る三十日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十七分散会


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