衆議院

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第2 本会議の概況

【第159回国会】

1 国務大臣の演説及び質疑

平成16年1月19日に小泉内閣総理大臣の施政方針演説、川口外務大臣の外交演説、谷垣財務大臣の財政演説、竹中経済財政政策担当大臣の経済演説が衆議院本会議において行われ、これに対して、同月21日及び22日に各党の代表質問が行われた。

(1) 小泉内閣総理大臣の施政方針演説

(はじめに)

昨年11月に行われた総選挙において国民の信任をいただき、再び内閣総理大臣の重責を担うことになりました。

構造改革なくして日本の再生と発展はないというこれまでの方針を堅持し、「天の将に大任をこの人に降さんとするや、必ずまずその心志を苦しめ、その筋骨を労せしむ」という孟子の言葉を改めてかみしめ、断固たる決意を持って改革を推進してまいります。

私は、就任以来、民間にできることは民間に、地方にできることは地方にとの方針で改革を進めるとともに、国際社会の一員として我が国が建設的な役割を果たすことに全力を傾けてまいりました。

我々が目指す社会は、国民一人一人や、地域、企業が主役となり、努力が報われ、再挑戦できる社会であります。現場の知恵や創意工夫は、日本の潜在力を生かした経済成長につながります。国は、国民の安全と安心を確保しなければなりません。国民、地域、企業の努力を支援するとともに、科学技術を振興し、我が国の将来の発展基盤を整備いたします。国際社会にあっては、世界の平和と繁栄を実現するため積極的に貢献いたします。

本年は、これまでの改革の成果を生かすとともに、郵政事業や道路公団の民営化、地方分権を進める三位一体の改革、年金改革など、これまで困難とされてきた改革を具体化し、日本再生の歩みを確実にする年であります。私は、自由民主党及び公明党による連立政権の安定した基盤に立って、改革の芽を大きな木に育て、自信と誇りに満ちた、世界から信頼される国を実現したいと思います。

(イラク復興支援とテロとの闘い)

昨年11月、イラク復興支援に中心的な役割を果たす中で殉職された奥克彦大使、井ノ上正盛一等書記官のお二人に、改めて心から哀悼の意を表します。

イラクに安定した民主的政権ができることは、国際社会にとっても、中東にエネルギーの多くを依存する我が国にとっても、極めて重要であります。国際社会がテロとの闘いを続けている中で、テロに屈してイラクをテロの温床にしてしまえば、イラクのみならず世界にテロの脅威が広がります。イラク人によるイラク人のための政府を立ち上げて、イラク国民が希望を持って自国の再建に努力することができる環境を整備することが、国際社会の責務であります。

現在、37か国がイラク国内で活動し、90を超える国と国際機関が支援に取り組んでおります。国連も、すべての加盟国に対し、国家再建に向けたイラク人の努力を支援することを要請しております。

戦後、我が国は、多くの国から援助を受けて発展し、今や世界の国々を支援する立場になりました。日本の平和と安全は日本一国では確保できません。世界の平和と安定の中に日本の発展と繁栄があります。イラクの復興に我が国は積極的に貢献してまいります。

その際、物的な貢献は行うが、人的な貢献は危険を伴う可能性があるから他の国に任せるということでは、国際社会の一員として責任を果たしたとは言えません。資金協力と自衛隊や復興支援職員による人的貢献を車の両輪として進めてまいります。

資金面では、当面の支援として、電力、教育、水・衛生、雇用などの分野を中心に総額15億ドルの無償資金を供与するとともに、中期的な電気通信、運輸等の経済基盤の整備も含め、総額50億ドルまでの支援を実施することとしており、真にイラクの復興に生かされるよう努めてまいります。

人的な面では、イラクが必ずしも安全とは言えない状況にあるため、日ごろから訓練を積み、厳しい環境においても十分に活動し、危険を回避する能力を持っている自衛隊を派遣することといたしました。武力行使はいたしません。戦闘行為が行われていない地域で活動し、近くで戦闘行為が行われるに至った場合には、活動の一時休止や避難等を行い、防衛庁長官の指示を待つこととしております。安全確保のため、万全の配慮をいたします。

自衛隊は、海外の平和活動で大きな成果を上げており、イランでも、大地震による被災者支援のための物資の輸送に当たりました。イラクにおいても、現地社会と良好な関係を築きながら、医療、給水、学校等公共施設の復旧整備や物資の輸送など、イラクの人々から評価される支援ができると考えております。

自衛隊は、既に現地において人道復興支援活動に着手しておりますが、今後、現地の情勢や治安状況を注視しつつ、本格的な支援活動を行ってまいります。困難な任務に当たる自衛隊員に敬意を表します。

世界各国が協力してイラク復興を支援するよう、今後とも外交努力を重ねるとともに、中東和平に尽力し、アラブ諸国との対話を深めてまいります。

アフガニスタンにおけるテロとの闘いは依然として続いております。昨年12月にリビアが大量破壊兵器の開発計画の廃棄と即時の査察受入れを決定したことは、大きな意義を有するものであります。北朝鮮を含め、他の国にも責任ある対応を強く期待します。テロの防止、根絶及び大量破壊兵器の不拡散に向けた国際的取組に引き続き積極的に参画してまいります。

(進展する改革 −「官から民へ」「国から地方へ」の具体化−)

日本経済は、企業収益が改善し、設備投資が増加するなど、着実に回復しております。経済成長はこの1年半連続で実質プラスになり、名目でも過去半年プラスとなりました。雇用情勢は厳しいものの、求人が増加するなど、持ち直しの動きがあり、物価にも下げ止まりの兆しがあります。平成15年度の補正予算は、14年ぶりに国債を増発することなく編成いたしました。国主導の財政出動に頼らなくても構造改革の成果があらわれています。

地域の再生は、元気な日本経済を実現するかぎです。民間の活力と地方のやる気を引き出す金融、税制、規制、歳出の改革をさらに加速し、政府は日銀と一体となって、デフレ克服と経済活性化を目指してまいります。

民間にできることは民間にとの方針のもと、最大の課題は、郵貯、年金を財源とする財政投融資を通じて特殊法人が事業を行う公的部門の改革であるとの認識で行財政改革を進めてまいりました。

改革の本丸ともいうべき郵政事業の民営化については、現在、経済財政諮問会議において具体的な検討を進めております。本年秋ごろまでに国民にとってよりよいサービスが可能となる民営化案をまとめ、平成17年に改革法案を提出いたします。

道路関係4公団については、競争原理を導入し、ファミリー企業を見直すとともに、日本道路公団を地域分割したうえで民営化いたします。9,342キロの整備計画を前提とすることなく、一つ一つの道路を厳格に精査し、自主性を確保された会社が建設する有料道路と国みずからが建設する道路に分けるとともに、抜本的見直し区間を設定いたしました。規格の見直しなどによる建設コストの徹底した縮減により、有料道路の事業費を当初の約20兆円からほぼ半分に減らします。債務は民営化時点から増加させず、45年後にはすべて返済いたします。また、通行料金を当面平均1割程度引き下げるとともに、多様なサービスを提供してまいります。このような改革は、民営化推進委員会の意見を基本的に尊重したものであります。今国会に関連法案を提出し、平成17年度に民営化を実現いたします。

財政投融資については、郵貯、年金の預託義務を既に廃止するとともに、規模の圧縮を進め、平成16年度当初計画の規模は、平成8年度の約40兆円から半減し、20兆円になりました。

163の特殊法人のうち既に8割を、廃止、民営化、独立行政法人化することにより、事業を徹底して見直し、透明性を高め、評価を厳正に行うこととしました。特殊法人や独立行政法人の役員退職金は大幅に引き下げ、国家公務員並みといたします。

国家公務員の定員については、治安や入国管理など真に必要な分野で増員しつつ、全体として削減します。

公務員制度改革については、公務員が国民全体の奉仕者として職務に専念できるよう、具体化を進めてまいります。

地方にできることは地方にとの原則のもと、三位一体改革は大きな一歩を踏み出しました。平成16年度に補助金1兆円の廃止・縮減等を行うとともに、地方の歳出の徹底的な抑制を図り、地方交付税を1兆2,000億円減額いたします。また、平成18年度までに所得税から個人住民税への本格的な税源移譲を実施することとし、当面の措置として所得譲与税を創設し、4,200億円の税源を移譲します。平成18年度に向け、全体像を示しつつ、地方の自由度や裁量を拡大するための改革を推進いたします。

現行特例法の期限後も引き続き市町村合併を推進するための措置を講じます。

道州制については、北海道が地方の自立・再生の先行事例となるよう支援してまいります。

(暮らしの改革の実現)

構造改革は国民の暮らしを変えつつあります。

世界最先端のIT国家に向け、高速インターネットは世界で最も速く、かつ安くなり、株式取引に占めるインターネット取引の割合は3年間で6%から19%に急成長いたしました。本年度末には、国の行政機関への申請や届け出のほぼすべてを家庭や企業のパソコンから行えるようになります。技術革新と規制改革の効果が相まって、ICカードを使った定期券が普及し、電子タグを活用して店頭で食品の産地情報を提供する試みが始まっております。家庭のIT基盤整備につながる地上デジタルテレビジョン放送の普及を促進し、暮らしの中でITを実感できる社会を実現いたします。情報通信の安全対策を強化し、信頼性を高めつつ、電子政府を推進します。IT分野におけるアジアとの国際協力を推進いたします。

廃棄物の発生を減らすため、消費者のみならず生産者が積極的な役割を果たす仕組みを、家電、自動車、パソコンなど製品の特性に応じて整えてまいりました。身近なところでは、既にほぼすべての中央省庁食堂において生ごみのリサイクルを実施しております。トウモロコシやおがくずで作る食器などのバイオマス製品の試験利用も進められております。

香川県豊島では、多くの関係者の努力により、不法投棄により損なわれた美しい島を取り戻すための事業が始まっています。このような環境汚染を二度と起こさないため、できるだけ早期に大規模な不法投棄をなくし、ごみゼロ社会を目指してまいります。

組織の内部から公益のために違法行為を通報する人を保護する仕組みを整備してまいります。

(安全への備え)

国民の安全への備えは国の基本的な責務であります。

空港や港湾など水際での取締りや危機管理体制の整備、重要施設の警備など国内テロ対策を強化し、在外公館の警備や海外の日本人の安全確保に努めてまいります。大規模テロや武装不審船など緊急事態に的確に対処できる態勢を整備いたします。

有事に際して国民の安全を確保するため、関係法案の成立を図り、総合的な有事法制を築き上げてまいります。

安全保障を巡る環境の変化に対応するため、弾道ミサイル防衛システムの整備に着手するとともに、防衛力全般について見直してまいります。

世界一安全な国日本の復活は急務であります。政府を挙げ、一刻も早く国民の治安に対する信頼を回復いたします。

来年度は、地方公務員全体を1万人削減する中で、空き交番の解消を目指し、3,000人を超える警察官を増員し、退職警察官も活用して交番機能を強化いたします。安全な町づくりを含め、市民と地域が一体となった、犯罪が生じにくい社会環境の整備を進めてまいります。出入国管理を徹底し、暴力団や外国人組織犯罪対策を強化します。

被害に遭われた方々への情報提供や、保護、支援の充実に努めてまいります。

司法を国民に身近なものとするため、刑事裁判に国民が参加する裁判員制度の導入や、全国どこでも気軽に法律相談できる司法ネットの整備など、司法制度改革を進めてまいります。

昨年の交通事故死者数は、46年ぶりに8,000人を下回りました。10年間で5,000人以下にすることを目指します。

学校、病院など重要な建築物と住宅の耐震化を促進し、消防・防災対策を強力に推進します。住居の確保などの被災者支援をはじめ、災害復旧復興対策を充実してまいります。

(安心の確保)

若者と高齢者が支え合い、国民が安心して暮らすことができる社会保障制度を構築してまいります。

年金については、少なくとも現役世代の平均的収入の50%の給付水準を確保しつつ、負担が過大とならないよう保険料を極力抑制する一方、年金課税の適正化により基礎年金の国庫負担割合の2分の1への引上げに道筋をつける改革案を取りまとめました。今国会に関係法案を提出します。

医療や介護については、将来にわたり良質で効率的なサービスを国民が享受できるよう基盤を整備するとともに、安定的な運営を目指した改革を進めます。

保育所の待機児童ゼロ作戦を着実に実施し、来年度も受入児童を5万人増やすとともに、育児休業制度を充実いたします。児童手当の支給対象年齢を就学前から小学校第3学年修了まで引き上げます。子供を安心して産み、子育ての喜びを実感できる社会を目指し、少子化対策に政府一体で取り組みます。

女性が持てる能力を発揮し、さまざまな分野で活躍すれば、活力や多様性に満ちた社会になります。これまで女性の進出が少なかった分野も含め、女性のチャレンジする意欲を支援してまいります。

建築物や公共交通機関のみならず、制度や意識も含めて社会のバリアフリー化を促進するとともに、人権に関する教育や啓発を進め、だれもが相互に人格と個性を尊重し、支え合う社会を構築してまいります。

消費者の視点に立って、BSEへの対応をはじめ食の安全と信頼を確保いたします。SARSや鳥インフルエンザ対策に万全を期します。

(地域の再生と経済活性化)

歴史と文化を生かし自然との共生を目指す琵琶湖・淀川流域圏の再生が始まりました。稚内や石垣では、港と町の連携に加え、海外や周辺観光地との交流を促進し、観光振興と市街地の活性化に向けた施策が動き出しています。松山では、小説「坂の上の雲」をモデルに、歩きやすく住みやすい町づくりが進んでいます。地域の知恵や民間のやる気を生かし、全国で都市再生を進めてまいります。

昨年4月から開始した構造改革特区が動き出しております。群馬県太田市では、小学校から英語で授業を実施する小中高一貫校を開設することとしたところ、定員の2倍の入学希望者がありました。国際物流特区では、夜間の通関取扱件数が大幅に増加し、輸出入も増えるなど、目に見える成果が上がっています。幼稚園と保育所の幼児が一緒に活動できる幼保一体化特区、農家が経営する民宿でどぶろくをつくって提供できるふるさと再生特区など、各地域が知恵を絞った特区が全国に236件誕生しております。今後も特区の提案を着実に実現していくとともに、その成果を速やかに全国に広げてまいります。

2010年に日本を訪れる外国人旅行者を倍増し、住んでよし、訪れてよしの国づくりを実現するため、日本の魅力を海外に発信し、各地域が美しい自然や良好な景観を生かした観光を進めるなど、観光立国を積極的に推進いたします。

対日直接投資は、昨年5月に設置した総合案内窓口を通じて780の投資案件が発掘されるなど、着実に進展しています。5年間での倍増目標に向け、外国企業にとって日本を魅力ある市場にしてまいります。

愛知県高浜市では、株式会社を設立して一括して業務を委託することにより、市職員の人件費を削減するとともに、地域の雇用を創出しています。

地方自治体や企業からの要望を一括して受けとめ、行政サービスの民間開放の促進など地域の実情に合わせた制度改革や施策の連携により、経済活性化と雇用創造を通じた地域の再生を全面的に支援してまいります。

米づくりをはじめとする農業と、流通を含む食品産業の活性化を図ってまいります。やる気と能力のある経営を支援し、農産物の輸出も視野に置いた積極的な農政改革を展開いたします。美しい農山漁村づくりを目指すとともに、都市との交流を推進してまいります。

緑の雇用により、森林整備の担い手の育成と地域への定住促進を図り、多様で健全な森林の育成を推進します。

雇用対策に全力を挙げます。求人と求職のミスマッチの解消や早期再就職の支援を推進いたします。企業実習と一体となった教育訓練の実施、地域が民間を活用して実施する若者向けの職業紹介など、若者自立・挑戦プランを実施します。65歳までの雇用機会確保や中高年者の再就職を促進いたします。530万人雇用創出プログラムを着実に実施してまいります。

主要銀行の不良債権残高は、この1年半で9兆円以上減少し、不良債権比率も目標に向け順調に低下しています。平成16年度には不良債権問題を終結させます。金融機能の強化のため、新たな公的資金制度を整備してまいります。

市場における個人の資産運用を拡大し、地域や中小企業に必要な資金を行き渡らせるため、監視機能の強化や株式のペーパーレス化により証券市場への信頼と利便性を高め、銀行と証券の連携を進めます。信託業の担い手や対象を拡大し、土地担保や個人保証に頼らない資金調達を促進いたします。

昨年発足した産業再生機構は、9件の支援を決定しました。全国に設置した中小企業再生支援協議会は、2,600社を超える企業の相談にこたえ、200件近い再生計画を支援し、着実に成果を上げています。民間の英知と活力を最大限活用して、産業再生を着実に進めてまいります。

これまで1,000万円以上必要だった会社設立の資本金を1円でも可能とする特例を認めた結果、1年間で8,000近い企業が誕生しました。ベンチャー企業への個人投資を伸ばす優遇税制を拡充し、起業や新事業への挑戦を支援してまいります。

総合規制改革会議の終了後も、民間人を主体とする新たな審議機関を設置するとともに、平成16年度を初年度とする新たな3か年計画を策定し、規制改革を加速いたします。

21世紀にふさわしい競争政策を確立するため、独禁法の見直しに取り組んでまいります。

平成16年度予算の編成に当たっては、一般歳出を実質的に前年度の水準以下に抑制しました。財政の基礎的収支は改善しております。主要な分野で増額したのは、社会保障のほか、科学技術振興と中小企業予算だけであり、それ以外についてはすべての分野を減額し、各分野においてめり張りのきいた予算配分を行いました。新たな試みとして、成果を厳しく問う一方で、複数年度執行を弾力化するとともに、少子化対策など複数省庁にまたがる政策の予算を制度改革と組み合わせて効率化するなど、歳出の質の改善に努めてまいります。

2010年代初頭には基礎的財政収支を黒字化することを目指します。

多年度で税収を考え、多岐にわたる包括的かつ抜本的な改革を行った平成15年度税制改革は着実に効果をあらわしつつあり、来年度も1兆5,000億円の先行減税が継続します。平成16年度においては、住宅ローン減税の期限を延長するとともに、土地や株式投資信託の譲渡益課税を軽減し、個人資産の活用と土地・住宅市場の活性化を図ります。

公正で活力ある経済社会を実現するため、先般の与党税制改正大綱を踏まえ、社会保障制度の見直しや三位一体の改革と併せ、中長期的視点に立って税制の抜本的改革に取り組んでまいります。

(将来の発展への基盤作り)

地球環境の保全は小泉内閣の重要な課題であり、科学技術を活用して環境保護と経済発展の両立を図ってまいります。

京都議定書の早期発効に引き続き努力し、さらに、すべての国が参加する共通ルールの構築を目指します。

平成16年度中にすべての公用車を低公害車に切りかえる目標を掲げたことにより、企業は技術開発を加速しました。新規登録車に占める低公害車の割合は6割を超えています。ディーゼル車について世界最高水準の排出ガス規制を実施し、世界に先駆けた環境対策を進めてまいります。太陽光による発電は世界一であります。中長期的な環境・エネルギー政策のもと、原子力発電の安全確保に全力を挙げるとともに、燃料電池や太陽光・風力発電など、クリーンエネルギーの普及を促進してまいります。地球温暖化対策推進大綱の評価・見直しを行い、脱温暖化に向けた努力が経済の活力となる社会を構築してまいります。

科学技術創造立国の実現に向け、ヒトゲノム解読の成果を生かした革新的ながん治療など、国民の暮らしをよくし、経済活性化につながる研究開発として、みらい創造プロジェクトを戦略的に推進します。産学官の連携を推進し、地域や民間の活力を引き出しながら、科学技術を振興してまいります。

知的財産立国を目指し、順番待ち期間ゼロの特許審査を実現し、模倣品・海賊版対策を強化します。画期的な裁判所改革として、知的財産高等裁判所を創設します。

能楽、人形浄瑠璃文楽が人類のすぐれた無形遺産としてユネスコに認定されるなど、我が国には世界に誇るべき伝統文化があります。世界で高く評価されている映画、アニメ、ゲームソフトなどの著作物を活用したビジネスを振興し、文化、芸術を生かした豊かな国づくりを進めてまいります。

新しい時代を切り拓く心豊かでたくましい人材を育成し、人間力向上のための教育改革に全力を尽くします。

初等中等教育の充実による確かな学力の育成を図ります。心身の健康に重要な食生活の大切さを教える食育を推進し、子供の体力向上に努めます。地域住民による学校を活用した小中学生の体験活動を支援するとともに、学校の安全確保のための対策を講じ、社会全体で子供をはぐくむ環境を整備いたします。

本年4月には国立大学が法人化されます。活力に富み個性豊かな大学づくりを目指してまいります。意欲と能力のある若者が教育を受けられるよう、奨学金事業をさらに拡充してまいります。

教育基本法の改正については、国民的な議論を踏まえ、精力的に取り組んでまいります。

非行問題等困難を抱える青少年を支援するとともに、青少年の社会的自立を促す対策を推進します。

政府の活動の記録や歴史の事実を後世に伝えるため、公文書館における適切な保存や利用のための体制整備を図ります。

海底の天然資源開発に我が国の権利が及ぶ大陸棚を画定するため、大陸棚調査を進めます。

土地の境界や権利関係を示す地籍の調査を集中的に推進してまいります。

(外交)

北朝鮮については、日朝平壌宣言を基本に、拉致問題と、核、ミサイルなど安全保障上の問題の包括的な解決を目指してまいります。関係国と連携しつつ、6者会合等における対話を通じ、北朝鮮に対し、核開発の廃棄を強く求めてまいります。拉致被害者並びに御家族の意向も踏まえ、拉致問題の一刻も早い全面解決に向け、引き続き全力を尽くします。北朝鮮には、誠意ある行動をとるよう、粘り強く働き掛けてまいります。

日米関係は日本外交のかなめであり、国際社会の諸課題に日米両国が協力してリーダーシップを発揮していくことは我が国にとって極めて重要であります。多岐にわたる分野において緊密な連携と対話を続け、日米安保体制の信頼性の向上に努め、強固な日米関係を構築してまいります。

沖縄に関する特別行動委員会最終報告の実施に取組、普天間飛行場の移設、返還を含め、県民負担の軽減に努めるとともに、地域特性を生かした経済的自立を支援いたします。沖縄県恩納村に、世界に開かれた最高水準の教育研究を行う科学技術大学院大学を設立する構想を推進いたします。

昨年11月から金浦空港と羽田間の航空便運航が開始され、本年から韓国で日本語の歌の販売が解禁されるなど、日韓両国民の相互理解、交流はかつてないほど深まっています。日韓友好親善の機運を生かしながら、両国関係を一層高いレベルへと発展させていく考えであります。

中国との関係は最も重要な二国間関係の一つであり、昨年発足した新指導部との間で、未来志向の日中関係を発展させてまいります。日中経済関係は貿易や投資の拡大により緊密化しており、これを相互に利益となる形で進展させるとともに、日中両国は、アジア地域、世界全体の課題の解決に向け協力いたします。

昨年1月に私とプーチン大統領との間で採択した日ロ行動計画は、幅広い分野で着実に実現されつつあります。経済分野をはじめとする大きな潜在力を生かしながら日ロ関係を発展させ、我が国固有の領土である北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結することを目指してまいります。

本年5月にEUの拡大を控えてダイナミックに発展する欧州は、国際社会において価値と課題を共有する大切なパートナーであり、幅広い分野において関係の強化、拡大に努めてまいります。

昨年12月に、日本ASEAN特別首脳会議を開催いたしました。採択された東京宣言に基づき、新しい時代の、共に歩み共に進むパートナーとしてASEAN諸国との関係を強化いたします。

国際社会の平和と安全に対する脅威への対応が問われている中、国連の改革に努めてまいります。

国際社会の責任ある一員として、アフガニスタン、スリランカ、東ティモールなどで、平和の定着と国づくりを支援してまいりました。我が国がより積極的に国際平和協力を推進するための体制づくりに努めます。

人間一人一人を重視する人間の安全保障の視点も踏まえ、途上国の貧困克服や持続的な成長、地球規模問題の解決に向け、ODAを戦略的に活用してまいります。

多角的貿易体制を維持強化するため、WTO新ラウンド交渉の進展に努力いたします。戦略的課題として重要性が高まりつつあるメキシコ、東アジア諸国との経済連携協定の交渉については、将来にわたる日本経済の在り方を考え、積極的に取り組んでまいります。

(むすび)

国民との対話、タウンミーティングは通算100回を数えました。今後もさまざまな形で開催いたします。

先の総選挙に関し、公職選挙法違反容疑で衆議院議員が逮捕されたことは、まことに遺憾であります。「信なくば立たず」、国民の信頼を得ることができるよう、政治家一人一人が襟を正さなければなりません。さらに政治改革を進め、信頼の政治の確立を目指してまいります。

我が国は、日本国憲法前文において、「われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。」との決意を世界に向かって明らかにしております。

青年海外協力隊の諸君は、今も世界各地で活躍しています。南太平洋のサモアで感染症対策に従事する人や、アフリカのセネガルで農業指導を行う人など、3,000人を超える日本人が、厳しい環境にもめげず、みずから進んで地域の人々のために活動しており、我が国の国際社会における信頼を高めております。

ゴラン高原や東ティモールにおける国連平和維持活動やインド洋におけるテロ対策の支援など、日本が国際社会の一員として行うべき任務を、多くの自衛官が国民を代表して遂行しております。

平和は唱えるだけでは実現できません。国際社会が力を合わせて築き上げるものであります。世界の平和と安定の中に我が国の安全と繁栄があることを考えるならば、日本も行動によって国際社会の一員としての責任を果たさなければなりません。

古代中国の思想家墨子は、「義を為すは、毀(そしり)を避け誉に就くに非ず」と述べています。すなわち、我々が世のためになることを行うのは、悪口を恐れたり、人から褒められるためではなく、人間として当然のことをなすという意味であります。

世界の平和のため、苦しんでいる人々や国々のため、困難を乗り越えて行動するのは国家として当然のことであり、そうした姿勢こそが、憲法前文にある「国際社会において名誉ある地位」を実現することにつながるのではないでしょうか。

国民並びに議員各位の御理解と御協力を心からお願い申し上げます。

(2) 川口外務大臣の外交演説

第159回国会の開会に当たり、我が国外交の基本方針について所信を申し述べます。

(イラクの人道復興支援等)

イラクにおいて、奥大使、井ノ上一等書記官、ジョルジース職員が殉職されてから、既に2か月近くがたとうとしています。3人の命を奪った卑劣な暴力に対し、強い憤りを感じます。厳しい環境の中で、日夜粉骨砕身、イラク復興のために尽力された3人に対し、改めて哀悼の意を表し、その功績に心からの敬意をささげます。

イラクの復興は、国際社会の緊急の課題です。イラクが破綻国家となり、かつてのアフガニスタンのようにテロ活動の拠点となれば、中東のみならず、我が国を含む国際社会全体に対する大きな脅威となります。また、我が国は原油の9割近くを中東地域に頼っています。このように、我が国の国益に直結するイラクの復興に可能な限り貢献することは、我が国外交の責務です。我が国は、テロに屈することなく、イラクの復興支援に取り組んでいかなければなりません。

イラクの治安を回復し、復興を成功させるためには、イラク国民に将来への希望を与えることが不可欠です。イラク人による新しい政府の樹立に向けて、国連、中東諸国を含む国際社会全体が、統治権限の早期移譲のプロセスを支えていくべきです。

我が国は、これまでも、イラク復興に関する安保理決議の採択を関係国に働き掛けるなど、国際協調体制の構築に向けて努力してきました。今後とも、国際社会の団結を維持強化するため、中東諸国との協力も強化しながら、主導的な役割を果たしていきます。

こうした考えのもと、我が国は、昨年末に総理特使を英仏独、中東諸国、国連に派遣し、先日は私自身がイラン及びアラブ首長国連邦を訪問し、我が国の考え方を説明してまいりました。このような外交努力を今後とも継続してまいります。

四半世紀にもわたる圧政のもとで、イラクの国土と国民生活は荒廃しています。イラク国民が一日も早く普通の生活に戻れるよう、イラクの人々に真に必要とされ、喜ばれる支援を迅速に行っていく必要があります。我が国は、フセイン政権崩壊後、イラクへの人道復興支援に積極的に取り組んできましたが、今後、さらに支援を強化していきます。

昨年10月のマドリード支援国会合において表明した資金協力については、まずは、当面の支援である15億ドルの無償資金協力を、電力、教育、水・衛生、保健、雇用等、イラク国民の生活基盤の再建や治安の改善に資する支援に重点を置きつつ、できる限り迅速に実施していきます。より中長期的には、電気通信、運輸等の経済基盤の復興を行い、それを民間投資の呼び水としたいと考えています。

イラクの債務問題については、パリ・クラブにおいて相当の債務削減を行い、また、他のパリ・クラブ債権国がその合意に沿って同様に対応する場合は、我が国もかなりの債権放棄を行う用意があります。

こうした取組を通じて、イラクの民生を安定させ、治安の回復につなげていくためには、資金面に加え、人的支援が不可欠です。今国会において、イラク人道復興支援特措法に基づく自衛隊の対応措置の実施について御承認いただき、我が国自衛隊による給水、医療等の人道復興支援を着実に実施することが必要です。議員各位の御協力を改めてお願い申し上げます。

我が国の支援の実施に当たっては、自衛隊員をはじめ支援に携わる人々の安全確保に万全を期するとともに、自衛隊の活動を含め、我が国の人道復興支援の内容や目的をイラク国民及びアラブ諸国民に紹介し、理解してもらうための広報活動にも力を入れていく考えです。

イラクを含む中東地域全体に平和と安定をもたらすためには、そのかぎとなる中東和平問題の解決が不可欠です。我が国は、イスラエル・パレスチナ間の信頼醸成のための会議の開催、和平に向けた両当事者や関係諸国への働き掛け、対パレスチナ支援を一層強化していく考えです。

(北朝鮮を巡る問題)

北朝鮮を巡る問題は、我が国が直面する最も重要な外交課題の一つです。北朝鮮との関係では、日朝平壌宣言に基づき、拉致問題及び核やミサイルといった安全保障問題等の諸懸案を包括的に解決することを引き続き目指します。そのために、我が国は、米韓両国との緊密な連携協力を堅持するとともに、中国やロシア等の関係国とも協力し、6者会合等における対話を通じ、北朝鮮に対して、すべての核開発計画の検証可能かつ不可逆的な放棄を強く求めていきます。また、拉致問題については、被害者とその御家族の御意向も踏まえ、問題の一刻も早い全面的解決に向けて引き続き全力を尽くしてまいります。

(国際社会の平和と安定に向けた取組)

テロとの闘いは、引き続き深刻な挑戦であり、我が国も真剣に取り組んでいます。イラクでは、国連本部や赤十字国際委員会事務所がテロ攻撃に遭い、イスタンブールの英国総領事館も標的となるなど、テロは国際的な広がりを持ち、かつ、無差別化しています。テロリストの活動を封じ込めるため、各国が情報交換、出入国管理、テロ資金対策等、幅広い分野における協力を推進することが不可欠です。

我が国は、テロ対策特措法に基づき、テロとの闘いに引き続き主体的にかかわる一方、関係国と協力し、テロ関連情報の収集、分析に努めています。また、不法な出入国防止を強化するため、生体情報による本人認証技術を用いた旅券を平成17年度中に導入することを目指しています。今後とも、海外の日本人の安全確保、在外公館の警備強化に最善を尽くし、東南アジア諸国をはじめとする途上国のテロ対処能力向上のための支援を強化していく考えです。

テロの脅威が大量破壊兵器と結びついたとき、その脅威ははかり知れないものとなるため、懸念国やテロリストによる大量破壊兵器やミサイルの取得、使用を阻止することが重要な課題となっています。我が国は、核兵器不拡散条約、NPTをはじめとする軍縮・不拡散関連の諸条約の普遍化と完全な履行を各国に働き掛けるとともに、弾道ミサイルの拡散を防止する国際的な枠組みの強化に努めていきます。また、拡散安全保障イニシアチブ、PSIに積極的に参加し、さらにアジア地域における不拡散の取組強化に貢献していく考えです。

イランの核問題は、核不拡散体制にかかわる重要な問題ですが、イランによる国際原子力機関、IAEA追加議定書の署名など、前向きな動きが見られます。私も、今月上旬、イランを訪問した際、このような動きを歓迎し、イランが今後ともIAEA理事会の累次決議を誠実に履行するよう働き掛けてまいりました。同時に、我が国はイランとの伝統的な友好協力関係の維持発展に努める用意がある旨伝えました。先般の地震に際しては、我が国は、国際緊急援助隊の派遣や自衛隊輸送機C130による救援物資の輸送といった人道支援を実施したところです。

リビアが大量破壊兵器やミサイルの開発計画を廃棄し、国際機関による査察の即時受入れを決定したことは、国際社会の平和と安全にとって大きな前進です。そこに至るまでの関係国の外交努力を高く評価します。北朝鮮をはじめ、大量破壊兵器等の開発疑惑が指摘されている国々がリビアに倣うことを、我が国は強く期待しております。

アフガニスタンの復興を支援し、同国を再びテロ活動の拠点にしないという国際社会の決意と取組は、先般のロヤジェルガでの新憲法採択に見られるように、着実に実を結びつつあります。我が国は、幹線道路や学校の建設などの支援を行ってきているほか、元兵士の武装解除・復員・社会復帰、DDRにおいて主導的な役割を果たしてきており、こうした取組を今後も継続してまいります。

イラクの復興、テロとの闘い等の課題に国際社会が協調して取り組んでいくためには、国連が一層の役割を果たしていくことが必要です。現在、国連事務総長のもとに有識者会合が設置され、国連の機能強化について検討が進められており、国連改革に向けた機運は高まっています。私自身、有識者による懇談会を設置し、議論をお願いしているところです。その成果も踏まえ、我が国が2005年の開催を提案している国連改革に関する首脳会議の実現につなげていき、国連改革に実質的な成果が得られるよう努力したいと考えています。そうした取組が成果を上げ、安保理改革が実現する暁には、我が国は常任理事国として一層の責任を果たしていく考えです。その意味でも、まずは本年秋に行われる非常任理事国選挙に当選をし、2005年、2006年に非常任理事国として積極的な役割を果たすことが重要であり、そのために鋭意努力してまいります。また、よりバランスのとれた国連分担率の実現や国際機関で働く邦人職員の増強にも取り組んでまいります。

(豊かな世界と日本の繁栄の実現)

我が国の繁栄を実現するためには、世界経済の安定と持続的な発展が不可欠です。我が国は、多角的自由貿易体制の維持強化のため、WTOラウンド交渉の早期妥結に向けて積極的に取組、我が国の利益にかなった成果を目指します。同時に、多角的自由貿易体制を補完する取組として、二国間や地域的な経済連携も推進していく方針です。当面、メキシコとの協定交渉の早期妥結に鋭意取り組む一方、我が国を含む東アジア地域全体の発展を確保するため、韓国、タイ、フィリピン、マレーシアとの協定交渉を推し進めてまいります。

国際社会が発展していくためには、開発途上国の貧困削減と持続的成長を支援することが重要です。我が国は、アジアはもちろん、TICAD3の成功を受け、アフリカに対する開発援助を引き続き実施していきます。また、我が国は、東ティモールやスリランカ等における平和の定着と国づくりを支援してきています。さらに、国際社会は、エイズやSARS等の感染症、複雑化する国際組織犯罪など、多様化する脅威にも直面しています。このような脅威に対処するため、国家による保護と人間一人一人の能力強化を内容とする人間の安全保障の理念の実現が重要です。こうした現実を踏まえ、我が国は、昨年8月に政府開発援助、ODA大綱を見直し、人間の安全保障の視点を基本方針の一つとし、平和の構築を重点分野に掲げたところです。

深刻化する地球温暖化問題には一刻の猶予も許されません。我が国は、京都議定書の早期発効を目指し、ロシア等の未締結国に対し、今後とも早期締結を働き掛けていきます。また、明年開催される愛・地球博についても、自然と共生する新たな産業社会の在り方を提示する試みとして、入念に準備を進め、その広報にも努めてまいります。

豊かな世界を実現するためには、多様な文化の存在と交流が不可欠です。我が国は、途上国の文化遺産の保護や文化の振興、文明間の対話を進めていきます。また、我が国の価値観や魅力を海外へ発信し、海外の頭脳や才能を日本に招き入れることは、相互理解の促進のみならず、我が国社会の活性化に役立つものです。こうした取組にも一層力を入れていく考えです。

(主要国・地域との関係強化)

我が国の平和と繁栄を確保するうえで、日米安保体制を中核とする日米同盟関係はなくてはならないものです。本年は日米和親条約署名150周年に当たりますが、今後とも我が国外交の基軸である日米関係を一層強化し、世界の中の日米同盟という考え方に基づき、日米両国が協力して国際社会の諸課題に対処していきます。在日米軍に係る諸問題については、沖縄県民の方々が背負っておられる御負担を軽減するため、普天間飛行場の移設、返還を含め、沖縄に関する特別行動委員会最終報告の着実な実施に努めるなど、引き続き最大限努力してまいります。

韓国は、我が国と基本的な価値観を共有し、政治上、経済上、極めて重要な隣国です。既に開始された羽田―金浦間航空便の運航や日韓FTA交渉等、昨年6月の日韓首脳共同声明に盛り込まれた施策の実施を通じて、引き続き両国関係を一層高いレベルへと発展させていく考えです。

日中関係は最も重要な二国間関係の一つであり、今後とも、両国国民間の相互理解、相互信頼を深めていきます。また、北朝鮮問題をはじめ、地域の問題について緊密に協議し、協力を促進していきます。さらに、環境問題を含む地球規模の問題においても、引き続き協力関係を深めてまいります。

先の日・ASEAN特別首脳会議では、共に歩み共に進むパートナーシップを強化していくことで一致し、今後の日・ASEAN関係の指針となる東京宣言及び行動計画が採択されました。我が国は、これらに基づき、ASEANとの具体的な協力を一層進め、日・ASEAN関係を中核とする東アジア・コミュニティーの創設にも貢献していく考えです。また、最近、インドとパキスタンの歴史的な首脳会談が行われ、対話開始が合意されるなど、平和と安定に向けた動きが見られる南西アジアとの関係も強化してまいります。

欧州については、存在感が増しつつあるEUとの間で、幅広い分野で一層緊密な協力関係を構築してまいります。ロシアとの間では、本年前半にも私自身が訪ロして、イワノフ外相と平和条約締結問題についてじっくり話し合う考えですが、今後も日ロ行動計画の実現を通じて日ロ関係を全体として発展させていく中で、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結すべく、粘り強い交渉を続けてまいります。

(結語)

以上、我が国の外交の基本方針について述べてまいりました。国際社会においては、各国が力を合わせて、次々と発生する新たな課題に取り組んでいます。我が国としても、国際社会の主要な一員として、こうした取組に主体的に参加する必要があります。我が国の安全と繁栄は、平和で安定した世界の中にあるからです。そのためには、これまで以上の外交努力が必要です。

こうした問題意識のもと、外務省は、改革の一環として、本年夏に機構改革を行い、総合外交政策局の政策調整機能を強化する一方、国際情報局を国際情報統括官組織に改編、拡充して情報収集・分析能力の向上を図るなど、外交実施体制を一層強化していきます。また、海外における日本人の安全確保に十全を期するため、領事移住部を領事局に改編します。さらに、政府として国民への説明責任を果たし、その理解と支持を得るよう努めてまいります。引き続き、国民の皆様と議員各位の御支援と御協力を心よりお願い申し上げます。

(3) 谷垣財務大臣の財政演説

平成16年度予算及び平成15年度補正予算の御審議に当たり、今後の財政政策等の基本的な考え方について所信を申し述べますとともに、予算の大要を御説明いたします。

(はじめに)

日本経済の現状を見ますと、長期的な低迷の中でも、多くの国民の英知と努力によって培われてきた活力が、政府、民間の改革への取組によってようやく発揮されはじめ、経済に明るい兆しが見られます。この景気回復の動きを民間需要主導の持続的な経済成長に繋げていくためには、経済の活性化、子や孫の世代に負担を先送りしない持続可能な財政の構築、国民の安心、安全の確保を目指した諸般の取組、これらを総合的に進めていくことが重要であると考えております。また、デフレ克服に向け、引き続き政府は日本銀行と一体となって取り組んでまいります。

今後の財政政策等の運営に当たっては、以下に申し述べる諸課題に着実かつ的確に取り組み、構造改革の努力の成果を上げてまいる所存であります。

(財政構造改革)

第1の課題は、財政構造改革であります。

我が国の財政状況は、平成16年度末の公債残高が483兆円程度に達する見込みであるなど、世界の先進国の中でも最悪の水準となっております。このため、政府としては、中長期的な財政運営に当たり、2010年代初頭の基礎的財政収支黒字化を目指すとの目標達成に向け努力しているところであります。

こうした中、平成16年度予算編成につきましては、引き続き歳出改革路線を堅持し、一般会計歳出及び一般歳出について、実質的に前年度の水準以下に抑制しました。

一方、予算の内容については、経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003等を踏まえ、例えば科学技術や治安対策など、活力ある社会経済の実現や国民の安心の確保に資する分野に重点的に配分したほか、各分野においても真に必要な施策への絞り込みを行い、めり張りのある予算の配分を実現いたしました。

また、国と地方の改革、年金改革などの重要課題に着実に取り組むとともに、予算編成過程について、モデル事業や政策群といった手法の導入、予算執行調査の拡充を行ったほか、特別会計については、すべての特別会計を対象として幅広い見地から検討を行い、事務事業の見直し等を進めております。

こうした歳出改革へ向けた努力を通じ、国債発行額を極力抑制したところであり、その結果、公債依存度は、前年度と同水準の44.6%となっております。

このように、来年度予算については、私としては、基礎的財政収支の黒字化に向けて一つの手がかりとなるものと考えておりますが、財政が危機的状況にあることに変わりはありません。今後とも、手綱を緩めることなく、財政構造改革に向けた不断の努力を重ねてまいりたいと考えております。

なお、こうした財政構造改革の推進により国債に対する信認を確保しつつ、中長期的な調達コストの抑制、確実かつ円滑な国債の消化を図るため、市場のニーズや動向等を十分に踏まえ、国債管理政策を適切に運営してまいります。

(税制改革)

第2の課題は、税制改革であります。

平成16年度においても、持続的な経済社会の活性化に向け、広範な改革を実現した平成15年度改正の結果として、国、地方合わせて実質1兆5,000億円の減税となります。

平成16年度改正においては、引き続き、経済活性化に向けた動きをより確かなものとするための改正を行うこととしております。

具体的には、景気動向と住宅政策の両面に配意し、住宅ローン減税を見直したうえで延長するほか、個人資産の活用を促進するため、土地譲渡益課税の税率を引き下げるとともに、公募株式投資信託の譲渡益課税を上場株式並みに軽減することとしております。また、創造的な企業活動と事業の再構築を支援するため、エンゼル税制の拡充をはじめとする中小企業関連税制及び法人税制の見直しを行うほか、国際的な投資交流を促進するため、日米租税条約の全面改正と関連国内法令の見直しを行うこととしております。このほか、世代間、高齢者間の公平を確保し、年金制度改革にも対応する観点から、年金税制の見直しを行うこととしております。

今後とも、持続可能な社会保障制度の確立、地方分権の推進といった諸課題に対応し、公正で活力ある経済社会を実現するため、先般の与党税制改正大綱を踏まえ、改革の明確な道筋を示しつつ、税制の抜本的改革を進めてまいります。

(世界経済の安定と発展への貢献)

第3の課題は、世界経済の安定と発展への貢献であります。

我が国は、国際機関やG7、アジア諸国等と協力しつつ、国際金融システムの強化や開発途上国の経済社会の発展等の課題に取り組んでまいります。また、アジアにおける通貨・金融の安定化に向けて、アジア債券市場育成イニシアチブ等の取組を通じて一層の貢献を行ってまいります。

為替相場につきましては、経済の基礎的条件を反映して安定的に推移することが重要であり、今後とも、為替相場の動向を注視し、必要に応じて適切に対処してまいる所存であります。

WTO新ラウンド交渉に引き続き積極的に取り組むとともに、メキシコ、韓国、ASEAN等との自由貿易協定を含む経済連携を積極的に推進してまいります。

平成16年度関税改正においては、知的財産権侵害物品に係る認定手続の充実、税関における水際取締りの強化等を行うこととしております。

(平成16年度予算の大要)

次に、今国会に提出しております平成16年度予算の大要について御説明いたします。

歳出面については、一般歳出の規模は47兆6,320億円、一般会計全体の予算規模は82兆1,109億円となっております。

また、国家公務員の定員については、治安など真に必要な部門には適切に定員を措置しつつ、行政機関職員全体としては、553人の定員の縮減を図っております。

歳入面については、租税等は、平成16年度税制改正を織り込み41兆7,470億円を見込んでおります。また、その他収入は3兆7,739億円を見込んでおります。

これらの結果、公債発行予定額は36兆5,900億円となっております。なお、特例公債の発行については、別途、所要の法律案を提出し、御審議をお願いすることとしております。

財政投融資計画については、財投改革の趣旨を踏まえ、中小企業対策などセーフティネットの構築等、真に必要な資金需要には的確に対応しつつ、対象事業の一層の重点化を図ることといたしました。この結果、平成16年度財政投融資計画の規模は、20兆4,894億円となっております。

次に、主要な経費について申し述べます。

社会保障関係費については、年金につき、長期的な給付と負担の均衡を図り、社会経済と調和した持続可能な制度への改革に取り組むとともに、診療報酬、薬価等の改定等を行うこととしております。

公共投資関係費については、その水準を全体として抑制しつつ、活力ある社会経済の実現に向けて、国と地方の役割分担等の観点も踏まえ、重点化を行っております。

文教及び科学振興費については、義務教育費国庫負担制度の見直しをはじめ、確かな学力、豊かな心の育成等の教育改革の推進、競争的な環境のもとでの個性あふれる大学づくりに努めるとともに、科学技術振興費については、優先順位づけも踏まえた重点化を行いつつ拡充したところであります。

防衛関係費については、思い切った削減を行う中で、テロや弾道ミサイル等の新たな脅威に対応するための配分の重点化を図りつつ、効率的で節度ある防衛力整備を行うこととしております。

農林水産関係予算については、食の安全、安心の確保や環境保全に配慮しつつ、施策の対象を意欲と能力のある経営体へ重点化し、米政策の改革をはじめとする農業の構造改革の着実な推進等を図っております。

経済協力費については、新ODA大綱のもと、我が国の国益を重視しつつ、全体として規模を縮減する中で、援助対象のさらなる戦略化、重点化を図っております。

エネルギー対策費については、エネルギーの安定供給確保と地球環境問題への対応等を着実に進めております。

中小企業対策費については、創業・経営革新の推進や人材育成、中小企業に対する円滑な資金供給を確保するための基盤強化等を図っております。

また、補助金、地方交付税、税源移譲を含む税源配分の在り方に関する、いわゆる三位一体の改革については、その成果を平成16年度予算に反映させたところであります。

まず、地方向け補助金等については、基本方針2003や総理指示を踏まえ、1兆円の廃止・縮減等の改革を行っております。また、地方交付税については、地方財政の効率化を促し、地方の自立を促進する観点から、地方歳出の徹底した見直しを行い、地方の財政運営に配慮しつつ総額を抑制しております。さらに、廃止する国庫補助負担金の対象事業の中で、引き続き地方が主体となって実施する必要があるものについては、暫定措置として国の所得税収の一部を地方へ譲与することにより税源移譲を行うほか、義務教育費国庫負担金の退職手当等に係る一般財源化分につき、特例的な交付金により暫定的に財源措置を講じております。

地方公共団体におかれましても、歳出全般にわたる一層の見直し、合理化、効率化に積極的に取り組まれるよう要請するものであります。

(平成15年度補正予算(第1号、特第1号及び機第1号)の大要)

次に、平成15年度補正予算について申し述べます。

平成15年度補正予算については、歳出面において、義務的経費を中心としたやむを得ざる追加財政需要への対応として、義務的経費の追加、災害対策費及びイラク復興支援経済協力費等を計上する一方、既定経費の節減等を行うこととしております。

他方、歳入面においては、その他収入の減収を見込むとともに、前年度の決算上の剰余金を計上することとしております。また、国債の増発は行わないこととしております。なお、決算上の剰余金については、財政法第6条に基づく国債整理基金への繰入れを行わないこととしております。

以上によりまして、平成15年度補正後予算の総額は、当初予算に対し歳入歳出とも1,505億円増加し、81兆9,396億円となります。

また、特別会計予算及び政府関係機関予算についても所要の補正を行うこととしております。

(むすび)

以上、平成16年度予算及び平成15年度補正予算の大要について御説明いたしました。

今の日本経済を例えますと、至るところに新たな胎動が見られるものの、過去の成功体験という厚い殻をなかなか破れずに、いわば、ひなが卵の殻を中からコツコツ一生懸命たたいている状態にあるのではないかと思います。民間の経済が内側から必死に殻をたたいている今こそ、政府は外側からその殻をたたき、新たな胎動を大きなうねりにつなげていくことが必要なのではないでしょうか。平成16年度予算は、そのための重要な一歩であると考えております。

何とぞ、関係法律案とともに御審議のうえ、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。

(4) 竹中経済財政政策担当大臣の経済演説

(はじめに)

経済財政政策担当大臣として、その所信を申し述べます。

(改革路線の加速・拡大)

小泉内閣の発足以来、その経済財政運営に対して常に二つの批判が寄せられてきました。一つは、小泉内閣は緊縮財政政策をとっており、それが景気に悪影響を与えている、もっと拡大的な財政政策をとるべきだというものでした。いま一つは、財政赤字の水準はもはや受容できない限界に達しており、もっと速いテンポで財政赤字を縮小させるべきだというものでした。こうした相反する批判がなされること自体、我が国の経済財政運営がいかに困難なものであるかを象徴的に示すものと言えましょう。

このような中で、小泉内閣は、明確な指針のもとに経済財政を運営してまいりました。徹底した構造改革によって経済を活性化し、需要面にも十分に目配りしつつ、歳出の拡大を食いとめることによって、中長期的な観点から財政の健全化を目指すというものです。これは極めて困難な狭い道ですが、それ以外に方策のないことは明白であります。そして、近時の経済の動きは、厳しい環境の中にあって、我が国がこうした狭い道を着実に歩んでいることを明確に示すものとなりました。

日本経済は、財政出動に安易に頼ることなく、民需を中心に着実に回復しています。実質GDPは6四半期連続して増加し、平成15年度の実質経済成長率は当初政府見通しの0.6%程度を上回って2.0%程度に、名目成長率も3年ぶりのプラスが見込まれます。また、16年度についても、引き続き緩やかな回復過程をたどり、実質で1.8%程度、名目でも0.5%程度の成長を見込んでおります。

一方で、財政健全化に向けて着実な動きが始まりました。内閣府の試算によれば、財政健全化を図るうえで最も注目される基礎的財政収支、すなわち過去の借入れに対する元利払いの影響を除いた財政収支は、国と地方を合わせて16年度にGDP比概ね0.8%程度の改善が見込まれるところであります。このような堅実な収支改善ペースを続けていけば、2010年代初頭の基礎的財政収支の黒字化が可能となります。まさに、政府の構造改革と民間の努力によって景気と財政健全化が両立するという新しい姿があらわれ始めたのであります。まだまだ困難な道ですが、小泉内閣は断固とした決意で改革路線を堅持し、これを加速、拡大してまいります。

以下、構造改革の進捗、さらなる改革の課題、そして今後の経済財政の展望について順次申し述べます。

(構造改革の芽)

今、構造改革の芽は着実に出始めております。経済に関するこうした改革の芽は、主として三つの分野にあらわれ始めました。

第1は、金融システムの強化であります。

15年9月末の主要行の不良債権残高は、その1年半前に比べ35%減少しました。16年度に不良債権問題の正常化を図るとの目標の実現に向け、着実に進捗しています。また、昨年は、預金保険法第102条に基づき、金融危機を未然に防ぐための的確な対応が行われました。さらに、金融機能の強化のための新たな公的資金制度の整備を図るなど、金融システムの一層の強化に取り組んでまいります。

第2は、企業部門の再構築です。

企業の過剰債務削減の取組や企業再編の活発化等を受け、企業収益は改善を続けており、設備投資も5四半期連続で増加しています。また、企業収益の改善が適切に株価に反映されるという状況が生まれつつあります。こうした中で、日本経済の国際的評価も高まっております。世界経済フォーラムによる世界の競争力比較ランキングでは、我が国の競争力は、13年に21位まで低下した後、15年には11位に回復しております。

第3は、財政の健全化、効率化に向けた動きです。16年度予算においては、先に述べたとおり、基礎的財政収支の黒字化に向けて重要な一歩を進めました。また、予算手法の改革に取り組むこととし、政策目標の設定や複数年度にわたる執行、厳格な事後評価を行うモデル事業を試行的に導入するとともに、構造改革と予算の連携を強化するため、政策群の手法を活用いたしました。こうした取組により、予算の効率性の向上と、歳出の質のさらなる改善を図ってまいります。

(立ち向かうべき更なる課題)

これに対し、今後立ち向かうべきさらなる課題があることについても、小泉内閣は明確に位置づけをしております。

その第1は、デフレ克服に向けた政府・日銀一体となった取組の強化です。

デフレ克服のため、構造改革による経済活性化を進める中で、強固な金融システムの構築と、金融政策の波及メカニズムの強化等を通じ、資金供給が拡大していくことが重要であります。政府・日銀は、デフレ克服という政策目標を共有し、一層の協力を図ってまいります。

第2は、民間にできることは民間に、地方にできることは地方にの徹底です。このため、企業や地域といった現場の知恵を信頼して任せ、これを最大限活用する分権改革を徹底的に推し進めることにより、出始めた改革の芽を地域と中小企業に浸透させ、雇用環境の一層の改善を図ってまいります。

こうした観点から、デフレの克服と民需主導の経済成長の実現に向けて、経済を活性化するための改革工程表を取りまとめてまいります。

第3は、国民の安心と生活の安定を支える社会保障制度の確立であります。このためには、次世代育成の支援を進めるとともに、少子高齢化が最も進んだ場合でも、家計、企業、財政が負担に耐えられる水準に社会保障負担を抑制することが重要であり、この方針のもと、持続可能な社会保障制度の確立に取り組んでまいります。

(「この国のかたち」を問う改革へ)

今年、経済財政諮問会議では、経済の面でこの国の形を問い、さらに大きな制度改革に取り組みます。その基本にあるのは、市場メカニズムを重視しながら、小さくて効率的な政府を実現し、公的な部門が取り込んできた分野を大胆に民間開放することです。

このため、第1に、規制改革や官業の民間開放等を抜本的に推進すべく、総合規制改革会議の後継機関との連携を図りつつ、取組を強化いたします。そして、官業改革の本丸である郵政民営化については、平成19年に実現するという小泉総理の方針を踏まえ、経済財政諮問会議の場で幅広い国民的議論を行います。既に公表した五つの原則、すなわち、活性化原則、整合性原則、利便性原則、資源活用原則、配慮原則にのっとり、本年春ごろに中間報告を、本年秋ごろに民営化の基本方針を取りまとめます。

第2に、地域の自立と再生に向け、抜本的に取組を強化します。三位一体の改革を推進し、地方の権限と責任を大幅に拡大します。16年度においては、国庫補助負担金の1兆円の廃止・縮減等、税源移譲の具体化、交付税総額の抑制を図りました。この実績を踏まえ、さらに改革工程を加速、強化し、改革の全体像をお示しできるよう、政府一丸となって取り組んでまいります。また、地域再生推進のためのプログラムにより、行政サービスの民間委託の推進、建設業をはじめとする地域の基幹産業における事業転換等の経営革新、観光や食料産業等の地域特性を生かした産業、事業の創出に向け、地域が主体となった取組を進めます。

第3に、社会保障制度については、年金、医療、介護、生活保護等を個別に議論するのではなく、社会保障サービスを利用する国民の立場に立って、また、持続可能な制度を確立し、国民の安心を確保しながら社会保障給付費の伸びを抑制するという観点を踏まえ、総合的かつ一体的に改革することが必要です。ことしは年金制度改革関連法案が提出されることとなっておりますが、今後とも、経済財政諮問会議で、医療、介護等の改革に向けた議論を行い、持続可能な社会保障制度の確立を目指します。

その他、アジアを中心に諸外国との経済面での連携を進めることが必要であり、WTO等の多国間交渉やFTAを含む経済連携の積極的な推進と対日直接投資の拡大に努力してまいります。また、近年、企業の不祥事が企業内部からの通報により明らかになる事例が相次いでいることを踏まえ、公益のために通報した従業者が解雇等の不利益な取扱いを受けないようにする法案を今国会に提出いたします。

(むすび)

日本経済の中期的なシナリオは、既に「構造改革と経済財政の中期展望 2003年度改定」においてお示しいたしました。構造改革路線を堅持し、これを加速、拡大することによって、18年度以降は概ね名目2%程度あるいはそれ以上の成長経路をたどると見込まれます。また、財政の構造改革を忍耐強く続けることによって、2010年代初頭には基礎的財政収支を黒字化させ、持続可能な財政の姿を取り戻します。

日本経済は、極めて高い潜在力を有しております。にもかかわらず、バブル経済が崩壊した1990年代以降、不本意な低迷を続けてきました。しかし、今、不良債権が目に見えて減少し、企業部門の強化が進むなど、自律的で持続的な成長軌道に本格復帰する重要なチャンスを迎えております。

もちろん、世界経済と日本経済を取り巻くリスク要因は依然として存在しており、これらに対する十分な目配りが必要です。しかし、こうしたリスク要因に打ちかっていくための方策は、さらなる構造改革を進めること以外にはありません。

構造改革の着実な進展のもとで、私は今、日本経済再生の確かな手ごたえを感じております。集中調整期間が終わる来年度末には、主要行の不良債権問題を終結させ、財政の基礎的収支の改善も進めること等を通じ、日本経済再生のための基礎固めを終えます。そのためにも、平成16年をさらなる飛躍に向けた極めて重要な年と位置づけ、断固たる決意で構造改革に取り組んでまいります。

国民の皆様、議員各位の御理解と御協力をお願いし、所信の表明といたします。

(5) 国務大臣の演説に対する質疑要旨

1月19日の国務大臣の演説に対する質疑は、21日に菅直人君(民主)、額賀福志郎君(自民)及び松本剛明君(民主)が行い、22日には武正公一君(民主)、神崎武法君(公明)、志位和夫君(共産)及び横光克彦君(社民)が行った。

質疑の主なものは、次のとおりである。

第1に、外交政策について、「[1]メキシコ及びASEAN諸国との自由貿易協定(FTA)、[2]FTAと我が国の農業、[3]国連改革に対する我が国の対応、[4]靖国参拝問題、[5]日米関係」等の質疑に対して、「[1]メキシコとの交渉は、最終段階に入っている。タイ、マレーシア、フィリピンとのFTAは、昨年末の日本ASEAN特別首脳会議において、各国の首脳と議論し交渉開始を決定した、[2]農業については、食料輸入大国である我が国は、国境措置に過度に依存することなく、農産物の輸出も視野に置いた積極的な農政改革を展開し、競争力を強化していくことが重要である、[3]国連改革への機運が高まっている現状をとらえ、改革の実現につなげていくために、2005年に国連改革に関する首脳会議を開催することを提唱した。今後国連の場での議論や関係国との協議を精力的に重ね、国連改革の早期実現に向けて積極的に取り組んでいく、[4]靖国神社参拝については、引き続き、中国、韓国に対しても理解を求めるよう努力をしていきたいと思っている。中国と韓国は日本の重要な隣国であって、今後とも、幅広い分野において、両国との関係の発展、未来志向の協力関係の進展に努めていく、[5]日米関係は、日本外交の要である。お互い協力しながら、世界の中での日米同盟とはどうあるべきか、お互いの立場を尊重しながらやっていくことが必要である」旨の答弁があった。

第2に、自衛隊のイラク派遣について、「[1]自衛隊派遣の意義、[2]自衛隊派遣の違憲性、[3]自衛隊のイラク国内での法的地位と憲法との関係、[4]派遣及び終了の時期、[5]自衛隊による活動をそれぞれ、国会で承認する必要性、[6]大量破壊兵器の不存在」等の質疑に対して、「[1]イラクに安定した民主的な政権を作ることは日本にとっても、世界全体にとっても極めて重要であり、テロに屈して手をこまねいていてはイラクがテロの温床になってしまい、そうなれば、これは日本の脅威のみならず世界にとって脅威である、[2]現地において自衛隊員等に危険が迫った場合、やむを得ず武器を使用したとしても、正当に自分の身を守る行為が憲法違反に当たる武力行使とは思っていない、国際紛争を解決する手段としての国家意思の武力行使とは違う、[3]連合暫定施政当局命令及びブレマー長官の書簡は、イラクに派遣される自衛隊が、我が国の排他的管轄権に服し、イラクにおいて裁判権免除等の特権免除を享受することを確認したものであって、武力紛争当事者に適用される戦時法規の適用を受ける軍隊であるとは述べていない。憲法との関係では問題はない、[4]陸上自衛隊の本隊の具体的な派遣時期については、安全確保に十分留意して、先遣隊が収集した現地状況に関する情報などを踏まえて、適切に判断したい。イラク特措法の目的が達成され、自衛隊が現地で活動する必要がなくなった場合のほか、活動する場所で戦闘行為が行われるようになるなど、非戦闘地域の要件を満たさない状況が生じた場合には、自衛隊は任務を終了することになる、[5]イラク特措法によれば、国会承認の対象は、基本計画に定められた対応措置の実施についてであり、具体的には、人道復興支援活動または安全確保支援活動を自衛隊の部隊等が実施すること、及び、いかなる国において実施するかという点である。一つの基本計画に定められている対応措置の実施に関して、既にその全体について実施命令が出されていることから、一つの国会承認を求めることは適当であると考える、[6]イラクはかつて実際に大量破壊兵器を使用しており、その後も大量破壊兵器の廃棄は立証されていない。現在、イラク監視グループが引き続きイラクの大量破壊兵器を捜索しており、我が国としてもこれを注視していく」旨の答弁があった。

第3に、憲法改正について、「憲法草案作成に当たっての基本的考え方」等の質疑について、「憲法改正については、党としても、来年の秋までには自民党案をまとめて、国民的な議論を喚起しながら、時代にふさわしい日本の新憲法を制定できるように、自民党、また野党の協力もできれば得ながら、与党の協議も十分進め、国民的な議論を喚起しながら、よりよい憲法を制定できるように努力をしていく」旨の答弁があった。

第4に、拉致、北朝鮮問題について、「[1]拉致問題解決への取組、[2]北朝鮮に対する圧力、[3]6者会合への取組と見通し、[4]中国との関係、[5]核開発問題」等の質疑に対して、「[1]小泉内閣全体の最重要課題のひとつである。北朝鮮に対しては、日本国民の総意として、誠意ある対応を求め、早期に政府間協議に応じるよう働き掛けており、一刻も早い解決のため、あらゆる機会を通じて最善を尽くしていく。拉致問題に進展が見られない現下の状況においては、次回の6者会合においても拉致問題を取り上げる、[2]北朝鮮問題解決のため、対話と圧力の両面から働き掛けていくべきであり、いろいろな選択肢を持つことは有意義である。今後、北朝鮮が事態を悪化させた場合には、状況をよく見きわめ、適切な措置を講ずる考えである、[3]関係国とも連携しつつ、北朝鮮の核やミサイル問題等の安全保障上の問題を平和的、外交手段によって包括的に解決すべく、積極的に役割を果たしていく。次回の会合は現在確定していないが、前提条件を付さずに可能な限り早期に開催すべきとの立場であり、関係国と緊密に連携しながら外交努力を継続していく、[4]北朝鮮問題に関する諸問題の解決に向けた国際社会の理解と協力を得るために、中国に対しても積極的に協力を働き掛け、また、中国側からも積極的な理解と協力を得ている。今後とも、中国を含む関係各国と協力しながら、次回6者会合の開催に向けて努力し、問題の解決に取り組んでいく、[5]北朝鮮による核兵器の開発は容認できず、北朝鮮はすべての核開発計画を完全に検証可能かつ不可逆的な形で速やかに廃棄すべきである。今後とも関係国や関係国際機関と緊密に連携しながら、さまざまな場において、北朝鮮に対して国際社会の一員としての責任ある対応を求めていく」旨の答弁があった。

第5に、政治改革について、「[1]国会議員の歳費及び国会議員互助年金、[2]政治資金の透明化、[3]あっせん利得処罰法の適用対象の拡大、[4]衆議院小選挙区選出議員の選挙における一票の格差是正、衆議院比例代表選出議員の定数削減、[5]議院内閣制における政権交代の必要性、[6]国民の政治への信頼回復」等の質疑に対して、「[1]起訴拘留中の国会議員の歳費凍結、国会議員の歳費カットの継続の必要性及び国会議員互助年金の見直しなど国会議員の待遇については、議会政治の根幹にかかわる問題であり、国会議員みずからが不断に検討していくべきであって、各党各会派間で十分に議論がなされるべきである、[2]政治資金の透明性を確保しながら、広く、薄く、公正に政治資金を確保できるルールをつくり、これに従って、献金規制や、政治資金の公開基準、方法について、各党各会派間で十分に議論を深めていくべきである、[3]政治倫理の確立や政治活動の在り方にかかわるものであり、さらなる法改正が必要かどうか、各党で議論を深めていくべきである、[4]議会政治の根幹にかかわるものであり、今後、国会の各党各会派間で十分に議論がなされるべきである、[5]政権交代は、現行制度において、選挙における有権者の判断によって行われている。現行制度の見直しが必要かどうかは、各党各会派間において十分に議論がなされるべきであり、さらに、国民に対して不断に働き掛け、政治への参加を求めていく努力が大事である、[6]政治に対する国民の信頼は改革の原点であり、さらに政治改革を進めて、信頼の政治の確立を目指していく」旨の答弁があった。

第6に、年金制度改革について、「[1]年金制度改革に対する内閣総理大臣の見解、[2]政府・与党が合意した給付額50%の維持の可能性、[3]今回の制度改革が年金受給者に及ぼす影響、[4]年金資金の使途、[5]年金積立金運用の透明性、信頼性の確保、[6]公的年金制度への国民の信頼回復に向けた取組の必要性」等の質疑に対して、「[1]急速な少子高齢化が進行する中で、給付と負担の長期的な均衡を図ることは不可欠である。これを先送りすることはできない。少なくとも現役世代の平均的収入の50%の給付水準を維持しつつ、保険料を極力抑制する一方、年金課税の適正化により基礎年金の国庫負担割合の2分の1への引上げに道筋をつける改革案を取りまとめた。関連法案を今国会に提出し、持続可能な、安心のできる制度の構築に向けた改革を進めていく、[2]この維持をできるように、これからも努力を続けていく、[3]物価や賃金水準が低下しない限り現在受給している年金額を下回らないこととし、高齢者の生活に配慮した調整を行っていく、[4]グリーンピア及び住宅融資については、その経緯や事業の内容についてきちんと整理し、平成17年度末までに廃止することを決定している、[5]年金積立金は長期的な観点から安全かつ効率的に運用するものであり、一時点をとらえて評価することは適当でないと考えている、[6]高齢者の就業と年金を巡る問題や女性と年金を巡る問題など、多様な生き方、働き方に対応した制度の見直し、年金積立金の運用の在り方、保険料の収納対策の強化等諸課題への対応策を取りまとめていく」旨の答弁があった。

第7に、財政、税制改革について、「[1]平成16年度予算における重点、[2]財政再建の方策、[3]与党税制大綱についての見解」等の質疑に対して、「[1]これまでの歳出改革路線を堅持し、一般歳出を実質的に前年度の水準以下に抑制した一方、予算の内容については、活力ある社会経済の実現や国民の安心の確保につながる分野には重点的な配分を行った、[2]持続可能な財政構造の構築に向けて、歳出改革を推進するとともに、民需主導の持続的成長を実現するための構造改革を加速することにより、2010年代初頭の基礎的財政収支の黒字化を目指していく、[3]国民の将来不安を払拭し、公正で活力ある経済社会を実現するため、与党大綱を踏まえ、社会保障制度の見直しや三位一体の改革とあわせ、経済社会の動向を勘案しながら、中長期的視点に立って、税制の抜本的改革に取り組んでいく」旨の答弁があった。

第8に、構造改革について、「[1]構造改革の推進に向けた決意、[2]道路公団民営化の基本的な考え、[3]郵政民営化に向けた取組、[4]金融システム改革の在り方」等の質疑に対して、「[1]規制改革を通じたサービスの向上、科学技術を活用した環境と経済の両立、観光立国の推進、文化芸術の振興など、国民生活の質の豊かさを多くの国民が実感できる社会の実現に向けた取組を総合的に進める、[2]道路関係4公団民営化推進委員会の意見を基本的に尊重し、債務を確実に返済するとともに、真に必要な道路について、会社の自主性を尊重しつつ、できるだけ少ない国民負担のもとでつくるとの方針のもと、抜本的見直し区間の設定、有料道路の事業費の半減、民営化後45年以内の債務返済、通行料金の引下げ、日本道路公団を分割・民営化して民営化会社の自主性が生かされる仕組みとすることなどを内容とする民営化の基本的枠組みを取りまとめた、[3]郵政民営化是か非かの議論は決着がついており、平成16年秋ごろまでに国民にとってよりよいサービスが可能となる民営化案を取りまとめ、平成19年には郵政民営化を実現する、[4]構造改革を支えるより強固な金融システムを構築するため、中小企業へのセーフティネットに万全を期しつつ、不良債権問題に強力に取り組んできた。地域や中小企業に必要な資金を行き渡らせるため、金融システムの改革に取り組んでいくことが政府の責務と考える」旨の答弁があった。

第9に、経済(地域経済、中小企業)、雇用対策について、「[1]経済の状況判断、[2]地域経済の活性化の必要性、[3]中小企業金融の強化の必要性、[4]530万人雇用創出プログラムの実効性、[5]平成15年度予算の民主党組替え案(100万人の雇用創出)についての見解、[6]若年者の雇用拡大の方策、[7]高齢者の雇用確保策、[8]いわゆるみらい創造プロジェクトの取組状況」等の質疑に対して、「[1]国主導の財政出動に頼らなくても、民需主導で着実に景気は回復してきている。物価にも下げ止まりの兆しが見られ、デフレ克服に向けた着実な進展が見込まれる。今後とも日銀と一体となってデフレ克服を目指しながら、金融、税制、規制、歳出の構造改革を進め、民間と地方のやる気を引き出し、民間需要主導の力強い持続的な経済成長を図っていく、[2]昨年末から募集が行われた地域再生構想の提案を実現するために、地域の実情に合わせた制度改革、あるいは施策の連携、集中を進めて、地域の再生を支援していく、[3]担保や第三者保証人等に依存しない融資の拡大、売掛債権の担保化の促進など、多様な手法により、中小企業への資金供給の円滑化を支援する、[4]全体として雇用が増加している状況ではないが、就業構造は変化し、この3年間で、サービス分野においては約200万人の雇用が創出されたと見込まれている、 [5]公共事業の削減により財源を捻出し雇用増を実現するという提案であるが、公共事業削減による雇用へのマイナスの影響をどの程度勘案しているか不明であり、雇用創出効果が出てくるかどうか、必ずしも明らかではない、[6]昨年6月に策定した若者自立・再生プランを推進し、当面、3年間で若年失業者等の増加傾向を転換させることを目標として、若年者の雇用の拡大に努める、[7]定年年齢の65歳までの引上げ、継続雇用制度の導入等について、法改正を行う。シルバー人材センターについても、労働者派遣等もできるように機能を拡大したい、[8]平成16年度には、産学官の協力のもと、90を超えるプロジェクトを進め、新たな産業の創出を通じて科学技術創造立国を実現していく」旨の答弁があった。

第10に、三位一体の改革について、「[1]本当の意味の分権改革ではないとの批判に対する見解、[2]合計の補助金額の増減、[3]削減する補助金項目の選定理由、[4]税源移譲の規模」等の質疑に対して、「[1]改革の第一歩として、全国知事会、市長会など、地方公共団体からも評価をいただいており、地方にできることは地方にとの原則のもと、来年度以降も改革を加速していく、[2]補助金総額は、医療、介護、福祉等の社会保障制度の補助金の大幅な増加等により、対前年度で若干増加する、[3]地方にできることは地方にとの原則のもと、数次にわたる閣僚間折衝や政府・与党間での協議など、関係者の十分な議論、検討を経たうえで決定した、[4]税源移譲について、基本方針2003において、廃止する補助金の対象事業の中で引き続き地方が主体となって実施する必要があるものについては、個別事業の見直し、精査を行い、所要額については基幹税の充実を基本として税源移譲することとしており、その規模については、補助金改革の状況に応じて検討する」旨の答弁があった。

第11に、治安対策について、「[1]治安強化の取組、[2]空き交番の解消策の推進、[3]民間警備員の拡充」等の質疑に対して、「[1]昨年末に犯罪対策閣僚会議が策定した行動計画に基づいて、まず、政府としては、犯罪の生じにくい社会環境の整備、水際対策をはじめとする各種犯罪対策、治安関係機関の体制強化など、総合的な対策を講じる。国内外におけるテロ関連情報の収集及び警戒警備を強化するとともに、関係機関による実践的訓練を積み重ねることにより、緊急事態に的確に対処できる体制の整備にも努める、[2]空き交番の解消を目指し、3,000名を超える警察官を増員するほか、退職警察官などを活用した交番相談員の増員を図る、[3]緊急地域雇用創出特別交付金の活用などにより、警備業者による防犯パトロール事業を推進していきたい。交通警察の一部民間委託については、今国会において、駐車違反取締りに関係する事務について民間に委託できるように制度改正を行う。今後とも、民間への委託や地方自治体との協力を推進する」旨の答弁があった。

第12に、国民保護法制について、「法案化に当たっての基本的人権の担保方法」の質疑に対して、「国民保護法制の中では、物資の収用や土地の使用などの処分に当たってあらかじめ任意の要請を行うことや、公用令書の発行、適切な損失補償の実施などの具体的な仕組みの中でこうした配慮を規定したい」旨の答弁があった。

その他、司法制度改革、教育問題等について、質疑が行われた。

2 主な議案等の審議

年月日 議案等
平成16年
1月19日
○国務大臣の演説
  • 小泉内閣総理大臣の施政方針演説
  • 川口外務大臣の外交演説
  • 谷垣財務大臣の財政演説
  • 竹中経済財政政策担当大臣の経済演説
1月21日 ○国務大臣の演説に対する質疑

質疑

菅直人君(民主)、額賀福志郎君(自民)、松本剛明君(民主)

答弁

小泉内閣総理大臣
1月22日 ○国務大臣の演説に対する質疑

質疑

武正公一君(民主)、神崎武法君(公明)、志位和夫君(共産)、横光克彦君(社民)

答弁

小泉内閣総理大臣、亀井農林水産大臣、坂口厚生労働大臣、河村文部科学大臣
1月27日 ○趣旨説明
  • イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法第6条第1項の規定に基づき、自衛隊の部隊等による人道復興支援活動及び安全確保支援活動の各活動の実施に関し承認を求めるの件
説明

石破防衛庁長官

質疑

原口一博君(民主)、赤嶺政賢君(共産)

答弁

小泉内閣総理大臣
1月31日 ○平成15年度一般会計補正予算(第1号)〈可決〉

○平成15年度特別会計補正予算(特第1号)〈可決〉

○平成15年度政府関係機関補正予算(機第1号)〈可決〉

討論(以上3件)

北村直人君(自民)

○イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法第6条第1項の規定に基づき、自衛隊の部隊等による人道復興支援活動及び安全確保支援活動の各活動の実施に関し承認を求めるの件〈承認〉

討論

河合正智君(公明)
2月17日 ○趣旨説明
  • 平成16年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案(内閣提出)
  • 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
説明

谷垣財務大臣

質疑

江渡聡徳君(自民)、長妻昭君(民主)

答弁

谷垣財務大臣、坂口厚生労働大臣、竹中国務大臣、福田内閣官房長官
2月19日 ○発言・趣旨説明
  • 平成16年度地方財政計画
  • 地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
  • 所得譲与税法案(内閣提出)
  • 地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
発言・説明

麻生総務大臣

質疑

松崎公昭君(民主)、松野頼久君(民主)、桝屋敬悟君(公明)

答弁

福田内閣官房長官、谷垣財務大臣、麻生総務大臣、坂口厚生労働大臣、河村文部科学大臣
2月27日 ○趣旨説明
  • 義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
説明

河村文部科学大臣

質疑

中野正志君(自民)、高井美穂君(民主)

答弁

河村文部科学大臣、麻生総務大臣、竹中国務大臣
3月5日 ○平成16年度一般会計予算〈可決〉

○平成16年度特別会計予算〈可決〉

○平成16年度政府関係機関予算〈可決〉

討論(以上3件)

鉢呂吉雄君(民主)、園田博之君(自民)、吉井英勝君(共産)、谷口隆義君(公明)、照屋寛徳君(社民)

○地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)〈可決〉

○所得譲与税法案(内閣提出)〈可決〉

○地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)〈可決〉

討論(以上3件)

若泉征三君(民主)

○平成16年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案(内閣提出)〈可決〉

○所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)〈可決〉

討論(以上2件)

鈴木克昌君(民主)
3月11日 ○趣旨説明
  • 金融機能の強化のための特別措置に関する法律案(内閣提出)
  • 預金保険法の一部を改正する法律案(内閣提出)
  • 金融機能の再生のための緊急措置に関する法律等の一部を改正する等の法律案(五十嵐文彦君外2名提出)
  • 金融再生委員会設置法案(五十嵐文彦君外2名提出)
説明

竹中国務大臣、五十嵐文彦君(民主)

質疑

永田寿康君(民主)、上田勇君(公明)

答弁

小泉内閣総理大臣、竹中国務大臣、中塚一宏君(民主)、津村啓介君(民主)
3月12日 ○趣旨説明
  • 中小企業金融公庫法及び独立行政法人中小企業基盤整備機構法の一部を改正する法律案(内閣提出)
  • 中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
説明

中川経済産業大臣

質疑

河井克行君(自民)、吉田治君(民主)

答弁

中川経済産業大臣、竹中国務大臣、谷垣財務大臣

3月16日 ○趣旨説明
  • 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案(内閣提出)
説明

野沢法務大臣

質疑

桜井郁三君(自民)、小林千代美君(民主)

答弁

野沢法務大臣、河村文部科学大臣
3月18日 ○趣旨説明
  • 総合法律支援法案(内閣提出)
説明

野沢法務大臣

質疑

泉房穂君(民主)、漆原良夫君(公明)

答弁

野沢法務大臣、谷垣財務大臣、坂口厚生労働大臣
3月23日 ○趣旨説明
  • 地方自治法の一部を改正する法律案(内閣提出)
  • 市町村の合併の特例に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
  • 市町村の合併の特例等に関する法律案(内閣提出)
説明

麻生総務大臣

質疑

保坂武君(自民)、田嶋要君(民主)、西村智奈美君(民主) 答弁

麻生総務大臣、竹中国務大臣、福田内閣官房長官
3月30日 ○趣旨説明
  • 高速道路株式会社法案(内閣提出)
  • 独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法案(内閣提出)
  • 日本道路公団等の民営化に伴う道路関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)
  • 日本道路公団等民営化関係法施行法案(内閣提出)
説明

石原国土交通大臣

質疑

永岡洋治君(自民)、岩國哲人君(民主)、松野信夫君(民主)

答弁

小泉内閣総理大臣、石原国土交通大臣
4月1日 ○趣旨説明
  • 国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
  • 年金積立金管理運用独立行政法人法案(内閣提出)
  • 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
説明

坂口厚生労働大臣

質疑

能勢和子君(自民)、枝野幸男君(民主)、古川元久君(民主)、大口善徳君(公明)、山口富男君(共産)、阿部知子君(社民)

答弁

小泉内閣総理大臣、坂口厚生労働大臣、谷垣財務大臣
4月2日 ○趣旨説明
  • 行政事件訴訟法の一部を改正する法律案(内閣提出)
説明

野沢法務大臣

質疑

北川知克君(自民)

答弁

野沢法務大臣
4月8日 ○趣旨説明
  • 農業協同組合法及び農業信用保証保険法の一部を改正する法律案(内閣提出)
  • 家畜伝染病予防法の一部を改正する法律案(内閣提出)
  • 高病原性鳥インフルエンザ対策緊急措置法案(菅直人君外6名提出)
説明

亀井農林水産大臣、篠原孝君(民主)

質疑

奥野信亮君(自民)、楠田大蔵君(民主)、梶原康弘君(民主)

答弁

亀井農林水産大臣、竹中国務大臣、坂口厚生労働大臣、山田正彦君(民主)、平岡秀夫君(民主)
4月9日 ○趣旨説明
  • 高齢期等において国民が安心して暮らすことのできる社会を実現するための公的年金制度の抜本的改革を推進する法律案(古川元久君外5名提出)
説明

古川元久君(民主)

質疑

大野功統君(自民)、山口富男君(共産)

答弁

古川元久君(民主)、五十嵐文彦君(民主)、山井和則君(民主)
4月13日 ○趣旨説明
  • 武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案(内閣提出)
  • 武力攻撃事態等におけるアメリカ合衆国の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律案(内閣提出)
  • 武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律案(内閣提出)
  • 国際人道法の重大な違反行為の処罰に関する法律案(内閣提出)
  • 武力攻撃事態における外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律案(内閣提出)
  • 武力攻撃事態における捕虜等の取扱いに関する法律案(内閣提出)
  • 自衛隊法の一部を改正する法律案(内閣提出)
  • 日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定の締結について承認を求めるの件
  • 1949年8月12日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書I)の締結について承認を求めるの件
  • 1949年8月12日のジュネーヴ諸条約の非国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書II)の締結について承認を求めるの件
説明

井上国務大臣、石破防衛庁長官、川口外務大臣

質疑

首藤信彦君(民主)、長島昭久君(民主)、遠藤乙彦君(公明)、赤嶺政賢君(共産)

答弁

井上国務大臣、麻生総務大臣、川口外務大臣、野沢法務大臣、石破防衛庁長官
4月16日 ○趣旨説明
  • 構造改革特別区域法の一部を改正する法律案(内閣提出)
説明

金子国務大臣

質疑

谷公一君(自民)

答弁

川口外務大臣、金子国務大臣

○趣旨説明
  • 特許審査の迅速化等のための特許法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
説明

中川経済産業大臣

質疑

西銘恒三郎君(自民)

答弁

中川経済産業大臣
4月20日 ○イラクにおける邦人人質事件等についての発言

発言

川口外務大臣

質疑

藤田幸久君(民主)、高橋千鶴子君(共産)

答弁

川口外務大臣、福田内閣官房長官

○趣旨説明
  • 景観法案(内閣提出)
  • 景観法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)
  • 都市緑地保全法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
説明

石原国土交通大臣

質疑

原田令嗣君(自民)、若井康彦君(民主)

答弁

石原国土交通大臣、亀井農林水産大臣
4月22日 ○趣旨説明
  • 信託業法案(内閣提出)
説明

竹中国務大臣

質疑

田中英夫君(自民)、小泉俊明君(民主)

答弁

竹中国務大臣、谷垣財務大臣、中川経済産業大臣
4月23日 ○金融機能の再生のための緊急措置に関する法律等の一部を改正する等の法律案(五十嵐文彦君外2名提出)〈否決〉

○金融再生委員会設置法案(五十嵐文彦君外2名提出)〈否決〉

○金融機能の強化のための特別措置に関する法律案(内閣提出)〈可決〉

○預金保険法の一部を改正する法律案(内閣提出)〈可決〉

討論(以上4件)

島聡君(民主)

○趣旨説明
  • 地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
説明

河村文部科学大臣

質疑

西村明宏君(自民)、城井崇君(民主)

答弁

河村文部科学大臣
4月27日 ○構造改革特別区域法の一部を改正する法律案(内閣提出)〈可決〉

討論

市村浩一郎君(民主)

○高速道路事業改革基本法案(岩國哲人君外4名提出)〈否決〉

○高速道路株式会社法案(内閣提出)〈可決〉

○独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法案(内閣提出)〈可決〉

○日本道路公団等の民営化に伴う道路関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)〈可決〉

○日本道路公団等民営化関係法施行法案(内閣提出)〈可決〉

討論(以上5件)

長安豊君(民主)

○趣旨説明
  • 公益通報者保護法案(内閣提出)
説明

竹中国務大臣

質疑

宮下一郎君(自民)、泉健太君(民主)

答弁

竹中国務大臣
5月11日 ○国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出)〈修正〉

  • 上記法律案に対する修正案(長勢甚遠君外4名提出)〈可決〉
趣旨弁明(修正案)

長勢甚遠君(自民)

○年金積立金管理運用独立行政法人法案(内閣提出)〈可決〉

○高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)〈可決〉

討論(以上4件)

内山晃君(民主)、福島豊君(公明)、石井郁子君(共産)、阿部知子君(社民)
5月20日 ○武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案(内閣提出)〈修正〉

○武力攻撃事態等におけるアメリカ合衆国の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律案(内閣提出)〈可決〉

○武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律案(内閣提出)〈修正〉

○国際人道法の重大な違反行為の処罰に関する法律案(内閣提出)〈可決〉

○武力攻撃事態における外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律案(内閣提出)〈可決〉

○武力攻撃事態における捕虜等の取扱いに関する法律案(内閣提出)〈可決〉

○自衛隊法の一部を改正する法律案(内閣提出)〈可決〉

○日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定の締結について承認を求めるの件〈承認〉

○1949年8月12日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書I)の締結について承認を求めるの件〈承認〉

○1949年8月12日のジュネーヴ諸条約の非国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書II)の締結について承認を求めるの件〈承認〉

討論(以上10件)

塩川鉄也君(共産)、石崎岳君(自民)、細野豪志君(民主)
5月25日 ○公益通報者保護法案(内閣提出)〈可決〉

討論

島田久君(民主)

○北朝鮮訪問に関する報告

報告

小泉内閣総理大臣

質疑

渡辺博道君(自民)、鳩山由紀夫君(民主)、漆原良夫君(公明)、穀田恵二君(共産)、横光克彦君(社民)

答弁

小泉内閣総理大臣
6月4日 ○厚生労働委員長衛藤晟一君解任決議案(城島正光君外3名提出)〈否決〉

趣旨弁明

城島正光君(民主)

討論

宮澤洋一君(自民)、山井和則君(民主)、塩川鉄也君(共産)
6月15日 ○小泉内閣不信任決議案(岡田克也君外6名提出)〈否決〉

趣旨弁明

岡田克也君(民主)

討論

赤城徳彦君(自民)、仙谷由人君(民主)、西博義君(公明)、佐々木憲昭君(共産)、照屋寛徳君(社民)
6月16日 ○請願357件〈採択〉

3 決議

○否決したもの

厚生労働委員長衛藤晟一君解任決議案(城島正光君外3名提出、決議第1号)[民主・共産・社民提出](16.6.4)

本院は、厚生労働委員長衛藤晟一君を解任する。

右決議する。

小泉内閣不信任決議案(岡田克也君外6名提出、決議第2号)[民主・共産・社民提出](16.6.15)

本院は、小泉内閣を信任せず。

右決議する。

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