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4 本会議の概況

(1) 国務大臣の演説及び質疑

9月21日に森内閣総理大臣の所信表明演説が衆議院の本会議において行われ、これに対して、9月25日及び26日に各党の代表質問が行われた。

また、11月10日に宮澤大蔵大臣の財政演説が衆議院の本会議において行われ、これに対して、11月14日に各党の代表質問が行われた。

ア 森内閣総理大臣の所信表明演説(9月21日)

(はじめに)

第150回国会の開会に当たり、当面する諸問題につき所信を申し述べ、国民の皆様の御理解と御協力をいただきたいと考えます。

去る14日、私は、公明、保守両党党首とともに、三宅島、神津島及び新島の被害状況を視察し、復旧作業等に当たっておられる皆様を激励してまいりました。有珠山、三宅島の火山活動や周辺における地震活動、さらには東海地方を中心とする集中豪雨により亡くなられた方々の御冥福をお祈りするとともに、被害をこうむり不自由な生活を余儀なくされている方々に対し、心からお見舞い申し上げます。先般決定いたしました予備費の使用のほか、補正予算での対応も含め、政府としては、監視活動を強化し、避難されている方々の生活支援や復旧復興対策に万全を期してまいります。危機管理は常に国政の第一の要諦であり、私は一瞬の気の緩みもなく、全身全霊を傾けてまいります。

21世紀まであと3カ月余りであります。私たちは、今、この世紀の変わり目に生き、活動していることに対して、改めてその意味をかみしめてみたいと思います。

平和と幸せに満ちた21世紀は、偶然に来るものではありません。私たち20世紀を生きてきた者が、今も日一日、新世紀に向け努力することによってもたらされるのであります。私たちには、20世紀から21世紀へ、にじのかけ橋をかけていく責任と役割があります。

私は、さきの臨時国会で、「政治に一日の休止なし」と申しました。この夏、私は、日本の政治、経済、社会の万般について、21世紀への歯車を1つ1つ着実に前進させるべく、日々全力を挙げて取り組んでまいりました。

その結果、なお検討、審議中の分野もあるものの、日本の新しい社会建設のための、いわば攻めの再構築による一定の方向性が示されてまいりました。

私は、20世紀最後のこの国会を、21世紀の日本新生の礎を築く重要な国会にしたいと考えております。私たちは、将来への確たる展望を持って、21世紀へのキックオフをしなければなりません。

(国民運動としてのIT革命)

日本新生の最も重要な柱はIT戦略、いわばEジャパンの構想であります。日本型IT社会の実現こそが、21世紀という時代に合った豊かな国民生活の実現と我が国の競争力の強化を実現するためのかぎであるからであります。人類は、そして我々日本人は、IT革命という歴史的な機会と正面から取り組む決意が必要であります。

さきの九州・沖縄サミットにおいて、私は議長としてIT憲章を取りまとめましたが、首脳間の議論を通じて、その大きな可能性に対する認識を共有することができました。また、先般の南西アジア諸国訪問の際に、インドがIT技術者の育成に極めて熱心に取り組んでいる姿を目の当たりにいたしました。今やITは世界規模での課題となっています。我が国も、産業・社会構造の変革に向け、迅速な対応をしていかなければなりません。

IT革命を迅速に進めるため、先般、内閣官房に官民の人材を集めた担当室を発足させました。今国会においては、法制面の対応として、いわゆるIT基本法案と、民間同士の書面の交付等を義務づけた法律を一括して改正するための法律案を提出いたします。IT基本法案は、明確な国家戦略を打ち立て、官民一体となって迅速かつ集中的に必要な施策を実施していくための基本的な枠組みとなるものであり、早急にその整備を図ることが必要であります。さらに、来年の通常国会に向けて、電子商取引の特質に応じた新たなルールや個人情報保護など、情報化社会の基本ルールの整備を行うべく、IT革命を本格的に推進するために必要な法律案の策定作業を急ぎます。

また、日本型IT社会実現のため、早急にIT国家戦略を取りまとめます。我々の目指すべき日本型IT社会は、すべての国民が、デジタル情報を基盤とした情報、知識を共有し、自由に情報を交換することが可能な社会であります。そして、その最も基本的な社会的基盤となるのが、文字のみならず、音声、映像、経済情報などを数値であらわした大量のデジタル情報を迅速かつ低価格で交換することのできる超高速インターネットであります。

これまでのインターネットは、主として、既存の電話回線を利用することで普及してきました。しかし、グローバルなインターネット社会においては、文字情報にとどまらない大量のデジタル情報をだれもが低価格で伝達し合うことができる必要があります。その実現のために、しっかりとした年次目標を掲げて、民間主導の原則のもと、超高速インターネットの整備を図り、インターネットサービスの低廉化や利便性向上を促進してまいります。5年後には、我が国を世界の情報通信の最先端国家に仕上げてまいります。

また、IT社会の実現を国民的課題と位置づけるためには、IT関連の統計や施策の実施状況の速やかな公表など、情報の共有も重要であります。競争政策の抜本的な見直しも行わなくてはなりません。

電子政府の早期実現、学校教育の情報化、通信・放送の融合化に対応した制度の整備など、多岐にわたる課題についても、IT戦略会議における議論を踏まえつつ、果敢に取り組んでまいります。また、先端インターネット技術等の研究開発、IPバージョン6などによるグローバルインターネットの課題解決への積極参加など、インターネットの発展に対する大きな国際的貢献を目指します。

IT革命を成功に導くためには、国民一人一人がネットの主役になり、知恵を出し合って新しい仕組みをつくっていくことが重要であります。近く取りまとめる経済対策では、IT革命の飛躍的推進を第1の柱とし、学校や公共施設の高速インターネットを整備するとともに、全国民がインターネットを使えるよう一大国民運動を展開してまいりたいと思っております。それに必要な基礎技能習得のため、思い切った方策を推進してまいります。国民が自由に利用できる公衆インターネット拠点の整備についても、できる限りの努力をしたいと考えております。

また、国民が、利便と楽しみを得られるような情報の中身、いわゆるコンテンツの発展も目指します。インターネット博覧会の実施は、その起爆剤となるものであります。ハードウエアである施設、ソフトウエアである技能、そして中身たるコンテンツの三本柱をしっかりと打ち立てることによって、だれもが家庭でインターネットを容易に利用でき、その楽しさと有用性を実感できる社会を構築するとともに、ニュービジネスの創出と既存産業の活性化を通じて、より質の高い経済社会の実現を目指してまいります。

(より良く生きるための教育改革)

21世紀の日本を支える子供たちが、創造性豊かな立派な人間として成長することこそが、心の豊かな美しい国家の礎であります。そのため、思い切った教育改革を断行してまいります。

教育改革国民会議においては、人間性豊かで創造性に富む日本人の育成、新しい時代の多様で自由な学校づくり、教育振興基本計画の策定、教育基本法の見直しなど、教育各般にわたり議論を重ね、明日、中間報告が行われる予定であります。その後、公聴会を開催するなど国民の皆様の御意見を広く聞きながら、年内に最終報告が取りまとめられる予定であります。私は、これを受けて、小人数授業等の実施、十分な適性を有しない教員への対策、授業妨害やいじめへの対応、家庭教育の充実、奉仕活動や体験活動の促進、教育委員会の活性化などの幅広い改革を実行してまいります。

このため、来年の通常国会を教育改革国会と位置づけ、学校教育に関する事項、公立学校の学級編制、教職員定数の標準などに関する法改正を初め、直ちに取り組むべき課題について、一連の教育改革関連法案を提出したいと考えております。このほか、IT教育や大学改革の推進にも引き続き積極的に取り組んでまいります。

また、教育基本法の見直しについては、教育改革国民会議の最終報告を受けて、中央教育審議会等で幅広く国民的な議論を深め、しっかりと取り組んで成果を得てまいります。

子供のときによき節度を学び、青年時代には感情をコントロールすることを学び、中年には正義を学び、老年になってはよき助言者となることを学ぶという古い言葉があります。教育をよくするということは、決して子供たちの問題だけを論ずるのではなく、国民各層がよりよく生きられる仕組みをつくることであります。社会全体の豊かさを実現するための国民的な議論を進めることこそが、私の願いであります。

(安心と自立のための社会保障改革)

人生80年時代と言われて既に久しく、今日、我々は、世界一の長寿を享受できるようになり、これまで高齢者と言われてきた65歳の方々も、今や十分現役世代であります。来るべき世紀を活力に満ちた高齢社会とするため、豊かな知識、経験を有する高齢者が意欲と能力に応じて多様な働き方ができるよう、70歳まで働くことを選べる社会の実現に向けて努力してまいります。さらに、その後も、社会に参加し、安心して自立した生活を送ることができる、明るく活力ある高齢社会を実現してまいります。

このため、健康で自立した生活ができる健康寿命を長く延ばすことができるよう、働き盛りの二大死因であるがん、心筋梗塞や、要介護の原因となる脳卒中、痴呆、骨折について、メディカル・フロンティア戦略に基づき、総合的な取り組みを進めてまいります。そして、介護が必要となった方々には、本年4月から施行されている介護保険をよりよいものに育て、自立した生活を支援してまいります。

国民の将来に対する不安を解消するためには、国民生活のセーフティーネットである社会保障制度を再構築し、揺るぎないものにしていかなければなりません。今国会に提出する健康保険法等の改正案は、安定的な医療保険制度や疾病構造の変化等に対応した医療提供体制を築いていく上で不可欠であり、21世紀における医療制度の抜本改革に向けた第一歩となるものであります。

年金、医療、介護、雇用等、生涯を通じた社会保障全般について、実際に費用を負担し、給付を受ける生活者の視点に立ち、横断的、総合的な見直しを進めていくことが必要であります。社会保障は、教育と並び、長期間を見据えた設計が求められている制度であり、これまでの経緯を十分踏まえる必要はありますが、見直しに当たって、私は、リスクに対してはできる限りみずから備えをするという自己責任の原則に立つ必要があり、その意味で我が国の社会保障の基本は社会保険方式に置くべきであると考えます。その上で、国庫負担等の税負担について、政策上の必要性、制度設計における明確な公費負担の理念を国民に示し、広く検討していくことが肝要であると考えております。また、その前提として、若い世代が将来に対して明確なビジョンを描くことができるよう、世代間の公平にも十分配慮し、制度間の整合性の確保や、利用者の選択や民間活力の活用によるサービスの多様化を初め、給付内容や制度運用の徹底した見直しと効率化を図っていくことが重要であります。現在、社会保障構造の在り方について考える有識者会議において、こうした社会保障全体のあり方について御議論をいただいておりますが、早期に考え方を取りまとめ、広く国民的な議論を喚起し、21世紀において、社会保障全体について、明確な理念のもとに着実な改革が進められるように努力してまいります。

将来を担う人間性豊かな世代を育て、活力ある社会を築いていくため、少子化問題の克服は21世紀の重要な課題であります。子育てに希望と責任を持て、仕事と子育ての両立を図ることができるよう、また子供の多感な心も大切にしながら、夜間、短時間など、必要なときに身近で利用できる保育サービスの多様化や質の充実、地域子育て支援センター等の相談、支援体制の充実を初め、雇用、教育、住宅など、少子化問題の克服に向けて総合的な取り組みを進めてまいります。また、こうした観点からも、男女共同参画社会の実現に努めてまいります。

(21世紀への基盤整備〜日本経済の再構築〜)

〈経済対策と補正予算〉

 我が国の経済を新時代にふさわしい構造に改革し、21世紀における新たなる発展を確実にすることは、現下の最大の課題であります。

日本経済は、小渕前内閣以来の迅速にして大胆な経済政策によって、昨年春ごろを底に、緩やかながらも改善しつつあります。先日発表された4月から6月期の国民所得統計速報によれば、実質経済成長率は年率4.2%に達しております。また、企業収益は前年を大きく上回ってきております。このことは、景気は緩やかながら改善しているという政府の見方が誤りなかったことを裏づけていると言えます。

しかしながら、これをもって経済は万全と言えるわけではありません。雇用情勢はいまだ厳しく、消費は一進一退の状況にあり、企業の倒産件数も高水準になっております。

こうした状況の中、日本経済を正常な状態まで回復させるための守りの再構築を完遂するとともに、安定的かつ持続可能な成長軌道に乗せるための攻めの再構築を遂行していかなければなりません。

我が国経済は、まさに古い殻を破って新しい構造に転換する真っ最中にあると言えます。景気は今、まさに勝負どころにあります。私は、景気回復に軸足を置き、未来の発展に視線を据えて、断固たる決意で経済政策を進めてまいります。

近く取りまとめる経済対策の主眼は、我が国経済を、量的拡大志向から夢と安心と個性が沸き立つ世の中に変えることであります。この眼目は、IT革命の飛躍的な推進、循環型社会の構築など環境問題への対応、少子高齢化対策及び便利で住みやすいまちづくりなど都市基盤整備の4分野にあります。

景気の自律的回復に向けた動きをより確かなものとして、この経済対策を実現していくため、地域の動向にも細かく目配りしつつ、経済対策関連について総額3兆円台の後半の補正予算を編成することを決定いたしました。補正予算の編成に当たっては、歳出、歳入の見直し、平成11年度決算剰余金の活用などにより、国債の追加発行を極力抑制するよう努めてまいる所存であります。

〈平成13年度予算編成と公共事業の見直し〉

平成13年度予算については、景気を本格的な回復軌道に乗せるという考え方を維持しつつ、財政の効率化と質的改善を図るため、私みずからがリーダーシップを発揮し、新たに発足させた財政首脳会議を中心として、今後本格的に取り組んでまいります。編成に当たっては、総額7,000億円の日本新生特別枠において日本新生プランの重要4分野等を推進し、公共事業の抜本的な見直しに取り組むなど、中央省庁改革を好機として、施策の大胆な見直しと効率化を進め、公債発行額をできる限り圧縮し、新世紀のスタートにふさわしい予算となるよう全力を尽くす所存であります。

公共事業の見直しについては、先般、与党3党で合意が取りまとめられました。これを重く受けとめ、私は、公共事業ビッグバンともいうべき抜本的見直しを進め、21世紀にふさわしい、真に国民のためになる公共事業を実現してまいります。そのため、中止すべき事業は中止するなどの厳しい洗い直しをするとともに、受益と負担の明確化、事業評価システムの確立、入札・契約制度の改革を進めつつ、日本新生プラン4分野への思い切った重点化や事業間の連携を推進してまいります。

また、公共事業に対する国民の信頼を高めるため、公共工事の入札・契約手続の透明性、競争性の向上等を図る、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律案を今国会に提出いたします。

財政構造改革は、必ずなし遂げなければならない課題でありますが、21世紀の我が国経済社会のあり方と切り離しては論じられない課題であります。我が国の財政は厳しい状況にありますが、経済が自律的な回復軌道に乗る前に、性急に財政再建を優先させれば、景気回復を危うくさせることにもなりかねません。したがって、柔軟な財政刺激政策を行い、経済を正常な状態に回復させるための限定的な範囲で財政投入を行ってまいります。同時に、財政が将来も持続可能な仕組みをつくり上げるための準備は、今から始めなくてはなりません。財政の透明性の確保を図り、効率化と質的改善を進めながら、我が国の景気回復をより確かなものとし、その上で、税制のあり方、社会保障のあり方、さらには中央と地方との関係まで幅広く視野に入れて取り組んでまいります。

〈経済構造改革の推進〉

21世紀に向けて、我が国が力強い経済成長を達成していくためには、企業経営のダイナミズムを確保するための制度改革の推進、多様な雇用形態を踏まえた労働市場の発展、創造的技術開発のための環境整備などの思い切った経済構造改革に取り組むことが不可欠であります。情報化、高齢化、環境対応など、大きな時代の変化に対応し、民間の経済活動が自由濶達に行われるような環境を整備するため、産業新生会議における議論を踏まえ、企業法制の見直しや企業年金、資金調達、雇用システムのあり方等、経済構造改革の具体的な行動計画を年内に取りまとめるとともに、緊要性の高い政策課題については迅速に対応してまいります。

経済構造改革を進める上では、IT時代への対応や円滑な資金供給の確保など、中小企業対策に万全を期す必要があります。中小企業をめぐる金融情勢がいまだ厳しい中で、中小企業金融安定化特別保証制度の期限が来年3月に到来することを踏まえ、一般信用保証制度の拡充や、大型倒産、災害等のセーフティーネットに係る対応策など、十分な対策を実施したいと考えております。

経済の新生のためには、健全な金融システムの存在も欠かせません。不良債権問題を解決して金融の安定及び早期健全化を図り、我が国金融システムに対する内外の信認を確保することが不可欠であります。これまで、我が国の金融システムの安定化を図るため、金融機関に対する厳正な検査、監督を行うとともに、金融再生法に基づく破綻金融機関の迅速な処理や、早期健全化法に基づく公的資金の注入による資本の増強を実施してきました。この結果、不良債権の処理や金融機関の再編等も着実に進捗し、我が国の金融システムは一時期に比べて格段に安定度を増しております。平成14年3月末のペイオフ解禁を控え、預金者及び市場等から信頼され、さらに揺るぎない金融システムを再構築するよう、引き続き最大限の努力を図ってまいります。

また、地球温暖化問題については、2002年までの京都議定書発効を目指し、COP6の成功に全力を尽くすとともに、温室効果ガスの6%削減目標を達成するための国内制度の構築に総力で取り組みます。さらに、科学技術創造立国の実現に向けて、先端分野の研究開発の重点的な推進や研究環境の整備などに精力的に取り組みます。農林水産業と農山漁村の新たな発展についても引き続き力を注いでまいります。

(21世紀への基盤整備〜社会システムの再構築〜)

21世紀を目前にして、時代の要請との乖離が見られるさまざまな仕組みを、新時代にふさわしいものへと刷新していかなければなりません。

中央省庁改革がいよいよ来年1月に迫りました。21世紀の我が国にふさわしい行政システムを構築する歴史的な改革を真に実効あるものとするため、全力を尽くしてまいります。また、国、地方を通じ、行政に民間の知見を導入していくことは重要であります。政府としては、民間の方々の専門的な知識や経験を積極的に活用するため、任期つき採用制度に関する法律案を今国会に提出いたします。

さらなる行政改革を推進するため、情報公開、定員削減などを着実に進めるとともに、IT、医療・福祉、雇用、教育分野などを含め、来年3月には新しい規制改革推進3カ年計画を策定する一方、基礎的自治体のあり方も視野に入れた地方分権の推進、特殊法人等の見直しなどに積極的に取り組み、政府・与党一体となって、年内に行政改革大綱を策定いたします。さらに、国民本位の効率的で質の高い行政の実現のために、来年1月に導入される政策評価制度を円滑に実施するとともに、その法制化も、次期通常国会への法案提出を目指し、検討を進めてまいります。

司法制度改革についても、21世紀の国民社会・経済にとって重要な基盤として、広く国民の間で議論されることを期待するとともに、司法制度改革審議会での議論を踏まえ、積極的に対応してまいります。

警察をめぐる不祥事が続発したことを受けて、国民の警察に対する信頼を回復するため、警察法の改正案を今国会に提出し、警察行政の透明性の確保、国民の要望や意見への誠実な対応、時代の変化に対応する柔軟で強力な警察活動基盤の整備など、警察の刷新改革に全力を挙げて取り組んでまいります。

また、少年法改正については、現在、与党において、少年の健全育成や悪質な少年犯罪の防止という観点から、刑事処分を可能とする年齢の引き下げや事実認定手続の一層の適正化等について議論が進められておりますが、政府としても、この結果を受けて適切に対処してまいります。

国民の政治に対する信頼を高めるためにも、政治倫理の確立に向けた取り組みには一刻の猶予もありません。政治家一人一人が自覚すべきは当然でありますが、政治倫理の一層の確立を図るため、いわゆるあっせん利得をめぐる法的措置について今国会において十分議論し、結論を出していただきたいと考えております。

参議院の選挙制度改革や永住外国人に対する地方選挙権の付与についても、同様に御議論を進めていただきたいと考えております。

最近頻発している医療事故については、命の大切さに対する認識や医療機関における職場倫理の弛緩が憂慮されるところです。大学病院等の高度な医療を提供する病院の責任者を緊急招集し、安全管理体制の徹底を図りましたが、さらに、今後、幅広い専門家から成る会議で検討し、効果的な改善策に取り組んでまいります。

(21世紀の日本外交)

私は、7月の九州・沖縄サミットに引き続き、今月初めに国連ミレニアムサミットに出席し、21世紀をより平和で、地球に住む一人一人が恐怖と欠乏からの自由を享受し、持続的な繁栄を謳歌できるような世紀とするべきこと、そして、そのために安保理改革を含む国連改革が重要であることを訴えてまいりました。このような21世紀を構築するために、我が国は、国際社会の主要な一員としての自覚を持って構想し、発言し、行動していかなければなりません。私は、21世紀の国際社会を見据え、グローバルな座標軸を設定し、先見性と戦略性を持って、積極的かつ創造的に外交を展開していく考えであります。また、先般、南西アジア諸国を訪問し、多くの成果を得ました。今後とも、幅広く戦略的外交を積極的に展開し、世界から信頼される国家を実現してまいります。

地球的視野に立った外交を展開していく上で、我が国の外交の基軸である日米関係はますます重要であります。特に日米安保体制は、日本の安全のみならず、アジア太平洋地域全体の平和と安定に寄与するものであり、その信頼性の向上に努めていくことが重要です。先般、在日米軍駐留経費負担に係る特別協定の署名がなされたところでありますが、同協定について、できる限り速やかに国会で御審議の上、その締結につき御承認いただきたいと考えます。また、今後とも沖縄の振興に努めるとともに、沖縄県民の負担を軽減するべく、引き続きSACO最終報告の着実な実施に全力で取り組みます。特に普天間飛行場の移設、返還については、沖縄県及び地元地方公共団体との間の代替施設協議会等において、できるだけ早く成案を得るべく努力してまいります。

今月3日から5日にロシアのプーチン大統領が訪日され、本格的な平和条約交渉を行うとともに、経済分野の協力や国際問題について胸襟を開いて話し合いました。平和条約については、お互いに率直な思いを披瀝しつつ、これまでの両国間のすべての合意に依拠しつつ、4島の帰属の問題を解決することにより平和条約の締結を実現するため、交渉を継続することで一致しました。また、経済分野や国際舞台における日ロ協力の基本的な方向についても合意しました。今回、プーチン大統領との間で培った信頼関係に基づき、私の訪ロも視野に入れつつ、引き続き平和条約の締結に向けて全力を尽くしてまいります。

アジアは、通貨・金融危機を乗り越えて、再び以前の活力を取り戻し、さらに発展していくことが期待されています。他方、アジアには、いまだ多くの克服すべき課題が存在しており、その克服のため、政治的にも経済的にも一層の取り組みが必要であり、安全保障面でも対話と協力を強化していくことが必要であります。私は、21世紀をアジアの世紀とするため、アジアの平和と安定の基礎を築き、その成長と進歩を支援し、そしてアジアとの関係を「拡大と深化」させてまいります。

朝鮮半島情勢については、6月の南北首脳会談後も前向きな動きが継続しており、緊張緩和に向けた胎動が見られます。これを確実な流れにしていくため、政府としても、米韓と緊密に連携しながら、北東アジアの新時代の到来に向け全力を傾けてまいります。日朝関係についても、7月末の日朝外相会談の開催や、これを受けた国交正常化交渉第10回本会談が8月末に行われる等、前進が見られますが、政府としては、国交正常化交渉に粘り強く取り組むとともに、人道上の問題や安全保障上の懸案の解決に向け全力を傾けてまいる考えであります。明日から金大中大統領が訪日されますが、こうした朝鮮半島情勢の新たな展開について率直かつ緊密に議論するとともに、近年大きな進展を見せている日韓関係のさらなる発展と幅広い交流に向けた実り多い意見交換を行い、信頼関係を一層強固なものとしてまいります。

我が国と中国との関係は、アジア太平洋地域の安定と繁栄にとって重要であり、両国間の懸案について率直に議論するとともに、大局的見地に立って取り進めていくことが必要であります。来月には朱鎔基総理の訪日が予定されておりますが、21世紀に向けた中国との間の友好協力パートナーシップの一層の進展に向けて努力してまいります。

私は、アジア太平洋外交の展開に当たり、域内及び地域間の協力にも積極的に取り組み、開かれた自由で豊かなアジアの実現に向けて努力してまいります。来月には韓国においてASEM3が、翌11月にはブルネイにおいてAPEC首脳会議、シンガポールにおけるASEANプラス日中韓首脳会議が相次いで行われますが、これらを通じて、域内協力の機運をさらに高めつつ、地域間協力も発展させ、アジア太平洋における重層的な協力の枠組みの構築に努力する考えであります。

国民の生命財産を守るのは、政治の崇高な使命です。この使命を全うするために、防衛力整備に関しては、今年度で終了する中期防衛力整備計画に引き続く新たな防衛力整備計画を策定する方向で検討してまいります。また、有事法制は、自衛隊が文民統制のもとで国家国民の安全を確保するために必要であると考えております。法制化を目指した検討を開始するよう政府に要請するとの先般の与党の考え方を十分受けとめながら、政府としての対応を考えてまいります。

(21世紀へ)

今、シドニーオリンピックが華やかに行われております。日本の選手も、連日目をみはるような活躍をしています。世界の若者たちの精いっぱいの活躍は、見る人を感動させずにはおきません。全力を尽くすことがいかにすばらしいことかを雄弁に物語るものであります。

しかしながら、21世紀の世界には決して順風満帆の将来が約束されているわけではありません。IT化の進展によって、ますます国境の意味が希薄なものとなる一方、政治や経済問題の伝播のスピードは格段に上昇し、持てる者と持たざる者との格差は一層拡大しているのが現状であります。さきの九州・沖縄サミットの宣言に従い、我が国は果敢にこれらの課題に挑戦していく決意であります。

私は今、政権という重いボールを持つことになって、若き日に興じたラグビーを思い出します。私は、国民の皆様とスクラムを組んで、あらゆる困難を乗り切って、日本新生のゴールポストを目指して走り続ける覚悟であります。

日本新生という目標は、国民全体が共有することが必要です。皆様に広く御議論いただき、英知を結集して、この目標に向けて全力を尽くしてまいります。

国民の皆様、また議員各位の御理解と御協力を改めてお願い申し上げます。

イ 国務大臣の演説に対する質疑要旨(9月25日、26日)

9月21日の国務大臣の演説に対する質疑は、9月25日に鳩山由紀夫君(民主)、谷津義男君(自民)、岡田克也君(民主)及び北側一雄君(公明)が行い、翌26日には佐藤公治君(自由)、穀田恵二君(共産)、土井たか子君(社民)及び井上喜一君(保守)が行った。

質疑の主なものは、次のとおりである。

第1に、経済対策及び財政運営について、「[1]補正予算の必要性、[2]補正予算の財源、[3]財政構造改革に対する基本的な取り組み姿勢」等の質疑に対して、「[1]我が国経済は7合目から8合目には達しているが、まさに正念場であり、もう一押しが必要であるとの観点から補正予算を編成するが、その際、IT革命推進等の重要4分野を中心とした日本新生プランの具体化策に絞り込み、我が国経済の再構築を進めるとともに、民需中心の自律的回復に向けた動きを確かなものとしたい、[2]安易に国債発行に頼ることのできない財政事情を考慮し、歳出歳入の見直し、平成11年度決算剰余金を活用するなど、国債の追加発行を極力抑制するよう努め、特例公債についても発行を回避するよう編成過程において努める、[3]我が国の財政は厳しい状況にあり、財政構造改革は必ずなし遂げなければならないが、性急に財政再建を優先させれば景気回復を危うくさせることにもなりかねないため、まずは、経済を自律的な回復軌道に乗せるため、景気回復に軸足を置いた経済財政運営を行っていく」旨の答弁があった。

第2に、IT革命について、「[1]日本型IT社会、[2]IT革命の政策、[3]電気通信分野の競争促進に向けた法整備、[4]教育現場における情報化」等の質疑に対して、[1]すべての国民がデジタル情報を基盤とした情報、知識を共有し、自由に情報を交換することが可能な社会であり、だれもが家庭でインターネットを容易に利用でき、その楽しさと有用性を実感できる社会を構築するとともに、ニュービジネスの創出と既存産業の活性化を通じ、より質の高い経済社会の実現を目指していく、[2]IT化に向け明確な国家戦略を打ち立て、迅速かつ集中的に施策を実施するための基本的な枠組みとなるIT基本法案を今国会に提出するほか、情報化社会の基本ルールの整備を行うべく、IT革命を本格的に推進するための法案策定作業を急ぎ、また、超高速インターネットの整備、電子政府の早期実現、学校教育の情報化など、IT戦略会議における議論を踏まえつつ目標年次を定めて取り組む、[3]IT革命を推進していくためには、牽引役となる電気通信分野における競争促進が重要であり、電気通信審議会でのNTTのあり方を含む競争政策全般についての審議を踏まえ抜本的な見直しを行う、[4]光ファイバー網等の高速大容量ネットワークを活用した教育方法の研究等を進めながら、学校の情報通信インフラ整備に取り組む」旨の答弁があった。

第3に、教育改革について、「[1]教育改革の目的、[2]奉仕活動の義務化、[3]教育基本法改定、[4]教育の地方分権化」等の質疑に対して、「[1]21世紀の日本を支える子供たちが、人間性豊かで創造性に富む立派な人間として成長することこそが必要であるという観点から、知識に偏重した教育ではなく、体育、徳育、知育のバランスのとれた全人教育の推進を目指す、[2]課外活動などの教育活動や社会体験を通じて児童生徒に奉仕の精神を養い、将来奉仕活動等に参加する意欲や態度を培うことは、社会性や豊かな人間性をはぐくむ観点から有意義であり、奉仕活動を具体的にどう推進していくかは、児童生徒の発達段階や各学校及び地域の実態を踏まえて検討する、[3]教育全般についてさまざまな問題が生じている今日、制定以来半世紀を経た教育基本法の抜本的見直しなど、教育の根本にさかのぼった改革を進める必要があるため、教育改革国民会議の最終報告を受け、中央教育審議会等で幅広く国民的な議論を深めて成果を得たい、[4]教育改革実現のためには、国、都道府県、市町村がその責任と役割を果たし、地域社会と連携のもと、学校が子供や地域の実情に応じた教育活動を展開できることが重要であるため、地方分権一括法により、地域に根差した教育行政を主体的かつ積極的に展開し、また、保護者等の意向を反映するため、学校評議員制度の活用により地域に開かれた学校づくりを推進する」旨の答弁があった。

第4に、政治倫理の確立について、「[1]与党のあっせん利得罪処罰法案の問題点及び実効性、[2]企業・団体献金の完全禁止と政党助成制度の撤廃」等の質疑に対して、「[1]法制化に当たっては、解釈次第で適用範囲が変わらないよう犯罪の構成要件を明確にする必要があるほか、国民の要望を幅広く行政に反映させる政治の機能との関係に配慮する必要があり、与党案はこうした論点を十分踏まえ、野党案に比べ構成要件を明確にしつつ、処罰対象を大幅に拡大していると承知している、[2]政党に対する企業・団体献金については、最高裁判例でも、企業は憲法上の政治活動の自由の一環として政治資金の寄附の自由を持つことは認められ、これをおよそ悪と決めつける論拠は乏しく、また、政党助成金は、政治改革について議論を積み重ねた結果成立を見た政党助成法に基づき、政党の政治活動経費を国民全体で負担していただこうというもので、政党の政治活動の健全な発達を促進し、民主政治の健全な発展に寄与するものである」旨の答弁があった。

第5に、在日米軍基地問題について、「[1]在日米軍駐留経費負担に係る特別協定、[2]普天間飛行場問題」等の質疑に対して、「[1]駐留経費負担が日米安保体制の円滑かつ効果的運用に重要な役割を果たしていること及び同経費負担の節約合理化が必要であることを念頭に米側と協議しつつ、鋭意検討を行った結果、新たな特別協定に署名したが、その内容は適切だと考えている、[2]移設、返還については昨年末の閣議決定に従い、沖縄県及び地元地方公共団体との間の代替施設協議会等において、できるだけ早く成案を得るべく努力し、早期に移設が実現するよう全力で取り組む」旨の答弁があった。

第6に、朝鮮半島情勢について、「[1]今後の日韓関係に向けた抱負、[2]日朝関係の進め方、[3]日本人拉致容疑問題」等の質疑に対して、「[1]日韓首脳会談においては、朝鮮半島情勢の新たな展開を受けて、対北朝鮮政策について日韓米3カ国の緊密な連携を改めて確認するとともに、文化面や経済面での協力についても実り多い意見交換ができた成果を踏まえ、金大中大統領との信頼関係を基礎に強固な日韓パートナーシップを一層飛躍させていく、[2]軌道に乗り始めた国交正常化交渉に粘り強く取り組み、これを大きく前進させるとともに、人道上の問題や安全保障上の懸案の解決に向け全力を傾ける、[3]先般の日朝国交正常化交渉においても、この問題は国交正常化のためには避けて通れないことを明確に指摘しており、今後も解決に向けて粘り強く取り組んでいく」旨の答弁があった。

第7に、永住外国人地方参政権付与について、「[1]付与の賛否、[2]憲法上禁止されないとの最高裁判決に対する見解」等の質疑に対して、「[1]我が国の制度の根幹にかかわる重要な問題で、賛成論から反対論までさまざまな意見があり、真剣な論議が行われている状況の中、総理・総裁として、その議論の内容について意見を申し上げるべきではないと考えており、各党各会派における国会等での議論を進めてほしい、[2]選挙権付与の対象が日本国民たる住民に限られていることが、憲法に違反するものではないとする判決のいわゆる傍論として示されたものと承知しているが、同判決も含め、種々の意見に耳を傾け、国会等での議論の行方に注意を払っていく」旨の答弁があった。

第8に、少年法改正及び少年犯罪対策について、「[1]少年法改正案、[2]少年犯罪対策、[3]犯罪少年の社会復帰促進の施策」等の質疑に対して、「[1]深刻化する少年犯罪に対処するため、与党3党においても少年法のあり方について議論され、改正案が提案されると承知しているが、国会での議論を踏まえ適切に対処してまいりたい、[2]少年法の改正のみならず、家庭、学校、地域、関係機関等が協力し、社会が一丸となって取り組んでいくことが必要であるとの観点から、政府の青少年対策推進会議が、重大な非行の前兆段階での的確な対応、悪質な少年犯罪に対する厳正な措置、特異重大事件に関する動機、原因の解明等を内容とする当面とるべき措置を取りまとめており、これを踏まえ関係省庁において諸対策を総合的に推進している、[3]少年に罪の意識を持たせ、生命のとうとさを認識させるとともに、奉仕活動等多様な社会経験をさせるほか、家族、学校等との連携を強化しつつ保護観察の充実にも努めており、今後ともさらに少年の特性に応じた効果的な処遇に努める」旨の答弁があった。

第9に、中小企業対策について、「[1]特別信用保証制度の期限到来、[2]中小企業金融対策」等の質疑に対して、「[1]中小企業をめぐる金融情勢がいまだ厳しい中、特別保証制度の期限が来年3月に到来することを踏まえ、一般信用保証制度の拡充や、大型倒産、災害等のセーフティーネットに係る対応策を講じていき、こうした措置を通じ、モラルハザードの防止に配慮しつつ、事業に対して前向きに取り組む中小企業者を強力に支援してまいりたい、[2]早期健全化法に基づき資本増強を行った金融機関は、今年度末の中小企業向け貸し出しの残高について、昨年度末の実績をさらに上回る計画としており、政府としては、その履行状況を公表するとともに、ヒアリングを行うなど中小企業に対する円滑な資金供給のため適切に対処する」旨の答弁があった。

第10に、食料・農業政策について、「[1]食料自給率目標達成への取り組み、[2]稲作農家の経営安定対策を含む総合的な米対策、[3]WTO農業交渉提案の取りまとめ」等の質疑に対して、「[1]生産性や品質の向上等の取り組みを推進するため、生産基盤の整備等による優良農地の確保、効率的かつ安定的な農業経営の育成、技術開発の推進等を図るとともに、望ましい食料消費の姿を目指した栄養バランスの改善等に努める、[2]米の需給が大幅に緩和していることに加え、今年産の米の豊作が見込まれることから、米の価格が下落している状況にかんがみ、米の需給の早期改善と稲作経営の安定を図る必要があるため、在庫水準の早期適正化、13年産米の生産調整、稲作経営安定対策などを柱とするなど総合的な米対策を講ずる、[3]農業の多面的機能や食料安全保障の重要性への配慮、輸出国と輸入国の権利義務バランスの回復が確保され、各国の農業が共存できる貿易ルールの確立を図るとの基本的考え方に基づき、国民的な理解を得ながら交渉提案を取りまとめたい」旨の答弁があった。

第11に、社会保障制度について、「[1]社会保障の財源、[2]10月からの介護保険料徴収に伴う低所得者対策、[3]地方自治体の介護保険料減免、[4]生活者の立場に立った医療保険制度改革」等の質疑に対して、「[1]国民みずからがあらかじめ老後の生活や病気などのリスクに備えるのが基本であり、給付と負担の関係がより明確な社会保険方式を基本に、国庫負担等の税負担を組み合わせ、利用者も負担しながら財源の確保に努めていかなければならない、[2]低所得者に大きな負担とならないよう、利用料について月々の負担上限額を一般より低い額とし、保険料についても課税状況に応じて低く設定するなど必要な配慮を行っている、[3]介護保険制度は介護を国民が皆で支え合おうという制度であり、一般財源を用いて一律に低所得者の保険料を減免することは、制度の趣旨とは必ずしも合致しない、[4]健康保険法等改正法及び医療法改正法案は、医療保険制度の安定を図るとともに、良質で効率的な医療提供体制の確立を目的とするものであり、医療制度改革は、国民皆保険を維持し、生活者である国民が安心して良質な医療を受けられることが基本であるとの考え方に基づき、国民各層の理解を得ながら改革を進めていく」旨の答弁があった。

第12に、災害対策について、「[1]被災者生活再建支援法改正の必要性、[2]被災者住宅再建支援法制定の検討、[3]被災者に対するきめ細かな対策の実施、[4]阪神・淡路大震災被災者に対する災害融資や二重ローンの負担軽減対策にも緊急に支援策を講じるべきではないか」等の質疑に対して、「[1]被災者生活再建支援法が6党の共同提案により成立し、昨年4月から運用を開始したところであり、まずは、現行制度を円滑かつ適切に運用し、実績を積み重ねることが重要である、[2]国土庁に住宅再建支援の在り方に関する検討委員会を設置して議論しており、今後、同委員会の報告、その他の意見を総合的に勘案しつつ、住宅再建支援のあり方について検討していく、[3]災害の実態に応じて、災害救助法の適用、雇用調整助成金の支給、緊急地域雇用特別交付金事業の実施、中小企業者の事業維持のための政府系中小企業金融機関における災害復旧貸し付け取り扱い実施等、被災者の生活、雇用、営業の維持に関する対策を実施している、[4]災害援護資金貸付金の償還について法令の弾力的な運用を図るなど、被災者の状況に合わせ適切に処置している一方、二重ローン問題は、民間金融機関においては被災者の事情を踏まえ、住宅資金等新規の低利融資や既往資金の条件変更等の相談に応じてきており、住宅金融公庫では、災害復興住宅融資や既存債務の返済条件の緩和について特別措置を講じている」旨の答弁があった。

その他、憲法改正、有事法制、日ロ首脳会談、産業廃棄物最終処分場問題、首都機能移転、参院選挙制度改革等の問題について、質疑が行われた。

(2) 主な議案等の審議

年月日 議題等
平成12年
 9月21日
○国務大臣の演説
  • 森内閣総理大臣の所信表明演説
9月25日 ○国務大臣の演説に対する質疑

質疑

鳩山由紀夫君(民主)、谷津義男君(自民)、岡田克也君(民主)、北側一雄君(公明)

答弁

森内閣総理大臣、保岡法務大臣、続総務庁長官
9月26日 ○国務大臣の演説に対する質疑

質疑

佐藤公治君(自由)、穀田恵二君(共産)、土井たか子君(社民)、井上喜一君(保守)

答弁

森内閣総理大臣、扇建設大臣
10月3日 ○趣旨説明
  • 健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
  • 医療法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
説明

津島厚生大臣

質疑

鈴木俊一君(自民)

答弁

森内閣総理大臣、津島厚生大臣
10月5日 ○趣旨説明
  • 公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律案(亀井善之君外17名提出)
  • 公職にある者等による特定の者に利益を得させる目的でのあっせん行為に係る収賄等の処罰に関する法律案(菅直人君外12名提出)
説明

亀井善之君(自民)

議長は、第2案について、提出者の出席がない旨を告げた。

質疑

柳澤伯夫君(自民)、河上覃雄君(公明)、松浪健四郎君(保守)

答弁

森内閣総理大臣、尾身幸次君(自民)、保岡法務大臣、漆原良夫君(公明)、小池百合子君(保守)
10月24日 ○趣旨説明
  • 高度情報通信ネットワーク社会形成基本法案(内閣提出)
説明

中川内閣官房長官

質疑

伊藤忠治君(民主)、久保哲司君(公明)、樋高剛君(自由)、松本善明君(共産)、辻元清美君(社民)

答弁

森内閣総理大臣、中川内閣官房長官、宮澤大蔵大臣、保岡 法務大臣
10月26日 ○議院運営委員長藤井孝男君解任決議案(赤松広隆君外7名提出)〈否決〉

趣旨弁明

今田保典君(民主)

討論

東順治君(公明)、工藤堅太郎君(自由)

○公職選挙法の一部を改正する法律案(参議院提出)〈可決〉

討論

佐藤観樹君(民主)、小林興起君(自民)、塩田晋君(自由)、児玉健次君(共産)、今川正美君(社民)
10月31日 ○趣旨説明
  • 本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第24条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件
説明

河野外務大臣

質疑

首藤信彦君(民主)

答弁

河野外務大臣、福田内閣官房長官、谷農林水産大臣
11月 2日 ○健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)〈可決〉

○医療法等の一部を改正する法律案(内閣提出)〈可決〉 討論

釘宮磐君(民主)、鴨下一郎君(自民)、武山百合子君(自由)、古由起子君(共産)、阿部知子君(社民)

11月7日

○趣旨説明
  • ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律案(内閣提出)
  • ヒト胚等の作成及び利用の規制に関する法律案(近藤昭一君外3名提出)
説明

大島科学技術庁長官、山谷えり子君(民主)

質疑

平野博文君(民主)、斉藤鉄夫君(公明)

答弁

大島科学技術庁長官、近藤昭一君(民主)、城島正光君(民主)、樽床伸二君(民主)
11月9日 ○高度情報通信ネットワーク社会形成基本法案(内閣提出)〈修正〉

討論

黄川田徹君(自由)、矢島恒夫君(共産)、植田至紀君(社民)

○趣旨説明

  • 周辺事態に際して実施する船舶検査活動に関する法律案(内閣提出)
説明

虎島防衛庁長官

質疑

桑原豊君(民主)、土田龍司君(自由)、山口富男君(共産)、東門美津子君(社民)

答弁

河野外務大臣、虎島防衛庁長官、続総務庁長官、扇建設大臣
11月10日 ○公職にある者等による特定の者に利益を得させる目的でのあっせん行為に係る収賄等の処罰に関する法律案(菅直人君外12名提出)〈否決〉

○公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律案(亀井善之君外17名提出)〈可決〉

討論(以上2件)

長浜博行君(民主)、細田博之君(自民)

○国務大臣の演説
  • 宮澤大蔵大臣の財政演説
11月14日 ○国務大臣の演説に対する質疑

質疑

筒井信隆君(民主)、中塚一宏君(自由)、佐々木憲昭君(共産)、横光克彦君(社民)

答弁

森内閣総理大臣、宮澤大蔵大臣、堺屋経済企画庁長官、続総務庁長官、西田自治大臣
11月17日 ○第29回オリンピック競技大会大阪招致に関する決議案(中山太郎君外5名提出)〈可決〉

趣旨弁明

中野寛成君(民主)

○周辺事態に際して実施する船舶検査活動に関する法律案(内閣提出)〈可決〉

討論

達増拓也君(自由)、赤嶺政賢君(共産)、山口わか子君(社民)
11月20日 ○森内閣不信任決議案(鳩山由紀夫君外11名提出)

趣旨弁明

鳩山由紀夫君(民主)

討論

中馬弘毅君(自民)、石井一君(民主)、東順治君(公明)、武山百合子君(自由)、松浪健四郎君(保守)

(休憩)

(延会)
11月21日 ○綿貫議長不信任決議案(赤松広隆君外2名提出)〈否決〉

趣旨弁明

小沢鋭仁君(民主)

討論

砂田圭佑君(自民)、工藤堅太郎君(自由)

○森内閣不信任決議案(鳩山由紀夫君外11名提出)〈否決〉

討論

松本善明君(共産)、中西績介君(社民)

(休憩)

○平成12年度一般会計補正予算(第1号)〈可決〉

平成12年度特別会計補正予算(特第1号)〈可決〉

平成12年度政府関係機関補正予算(機第1号)〈可決〉

討論(以上3件)

野田佳彦君(民主)、西川太一郎君(保守)、鈴木淑夫君(自由)、塩川鉄也君(共産)、重野安正君(社民)

○国会法の一部を改正する法律案(議院運営委員長提出)〈可決〉

○衆議院規則の一部を改正する規則案(議院運営委員長提出)〈可決〉

趣旨弁明(以上2件)

藤井孝男君(自民)
11月28日 ○趣旨説明
  • 確定拠出年金法案(内閣提出)
説明

津島厚生大臣

質疑

熊代昭彦君(自民)、荒井聰君(民主)、都築譲君(自由)、 小沢和秋君(共産)、金子哲夫君(社民)

答弁

津島厚生大臣、相沢金融再生委員会委員長、吉川労働大臣

11月30日

○国会法の一部を改正する法律案(本院提出、参議院回付)〈同意〉
12月 1日 ○請願563件〈採択〉

(3) 決議([ ]は提出会派)

○ 可決したもの

第29回オリンピック競技大会大阪招致に関する決議案(中山太郎君外5名提出、決議第2号)[自民・民主・公明・自由・21クラブ・保守](12.11.17)

我が国において、東京オリンピック以来となるオリンピック夏季競技大会を開催することは、国際親善とスポーツ振興にとって極めて意義深いものである。

衆議院は、来る2008年の第29回オリンピック競技大会を大阪市に招致するため、その招致活動を強力に推進するとともに、その準備態勢を整備すべきものと認める。

右決議する。

○ 否決したもの

議院運営委員長藤井孝男君解任決議案(赤松広隆君外7名提出、決議第1号)[民主・自由・共産・社民](12.10.26)

本院は、議院運営委員長藤井孝男君を解任する。

右決議する。

森内閣不信任決議案(鳩山由紀夫君外11名提出、決議第3号)[民主・自由・共産・社民](12.11.21)

本院は、森内閣を信任せず。

右決議する。

綿貫議長不信任決議案(赤松広隆君外2名提出、決議第4号)[民主](12.11.21)

本院は、衆議院議長綿貫民輔君を信任せず。

右決議する。


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