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5 本会議の概況

(1) 国務大臣の演説及び質疑

9月26日に小泉内閣総理大臣の所信表明演説が衆議院の本会議において行われ、これに対して、同月29日に各党の代表質問が行われた。

ア 小泉内閣総理大臣の所信表明演説(9月26日)

(はじめに)

私は、就任以来、構造改革なくして日本の再生と発展はないとの信念のもと、改革を進めてまいりました。

この間、国民には、今の痛みに耐えて明日を良くし、変化を恐れず新しい時代に挑戦しようと呼びかけてまいりました。改革の痛みに直面しながらも、多くの国民の努力によって、日本再生に向けた改革にようやく芽が出てまいりました。

民間にできることは民間に、地方にできることは地方にとの方針で構造改革を進め、活力ある社会を作り上げていかなければなりません。

この度、小泉内閣の責務である改革を更に推進していくため、内閣改造を行いました。新しい体制のもと、構造改革路線を堅持し、改革の芽を大きな木に育ててまいります。

(外交・安全保障)

日米同盟と国際協調が、日本外交の基本です。世界の平和と安定の中に、日本の安全と発展があります。国際社会が直面する課題に、日本として何ができるかを真剣に考え、積極的に貢献しなければなりません。

北朝鮮については、日朝平壌宣言を基本に、拉致問題と、核をはじめとする安全保障問題の包括的な解決を目指します。米韓両国と緊密に連携し、中国、ロシアとも協力しつつ、粘り強く働きかけてまいります。

9月11日の米国同時多発テロから2年が経過しました。テロとの闘いは終わっていません。非人道的なテロに屈することなく、国際社会と協力し、テロの防止・根絶を目指します。継続審査となっているテロ対策特別措置法延長法案の今国会における成立を期します。

イラクに対しては、各国と緊密な連携協力のもと、人道復興支援を進めます。現地情勢を踏まえ、自衛隊や文民の派遣など我が国にふさわしい貢献を行ってまいります。イラクと中東地域の安定に向け、アラブ諸国との対話、交流を深めるとともに、中東和平への努力を続けてまいります。

WTO新ラウンド交渉に、引き続き全力で取り組みます。二国間の自由な貿易、交流を目指す経済連携を積極的に進めます。

(国民の「安全」と「安心」の確保)

国民の安全と安心の確保は、政府の基本的な責務です。

世界一安全な国、日本の復活を実現します。警察官を増員し、全国で空き交番ゼロを目指します。市民と地域が一体となった、地域社会の安全を守る取組みを進めます。補導活動を強化して非行防止に努め、少年犯罪を減らします。外国人犯罪に対し、出入国管理体制や密輸・密航の取締りを強化します。犯罪被害者の人権を尊重した捜査や裁判の実現を目指します。

司法を国民に身近なものとする司法制度の改革を進めます。

年金、医療、介護は、社会保障の基本です。若者と高齢者が支え合う、公平で持続可能な社会保障制度を構築し、国民が安心して暮らすことができる社会を実現します。年内に年金改革案を取りまとめ、来年の通常国会に法案を提出します。

SARS対策を進め、国民の健康の危機管理に万全を期します。

職場と地域を通じ、仕事と子育ての両立を支援します。保育所の待機児童ゼロ作戦を着実に実施し、平成14年度の受入児童は5万1,000人の増加となりました。目標達成に向け、平成16年度までに更に10万人の増加を目指します。

今や、女性は、幅広い分野で活躍しています。建築エンジニア、飛行機のパイロット、東ティモールのPKOに参加した自衛官など、女性の元気が社会を活性化します。今の小学生が社会に出るころまでに、あらゆる分野で女性が指導的地位の3割を占めることを目指し、女性が安心して仕事ができ、個性と能力を発揮できる環境を整備します。

(将来の発展基盤への投資)

小泉内閣は、科学技術を活用した環境保護と経済発展の両立を重要課題と位置づけてまいりました。

燃料電池の実用化や風力発電の拡大など、クリーンエネルギーの導入を進め、脱温暖化を図ります。ごみゼロ作戦を推進し、不法投棄の撲滅を目指します。環境を良くするための努力が経済の活性化につながる社会を構築してまいります。

科学技術創造立国の実現に向け、予算を重点的に配分し、平成15年度は1兆2,000億円に上る研究開発・投資減税を行いました。大学発ベンチャー企業は500社を超え、大学と企業の共同研究も大幅に増加し、7,000件を超えています。10の国と地域が取り組んだイネゲノム解読で、日本は中心的な役割を果たしました。産学官の連携を推進し、科学技術の振興を図ります。

知的財産立国の方針を打ち出し、1年半の間に、基本法の制定、戦略本部の発足、推進計画の策定等を集中的に行ってまいりました。特許の裁判制度の改革や審査の迅速化を図り、模倣品・海賊版対策を進めます。

日本が優れている分野は、ものづくりだけではありません。映画やアニメなど日本文化も世界で高く評価され、経済のみならず、さまざまな面で波及効果を生み出しています。文化、芸術を生かした豊かな国づくりを目指します。

日本発展の原動力は、人です。教育改革の原点は、家庭、地域、学校を通じた人間力の向上であります。

知育、徳育、体育に加え、心身の健康に重要な食生活の大切さを教える食育を推進します。

教育基本法の見直しについては、国民的な議論を踏まえ、精力的に取り組んでまいります。

(経済活性化)

厳しい現下の経済状況においても、雇用者数が増加し、民間設備投資も上向いています。倒産件数は前年同期に比べ12カ月連続して減少しています。経済成長はこの1年半連続で実質プラスになり、名目成長もプラスに転じ、構造改革の成果が現れつつあります。

平成15年3月期の主要銀行の不良債権残高は、前年同期に比べて24%減少しました。不良債権処理は着実に進展しています。平成16年度に不良債権問題を終結させます。

雇用と中小企業政策に全力を挙げます。

中小企業に対する金融に新たな動きが出始めています。不動産担保主義からの脱却を目指し、無担保融資の拡大、売掛債権の担保化の促進など多様な手法により、企業への資金供給を円滑化します。産業再生機構を活用して、やる気と能力のある企業の再生を支援します。

530万人雇用創出に向けた施策の推進により就業構造が変化し、サービス分野を中心に、この3年間で約200万人の雇用が創出されたと見込まれます。規制や制度の改革や人材育成、公的業務の民間委託などを更に進め、今後2年間で300万人の雇用創出を目指します。中高年者の就職支援に加え、失業率が特に高い若年者の雇用の拡大を目指し、小中学校の時からの職場体験や、若者向けの職業紹介など、若者自立・挑戦プランを推進します。

これらの施策により、地域経済の活性化を図ります。

厳しい財政状況の中、多年度で税収を考え、減税を先行することとし、平成15年度は酒・たばこについて2,000億円の増税をする一方で、2兆円の減税を実施しました。その効果が現れつつあります。この改正により、平成16年度も、実質1兆5,000億円の減税を行います。

歳出についても、財政規律を維持しつつ、科学技術をはじめ将来の国づくりに重要な分野に重点配分するとともに、弾力的な予算執行の仕組みを導入するなど、予算制度改革に着手します。

構造改革特区による160項目も含め、この3年間で1,000項目を超える規制改革が進展しています。

本年4月から開始した構造改革特区では、不登校児童のための体験型学校特区など33の教育特区や、NPO法人が安い料金でお年寄りや体の不自由な人を車で送迎する福祉移送サービス特区、遊休農地を活用し企業がオリーブの栽培から加工までを一体で行うオリーブ振興特区など、各地域が知恵を絞った164の特区が実現しています。

これまで規制されていた医療、教育、農業分野への株式会社の参入を認める改革も、着実に進んでいます。

1円の資本金でも会社を起こすことを可能とした結果、半年の間に4,500を超える企業が誕生しました。

技術革新と規制改革などの効果が相まって、電子タグは超小型化が進み、自動改札や物流管理をはじめ幅広い分野で活用され、国民の暮らしを変えつつあります。IT実感社会を実現します。

(「国から地方へ」「官から民へ」)

地域おこしは国おこしにつながります。

地方にできることは地方にとの原則に基づき、平成18年度までに補助金について約4兆円の廃止・縮減等を行い、交付税を見直し、地方へ税源を移譲する、三位一体の改革の具体化を進めます。市町村合併を引き続き推進します。

稚内から石垣まで、全国で都市再生の事業が動き始めました。

住んで良し、訪れて良しの国づくりに向けた観光立国を実現するとともに、日本を外国企業からの投資先として、魅力あるものにしてまいります。

企業の誘致や育成など、地域経済の活力を引き出す、意欲ある地域産業おこしを応援します。

食の安全と信頼に万全を期します。意欲と能力のある農業経営を支援し、農山漁村の活性化を図ります。

民間にできることは民間に。就任以来、この一貫した方針のもと、郵政事業、財政投融資、特殊法人の改革を一体のものとしてとらえ、簡素で効率的な質の高い政府に向けた改革に力を入れてまいりました。

本年4月には、日本郵政公社が発足しました。郵便事業への民間参入を可能とした結果、半年の間に14の民間事業者が参入しています。今後、国民的議論を行い、日本郵政公社の中期計画が終了した後の平成19年から、郵政事業の民営化を実現します。このため、来年秋ごろまでに民営化案をまとめ、平成17年に改革法案を提出します。

道路関係4公団については、総額4兆円を超える建設コスト削減やファミリー企業の改革を既に実施しています。民営化推進委員会の意見を基本的に尊重し、年内に具体案をまとめ、平成17年度から4公団を民営化します。

特殊法人等に向けた財政支出を約1兆4,000億円削減しました。事業や組織形態の改革を更に進めます。

新しい変化に対応する民間や地方の潜在力は健在です。構造改革を進めていけば、必ずや民間主導の持続的な経済成長につながっていくものと考えます。

(むすび)

政治は国民自らのものであるという国民の意識なくして、健全な民主政治は発展いたしません。政党や政治家、民主政治を育てるのは一人一人の国民であります。政治家は、国民の信頼を得ることができるよう、一人一人が襟を正さなければなりません。信頼の政治を確立するため、更に政治改革を進めてまいります。

戦後、我が国は、食糧や資源などあらゆる物資が不足し、国民は、今では想像できないほど、苦しい生活を余儀なくされました。まさに耐乏と苦難からの出発でした。

しかし、我々の先輩は、これに屈することなく、勇気と希望を持って新しい時代を切り拓いてまいりました。

今、日本は、厳しい経済状況下にあるとはいえ、米国に次ぐ経済力を有しています。日本の平均寿命は80歳を超え、世界一の長寿国です。100歳以上のお年寄りは2万人を超えました。野球、サッカー、水泳、陸上競技、体操、柔道での若者の活躍には目をみはるものがあります。最近3年間で4人ものノーベル賞受賞者の誕生。国際映画祭での最優秀作品賞や監督賞の受賞。経済だけでなく、文化、芸術、スポーツ、科学、いずれの分野でも、日本は世界で高く評価されています。

「人間のすばらしさは、自分のことを悲観的に思わないことです。」これは、司馬遼太郎氏が子供たちに贈った言葉であります。悲観論からは新しい挑戦は生まれません。

構造改革の種をまき、ようやく芽が出てきた今こそ、日本の潜在力と可能性を信じて改革を進め、明るい未来を築こうではありませんか。

国民並びに議員各位の御理解と御協力を心からお願い申し上げます。

イ 国務大臣の演説に対する質疑要旨(9月29日)

9月26日の国務大臣の演説に対する質疑は、9月29日に菅直人君(民主)、安倍晋三君(自民)、山岡賢次君(民主)、神崎武法君(公明)、志位和夫君(共産)、土井たか子君(社民)及び熊谷弘君(保守新党)が行った。

質疑の主なものは次のとおりである。

第1に、構造改革について、「[1]構造改革のスピード、[2]構造改革の痛みへの理解、[3]地方分権、[4]補助金改革、[5]構造改革への決意、[6]行政の無駄の排除、[7]構造改革が安定した社会の基盤を破壊している」等の質疑に対して、「[1]あらゆる分野において改革を進めている。郵政事業民営化や道路4公団民営化だけではない。不良債権の処理あるいは税制改革、構造改革特区の導入、特殊法人への1兆円を超える歳出の削減など、従来では考えられなかった改革が確実に進んでいる。今後、この改革を更に全力を挙げて推進する。改革のスピードが遅いとの批判は当たらない、[2]改革を進める過程では、社会の中に痛みを伴う事態が生じることがあるが、痛みを和らげ、不安を解消するために、雇用や中小企業のセーフティネット対策に万全を期してきた。国民の痛みには常に注意を払い、民間の活力と地方のやる気を引き出して、改革を進めていく、[3]地方の意見も把握し、補助金改革だけでなく、交付税の改革、地方への税源移譲を行う三位一体の改革を進める。これにより、地方が自らの支出を自らの権限、責任、財源で賄う割合が増すことになると考える、[4]基本方針2003において、社会保障、教育・文化、公共事業、産業振興その他の各行政分野にわたる改革工程を決定している。3年間で約4兆円補助金を削減する、こういう方針のもと、年末の予算編成で具体的な額と項目が決まる、[5]民間にできることは民間に、地方にできることは地方に、総論賛成各論反対をなくして、各論においてもこの方針を進めていくことが今後の日本にとって必要であり、多くの国民の理解と協力を得ながら、構造改革路線を邁進していきたい、[6]行財政改革を徹底し、無駄を省くことを最優先課題の一つに位置づけてきた。この方針を堅持し、与党と一体となって、簡素で効率的な政府を目指していく、[7]構造改革が社会の基盤を壊しているとの批判は当たらない。むしろ、構造改革をしないことによってますます日本経済が衰退していくことを恐れている」旨の答弁があった。

第2に、郵政事業民営化と道路4公団改革について、「[1]郵政事業と道路4公団の民営化、[2]高速道路の永久有料化、[3]高速道路の建設についての政府案と民主党案との比較」等の質疑に対して、「[1]郵政事業の民営化については、どういう民営化の形態がいいかということを経済財政諮問会議で議論し、再来年の国会には、具体的な民営化法案を提出する。道路4公団についても、民営化推進委員会の基本的な意見を尊重して年内にまとめ、来年の通常国会に法案を提出する、[2]今後十分検討すべきものと考えており、現時点では、民営化後の高速道路について、永久に有料とすると決定しているものではない、[3]民主党の大都市以外の高速道路を無料化し道路特定財源を一般財源化するとの提案は、借入金債務の返済あるいは道路の維持管理、必要な道路の建設を行うために要する財源として、収支のつじつまが合わない。建設コストの大幅削減、ファミリー企業の見直し等を引き続き推進し、債務の確実な返済及び必要な道路の建設が可能となる政府案を取りまとめていきたい」旨の答弁があった。

第3に、経済財政について、「[1]構造改革の推進と財政の健全化、経済再生の道筋、[2]消費税、[3]公共事業のコスト縮減、[4]公共事業の在り方の見直し、[5]デフレ克服、[6]中小企業金融政策の拡充」等の質疑に対して、「[1]日本銀行と一体となってデフレ克服を目指しながら、金融、税制、規制、歳出の構造改革を進め、創造的な企業活動を促進して新規需要や雇用を創出し、地域経済を活性化させる。同時に、2010年代初頭のプライマリーバランス黒字化を目指した財政構造改革を進めることなどにより国民の不安を除去して、消費、投資を活性化させ、民間需要主導の力強い持続的な経済成長を図っていく、[2]在任の3年間は、消費税を上げる環境になく、必要はないと考える。その間、徹底的な行財政改革を行う、[3]道路4公団では、約2割、総額4兆円を超える建設コストの縮減を図ることを、また、公共工事全般では、これまでに20%以上を縮減し、今後5年間で物価の下落等を除いて15%の総合的なコスト縮減を達成することを決定している。更に、一層のコスト縮減を実現したい、[4]公共投資関係費については、「改革と展望」に沿って、景気対策のための大幅な追加が行われていた以前の水準を目安にその総額を段階的に抑制しつつ、重点分野に大胆な配分を行っている、[5]デフレは複合的な要因によるものであり、デフレ克服や景気回復に特効薬、即効薬はないが、既に雇用者数や民間企業設備が増加し、名目成長率がプラスに転ずるなど、経済に明るい兆しも見えている。引き続き、日銀と一体となってデフレ克服を目指しながら、金融等の各分野にわたる構造改革を進め、民間需要主導の持続的な経済成長の実現を図っていく。また、日銀においては、今後とも、金融・資本市場の安定とデフレ克服を目指し、政府との対話を密にし、実効性のある金融政策運営を行っていくよう期待している、[6]不動産担保や保証人に依存しない無担保融資の拡大、売掛債権の担保化の促進や、エンジェル税制による直接金融の拡大などにより、中小企業への資金供給を円滑化し、新たな事業に挑戦する中小企業を支援していく」旨の答弁があった。

第4に、雇用対策について、「[1]セーフティネット措置の充実、[2]530万人雇用創出、[3]サービス残業の解消、[4]若者の雇用」等の質疑に対して、「[1]若者自立・挑戦プラン、更に障害者の雇用促進などの雇用対策、やる気と能力のある中小企業への資金供給の円滑化など、雇用・中小企業のセーフティネットには万全を期してきた。これからも、できるだけの政策、対策を打っていきたい、[2]この3年間で、サービス分野を中心に約200万人の雇用が創出されたと見込まれる。完全失業率等、厳しい雇用情勢が続いているが、規制や制度の改革、人材育成や公的業務の民間委託なども進め、更なる雇用の創出に全力で取り組み、厳しい状況の中にあっても勇気と希望を持って挑戦し続ける、やる気のある人を応援していく、[3]監督指導等を通じて企業の労働時間管理の適正化に努めてきた。本年5月には、監督指導の強化を図り、労使の主体的な取組みを促進すべく、総合的な対策を策定したところであり、引き続き解消に努めていく、[4]若年者の雇用問題の解決のため、若者自立・挑戦プランを推進することとしており、大企業をはじめ産業界の理解や協力を得ながら、我が国の将来を担うべき若年者の雇用の拡大に努めていく」旨の答弁があった。

第5に、外交・防衛政策について、「[1]防衛費の縮減、[2]在日米軍駐留経費負担、[3]日米同盟及び日米安保体制、[4]在沖縄米軍基地問題、[5]我が国の外交・安全保障の基本的方向性、[6]有事法制の整備」等の質疑に対して、「[1]自衛隊が今後保有する装備については、厳しい財政事情のもと、防衛関係予算の一層の効率化・合理化を図り、我が国防衛及び国際協力活動上の必要性や周辺諸国に与える政治外交上の影響等を総合的に勘案して、導入の可否を決めていく。弾道ミサイル防衛は、米国と緊密な連携を図り、費用対効果及び将来の我が国の防衛の在り方等を十分検討したうえ、弾道ミサイル防衛システムの導入について、主体的に判断していきたい、[2]在日米軍駐留経費負担は、日米安保体制の円滑かつ効果的な運用を確保する上で重要であり、現下の厳しい財政事情に配慮し、一定の節約・合理化策を踏まえ、我が国が引き続き負担していくことが適当である、[3]日米安保体制は、我が国の平和と安全のための基本的な枠組みとして有効に機能しており、今後とも、その堅持を安全保障政策の重要な柱の一つとしていく。また、世界の問題を世界の国々と協調しながら解決していく原動力としての世界の中の日米同盟を一層強化する方針である、[4]在日米軍施設・区域の集中による沖縄県民の多大な負担は十分承知しており、前回の日米首脳会談でも、その認識で一致した。いろいろな機会をとらえ、その軽減に引き続き努力していく、[5]我が国の安全と発展を確保するためには、その基礎となる国際社会の平和と安定を実現することが必要である。日米同盟関係と国際協調を日本外交の基本とし、国際社会が直面する課題に積極的に対応していきたい、[6]国と国民の安全の確保は国家存立の基盤をなすものであり、そのための法制の整備は、我が国の平和と安全を確保する上で極めて重要である。このような考え方のもと、国家の緊急事態への対処に万全の体制を整備するため、国民の保護のための法制の整備に迅速に取り組み、米軍の行動の円滑化等に必要な法制の整備などを図っていく必要がある」旨の答弁があった。

第6に、イラク復興支援とテロ対策特別措置法について、「[1]イラクに対する復興支援、[2]今後のアフガニスタン復興支援、[3]テロ対策特別措置法の延長、[4]自衛隊のイラク派遣、[5]イラクに対する武力行使、[6]イラク人道復興支援特別措置法とテロ対策特別措置法の廃止」等の質疑に対して、「[1]イラク復興支援は、国際社会の重要課題であり、国際協調のもと、我が国にふさわしい貢献を行っていく。復興の費用負担については、国際社会と協調して今後決定していきたい、[2]アフガニスタンを再びテロの温床にしてはならないという決意のもと、日本は国際社会と一致団結して積極的に取り組んできた。我が国が東京会議で表明した支援についても、既に約4億ドルを実施決定しており、引き続き速やかな実施を図っていく、[3]9・11テロ以降も、世界各地でテロが発生するなど、テロの脅威は依然として深刻であり、国際社会によるテロとの闘いは継続している。我が国としては、テロとの闘いに引き続き積極的、主体的に参加していくため、テロ対策特別措置法の延長法案の成立に万全を期していく、[4]自衛隊を戦闘地域に派遣せず、また、派遣された自衛隊が戦闘行為に参加しないというイラク人道復興支援特別措置法の原則を堅持しながら、現地情勢の調査結果などを踏まえて、派遣の可能性、時期等を判断していく、[5]アナン事務総長が一般論として武力行使の在り方について問題提起を行ったことは承知しているが、米国等による対イラク武力行使は、関連する安保理決議に合致するものであり、国連憲章にのっとったものであると考える、[6]テロとの闘いは終わっていない。我が国がその闘いに参加するのをやめたら、国際社会の信頼を損ねるものになるのではないか。また、多くの国が、今、イラクの国家再建を支援しようとしている中で、我が国が参加しないということで、どうして国際協調を保つことができるのか。イラク人道復興支援特別措置法及びテロ対策特別措置法を廃止すべきとの指摘には同意できない」旨の答弁があった。

第7に、北朝鮮問題について、「[1]拉致問題、[2]核問題、[3]核、ミサイル問題と今後の国交正常化」等の質疑に対して、「[1]現在、被害者御家族の帰国の具体的見通しは立っていないが、その早期実現を含めた問題解決のため、国際社会の理解と協力を待ちつつ、北朝鮮側に対し、前向きかつ具体的な対応を引き続き強く求めていく、[2]米国、韓国等の関係国と緊密に協力し、六者会合を通じた取組みをはじめとして、さまざまな場で北朝鮮に国際社会の一員としての責任ある対応を働きかけ、問題の平和的・外交的解決を図っていく、[3]核やミサイルの問題、拉致問題等を包括的に解決し、その上で日朝国交正常化を実現するとの政府の方針に変わりはない。北朝鮮に対し、日朝平壌宣言に基づき、問題の解決に向けた誠実な対応をとることを強く求めていく」旨の答弁があった。

第8に、年金について、「年金改革」等の質疑に対して、「平成16年度の年金改革においては、現役世代の負担が過大なものとならないよう、給付と負担の見直しを行うなど、若者と高齢者が支え合う、公平で持続的な制度を構築すべく、経済財政諮問会議で検討するとともに、国民的な議論を深め、基礎年金の国庫負担割合の引上げについてもその在り方を幅広く検討し、年内に成案を取りまとめていく」旨の答弁があった。

第9に、社会保障について、「[1]社会保障予算、[2]税金の社会保障への見返り率」等の質疑に対して、「[1]平成15年度予算においても、一般歳出を厳しく抑制する中、主要経費中最大の約19兆円、対前年度プラス3.9%の伸びとなっており、予算の優先順位を間違えているとの指摘は当たらない、[2]我が国の社会保障給付の財源の相当部分は保険料収入であり、保険料負担も国民負担の一部であることから、公費負担のみを取り上げて、その水準を他の経費と比較することは適切でない」旨の答弁があった。

第10に、教育問題について、「[1]教育政策及び民主党の教育に関するマニフェスト、[2]待機児童、[3]小学校の英語教育の必修化と学校評議会、[4]教育改革、[5]教育基本法の見直し」等の質疑に対して、「[1]教育の地方分権を進め、子供や地域の状況に応じた学校づくりを実現していくことは重要な課題と考えている。このため、都道府県の判断による少人数学級編制、構造改革特区における市町村独自の教員任用による少人数学級を可能とするなどの取組みを進めている。また、幼保一元化については、就学前の教育、保育を一体としてとらえた総合施設の検討を進めるなど、子供を持つ親の視点に立った改革を進めていく。なお、民主党は、全国一律の30人学級の実現を提案しているが、政府としては、学級という概念にとらわれることなく、少人数指導や習熟度別指導を充実させるなど、きめの細かい対応策を講じている、[2]平成14年度から16年度まで、毎年度5万人の受入児童数の増大を図ることとし、これを着実に実施している。女性の就労の増加等により保育需要はその後も増加し続けており、今後、必要な受入児童数を見直し、待機児童ゼロ作戦を実現していく、[3]総合的な学習の時間を活用した英会話活動、構造改革特区において英語教育を必修とするなどの取組みの成果も踏まえ、研究を進めていく。また、保護者や地域住民の意向を反映した学校づくりを進めるため、既に学校評議員制度を導入しているが、学校評議会の設置など、新しいタイプの学校運営の在り方についても検討を進めていく、[4]日本発展の原動力は人であり、教育改革の推進は国政上の最重要課題の一つである。画一と受け身から自立と創造へという理念のもと、家庭、地域、学校が一体となって、新しい未来を切り拓く人材の育成に取り組んでいく、[5]教育基本法の見直しについては、国民的な議論を踏まえ、また、与党とも十分協議しながら、今後とも精力的に取り組んでいく」旨の答弁があった。

第11に、農業政策について、「[1]今年の米の作柄、[2]農産物の冷害対策、[3]食料自給率と食料危機への対応、[4]消費者重視の農政の在り方、[5]所得補償制度の導入」等の質疑に対して、「[1]低温、日照不足のため不作が見込まれるが、政府備蓄米を十分保有しているため、米の安定供給に支障はない。なお、売り惜しみ、便乗値上げ等の防止のため、監視体制の強化等の措置を既に講じており、米の適正な流通に万全を期していく。また、冷害に遭われた農家の方々には、被害状況の把握に努め、適切な支援に万全を期していく、[2]農家の方々が安心して農業生産に取り組み、国民に対しても食料の安定供給が確保されるよう、被害状況の把握に努めるとともに、被災農家に対する適切な支援や米の安定供給等に万全を期していく、[3]平成22年度までに食料自給率45%とするとの目標のもと、従来の減反政策を改め、需要に応じた米づくりを目指す米政策改革などにより農業の構造改革を進め、国内の農業生産の増大を図り、適切かつ効率的な備蓄の運営を行う等、食料の安定供給の確保に万全を期していく、[4]食の安全と信頼に万全を期し、消費者の需要に的確に対応した農業生産を推進することが生産者の利益や食料自給率の向上につながるものと確信している、[5]農業者に対し直接的な所得補償を行うことは農業者の経営努力を阻害しかねず、かえって現状の農業構造を固定し、構造改革に支障を来すおそれがあるなど、問題があると考える」旨の答弁があった。

第12に、犯罪対策について、「[1]空き交番ゼロ、[2]総合的な犯罪対策」等の質疑に対して、「[1]犯罪対策の強化に必要とされる警察官の増員について、警察官1人当たりの負担人口を欧米諸国並みに近づけるべきであるとの自民党の提言なども参考にしながら、具体的な規模と期限を決めていく。あわせて、交番相談員の活用、交番の配置の見直し等により、おおむね3年を目途に空き交番ゼロを目指していく、[2]外国人犯罪や少年犯罪など、深刻化する犯罪情勢を改善し、犯罪の生じにくい社会を作り上げるため、各種犯罪対策を強化する。具体的には、犯罪対策閣僚会議が年内に取りまとめる行動計画に基づき、世界一安全な国、日本の復活を図っていく」旨の答弁があった。

第13に、憲法について、「[1]憲法観、[2]憲法改正」等の質疑に対して、「[1]憲法の基本理念である民主主義、平和主義及び基本的人権の尊重は、これまで一貫して国民から広く支持されてきたものと受けとめており、将来においてもこれを堅持すべきものと考える。同時に、自分たちの憲法として憲法改正について議論をすることは常に許されるべきものと考えている、[2]2年後、自民党結党50周年という一つの節目に、憲法第9条や自衛隊の在り方も含め総合的に議論して、改正案を取りまとめたい。そのときに、各政党がどういう対案を出すのか、また、国民的議論がどうなるのか、よく見極め、現実の政治課題としていくべきものだと思う」旨の答弁があった。

第14に、政治改革について、「[1]政治資金、[2]衆議院議員の定数」等の質疑に対して、「[1]政治資金の透明性を確保しながら、広く、薄く、公正に政治資金を確保することが認められるルールを作っていくべきである、[2]議会政治の根幹にかかわる問題であり、今後、国会において十分な議論をすべきものと考える」旨の答弁があった。

その他、産業活力再生法による制度、十勝沖地震への政府の対応等について、質疑が行われた。

(2) 主な議案等の審議

年月日 議案等
平成15年
9月26日
○国務大臣の演説
  • 小泉内閣総理大臣の所信表明演説
9月29日 ○国務大臣の演説に対する質疑

質疑

菅直人君(民主)、安倍晋三君(自民)、山岡賢次君(民主)、神崎武法君(公明)、志位和夫君(共産)、土井たか子君(社民)、熊谷弘君(保守新党)

答弁

小泉内閣総理大臣、麻生総務大臣、亀井農林水産大臣、河村文部科学大臣、坂口厚生労働大臣、井上有事法制担当大臣・防災担当大臣
10月3日 ○平成13年9月11日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法の一部を改正する法律案(第156回国会、内閣提出)〈可決〉

討論

佐藤公治君(民主)、浅野勝人君(自民)、赤嶺政賢君(共産)、今川正美君(社民)
10月10日 衆議院解散

国会用語のミニ解説[5]

 本会議と委員会

本会議 本会議は、その議院の議員全員の会議であり、議院の最終的な意思はここで決定される。
 本会議は、公開が原則であり、本会議を開くには総議員の3分の1以上の出席が必要である。
 その議事は、特別の場合を除いて、出席議員の過半数で決められる。可否同数のときは、議長が決めることになっている。
 本会議は、会期中であればいつでも開けるが、先例では、衆議院では毎週火、木、金曜日が定例日とされている。開会時刻も衆議院規則は、午後1時と定めているが、議事の都合等により、定例日以外に開かれたり、開会時刻が変更されることがある。
 本会議で行う議事の主なものは、[1]議長、副議長及び常任委員長の選挙、会期の決定及び会期の延長、特別委員会の設置、[2]内閣総理大臣の指名、内閣不信任決議案及び国務大臣不信任決議案、[3]国務大臣の演説及びこれに対する質疑、主要な議案の趣旨の説明及びこれに対する質疑、[4]予算、条約、法律案、決算等の議決、[5]請願の議決などがある。

 委員会 委員会には、常任委員会と特別委員会がある。委員会を開くには委員の半数以上の出席が必要で、その議事は、出席委員の過半数で決められる。可否同数のときは、委員長が決めることになっている。
 委員会の開会日については、それぞれの委員会において定例日を決めているが、具体的な開会日は開会時刻とともに理事会で協議の上決定される。なお、委員会は、報道関係者その他の者で委員長の許可を得たものは傍聴することができる。
 旧帝国議会では、議案の審議の中心は本会議であったが、現在の国会は、委員会中心制を採用している。提出された議案は、まず委員会が専門的、詳細にわたって審査する。
 加えて、委員会はそれぞれ所管する事項について国政に関する調査を行うことができることになっている。
 議案が提出されると、その議案は、所管の委員会に付託される。
 議案を付託された委員会では、議案を提出した議員あるいは内閣提出の議案についてはその担当国務大臣から、提案の理由や議案の内容について説明を聴く。
 次いで、質疑に入り、質疑が終わると、討論を行い、次に、採決をして議案に対する委員会の意思を決定し、その後本会議での審議に移される。

 議院又は委員会は、審査や調査のために必要があるときには、内閣、官公署その他に対して資料の提出を求めることができるほか、証人や参考人を呼ぶこともできるなど国民の負託にこたえられるよう大きな権限が与えられている。


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