本案は、沖縄の自立的発展に資するとともに、沖縄の豊かな住民生活の実現に寄与するため、これまでの振興のための諸般の特別措置の成果をも踏まえ、新たに沖縄の振興の基本となる沖縄振興計画を策定し、及びこれに基づく事業を推進する等特別の措置を講ずることにより、沖縄の総合的かつ計画的な振興を更に一層図ろうとするものであり、その主な内容は次のとおりである。
一 内閣総理大臣が沖縄県知事の作成した案に基づき沖縄振興計画を決定するものとし、産業の振興、職業の安定、教育及び文化の振興、科学技術の振興、福祉の増進等に関する事項のほか、圏域別の振興に関する事項について定めること。
二 観光の振興のために、観光振興計画の策定を始め、観光の利便性の増進、観光振興地域における施設の整備、環境保全型自然体験活動の推進、沖縄の観光振興のための免税、本土・沖縄路線に係る航空機燃料税の軽減措置等を講ずることとし、情報通信産業の振興のために、情報通信産業振興計画の策定を始め、情報通信産業振興地域制度の拡充、情報通信産業特別地区の創設を行うこととともに、金融業務の集積を図るための金融業務特別地区の創設等、産業振興のための特別措置を講ずること。
三 沖縄の厳しい雇用情勢の改善に資するため、職業安定計画の策定を始め、地域雇用開発促進法に基づく地域の要件を沖縄において緩和する等、雇用の促進、人材の育成その他の職業の安定のための特別措置を講ずること。
四 沖縄固有の文化的所産の保存及び活用等文化の振興に関する施策の推進を図るほか、沖縄における科学技術の振興を図るため、研究開発の推進等必要な措置を講ずるとともに、大学院を置く大学その他の教育研究機関の整備、充実等必要な措置を講ずるほか、国際協力等の推進のため、必要な措置を講ずること。
五 沖縄における駐留軍用地跡地の利用に関する基本原則を明らかにすることとし、大規模振興拠点駐留軍用地跡地及び特定振興駐留軍用地跡地の指定等の手続を定めるとともに、大規模跡地給付金及び特定跡地給付金の支給の措置を講ずること。
六 沖縄における社会資本の整備のために、沖縄振興計画に基づく事業について国の負担及び補助の割合の特例等の措置を講ずること。
七 この法律は、平成14年4月1日から施行するとともに、平成24年3月31日限り、その効力を失うこと。
八 沖縄の復帰に伴う特別措置に関する法律に規定する酒税等に関する特例を5年間延長するとともに、沖縄県における駐留軍用地の返還に伴う特別措置に関する法律について本法律案の期限である平成24年3月31日限り、その効力を失う等の措置を講ずること。
政府は、本法の施行に当たり、次の諸点に留意し、今後の沖縄振興の推進に遺漏なきを期するべきである。
一 広大な米軍基地の存在等、沖縄を取りまく経済社会情勢にかんがみ、県民が安心して安全に暮らせることが肝要であり、米兵犯罪の根絶に努めるとともに、日米地位協定の見直しの検討をも含め、今後とも沖縄の負担軽減に全力を尽くしていくこと。
二 沖縄の自立を進めるため各地域制度等において、沖縄県が自主的に取組むことが出来るように努めるとともに、国の責任ある支援策を強化すること。
三 増大する水需要に対処し、水の安定供給を確保するため、多角的な水資源の開発を促進するとともに、環境に配慮しつつ、水の有効利用に努めること。
四 深刻化する交通渋滞を解消するため、引き続き総合的な交通体系の整備を図ること。
五 米軍施設・区域の整理縮小に引き続き取組み、その早期返還に努めるとともに、返還にあたっては環境に留意するよう求めていくこと。
六 新たな沖縄の基幹産業と期待される情報通信産業の今後の一層の集積及び発展のため、沖縄県内で同分野に積極的に取組んでいる沖縄の電気通信事業者の電気通信事業法に基づく支配的事業者への指定については、沖縄の特殊事情に配慮することとし、差し控えること。
七 依然として厳しい雇用情勢に対処するため、産業の振興を強力に推進するとともに、沖縄の実情に応じた雇用対策を積極的に推進し、教育・福祉分野への取組みを強化すること。
八 地元からの強い要請のある戦後処理等の諸問題について改善を検討すること。
九 赤土流出等沖縄に固有の環境問題に対して重点的な取組みを行うこと。
十 事業評価を進め、結果を公表するとともに、その手法を新法の振興計画にも盛り込むこと。