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6 予算審議の概況

平成11年度総予算

1 予算の概要

平成11年度予算は、我が国経済が戦後初の4四半期連続のマイナス成長という厳しい経済情勢から早急に脱却するために、財政構造改革法を凍結し、景気回復に資する経費について思い切った重点を置くとともに、年度末から年度始めにかけて切れ目なく施策を実施すべく、平成10年度第3次補正予算と一体的にとらえる、いわゆる15ヵ月予算の考え方の下、当面の景気回復に向け全力を尽くすとの観点に立って編成されたものであり、平成11年1月19日、国会に提出され、同日、衆議院予算委員会に付託された。

一般会計予算の規模は、81兆8,601億円で、前年度当初予算に対し、5.4%の増加となっている。

歳出については、国債費及び地方交付税交付金の経費を除いた、いわゆる一般歳出の規模は46兆8,878億円であり、前年度当初予算に対して5.3%の増加となっている。

歳出の主な内容は、次のとおりである。

[1]公共事業関係費は、本格的な高齢化社会の到来を控え、社会資本整備を着実に推進するとの基本的考えを踏まえた上で、当面の景気回復に向け全力を尽くすとの観点に立ち、前年度当初比5.0%増の9兆4,307億円を計上するほか、別途、産業投資特別会計社会資本整備勘定において「日本電信電話株式会社の株式売払収入の活用による社会資本の整備の促進に関する特別措置法」に基づき貸付けを受けて実施される公共的建設事業として944億円を計上し、その配分に当たっては、物流効率化による経済構造改革に資する分野、21世紀を展望した経済発展基盤となる分野、生活関連社会資本への重点化を図っている。

なお、公共事業等の経費に係る予見し難い予算の不足に充てるため、別途、公共事業等予備費5,000億円を計上し、経済情勢の推移等に機動的に対処できるようにしている。

[2]社会保障関係費は、今後の急速な少子・高齢化の進展に伴い、社会保障関連予算の増大が見込まれる中、経済の発展、社会の活力を損なわないよう、必要な給付を確保しつつ制度の効率化・合理化を進め、将来にわたり安定的に運営できる社会保障制度を構築していくために、新ゴールドプラン、緊急保育対策及び障害者プランの着実な推進等を図るほか、雇用対策として、中小企業の雇用機会創出支援、中高年求職者就職支援プロジェクト等を内容とする雇用活性化総合プランを推進することとし、前年度当初比8.4%増の16兆950億円を計上している。なお、消費税の福祉目的化として、地方交付税交付金を除いた消費税収の使途を基礎年金、老人医療及び介護に限定する旨を予算総則に明記している。

[3]文教及び科学振興費は、国と地方の機能分担及び費用負担の在り方、受益者負担の適正化等の観点から、各種経費の見直しを行った上で、創造的で活力に富んだ国家を目指し、教育環境の整備、高等教育、学術研究の充実、創造的、基礎的研究に重点を置いた科学技術の振興等の施策の推進を図ることとし、前年度当初比2.0%増の6兆4,731億円を計上している。

[4]経済協力費は、アジア支援に関する我が国への期待の増大等に対応しつつ、援助の効率化、重点化を一層進めることとし、前年度当初比0.8%増の9,877億円を計上している。なお、政府開発援助予算は前年度当初比0.2%増の1兆489億円となっている。

[5]防衛関係費は、平成9年12月19日に見直しが行われた「中期防衛力整備計画(平成8年度〜平成12年度)」等の下、効率的で節度ある防衛力の整備を図ることとし、前年度当初比0.2%減の4兆9,322億円を計上している。なお、この経費の中に、SACO(沖縄における施設及び区域に関する特別行動委員会)関係経費として121億円が計上されている。

[6]中小企業対策費は、中小企業を取り巻く厳しい経営環境を踏まえ、金融対策、新規開業・雇用創出支援、経営革新支援等に重点を置いた施策の充実を図ることとし、前年度当初比3.5%増の1,923億円を計上している。

[7]国債費は、預金保険機構の特例業務勘定に交付した国債の現金化に充てる財源2兆5,000億円を含め、前年度当初比14.9%増の19兆8,319億円を計上している。

[8]地方財政については、国の財政とともに巨額の財源不足が見込まれる中、国と地方という公経済の車の両輪がバランスのとれた財政運営を行う必要があるという基本的考えを踏まえ、地方財政の運営に支障が生じることのないよう、国と地方のたばこ税の税率変更による地方のたばこ税の増収措置、法人税の交付税率の引上げ、地方特例交付金の創設などにより、地方税の恒久的な減税の影響を補てんするとともに、所要の地方交付税総額を確保するなど、所要の措置を講ずることとし、一般会計の地方交付税交付金については、前年度当初比18.8%減の12兆8,831億円を計上し、交付税及び譲与税配付金特別会計から地方団体に交付する地方交付税交付金については、前年度当初比19.1%増の20兆8,642億円を確保している。また、地方特例交付金は6,399億円を計上している。

歳入については、税制に関して、現下の厳しい経済情勢等を踏まえ、景気に最大限配慮して、所得税及び法人税について恒久的な減税を実施するとともに、住宅建設及び民間設備投資の促進、経済金融情勢の変化への対応等の観点から適切な措置を講ずることとした結果、租税及印紙収入は、前年度当初予算に対し、19.5%減の47兆1,190億円を見込んでいる。税外収入は、総額で3兆6,911億円を見込んでおり、その主なものは、外国為替資金特別会計受入金、日本銀行納付金、日本中央競馬会納付金、国有財産売払収入、郵便貯金特別会計受入金等である。

公債発行額については、前年度当初予算より99.6%増の31兆500億円を予定しており、公債依存度は37.9%(10年度当初予算20.0%、3次補正後38.6%)となった。

特別会計及び政府関係機関についても、資金の重点的、効率的な配分に努め、事業の適切な運営を図ることとしている。なお、特別会計の数は38で前年と同様である。政府関係機関の数は14であり、日本開発銀行を廃止し、日本政策投資銀行を新たに設立するなどの改編が行われることとなっている。

財政投融資計画については、現下の厳しい社会経済情勢に対応するため、景気回復に十分配慮して財政投融資資金を活用するとともに、特殊法人の整理合理化への対応等、改革に向けた努力を継続することとし、資金の重点的、効率的な配分を図ることとしている。その規模は、前年度当初計画に対して5.9%増の52兆8,992億円となっている。

また、金融システムの安定化のための措置に関し、一般会計予算総則において、預金保険機構の特例業務勘定、金融再生勘定及び金融機能早期健全化勘定の借入金等について、それぞれ10兆円、18兆円及び25兆円の政府保証限度額を定めている。

2 審議経過

平成11年1月19日、宮澤大蔵大臣の財政演説が衆・参本会議で行われた。

衆議院予算委員会においては、1月22日に宮澤大蔵大臣から平成11年度予算3案の提案理由説明を聴取した。総括質疑は、同日の理事会で協議した結果、25日から開始することに決定した。

25日から始まった総括質疑が順調に進む一方で、総括質疑の最終日をいつにするかについての協議が、25日以降の理事会で行われていたが、最終的には2月1日まで総括質疑を行うことに決定した。2月1日の理事会では総括質疑終了後の一般質疑、公聴会、集中審議の日程について協議が行われ、その結果、2日から一般質疑に入り、公聴会を9日、10日の両日に開会することになり、同日の委員会で公聴会開会の日程について決定された。

一般質疑の日数、集中審議のテーマ及び日数については、与野党の合意には至らず、2日以降の理事会で協議された。その結果、5日まで一般質疑を行った後、8日に金融、財政並びに景気対策についての集中審議を行うこととなった。しかし、フセイン・ヨルダン国王が7日に死去し、その葬儀に参列するため、小渕総理大臣がヨルダンを訪問することになり、予算委員会への小渕総理大臣の出席が不可能となった。このため、同日の集中審議は開会されなかった。

9日、10日に公聴会が予定通り開会された後、12日には、8日に開かれる予定だった金融、財政並びに景気対策についての集中審議が行われた。

この時点で、集中審議の日数について与野党は合意に達しておらず、また、民主党、共産党、社民党の3会派が要求していた日債銀問題についての証人喚問についても、与党がこれを拒否したため、翌週15日以降の日程については与野党の合意は得られていなかった。しかし、12日の委員会で、中山予算委員長が15日に委員会を開会することを宣告したため、野党がこれに反発し、15日の安保・外交問題についての集中審議は民主党、共産党、社民党の3会派が欠席したまま開かれることとなった。同日は、午前中に自民党及び自由党が質疑を行い、午後は、民主党が質疑をする予定とされていたが、質疑者は出席せず、民主党の質疑予定時間の約2時間半の経過を待った後、公明党・改革クラブの質疑に移った。公明党・改革クラブの質疑終了後は、共産党及び社民党が質疑をする予定とされていたが、委員会は休憩に入り、その後は再開されなかった。

翌16日も、民主党、共産党、社民党の3会派の出席がないまま、行革・景気対策等についての集中審議が開始された。一方、予算委員会を欠席している3会派は、中山予算委員長の委員会運営が強引であるとして、予算委員長解任決議案を衆議院議長に提出した。しかし、解任決議案は同日午後の本会議で否決され、これにより審議拒否を続ける理由を失った野党3会派は、同日中に予算委員会に出席し、委員会は正常化した。同日の委員会は、引き続き、行革・景気対策等についての集中審議を行い、その後、前日に終了しなかった安保・外交問題等の集中審議を行った。また、分科会審査を17日、18日の両日に行うことを決定した。

17日の理事会では、18日の分科会の後、締めくくり総括質疑を行い、19日に採決を行うことを決めるとともに、日債銀問題で参考人質疑を行うことで与野党が合意した(この日債銀問題についての参考人質疑は2月25日に行われた)。

17日の委員会は、午前中に、5日までに終了しなかった残余の一般質疑を行い、午後から分科会を行った。分科会は翌18日の午後3時過ぎに終了し、午後3時半から委員会を開会し、冒頭に分科会の主査報告を行った後、締めくくり総括質疑を行い、平成11年度予算の質疑は終局した。

質疑のうち主なものは、次のとおりである。

第1に、景気対策と経済の現状について、「平成11年度の実質経済成長率は0.5%とされているが、今回の予算措置により、この目標は達成できるのか否か」との趣旨の質疑があり、これに対し、小渕総理大臣から、「2年続きのマイナス成長をプラス成長にさせたいという一念で予算を編成した。恒久的減税など、できる政策はすべてこの予算に計上している。効果的にむだのないように実施していけば、必ず当初の目的は達成できる」旨の答弁があった。また、「経済の現状について、本当に胎動はあるのか」との趣旨の質疑があり、これに対し、堺屋経済企画庁長官から、「全体として見れば、依然として厳しい状態にあるという判断は変えていない。しかし、昨年の11月末ぐらいから、いろいろな面でかなり新しい動きがあらわれている。また、今年に入って住宅関係の動きが活発になってきており、減税効果などが見られる。ただ、1月後半からやや消費が思わしくない」旨の答弁があった。

第2に、税制改正について、「今年は所得税などについて、定額減税を変更して定率減税などを行うこととしているが、その理由は何か。また、住宅減税や法人税減税についての考え方はどうか」との趣旨の質疑があり、これに対し、宮澤大蔵大臣から、「税の応能負担とか公平化の見地から、定額減税というのは本来は避けて、累進に忠実な定率減税の方が本当と思う。しかし、余り税負担が増えてもとのおもんぱかりから、控除を増やし、負担を緩和した。また、最高税率の引下げは、以前からの税制調査会の指摘によるためである。住宅減税については、平年度で1兆2,000億円程度であるが、これも大事なことであると思う。法人税の減税も、世界どこへでも本社が置ける時代であるから、やはりここでしなければならないのではないか」との旨の答弁があった。

第3に、消費税の福祉目的化について、「その意義は何か」との趣旨の質疑があり、これに対して、宮澤大蔵大臣から、「消費税の税収を年金と老人医療と介護に使うということをいわば行政府として国会に約束して、許しを受けるということである。将来に向かって、福祉との関連をどうすべきかということを、国会としても政府としても、方向づけをしなければならない問題になるであろう」との旨の答弁があった。

第4に、周辺事態安全確保法案について、「日米安保条約の範囲はフィリピン以北、日本の周辺とされているが、周辺事態安全確保法案は日米安保条約が適用される範囲内と理解してよいか」との趣旨の質疑があり、これに対し、小渕総理大臣から、「日米安保条約の目的は、申すまでもなく、我が国及び極東の平和と安全の維持である。そこで、周辺事態安全確保法案は、我が国の平和と安全の確保に資することを目的としており、我が国の安全に着目しておることは、これまたしばしば申し上げているところである。したがって、周辺事態安全確保法案は、日米安保条約の目的の枠内であり、日米安保条約を超えるものではない」との旨の答弁があった。

以上のほか、自自連立、日債銀問題、金融システム安定策、雇用対策、長期金利の上昇対策、財政と金融の分離問題、貸渋り対策、公共事業等予備費、公共事業の見直し、財政再建、国連の平和活動への参加の在り方、朝鮮半島情勢、地方財政対策、地方分権の推進、中央省庁等の改革問題、防衛庁調達問題、教育問題、ダイオキシン対策、科学技術の振興、少子高齢化、子育て支援対策、介護保険問題、年金及び医療保険問題、地域振興券などについて質疑が行われた。

19日の予算委員会において、民主党、共産党及び社民党からそれぞれ、「平成11年度予算3案につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議」が提出され、それぞれ趣旨弁明があり、討論、採決の結果、動議はいずれも否決され、平成11年度予算3案はいずれも原案のとおり可決された。

同日の本会議において、民主党提出の「撤回のうえ編成替えを求めるの動議」について、趣旨弁明があり、討論の後、動議は否決され、記名投票による採決の結果、賛成297、反対188で予算3案は可決された。総予算の2月19日の衆議院通過は戦後最速である。

参議院の予算委員会においては、1月22日に宮澤大蔵大臣から提案理由説明を聴取し、2月22日から3月2日まで総括質疑を行った後、3日の財政金融・景気・雇用に関する集中審議、4日の公聴会、5日及び11日の一般質疑、8日の外交・防衛に関する集中審議、9日の山口公生前大蔵省銀行局長、中川隆進元大蔵大臣官房金融検査部長、東郷重興前日本債券信用銀行頭取及び名原剛日本生命保険相互会社代表取締役副社長に対する参考人質疑、10日の教育・福祉・環境に関する集中審議、12日から16日午前までの委嘱審査、16日午後及び17日の締めくくり総括質疑を経て、17日の質疑終局後、討論、採決の結果、予算3案は賛成少数で否決された。引き続き開かれた本会議においても、討論、採決の結果、賛成117、反対129で否決された。

3 両院協議会

3月17日、平成11年度総予算が参議院で否決されたため、衆議院は、参議院から否決の通知及び総予算の返付を受けた後直ちに、両院協議会を開くことを求めた。両院協議会においては、衆議院側が議長を務め、各議院から議決の趣旨について説明を聴取した後、所得税減税、雇用対策、消費税の福祉目的化、公共事業、行政改革等について種々協議が重ねられたが、意見の一致は得られず、憲法第60条第2項の規定により、衆議院の議決が国会の議決となった。総予算の3月17日の成立は戦後最速である。

平成11年度補正予算(第1号、特第1号)

1 補正予算の概要

政府は、平成11年6月11日、厳しさを増す雇用情勢に対応するため、中高年齢者を中心とした非自発的失業者等への対応に重点をおいた緊急雇用対策を決定した。

本補正予算は、この緊急雇用対策を実施するために必要な経費等の追加について措置を講ずる一方、予備費の減額を行うこととし、他方、歳入面において、その他収入の減を見込むとともに、前年度剰余金の受入を行うこととして編成されたものであり、7月8日、国会に提出され、同日、衆議院予算委員会に付託された。

一般会計の補正は、歳入歳出とも、当初予算に対し、3,698億円を追加するものである。

歳出については、新規・成長分野雇用創出推進事業費、中高年求職者再就職推進等事業費、緊急雇用・就業機会創出特別対策事業費、少子化対策臨時特例交付金等、地域振興券、住宅金融対策費、雇用対策費、アジア対策費及び地方交付税交付金等、高齢者就業支援等対策費等総額5,198億円を追加計上する一方、予備費について1,500億円の減額を行っている。

歳入については、前年度剰余金受入3,737億円を追加計上する一方、官業益金及官業収入について39億円の減額を行っている。

この結果、補正後の平成11年度一般会計予算の規模は、82兆2,299億円となっている。

特別会計予算については、一般会計の補正等に関連して、印刷局特別会計、労働保険特別会計の2特別会計において所要の補正を行っている。

2 審議経過

衆議院予算委員会においては、7月13日に宮澤大蔵大臣から提案理由の説明を聴取した後、14日及び15日の2日間質疑を行った。

15日の質疑終局後、民主党から「平成11年度一般会計補正予算(第1号)及び平成11年度特別会計補正予算(特第2号)につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議」が提出され、趣旨弁明があり、討論、採決の結果、動議は否決され、補正予算2案は多数で可決された。

同日の本会議においても、民主党提出の「撤回のうえ編成替えを求めるの動議」について、趣旨弁明があり、討論、採決の結果、動議は否決され、補正予算2案は多数で可決された。

質疑のうち主なものは、雇用対策の実効性、今後の経済見通し、2次補正予算の見通し、公共事業等予備費の在り方、介護保険制度への対応、政党間の連立をめぐる諸問題等であった。

参議院予算委員会においては、7月13日に宮澤大蔵大臣から提案理由の説明を聴取し、16日及び19日に質疑を行い、19日の質疑終局後、討論、採決の結果、多数で可決された。21日に開かれた本会議においても、討論、採決の結果、賛成143、反対91で可決された。


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