衆議院

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14 予算委員会

【第159回国会】

(1)委員名簿(50人)

委員長笹川   堯君自民
理事大野 功統君自民理事北村 直人君自民
理事園田 博之君自民理事玉沢徳一郎君自民
理事松岡 利勝君自民理事玄葉光一郎君民主
理事筒井 信隆君民主理事平岡 秀夫君民主
理事谷口 隆義君公明  伊吹 文明君自民
植竹 繁雄君自民尾身 幸次君自民
大島 理森君自民倉田 雅年君自民
小泉 龍司君自民小杉  隆君自民
滝   実君自民中馬 弘毅君自民
津島 雄二君自民中山 成彬君自民
丹羽 雄哉君自民西川 京子君自民
萩野 浩基君自民蓮実  進君自民
福田 康夫君自民二田 孝治君自民
増田 敏男君自民町村 信孝君自民
井上 和雄君民主池田 元久君民主
石井  一君民主石田 勝之君民主
生方 幸夫君民主海江田万里君民主
河村たかし君民主吉良 州司君民主
小泉 俊明君民主鮫島 宗明君民主
首藤 信彦君民主達増 拓也君民主
中津川博郷君民主永田 寿康君民主
野田 佳彦君民主鉢呂 吉雄君民主
石田 祝稔君公明遠藤 乙彦君公明
高木 陽介君公明佐々木憲昭君共産
照屋 寛徳君社民

(2)予算審議の概況

[1] 平成15年度一般会計補正予算(第1号)

平成15年度特別会計補正予算(特第1号)

平成15年度政府関係機関補正予算(機第1号)

○補正予算の概要

本補正予算は、歳出面において、義務的経費の追加をはじめ、災害対策費、イラク復興支援経済協力費等特に緊要となった事項等について措置を講ずる一方、歳入面において、前年度剰余金の受入れ等を行うこととして編成されたものであり、平成16年1月19日、国会に提出され、同日、予算委員会に付託された。

一般会計予算においては、歳出について、義務的経費の追加、災害対策費、イラク復興支援経済協力費、中小企業総合事業団信用保険部門出資金等を計上する一方、既定経費の節減、予備費の減額を行い、歳入については、前年度剰余金受入れを計上する一方、その他収入の減収を見込んでいる。

この結果、補正後の平成15年度一般会計予算の総額は、当初予算に対し、歳入歳出とも、1,505億円増加して、81兆9,396億円となっている。

特別会計予算においては、一般会計予算補正等に関連して、食糧管理特別会計、自動車損害賠償保障事業特別会計など20特別会計について、所要の補正を行っている。

政府関係機関予算においては、中小企業金融公庫について、所要の補正を行っている。

なお、一般会計及び特別会計において、所要の国庫債務負担行為の追加を行っている。

○審議経過

衆議院予算委員会においては、平成16年1月23日、谷垣財務大臣から提案理由の説明を聴取し、同月26日には基本的質疑を行い、翌27日には午前中に一般的質疑、午後に締めくくり質疑を行って質疑終局の予定となっていた。しかし、27日午後の質疑において、イラクに派遣されていた陸上自衛隊先遣隊の報告中「サマーワ市評議会は住民の意向を反映した構成のため、実質的に機能している」旨の記述について、評議会はメンバーが総辞職してしまって現在機能しておらず、事実と違うとして、石破防衛庁長官及び同日の衆議院本会議で同趣旨の答弁をした小泉内閣総理大臣に答弁の撤回・修正が求められた。これに対し石破防衛庁長官は「現地の治安情勢について、過去の情報の蓄積、各国からの情報の蓄積、先遣隊の見てきた知見、そういうものを総合的に判断したものであり、この治安の情報判断が虚偽、誤りだとは思っていない」との趣旨の答弁を、また、小泉内閣総理大臣も「今、評議会のメンバーが辞任したからといって、治安が不安定だということには必ずしもつながらないのではないかと思っている」との趣旨の答弁を行ったことから、野党側が反発し審議は中断した。

翌28日、委員会の冒頭で小泉内閣総理大臣と石破防衛庁長官から、サマーワ市評議会が現在存在しているとの発言を撤回する旨の発言があった後、締めくくり質疑が再開され、途中、石破防衛庁長官がサマーワ評議会の総辞職についての情報を知った時点と昨日の答弁との関係を巡り審議が一時中断する場面があったものの、同日、質疑は終局した。

主な質疑事項は、イラクへの自衛隊派遣・経済協力・国連の関与などイラク復興支援に関する諸問題、北朝鮮問題、我が国の為替政策の在り方、破綻金融機関の処理、中小企業対策、道路公団民営化問題、牛海綿状脳症(BSE)・鳥インフルエンザなど食品の安全性に関する問題等であった。

討論、採決については、理事会において、衆議院国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラク人道復興支援活動等に関する特別委員会(以下、「イラク復興支援特別委員会」という。)での「イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法第6条第1項の規定に基づき、自衛隊の部隊等による人道復興支援活動及び安全確保支援活動の各活動の実施に関し承認を求めるの件」(以下、「承認案件」という。)の採決後に行うことが合意されていた。しかし、1月30日のイラク復興支援特別委員会での質疑中に、与党側が質疑を終了して採決することを求める動議を提出、動議は可決され、承認案件は賛成多数により可決されたことから野党側は猛反発し、採決は無効であるとしてその後の本会議や委員会での審議を拒否した。河野衆議院議長が与野党の国対委員長を呼んで事態打開を図ったが調整がつかず、このため、同日夜の予算委員会で野党欠席のまま採決を行い、本補正予算は可決された。同日深夜、野党欠席のまま衆議院本会議が開会され、河野議長が延会を宣告、翌31日未明の本会議において、本補正予算は賛成多数で可決され、参議院に送付された。なお、同日、承認案件も賛成多数で承認された。

週明けの2月2日は与党の単独採決に反発した野党が審議を拒否したため、国会は空転したが、翌3日の与野党国会対策委員長会談において、斉藤衆議院イラク復興支援特別委員長の陳謝、同特別委員会の今後週1回開催、衆議院予算委員会での補充質疑の実施及び平成16年度総予算の基本的質疑の3日間開催(通常は2日間)などが合意され、国会は正常化した。

参議院予算委員会においては、1月23日、谷垣財務大臣から趣旨説明を聴取し、2月3日から5日まで質疑を行い、同月5日に質疑を終局し、同月9日に討論、採決の結果、賛成多数で可決、同日に開かれた本会議においても、討論、採決の結果、賛成多数で可決され、本補正予算は成立した。

[2] 平成16年度一般会計予算

平成16年度特別会計予算

平成16年度政府関係機関予算

○予算の概要

我が国経済は、民需中心の緩やかな回復過程を辿り、デフレ傾向は継続するおそれがあるものの、デフレ圧力は徐々に低下していくと見込まれる。一方、我が国財政は、平成15年度末の公債残高が約459兆円に達する見込みであり、急速な人口の高齢化等に伴う諸経費の増大や公債の累増に伴う国債費の増大等により歳入歳出構造はますます硬直化してきている。

このような状況下、平成16年度予算は、引き続き歳出改革路線を堅持し、一般会計歳出及び一般歳出について、実質的に平成15年度の水準以下に抑制するとともに、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」等を踏まえ、例えば科学技術や治安対策など活力ある社会・経済の実現や国民の安心の確保に資する分野に重点的に配分を行う等の基本的考え方に立って編成され、平成16年1月19日、国会に提出され、同日、予算委員会に付託された。

一般会計予算の規模は、82兆1,109億円で、平成15年度当初予算額に対して、3,218億円(0.4%)の増加となっている。

歳出については、国債費及び地方交付税交付金等の経費を除いた、いわゆる一般歳出の規模は47兆6,320億円であり、平成15年度当初予算額に対して、398億円(0.1%)の増加となっている。

歳出の主な内容は、次のとおりである。

ア 社会保障関係費については、年金について、長期的な給付と負担の均衡を図り、社会経済と調和した持続可能な制度への改革に取り組むとともに、診療報酬、薬価等の改定等を行うこととし、平成15年度当初予算額に対して、4.2%増の19兆7,970億円を計上している。

イ 公共投資関係費については、公共投資の水準を抑制する一方、投資効果の高い事業への一層の重点化を図ることとし、一般会計において、平成15年度当初予算額に対して、3.3%減の8兆6,149億円を計上している。このほか、産業投資特別会計社会資本整備勘定において、「日本電信電話株式会社の株式の売払収入の活用による社会資本の整備の促進に関する特別措置法」(昭和62年法律第86号)に基づき貸付けを受けて実施される公共的建設事業として718億円を計上しており、これを加えた公共投資関係費は8兆6,867億円となっている。

ウ 文教及び科学振興費については、義務教育費国庫負担制度の改革を進めるなど既存施策の見直しを行う一方、教育改革を推進するとともに、大学改革の推進、科学技術予算の戦略的重点化を積極的に図ることとし、平成15年度当初予算額に対して、5.2%減の6兆1,330億円を計上している。

エ 防衛関係費については、効率的で節度のある防衛力整備を行うため、テロや弾道ミサイル等の新たな脅威への対処能力の強化、各種災害への対応、情報機能の強化等の重要施策を推進するとともに、自衛隊の任務遂行や維持運営のため所要の経費を計上しており、平成15年度当初予算額に対して、1.0%減の4兆9,030億円を計上している。

オ 経済協力費については、新ODA大綱のもと、我が国の国益を重視しつつ、全体として規模を縮減する中で、援助対象の更なる戦略化・重点化を図ることとし、平成15年度当初予算額に対して、5.8%減の7,686億円を計上している。

カ 中小企業対策費については、創業・経営革新の推進や人材育成、中小企業に対する円滑な資金供給を確保するための基盤強化等を図ることとし、平成15年度当初予算額に対して、0.5%増の1,738億円を計上している。

キ 国債費については、一般会計の負担に属する国債及び借入金の償還、国債及び借入金の利子等の支払いに必要な経費と、これらの事務取扱に必要な経費を国債整理基金特別会計へ繰り入れるものとして、平成15年度当初予算額に対して、4.6%増の17兆5,686億円を計上している。

ク 地方財政については、国と歩調を合わせつつ、地方歳出の徹底した見直しを行い、地方財政の効率的な運営に向けた措置を講ずるとともに、所要の地方交付税総額を確保することとし、一般会計の地方交付税交付金等として、平成15年度当初予算額に対して、5.2%減の16兆4,935億円を計上している。

なお、交付税及び譲与税配付金特別会計から平成16年度に地方団体に交付する地方交付税交付金及び地方特例交付金の総額は、平成15年度当初予算額に対して、5.7%減の17兆9,910億円となっている。

歳入については、租税及印紙収入は、住宅・土地税制、中小企業関連税制、法人税制、年金税制等の改正、所得譲与税の創設などの税制改正を織り込むと、平成15年度当初予算額に対して、0.1%減の41兆7,470億円となっている。その他収入については、平成15年度当初予算額に対して、6.1%増の3兆7,739億円が見込まれており、その主なものは、外国為替資金特別会計受入金、日本銀行納付金及び国有財産売払収入等である。

公債発行額については、平成15年度当初予算額に対して、0.4%増の36兆5,900億円を予定しており、公債依存度は44.6%となっている。

特別会計予算及び政府関係機関予算についても、資金の重点的、効率的な配分に努め、事業の適切な運営を図ることとしている。特別会計の歳出総額は387兆4,097億円であり、このうち、会計間取引額などの重複額等を控除した歳出純計額は207兆3,511億円となっている。特別会計の数は、国立学校特別会計が廃止されることにより31となる。政府関係機関の数は9で前年度と同様である。

財政投融資計画については、財投改革の趣旨を踏まえ、中小企業対策などセーフティネットの構築等、真に必要な資金需要には的確に対応しつつ、対象事業の一層の重点化を図ることとしている。その規模は、平成15年度計画に対して、12.5%減の20兆4,894億円となっている。

○審議経過

平成16年1月19日、衆参両院の本会議において小泉内閣総理大臣の施政方針演説、谷垣財務大臣の財政演説等政府4演説が行われ、これに対する各党の代表質問は、同月21日から3日間、衆参両院の本会議で行われた。

衆議院予算委員会においては、同月23日、谷垣財務大臣から平成16年度予算の提案理由の説明を聴取した。

平成15年度補正予算などの与党単独採決後の国会空転を打開するための、2月3日の与野党国会対策委員長会談の合意を受け、同月9日、国政調査(予算の実施状況に関する件)のための委員会が開催され、イラクへの自衛隊派遣問題などについて質疑が行われた。

翌10日から平成16年度予算の質疑に入り、同日、12日及び13日の3日間、基本的質疑を行った。

2月10日の委員会においては、イラク復興支援のための自衛隊派遣、憲法解釈の在り方、地方分権及び三位一体改革、年金改革、地域経済の現状及び格差解消策、中小企業対策、児童虐待防止対策、道路公団民営化問題、地球温暖化対策、内閣官房報償費問題等について、質疑が行われた。

同月12日の委員会では、平成16年度予算の評価、2010年代初頭までのプライマリーバランス黒字化の達成見通し、特別会計の見直し、国民負担増が個人消費に与える影響、年金改革、年金積立金の運用実態、道路公団民営化問題、郵政民営化問題、公務員の天下り問題、小泉内閣の外交姿勢、在日米軍問題、治安・防犯対策、北海道警報償費不正使用疑惑等について、質疑が行われた。

同月13日の委員会では、為替介入政策の妥当性、税源移譲等三位一体改革の在り方、新生銀行問題、年金改革、農業構造改革、児童虐待防止対策、国連待機部隊の必要性、総選挙における選挙違反問題、靖国神社問題等について、質疑が行われた。

2月16日から24日午前中までは一般的質疑が行われた。

質疑においては、同月10日に年金改革関連法案が国会に提出されたことから、年金問題が予算委員会における焦点の一つとなった。また、同月25日から第2回「北朝鮮問題に関する6者会合」が開催されることから、北朝鮮問題についても多くの質疑があった。これらのほか、特別会計の見直し、財政投融資の在り方、今後の景気見通し、三位一体改革、新生銀行の株式再上場問題、足利銀行問題、中小企業対策、道路公団民営化問題、若年者雇用対策、日中関係、テロ・治安対策、イラク問題、在日米軍基地問題、児童虐待問題、裁判員制度、鳥インフルエンザ及び牛海綿状脳症(BSE)問題、日本歯科医師連盟の政治献金問題、政治倫理問題等について、質疑が行われた。

これらの質疑において、疑惑解明などのために参考人招致が要求され、今後の日程と関連してその取扱いが問題となった。

同月16日の委員会では、日本歯科医師連盟が政治資金規正法違反容疑で摘発された問題についての質疑の中で、臼田貞夫日本歯科医師連盟会長、吉田幸弘前衆議院議員等の参考人招致の要求があり、翌17日の委員会でも、日本歯科医師連盟から自民党への政治献金に関して、臼田会長や神谷健一国民政治協会会長等の参考人招致要求があった。

新生銀行の株式再上場問題についても、上場に係る審査に関して東京証券取引所の責任者の参考人招致要求があり、同月18日の委員会に吉野貞雄・東京証券取引所代表取締役専務を参考人として招致し、質疑を行った。

また、北海道警察による報償費流用疑惑やUFJ銀行の検査忌避疑惑などに関しても、参考人招致要求があった。

この間、理事会においては、公聴会の日程について協議が行われ、与党側は、2月18日の理事会で、同月25日及び26日の両日の公聴会開会を申し入れたが、野党側は、集中審議と参考人招致を決めてから公聴会の日程を決めるべきであるとして公聴会の日程決定に反対した。翌19日の理事会において、与党側が2月26日及び27日の公聴会開会を求めたのに対し、野党は同意しなかったため、同19日の委員会において、多数決により2月26日及び27日の公聴会開会を決定した。

なお、公聴会の日程が決まってからも、同月20日の委員会において、国民年金基金連合会による年金資産運用問題についての質疑の中で、国民年金基金連合会理事長の参考人招致が要求された。

同月24日の午後には、小泉内閣総理大臣も出席して経済・金融問題等についての質疑が行われた。主な質疑事項は、デフレ問題、財政構造の透明化、新生銀行問題、金融機能強化特別措置法案及び公的資金問題等であった。

2月25日には、年金及び構造改革問題等についての集中審議が行われ、社会保障制度の役割及び負担構造の在り方、社会保障制度における公的年金制度の役割、持続可能な年金制度改革の必要性、年金改革に関する厚生労働省試算、年金資金運用基金の損失、社会福祉施設整備費の国庫補助金問題、三位一体改革による地方財政への影響、道路公団民営化問題等について、質疑が行われた。また、同日の理事会において、3月3日午後に年金問題と新生銀行問題に関連する参考人を招致して質疑を行うことが合意された。なお、日本歯科医師連盟の政治献金問題や北海道警報償費不正使用疑惑、道路公団民営化などに関連する参考人については引き続き協議することとされた。

2月26日及び27日、公聴会を開会した。

3月1日及び2日、分科会を開会した。

3月3日は、午前中に北朝鮮問題に関する集中審議を行い、午後には森昭治元金融再生委員会事務局長、吉原健二厚生年金事業振興団理事長、丸田和生厚生年金事業振興団常務理事及び近藤純五郎年金資金運用基金理事長を参考人として招致し、一般的質疑を行った。

北朝鮮問題に関する集中審議においては、6者会合の成果及び今後の見通し、拉致問題解決への取組、対北朝鮮経済制裁、小泉内閣総理大臣の再訪朝の意思等について、質疑が行われた。

一般的質疑においては、年金資金を年金福祉施設等に使用するに至った経緯、年金資金から支出された事務費等の累計額及び内容、年金資金運用失敗の責任、年金積立金の第三者機関による評価の必要性、旧日本長期信用銀行譲渡問題等について、質疑が行われた。

同日の理事会において、与党側から翌4日の締めくくり質疑と採決を申し入れたのに対し、野党側は、日本歯科医師連盟の政治献金問題、道路公団民営化、年金改革、北海道警報償費不正使用疑惑など、参考人招致も含め不十分であり、鳥インフルエンザなど食の安全問題が現在国民の最大の関心事項であるとして、これを拒んだ。その後の与野党筆頭理事間の協議でも意見は一致せず、笹川予算委員長の裁定を受けて、3月4日に食の安全についての質疑、翌5日に締めくくり質疑の後、討論、採決を行うことが決まった。

3月4日は、午前中に一般的質疑を行い、午後には食の安全についての質疑を行った。一般的質疑においては、イラク復興支援、年金保険料の人件費等への充当、日本歯科医師連盟の政治献金問題等について、午後の食の安全についての質疑においては、鳥インフルエンザの感染ルート、養鶏農家への損失補償、ワクチン接種の是非等について、質疑が行われた。

3月5日には、締めくくり質疑が行われ、世代間の年金受給不均衡、年金改革における出生率及び経済見通しの妥当性、国民負担の在り方、三位一体改革、北朝鮮による日本人拉致問題、自衛隊のイラク派遣等について質疑があり、平成16年度予算の質疑は終局した。

平成16年度予算審査における質疑・答弁の主なものは次のとおりである。

第1に、財政経済政策について、「平成16年度予算をどのように評価し、この予算で日本はどういう社会を目指していくのか」との趣旨の質疑があり、これに対し、小泉内閣総理大臣から、「国債の依存率も4割を超え、税収もかなり厳しい状況にある。高齢化により社会保障関係予算が最大の支出項目という状況は当分変わらないが、国民の負担を考えると増税というわけにもいかず、今年度も、税制改革により1兆5,000億円程度の減税が先行している。この財政状況はすぐに改善というわけにはいかないが、2010年代初頭には基礎的な財政収支をプラスに持っていきたい。そのために、一般歳出は前年度以下に抑制していく中で、歳出にめり張りをつけるため社会保障関係予算と科学技術振興費と中小企業予算だけは増やした。極めて厳しい中にも現在の経済情勢というものを考えながら、考えに考えた予算である。こういう厳しい状況は当分続くと思うが、それだけに、金融改革、税制改革、規制改革、歳出改革を進めていかなければならない事態だと思う。同時に、ゼロ金利、なおかつ金融緩和など、今までにない金融緩和策を打っており、財政政策、金融政策は目いっぱい積極的に打っている。そういう中で、財政出動なくして、企業にやる気が出てきており、この意欲を支援するような形で何とか明るい方向に持っていきたい」旨の答弁があった。

また、三位一体改革についての質疑に対し、小泉内閣総理大臣から、「3年間で約4兆円の補助金を地方にできるだけ裁量権を与える形で渡す、同時に、交付税、税源、この3つを一体的にとらえて、地方にできることは地方にという趣旨が生かされるように改革をしようというのが三位一体改革である。平成16年度においては、まず1兆円の補助金、それに見合う税源として、当面、所得譲与税というものを設けた。今後あと2年、残りの3兆円程度をどういう形で具体的に項目を決めて地方に移譲するか。税源も、譲与税ではなくて、どういう形で税源というものを地方のかなりの裁量権を発揮できるような形で設けるか。また、交付税は、本来の財政調整機能というものは果たしていないのではないか。地方として自由度を発揮することを考えると、ある程度の財政調整機能が必要であるが、そういう点も含めて、これから各地方の意見を伺いながら改革を進めていきたい」旨の答弁があり、谷垣財務大臣からは、「補助金が廃止されて、必要なものだけやはり地方にやっていただく。それは税源移譲の検討対象になるが、もともと必要でないもの、あるいは廃止すべきものは地方に税源を譲る必要もない」、「税源移譲は、基幹税による、所得税を地方住民税に振りかえていくという姿を基本に、これから検討を進めていかなければならないと思っている」旨の答弁があった。

第2に、年金改革について、小泉内閣総理大臣の考え方を問われたのに対し、小泉内閣総理大臣から、「今までのように、給付は厚く、保険料負担は低く、では年金はもたない。年金を持続可能な制度にするためには、ある程度給付は抑えるが、大体平均年収の50%程度以下にはしてはいけない。同時に、保険料の負担も上げねばならないが、上限は18.3%にする。このように負担の上限と給付の上限を設定して、この中で、一挙に3分の1の基礎年金の税負担を2分の1に引き上げるのは急にはできないから、時間をかけてやるというもので、これは大きな改革である」旨の答弁があった。

また、「抜本改革とは何か、今までの改革とどう違うのか」との趣旨の質疑に対し、坂口厚生労働大臣から、「負担と給付の問題がどういう制度をつくるにしても一番基本であり、一方において積立金の使用もその中に入れ国庫負担の2分の1負担を明確にした上で、ただ5年ごとの計算だけではなくて、もう少し長期展望の中で計算をした。17年間、徐々に負担は上げていく、そして給付の方は下げていく、そのことを明確にしたということが今回の特徴である」旨の答弁があった。

年金改革に関連して、年金運用の失敗やむだ遣いについての質疑があり、坂口厚生労働大臣から、「大規模な年金保養地、いわゆるグリーンピア、被保険者用の住宅融資、年金の福祉施設の整備費、被保険者サービスのための年金相談やシステム経費など年金給付費以外に支出した福祉施設事業の合計額は全体で約5.6兆円である。これらは被保険者用のいわゆる福祉の向上を目的とした福祉還元という形でスタートしたものだが、運用や天下り等、多くの問題が指摘されており、そうした問題については積極的に取り組んで改正していかなければならない。こうした年金福祉施設は、廃止すべきものは廃止し、譲渡すべきものは譲渡して、国民から理解されるように整理していきたい」旨の答弁があった。

第3に、イラク問題について、イラクへ自衛隊を派遣する大義を問われたのに対し、小泉内閣総理大臣から、「現在の国際情勢を考えると、日本一国で平和と発展はあり得ず、世界の平和と安定の中に日本の発展と繁栄がある。今、できるだけ早く安定した民主的政権をイラクに構築していくことは、イラク人が最も必要としていることであり、同時に、中東全体にも大きくいい影響を与えるし、世界の安定のためにも必要である。日本としても、国力にふさわしいできるだけの支援をしたい。そういう中での人的支援を考えると、今、必ずしも安全と言えない状況で民間人、民間企業では十分な復興支援活動はできないが、不測の事態、危険を回避する装備も能力も持っている自衛隊に、各国とは違う立場で復興支援活動、人道支援活動ができるのではないかということで、自衛隊に今回行ってもらうことにした。自衛隊の活動により、将来、国際社会の中で日本が信頼を高め、日本に対する評価も高める。その恩恵を受けるのは日本国民である」旨の答弁があった。

第4に、北朝鮮問題について、第2回6者会合の結果についての評価を問われたのに対し、小泉内閣総理大臣から、「今回の成果については、一定の前進が見られたが、期待していたような成果は見られなかったという点については、残念な面もある。しかしながら、これから次の会合に向けての作業を進めて、6月末までに再び6者会合が行われて、総合的な解決を目指そうということを、6者間で共通の認識を持てたことで、これからも粘り強く、北朝鮮側との正常化を目指して日本としても努力をしていきたい。そういう面において、6者協議の枠組みというのは重要なものだと日本政府も認識している」旨の答弁があった。

第5に、道路公団民営化について、「民営化することがなぜコスト削減になるのか」との趣旨の質疑に対し、小泉内閣総理大臣から、「民営化の会社になれば、将来、債務の返済ができない、採算性が合わない、会社の利益が上がらないということならむだな道路はつくらない。そして、民間の会社がこの高速道路はできないといった場合に、地域の住民あるいは地方公共団体、国が、この道路はどうしても必要だというのであれば、どの程度の税金負担だったらできるかということを考える。そうした場合には、民営化の会社は、できない部分については、お互い地域の住民がどのような負担で必要な道路ができるかということを考えればいい」旨の答弁があった。

3月5日の締めくくり質疑終局後、共産党から提出された「平成16年度一般会計予算、平成16年度特別会計予算及び平成16年度政府関係機関予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議」について趣旨の説明を聴取し、討論、採決の結果、動議は否決され、平成16年度予算3案はいずれも原案のとおり可決された。

同日の本会議において、討論の後、記名投票による採決の結果、賛成278、反対192で平成16年度予算3案は可決され、参議院に送付された。

参議院の予算委員会は、1月23日に谷垣財務大臣から平成16年度予算3案の趣旨説明を聴取し、3月9日から質疑に入り、基本的質疑、一般質疑、集中審議、公聴会、委嘱審査、締めくくり質疑を行い、3月26日に質疑を終局した後、討論、採決の結果、平成16年度予算3案は賛成多数で可決した。同日の本会議においても、討論の後、記名投票による採決の結果、賛成134、反対101で平成16年度予算3案は可決、成立した。

《議案審査一覧》

予算

件名 提出日 衆院
趣旨
説明
衆院
委員会
付託日
衆院
提案
理由
衆院
委員会
質疑
衆院
委員会
議決日

結果
衆院
本会議
議決日

結果
参院
委員会名
参院
委員会
議決日

結果
参院
本会議
議決日

結果
備考
平成15年度一般会計補正予算(第1号)

平成15年度特別会計補正予算(特第1号)

平成15年度政府関係機関補正予算(機第1号)
16.1.19 1.19 1.23 1.26

1.27

1.28
1.30

可決(全)

(賛-自民・公明)

(欠-民主・共産・社民)
1.31

可決
予算 2.9

可決
2.9

可決
平成16年度一般会計予算

平成16年度特別会計予算

平成16年度政府関係機関予算
16.1.19 1.19 1.23 2.10

2.12

2.13

2.16

〜 (連日)

2.20

2.23

〜 (連日)

2.25

2.26(公聴)

2.27(公聴)

3.1(分科)

3.2(分科)

3.3

〜 (連日)

3.5
3.5

可決(多)

(賛-自民・公明)

(反-民主・共産・社民)
3.5

可決
予算 3.26

可決
3.26

可決

(3)分科会・公聴会

[1] 分科会

分科会 所管 設置年月日 構成 開会年月日
第1分科会 皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣、内閣府所管及び他の分科会の所管以外の事項 平成16.2.25 分科員6人 平成16.3.1
平成16.3.2
第2分科会 総務省所管 平成16.2.25 分科員6人 平成16.3.1
平成16.3.2
第3分科会 法務省、外務省、財務省所管 平成16.2.25 分科員6人 平成16.3.1
平成16.3.2
第4分科会 文部科学省所管 平成16.2.25 分科員6人 平成16.3.1
平成16.3.2
第5分科会 厚生労働省所管 平成16.2.25 分科員7人 平成16.3.1
平成16.3.2
第6分科会 農林水産省、環境省所管 平成16.2.25 分科員6人 平成16.3.1
平成16.3.2
第7分科会 経済産業省所管 平成16.2.25 分科員7人 平成16.3.1
平成16.3.2
第8分科会 国土交通省所管 平成16.2.25 分科員6人 平成16.3.1
平成16.3.2

[2] 公聴会

開会承認要求

年月日
承認年月日 公聴会を開いた議案 意見を聞いた問題 開会年月日
平成16.2.19 平成16.2.19 平成16年度一般会計予算

平成16年度特別会計予算

平成16年度政府関係機関予算
平成16年度総予算について 平成16.2.26
平成16.2.27

(4)公述人・参考人

[1] 公述人

出頭年月日 職業 氏名 意見を聞いた問題
平成16.2.26 中央大学法学部教授 貝塚 啓明君 平成16年度総予算について
独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所参事 酒井 啓子君
慶應義塾大学経済学部教授 吉野 直行君
慶應義塾大学経済学部教授 金子  勝君
社会福祉法人プロップ・ステーション理事長 竹中 ナミ君
日本労働組合総連合会事務局長 草野 忠義君
東京大学大学院経済学研究科教授 奥野 正寛君
全国労働組合総連合事務局長 坂内 三夫君
平成16.2.27 大阪府立大学経済学部長 宮本 勝浩君
千葉大学法経学部教授 新藤 宗幸君
一橋大学大学院経済学研究科長 田近 栄治君
全国一般労働組合書記長 田島 恵一君

[2] 参考人

出頭年月日 職業 氏名 審査・調査案件
平成16.1.26 日本道路公団総裁 近藤  剛君 平成15年度一般会計補正予算(第1号)

平成15年度特別会計補正予算(特第1号)

平成15年度政府関係機関補正予算(機第1号)
平成16.1.27 日本銀行総裁 福井 俊彦君
平成16.1.28 日本銀行理事 白川 方明君
平成16.2.10 日本銀行総裁 福井 俊彦君 平成16年度一般会計予算

平成16年度特別会計予算

平成16年度政府関係機関予算
平成16.2.16 預金保険機構理事長 松田  昇君
平成16.2.17 日本銀行副総裁 武藤 敏郎君
平成16.2.18 株式会社東京証券取引所代表取締役専務 吉野 貞雄君
預金保険機構理事長 松田  昇君
日本銀行副総裁 武藤 敏郎君
平成16.2.19 都市基盤整備公団総裁 伴   襄君
日本道路公団総裁 近藤  剛君
平成16.2.23 日本道路公団理事 山本 正堯君
日本道路公団理事 奥山 裕司君
平成16.3.3 財団法人厚生年金事業振興団理事長 吉原  健二君
年金資金運用基金理事長 近藤 純五郎君
元金融再生委員会事務局長 森  昭治君
財団法人厚生年金事業振興団常務理事 丸田 和生君

(第1分科会)

平成16.3.2 都市基盤整備公団理事 古屋 雅弘君 平成16年度一般会計予算

平成16年度特別会計予算

平成16年度政府関係機関予算

〔内閣及び内閣府所管(内閣府本府、警察庁)〕

(第8分科会)

平成16.3.2 都市基盤整備公団理事 田中 久幸君 平成16年度一般会計予算

平成16年度特別会計予算

平成16年度政府関係機関予算

(国土交通省所管)

(5)議員海外派遣

派遣議員団 派遣期間 派遣国名 派遣目的 派遣議員
衆議院欧州各国における予算及び財政制度並びに政治経済事情等調査議員団 (閉会中)

平成16.7.18 〜 7.26
フランス、イギリス、ノルウェー、チェコ 欧州各国における予算及び財政制度 並びに政治経済事情等調査のため 9人
 


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