本案は、戦傷病者、戦没者遺族等の処遇の改善を図るため、障害年金、遺族年金等の額を引き上げるとともに、戦没者等の遺族に対する特別弔慰金の支給対象範囲の拡大を行おうとするもので、その主な内容は次のとおりである。
一 戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部改正
1 障害年金、遺族年金等の額を、平成11年4月分から次のとおり引き上 げること。
(1) 障害年金
ア 障害年金額(第5項症の場合)
区分 |
現行 |
改正後 |
---|---|---|
公務傷病 |
2,491,000円 |
2,508,000円 |
イ 扶養加給額
区分 |
現行 |
改正後 |
---|---|---|
配偶者 |
192,000円 |
193,200円 |
(2) 遺族年金及び遺族給与金
区分 |
現行 |
改正後 |
|
---|---|---|---|
公務死 |
1,933,500円 |
1,948,700円 |
|
勤務関連死 |
1,534,500円 |
1,546,700円 |
|
平病死 |
公務 (重症) |
1,534,500円 |
1,546,700円 |
公務(軽症)及び勤務関連(重症) |
482,310円 |
488,410円 |
|
勤務関連 (軽症) |
384,210円 |
389,310円 |
|
併発死 |
公務傷病併発 |
384,210円 |
389,310円 |
勤務関連傷病併発 |
266,510円 |
270,310円 |
2 その他所要の改正を行うこと。
二 戦没者等の遺族に対する特別弔慰金支給法の一部改正
平成7年4月1日から平成11年3月31日までの間に公務扶助料、遺族年金等の受給権を有する者がいなくなった戦没者等の遺族に、特別弔慰金として額面24万円、6年償還の国債を支給すること。
三 施行期日
この法律は、平成11年4月1日から施行すること。
本案は、現下の社会経済情勢にかんがみ、平成11年度以後の国民年金の保険料の額を、平成10年度の保険料の額と同額とするものである。
なお、この法律は、公布の日から施行することとし、この法律の施行の日前に平成11年度の国民年金の保険料を前納した者については、その者の請求に基づき、平成11年4月1日以後、当該前納期間に係るこの法律による改正前後の国民年金の保険料額の差額を基準として政令で定める額を還付するものとする。
本案は、最近の精神医療及び精神障害者の福祉をめぐる状況を踏まえ、精神障害者の人権に配意しつつその適正な医療及び保護を確保するとともに、精神障害者の社会復帰の一層の推進を図るため、所要の措置を講じようとするもので、その主な内容は次のとおりである。
一 精神医療審査会の審査機能を強化するため、その委員数の制限を撤廃するとともに、関係者に対する報告聴取権限を付与することとし、精神保健指定医については、従来の指定取消し処分のほか、職務停止処分を創設する等の所要の見直しを行うこととすること。
二 医療保護入院の対象者については、その対象者が精神障害のため本人の同意に基づいた入院が行われる状態にない者であることを明確にすること。
三 緊急に入院が必要であるにもかかわらず、精神障害のため本人の同意に基づいた入院が行われる状態にないと精神保健指定医が判定した精神障害者を、都道府県知事が応急入院指定病院に移送する制度を創設すること。
四 保護者の自傷他害防止監督義務の規定を削除するとともに、任意入院者等自らの意思で医療を受けている精神障害者の保護者については、本人に治療を受けさせる義務等を免除すること。
五 精神保健福祉センターの機能を拡充すること。また、在宅の精神障害者に対する相談、助言等を行う精神障害者地域生活支援センターを社会復帰施設として法定化するとともに、精神障害者居宅生活支援事業として精神障害者居宅介護等事業及び精神障害者短期入所事業を創設し、在宅の精神障害者に対する福祉施策の拡充を図ること。
六 精神障害者居宅生活支援事業の実施主体を市町村とするとともに、福祉施策の相談、助言等についても、保健所による技術的支援の下で、市町村において実施すること。
七 仮入院制度の廃止等今般の見直しに伴う所要の措置を講ずるとともに、関係法律についても、所要の規定の整備を行うこと。
八 この法律は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること。ただし、在宅福祉事業の追加等の事項については、平成14年4月1日から施行すること。
九 この法律の規定については、施行後5年を目途として、施行の状況並びに精神保健及び精神障害者の福祉を取り巻く環境の変化を勘案し、必要があると認めるときは、検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとすること。
(参議院修正要旨)
一 任意入院者及び通院医療を継続して受けている精神障害者の保護者の義務の範囲を明確化すること。
二 政府は、この法律の施行後5年を目途として、この法律による改正後の精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の規定について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとすること。
三 その他所要の規定の整理を行うこと。
政府は、次の事項について、適切な措置を講ずるべきである。
一 精神障害者の福祉の増進及び国民の精神保健の向上を図る観点から、精神障害者やその家族その他の関係者の意見も尊重しつつ、他の障害者施策との均衡や雇用施策との連携に留意し、障害者プランの着実な推進を図るなど、精神保健福祉施策の充実に努めること。
二 都道府県から市町村への在宅福祉サービスの提供主体の移管が円滑に行われ、市町村を中心とする在宅福祉サービスの充実が図られるよう、財政的な支援を行うとともに、専門的・技術的な支援を行うこと。また、市町村障害者計画の策定について市町村が主体的に取り組むことができるよう、積極的に支援すること。
三 医療保護入院については、国連原則等の国際的な規定に照らし、その適切な運用に努めること。
四 医療保護入院等のための移送の実施に当たっては、適正な運用が確保されるよう必要な措置を講ずるとともに、都道府県の責任において適切な入院治療が提供できるよう、二次医療圏を勘案してその体制を整備すること。
五 精神病床に係る人員配置基準、医療計画その他の精神医療提供体制及び長期入院患者の療養の在り方について、その充実に向けて早急に検討を行うこと。
六 チーム医療及び精神保健福祉サービスの一層の推進を図るため、人材の育成・確保に努めること。また、現在検討中の臨床心理技術者の国家資格制度の創設については、速やかに結論を得ること。
七 精神病院における不祥事件の多発にかんがみ、人権を尊重しつつ適切な医療を確保できるよう、医療従事者の更なる啓発に努めるとともに、医療機関等の情報公開の推進と精神病院の指導監督の徹底を図ること。
八 精神医療審査会がより適正な機能を発揮し、独立性と実効性を確保できるよう努めるとともに、合議体の構成についても検討すること。また、当事者の意見の反映が図られるように努めること。
九 小規模作業所については、社会福祉事業法の見直しの中で、通所授産施設の要件緩和が検討されていることから、その検討結果を踏まえ、通所授産施設への移行を促進すること。また、多様な福祉サービスの充実に努めること。
十 成年後見制度及び社会福祉事業法等の見直しの動向を踏まえ、家族・保護者の負担を軽減する観点から、保護者制度について早急に検討を加え、精神障害者の権利擁護制度の在り方について引き続き検討を進め、その充実を図ること。
十一 重大な犯罪を犯した精神障害者の処遇の在り方については、幅広い観点から検討を早急に進めること。
十二 精神障害者に関する各種資格制限の緩和と撤廃について検討し、その結果に基づいて、速やかに必要な措置を講ずること。
本案は、国民年金及び厚生年金保険について、将来世代の保険料負担の上昇を抑制するため、給付水準の適正化及び給付額の改定方式の変更並びに老齢厚生年金の支給開始年齢の引上げ等を行うとともに、総報酬制の導入等を行い、あわせて国民年金及び厚生年金保険の積立金を自主運用することにより、国民の老後保障等の充実並びに国民年金制度及び厚生年金保険制度の長期的な安定等を図ろうとするもので、その主な内容は次のとおりである。
一 基礎年金の額については、来年度より、年額80万4,200円を物価の変動に応じて改定した額とすること。また、厚生年金の報酬比例部分については、5%の適正化を図ることとするが、従前の年金額算定方式による年金額を物価スライドした額は保証すること。さらに、厚生年金及び基礎年金の支給を受ける者が65歳に到達した以後は、物価の変動のみに応じた年金額の改定を行うこと。
二 老齢厚生年金の支給開始年齢を、一般男子については平成25年度から37年度にかけて、女子については平成30年度から42年度にかけて、段階的に65歳に引き上げること。これに伴い、60歳台前半の者は、老齢厚生年金の支給繰上げを請求できることとすること。
三 厚生年金において、平成14年度より、60歳台後半の者を被保険者とするとともに、この者に支給する老齢厚生年金について、年金額と賃金との合計額が一定以上の者は、年金の支給を制限すること。
四 学生である国民年金の被保険者については、本人の所得が一定以上の場合を除いて保険料の納付を要しないこととする納付特例の措置を導入すること。また、比較的低所得の国民年金の被保険者については、平成14年度より、保険料の半額を免除する措置を講ずること。
五 厚生年金保険の保険料の賦課及び年金額算定の方式については、現行の主として月給によった方式から、平成15年度より、月給と賞与を同様に取り扱う総報酬制とすること。
六 基礎年金については、財政方式を含めてその在り方を幅広く検討し、当面平成16年度までの間に、安定した財源を確保し、国庫負担の割合の2分の1への引上げを図るものとすること。
七 厚生年金基金については、厚生年金保険の保険料率が据え置かれることに伴い、免除保険料率の算定方法を凍結すること。また、厚生年金基金等の資産運用や事業運営に係る規制を緩和するとともに、上場株式を一定の条件の下に掛金として拠出することを認めることとし、公布の日から3箇月以内に実施すること。
八 厚生年金保険及び国民年金の積立金については、厚生大臣が、被保険者の利益のために、長期的な観点から、安全かつ効率的に自主運用を行うこと。このため、厚生大臣は、保険料拠出者や経済、金融等の専門家の意見を聴いて、運用に関する基本方針を策定するとともに、責任体制の明確化及び情報開示の徹底を図ること。なお、年金積立金の自主運用は、財政投融資制度の抜本改革の実施に合わせて実施すること。
九 その他所要の措置を講ずるとともに、関係法律について所要の改正を行うこと。
十 この法律は、別段の定めがあるものを除き、平成12年4月1日から施行すること。
本案は、厚生年金保険及び国民年金の積立金の自主運用に当たり、厚生大臣から寄託された資金の管理及び運用を行う専門機関として、年金資金運用基金を設立し、その責任体制の明確化及び専門性の確保を図るとともに、運用実績等に関する詳細な情報の公開により年金資金運用の透明性を確保しようとするもので、その主な内容は次のとおりである。
一 年金資金運用基金(以下「基金」という。)は、厚生大臣から寄託された資金を厚生大臣が定める運用に関する基本方針に沿って管理及び運用するとともに、その収益を国庫に納付することにより、厚生年金保険事業及び国民年金事業の運営の安定に資することを目的とすること。
二 基金は、資金の管理及び運用の目標に関する事項等を内容とする管理運用方針を策定し、民間運用機関への運用委託及び自家運用により資金の管理及び運用を行うこと。
三 理事長及び理事をもって組織する理事会を基金に置くこととし、理事会は、経済又は金融に関して高い識見を有する投資専門委員の意見を聴いて、基金における管理運用業務の重要事項を審議し、決定すること。
四 基金の役員及び職員に対し、その職分に応じた注意義務及び忠実義務、秘密保持義務等を課すとともに、それに違反した者に対し制裁を課すこと。
五 基金は、その業務を行うに当たり、適切な情報の公開により業務の運営における透明性を確保するとともに、毎事業年度、詳細な業務概況書、財務諸表、決算報告書、外部監査報告書等を公表すること。
六 その他、基金の役員及び職員、財務及び会計、監督、設立手続に関する規定等所要の規定を設けること。
七 この法律は、財政投融資制度の抜本的な改革の実施に合わせて別に法律で定める日から施行すること。ただし、基金の設立準備等に関する規定は、公布の日から施行すること。
本案は、平成9年6月6日の閣議決定「特殊法人等の整理合理化について」に基づき、年金福祉事業団を解散させるとともに、同事業団が行ってきた住宅資金の貸付け等を、被保険者、地域経済、雇用等への影響を考慮して別途定めるまでの間、年金資金運用基金において実施させ、また、年金受給権を担保とする小口の資金の貸付けを、社会福祉・医療事業団において新たに実施させようとするもので、その主な内容は次のとおりである。
一 年金福祉事業団は、年金資金運用基金の設立の日に解散することとし、その一切の権利及び義務は、その時において年金資金運用基金が承継すること。
二 年金資金運用基金は、資金運用業務に係る長期借入金の償還が終了するまでの間、年金福祉事業団から承継した資金の管理及び運用を行うとともに、別に法律又は政令で定める日までの間、大規模保養基地資産の譲渡及び譲渡するまでの間の管理又は運営、住宅資金の貸付け並びに教育資金貸付けのあっせんを行うこと。
三 社会福祉・医療事業団は、その業務の特例として、年金福祉事業団が実施していた年金受給権を担保とする小口の資金の貸付けを行うこと。
四 その他、年金福祉事業団から年金資金運用基金への権利及び義務の承継、年金資金運用基金及び社会福祉・医療事業団の業務の特例等に係る所要の規定を設けるとともに、関係法律の改正を行うこと。
五 この法律は、財政投融資制度の抜本的な改革の実施に合わせて別に法律で定める日から施行すること。
本案は、現下の社会経済情勢にかんがみ、平成11年度以後の基礎年金の国庫負担の割合の引上げについて必要な措置が講ぜられるまでの間、基礎年金の国庫負担の割合を2分の1に引き上げるとともに、同年度以後の国民年金の保険料の額を1万300円(物価スライド後)に引き下げ、厚生年金保険の保険料率を1%引き下げるものである。
なお、この法律は、平成11年4月1日から施行することとし、その他所要の規定を整備するものとする。