第144回国会は、平成10年11月24日に召集詔書が公布され、同月27日に召集された。
召集日の衆議院本会議において、議席の指定を行い、会期を12月14日までの18日間と議決した後、従来から設置されている災害対策特別委員会外6特別委員会及び第143回国会に引き続き金融安定化に関する特別委員会を設置したほか、財政構造改革法停止法案を審査するため新たに財政構造改革に関する特別委員会を設置した。
この国会は、政府が打ち出した緊急経済対策を実行するための平成10年度第3次補正予算、財政構造改革法停止法案などを主要議題として審議するために開かれたものである。
召集を前に、院内会派の改編があり、「平和・改革」が解散し、新たに「公明党・改革クラブ」が結成された。また、「新党さきがけ」が名称変更により「さきがけ」となった。
召集日当日、開会式に引き続き、衆参両院の本会議において、小渕内閣総理大臣の所信表明演説が行われた。
この中で、小渕総理大臣は冒頭、防衛装備品の調達を巡る背任事件に関し、防衛庁元幹部職員が逮捕、起訴され、さらに証拠隠しの疑惑を招いたことに対して、行政への国民の信頼を失墜させたことを陳謝し、また、政党交付金の不正使用疑惑により現職の国会議員が逮捕されたことに遺憾の意を表し、議員立法として提案されている国家公務員倫理法案や政治改革関連法案の早期成立を、改めて期待すると述べた。
次に、現下の最大の課題は、金融システムが健全に機能する基盤を整え、経済の再生を図ることであるとし、平成11年度において、はっきりとプラス成長と自信を持って言える需要を創造すること、失業者を増やさない雇用と起業を推進すること、国際協調を推進することの3点を目標に掲げ、百万人規模の雇用の創出、安定を目指し、総事業規模にして17兆円を超える緊急経済対策を取りまとめた。本対策を始めとする諸施策を強力に推進して、平成11年度には我が国の経済をプラス成長に転換させ、平成12年度までには経済再生を図るよう、全力を尽くすと明言した。
なお、景気回復に全力を尽くすため財政構造改革法を当分の間凍結することとし、そのための法案を今国会に提出したと述べた。
また、世界の安定と繁栄なくして我が国の安全と繁栄はあり得ない、とりわけ北東アジア地域における平和と安定の枠組みを一層強固なものにすることは極めて重要な課題であるとし、日米関係については、ガイドライン関連法案等の早期成立、承認に理解を求めた。
これに対する衆議院本会議の各党代表質問は、11月30日及び12月1日の両日行われ、自民・自由両党の連立問題、自由党との連立に伴う政権の基本的姿勢の変化の有無、経済対策、安全保障と外交政策、減税問題、財政構造改革法凍結、沖縄問題、永住外国人に対する地方参政権、年金改正と国庫負担率、地域振興券、政治・公務員倫理、男女共同参画、参議院改革などについて論議が展開された。
参議院においては、12月1日及び2日に各党代表質問が行われた。
(平成10年度第3次補正予算審議)
政府は、12月4日に平成10年度一般会計の第3次補正予算外2案を提出した。この補正予算は緊急経済対策を受けて提出されたものである。
同日、衆参両院の本会議において、宮澤大蔵大臣の財政演説とこれに対する質問が行われた。
平成10年度補正予算3案は、衆議院予算委員会で、12月4日に提案理由の説明を聴取した後、7日、8日の両日質疑を行い、8日の委員会で自民、明改、自由の賛成で可決され、同日の本会議で可決、同月11日の参議院本会議で可決、成立した。
内閣提出の財政構造改革法停止法案は、12月1日に衆議院財政構造改革特別委員会で提案理由の説明を聴取した後、翌2日に質疑入りした。
同月7日に民主党から対案として財政構造改革法停止法案が提出され、同委員会に付託された。翌8日の委員会において、提案理由の説明を聴取し、内閣提出法案と一括して質疑が行われた後、民主党提出の対案は否決され、内閣提出法案は原案のとおり可決された。同日の本会議においても民主党提出法案は否決、内閣提出の財政構造改革法停止法案は可決され、同月11日参議院本会議で可決、成立した。
第144回国会では、その他にも新日韓漁業協定が両院で承認され、町村合併時の市の人口要件を4万人とする市町村合併特例法改正案、企業に対する運転資金の融資を可能にする日本開発銀行法改正案、ベンチャー企業への総合支援策を定める新事業創出促進法案などが成立した。
最終日の12月14日、世界人権宣言50周年に当たり、すべての人々の人権が尊重される社会の実現に努める決議案が、全会一致で可決され、参議院でも同趣旨の決議が行われた。また、両院の本会議で閉会中の手続きや請願採択など一連の会期末処理が行われ、第144回国会は終了した。
なお、第142回国会に提出され継続審査となっていた組織的犯罪対策3法案、情報公開法案、ガイドライン関連法案、国家公務員倫理法案などは、今国会も継続審査となった。
第144回国会における衆議院の各会派所属議員数及び役員等の氏名並びに内閣の閣僚氏名は、次のとおりである。
○ 各会派所属議員数(召集日現在)
会派名 | 所属議員数 |
---|---|
自由民主党 | 263 |
民主党 | 93 |
公明党・改革クラブ | 52 |
自由党 | 35 |
日本共産党 | 26 |
社会民主党・市民連合 | 14 |
無所属の会 | 5 |
さきがけ | 2 |
無所属 | 10 |
計 | 500 |
○ 衆議院役員等一覧
役職名 | 氏名(会派) | 備考 | |
---|---|---|---|
議長 | 伊藤 宗一郎君 | ||
副議長 | 渡部 恒三君 | ||
常任委員長 | 内閣委員長 | 二田 孝治君(自民) | |
地方行政委員長 | 坂井 隆憲君(自民) | ||
法務委員長 | 杉浦 正健君(自民) | ||
外務委員長 | 中馬 弘毅君(自民) | ||
大蔵委員長 | 村井 仁君(自民) | ||
文教委員長 | 小川 元君(自民) | ||
厚生委員長 | 木村 義雄君(自民) | ||
農林水産委員長 | 穂積 良行君(自民) | ||
商工委員長 | 古賀 正浩君(自民) | ||
運輸委員長 | 石破 茂君(自民) | ||
逓信委員長 | 中沢 健次君(民主) | ||
労働委員長 | 岩田 順介君(民主) | ||
建設委員長 | 遠藤 乙彦君(明改) | ||
安全保障委員長 | 塩田 晋君(自由) | ||
科学技術委員長 | 大野 由利子君(明改) | ||
環境委員長 | 北橋 健治君(民主) | ||
予算委員長 | 中山 正暉君(自民) | ||
決算行政監視委員長 | 原田 昇左右君(自民) | ||
議院運営委員長 | 中川 秀直君(自民) | ||
懲罰委員長 | 山花 貞夫君(民主) | ||
特別委員長 | 災害対策特別委員長 | 西村 章三君(自由) | 平10.11.27設置 |
公職選挙法改正に関する調査特別委員長 | 桜井 新君(自民) | 同上 | |
石炭対策特別委員長 | 高木 義明君(民主) | 同上 | |
消費者問題等に関する特別委員長 | 前田 正 君(明改) | 同上 | |
沖縄及び北方問題に関する特別委員長 | 五島 正規君(民主) | 同上 | |
国会等の移転に関する特別委員長 | 安倍 基雄君(自由) | 同上 | |
行政改革に関する特別委員長 | 高鳥 修君(自民) | 同上 | |
金融安定化に関する特別委員長 | 相沢 英之君(自民) | 同上 | |
財政構造改革に関する特別委員長 | 麻生 太郎君(自民) | 同上 | |
政治倫理審査会会長 | 奥野 誠亮君(自民) | ||
事務総長 | 谷 福丸君 |
○ 内閣閣僚一覧
小渕内閣(平10.7.30〜) | 備考 | |
---|---|---|
内閣総理大臣 | 小渕 恵三君(自民) | |
法務大臣 | 中村 正三郎君(自民) | |
外務大臣 | 高村 正彦君(自民) | |
大蔵大臣 | 宮澤 喜一君(自民) | |
文部大臣 | 有馬 朗人君(自民) | |
厚生大臣 | 宮下 創平君(自民) | |
農林水産大臣 | 中川 昭一君(自民) | |
通商産業大臣 | 与謝野 馨君(自民) | |
運輸大臣 | 川崎 二郎君(自民) | |
郵政大臣 | 野田 聖子君(自民) | |
労働大臣 | 甘利 明君(自民) | |
建設大臣 | 関谷 勝嗣君(自民) | |
自治大臣 | 西田 司君(自民) 野田 毅君(自由) |
平11.1.14辞任 同日 就任 |
内閣官房長官 | 野中 広務君(自民) | |
国家公安委員会委員長 | 西田 司君(自民) 野田 毅君(自由) |
平11.1.14辞任 同日 就任 |
総務庁長官 | 太田 誠一君(自民) | |
北海道開発庁長官 | 井上 吉夫君(自民) 川崎 二郎君(自民) |
平11.1.14辞任 同日 就任 |
防衛庁長官 | 野呂田 芳成君(自民) | |
経済企画庁長官 | 池口 小太郎君 (堺屋 太一) |
|
科学技術庁長官 | 竹山 裕君(自民) 有馬 朗人君(自民) |
平11.1.14辞任 同日 就任 |
環境庁長官 | 直鍋 賢二君(自民) | |
沖縄開発庁長官 | 井上 吉夫君(自民) 野中 広務君(自民) |
平11.1.14辞任 同日 就任 |
国土庁長官 | 井上 吉夫君(自民) 関谷 勝嗣君(自民) |
平11.1.14辞任 同日 就任 |
金融再生委員会委員長 | 柳沢 伯夫君(自民) | 平10.12.15就任 |
国立国会図書館 連絡調整委員会委員 | 有馬 朗人君(自民) |