昭和二十三年制定の旧優生保護法に基づき、あるいはその存在を背景として、多くの方々が、優生上の見地から不良な子孫の出生を防止するという誤った目的の下、特定の疾病や障害を有すること等を理由に生殖を不能にする手術や放射線の照射あるいは人工妊娠中絶を受けることを強いられて、子を生み育てるか否かについて自ら意思決定をする機会を奪われ、これにより耐え難い苦痛と苦難を受けてきた。
特定疾病等を理由に生殖を不能にする手術や放射線の照射を受けることを強いられたことに関しては、平成三十一年に「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」が制定されたが、同法はこれを強いられた方々に対してその被った苦痛を慰謝するものであり、国に損害賠償責任があることを前提とするものではなかった。また、特定疾病等を理由に人工妊娠中絶を受けることを強いられたことに関しては、これまで謝罪も慰謝も行われてこなかった。
しかしながら、去る七月三日の最高裁判所の大法廷判決において、特定疾病等に係る方々を対象者とする生殖を不能にする手術について定めた旧優生保護法の規定は日本国憲法第十三条及び第十四条第一項に違反するものであり、当該規定に係る国会議員の立法行為は違法であると判断され、国の損害賠償責任が認められた。
本院は、この最高裁判所の大法廷判決を真摯に受け止め、特定疾病等に係る方々を差別し、特定疾病等を理由に生殖を不能にする手術を強制してきたことに関し、日本国憲法に違反する規定の立法行為を行い及びこれを執行させるとともに、都道府県優生保護審査会の審査を要件とする生殖を不能にする手術を行う際には身体の拘束や欺罔等の手段を用いることも許される場合がある旨の通知を発出するなどして優生思想に基づく誤った施策を推進させたことについて、悔悟と反省の念を込めて深刻にその責任を認めるとともに、心から深く謝罪する。また、これらの方々が特定疾病等を理由に人工妊娠中絶を受けることを強いられたことについても、心から深く謝罪する。
本院は、被害を受けた方々の名誉と尊厳が重んぜられるようにするとともに、このような事態を二度と繰り返すことのないよう、これらの方々の被害の回復を図るための立法措置を速やかに講じていく。そして、優生思想に基づく偏見と差別を含めておよそ疾病や障害を有する方々に対するあらゆる偏見と差別を根絶し、全ての個人が疾病や障害の有無によって分け隔てられることなく尊厳が尊重される社会を実現すべく、全力を尽くすことをここに決意する。
政府においても、この問題に誠実に対応していく立場にあることを深く自覚し、早期かつ全面的な解決を図るよう万全を期するべきである。
右決議する。