会長 | 中山 太郎君 | 自民 | |||
幹事 | 石川 要三君 | 自民 | 幹事 | 津島 雄二君 | 自民 |
幹事 | 中川 昭一君 | 自民 | 幹事 | 葉梨 信行君 | 自民 |
幹事 | 保岡 興治君 | 自民 | 幹事 | 鹿野 道彦君 | 民主 |
幹事 | 中川 正春君 | 民主 | 幹事 | 細川 律夫君 | 民主 |
幹事 | 斉藤 鉄夫君 | 公明 | 伊藤 公介君 | 自民 | |
伊藤 達也君 | 自民 | 今村 雅弘君 | 自民 | ||
奥野 誠亮君 | 自民 | 金子 一義君 | 自民 | ||
高村 正彦君 | 自民 | 近藤 基彦君 | 自民 | ||
佐田 玄一郎君 | 自民 | 下村 博文君 | 自民 | ||
菅 義偉君 | 自民 | 中曽根 康弘君 | 自民 | ||
中山 正暉君 | 自民 | 西田 司君 | 自民 | ||
鳩山 邦夫君 | 自民 | 二田 孝治君 | 自民 | ||
松本 和那君 | 自民 | 三塚 博君 | 自民 | ||
森岡 正宏君 | 自民 | 山崎 拓君 | 自民 | ||
山本 公一君 | 自民 | 大出 彰君 | 民主 | ||
岡田 克也君 | 民主 | 小林 憲司君 | 民主 | ||
今野 東君 | 民主 | 島 聡君 | 民主 | ||
首藤 信彦君 | 民主 | 仙谷 由人君 | 民主 | ||
筒井 信隆君 | 民主 | 中野 寛成君 | 民主 | ||
中村 哲治君 | 民主 | 山田 敏雅君 | 民主 | ||
上田 勇君 | 公明 | 太田 昭宏君 | 公明 | ||
都築 譲君 | 自由 | 藤島 正之君 | 自由 | ||
春名 直章君 | 共産 | 山口 富男君 | 共産 | ||
金子 哲夫君 | 社民 | 土井 たか子君 | 社民 | ||
野田 毅君 | 保守 |
第153回国会の調査では、まず、「ロシア等欧州各国及びイスラエル憲法調査議員団」による海外派遣の報告を聴取した。次に、「21世紀の日本のあるべき姿」のテーマの下で「国際連合と安全保障」、「統治機構に関する諸問題」、「人権保障に関する諸問題」について、それぞれ参考人質疑を行い、さらに、「21世紀の日本のあるべき姿」について委員間の自由討議を行った。
11月26日には愛知県名古屋市で、いわゆる地方公聴会を開会した。
「ロシア等欧州各国及びイスラエル憲法調査議員団」による海外派遣について、団長である会長から報告を聴取した後、派遣議員及び委員から発言がなされた。
ある参考人からは、憲法は国家の基本理念の表明であり、各世代が自ら決定すべきものであるという考えの下に、第二次大戦後から現在までの国際社会と日本の動向に言及しつつ、日本の憲法のあり方について「護憲的改憲論」が述べられた。その概要は、現憲法が戦後の日本のために果たしてきた役割は非常に大きいが、現在では、 [1]9条に関して規範と現実が乖離し国民の間に憲法に対する「冷笑主義」が広がっている、 [2]日本人が自国偏愛の一国平和主義に陥っている等の問題が生じているため、現憲法の役割を十分に評価した上で憲法を改正するべきであるというものであった。また、9条は自国防衛と国際社会の安全保障の二面的意義を有しており、その区分を明確に認識し、後者の観点から、我が国も国連の集団安全保障に積極的に参加すべきであるとの意見が述べられた。
これに対して、米国での同時多発テロ事件と国連の集団安全保障の関係、我が国が国連の集団安全保障に対してとるべき態度等について質疑がなされた。
別の参考人からは、冷戦後、国際社会は、米国の一極体制と多国間協調主義との調和に向けて努力してきたが、グローバル化のマイナス要因として地域紛争、テロ、大量破壊兵器の拡散等の問題に直面しているとの認識を前提に、 [1]米国同時多発テロ事件に対する米国の軍事作戦の成否が、今後の国際秩序の方向性を決定する、 [2]いずれにしても、米国と価値観を共有するか否かを対立軸とする国際秩序が形成される、 [3]国連の将来は楽観視できないとの意見が述べられた。さらに、我が国の安全保障に関し、 [1]国益を明らかにし、明確な国家戦略を構築し、その実現のために法的枠組み等を論ずるべきである、 [2]日米同盟は、脅威を見積もり、国際情勢の変化を見極めた上で、これを強化する観点から再度定義し直すべきであるとの意見が述べられた。
これに対して、近年の安全保障概念の質的変化、我が国の国際貢献のあり方、国連の機能強化等について質疑がなされた。
ある参考人からは、首相公選制導入について、政党の機能を喪失させるとの観点から、否定的な見解が述べられた後、二院制のあり方について、その妙味を生かす工夫をすべきとの意見が述べられた。
また、社会の多様な意見を議会における公開の審議を通じて公益の実現に結実させるとの議会制民主主義の古典的なイメージから、組織政党の発展により審議が形骸化しているとの批判を経て、民主的討議と多数決により客観的公益の実現を図ることができるという「討議民主主義」の考え方が主張されているとの意見が述べられた。
これに対して、首相公選制と天皇制の問題、首相公選論の背景にある政治に対する閉塞感の打破の方策や参議院改革等について質疑がなされた。
別の参考人からは、選挙に基盤を持つ国会と内閣を「政治部門」として一体と解し、職業的行政官から成る狭義の「行政部門」との均衡した関係を探ることが重要であるとの認識の下に、内閣制度における論点として、 [1]「政治部門」が一体として「行政部門」を指揮監督すべきである、 [2]国会で選任されるのが首相だけであることから首相の主導性は強く認められるべきであり、内閣における首相と他の閣僚との関係及び首相は閣議決定された方針の下に閣僚を指揮監督する旨定める内閣法6条が適切なのか検討する必要がある、 [3]閣僚は、政治部門の一員としての「国務大臣」と、所管事項を分担管理する「主任の大臣」という二重の性格があるが、前者を重視し内閣の一体的な機能を高めるべきであるとの意見が述べられた。 また、国会と内閣が一体化した「政治主導」の統治システムの実現の観点から、首相が国会とは別の正統性の根拠を持つこととなる首相公選制には消極的であるとの意見が述べられた。
これに対して、今次の中央省庁改革の評価、首相の指揮監督権に関する内閣法6条の適否、首相公選制の問題点等について質疑がなされた。
ある参考人からは、我が国における人権保障には平均的な日本人のみをその対象とする枠が存在し、在日外国人や少数民族等のマイノリティーの人権を軽視していることが国連でも問題になっているとの指摘がなされた。そして、それを踏まえて、外圧に対抗して国民の統合をはかる必要上明治以来、我が国は自国中心主義の下、日本人のみで「和を以って貴し」となしてきたが、グローバル化が進む現在、日本に住む多くの非日本人との「和」を考える必要があり、全世界の人々が恐怖と欠乏から免れて平和に生存できるという憲法前文の平和的生存権の趣旨を生かして、マイノリティーの安全にも配慮した共通の「人間安全保障」を確立すべきであるとの意見が述べられた。
これに対して、「人間安全保障」と「国家安全保障」の関係、同和問題、差別撤廃のための個別の立法の必要性等について質疑がなされた。
別の参考人からは、最高裁判所の違憲審査権行使の現状が「閉塞」状況にあるとの認識の下、 [1]この状況を打破し、迅速かつ適切な憲法判断を期するには憲法裁判所制度の導入が必要であるとの意見がある一方で、 [2]迅速な合憲判断がなされれば体制維持機能が強まる等の懸念からこれに反対する意見があるとの指摘がなされた。
そして、これら両説のそれぞれの論拠に最も適合的な制度を考える必要があるとの観点から、憲法の改正ではなく法律の改正により、最高裁判所に、中立かつ透明なプロセスで選任された憲法裁判官から構成され、憲法裁判を専門に行う「憲法部」を設置し、具体的規範統制手続により、法律の合憲性審査を行う制度を設けるべきであるとの意見が述べられた。
これに対して、参考人が主張する制度の導入の是非、「最高裁憲法部」を設置した場合の裁判官の任用方法等について質疑がなされた。
各委員の憲法に関する意見は、「日本国憲法に関する件(21世紀の日本のあるべき姿)」(平成13年12月6日)に関する自由討議においてだけでなく、「21世紀の日本のあるべき姿」に関する参考人質疑や地方公聴会等においても随時開陳された。以下に、これらの機会において表明された委員の憲法に関する意見等について、主要な論点ごとに概説する。
憲法改正については、改正に肯定的な立場から、時代の変化や国際情勢の変化に対応して憲法も見直すべきであるとの意見が述べられた。その際、考慮すべき事項としては、豊かな社会の実現、情報化の進展、多様な価値観、冷戦構造の崩壊による民族・宗教戦争の激化、少子高齢化が挙げられた。また、戦後の歴史の変化や世界における日本の役割の変化を踏まえて21世紀にふさわしい新しい平和憲法を作るべきとの意見、「自然との共生」の理念を憲法に取り入れるべきとの意見、新憲法には歴史を踏まえた理念や哲学が必要であるとの意見、我が国の「国家意志」や「国家戦略」を形成し、それを憲法の条文において明確にすべきとの意見も述べられた。他方、改正に否定的な立場から、現実の中に現行憲法を生かす方向性を示すべきとの意見や、各国の憲法はその国の歴史や文化等、国のあり方と直結しており、数次の改正を経ているヨーロッパ諸国の憲法は、EU統合等の大きな変化に対応するもので、その経験を機械的に我が国に当てはめるべきではないとの意見が述べられた。
その他、諸外国では国民的議論の下に憲法改正が行われており、我が国における憲法の議論に当たっても国民の意見の反映が必要であるとの意見、科学技術の進歩による問題、文化の問題等、現行憲法では対応しきれない問題についても議論を進めていくべきとの意見が述べられた。
現行憲法の前文のような理想的な文言だけでは国家を守るのに不十分であり、現実にあった形の憲法を作るべきとする意見や、前文にある「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」の部分について、「平和」な状態が達成されていない現状を指摘しつつ、幻想にとらわれることなく、憲法前文から見直す必要があるとの意見が述べられた。
他方、平和的生存権に関しては、自由権の前提として、前文のいわゆる「平和的生存権」の内実を発展させるべきとの意見が述べられた。
天皇制に関連して、オランダの文化活動は王室を通じて政府の間接的なサポートがなされており、我が国の天皇制もそのような観点からの議論が必要との意見や象徴天皇制を堅持しつつ憲法の第1章を「国民」に変えてはどうかとの意見が述べられた。
9条に関しては、自衛隊に対する国民の疑念を払拭するため、その役割を限定した上で憲法に明記すべきとする意見、集団的自衛権行使を認めないまま自衛隊の海外派兵を行うことは、国民の憲法に対する信頼を損なうこと等を理由に、憲法を改正して集団的自衛権を認めるべきとする意見、「集団的自衛権を保有しているが行使できない」という内閣法制局の解釈を見直すべきとの意見が述べられた。他方で、米国同時多発テロ事件のような国際的危機の発生を契機とした自衛隊を海外に派遣しようとする動きは、自衛隊の拡大につながり、憲法の平和主義の理念に反するのではないかとの意見、国連憲章と日本国憲法は武力行使を禁止する点において共通するが、日本国憲法の方がさらに発展している部分もあるとの意見が述べられた。
国際協力については、国際紛争を非軍事的貢献によって解決することが、21世紀の日本の役割として求められているとの意見が述べられた一方で、21世紀においては、集団的自衛権の行使も含めた柔軟かつ明確な国際貢献をするべきとの意見も述べられた。さらに具体的に、米国同時多発テロ事件に対処するためのアフガニスタン攻撃により生じた難民の救済こそ、平和的生存権を保障する日本国憲法の理念に合致するとの意見が述べられた一方で、アフガニスタン攻撃は、テロ撲滅のため、一概に否定できないとする意見もあった。
人間一人ひとりの生存・生活・尊厳に対する様々な脅威への取組みに着目する「人間の安全保障」に対する意見が多く見られた。「国家安全保障」と「人間安全保障」を対立的に考えるのは現実的でないとする意見、「人間の安全保障」の考え方を憲法に明記すべきとの意見、「人間の安全保障」の観点も踏まえ、テロ、難民、地域紛争等の新しい課題に対応できる安全保障へ転換すべきとの意見、「人間の安全保障」の観点から、国連に対し、平和憲法を持つ日本が紛争の平和的解決を目指すという本来の国連の姿を求めていくべきとの意見が述べられた。
その他、過去の植民地支配の代償としてODA等の援助を行うことは納税者の理解が得られないとの意見、難民や地域紛争等の全世界的問題にどう取り組むかについて検討を要するとの意見、国家とNGO、NPO等の市民社会との関係や、NGO、NPOの位置づけを憲法上明確化を図ることについて検討すべきとの意見、国際紛争の解決は、国連軍が中心となるべきとの意見が述べられた。
自国の国益を第一に考えれば、「自国中心主義」は一面としてやむを得ないのではないかとの意見、我が国が戦争責任を曖昧にしていることが、アジア近隣諸国に不信を招いたり、外国人の差別につながっているとの意見、唯一の被爆国として、核廃絶、非核三原則の理念を憲法に盛り込むべきとの意見、「憲法の前文と9条の間には、隙間、あいまいな点がある」との首相の発言の趣旨を本調査会の調査対象とすべきとの意見が述べられた。
基本的人権一般については、海外派遣の訪問国の憲法裁判所において人権重視の流れが見られ、我が国も充実した人権規定をより具体的に開花させる努力が必要との意見、グローバル・スタンダードからみた日本の人権保障のあり方の調査を行うべきとの意見が述べられたほか、死刑廃止問題は人権問題であり、今後議論の必要があるとの意見や、生存権を規定する25条は物質的な側面からの理解しかなされてこなかったが、文化芸術大国としてソフト・パワーに力点を置いて発展するという方向性を憲法の中で示すべきとの意見が述べられた。
権利と義務について、憲法には自由・権利についての規定は豊富だが、義務や愛国心についての規定がないとの認識が示され、権利と義務の関係について、必要な見直しを図っていくべきとの意見が述べられた。
平等権に関しては、マイノリティーに対する差別をなくすために、差別を禁止する法制度の整備が重要との意見や、部落差別やアイヌ差別等、それぞれの場合に応じた個別の差別撤廃の立法が必要との意見が述べられた。
学問の自由に関しては、クローン胚の実験等人間の尊厳に関わる問題と学問の自由との関係について議論し、憲法の中で方向性を示すべきとの意見が述べられた。
家族については、社会生活の基礎単位としての「家庭」を国家が保護すべき旨を憲法上明記すべきとの意見や、家族制度等について、必要な見直しを図っていくべきとの意見が述べられた。
また、環境権等新しい人権や国の環境保全義務、動物愛護のような規定を積極的に取り込むべきであるとの意見や、外国人の人権に関しては、その保障される人権の範囲等について今後幅広い議論が必要との意見が述べられた。
選挙制度については、現在の衆議院の選挙制度(小選挙区比例代表並立制)は、民意の「反映」の観点から欠陥を抱えているとの意見や、日本社会は対立軸が多く、多様な民意が存在する実態にふさわしい選挙制度を導入すべきとの意見が述べられた。また、選挙公約が守られないことは民主主義の侵害であるとの意見も述べられた。
二院制については、参議院の議席構成によって政権の枠組みが決まることに対する疑問、解散権のない参議院議員の任期を衆議院より短くしてはどうかとの意見、参議院改革のための憲法改正は必要であるが、改正のためのハードルが高すぎるとの意見が述べられた。
国会と内閣の関係については、国民主権を実現するには、「内閣の機能強化」よりも、議院内閣制を健全に機能させることの方が重要との意見や、政策決定が政府及び与党によって「二元的」になされていることが、議会審議の「空洞化」を招いており、縦割り行政の弊害や政策立案における理念の欠如を防ぐためにも、与党の政策責任者が政府に入り、政策決定プロセスを「一元化」することが重要であるとの意見が述べられた。
首相の権限については、内閣法6条によると、首相は閣議を通じ、各省大臣を介してしか行動できず、その権限は弱体であり、また、内閣の機能強化の観点から、閣僚の「所管事項について分担管理する主任大臣」の性格より「執政部門たる内閣の一員」の性格を重視すべきとの意見が述べられる一方、首相の地位や各大臣との関係は、憲法で十分明確に位置づけられているが、内閣法等はその精神を生かしていないとの意見や、首相の強力なリーダーシップより、各閣僚が民意を基礎に合議で政策を決定することが重要であるとの意見が述べられた。
首相公選制については、海外調査の訪問国であるイスラエルで、首相公選制に対する否定的評価が多く見受けられたとの見解が述べられた。
首相公選制に否定的な立場からは、同制度の導入による首相のリーダーシップ強化よりも、多様な意見を集約する形で議会制民主主義を発展させることが重要との意見が述べられた。
その他、我が国においてはイスラエルの例とは異なる角度から首相公選制を検討すべきとする意見や、我が国に首相公選制を導入する場合には、天皇の地位への影響等について検討を要するとの意見が述べられた。
官僚組織については、その肥大化が問題となっている現状において、国会機能の拡充が必要との意見、各大臣は官僚機構を監督する地位にあるにもかかわらず、官僚機構から制約を受けているとの意見、「官僚主導」型から「政治主導」型の行政への移行のためには、政治的任命職の増加が重要であるとの意見が述べられた。
政府の審議会については、政治主導の議論ができるよう、審議会の委員に国会議員を多く任命すべきとの意見や、政府の審議会を廃止し審議を国会に集中させたり政策スタッフを配置すべきとの意見が述べられた。
その他、行政と立法とを分離する観点から、閣僚の議員等との兼職を禁止する等の措置を講ずべきとの意見や政策の決定、執行に当たっては、政治家、官僚、審議会等の第三者機関等の役割分担を整理する必要があるとの意見が述べられた。
司法制度については、行政訴訟の件数が少なく、また、審級が上がるにつれ行政よりの判断が出される傾向が強い現状を打開するため、内閣が大きく関わる現行の裁判官の任命方法を改め、裁判官の任命に係る諮問委員会の設置や任命に国会を関与させる等の方途を検討すべきとの意見が述べられた。
裁判所による違憲審査権の行使については、迅速かつ適切な人権保障の観点から、その適正な行使に係る改革が必要であるとの意見、最高裁判所の違憲判断回避の傾向等は国民の憲法に対する信頼を損なうとの意見が述べられた。
憲法裁判所の設置等については、憲法を生活の中に生かし、また、司法のチェック機能を強化する観点から、憲法裁判所的機能の拡充は検討に値するとの意見や、憲法を改正して憲法裁判所を創設すべきとの意見、また、最高裁判所に憲法裁判を専門的に扱う「最高裁憲法部」を設置するとする参考人の提案に対して、検討に値するとの意見が述べられた。その一方、憲法施行後、多くの判例が積み重ねられ、憲法裁判所を設けても憲法判断の必要性は少ないのではないかとの意見も述べられた。
地方自治については、民主主義の発展のために地方分権を進めるべきであるとの意見や、地方自治の形骸化は国民の憲法に対する信頼を損なうものであるとの意見が述べられた。
住民投票については、国民の恒常的な政治への参加方法として、選挙の他に住民投票が活用されるべきとの意見や住民投票は住民に身近な内容のものから国策に関するものまで対象が広範であり、結果の捉え方も内容に応じて異なってくるとの意見が述べられた。
改正手続については、海外調査の訪問各国と比較して、改正手続の「各議院の総議員の3分の2以上の賛成」の要件自体は必ずしもハードルになっていないとの意見や憲法改正規定のあり方について検討する必要があるとの意見が述べられた。
その他、今後、憲法調査会において検討すべき論点として、私学助成や非常事態が委員の意見の中でとりあげられた。
憲法調査会における論議の進め方については、憲法改正、法律改正、解釈の変更の3点に分けて議論すべきとの意見、憲法調査会での「論憲」は3年程度を目途として、4年目には各党が新憲法の要綱を提案し、憲法改正の準備段階に入るべきとの意見、社会の変化のスピードは速いため、憲法調査会も5年という期間にとらわれず、早期に結論を出すことを考えるべきとの意見、各党は個別的・具体的事項につき意見を集約した上で、調査会の場に提示すべきであり、調査会においては国家ビジョン等を徹底的に議論、集約すべきとの意見、論点は出そろっているため、今後具体的なアイデアを提示してコンセンサスを得ていくべきとの意見が述べられた一方で、憲法調査会の活動は、あくまで日本国憲法の広範かつ総合的な調査に徹すべきとの意見が述べられた。
第153回国会中に行われた名古屋における地方公聴会は、「国際社会における日本の役割」をテーマに開催された。
意見陳述者からは、憲法は軍事的な国際貢献を想定しておらず、非軍事的な国際貢献をなすべきとの意見、我が国は憲法前文の理念に従い国際社会における役割を果たすべきとの意見、普通の国が持つ自衛権を憲法上明記し、前文も日本人の顔が見える格調あるものとすべきとの意見、テロは暴力によってではなく、対話により解決を図るべきとの意見、人による国際貢献にも重点を置くべきであり、そのために人材育成が必要であるとの意見、国連の安全保障理事会常任理事国入りを果たし、核廃絶にリーダーシップを発揮すべきとの意見等が述べられた。
その後、委員から、我が国がテロ攻撃を受けた場合の具体的対処法、環境に関する権利及び義務を憲法に明記することの是非、国連の警察的活動に自衛隊を参加させることの是非、テロ問題解決のための国連の役割、テロ対策特別措置法と憲法との関係、教育現場における憲法に関する教育の実情について質疑が行われた。さらに、傍聴者5人から意見が述べられた。