【第161回国会】

１　委員名簿（50人）

会長	中山　太郎君	自民
幹事	近藤　基彦君	自民	幹事	福田　康夫君	自民
幹事	船田　元君	自民	幹事	古屋　圭司君	自民
幹事	保岡　興治君	自民	※幹事	枝野　幸男君	民主
幹事	中川　正春君	民主	幹事	山花　郁夫君	民主
幹事	赤松　正雄君	公明		伊藤　公介君	自民
	大村　秀章君	自民		加藤　勝信君	自民
	河野　太郎君	自民		坂本　剛二君	自民
	柴山　昌彦君	自民		渡海　紀三朗君	自民
	中谷　元君	自民		永岡　洋治君	自民
	野田　毅君	自民		葉梨　康弘君	自民
	平井　卓也君	自民		平沼　赳夫君	自民
	二田　孝治君	自民		松野　博一君	自民
	松宮　勲君	自民		三原　朝彦君	自民
	森山　眞弓君	自民		渡辺　博道君	自民
	青木　愛君	民主		稲見　哲男君	民主
	大出　彰君	民主		鹿野　道彦君	民主
	鈴木　克昌君	民主		園田　康博君	民主
	田中　眞紀子君	民主		辻　惠君	民主
	中根　康浩君	民主		長島　昭久君	民主
	計屋　圭宏君	民主		古川　元久君	民主
	馬淵　澄夫君	民主		笠　浩史君	民主
	和田　隆志君	民主		渡部　恒三君	民主
	太田　昭宏君	公明		佐藤　茂樹君	公明
	福島　豊君	公明		山口　富男君	共産
	土井　たか子君	社民

注：※は、会長代理（平成11年７月６日の議院運営委員会理事会における申合せにより、会長が野党第一党の幹事の中から指名）

２　調査の経過

第１回の憲法調査会は、10月14日に開会され、第160回国会閉会後の９月５日から17日にかけてＥＵ憲法及びスウェーデン・フィンランド憲法に関する実情調査のため派遣された議員団による調査の概要を中山団長から聴取し、調査に参加した委員からの発言の後、委員から自由な発言があった。

第２回の10月21日には、議会オンブズマンその他の行政に対するチェックの仕組み及び国際機関と憲法（特に国連憲章を中心として）をテーマに委員間の自由討議を行った。

第３回の10月28日には、国民投票制度についてをテーマに委員間の自由討議を行った。

第４回の12月２日には、国会・内閣（二院制及び政党を中心として）をテーマに委員間の自由討議を行った。また、本年の調査の締めくくりとしての委員間の自由討議を行った。

なお、11月11日、18日及び25日に、公聴会を開き、計18名の公述人から意見を聴取した。

３　調査会の議論の概要

(1)　第１回：10月14日

○主な発言内容

• ＥＵ憲法条約に対する評価
• ＥＵの拡大
• ＥＵ憲法条約の批准と国民投票
• 国際的テロリズムへの対応の在り方
• オンブズマンと法の支配の確立
• 我が国の安全保障政策の在り方
• 国連憲章が定める平和の構築と21世紀における第９条の意義
• 憲法問題を専門的に取り扱う常設の憲法委員会を設置することの是非
• 海外調査の在り方

(2)　第２回：10月21日

○主な発言内容

〈議会オンブズマンその他の行政に対するチェックの仕組み〉

• 我が国におけるオンブズマン制度導入の要否
• オンブズマン制度の憲法上の位置づけ
• 現行の苦情処理制度等とオンブズマン制度との関係
• 議会の行政に対するチェック機能強化の重要性
• 請願権・国政調査権の意義
• 行政統制における行政訴訟の意義

〈国際機関と憲法（特に国連憲章を中心として）〉

• 国連の集団安全保障への参加と憲法との関係
• 国際貢献の在り方やその根拠規定の明記の是非
• 第９条を活かした国際貢献の在り方
• 安保理常任理事国入りと憲法との関係
• 常設の憲法委員会の設置の是非

(3)　第３回：10月28日

○主な発言内容

〈国民投票制度について〉

• 憲法の規定する国民投票制度の意義
• 重要な政策課題についての国民投票制度を導入することの是非
• 住民投票の意義、現状及び可能性
• 国民投票を実施する際に留意すべき事項等
• 憲法改正のための国民投票法を制定することの是非
• 憲法改正手続の要件を緩和することの是非

(4)　第４回：12月２日

○主な発言内容

〈国会・内閣（二院制及び政党を中心として）〉

• 二院制の是非
• 衆参両院の役割分担や選挙制度の在り方
• 参議院の権限の見直し
• 道州制と参議院の位置づけ
• 一票の格差の是正
• 政党の憲法上の明記及びその規定内容
• 政党と結社の自由との関係

〈本年の調査の締めくくりとして〉

• 憲法の見直しの必要性
• 「法の支配」ということの重要性
• 個人の尊厳を重視する必要性
• 平和主義及び立憲主義の立場を守ることの重要性
• 憲法調査会の意義
• 具体的な憲法改正案を審議するための機関を設置する必要性
• 憲法の規定と現実との間に乖離が生じている諸点
• 憲法の各条文が実現されているか否かを検証することの必要性
• 憲法改正の具体的な内容
• 憲法問題について国民の間に理解を広げていく必要性

４　公聴会の議論の概要

第１回〈11月11日　午前〉

○浅岡美恵公述人による意見陳述の要点

• 環境権や消費者の権利等かつて認識されてこなかった新たな問題は、第13条などを根拠に新しい人権として、不十分ながらも判例や立法措置により対応がなされてきた。
• 環境権などの人権規定の付加とこれに矛盾する第９条改正とを一括して憲法改正の国民投票に付することは、国民の選択権が妨げられることからも認められない。
• 環境権の憲法への明記は、抽象的にならざるを得ず、立法権や行政権の裁量の拡大が懸念されることから、環境権の実現は憲法改正ではなく、具体的立法や行政措置により行うべきである。
• 国際協力のためであっても第９条を改正することは、自衛の限度を超える武力行使を認め、侵略行為と隣り合わせになり危険である。
• 環境権は、他の人権と同様、戦争により非常に影響を受けることからも、第９条は維持すべきである。
• 憲法の根幹である平和主義の改変は、憲法改正の限界を超えることになる。

○植松治雄公述人による意見陳述の要点

• 近年、自殺の増加等、過度な個の尊重による弊害が見られる中、生命尊重の思想を憲法の根底に置くべきである。
• 生存権を担保する観点から国民皆保険制度を堅持し、不法滞在の外国人にも国民と同様の医療を保障すべきである。
• 医療従事者の労働条件を改善し、医療事故のない安全な環境を整備すべきである。
• 医療現場での人権意識は高まっているが、依然として人権に関する問題が生じており、人権教育のほか、生命への畏敬の念を憲法等で宣言することも考えられる。
• 終末医療における自己決定を無限定とすべきではなく、積極的な安楽死や自殺の幇助は否定されるべきであり、尊厳死は厳格な要件のもとにのみ認められる。
• ヒトゲノムの解析等科学の進歩は新たな差別を招くおそれがあり、人の多様性を認めるなどの教育が必要である。
• 医療従事者の立場から、武力行使及び有事における医療協力には反対である。
• 憲法の枠内で可能な限り公正な解釈を目指し、憲法解釈だけでは社会の実態に適合しない場合にはじめて、憲法の部分的な修正を考えるべきであり、生命・人体の尊厳などの包括的な概念の明記も検討すべきである。

○暉峻淑子公述人による意見陳述の要点

• 人権保障等が不十分ながらも達成されてきたのは、平和憲法があったからであり、人権保障と第９条は一体をなすものである。
• 自国の平和と人権を守る国こそ他国への協力ができる。
• 国民の自立を援助すべき政府が経済や教育において競争をあおり、社会の格差が広がっている。
• 第９条は、我が国が米国とともに戦争することを阻止していることから空洞化しておらず、情報公開、政治への参加等を進める「人権文化」の結実である。
• 第９条の改正は、自衛隊のシビリアン・コントロールを失わせるおそれがある。
• 自民党憲法改正プロジェクトチームの「論点整理」については、[1]家族や共同体の価値を重視する観点から両性の本質的平等を定める第24条を見直すべきであるとしているのは、女性差別撤廃の流れに反する、また、[2]「公共の福祉」を「公共の利益」に改めるとしているが、「利益」は短期的なものとなりがちであり、権力に都合よく解釈されるおそれがある。

○主な質疑内容

• 憲法に環境権を規定することの是非
• 科学技術の進歩と生命の尊厳との関係
• 憲法改正要件と国民投票の仕組み
• 生存権規定と医療等の在り方
• 権利主体としての子どもの人権
• 海外渡航の自由の制限の可否
• 国家財政の現状と社会保障制度の在り方
• 憲法への義務規定の追加と近代立憲主義との関係
• 第９条と国際貢献との関係

第１回〈11月11日　午後〉

○中曽根康弘公述人による意見陳述の要点

• 現憲法については、 [1]前文に過去を踏まえ、未来の日本の理想像を謳うこと、 [2]天皇の地位を「国民主権下の象徴的元首」とすること、 [3]第９条は、第１項は維持し、第２項に自衛のための防衛軍、第３項に安全保障基本法のもとにおける武力行使を含んだ国際的協力活動への参加、第４項に文民統制を規定すること、 [4]国民の権利及び義務につき、環境、学術的創造活動の自由、国の平和と独立を守る責任等を規定すること、 [5]首相公選制、行政権の内閣総理大臣への帰属等を規定すること、 [6]憲法裁判所を設けること、 [7]緊急事態を規定すること、 [8]健全財政主義を規定すること、 [9]憲法改正に係る国会の発議要件を過半数とすること等を柱として、全面的に点検し、必要な改革をなすべきである。
• 第１回の憲法改正は、３分の２の国会議員獲得のため妥協案も必要である。
• 占領下の制定という現憲法の異常性と冷戦の終結、９・11以降の国際情勢の変化、現憲法の欠陥の露呈等により、現在、憲法改正を求める気運が高まっており、国家的課題として国会議員がその責任を果たすことが期待されている。

○宮澤喜一公述人による意見陳述の要点

• 公布されてから50数年を経た日本国憲法を振り返り、成立した憲法が占領軍主導によりつくられたことは明らかであったが、もし独立回復後にもう一度、民意を問う機会があれば、占領下で定められたという批判は免れることができたかもしれない。
• 当時、翻訳調の不思議な日本語で書かれていると感じた憲法を自分の言葉として多くの国民が育ち、言葉だけでなく、日本自身も変わった。
• 憲法の解釈と運用についての最高裁の役割は、高いものであった。
• 公布以来、我が国は憲法のおかげで発展できた。また、憲法は柔軟に書かれており、その運用によって対処できる。
• 事態によっては憲法を変えざるを得ない部分もあるかもしれないが、その場合には国民の判断を待つべきである。

○武村正義公述人による意見陳述の要点

• 国民主権、基本的人権の尊重、戦争放棄の平和理念を定める憲法があったからこそ、ここ60年間の日本があった。
• 安全保障については、[1]日本の顔である第９条を軽々しく変えるべきではなく、[2]自衛力を明文化するにしても最小限の自衛力の保持に限定すべきであり、[3]集団安全保障への参加は前文の国際協調の理念の具体化であるが、武力行使は避けるべきである。
• そのうえで、新しい憲法には、[1]日本人の伝統である「環境主義」の理念を前文及び本則に明記し、「象徴天皇制」と並ぶナショナル・アイデンティティとすべきこと、[2]非軍事的な国際貢献として、地球環境への積極的な関与を明らかにする「環境安全保障」を「平和主義」と並ぶ日本の顔として明示すべきこと、[3]無責任な財政の破綻に歯止めをかけるべく、「継続的な健全財政運営の責任」を明文化すべきこと、[4]地方主権を確立すべきことが考えられる。

○主な質疑内容

• 制定以来今日に至るまで憲法が改正されてこなかった理由
• 21世紀の日本の国家観を示す憲法がつくられるとした場合の国家観の在り方
• 第９条の意義
• 第９条を活かすために政治家及び日本国民はどう行動すべきか
• 社会の大転換に対応するため改憲が必要だとする意見への疑問
• 憲法改正発議のための大連立の必要性

第２回〈11月18日　午前〉

○高竹和明公述人による意見陳述の要点

• 憲法における一番の問題点として、我々日本国民がこれを自分たちの憲法として精神的には完全に認めていないことがある。
• 現行憲法は、ＧＨＱによって「押し付け」られたことをもって否定されるべきではないが、日本の慣習や伝統、文化が何一つ考慮されておらず我が国の憲法として適しているとは到底思えない。
• 新しい権利など21世紀にふさわしい日本国の在り方を大局的に捉える積極的な憲法論議が必要である。
• 憲法論議は、「国民の総意の憲法」をつくり上げるべく全国展開されていく必要がある。
• 日本青年会議所は、世界平和の実現と自立国家日本の創造という理念の達成のためにも国民的視点での議論を巻き起こそうとしている。
• 米国製の憲法に「手を加える」という生半可な感覚ではなく、日本の伝統的な価値観や、世界の平和と国益とのバランスをしっかり盛り込んだ新しい憲法を創造していくべきである。

○寺中誠公述人による意見陳述の要点

• 国際的な人権擁護組織であるアムネスティ・インターナショナルは、不偏不党及び非暴力を活動の信条とする団体である。
• 我が国は主要な国際人権条約を締結しているものの、その実施について消極的であり、制限的な解釈をしていることに重大な懸念を持っている。
• 先日、日本で初めて「良心の囚人」としての事例を認定したが、公権力の判断と異なる言論の完全な保障が求められている。
• 外国人の人権保障が不十分であり、一刻も早い明確な人種差別禁止のための法整備が求められていること等を紹介し、国際人権基準と日本国憲法の人権との連携を重視すべきである。
• 人権保障の在り方として、[1]パワーを持つ側が　「権利を保護する義務」を負うべきであり、また、[2]権利を必要としているのが誰なのかを見据えた「人権享有主体別の権利観」が必要である。

○日野原重明公述人による意見陳述の要点

• 私は、医者として、地球上の人間は皆同じにできていることを知っている。
• 科学技術の進歩が著しい現代こそ、いのちの大切さや他の動物、他の民族との共生が求められている。
• 現実の国際情勢と憲法前文の想定する国際社会との乖離、敗戦国日本の受身の外交姿勢、米国とテロリズムが恨みの連鎖にある状況を指摘しておきたい。
• 国際社会において非暴力の運動により、指導力を発揮し、憲法前文にいう「名誉ある地位」を実現する心構えがあるか国民に問いかける必要がある。
• そのためには、大学卒業後、一定期間、発展途上国等において奉仕活動に従事する制度を創設し、日本が戦後外国人の献身的な貢献を受けたように、国際社会における「人的貢献」をなすべきであり、この制度は人間形成にも資するものである。

○主な質疑内容

• 首相公選制導入の是非
• 実名報道等に見られる表現の自由の問題点
• 日本の歴史・伝統・文化と憲法との関係
• 世界の平和への日本のリーダーシップの在り方
• 生命倫理に係る事項を憲法で保障することの是非
• 外国人の人権の憲法における位置づけ
• 我が国における国際人権条約の実施状況
• 家族と憲法との関係

第２回〈11月18日　午後〉

○江橋崇公述人による意見陳述の要点

• 日中国交回復を契機に、平和主義にアジアにおける侵略と犯罪に対する反省という要素が加わったことは、社会や市民が憲法に新しい命を吹き込んだものであり、21世紀の平和主義として、戦争に対する反省と東アジアにおける和解と友好、協力を憲法に盛り込むべきである。
• 憲法の人権規定が占領軍から日本の官僚、市民へと与えられ、その後、裁判を通じて国家の人権実現の責任が追及され、市民運動を背景に政策的な人権の実現が前進した経緯を踏まえ、憲法には、まず、人権実現に向けた政府の責任や、国政及び裁判の場でそれを保障する責任を明確化すべきである。
• 官僚主導の国家運営の破綻が地方分権により打開され、市民運動によって首長の下で地方自治が展開するなど、憲法の地方自治規定が市民運動により新しい命を吹き込まれたが、市民が作った自治体学の成果を取り入れた議論と、市町村レベルの自治体及び国家の段階的な配慮の責任などの確立が期待される。
• 政府と市場と市民社会が公共性を分有し、中央政府と地方政府が対等に協力し合う公共性の分有の時代にあって、憲法も、政府と市場と市民社会が共有できる価値を含む基本原則であるべきである。

○ペマ・ギャルポ公述人による意見陳述の要点

• 日本は民主的な法治国家であり、私がこれまで日本社会の豊かさ・便利さや自由を享受してこられたのは憲法の恩恵であると評価し、感謝している。
• 日本が今後国際社会で生きていくうえで、第９条には非現実的側面がある。すなわち、第９条は、一方的な戦争放棄であって、単なる宣言にすぎず、それを尊重するような国際社会も、それを保障する国際法も存在しない。また、今の国際社会は、力と既成事実により成り立っている。
• 自衛隊の存在は、条文上は憲法違反としか考えられず、平和の恩恵を受けるためには、自ら平和を守る努力をすることが必要であり、そのためには、第９条を改正すべきである。
• 冷戦構造が崩壊した現在、日本は、今後も現在の憲法を堅持するのであれば、それに合わせて国際環境を作っていくことに貢献する必要がある。
• 憲法は、あくまで主権者たる日本国民やその代表たる国会議員が、子孫が恩恵・束縛を受けることを前提に、日本・アジア・人類の未来のために貢献できるものとして考えるべき問題である。

○村田尚紀公述人による意見陳述の要点

• 立憲民主主義は人類が発見した最高の統治形態である。
• 授権規範としての憲法は、公権力に権限を与える規範であり、また、制限規範としての憲法は、公権力を制限する規範である。さらに、憲法が最高法規であるとは、実質的には憲法が国家や社会にとって最高の価値を内包するものであることを意味する。
• 憲法の民主的な解釈・運用の前提である国民の意思の国会への忠実な反映について、小選挙区制が多様な民意を反映する制度ではないこと等の問題がある。
• 第９条、政教分離原則について、授権規範、制限規範という憲法の規範的特質を無視した解釈が行われている。
• 新しい人権について、憲法が「権力」に対する制限規範であること等から明文がなくとも認められ、憲法改正の必要はない。
• 憲法は武力によらない平和への貢献を国家に授権しており、それが国際社会の友好関係を発展させるものである。
• 今日、憲法改正ではなく民主的な解釈・運用が望まれている。

○主な質疑内容

• 自衛隊の憲法上の位置づけ
• 象徴天皇制と元首との関係
• 衆参両院における一票の格差の問題
• 外国人の人権を保障する必要性
• 憲法に「責任」の概念を加えることの是非
• 憲法の平和主義が生まれた歴史的背景
• 平和的生存権の意義

第３回〈11月25日　午前〉

○白石正輝公述人による意見陳述の要点

• 天皇が国を代表する元首であるということを憲法上明確にすべきである。また、男女平等は国民にとって当然であり、天皇を男性に限る必要はない。
• 第９条第２項に自衛のための戦力の保持を規定し、また、第３項として、国連の要請があった場合の武力行使を規定すべきである。
• 第29条第１項の「財産権」を「国民生活に必要不可欠な財産権」に改め、法律だけではなく、「基本条例」によっても制限できるようにすべきである。
• 地方自治の確立のため、地方自治体の権限を明確にし、道州制を導入すべきであり、また、地方自治体の自主立法権を明確にし、国と道州の固有の権限を侵さない範囲内で、法律又は道州が定める条例に優先する「基本条例」を定めることができるようにすべきである。
• 憲法改正の発議要件を各議院の総議員の３分の２から２分の１とすべきである。

○篠原裕明公述人による意見陳述の要点

• 国会の立法活動について、内閣提出法律案は、国会での修正を前提に、よりシンプルな内容の法律案とし、修正を前提とした議論のための審議日数を確保するために、通年国会とすべきである。
• 議員立法は政府が提案しにくい事項について活用すべきであり、大枠を定めるプログラム的な内容がふさわしい。
• 国会の行政監視について、国会と会計検査院は連携して調査を行うべきであり、会計検査院を国会の附属機関にすることも視野に入れるべきである。
• 実態として内閣法制局に憲法解釈が委ねられていることを踏まえ、憲法裁判所を創設すべきである。
• 国会議員を内閣法制局及び衆参の議院法制局の長にして、政治的責任を明確にすべきである。
• 衆参両院の審議における独立性を前提に、両院の補佐機関について可能な部分を統合すべきである。
• 憲法と現実の乖離が見られるところは、実務的な部分を先行させて憲法改正をすべきである。

○平塚章文公述人による意見陳述の要点

• 国会で憲法改正について議論することは、否定されるべきではない。
• 憲法改正のための国民投票の実施について、有権者の範囲、投票方法、投票率が低い場合の承認の有効性等をあらかじめ国会で検討し、具体化する必要がある。
• 憲法改正に当たっては、憲法の意味や内容を知る必要があることから、国は日常から憲法について国民の理解を深める努力をすべきであり、それは国民の義務でもある。
• 若年層が憲法に関心を持ち、国民の義務や公共の福祉など本来考えるべき問題の原点を理解することにつながるよう、義務教育で憲法を学ぶ機会を十分に確保すべきである。

○主な質疑内容

• 集団的自衛権の行使を認めることの是非
• 財産権の制限の在り方
• 通年国会を導入することの是非
• 憲法裁判所設置の是非
• 義務教育における憲法教育の在り方
• 天皇を元首と規定することの意味
• 第９条と国際貢献との関係
• イラクへの自衛隊の派遣期限の延長の是非
• 行政監視機能の強化と会計検査院
• 違憲審査権の行使が不十分であることの原因
• 憲法改正規定に対する評価

第３回〈11月25日　午後〉

○山田淳平公述人による意見陳述の要点

• 憲法制定時には想定されていなかったプライバシー権などの権利を明確に憲法で保護すべきである。
• 参議院の権限を強化し、「良識の府」としての特殊性を活かせるような役割を担わせるべきである。
• 首相公選制の導入は、国民による人気投票になるおそれがあることから時期尚早である。
• 憲法裁判所を設置しなくとも、司法権自体の強化により憲法判断を積極的に行わせることは可能である。
• 道州制の導入は、郷土を愛する心を失わせるおそれがあり、住民自治・団体自治の観点からはマイナスである。
• 憲法が国民にとって最も重要な基本法であることから、改正の際に国民投票が予定されているのであり、その情報の提供や討論の場としての役割が憲法調査会に期待されている。

○青龍美和子公述人による意見陳述の要点

• 戦争は無差別殺人であり、どのような理由があっても許されるべきではない。
• 第９条には戦争によるアジアや国内の犠牲者の知恵と願いが込められており、第９条第２項の「戦力の不保持」をすべての国が実現すれば、戦争のない世界を実現でき、第９条の示す戦争に対する根本の解決策は間違っていない。
• イラクでの自衛隊の行動は、第９条に反しており、日本は戦争をする状況に近づいているが、国連の軍縮会議の議論等の国際社会の平和を希求する流れから考えれば、第９条第２項の輝きは大きく、唯一の被爆国として日本には、武力による解決ではなく、話合いによる平和的解決を世界において目指す役割が求められている。
• 世界から戦争をなくすことが理想であり、理想を現実にする努力をせずに第９条を変えるべきではない。

○森信幸公述人による意見陳述の要点

• 高齢者の間では、社会保障制度に関連して第９条や第25条がよく話題になっており、憲法が身近なものになっている。
• 第二次世界大戦で多くの人々が犠牲となった経験から、多くの人が平和憲法たる現行憲法を喜んで迎え入れた。
• 憲法は、平和と民主主義への思いと努力に支えられて誕生し、現在ますますその輝きを増している。
• 改憲の動きが活発化しているが、特に第９条は、国民に定着し、国際的にも輝きを増しており、日本と世界の人々を再び戦争の惨禍に巻き込むことのないように、守っていかなければならない。
• 改憲を唱えるのであれば、憲法の「理想と目的」がどこまで実現できたかをまず検証することが、国民に対する責務であり、それは憲法尊重擁護を規定する第99条の義務である。
• 21世紀は、憲法の「理想と目的」を実現する世紀であり、我々は、再び過ちを侵さぬよう歴史の教訓を踏まえて進むべきである。

○主な質疑内容

• 調査会の活動の周知状況
• 自衛隊を憲法上に位置づけることの是非
• 複数の条項にわたる憲法改正案を一括して又は条項ごとに国民投票に問うべきか等の憲法改正についての方法論
• 北朝鮮のミサイル発射や中国潜水艦の領海侵犯の問題
• 世代間における憲法論議の差と新しい世代へ憲法の理念を引き継いでいく必要性
• 新しい人権を実現するための探求の方法

５　公述人

出頭年月日	職業	氏名	意見を聞いた問題
平成16.11.11	弁護士、気候ネットワーク代表	浅岡　美恵君	日本国憲法に関する件について
	社団法人日本医師会会長	植松　治雄君
	埼玉大学名誉教授	暉峻　淑子君
	元内閣総理大臣	中曽根　康弘君
	元内閣総理大臣	宮澤　喜一君
	元滋賀県知事、元大蔵大臣	武村　正義君
平成16.11.18	社団法人日本青年会議所2004年度専務理事・2005年度会頭	高竹　和明君
	社団法人アムネスティ・インターナショナル日本事務局長	寺中　誠君
	聖路加国際病院理事長・名誉院長	日野原　重明君
	法政大学法学部教授	江橋　崇君
	桐蔭横浜大学法学部教授、岐阜女子大学名誉教授、チベット文化研究所名誉所長	ペマ・ギャルポ君
	関西大学法科大学院教授	村田　尚紀君
平成16.11.25	足立区議会議員	白石　正輝君
	会社員	篠原　裕明君
	電気機器メーカー人事課長	平塚　章文君
	団体職員	山田　淳平君
	大学生	青龍　美和子君
	無職	森　信幸君

６　公聴会

開会承認要求 年月日	承認年月日	公聴会を開いた案件	意見を聞いた問題	開会年月日
平成16.10.14	平成16.10.14	日本国憲法に関する件	日本国憲法に関する件について	平成16.11.11 平成16.11.18 平成16.11.25