会長 | 中山 太郎君 | 自民 | |||
幹事 | 石川 要三君 | 自民 | 幹事 | 津島 雄二君 | 自民 |
幹事 | 中川 昭一君 | 自民 | 幹事 | 葉梨 信行君 | 自民 |
幹事 | 保岡 興治君 | 自民 | 幹事 | 鹿野 道彦君 | 民主 |
幹事 | 仙谷 由人君 | 民主 | 幹事 | 中川 正春君 | 民主 |
幹事 | 斉藤 鉄夫君 | 公明 | 伊藤 公介君 | 自民 | |
伊藤 達也君 | 自民 | 今村 雅弘君 | 自民 | ||
奥野 誠亮君 | 自民 | 金子 一義君 | 自民 | ||
高村 正彦君 | 自民 | 佐田 玄一郎君 | 自民 | ||
下村 博文君 | 自民 | 菅 義偉君 | 自民 | ||
中曽根 康弘君 | 自民 | 中山 正暉君 | 自民 | ||
西田 司君 | 自民 | 鳩山 邦夫君 | 自民 | ||
二田 孝治君 | 自民 | 松本 和那君 | 自民 | ||
三塚 博君 | 自民 | 森岡 正宏君 | 自民 | ||
山崎 拓君 | 自民 | 山本 公一君 | 自民 | ||
生方 幸夫君 | 民主 | 枝野 幸男君 | 民主 | ||
大石 尚子君 | 民主 | 大出 彰君 | 民主 | ||
桑原 豊君 | 民主 | 小林 守君 | 民主 | ||
島 聡君 | 民主 | 筒井 信隆君 | 民主 | ||
細野 豪志君 | 民主 | 前原 誠司君 | 民主 | ||
松沢 成文君 | 民主 | 上田 勇君 | 公明 | ||
太田 昭宏君 | 公明 | 塩田 晋君 | 自由 | ||
藤島 正之君 | 自由 | 春名 直章君 | 共産 | ||
山口 富男君 | 共産 | 金子 哲夫君 | 社民 | ||
土井 たか子君 | 社民 | 野田 毅君 | 保守 | ||
近藤 基彦君 | 21クラブ |
第151回国会の調査は、 [1]第150回国会に引き続き、21世紀の日本のあるべき姿についての参考人意見聴取及び質疑、 [2]日本国憲法についての委員の意見表明を行った。
4月16日には宮城県仙台市にて、6月4日には兵庫県神戸市にて、それぞれいわゆる地方公聴会を開会した。
以下では、第151回国会において招致された参考人9名の意見及びこれらに対する委員の質疑の概要を、テーマごとに分類して紹介する。なお、この分類は、説明の便宜を図るためのものであって、調査会が参考人の選定に当たって意図的にこれらのテーマを設けたものではないことを、お断りさせていただく。
ある参考人からは、グローバリゼーションが国家に及ぼす影響について、西欧諸国における実例を挙げながら、次のような意見が述べられた。
[1]国家の役割は調整的・手続的なものに変容する、 [2]グローバリゼーションが進展する一方で、経済関係等の強化を基軸とした地域統合(リージョン)の形成が図られ、多様な主体による行政運営(マルチ・レベル・ガヴァナンス)が求められる、 [3]国家の方向性を見据えた上でグローバリゼーションに対処していく必要がある。
これに対して、東アジアにおけるリージョン形成及びマルチ・レベル・ガヴァナンスの可能性、グローバリゼーションへの対処の在り方、EU及び東アジアの今後の動向等について質疑がなされた。
別の参考人からは、「国家をどう考えるか」という観点から、[1]国家は、グローバル化が進む世界においても、モノ、カネのようには自在に移動することのできない「ヒト」を守る存在として依然として重要である、 [2]個人は、家族や地域社会、国家といった多層的社会の中でそれぞれに応じたアイデンティティを有しており、国家へのアイデンティティを有する限りで「国民」となる、 [3]現実の国家は、特定の地域の地理歴史環境に育まれた文化を担った人々(=民族)で構成されているという認識が重要である等の意見が述べられた。
また、これらの点を踏まえて、21世紀の課題として、中国・北朝鮮の脅威や移民の受入れ等の国家的問題に対処するためにも、日本は対外的な意味での「国家」を形成する必要があるとの提言がなされた。
これに対して、グローバル化の時代において「国家」を論ずることの必要性、日本人の国民意識の希薄化の問題点、アジアの人々との共通の歴史認識の必要性等について質疑がなされた。
参考人からは、グローバル化、分権化等の進展に伴い国家の集権的な力が低下し、また、国民にプラスを配分する政治から国民にマイナスを強いる政治へと転換する時代を迎えるに当たり、日本の将来へのビジョンを明らかにすべきであるとの認識から、主として、以下のような意見が述べられた。
[1]日米関係を基軸としつつ、韓国、北朝鮮をはじめとする近隣諸国とのパートナーシップ(北東アジア「共同の家」)を確立すべきである、[2]円の国際化及び日本の輸入大国化を実現するために構造改革を断行すべきである、[3]多民族・多文化共生社会の実現を図るべきである。
これに対して、北東アジア「共同の家」の実現の可能性、永住外国人への地 方参政権付与の是非、日本とアジア諸国との間の歴史認識の相互理解を深めるための教育の必要性等について質疑がなされた。
ある参考人からは、現在の少子化はバブル崩壊やリストラによる経済的不安に一因があり、出産適齢期の女性の数がピークとなる今後5年以内に、経済の安定と出産しやすい環境を作る政策を講ずるべきであるとの意見が述べられた。
また、日本の高齢化、人口の減少は世界に例のない速さで進行しており、今後、財政の悪化や介護におけるマンパワーの不足等の様々な問題が懸念されるが、少子高齢化対策には政治家がリーダーシップを発揮していかなければいけないとの意見が述べられた。
これに対して、少子化の要因と効果的な対策、外国人労働者の受入れを検討する必要性、世界の人口の増加とそれが及ぼす影響等について質疑がなされた。
別の参考人からは、超高齢社会においては、働く意欲のある高齢者の労働力を活用するためにも、求職における年齢制限を廃止していくべきであるとの意見が述べられた。
さらに、超高齢社会を迎え、 [1]国家がどこまで個人の生活に関与するのかに関して、ナショナル・ミニマムの保障(その者が給付を必要とする原因を問わずに最低限度の給付は行う制度)や皆保険を維持していくべきかについての議論が必要であるとともに、 [2]専業主婦の優遇税制、在職老齢年金制度等のような労働意欲の喪失を引き起こす制度を見直すべきであるとの意見が述べられた。
また、介護主体の多様化に応じた政策、介護サービスの提供にふさわしい地方自治の在り方等を検討する必要があるとの意見が述べられた。
これに対して、年金制度の空洞化を阻止する方策、自治体を再編する際の適正な規模、社会保障における「最低限の保障」の意味、社会保障における自己責任の考えと憲法25条の生存権の理念との関係等について質疑がなされた。
ある参考人からは、自己のことのみしか考えない「利己主義」の横行を排するため、憲法の前文に、国民各人が自分をよくするためにも社会をよくし、自国のみならず他の国をよくしていく責任を有することを明記し、教育改革、高齢者の能力の活用等により国民の資質を伸ばし、他国から尊敬される国となることを目指すべきであるとの意見が述べられた。
また、 [1]21世紀は、科学技術の分野における競争が、国家間の争いとして決定的なものとなるので、サイエンスとヒューマニズムを一体化し、思いやりの心を持った研究・開発が必要である、 [2]ノーベル賞を受賞した白川英樹博士の研究のように目立たないが重要な研究を見いだすためには、事後評価制度を確立し、これによって事前に正当に研究の価値を見抜くことができる能力を備えた「目利き」役を発掘することが重要である、との意見が述べられた。
これに対して、現在の教育制度の問題点、科学技術の振興の方策等について質疑がなされた。
別の参考人からは、ゲノム科学研究者の立場から、今や、生命科学は新たな時代を迎えつつあり、生命科学の進展は、学問領域及び産業領域の双方に大きな転換をもたらしているとした上で、 [1]国家として、生命科学に投資を行うことは正しい選択であって、遺伝子ネットワークの解明は、国民の福祉向上に必ず役立つ、 [2]しかし、同時に、生命倫理の観点から、その成果の使用の仕方をきちんと考えなければならない、 [3]また、ゲノム解析の完成後、どのような科学が求められ、またそれを遂行するためにどのような行政、産業が求められるかを見据える時期が来たとの意見が述べられた。
これに対して、ヒトゲノム研究の推進と人間の尊厳との抵触、今後のゲノム研究体制の在り方、ゲノム研究の成果の公開等について質疑がなされた。
さらに別の参考人からは、21世紀には、IT革命やグローバル化を前提とした憲法が制定されるべきであり、その際には、以下の点が考慮されるべきであるとの意見が述べられた。
[1]ネット・アクセス権及びプライバシー保護規定を憲法に明記するとともに、ネット・セキュリティを確立すべきである、 [2]電子投票制度を導入し、国民が直接リーダーを選出する制度を実現すべきである、 [3]投票を事実上、義務化し、18歳以上の国民へ投票権を付与すべきである、 [4]自衛の場合を除き、紛争の解決は、我が国も参加する国連軍のような集団的安全保障に委ねるべきである、 [5]国際社会に貢献すべきである、 [6]インターネット時代に対応した教育改革等を推進すべきである、 [7]人材を確保するため移民を受け入れるべきである、[8]独占企業禁止規定を憲法に明記すべきである。
これに対して、IT革命の推進における官民の役割、IT社会における福祉政策の在り方、IT革命を雇用創出に結び付ける方策等について質疑がなされた。
参考人からは、21世紀の「地方」の住民が民主主義の原動力として政治の中心的役割を担っていくとした上で、 [1]地方自治権は地方自治体が有する固有の権利であり、民主主義の根幹を支える制度であるから、憲法改正によってもその存在を否定できない、 [2]地方自治権を強化し、国民主権の内容を理念としては直接民主主義的に理解し直すともに、住民参加、特に住民投票を積極的に再評価すべき、 [3]政治の担当者は、国民又は住民から、「国民又は住民のために何を守るべきか」を的確に判断できる能力、すなわち高い識見と倫理的高潔さを期待されている、との意見が述べられた。
これに対して、地方自治における住民投票の在り方、「地方自治の本旨」の明確化、永住外国人の地方参政権問題等について質疑がなされた。
各委員の憲法に関する意見は、「日本国憲法についての自由討議」(平成13年6月14日)においてだけでなく、「21世紀の日本のあるべき姿に関する参考人質疑」や地方公聴会の際にも随時開陳された。これらの機会において表明された委員の憲法に関する意見等は、極めて多岐にわたる。以下に、これらすべての機会における発言を合わせて、そこにおいて表明された委員の憲法に関する意見等を主要な論点ごとに概説する。
この間を通じて、複数の参考人と委員との間で議論が交わされたのは、やはり9条・安全保障をめぐる問題であった。特に、憲法学者である一参考人が自衛隊や日米安保条約を違憲とする「学界の通説」を紹介したところ、「観念的もしくは幻想的」、「日本という国がなくなってしまったら、政治としての責任を果たせるのか」という批判が出る一方で、「21世紀の中で9条の完全実施の条件を広げたい」、「この憲法を守ることが21世紀の日本の使命である」という感想が述べられるなど、9条をめぐる意見の対立の鋭さがうかがわれた。
このほか、委員からは「憲法制定時と異なり、現在の日本は、国際社会の共同の利益のための行動をすることが世界から期待されているとして、9条2項を削除すべき」という意見や、「国際貢献というのであれば、集団的自衛権の行使を可能にすることよりも、集団的安全保障に積極的にかかわっていく旨憲法に書き込むべき」という意見が出た一方で、「9条や非核三原則が20世紀後半の我が国の平和と経済発展に寄与した」という意見や「世界では9条に学び、この精神を広めようとする運動が進められている」という意見が出された。
この点についても、複数の参考人と委員との間で頻繁に質疑応答がなされ、首相公選制のメリット及びデメリット、首相公選制を導入した場合の首相と天皇の関係等について議論が交わされた。
首相公選制に関する委員の意見としては、その導入に積極的な委員から「21世紀という速いスピードの時代には首相を国民が直接選んでいく制度が望ましい」という意見が出る一方で、複数の委員からは「首相公選制はポピュリズムの弊害が懸念される」との意見が出された。
この点について発言した複数の委員から「憲法の各条章の区分に従って、憲法と現実の乖離を調査すべき」との意見が出された。ただし、改憲を主張する委員が、調査の結果判明した「乖離」を解消すべく憲法の規定を改正することを提案するのに対し、護憲の立場に立つ委員は、その「乖離」を生じさせた原因を除去して現実を憲法の規定に合致させることを主張しており、調査しようとするテーマは同一でもその目的は大きく異なっている。
また、「国民の意見を十分に聴くべきである」、「国民を憲法論議に取り込んでいくことが重要である」との意見も、複数の委員から出された。
最後に、第151回国会中に行われた2回の地方公聴会における議論の概要を記することとする。
意見陳述者からは、社会の変化に対応した憲法、憲法の理念を活かした町づくり、環境問題への対応、我が国の伝統に則した憲法、憲法の現代的意義、女性の権利、9条のロマン、改正手続の整備、憲法の誠実な遵守等について意見が述べられた。
その後、委員から憲法の定める公務員の憲法尊重擁護義務と改正条項の関係、9条、環境権、情報公開、首相公選制、憲法裁判所制度等について質疑が行われ、さらに、傍聴者2人からも意見を聴取した。
意見陳述者からは、平和の技術による国際貢献、地方行政における憲法の具体的実践、憲法の生存権を踏まえた被災者支援の重要性、立憲君主国家であることの明示等の点からの憲法の見直し、人間の安全保障、平和憲法を守り活かす政策、国民の健康権の保障、時代の変化に対応した憲法、憲法改正の具体的方策、現実を憲法の理念に近づけること等について意見が述べられた。
その後、委員から首相公選制、地方自治の在り方、災害に関する規定を憲法上明記する必要性、災害時の国と自治体の権限分担、天皇を元首とする規定を設けることの可否、憲法の観点から見た被災者に対する公的支援の問題、日米安保体制の強化の憲法適合性等について質疑が行われ、さらに、傍聴者5名からも意見を聴取した。