会長 | 中山 太郎君 | 自民 | |||
幹事 | 杉浦 正健君 | 自民 | 幹事 | 中川 昭一君 | 自民 |
幹事 | 西田 司君 | 自民 | 幹事 | 葉梨 信行君 | 自民 |
幹事 | 保岡 興治君 | 自民 | 幹事 | 大出 彰君 | 民主 |
幹事 | 仙谷 由人君 | 民主 | 幹事 | 中川 正春君 | 民主 |
幹事 | 赤松 正雄君 | 公明 | 伊藤 公介君 | 自民 | |
石川 要三君 | 自民 | 奥野 誠亮君 | 自民 | ||
川崎 二郎君 | 自民 | 倉田 雅年君 | 自民 | ||
近藤 基彦君 | 自民 | 佐藤 勉君 | 自民 | ||
下地 幹郎君 | 自民 | 谷川 和穗君 | 自民 | ||
谷本 龍哉君 | 自民 | 中曽根 康弘君 | 自民 | ||
中山 正暉君 | 自民 | 長勢 甚遠君 | 自民 | ||
額賀 福志郎君 | 自民 | 野田 聖子君 | 自民 | ||
平井 卓也君 | 自民 | 福井 照君 | 自民 | ||
森岡 正宏君 | 自民 | 山口 泰明君 | 自民 | ||
枝野 幸男君 | 民主 | 小林 憲司君 | 民主 | ||
今野 東君 | 民主 | 首藤 信彦君 | 民主 | ||
筒井 信隆君 | 民主 | 中野 寛成君 | 民主 | ||
中村 哲治君 | 民主 | 永井 英慈君 | 民主 | ||
伴野 豊君 | 民主 | 松沢 成文君 | 民主 | ||
山田 敏雅君 | 民主 | 江田 康幸君 | 公明 | ||
太田 昭宏君 | 公明 | 斉藤 鉄夫君 | 公明 | ||
武山 百合子君 | 自由 | 藤島 正之君 | 自由 | ||
春名 直章君 | 共産 | 山口 富男君 | 共産 | ||
金子 哲夫君 | 社民 | 土井 たか子君 | 社民 | ||
井上 喜一君 | 保守 |
第155回国会では、11月1日の調査会において中間報告書が議決され、中山会長から綿貫議長に提出された。また、11月7日、先国会に引き続き、「基本的人権の保障に関する調査小委員会」、「政治の基本機構のあり方に関する調査小委員会」、「国際社会における日本のあり方に関する調査小委員会」及び「地方自治に関する調査小委員会」の4つの小委員会が設置され、各小委員会においては、後日、それぞれ参考人を招致して調査が行われた。さらに、12月12日の調査会において、委員間の自由討議が行われた。
12月9日には、福岡県福岡市にて、いわゆる地方公聴会が開会された。
11月1日の調査会において、中山会長から中間報告書案について趣旨の説明を行い、その後、各会派からの発言があった後、採決の結果、賛成多数(賛成−自民、民主、公明、自由、保守 反対−共産、社民)をもって、中間報告書を議決した。中間報告書は、同日、中山会長から綿貫議長に提出された。なお、11月29日の本会議において、中山会長が中間報告書について発言を行った。
○ 中間報告書の構成
第1編 憲法調査会の設置の経緯
第2編 憲法調査会の設置の趣旨とその組織及び運営
第1章 設置の趣旨
第2章 組織
第1節 委員
第2節 会長及び会長代理
第3節 幹事及び幹事会
第4節 小委員会
第5節 事務局
第3章 運営に関する基本的事項
第3編 憲法調査会の調査の経過及びその内容
第1章 調査の経過
第1節 憲法調査会及び小委員会における調査
第2節 地方公聴会
第3節 海外調査等
第4節 その他の活動
第2章 調査の概要
第1節 調査会における調査
第2節 小委員会における調査
第3節 地方公聴会
第4節 海外調査
第3章 憲法調査会における委員及び参考人等の発言に関する論点整理
第1節 憲法論議に臨む態度及び調査会の進め方に関する議論
第2節 日本国憲法の制定経緯に関する議論
第3節 日本国憲法の各条章に関連する主な議論
第1款 総論的事項
第2款 前文
第3款 天皇制
第4款 安全保障及び国際協力
第5款 基本的人権
第6款 政治部門(国会、内閣等)
第7款 裁判制度
第8款 財政
第9款 地方自治
第10款 憲法改正
第11款 最高法規
第12款 その他(緊急事態)
第4節 その他
第4編 資料
「教育をめぐる階層差の拡大と基本的人権」について、参考人から、まず、憲法や教育基本法に定められた「能力に応じて教育を受ける権利」の保障の意味を検討する際には、「能力」の内容だけでなく、どの時点での「能力」を問題にするのかを明確にした上、教育現場の実態を踏まえた議論をする必要があるとの指摘がなされた。
その上で、「ゆとり教育」を重視した1992年の学習指導要領の改訂を契機として基礎的学力の低下や教育の「階層差」が生じ、子どもの能力格差が拡大しているが、子どもが、義務教育終了時点で、フェアな競争ができる能力を可能な限り保障するという「結果の平等」を実現するよう努めるべきとの意見が述べられた。
これに対して、教育における平等の意味、学力低下、学級崩壊等と「ゆとり教育」との関係、教育基本法の改正に関する問題、現在の学習指導要領の是非等について質疑がなされた。
参考人質疑を踏まえた自由討議では、学力以外の面で児童を評価することの重要性、教育の実態把握の必要性、公共の福祉の問題点等について発言がなされた。
「憲法と政党」について、参考人から、政党は、多様性に立脚し、民主政に合理性をもたらす不可欠な存在として積極的に基礎付けられ、争点化、選択肢の形成・提供、暫定的決定、決定の受容といった多段階からなる民主制のシステムの各段階や、政治リーダーのリクルート・育成等の民主制に不可欠な前提条件の形成において、重要な役割を果たしているとの指摘がなされた。その上で、現在、社会や「個人」の複雑化・「断片化」により政党の影響力が低下し、我が国でも、政党が市民の政治的見解を十分に反映しなくなり、特殊個別利害に定位しがちになっているとの認識が示された。さらに、今後、政党法制によって、 [1]政党による人材発掘・育成に当たっての障害の除去、 [2]政党の透明性・開放性の確保をなすべきであるが、政党規定の憲法への明記は、立法者による政党法制の濫用防止のための司法的コントロールの確保等を考慮した場合、むしろマイナスに作用する可能性が高く、慎重な対応が求められる、との意見が述べられた。
これに対して、政党法制及び選挙制度のあり方、党議拘束と議員の自由な政治活動との関係、政党に対する企業・団体献金の是非、政治とマスメディアの関係等について質疑がなされた。
参考人質疑を踏まえた自由討議においては、党議拘束の必要性、政党助成法等の政党法制を改革する必要性、議院内閣制のあり方を検討する必要性等について発言がなされた。
「ドイツの再軍備、非常事態法制の経緯と背景」について、参考人から、ドイツにおいては、 [1]敗戦後、ヨーロッパ統合の枠組みの中で再軍備を行うに当たって、1954年には連立与党により、また、1956年には与野党協力により、基本法の改正がなされたこと、 [2]1968年の大連立政権下において、基本法の大幅改正により非常事態立法が整備されたこと、 [3]冷戦下においては、西ドイツ軍はNATO領域内の活動しか想定されていなかったこと、 [4]しかし、冷戦後においては、国際紛争に対処するため、国連やNATOを通じた軍隊の域外派兵が基本法上の問題となったが、議会の同意を前提にこれを合憲とする1994年の憲法裁判所の判決以降、ドイツ軍の海外活動は広く展開されていること、 [5]冷戦後の安全保障環境の変化に対応し、ドイツ軍は危機管理や紛争予防のためのNATO域外展開を新たな任務とする方向で改革を進めていること等について説明がなされた。
これに対して、ドイツと比較した我が国の非常事態立法のあり方、有事法案を超党派で成立させる必要性、日本とドイツの戦後補償のあり方、9条改正の是非等について質疑がなされた。
参考人質疑を踏まえた自由討議においては、非常事態への対処のあり方、非常事態立法に関する議論のあり方、北東アジアにおける安全保障を考える際に考慮すべき事項等について発言がなされた。
「地方分権における基礎的自治体の役割及び志木市における取組み」について、参考人から、地方自治に携わってきた経験を踏まえ、憲法第8章に関して、 [1]国と地方の役割分担を明確にし、それぞれの主権を認めること、 [2]現在は地方自治法等により地方の裁量は狭められているが、今後は明確化された権能に基づく自由な行政運営を認めてもらいたいとの意見が述べられた。その上で、 [1]地方分権推進に当たっては、国と地方の役割分担の明確化が先決である、[2]地方自治体への税財源の配分は単純さや透明性を重視しつつ、業務量に応じて機械的に行うべき等の指摘がなされた。さらに、 [1]基礎的自治体の使命としては、コミュニティを通じた人と人との触合いの醸成や地域の文化や自然環境の保護等が重要である、 [2]各地方が自己責任に基づく多様なあり方を目指すべきである、 [3]市町村合併については、市民参加や市民の意思の尊重が重要である等の認識が示された。
これに対して、地方自治体の税財源のあり方、「地方自立計画」の具体的内容やそれに対する評価、志木市の合併への取組み等について質疑がなされた。
参考人質疑を踏まえた自由討議においては、「地方自治の本旨」に沿った立法の必要性、自治体間の不均衡容認の重要性、人口1万人以下の小規模自治体に対する権限縮小の不合理性等について発言がなされた。
11月7日の調査会において、「英国及びアジア各国憲法調査議員団」の海外派遣について、団長である中山会長から説明を聴取した後、派遣議員である委員等から発言があった。
中山会長からは、訪問各国において、社会情勢が急激に変遷していく中で、それらの諸情勢に応じて、随時、憲法のありように関する国民的議論がなされ、それを踏まえて、憲法改正がなされてきていると言えるとの所感が述べられた。派遣議員からは、それぞれ、[1]各国とも新しい時代の流れに積極的に対応し、憲法改革を図っていると感じた、また、国際関係を考える上で、自国の安全と利益に優先するものはない、今後は、日本国民同士の信頼感を基本として憲法論議を行っていくべきであるとの発言、 [2]多くの調査対象国において、活発な議論の中、国家目標や重要な争点に関して憲法改正を一つの手段として国論をまとめていく姿勢が伺われる、諸外国では憲法裁判所の果たす役割が非常に大きい、9条について、中国及び韓国は、その平和主義的姿勢を高く評価しているが、我が国のPKO活動についても積極的に評価しており、日本の国際貢献に対する期待を感じたとの発言、 [3]各国とも、国民の権利獲得の戦いの産物として憲法が成り立っており、憲法に関する議論は、国の政治と国民生活との関係で考えることが重要である、訪問国においては、諸問題に対する国民の模索や運動を経て民主主義と人権保障が拡充されてきていると実感した、また、アジア各国から、憲法の平和主義への積極的な評価が表明され、それが崩されることへの危惧が率直に語られ、侵略戦争への反省なしにアジア諸国との真の友好関係を築くことはできないと痛感したとの発言等があった。さらに、委員から、中国及び韓国において、我が国憲法、とりわけ9条に関する言及・評価がなされたことの背景には、日本の戦前戦後の歴史に対する関心と将来に対する危惧があり、このことを受け止めた上で、今後の調査会を進めるべきである等の発言があった。
12月12日の調査会においては、福岡地方公聴会の派遣報告、各小委員長からの小委員会における調査の経過及びその概要の報告があり、その後、委員間の自由討議が行われた。そこで表明された委員の主要な発言を概説する。
道州制の導入を視野に入れるべきとする立場から、基礎的自治体の自立を促すための権限・財源の移譲や財政の効率化という地方分権推進の観点から道州制を検討すべきとの意見、地方自治の理念という基本的観点の他に、地方の活力を活かし、生活を向上させるという国土政策上の観点からも道州制を考えてみる必要があるとの意見、道州制の導入に当たっては、単に都道府県を統合するだけではなく、まず、国と地方の権限関係、基礎的自治体や道州が所管する事項を明らかにすべきであり、そのために、国の権限を限定する法律を制定する必要があるとの意見等が述べられた。
また、地方分権推進に当たっての今後の課題は課税自主権等の財源問題であるが、これは国家主権に係る憲法上の問題であって、地方が課税自主権を持って自ら財源を調達し、住民の福祉や生活向上に対して責任を持つことを憲法や法律に定める必要があるとの意見が述べられた。
さらに、地方分権推進の検討に当たっては、「地方自治の本旨」の意味内容を具体的に検討する必要があり、地方自治のあり方や方向性を明らかにした上で、課税自主権等の諸問題について具体的な検討を行うべきであるとの意見が述べられた一方で、「地方自治の本旨」の文言は抽象的であるが、国と地方との役割分担、住民に密着した自治等の方向性を示すものであり、これを踏まえて課税自主権や市町村合併に関する議論を進めるべきであるとする意見や、「地方自治の本旨」の意味内容を考えるに当たっては、基礎的自治体の所管事項に係るコンセンサスの形成が必要であるとの意見が述べられた。
有事法制や自衛隊の憲法上の位置付けについて、会派としての考え方をめぐり、意見交換が行われた。
有事法制関連3法案については、公明党所属委員から、各党の賛成を得られるよう修正を検討する努力をしているとした上で、民主党としての考え方を質す発言があったのに対し、民主党所属委員から、同法案はテロ、破壊工作等の危険に対応していないこと、有事の際の基本的人権の保障の中身が規定されておらず、今後どのように基本的人権が確保されるかが不明であることを理由に反対であるとの発言があった。
自衛隊については、村山内閣が、その存在は憲法上認められるとしたことに関して、現在の社民党の考え方について質す発言に対し、社民党所属委員から、自衛隊の改組も検討する等、憲法の理念に近づける方向で努力しており、直ちに解体することは考えていないが、将来は非軍事の国家を目指しているとの発言があった。
安全保障については、多国間安全保障、米国による一極支配的状況、PKO等の世界の安全保障をめぐる問題にかんがみれば、これまでのような生じた事態に応じたなし崩し的対応は危険であり、国家としてなすべきことを憲法に定めるべきとの意見、今後、米国が自国を中心として国際秩序を形成しようとする中で、我が国として、どのような国際秩序を形成すべきかについて考えをまとめるべきとの意見、朝鮮半島情勢やイラク問題等といったように国際情勢は極めて緊迫しており、新しい憲法の中で安全保障のあり方を早急に考える必要があるとの意見等が述べられた。
学力低下や不登校といった教育問題は、教育基本法に問題があったから生じたのではなく、教育基本法の理念が実践されてこなかったことに問題がある、また、愛国心や日本人としての自覚、義務を強調し、個人より全体を重視した教育が戦前においては全体主義を招き、基本的人権の侵害を惹起したことにかんがみ、教育現場の実態と基本的人権の関係について、調査会で調査すべきであるとの意見が述べられた。他方、憲法や教育を論じるに当たり、日本人としての自覚等を議論することは全く問題ないとの意見が述べられた。
その他、各会派の憲法論議に臨む態度について意見交換が行われた。公明党所属委員から民主党所属委員に対し、調査会設置時にともに「論憲」の立場で臨んだが、公明党が「加憲」の立場を打ち出したのに対し、民主党の党内の意見集約の現状について質す発言があった。これに対し、民主党所属委員から、7月に出した「民主党憲法調査会報告」の内容等に関する発言があった。
第155回国会中に行われた福岡地方公聴会は、「日本国憲法について(21世紀の日本と憲法)」をテーマに開催された。同地方公聴会における議論の概要は、以下のとおりである。
意見陳述者からは、 [1]自治体職員としての経験を踏まえ、生存権や労働権等の人権規定を有する憲法を暮らしの中で活かすべきであり、また、9条の理念を宝として大切にしたいとの意見、 [2]国民の「裁判を受ける権利」を実現するために、裁判官の大幅な増員による裁判の迅速化や裁判費用の法律扶助制度の大幅な拡充が必要であるとの意見、 [3]国民の生命・財産を守るために自衛隊を国を守る防衛軍に改めること、道徳性等の人間性を育むために地域の歴史、文化に合った独自の教育を行うこと、九州全体としてまちづくりへ取り組むことが必要であるとの意見、 [4]平和が人権保障の前提であることから9条改正には反対であり、また、現憲法下で起きた部落差別やハンセン病患者への差別といった事実を踏まえ、人権保障に対する国や国民の努力が十分でなかったことに対する国民的な論議を期待したいとの意見、 [5]憲法調査会の中間報告は、調査会において何が議論されているのかが分かるので是非読んでほしいが、国民が、より理解しやすい内容とすべきではなかったか、また、地方公聴会という国民の声を直接聴く機会を活かし、一般の人々の思いに寄り添った政治を行うべきであるとの意見、 [6]平和主義の理念を掲げる前文及び9条は改正すべきでない、また、13条の「個人の尊重」の保障対象となっている「国民」を「すべて人は」に改め、「知る権利」を明記し、さらに、第1章の章名を「国民主権」とすべきであるとの意見等が述べられた。
その後、委員から、我が国の安全保障や国際協力のあり方、核兵器廃絶に対する政府の姿勢、ハンセン病患者への差別などの人権侵害を繰り返さないための方策、違憲審査権行使のあり方、地方分権改革の方向性、米国の対イラク戦争への我が国の支援と憲法との関係、新しい人権を憲法上の権利として規定することの是非等について質疑が行われ、さらに、傍聴者3人から意見が述べられた。