衆議院

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第2 本会議の概況

【第162回国会】

1 国務大臣の演説及び質疑

平成17年1月21日に小泉内閣総理大臣の施政方針演説、町村外務大臣の外交演説、谷垣財務大臣の財政演説、竹中経済財政政策担当大臣の経済演説が衆議院本会議において行われ、これに対して、同月24日及び25日に各党の代表質問が行われた。

(1) 小泉内閣総理大臣の施政方針演説

(はじめに)

第162回国会の開会に臨み、小泉内閣として国政に当たる基本方針を申し述べ、国民の皆様の御理解と御協力を得たいと思います。

先月、紀宮清子内親王殿下の御婚約の内定という慶事を迎えました。国民と共に心からお祝い申し上げます。

昨年は豪雨や台風による災害が多発するとともに、新潟県中越地震により甚大な被害を受け、年末にはインドネシア・スマトラ島沖で大地震と津波が発生して多くの国々が未曾有の災害に襲われました。被害に遭われた方々、そして今なお困難な生活を余儀なくされている方々に対し、心からお見舞いを申し上げます。

国内の被災地が迅速に復旧事業に取り組めるよう、激甚災害指定を行い、補正予算を編成しました。一日も早く被災者の方々が安心して生活できるよう、復旧と復興に全力を尽くすとともに、阪神・淡路大震災の発生から10年目の本年、災害に強い国づくりを一層進めてまいります。

インド洋沿岸各国の被害に対しては、被災者の捜索や救援のため、医療や消防関係者、自衛隊などを国際緊急援助隊として派遣するとともに、当面、テント、食料、医薬品などの援助物資や資金を5億ドル無償で供与します。各国の被害状況を確認しながら、アジアの一員としてできる限りの復興支援をしてまいります。現在神戸で開催中の国連防災世界会議の提言を踏まえ、インド洋地域における津波の早期警戒体制の構築に向け、日本の経験や技術を活用し、関係国や国連との協力を積極的に進めます。

(国民の「安全」の確保)

私は就任以来、民間にできることは民間に、地方にできることは地方にとの改革を進める一方、国民の安全と安心を確保することこそ国家の重要な役割と考え、その実現に向け努力してまいりました。

増え続けてきた犯罪件数は、2年連続して減少しましたが、なお凶悪犯罪は多発しており、市民が安心して暮らすことのできる社会を早急に取り戻さなくてはなりません。来年度、3,500人の警察官を増員し、空き交番の解消に全力を挙げ、世界一安全な国の復活を目指します。

安全は与えられるものではなく、つくるものであります。新宿歌舞伎町を始めとする全国の繁華街から、暴力団や外国人犯罪組織を排除し健全な街に再生するため、地域挙げての住民の自主的な取組を支援してまいります。

重大な人権侵害である人身取引の防止は国際的な課題となっており、悪質なブローカーの取締りを強化し、罰則を整備するとともに、被害者の保護を徹底します。引き続き人権救済に関する制度について、検討を進めます。

先の臨時国会で犯罪被害者等基本法が成立しました。犯罪の被害者や遺族が、一日も早く立ち直り安心して生活できるよう、相談や情報提供などの支援を充実させてまいります。

テロの脅威が世界的に高まっている中、警察官が航空機に同乗するスカイマーシャルを導入するとともに、国際便の乗客名簿を基に入国前に不審者を電子的に照合するシステムの運用を開始しました。本年4月からホテル業者による外国人宿泊客の本人確認を徹底するなど、テロの防止対策を強化します。

昨年、長年の懸案であった総合的な有事法制を整備しました。その円滑な実施に向け、有事の際の警報発令から住民の避難、救援など、国や地方自治体のとるべき措置の手順を定め、制度の運用に万全を期します。

東西の冷戦終結後、我が国を取り巻く環境が大きく変わる中、新たな防衛計画の大綱と中期防衛力整備計画を策定しました。いわゆる冷戦型の侵略に備えた装備や要員など既存の防衛体制を抜本的に見直し、テロや弾道ミサイルなど新たな脅威に対応するとともに、国際平和協力活動に主体的に取り組んでまいります。

(国民の「安心」の確保)

我が国では、2007年から人口減少社会が到来すると言われております。約700万人の団塊の世代が高齢期を迎えるなど、世界でも経験したことのない速さで少子高齢化が進みます。経済活力を維持しつつ、社会保障制度を将来にわたって持続可能なものとしていくためには、与野党が立場を超えて、公的年金制度の一元化を含め、社会保障の一体的見直しに早急に取り組まなければなりません。

介護保険制度の安定に向け、できるだけ介護が必要な状態にならないよう、予防を重視したシステムへ転換するとともに、在宅と施設介護の利用者負担の公平化と年金給付との調整を図るため、施設入所者に居住費用と食費を負担していただくなど、制度全般を見直します。

様々な障害を持つ方が地域で自立できるよう、市町村が一元的にサービスを提供する体制を整備するとともに、雇用対策を強化します。公共施設のみならず、制度や意識の面でも社会のバリアフリー化を引き続き推進いたします。

少ない患者負担でより多くの先進的な医療技術や医薬品を利用できるよう、安全面に十分配慮しながら、混合診療を解禁することにしました。約2,000の医療機関で、100種類の最先端の治療が受けられるようになります。年間30兆円を超える医療費を審議する中央社会保険医療協議会の在り方については、公正・中立・透明性を確保する観点から見直します。

長生きを喜べる社会を目指し、本年から実施する10か年の健康フロンティア戦略に基づいて、がんや脳卒中などの生活習慣病対策を進めます。

明るく健やかな生活に欠かすことのできないスポーツの振興を図るため、トップレベルのスポーツ選手を育成するとともに、生涯を通じてスポーツに親しめる環境を整備します。

社会保険庁の信頼を回復しなければなりません。親切なサービスの提供、無駄な予算執行の排除など緊急に実施すべき取組を開始しました。組織の在り方については、抜本的に見直してまいります。

少子化の流れを変えるため、新たに策定した子ども・子育て応援プランに基づき、待機児童ゼロ作戦を引き続き推進するとともに、現在60%の育児休業制度の普及率を5年後には100%にすることを目指します。安心して子供を生み育て、子育てに喜びを感じることのできる環境を整備してまいります。また、女性がその能力を発揮し、新しい事業の展開や地域づくりなどあらゆる分野でチャレンジできるよう支援します。

国民に身近で頼りがいのある司法を実現するため、裁判の迅速化や刑事裁判に国民が参加する裁判員制度の導入など、我が国の司法制度の在り方を半世紀ぶりに改めました。今後は、制度の着実な実施を図ってまいります。

消費者保護を最優先に、科学的知見に基づき、正確で分かりやすい情報を国民に提供することで、食品の安全確保に取り組んでまいります。米国産牛肉の輸入再開については、日本と同等の措置を米国に求めることを基本に協議します。

(「官から民へ」「国から地方へ」の実践)

私は、官から民へ、国から地方への改革は経済の再生や簡素で効率的な政府の実現につながると確信し、改革の具体化に全力を傾けてまいりました。

この方針を最も大胆かつ効果的に進めていくには、郵便局を通じて国民から集めた350兆円もの膨大な資金を公的部門から民間部門に流し、効率的に使われるような仕組みをつくることが必要です。資金の入口の郵便貯金と簡易保険、出口の特殊法人、この間をつないで資金を配分している財政投融資制度、これらを全体として改革し、資金の流れを官から民へ変えなければなりません。私はこれまでこの構造にメスを入れてきましたが、残された大きな改革、すなわち改革の本丸が郵政民営化であります。昨年9月に決定した基本方針に基づいて、平成19年4月に郵政公社を民営化する法案を今国会に提出し、成立を期します。

郵便、郵貯、簡保、いずれの分野でも、民間企業が同様のサービスを提供しています。公務員でなくてはできない事業ではありません。郵政民営化が実現すれば、郵政公社の職員が民間人となります。従来免除されていた税金が支払われ、政府の保有する株式が売却されれば、財政再建にも貢献します。郵政民営化は正に、小さな政府を実現するために欠かせない行財政改革の断行そのものであります。「民間にできることは民間に、行財政改革を断行しろ」「公務員を減らせ」と言いながら郵政民営化に反対というのは、手足を縛って泳げというようなものだと思います。

質の高い、多様なサービスを提供するため、民営化においては、国の関与をできるだけ控え、民間企業と同一の条件で自由な経営を可能とします。国鉄や電電公社は民営化されて、むしろ従来よりサービスの質が向上しました。職員が意欲的に働くことができ、過疎地を含め身近にある郵便局が市町村の行政事務を代行したり、民間の商品を取り次いだり、益々便利な存在になるようにします。障害者向けの郵便料金の軽減など社会や地域への貢献にも配慮いたします。

民営化する以上、窓口サービス、郵便、郵貯、簡保といった郵政公社の各機能を自立させ、事業ごとの損益を明確化して経営する必要があります。このため、持株会社のもとに機能ごとに4つの事業会社を設立するとともに、郵便貯金会社と郵便保険会社については、他の事業会社の経営状況に左右されないよう株式を売却して民有民営を実現します。それまでの移行期においては、民業圧迫とならないよう有識者による監視組織を活用しながら、段階的に業務を拡大します。既に契約した郵貯・簡保については、新しい契約と勘定を分離して引き続き政府保証を付けます。国債市場への影響を考慮した適切な資産運用を行います。

私は、こうした郵政民営化が新しい日本の扉を開くものと確信し、その実現に全力を傾注してまいります。

道路関係4公団は、本年10月に、日本道路公団を地域分割した上で、民営化します。各社がお互い競争しながら、利用者の要望に沿ったサービスを提供するとともに、債務は45年以内にすべて返済します。高速自動車国道の通行料金は、ETCを活用した割引制度により、昨年11月から順次引き下げており、本年4月には予定どおり、平均1割以上の引下げを実現します。

地方が知恵と工夫に富んだ施策を展開し、住民本位の地域づくりを行えるよう、地方自治体に権限と財源を移譲しなければなりません。このため、私は、国の補助金の削減、国から地方への税源移譲、地方の歳出の合理化と併せた地方交付税の見直しの3つを同時に進めることにし、三位一体の改革方針を指示しました。補助金改革の具体案は地方分権の主体となる地方が作成し、これを国と地方で協議する場を設け、地方の提案を真摯に受け止めて、改革案を取りまとめました。

今年度の1兆円に加え、来年度から2年間で3兆円程度の補助金を改革し、16年度に措置した額を含めておおむね3兆円規模の税源移譲を目指します。17年度は、1兆7,000億円余の補助金の廃止・縮減等を行い、1兆1,000億円余の税源を移譲すると同時に、地方自治体の安定的な財政運営に必要な交付税を確保しました。義務教育の在り方と、費用負担に関する地方案を活かす方策については、国の責任を引き続き堅持する方針のもと、今年中に結論を出します。

引き続き市町村合併を推進するとともに、北海道が道州制に向けた先行的取組となるよう支援いたします。

昨年末に決定した「今後の行政改革の方針」に従って、独立行政法人については、32法人を22法人に再編し、8,300人余りの役職員を非公務員化することにいたしました。国の行政機関の定員は、来年度からの5年間で1割以上の削減を目指すとともに、治安などの分野に重点的に配置します。能力・実績主義の人事評価を試験的に実施するとともに、再就職管理を適正化するなど、公務員制度改革を進めます。

民間と競合する住宅金融公庫の直接融資の廃止や都市再生機構のニュータウン事業からの撤退など抜本的な見直しを実施し、最大時40兆円あった財政投融資の規模は、来年度の計画では半分以下の17兆円に抑えました。

市場化テストは、政府と民間とが対等な立場で競争することを通じて、行政の効率化と公共サービスの質の向上、受け皿となる民間企業の活性化を図るものです。17年度は、ハローワークの中高年向け再就職支援、社会保険庁の保険料未納者に対する督促や年金の電話相談などを対象として開始するとともに、本格的導入に向けた検討を進めます。

(経済の活性化)

私は、改革なくして成長なしの方針のもと、デフレの克服と経済の活性化を目指し、金融、税制、規制、歳出の改革を実行してきました。主要銀行の不良債権残高はこの2年半で15兆円減少し、不良債権比率を目標実現に向け4%台に減らすことができました。バブル崩壊後の負の遺産の整理のめどがついた今、構造改革の取組を更更に加速しなければなりません。

ペイオフ解禁は予定どおり4月から実施いたします。健全な競争の促進と利用者保護を図り、多様な金融商品やサービスを国民が身近に利用できる金融サービス立国を目指します。

日本経済は、公共投資など政府の財政出動に頼ることなく、企業収益の改善、設備投資や個人消費の増加など民間主導で回復してきました。一方で、経済をめぐる情勢は依然として地域ごとにばらつきが見られます。現れてきた改革の芽を地域や中小企業にも広く浸透させ、大きな木に育てるとともに、日銀と一体となってデフレを克服してまいります。

2010年代初頭には、政策的な支出を新たな借金に頼らずにその年度の税収等で賄えるよう、歳出・歳入の両面から財政構造改革を進めます。来年度予算は一般歳出を3年ぶりに前年度以下に抑制し、新規国債発行額を4年ぶりに減額しました。増額したのは社会保障と科学技術振興の分野のみで、防衛費は3年連続、公共事業は4年連続でマイナスにするなど、重点的に予算を配分しました。

平成11年に景気対策の一環として導入した定率減税は、経済情勢を踏まえ、来年の1月から所得税、6月から個人住民税について、それぞれ半減いたします。三位一体の改革や社会保障制度の見直しと併せ、税制の抜本的改革の具体化に向けた取組を進めてまいります。

継続審査となっている独占禁止法改正法案の成立を期します。

(魅力ある都市と地方の再生)

東京や大阪など大都市が生まれ変わろうとしています。規制の緩和や金融支援により、民間が一体的な地区開発を進め、仕事と生活・文化機能の融合した街づくりの事業が立ち上がってきました。

地域再生計画は全国で250件に上りました。下水道や浄化槽の整備のように、複数の省庁にまたがる同種の公共事業を地域再生のため実施する場合には、窓口を一本化して交付金を地方に配分する仕組みをつくります。構造改革特区は、この2年で475件誕生しました。そのうち26の規制緩和の特例については、特区だけではなく全国で行えるようにします。

外国人旅行者はこの1年間で90万人増え、初めて600万人を超えました。観光は地域や街の振興につながります。ビジット・ジャパン・キャンペーンの強化や姉妹都市交流の拡大により、2010年までに外国人訪問者を1,000万人にする目標の達成を図ります。既に、中国、韓国からの修学旅行生の査証を免除するとともに、地下鉄の路線や駅名に番号を付けるなど外国人の受入環境の整備を進めています。美しい自然や景観、地場産業など各地の個性を活かした観光地づくりを支援します。

外国からの投資は、日本にとって脅威ではなく、技術や経営に新しい刺激を与え、雇用の拡大につながるものです。一昨年5月に総合案内窓口を設置した結果、これまで約140社の誘致に成功しており、来年末までの5年間で対日直接投資残高を倍増させることを目指します。

海外では、ナシやリンゴなど日本の農産物が高級品として売れています。やる気と能力のある農業経営を重点的に支援するとともに、企業による農業経営への参入を進め、農産物の輸出増加を目指すなど攻めの農政に転換いたします。

異なる業種の企業と連携しながら、新技術開発や販路開拓などに挑戦する中小企業を支援してまいります。

(「人間力」の向上と発揮)

子供は社会の宝、国の宝です。学校や家庭、地域など社会全体で、新しい時代を切り拓く心豊かでたくましい人材を守り育てていかなければなりません。

教育基本法の改正については、国民的な議論を踏まえ、積極的に取り組んでまいります。

我が国の学力が低下傾向にあることを深刻に受け止め、学習指導要領全体を見直すなど学力の向上を図ります。

豊かな心と健やかな体の育成に、健全な食生活は欠かせません。大人も子供も食生活の大切さを認識するよう、食育を国民運動として展開してまいります。

若者の働く意欲と能力を高めるために、産業界や地域社会が一体となって、学校における職業教育の充実を図るとともに、生活訓練や労働体験を積ませる合宿を実施するなど、就労対策を進めます。

大学は、知の創造と継承の拠点であります。世界に誇れる研究を重点的に支援するとともに、大学運営に関する第三者評価制度により、質の向上を図ってまいります。世界一流の研究者を集めて、最高水準の教育研究を行う科学技術大学院大学を沖縄県につくるための法人を設立します。

本年は、世界最先端のIT国家実現の目標年であります。今や我が国のインターネット利用者は8,000万人に達し、政府に対する1万3,000件の申請や届出のほぼ全てが家庭や会社のパソコンから行えるようになりました。IT化の加速に応じ、情報セキュリティ対策を強化してまいります。

日本のアニメは世界各地の子供たちに夢を与えています。映画・アニメなどのコンテンツを活用した事業を振興し、ファッションや食の分野で魅力ある日本ブランドの発信を強化するなど、文化・芸術を活かした豊かな国づくりを進めてまいります。

知的財産立国の実現を目指し、深刻化している海外での模倣品・海賊版問題について、対策を強化します。

(科学技術の振興と地球環境問題への対応)

美しい地球を次世代に引き継ぐことは、我々の責務です。環境保護と経済発展の両立は可能であり、これを実現するのは科学技術であります。

新しい産業や雇用の創出、国民の健康や生活の質の向上、国の安全や災害の防止に寄与する研究開発を戦略的に推進し、科学技術創造立国を目指します。人の遺伝子情報の医療への応用など基幹技術の研究開発を重点的に支援します。大学発のベンチャー企業は、世界初のマグロの完全養殖に成功した事例など、既に900社を超えました。産業界・学界との連携を更に強化します。

3月25日から9月25日まで、21世紀最初の国際博覧会「愛・地球博」が愛知県で開催され、人間と自然とが共生していく未来への道を提示します。政府のパビリオンでは、竹のすだれや打ち水を利用した省エネ型の空調を実現するとともに、生ゴミを使った燃料電池発電などのクリーン・エネルギーで電力のすべてを賄います。植物から作られ分解されて土に還る食器を使用するレストランが店を出します。

来月には、地球温暖化防止のための京都議定書が発効します。我が国にとって、温室効果ガスの削減目標を実現することは決して容易ではありません。新しい目標達成計画を早急に策定し、官民挙げてこれを確実に実施しなければなりません。二酸化炭素を吸収する森林の育成や保全に努めてまいります。安全確保を大前提に、原子力発電を推進します。

エネルギー消費量の伸びの著しい運輸分野では、新たに事業者に省エネルギー対策を義務づけるとともに、トラックの共同運送や海上輸送への転換を図るため、幹線道路や港湾での物流拠点の整備を支援します。

就任時に約束したとおり、この3月に政府の公用車をすべて低公害車に切り替えます。同様の取組が民間にも広がっており、ある企業グループでは、所有する約1万4,000台すべての車を2010年度までに低公害車にする計画が進んでいます。

ゴミゼロ社会の実現に向け、国と地方が一体となって、5年以内に大規模不法投棄を撲滅いたします。昨年の先進国首脳会議で、私は、ゴミを減らし、使えるものは繰り返し使い、ゴミになったら資源として再利用する社会づくりを提唱しました。我が国には、工場排水をすべて循環利用するとともに、社内での分別回収の徹底とリサイクルの促進により廃棄物を限りなくゼロに近づけている先端技術メーカーがあります。エアコンなどの家電製品は年間1,000万台が引き取られ、ペットボトルの回収率は6割を超え、欧米に比べて極めて高い水準となっています。今月からは自動車のリサイクルが新たに始まりました。地球規模で循環型社会の構築に向けて具体的な行動を起こすため、4月に日本で閣僚級の国際会議を開催します。

(外交)

我が国は、戦後、世界第2位の経済大国となりましたが、決して軍事大国とはならず、平和主義を貫きながら、ODAや国連分担金などの資金面でも、国連平和維持活動などの人的貢献の面でも、世界の平和と繁栄に積極的な役割を果たしてきました。

創設60年を迎える国連は、21世紀の国際的な諸問題に効果的に対処することが期待されていますが、安全保障理事会は第2次世界大戦直後の枠組みのままであります。これまでの我が国の国際貢献の実績は常任理事国にふさわしいものであり、国連改革の機運が高まっているこの機をとらえ、その一員となるよう外交に一層の力を注いでまいります。

イラクの人たちが自らの手で平和な民主国家をつくりあげることは、日本のみならず、世界の平和と安定に寄与するものであります。我が国は、人的貢献と資金援助を車の両輪として人道復興支援を行ってきました。この1年、サマーワでは約600人の自衛隊員が交代で、住民との交流に心を砕きながら、病院での医療技術支援、給水活動、学校や道路の補修を実施しました。自衛隊員の献身的な活動は、多くの住民から感謝と高い評価を受けています。資金面の支援は、発電所や病院の復旧、港湾整備、学用品の支給など、14億ドルに上っており、水や衛生面で延べ200万人に、教育面で600万人の生徒に、日本の支援の手が差し伸べられました。

これからイラク国土の復興と民主国家の建設が本格化していく中、今月30日には国民議会選挙が行われる予定です。我が国は、先月、自衛隊の派遣期間を1年延長しました。現地の状況の変化に対して適切な措置を講じながら、隊員の安全確保に万全を期してまいります。イラクが一番苦しいときに日本はイラクの国づくりに協力してくれたと、将来にわたって評価を得られるような活動を継続していきたいと思います。

アフガニスタンでは、初の民主選挙によりカルザイ政権が発足しました。アラファト議長逝去後のパレスチナでは、自治政府議長選挙が実施されるなど、平和と繁栄に向けた取組が進んでおります。引き続き中東地域の安定と発展を支援してまいります。

米国との関係は日本外交の要であり、日米同盟は我が国の安全と、世界の平和と安定の礎であります。政治、経済など多岐にわたる分野において、緊密な連携と対話を続け、日米関係をより強固なものとします。米軍再編については、米軍駐留による抑止力を維持し、かつ、沖縄等の地元の過重な負担を軽減する観点から、米国との協議を進めてまいります。今後とも、普天間飛行場の移設・返還を含め、沖縄に関する特別行動委員会最終報告の早期実施に努めてまいります。

北朝鮮による拉致問題は、国民の生命と安全に関わる重大な事項であります。拉致被害者5名とその家族8名の帰国が実現しましたが、なお安否の分からない方々について、先般提出された再調査結果は誠に遺憾であり、北朝鮮に対して厳重に抗議し、一日も早い真相究明と生存者の帰国を強く求めています。対話と圧力の考え方に立って、米国、韓国、中国、ロシアと連携しつつ粘り強く交渉し、拉致、核、ミサイルの問題を包括的に解決し、両国関係の正常化を目指します。

日露修好150周年に当たる本年は、プーチン大統領の訪日が予定されています。両国で各分野の交流を拡大し、信頼関係を深めてまいります。北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するという基本姿勢に変わりありません。

中国は日本にとって、今や米国と並ぶ貿易相手国となるなど両国関係は益々深まっています。先の日中首脳会談では、二国間のみならず、国際社会全体にとっても両国関係は極めて重要であるとの認識を共有し、未来志向の日中関係を構築していくことで一致しました。個々の分野で意見の相違があっても、大局的な観点から幅広い分野における協力を強化してまいります。

韓国の盧武鉉大統領とは、昨年相互に訪問し合い友好関係を深めました。国交正常化後40年を迎える今年は日韓友情年として、各分野の交流を一層拡大してまいります。

フィリピンとの経済連携協定の大筋合意を皮切りに、韓国、タイ、マレーシアなどアジア諸国との締結交渉に弾みをつけてまいります。多様性を包み込みながら経済的繁栄を共有する、開かれた東アジア共同体の構築に積極的な役割を果たしていきます。

世界貿易の自由化を進め、途上国を含めたすべての国が利益を得られる貿易体制を構築しなければなりません。WTO新ラウンド交渉の最終合意に向けて、精力的に取り組みます。

日EU市民交流年である今年、拡大したEU25か国の人々と音楽・文化を通じて交流を深める行事を実施するなど、市民レベルの相互理解の強化に努めてまいります。

アフリカを始めとする途上国の開発や貧困の克服など国際的な課題に対処するため、ODAを戦略的に活用します。

海洋国家として、大陸棚を画定するための調査や周辺の海底資源を探査する船舶の建造など、海洋権益の保全に努めてまいります。

今後も日米同盟と国際協調の重要性をよく認識して、政治・経済の分野のみならず、我が国の優れた文化を活かしながら、激動する外交の諸課題に全力で取り組んでまいります。

(むすび)

政治は国民に支えられてこそ成り立つものであり、国民の政治への信頼なくして、改革の達成は望めません。政治家一人ひとりが襟を正すとともに、政治活動の公正性と政治資金の透明性を確保するための法整備を行わなければなりません。

戦後60年を迎える中、憲法の見直しに関する論議が与野党で行われております。新しい時代の憲法の在り方について、大いに議論を深める時期であると考えます。

この度、皇室典範に関する有識者会議を設置しました。皇位継承を安定的に維持する制度の在り方について、検討してまいります。

小泉内閣が誕生して3年9か月。構造改革を進めてきた結果、ようやく日本社会には、新しい時代に挑戦する意欲と、やればできるという自信が芽生えてきたように思います。私は、内閣総理大臣に就任して以来、日夜、緊張と重圧の中で、いかに総理大臣の職責を全うすべきか、全精力を傾けてまいりました。困難な課題に直面するたびに「天の将に大任をこの人に降さんとするや、必ずまずその心志を苦しめ、その筋骨を労せしむ」という孟子の言葉を胸に、改革の実現に邁進してまいりました。

昭和の初期、厳しい経済財政政策を断行するとともに、ロンドン軍縮条約を結んだ濱口雄幸首相は、軍部や官僚、経済界の強い抵抗や介入の中、不退転の覚悟で自らの責務を果たすことができれば、たとえ国家のために斃れても本懐であるとの決意で難局に臨みました。

イラク人道復興支援や北朝鮮問題、郵政民営化など内外の困難な課題が山積する今、ためらうことなく改革を実行しなければ、先人たちが築き上げてきた繁栄の基盤を揺るがし、将来の発展の可能性を閉ざしてしまいます。恐れず、ひるまず、とらわれずの姿勢を貫いて改革を断行することは、正に私の本懐とするところであります。

改革の原動力は国民一人ひとりであり、改革が成功するか否かは、国民の断固たる意思と行動力にかかっています。日本の将来を信じ、勇気と希望を持って困難に立ち向かおうではありませんか。

国民並びに議員各位の御協力を心からお願い申し上げます。

(2) 町村外務大臣の外交演説

第162回国会の開会にあたり、我が国外交の基本方針について所信を申し述べます。

まず、今般のインドネシア・スマトラ島沖大規模地震及びインド洋津波により犠牲となった方々、御家族を亡くされた方々に深く哀悼の意を表します。また、いまだ御家族の行方が判明していない方々のお気持ちは察するに余りあります。政府としては、引き続き、安否不明となっている邦人の確認に全力を挙げるとともに、ただいま全会一致で可決されました国会の決議を踏まえ、インド洋沿岸諸国に対し、資金、人的貢献、知見の三点で同じアジアの一員として最大限の支援を実施してまいります。また、現在、神戸で行われている国連防災世界会議において、今般の津波も教訓にしつつ、全世界の自然災害による被害の軽減を目指す21世紀の新しい防災指針の策定とインド洋地域における津波早期警戒メカニズムの速やかな構築に努めてまいります。

(序)

本年は終戦60年という節目の年であります。振り返れば、我が国は、戦後の荒廃の中から奇跡的な経済発展を遂げ、国力に相応しい国際貢献を通じ、平和を希求する国家として国際的地位を占めるに至りました。この背景には、我が国国民自身の努力はもちろん、我が国が友好国及び近隣国と築き上げてきた良好な関係があります。特に、湾岸戦争を契機に我が国の国際平和協力のための活動も質量共に拡大し、国際的な評価も高まりつつあります。

一方、我が国をめぐる国際安全保障環境においては、東アジアで朝鮮半島や台湾海峡をめぐる問題等の不安定な要素が存在していることに加えて、テロや大量破壊兵器等の拡散を始めとする新たな脅威が顕在化しています。現在、国際社会は、新たな国際秩序を模索しています。我が国は、こうした国際環境を踏まえた安全保障政策の推進のため、新たな防衛計画の大綱を策定するなど、時代に即した対応をとりつつ、平和で安定した国際秩序が形成されるよう積極的な外交を展開してきています。我が国が平和国家として還暦を迎えた今、まさにその外交の真価が問われています。

(国連改革と我が国の安保理常任理事国入り)

 戦後、我が国は国連への加盟をもって国際社会に復帰しました。我が国は、平和主義と国際協調という方針に基づいて、一貫して国連を重視し、国連を通じて国際貢献を行ってきました。国連も還暦を迎える本年は、21世紀の世界を反映し、山積する課題に効果的に対処できる機関へと進化するための歴史的な転換期にあります。安保理改革の必要性が叫ばれる中、我が国としては、様々な課題への着実な取組を通じて、常任理事国入りの実現に向けて最大限努力してまいります。

我が国が常任理事国となることは、主要な国際問題に関して国連の政策決定過程に深くかつ恒常的に関わることが可能となり、我が国の国益をより一層効果的に確保することに繋がります。また、安保理におけるアジアの代表性が高まることでその信頼性を高め、我が国の国際貢献を一層強化させることを通じ、安保理の実効性を高めることになります。

我が国は、本年より非常任理事国として活動していますが、今後2年間の任期では、PKO作業部会の議長国として、特に平和の構築の分野で種々尽力していく考えです。

(日米関係の強化)

日米関係は我が国外交の要であり、政治・経済等幅広い分野での同盟関係の一層の強化は、アジア太平洋の平和と安定に資するのみならず、我が国が世界の平和と繁栄のために外交を展開していく上でも不可欠です。我が国としては、日米安保体制の信頼性の向上を目指すとともに、国際協調のもとで、世界の中の日米同盟により諸課題に日米が協力して取り組んでまいります。現在、米国は、新たな脅威に対応すべくグローバルな軍事態勢の再編に取り組んでいます。我が国としては、在日米軍の兵力構成の見直しに関し、21世紀の国際情勢に適応した我が国の安全保障の確保の観点から米国との協力を進め、米軍駐留による抑止力を維持するとともに沖縄等の地元の過重な負担の軽減を促進すべく、引き続き米国と協議してまいります。同時に、普天間飛行場の移設・返還を含め、沖縄に関する特別行動委員会最終報告については、引き続きその着実な実施に努めていく考えです。

(近隣諸国及び主要国等との関係の増進)

我が国の安全と繁栄のためには、中国や韓国との関係、共に歩み共に進むパートナーであるASEAN諸国、更にはインド、豪州といった近隣諸国並びに欧州や中南米等との関係を強化していくことが不可欠です。

本年は初の東アジア・サミットが開催される予定ですが、現在、アジア諸国の地域協力が東アジア共同体を視野に深化しつつあります。アジア近隣諸国との経済連携協定の締結や、国境を越える諸問題についての機能的な協力を様々な分野で重層的に推進することは、域内で同じ価値観を共有する土台を築き、平和と繁栄を確保していく観点からも望ましく、我が国としても積極的に貢献していきたいと考えています。また、本年は、日EU市民交流年でもあり、5月にはASEM第7回外相会合を京都で開催する等、欧州と我が国を含むアジアとの間の対話と協力の強化を図ります。

アジア地域内の経済活動や地域協力が進展する一方で、我が国の経済安全保障の観点から、我が国の海洋権益の確保に努めることも重要であり、我が国周辺の海洋資源や大陸棚の調査を進めつつ、これに万全を期してまいります。

我が国は、中国との関係を最も重要な二国間関係の一つとして重視しています。中国は我が国にとり将来に向けての大きくかつ貴重な機会です。中国との間で経済関係や人的交流が急速に進展していることは、アジア太平洋の安定と繁栄の観点からも歓迎すべきことであり、今後とも貿易・投資・文化交流の拡大等を推進していく考えです。同時に、東シナ海における資源開発をめぐる問題、海洋調査船の問題等、日中間に存在する種々の懸案にも適切に対応してまいります。個々の分野で意見の相違があっても、真剣な対話を深めることを通じてそれら諸課題を解決し、未来志向の関係を確立していく考えです。

近年、関係が顕著に緊密化しつつある韓国とは、シャトル首脳会談の継続開催等、先の盧武鉉大統領訪日の成果を活かして、未来志向の関係をさらに深化させてまいります。国民レベルでの相互理解と交流の促進の観点から、日韓友情年2005を成功させるとともに、羽田・金浦間の国際チャーター便の増便等についても具体化を進めたいと考えています。

北朝鮮に関しては、引き続き対話と圧力の基本方針のもと、日朝平壌宣言に則って諸懸案の包括的な解決を図るべく粘り強く取り組んでいく考えです。拉致問題は、国民の生命と安全に関わる重大な問題です。昨年末、これまでの一連の北朝鮮の不誠実な対応について、政府は、北朝鮮側に対し、誠に遺憾である旨厳重に抗議した上で、迅速かつ誠実な回答がない場合には厳しい対応をとる方針であることを通告し、生存者の帰国と真相の究明に向けた速やかな対応を求めているところです。また、我が国の安全保障にも直結し得る北朝鮮の核やミサイルをめぐる問題については、具体的進展の見られない現在の膠着状態を解消すべく、六者会合の早期開催を目指し、本件問題の解決に向けて全力を注いでいく考えです。

ロシアとの関係では、本年は日露修好150周年に当たりますが、戦後60年を経た今日に至っても領土問題をめぐって双方の主張が未だ平行線を辿っている現状を打破することが必要です。先般の私とラヴロフ外相との会談では、両国の立場の隔たりを埋めるため真剣な話し合いを続けていくことで意見が一致しました。引き続き、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するとの基本方針のもと、精力的に交渉を進めるとともに、幅広い分野で両国間の協力を進め、プーチン大統領の訪日及びその後の交渉に繋げていきたいと考えています。

(中東地域の平和と安定への取組)

中東地域は、我が国の国益にとって戦略的に重要であり、その平和と安定に向けた協力を一層進めていくことは、我が国外交の重要な課題です。今月末イラクにおいて国民議会の選挙が行われる予定ですが、イラクがイラク人自身の手で新しい民主主義国家として復興を果たせるよう、国際社会と協力しつつ、昨年末に派遣延長を決定した自衛隊による人的貢献とODAによる支援を車の両輪として引き続き復興支援を進めていく考えです。

中東和平問題については、先般の選挙で選出されたアッバース・パレスチナ自治政府長官及び新たに成立したイスラエル連立政権のもとで和平プロセスを前進させる歴史的な機会が存在しています。私は、先般のイスラエル及びパレスチナ自治区訪問で、双方の関係者にロードマップに沿った和平努力を働きかけるとともに、我が国が積極的役割を果たす用意がある旨伝えてきたところです。

更に、着実に成果が出ているアフガニスタンの復興についても、引き続き平和構築の努力をNGOや国際機関等とも協力しながら継続していく考えです。

(開発問題とアフリカ支援)

本年は、G8サミットや国連ミレニアム宣言のレビューに関する国連サミットで開発問題に大きな焦点が当てられます。我が国としても貧困削減を始めとする途上国の開発問題に積極的に取り組む考えであり、その際、効率的かつ戦略的にODAを実施し、諸課題の解決に尽力いたします。

中でも、アフリカ支援については、これまでも、アフリカ問題の解決なくして世界の安定と繁栄なしとの考えのもと、我が国独自のTICAD(アフリカ開発会議)プロセスを通じて取り組んでまいりました。アフリカの年と言われる本年、政府としては、アフリカ連合等による自助努力を重視しつつ国連とも協力しながら、その発展に向け、さらに本腰を入れていく考えです。

(地球的規模の問題への取組)

エイズ等の感染症や環境問題といった地球的規模の問題は、特に途上国の発展にとって大きな阻害要因となっています。これらの問題には人間の安全保障の視点から取り組んでまいります。また、本年は、京都議定書が発効し、更にG8サミットでも気候変動が主要な議題となりますが、政府としては、同議定書に定められた温室効果ガス排出量のマイナス6%の削減を達成するとともに、すべての国が参加する共通ルールの構築に向けて努力してまいります。

(人身取引への対策の推進)

人身取引は、津波の被災国における子供たちの被害にも現れているとおり、極めて深刻な問題です。政府は、昨年12月に政府が決定した人身取引対策行動計画を踏まえつつ、その防止・撲滅と被害者保護に全力で取り組んでおり、その一環として、現在、国際組織犯罪防止条約の人身取引議定書の締結につき今国会で御承認を頂くべく、作業を行っております。

(国際社会の発展と繁栄のための取組)

国際社会が安定的かつ持続的に発展することは我が国の繁栄のための前提です。我が国は、国際社会における多角的自由貿易体制の維持・強化のため、12月に行われる香港閣僚会議の成功、ひいてはWTOドーハ・ラウンド交渉の最終合意に向けて尽力いたします。

経済連携の促進についても、現在交渉中のフィリピン、タイ、マレーシア、韓国に加え、ASEANやその他の東アジア諸国との将来の締結をも視野に入れつつ、積極的に取り組んでまいります。自由主義経済の理念のもと、我が国及び相手国の構造改革の推進に資するような形で、双方の市場や社会が更に開かれたものとなるよう一層努力していく考えです。

(軍縮・不拡散のための取組)

現下の不安定な安全保障環境において軍縮・不拡散体制の強化に努めることは、我が国の安全保障上重要です。特に、大量破壊兵器の拡散の問題に対処することは喫緊の課題であり、5月のNPT運用検討会議やG8サミット等も活用しつつ、積極的に取り組んでまいります。

(魅力ある日本の対外発信)

グローバル化の進展に伴い、今や世界中で日本人が様々な分野で活躍していることは極めて望ましいことです。政府としても、我が国の政策や文化、価値観、魅力等を積極的かつ効果的に対外発信し、これらを大いに活用して、幅と奥行きのある外交を展開していきたいと考えています。また、ビジット・ジャパン・キャンペーンを進めるとともに、本年開催される「愛・地球博」等も活かしつつ、市民レベルでの相互理解の増進に努めてまいります。

(対外情報収集・分析能力の強化)

我が国が、国際社会における様々な課題に迅速に対応しつつ、戦略的な外交を展開していくためには、優れた対外情報収集・分析能力が必要不可欠です。対外情報収集の機能と体制の在り方についても、大局的見地からその着実な強化を進めてまいります。

(結語)

内閣制度が発足した120年前、初めてグローバリズムの嵐に晒された明治政府は、国際社会の中で生き抜くために、経験もノウハウも情報も不十分の中で、あらゆる努力と工夫を重ねていました。

60年前、我が国は、未曾有の混乱の中から、厳しく険しい国際社会への復帰の道を歩み始めました。

今日、我が国が持てる力を発揮し、アジアに、世界に貢献するための新たなる60年の外交へ向けての環境は、先人達の苦難、苦悩の時代に比べれば遥かに恵まれております。「セルフ・ヘルプ(自助論)」で有名なスマイルズは「空高く飛ぼうとしない精神は、やがて地に墜ちる」と言っております。私は、国民の御理解をいただきつつ、創造的で志の高い外交を展開する決意です。国民の皆様と議員各位の御支援と御協力を心よりお願い申し上げます。

(3) 谷垣財務大臣の財政演説

平成17年度予算及び平成16年度補正予算の御審議に当たり、今後の財政政策等の基本的な考え方について所信を申し述べますとともに、予算の大要を御説明いたします。

(はじめに)

昨年来、度重なる大型台風や新潟県中越地震、スマトラ沖大地震及びインド洋津波などの自然災害が甚大な被害をもたらしております。ここに、亡くなられた方々とその御遺族に対し深く哀悼の意を表しますとともに、被災者の方々に心からお見舞い申し上げます。政府としては、今後とも被災地域の復旧等に向けて全力を挙げて取り組んでまいります。

(財政構造改革の基本的考え方)

我が国経済は、政府・民間双方の構造改革の取組により長きにわたった低迷を脱し、財政出動に頼ることなく、国内民間需要を中心に回復を続けております。こうした回復の動きを地域や中小企業にも広く浸透させ、持続可能なものとするため、構造改革を更に一層推進してまいります。また、デフレは緩やかながらも依然継続しており、その脱却を確実なものとするため、日本銀行と一体となって政策努力を強化してまいります。

一方で、財政の現状は、平成17年度末の公債残高が538兆円程度に達する見込みであるなど、非常に厳しい状況にあります。こうした状況が続きますと、経済の成長を阻害することになりかねません。

このため、持続可能な財政を構築することが重要な課題であります。今後とも、2010年代初頭の基礎的財政収支の黒字化を目指し、歳出・歳入両面からバランスのとれた財政構造改革を進めていく必要がありますが、これに取り組むに当たっては、次の3つの点を踏まえる必要があると考えております。

第1に、歳出面において、特に、社会保障制度の見直しが不可欠です。社会保障の給付と負担は、このままでは経済の伸びを大きく上回って増大していくと見込まれます。将来にわたり持続可能な制度を構築するには、年金、医療、介護等を総合的にとらえ、給付と負担の規模を国民経済の身の丈に合ったものとすることを目指す必要があります。あわせて、自助と公助の役割分担の見直しのほか、次世代の国民を育てていくことの大切さの再認識や高齢者を一律に弱者ととらえる考え方の見直しといった意識改革が重要であると考えております。

第2に、歳入面において、少子・高齢化やグローバル化等の大きな構造変化に対応し、あるべき税制を構築していかなければなりません。このため、これまでの政府・与党の方針を踏まえ、景気低迷時に講じた措置の見直しを含め、社会共通の費用を広く公平に分かち合うとともに、持続的な経済社会の活性化を実現するため、税制改革の具体化に取り組んでまいります。

第3に、持続的な財政の構築には、国・地方を通じて取り組んでいく必要があります。こうした観点から、国と地方のいわゆる三位一体の改革については、地方の権限と責任を拡大し、必要な行政サービスを地方自らの責任で選択できる幅を拡大するとともに、国・地方を通じた行政のスリム化を図ることが重要と考えております。

こうした財政構造改革の取組に対して国民の御理解を得るに当たっては、財政の現状を分かりやすく説明するとともに、事務・事業の民営化など行政改革を推進しつつ、徹底した歳出の見直しや予算の質の改善に取り組まなければならないと考えております。

(平成17年度予算及び税制改正の大要)

平成17年度予算及び税制改正におきましては、以上の認識のもと、歳出・歳入両面の改革に取り組むこととしております。

歳出面については、歳出改革路線を堅持・強化する方針のもと、聖域なき改革を行っております。

これにより、一般会計全体の予算規模は82兆1,829億円、一般歳出の規模は47兆2,829億円となり、一般歳出は3年ぶりに前年度の水準以下に抑制いたしました。

また、国家公務員の定員については、治安など真に必要な部門に適切に配置しつつ、行政機関職員全体として、728人の縮減を図っております。

次に、主要な経費について申し述べます。

社会保障関係費については、介護保険につき、制度間の重複の是正や在宅と施設の利用者負担の公平性の観点から施設における給付を見直す等の取組を行っております。

公共事業関係費については、全体として抑制しつつ、我が国の競争力の向上に直結する投資等への重点化を行っております。

文教及び科学振興費については、教育・研究の質的向上を目指した改革を進めるとともに、競争的研究資金の拡充等により、予算の質の向上を図っております。

防衛関係費については、思い切った削減を行う中で、新たな防衛計画の大綱及び中期防衛力整備計画を踏まえ、テロや弾道ミサイル等の新たな脅威への対応等に重点化を図りつつ、効率的で節度ある防衛力整備を行っております。

農林水産関係予算については、全体として抑制しつつ、構造改革の加速や食の安全・安心の確保に向けた重点化を行っております。

経済協力費については、戦略的かつ効率的な援助の実施に必要な経費を確保しつつ、人間の安全保障の推進等への重点化を行っております。

エネルギー対策費については、安定供給確保のための施策や省エネルギー対策等の地球温暖化問題への対応等を着実に進めております。

中小企業対策費については、新事業への挑戦や経営革新の推進を図るとともに、円滑な資金供給を確保するための基盤強化等を行っております。

治安関係予算については、地方警察官の増員を始め、安全で安心して暮らせる社会の実現に向けた重点化を図っております。

また、三位一体の改革については、国庫補助負担金について、税源移譲に結びつく改革のほか、スリム化を図ること等により、1兆8,000億円程度の改革を行っております。この結果を受け、所得譲与税による税源移譲を行うこと等により地方に対する財源措置を講じております。更に、地方交付税について、地方歳出の見直しを行い、一般会計における総額を抑制すると同時に、地方に配分される総額について、地方の財政運営に配慮し、前年度と同規模を確保しております。今般の見直しの結果、地方の公債依存度、基礎的財政収支等の財政指標は大幅に改善することとなります。

この他、特別会計については、事務事業の見直し等の視点から着実な改革を進めております。また、政策評価や決算の反映など予算の質の向上に取り組んでおります。

歳入面については、三位一体の改革との関係で、平成18年度に国・地方を通ずる個人所得課税の抜本的見直しが必要となることを展望しつつ、平成11年以降、景気対策のための臨時異例の措置として継続されてきた定率減税について、導入時と比較した経済状況の改善を踏まえ、その規模を2分の1に縮減することとしております。あわせて、住宅税制、金融・証券税制、国際課税、中小企業関係税制等について、経済の活性化や公平な課税の確保等の観点から適切な措置を講じることとしております。

これにより、租税等の収入は44兆70億円を見込んでおります。また、その他収入は3兆7,859億円を見込んでおります。

以上、歳出・歳入両面における取組の結果、新規国債については、発行予定額を4年ぶりに前年度よりも減額し、34兆3,900億円となり、一般会計の基礎的財政収支も昨年度に続き改善するなど、財政規律堅持の姿勢を明確にすることができました。

また、国債残高が多額に上り、今後も大量発行が見込まれる中、国債管理政策を財政運営と一体として適切に運営していく重要性が益々高まってきております。これまでも、国債市場特別参加者制度や新商品の導入等各種施策の実施に鋭意取り組んでまいりましたが、今後とも、国債の確実かつ円滑な消化、中長期的な調達コストの抑制を図るため、市場のニーズや動向等を踏まえた国債の発行、商品性・保有者層の多様化等、国債管理政策の一層の充実に努めてまいります。

更に、財政投融資については、全ての財投事業について、財務の健全性等の総点検を行い、財政投融資残高において大きなウェイトを占める住宅金融公庫について、民間で取り組んでいる直接融資を廃止し、都市再生機構について、ニュータウン事業から撤退するなどの見直しを実施しております。これにより、将来の財務上の懸念を解消し、財投事業の健全性を一層確かなものとしております。

平成17年度財政投融資計画については、特殊法人等整理合理化計画等を反映しつつ、事業の重点化・効率化に努め、総額を17兆1,518億円に抑制しております。

(平成16年度補正予算(第1号、特第1号及び機第1号)の大要)

次に、平成16年度補正予算について申し述べます。

平成16年度補正予算については、大型台風や新潟県中越地震の被災地における復旧のための経費等として災害対策費を1兆3,618億円計上しております。この他、歳出面においては、義務的経費の追加を行うとともに、国債整理基金への繰入及び地方交付税交付金等を計上する一方、既定経費の節減等を行っております。

歳入面においては、国債を増発することなく、税収及び税外収入の増加を見込むとともに、前年度の決算剰余金を計上しております。

以上の結果、平成16年度補正後予算の総額は、当初予算に対し歳出・歳入とも4兆7,678億円増加し、86兆8,787億円となっております。

また、特別会計予算及び政府関係機関予算についても所要の補正を行っております。

財政投融資計画については、災害復旧経費等で総額54億円を追加することとしております。

(世界経済の安定と発展への貢献)

これらとともに、国際機関やG7、アジア諸国等と協力し、世界経済の安定と発展に貢献してまいります。特に、我が国と密接な関係を有するアジアにおいて、通貨危機の予防・対処のための域内の枠組みであるチェンマイ・イニシアティブの見直しや、アジアの貯蓄を域内の投資に活用するためのアジア債券市場育成イニシアティブの推進等に取り組んでまいります。また、アジア域内の投資交流を活発化させる観点から、租税条約の改定に取り組んでまいります。

為替相場については、経済の基礎的条件を反映し安定的に推移することが重要であり、今後とも、その動向を注視し、必要に応じて適切に対処してまいります。

更に、WTO新ラウンド交渉やASEAN、韓国等との経済連携交渉に努力してまいります。こうした交渉においては、税関手続の簡素化や国際的調和を含む貿易円滑化にも取り組んでまいります。平成17年度関税改正においては、税関における水際取締りの強化と通関手続の一層の迅速化等を図ることとしております。

以上、平成17年度予算及び平成16年度補正予算の大要等について御説明いたしました。関係法律案とともに御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。

(結び)

グローバル化時代において、我が国が持続的に発展していくためには、日本の魅力を高め、世界から評価されることが重要であると考えますが、財政の持続可能性が危ぶまれるようでは、その実現は困難であります。

 来年度予算は、持続可能な財政の構築に向けた一里塚になったものと考えておりますが、公債依存度はなお41.8%に及ぶなど、財政は依然大変厳しい状況にあります。財政の現実を国民に粘り強くお伝えし、「公(こう)」に対し何をどこまで求め、そして、どう負担し支え合うか、議論を喚起しながら、国民各層にある問題意識や不安を受け止め、様々な工夫を重ねていかなければならないと考えております。

国民各位の御理解と御協力を切にお願いする次第であります。

(4) 竹中経済財政政策担当大臣の経済演説

(はじめに)

経済財政政策担当大臣として、その所信を申し述べます。

(もはや『バブル後』ではない)

小泉内閣が発足した4年前、日本経済は厳しいマイナス成長の中にありました。膨大な不良債権の存在から金融システムへの不安は募り、一方で財政拡大に過度に依存した従前の経済運営の行き詰まりから、国民の先行き不安が大きく高まっていたのです。

こうした中で小泉内閣は、改革なくして成長なしとの信念のもと、各般の構造改革に取り組んでまいりました。とりわけ当初の数年間を集中調整期間として位置づけ、不良債権処理や財政赤字拡大の阻止に象徴されるような、過去の負の遺産の解消に全力を挙げることを目指したのです。

この間多くの反対意見が寄せられたにもかかわらず、現実に構造改革は着実な成果を上げつつあります。昨年は、日本経済が長い低迷から脱し、その先にある成長の姿が見え始めた年となりました。景気拡大期間は既に3年に及び戦後の平均を上回っています。平成16年度は2.1%程度、17年度は1.6%程度の実質成長が見込まれるなど、財政を着実に健全化しながら民間需要中心の景気回復が実現されます。デフレ克服に向けた動きも着実に進みつつあります。

私は、今日の状況はちょうど50年前の日本経済に似ていると考えます。終戦のショックから間もない昭和30年、日本経済はおおむね戦前の経済水準を回復し戦争の負の遺産と決別しました。その翌年の経済白書は「もはや戦後ではない」と宣言しましたが、私は不良債権問題の終結が見えた今、もはやバブル後ではないと明確に申し上げたいと思います。平成16年度末までに主要行の不良債権比率を半減するという目標は、その達成が確実に見込まれます。企業部門でも、リストラの完了によって過剰債務や過剰雇用が解消し、収益力の改善が進んでいます。

同時に、バブル後の長期低迷を脱した今、改めて実感されることがあります。それは、21世紀の日本の新しい成長基盤をつくる道のりは依然極めて厳しいものであるということです。負の遺産を清算するための守りの改革から、新しい成長の姿をつくるための攻めの改革へと、まさにこれからが日本経済の正念場と言えましょう。

(かけがえのない2年が始まる)

私は、2年後の平成19年という年が、日本経済にとって重要な節目の年になると考えています。それゆえ、そこに至るこの2年間は、かけがえのない2年間と言わねばなりません。

平成19年には、日本全体の人口が減少に転じ、いよいよ人口減少社会が現実のものとなります。財政面では、2010年代初頭の基礎的財政収支の黒字化に向けて、平成19年度から次の段階の新たな財政収支改善努力を開始しなければなりません。すなわち、さらなる国民負担が必要かどうか、明確な選択をしなければならないのです。また平成19年度は、明治以来の大改革である郵政民営化が、いよいよスタートする予定の年でもあります。

基本方針2004では、平成19年度までのかけがえのない2年間を重点強化期間と位置づけました。足腰の強いそして変化に柔軟に対応できる経済構造をつくるべく、将来の成長戦略を明確にした上で、攻めの改革に取り組まなければなりません。

(攻めの改革による経済活性化)

かけがえのない2年間の初年に当たる平成17年、私は以下の3つの方針で経済を運営し、また経済財政諮問会議での検討を進めてまいります。そうすることによって、日本経済は現状を超えて、さらに持続的な経済発展を実現できるものと考えます。

その第1は、攻めの改革を具体的な形にすることを通じ、一層の経済活性化を実現することです。攻めの改革の要諦は、民間企業の力、地域の力、そして個々人の力を最大限に引き出す環境を整えることにあります。

そのためにも、民間でできることは民間で行うことは極めて重要であります。そしてその象徴となるのが、郵政民営化です。郵政民営化は、日本の政府と民間がともに21世紀型の市場経済システムに移行することを示す象徴であり、私はその責務を誠心誠意果たしてまいりたいと思います。

郵政民営化については、昨年9月10日に基本方針を閣議決定し、現在それに基づいて、より詳細な制度設計と法案作成を行っています。真に国民のためになる民営化を目指し、与党とも十分に調整を行いながら、関係法案を今国会に提出し、その確実な成立を期してまいります。同時に、これに関連する政策金融の改革、国債管理の新しい在り方等についても、経済財政諮問会議の重要な検討課題と考えます。

また、攻めの改革としては、市場化テストを含む規制改革の一層の推進、農業、人の移動、サービス部門の構造改革によるアジア等との経済連携の加速、三位一体の改革と地域再生の推進、教育・雇用と人間力強化についても、国民に結果が見えるよう内閣一丸となって取り組んでまいります。

(持続可能なシステムを構築)

第2は、社会の諸制度の持続可能性について、国民の信頼感をより高めるための改革を進めることです。

その中心的課題として、2010年代初頭に基礎的財政収支を黒字化するための道筋を明確化することは極めて重要です。幸いにして、2年連続の着実な基礎的財政収支改善と民需主導の景気回復が両立する見込みですが、さきに述べたように平成19年度にはさらなる国民負担が必要かどうかも含め、財政の在り方についての国民的選択が求められます。本年はこうしたことを念頭に、経済財政諮問会議でも歳入・歳出一体となった財政改革の検討を開始いたします。

更に社会保障について、将来にわたり持続可能で、若い世代からも高い信頼を得られるような制度の確立に向けて、改革を進めることが必要です。このため、年金、医療、介護、生活保護等、社会保障制度全般の一体的見直しを進めます。サービスの質を確保し、かつ経済力に見合った社会保障給付とするための具体的仕組みを早急に検討いたします。また、社会保険庁改革についても、その推移を経済財政諮問会議で注視してまいります。

(政策プロセスの透明化と説明責任)

第3は、政策プロセスの一層の透明化と説明責任の強化を行うことです。

過去4年間、毎年6月には政策全般についての骨太の方針を明らかにするとともに、11月ごろにはそれに基づく予算編成の基本方針を示すことによって、オープンな予算編成プロセスを定着させてきました。更には「予算の全体像」や「改革と展望」を公表することによって、マクロ経済と財政の整合的な運営を実現いたしました。

こうした中で今、改革の先にどのような経済社会の姿が描けるのか、人口が減少する社会にあって我が国の成長力はどうなるのか、長期的なビジョンを提示することが極めて重要であると考えます。

このため、本年春ごろを目途に、日本21世紀ビジョンを取りまとめることとしています。このビジョンが国民に共有されることによって、不透明感が払拭され、民間の経済活動がより活性化することを期待するものです。

以上に加え、国民の安全・安心の基盤を整備するために、消費者政策の強化とNPOの活動基盤の整備に引き続き努めます。また、個人情報保護法の本年4月からの全面施行に向けて取り組んでまいります。

(むすび)

4年前、我々が財政の健全化と景気回復を両立させることを打ち出したとき、多方面から厳しい反対意見が示されました。しかし我々は、約束どおりそれを成し遂げました。同様に不良債権を2年半で半減させると述べたとき、多方面から今はやるべきではない、達成は不可能だなど、様々な反対意見が示されました。しかし我々は、約束どおりそれを成し遂げました。

断固たる決意と周到な準備をもって小泉改革をさらに進めることこそが、日本経済のさらなる発展を可能にする唯一の道です。私は、将来を決して悲観することなく、安易に楽観することもなく、見え始めた新しい成長の姿をより確かな強いものとし、さらに地域・中小企業に裾野を広げていくことを、粘り強く目指してまいります。

国民の皆様、議員各位の御理解と御協力をお願いし、所信の表明といたします。

(5) 国務大臣の演説に対する質疑要旨

1月21日の国務大臣の演説に対する質疑は、24日に岡田克也君(民主)及び武部勤君(自民)が行い、25日には小宮山洋子君(民主)、野田佳彦君(民主)、神崎武法君(公明)、穀田恵二君(共産)及び横光克彦君(社民)が行った。

質疑の主なものは、次のとおりである。

第1に、構造改革(郵政民営化、公務員制度、特殊法人)について、「[1]郵政民営化に対する総理の考え、[2]公務員制度改革への取組、[3]特殊法人改革の必要性、[4]社会保険庁改革への取組、[5]構造改革の成果」等の質疑に対して、「[1]郵政民営化は官から民への構造改革の本丸であり、郵貯・簡保資金を市場経済の中に吸収統合し、経営自由化により効率的に活用するとともに、郵便局ネットワークという貴重な国民の資源を最大限有効活用すべきである、[2]省庁間人事交流の促進、独立行政法人職員の非公務員化等を実施してきたが、今後も新たな人事制度の構築に向け、関係者間の調整を進め、能力・実績主義の人事評価を試験的に実施していく、[3]財投計画の編成に当たっては、民間準拠の財務諸表も参考にし、住宅金融公庫や都市再生機構について事業の抜本的見直しを行う等、特殊法人改革に着実に対応してきた。今後とも、民業補完性の精査等により、対象事業の一層の重点化、効率化を図る、[4]社会保険庁については、予算執行の在り方等、事業運営に関するさまざまな指摘があり、既に業務改革を進めている。また、組織の在り方については、現在、内閣官房長官のもとに置かれた「社会保険庁の在り方に関する有識者会議」において、外部委託の推進による事業の民営化や組織形態の見直し等、幅広い議論をしており、組織の抜本的な改革を行っていく、[5]金融面では、不良債権処理の加速等により、この2年半で主要行の不良債権残高は15兆円減り、負の遺産整理にめどをつけ、税制面では、平成15年度税制改正で実施した先行減税が研究開発投資の増加など、経済活性化に寄与し、規制面では、構造改革特区を誕生させ、最低資本金特例により約2万社の起業を実現し、民間と一体となり都市再生によるまちづくりを活性化し、歳出面では、歳出規模を実質的に前年度水準以下に抑制し、めりはりのある大胆な予算配分を行い、2年連続の基礎的財政収支の改善を見込むなどの成果が見られる」旨の答弁があった。

第2に、社会保障制度改革(年金、介護)について、「[1]年金制度の抜本改革について集中的に議論する意欲の有無、[2]年金制度の抜本改革の必要性に関する基本認識の有無、[3]社会保障制度全体の中心的な財源として消費税活用の必要性、[4]国民年金を含めた年金制度の一元化と納税者番号制度の導入に向けた検討の必要性、[5]現在の家事代行サービス利用者が予防給付に認定されることにより家事援助を受けられなくなるおそれ、[6]施設入所者の利用者負担増がサービスの利用制限につながるおそれ、[7]障害児や若年障害者も介護サービスを利用できるよう介護保険の被保険者と受給者の範囲を拡大する必要性」等の質疑に対して、「[1]政府のみならず与野党が立場を越え、年金制度を始めとした社会保障制度の論議に国民的立場から取り組むことは政治の責任であり、国会において集中的な議論を早期に開始してもらいたい、[2]年金制度のみならず医療、介護等を含めた社会保障制度全体について、税や保険料の負担と給付の在り方を含めた一体的見直しを図る必要があり、年金制度についても年金一元化を含めた見直しが必要、[3]社会保障制度全般について幅広く議論する中で、税制については消費税の在り方も含め、国民的な議論を進めていく必要がある、[4]年金制度一元化については、まずは厚生年金と共済年金の一元化を進めるべきであり、国民年金を含めた公的年金制度の一元化については、納税者番号制度などの諸条件の在り方について早急に検討する必要がある、[5]介護予防サービスは高齢者の自立した生活を支援するため、効果的なサービスを提供することが重要であり、家事援助等の既存サービスの内容についても介護予防効果がより高いものに見直していく、[6]在宅と施設利用者の負担の不均衡是正等の観点からの見直しであるが、低所得者に対しては所得水準に応じた補足給付を創設し、施設利用が困難になることのないよう配慮する、[7]介護保険制度の普遍化の可否を含め、国民的合意形成や具体的制度改革案について、更に検討を進めていくことが必要である」旨の答弁があった

第3に、経済(地域経済、中小企業)、金融政策について、「[1]我が国の経済情勢・運営の在り方、[2]中小企業支援策、[3]中小企業対策費と個人保証の問題、[4]金融犯罪への対処方針、[5]日銀の国債買入れ額の増大、[6]金融サービス全般を含む利用者保護法の整備、[7]日本版SECの創設、[8]税制改正や各種制度改正による負担増が景気に与える影響」等の質疑に対して、「[1]経済をめぐる情勢は、依然として地域ごとに差があるため、改革の成果を地域や中小企業にも浸透させるとともに、引き続き民間需要主導の持続的な経済成長を図る、[2]中小企業への資金供給の円滑化を支援するほか、技術開発については、異なる業種の企業と連携して新事業に挑戦する中小企業等を総合的に支援する法律の制定を目指す、[3]平成17年度予算では、新事業に挑戦する中小企業の支援策等に重点化し、前年度とほぼ同額の中小企業対策費を計上している。政府系金融機関の貸付けは、経営者の個人保証を免除する制度等により、保証人に過度に依存しない融資の拡大を図る、[4]消費者保護制度の強化は重要な課題であるため、投資サービス法の検討を精力的に進め、消費者団体訴訟制度についても、国民生活審議会での検討を踏まえ、法制化に鋭意取り組む、[5]国債の市中買い入れは、金融政策上の判断に基づき、金融情勢等に応じて日銀が適切に行っており、政府としても、歳出歳入両面から財政構造改革を進める必要があるため、現状の買入れには日銀の独立性の観点からの問題はない、[6]金融の規制緩和推進のため、銀行、保険、証券等の各業法において整合的な整備を進め、まずは証券の投資家に着目した横断的な法制である投資サービス法の制定に向け検討を行う、[7]証券行政を銀行・保険行政から切り離すという提案だが、銀行、証券、保険各分野の業態横断的な所管のためには、金融行政当局の機能的編成で足りる。有価証券報告書の不適切な記載の事例については、証券市場の信頼性確保に向け最大限の対応をとる、[8]税制改正や各種制度改正に当たり、民間部門に過度の負担が生じないよう配慮した結果、景気に対するマクロ的な影響は大きくないと考えるが、財政健全化と景気回復を両立させるよう努めていく」旨の答弁があった。

第4に、財政、税制改革について、「[1]国債発行額の公約、[2]特別会計及び特定財源の見直し、[3]財政健全化の道筋、[4]予算改革、[5]定率減税の見直し等各種の負担増が景気に与える影響」等の質疑に対して、「[1]平成14年度当初予算の編成に当たっては、国債発行額30兆円の目標を達成した。平成17年度予算編成においても、一般歳出を3年ぶりに前年度以下に抑制し、4年ぶりに新規国債発行額を減額するなど、引き続き財政の規律、節度を確保するとの基本精神を受け継いでおり、財政構造改革を推進していく考えに変わりはない、[2]すべての特別会計を対象として事務事業等の見直しを徹底的に進めている。また特定財源についても、財政資金の有効な活用を図るとの観点から、道路特定財源の使途の拡大などの見直しを幅広く検討していく、[3]持続可能な財政構造の確立に向け、2010年代初頭には、政策的な支出を新たな借金に頼らずにその年度の税収等で賄えるよう、歳出歳入の両面から財政構造改革を進めていく、[4]予算編成に当たって、これまでの予算の執行や成果を評価、検証し、政策評価の予算への活用、反映に努めること等を通じて予算の質の向上を図っていく、[5]定率減税の縮減等の税制改正等については、民間部門に過度の負担が生じないよう配慮した。結果として景気に対するマクロ的な影響は大きくないものと考えている。17年度経済見通しにおいても、実質1.6%、名目1.3%の成長を見込んでいる」旨の答弁があった。

第5に、外交政策について、「[1]『世界の中の日米同盟』の具体的意味、[2]第2期ブッシュ政権に対する基本姿勢、[3]国連安保理常任理事国入りで目指す理念、決意、[4]日中関係、[5]日ロ関係」等の質疑に対して、「[1]『世界の中の日米同盟』とは、日米両国が、政治、安全保障、経済を含む幅広い分野において、世界のさまざまな問題の解決に世界の各国と協調しながら取り組んでいく協力関係を意味している、[2]強固な信頼関係のもとで、言うべきことを言い、やるべきことをやってきているが、今後とも、あらゆるレベルで率直かつ緊密に政策協調を行いながら、世界の諸問題に世界の国々と協調しながら取り組んでいく、[3]我が国が安保理常任理事国入りした場合、安保理の意思決定に積極的に参画し、国際平和と安全維持に一層の役割を果たしていく、[4]昨年の日中首脳会談で、日中関係は極めて重要であるとの認識を共有し、未来志向の協力を発展させていくことで一致した。意見が異なる個別の問題についても対話を深め、大局的な観点から幅広い分野における協力を強化していく、[5]北方四島の帰属問題を解決して平和条約を締結するという基本方針のもと、精力的に交渉を進めるとともに、日ロ行動計画に従って幅広い分野で協力を進め、プーチン大統領の訪日及びその後の交渉につなげたい」旨の答弁があった。

第6に、イラク問題について、「[1]イラク戦争を無条件に支持したことに対する現在の所感、[2]サマーワを視察した際の所感、[3]オランダ軍撤退後の自衛隊の安全確保策、[4]イラクからの自衛隊撤退」等の質疑に対して、「[1]イラクは、累次の国連安保理決議に違反し続け、国際社会の真摯な努力にこたえてこなかった。このような認識のもとで我が国は安保理決議に基づきとられた行動を支持したのであり、今でも正しかったと思っている、[2]自衛隊の人道復興支援活動がサマーワの人々の共感を得ており、現地部隊の安全は、高度のレベルで確保されていることを確認した。今後も隊員の安全確保に万全を期していく、[3]イラク暫定政府のほか、多国籍軍の中でイラク南東部に責任を有する英国が検討を行っている。英国は、我が国と引き続き協力していく方針を表明しており、現地の治安情勢の安定化に貢献してもらえるものと考えている、[4]現時点で非戦闘地域の要件を満たさなくなったとは考えていない。今後も、適切な警戒や危険回避の措置をとり、隊員の安全確保に万全を期しつつ、自衛隊の活動を継続していく」旨の答弁があった。

第7に、北朝鮮問題について、「[1]北朝鮮に対する経済制裁措置の発動に関する総理の基本方針、[2]拉致問題解決の基本姿勢及び外交努力」等の質疑に対して、「[1]政府としては、対話と圧力という考えのもと、北朝鮮側から拉致問題に関する迅速かつ納得のいく対応を得るため、最も効果的な政策を検討し推進していく。その際、経済制裁は可能な一つの手段であるとは考えているが、まず制裁ありきということではない、[2]拉致問題解決のためには、北朝鮮側に強く働きかけるだけではなく、国際社会の理解と支持が重要との考えから、従来より、国連人権委員会を含め、種々の二国間、多国間の場で拉致問題解決の重要性を指摘してきており、今後も、諸外国の理解と協力を得ながら、問題解決に全力で取り組んでいく」旨の答弁があった。

第8に、政治資金問題等について、「[1]1億円献金問題の証人喚問、[2]いわゆる迂回献金等を禁止する政治資金規正法の改正、[3]清和政策研究会の政治資金収支報告書に関する新聞報道、[4]NHKの番組内容変更問題」等の質疑に対して、「[1]既に政治倫理審査会において橋本龍太郎氏から説明がなされており、更に国会における関係者の証言が必要かどうかについては、国会において決めるべき問題である、[2]与党が提出した同法改正案は政治資金の一層の透明性を確保しようとするものであると承知しており、迂回献金禁止の条項を設けることによって実効性が期待できるか等、各党各会派で御議論いただきたい、[3]同研究会では、政治資金に関しては政治資金規正法にのっとって適正に処理していると聞いており、同法上問題があるとは承知していない、[4]政治的圧力を受けて番組の内容が変更された事実はないと、NHK自身が述べており、本件は、憲法第21条第2項の検閲に当たらず、放送法第3条の規定にも抵触しないものと承知している」旨の答弁があった。

第9に、少子・高齢化対策について、「[1]少子化対策、[2]若年者の雇用問題、[3]子ども家庭省の創設、[4]子育てに係る経済的負担の軽減策、[5]保育対策、[6]小児救急医療の充実、[7]育児休業・短時間勤務制度の活用や再就職支援の充実、[8]高齢者雇用」等の質疑に対して、「[1]昨年末に策定された子ども・子育て応援プランに基づき、待機児童ゼロ作戦、育児時間を確保するための働き方の見直し、地域の子育て支援などの施策を着実に実施し、社会全体で全力を挙げて少子化対策に取り組む、[2]昨年12月に関係5大臣で若者の自立・挑戦のアクションプランを取りまとめ、若年者の働く意欲や能力を高めるための総合的な対策を講じ、若年者が将来に希望を持てる社会の実現に取り組む、[3]全閣僚参加の少子化社会対策会議を中心に次世代育成支援に取り組んでおり、これにより各種施策を総合的に推進できているものと考える、[4]社会保障給付の高齢者関係給付を見直し、将来世代の負担増を抑えるとともに、次世代育成支援推進を図る。出産費用の負担については、医療保険制度の基本的性格や財政状況等を踏まえ、医療制度改革の中で検討していく、[5]幼稚園と保育所の連携の一層の促進、就学前の教育・保育を一体としてとらえた一貫した総合施設の試行事業を来年度から実施する、[6]400余りの小児救急医療圏で小児救急医療体制を整備し、適切に対応できる社会を目指す、育児休業等を取得できる職場環境の整備、男性の子育て参加促進、子育て期間中の勤務時間短縮、ハローワークにおける再就職支援等の普及促進に向けた取組を進める、[8]改正高齢者雇用安定法に基づき、年金支給開始年齢の引上げに合わせ、65歳までの雇用の確保措置の段階的な導入、募集・採用時に年齢制限を設定する場合におけるその理由の提示を事業主に指導するなど、高齢者雇用の支援に取り組む」旨の答弁があった。

第10に教育政策について、「[1]教育における国と地方の役割分担、[2]教員養成の改革及び教員の評価システムの確立、[3]教育基本法の改正、[4]学習指導要領の見直しの方向性」等の質疑に対して、「[1]教育の地方分権を進めることは重要であり、特区制度を活用した地域の提案を活かした学校運営や、保護者や地域住民が一定の権限を持って学校運営に参画するコミュニティースクールの設置に取り組んでいる。国が全国的な教育水準の確保、教育の機会均等の責務を担いつつ、各学校が創意工夫を行えるように市町村や学校の裁量を拡大していきたい、[2]質の高い教員の確保に向けて中央教育審議会において、教員養成及び教員免許制度の改革について検討を進めている。教員評価システムの確立とあわせて教員養成の抜本的改革に努める、[3]中央教育審議会の答申や与党における議論を踏まえて、引き続き国民的な議論を深め、教育基本法の速やかな改正に向けて取り組む、[4]国際的な学力調査の結果や、子どもたちの実態、社会経済状況の変化等を踏まえ、近く、中央教育審議会に対し具体的な検討課題を示した上で、現行学習指導要領の評価、検証等を行い、精力的に審議いただきたいと考えている」旨の答弁があった。

第11に治安対策について、「[1]性犯罪対策、[2]安全、安心なまちづくりの推進、[3]振り込め詐欺対策、[4]偽造キャッシュカード犯罪対策」等の質疑に対して、「[1]性犯罪者の住所に係る情報を再犯防止などの目的で有効活用できる仕組みの確立を目指す。刑務所での性犯罪者に対する矯正教育を充実するため行動科学や心理学などを導入した体系的な処遇プログラムの実施、受刑者に改善指導を受けることの義務づけを法整備していく、[2]警察官の増員や退職警察官を交番相談員として配置して空き交番の解消に全力を挙げる。関係機関と連携し地域をあげての住民の自主的防犯活動を支援する施策を推進して、安全で安心なまちづくりに努める、[3]金融機関本人確認法を活用し取締り強化を図っている。また広報啓発に努め、金融機関に対し防止対策の充実を働きかける、[4]金融機関に利用者保護の観点から適切な対応を要請してきたが、今後更に利用者保護の実効性を確保し得る適切な対応を検討するよう要請する」旨の答弁があった。

第12に、災害対策・被災地復興支援について、「[1]住宅本体の再建を対象に加えるための被災者生活再建支援法の改正、[2]今後の我が国の災害対策、[3]スマトラ沖大地震・大津波災害への我が国の支援、[4]障害者・高齢者の避難マニュアルの作成、[5]災害ボランティア基金設置、[6]阪神・淡路大震災被災者支援」等の質疑に対して、「[1]行政は公共サービスの回復に重点を置くべきであるとの立場から、個人の住宅本体の再建に対する公費支援については慎重な考え方や、住宅の耐震改修、地震保険の加入等の自助努力を促進する方策をまず充実させるべきとの考え方があるため、さまざまな角度からなお議論を深める必要がある、[2]昨年の豪雨、台風、新潟県中越地震の対応については、速やかに激甚災害の指定を行ったほか、災害復旧費等の補正予算への計上など、総力を挙げて対応してきた。今後とも、情報伝達、高齢者の救援が迅速になされるよう、応急対策の更なる強化を図り、中小河川の整備や水防体制の見直しなど、水害、土砂対策を充実させて、災害に強い国づくりを進める、[3]被災した各国に対して、資金、技術、知識、人的貢献のそれぞれの観点から、緊急支援及び復旧復興の両面で最大限の支援を行い、関係国や国際機関と協力しながら、津波早期警戒メカニズムの構築に向けた国際的努力に積極的に貢献する、[4]障害者や高齢者の避難支援対策については、ガイドラインを今年度内に取りまとめるが、特に、退避情報の伝達体制の整備や、要支援者ごとに避難支援者を定めた災害時避難マニュアルの策定などを自治体に働きかける、[5]引き続き、関係者の意見を聞きつつ、ボランティア活動の環境整備に力を入れていく、[6]地域経済の活性化や被災高齢者の問題など、被災者の抱える課題もそれぞれ個別多様化しているが、兵庫県を初め地元自治体から被災地域の実情を聞きながら、引き続き援助を必要とする方については必要な措置を講じるなど、適切に対応したい」旨の答弁があった。

その他、農業政策、憲法改正問題等について、質疑が行われた。

2 主な議案等の審議

年月日 議案等
平成17年
1月21日
○スマトラ沖大地震・大津波災害に際し国際的支援活動において我が国が果たすべき役割に関する決議案(川崎二郎君外11名提出)〈可決〉

趣旨弁明

川崎二郎君(自民)

○国務大臣の演説
  • 小泉内閣総理大臣の施政方針演説
  • 町村外務大臣の外交演説
  • 谷垣財務大臣の財政演説
  • 竹中経済財政政策担当大臣の経済演説
1月24日 ○国務大臣の演説に対する質疑

質疑

岡田克也君(民主)、武部勤君(自民)

答弁

小泉内閣総理大臣、大野防衛庁長官、竹中経済財政政策担当大臣

1月25日 ○国務大臣の演説に対する質疑

質疑

小宮山洋子君(民主)、野田佳彦君(民主)、神崎武法君(公明)、穀田恵二君(共産)、横光克彦君(社民)

答弁

小泉内閣総理大臣、北側国土交通大臣、尾辻厚生労働大臣、中山文部科学大臣、竹中経済財政政策担当大臣、谷垣財務大臣

1月28日 ○平成16年度一般会計補正予算(第1号)〈可決〉

○平成16年度特別会計補正予算(特第1号)〈可決〉

○平成16年度政府関係機関補正予算(機第1号)〈可決〉

討論(以上3件)

松岡利勝君(自民)、佐々木秀典君(民主)、漆原良夫君(公明)
2月15日 ○発言・趣旨説明
  • 平成17年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案(内閣提出)
  • 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
  • 平成17年度地方財政計画
  • 地方税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
  • 地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
発言・説明

谷垣財務大臣、麻生総務大臣

質疑

萩生田光一君(自民)、中川正春君(民主)、平岡秀夫君(民主)、寺田学君(民主)、河合正智君(公明)

答弁

小泉内閣総理大臣、谷垣財務大臣、中川経済産業大臣、麻生総務大臣
2月22日 ○日露修好150周年に当たり、日露関係の飛躍的発展に関する決議案(川崎二郎君外21名提出)〈可決〉

趣旨弁明

北村直人君(自民)

○趣旨説明
  • 国の補助金等の整理及び合理化等に伴う義務教育費国庫負担法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
  • 国の補助金等の整理及び合理化等に伴う国民健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
  • 国の補助金等の整理及び合理化等に伴う農業近代化資金助成法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出)
説明

中山文部科学大臣、尾辻厚生労働大臣、島村農林水産大臣

質疑

河本三郎君(自民)、山花郁夫君(民主)、稲見哲男君(民主)、藤田一枝君(民主)、桝屋敬悟君(公明)、吉井英勝君(共産)

答弁

小泉内閣総理大臣、中山文部科学大臣、尾辻厚生労働大臣、島村農林水産大臣、麻生総務大臣、谷垣財務大臣
3月2日 ○平成17年度一般会計予算〈可決〉

○平成17年度特別会計予算〈可決〉

○平成17年度政府関係機関予算〈可決〉

討論(以上3件)

島聡君(民主)、茂木敏充君(自民)、石井郁子君(共産)、石井啓一君(公明)、東門美津子君(社民)

○地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)〈可決〉

討論

大出彰君(民主)

○平成17年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案(内閣提出)〈可決〉

○所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)〈可決〉

討論(以上2件)

吉田泉君(民主)

3月8日 ○地方税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)〈可決〉

討論

小宮山泰子君(民主)

○趣旨説明
  • 旅券法及び組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
説明

町村外務大臣

質疑

古本伸一郎君(民主)

答弁

町村外務大臣、中川経済産業大臣、南野法務大臣、谷垣財務大臣
3月10日 ○京都議定書発効に伴う地球温暖化対策推進の強化に関する決議案(小坂憲次君外13名提出)〈可決〉

趣旨弁明

竹下亘君(自民)

○趣旨説明
  • 中小企業経営革新支援法の一部を改正する法律案(内閣提出)
説明

中川経済産業大臣

質疑

計屋圭宏君(民主)

答弁

中川経済産業大臣、谷垣財務大臣、中山文部科学大臣、伊藤金融担当大臣
3月15日 ○私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案(第161回国会、仙谷由人君外16名提出)〈否決〉

○私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案(第161回国会、内閣提出)〈修正〉

討論(以上2件)

鈴木康友君(民主)

○「新防衛計画大綱」及び「新中期防衛力整備計画」に関する報告

報告

大野防衛庁長官

質疑

古川禎久君(自民)、前原誠司君(民主)、赤松正雄君(公明)、赤嶺政賢君(共産)

答弁

小泉内閣総理大臣、大野防衛庁長官、町村外務大臣

○趣旨説明
  • 地域再生法案(内閣提出)
説明

村上国務大臣

質疑

宇佐美登君(民主)

答弁

村上国務大臣
3月22日 ○趣旨説明
  • 介護保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
説明

尾辻厚生労働大臣

質疑

大村秀章君(自民)、橋本清仁君(民主)、高木美智代君(公明)、山口富男君(共産)、阿部知子君(社民)

答弁

小泉内閣総理大臣、尾辻厚生労働大臣
3月29日 ○趣旨説明
  • 民間事業者の能力を活用した市街地の整備を推進するための都市再生特別措置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
説明

北側国土交通大臣

質疑

和田隆志君(民主)

答弁

細田内閣官房長官、北側国土交通大臣、谷垣財務大臣、麻生総務大臣

○趣旨説明
  • 刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律案(内閣提出)
説明

南野法務大臣

質疑

辻惠君(民主)

答弁

南野法務大臣、麻生総務大臣、尾辻厚生労働大臣、村田国家公安委員会委員長
4月1日 ○年金制度をはじめとする社会保障制度改革に関する決議案(長勢甚遠君外8名提出)〈可決〉

趣旨弁明

長勢甚遠君(自民)

○趣旨説明
  • 防衛庁設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
説明

大野防衛庁長官

質疑

中山泰秀君(自民)、本多平直君(民主)、佐藤茂樹君(公明)

答弁

大野防衛庁長官、町村外務大臣、谷垣財務大臣、細田内閣官房長官、村田国務大臣
4月5日 ○趣旨説明
  • 農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
説明

島村農林水産大臣

質疑

西川京子君(自民)、鮫島宗明君(民主)

答弁

島村農林水産大臣、中川経済産業大臣、細田内閣官房長官、竹中国務大臣
4月7日 ○国立国会図書館法の一部を改正する法律案(本院提出、参議院回付)〈同意〉

○趣旨説明
  • 会社法案(内閣提出)
  • 会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)
説明

南野法務大臣

質疑

井上信治君(自民)、村越祐民君(民主)、谷口隆義君(公明)、佐々木憲昭君(共産)

答弁

南野法務大臣、竹中国務大臣、谷垣財務大臣、中川経済産業大臣、伊藤金融担当大臣
4月14日 ○趣旨説明
  • 地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
説明

小池環境大臣

質疑

田島一成君(民主)

答弁

小池環境大臣、町村外務大臣、中川経済産業大臣
4月19日 ○趣旨説明
  • 公的資金による住宅及び宅地の供給体制の整備のための公営住宅法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
  • 地域における多様な需要に応じた公的賃貸住宅等の整備等に関する特別措置法案(内閣提出)
説明

北側国土交通大臣

質疑

室井邦彦君(民主)

答弁

北側国土交通大臣、谷垣財務大臣、麻生総務大臣

○趣旨説明
  • 証券取引法の一部を改正する法律案(内閣提出)
  • 証券取引委員会設置法案(原口一博君外4名提出)
説明

伊藤金融担当大臣、岩國哲人君(民主)

質疑

田中和コ君(自民)、津村啓介君(民主)

答弁

伊藤金融担当大臣、谷垣財務大臣、中塚一宏君(民主)、平岡秀夫君(民主)
4月21日 ○趣旨説明
  • 独立行政法人住宅金融支援機構法案(内閣提出)
説明

北側国土交通大臣

質疑

下条みつ君(民主)

答弁

北側国土交通大臣、谷垣財務大臣
4月26日 ○趣旨説明
  • 障害者自立支援法案(内閣提出)
説明

尾辻厚生労働大臣

質疑

中根康浩君(民主)、古屋範子君(公明)

答弁

北側国土交通大臣、尾辻厚生労働大臣
5月10日 ○趣旨説明
  • 農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
説明

島村農林水産大臣

質疑

城内実君(自民)、神風英男君(民主)

答弁

島村農林水産大臣、町村外務大臣、尾辻厚生労働大臣
5月17日 ○趣旨説明
  • 労働安全衛生法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
説明

尾辻厚生労働大臣

質疑

園田康博君(民主)

答弁

尾辻厚生労働大臣

○趣旨説明
  • 総合的な国土の形成を図るための国土総合開発法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出)
説明

北側国土交通大臣

質疑

葉梨康弘君(自民)、三日月大造君(民主)

答弁

北側国土交通大臣、谷垣財務大臣、中川経済産業大臣
5月26日 ○趣旨説明
  • 郵政民営化法案(内閣提出)
  • 日本郵政株式会社法案(内閣提出)
  • 郵便事業株式会社法案(内閣提出)
  • 郵便局株式会社法案(内閣提出)
  • 独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案(内閣提出)
  • 郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)
説明

竹中国務大臣

質疑

柳澤伯夫君(自民)、桝屋敬悟君(公明)、塩川鉄也君(共産)

答弁

小泉内閣総理大臣、竹中国務大臣、伊藤金融担当大臣、谷垣財務大臣
6月14日 ○総合的な国土の形成を図るための国土総合開発法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出)〈可決〉

討論

松崎哲久君(民主)

○防衛庁設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)〈修正〉

討論

松本剛明君(民主)

○趣旨説明
  • 少年法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
説明

南野法務大臣

質疑

左藤章君(自民)、松野信夫君(民主)

答弁

南野法務大臣、中山文部科学大臣、村田国家公安委員会委員長、尾辻厚生労働大臣
6月17日 ○議院運営委員長川崎二郎君解任決議案(筒井信隆君外7名提出)〈否決〉

趣旨弁明

生方幸夫君(民主)

討論

小渕優子君(自民)、前田雄吉君(民主)

○本国会の会期を8月13日まで55日間延長するの件(議長発議)〈可決〉

討論

牧野聖修君(民主)、遠藤乙彦君(公明)、穀田恵二君(共産)、阿部知子君(社民)
6月30日 ○平成15年度一般会計歳入歳出決算〈議決〉

○平成15年度特別会計歳入歳出決算〈議決〉

○平成15年度国税収納金整理資金受払計算書〈議決〉

○平成15年度政府関係機関決算書〈議決〉

○平成15年度国有財産増減及び現在額総計算書〈是認〉

○平成15年度国有財産無償貸付状況総計算書〈是認〉

討論(以上3件)

長浜博行君(民主)

○建設労働者の雇用の改善等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)〈可決〉

討論

小林千代美君(民主)
7月5日 ○郵政民営化法案(内閣提出)〈修正〉

○日本郵政株式会社法案(内閣提出)〈修正〉

○郵便事業株式会社法案(内閣提出)〈可決〉

○郵便局株式会社法案(内閣提出)〈修正〉

○独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案(内閣提出)〈可決〉

○郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)〈修正〉

討論(以上6件)

伊藤忠治君(民主)、山崎拓君(自民)、塩川鉄也君(共産)、谷口隆義君(公明)、東門美津子君(社民)
7月15日 ○障害者自立支援法案(内閣提出)〈修正〉

討論

園田康博君(民主)
7月26日 ○第31回主要国首脳会議出席に関する報告

報告

小泉内閣総理大臣

質疑

河野太郎君(自民)、鳩山由紀夫君(民主)、丸谷佳織君(公明)、赤嶺政賢君(共産)

答弁

小泉内閣総理大臣
8月2日 ○国連創設及びわが国の終戦・被爆60周年に当たり、更なる国際平和の構築への貢献を誓約する決議案(川崎二郎君外20名提出)〈可決〉

趣旨弁明

鈴木恒夫君(自民)
8月8日 衆議院解散

3 決議

○可決したもの

スマトラ沖大地震・大津波災害に際し国際的支援活動において我が国が果たすべき役割に関する決議案(川崎二郎君外11名提出、決議第1号)[自民・民主・公明・共産・社民提出](17.1.21)

昨年12月26日に発生したスマトラ沖大地震・大津波は、被災国の人々はもとより、我が国を含む世界中の多くの人々に甚大な被害をもたらした。

本院は、今回の大津波で尊い命を落とされた人々に対し、心から哀悼の意を表するとともに、ご家族や関係者みなさまの深遠なる悲しみを分かち合うものである。

今回の大津波で最も大きな被害を受けたのは、アジア諸国である。本院は、アジアの一員である我が国にとって、アジアにおける大災害は我々自身の問題でもあると認識し、緊急支援、並びに被災国の一刻も早い復旧復興のために最大限の支援の手を差し伸べることが、我が国の重大な責務であることをあらためて確認する。

よって政府は、資金協力、人的貢献、知見活用の各般において、既に実施している緊急支援に加え、国際社会との協調の下、社会基盤への深刻な打撃を受けた被災国の中長期的な復旧復興につながる支援に全力を傾注するとともに、国際社会の支援活動において積極的かつ主体的役割を果たすべきである。

また、神戸で開催されている国連防災世界会議の成果も踏まえつつ、我が国の津波予知と防災体制整備に全力を挙げるとともに、インド洋津波早期警戒メカニズムの構築へ向けた国際的取組みにも、今後とも積極的に貢献すべきである。

右決議する。

日露修好150周年に当たり、日露関係の飛躍的発展に関する決議案(川崎二郎君外21名提出、決議第2号)[自民・民主・公明・共産・社民提出](17.2.22)

1855年に日魯通好条約が調印され、両国の間に公式な関係が樹立されるとともに、択捉島とウルップ島の間に両国の国境が平和裡に確定された。同条約の調印から、本年で150周年を迎える。日露両国の先人は、粘り強い交渉を通じて信頼関係を構築し、この日魯通好条約に調印したが、以来150年の両国間の歴史を想い、国民とともに深い感慨を覚える。

日本とロシアは、両国の利益に合致する戦略的パートナーシップの構築に向けて引き続き尽力すべきであり、日露関係をその潜在力に見合ったレベルに引き上げることが必要である。

しかしながら、戦後60年の節目の年に当たる今日なお、北方領土問題が解決せず、日露両国間に平和条約が締結されていないことは誠に遺憾である。政府は、日露修好150周年という歴史的に重要な節目の年を迎えるに当たり、ロシアとの間で幅広い分野での協力を進めるとともに、全国民の悲願にこたえ、歯舞、色丹及び国後、択捉等の北方領土の帰属の問題を解決して平和条約を早期に締結するという一貫した方針に基づき、平和条約交渉を具体的かつ実質的に前進させ、日露関係を大きく発展させるため、最大の努力を継続するべきである。

右決議する。

京都議定書発効に伴う地球温暖化対策推進の強化に関する決議案(小坂憲次君外13名提出、決議第3号)[自民・民主・公明・共産・社民提出](17.3.10)

京都議定書は、米国等が参加しないうちでの発効となったが、我が国は、地球温暖化対策の第一歩となる本議定書をとりまとめた議長国として、削減目標の着実な達成はもとより、他国に先んじて脱温暖化社会の構築を進めるべきである。

よって、政府は、次の事項について最大限の努力をすべきである。

一 京都議定書目標達成計画の策定に当たっては、削減目標を達成するため、温室効果ガスの削減対策、森林吸収源対策、京都メカニズムに係る対策とその裏付けとなる施策を盛り込んだ計画を策定し、それら対策・施策の強力な推進を図ること。

二 世界最大の温室効果ガス排出国である米国等の先進国に対し、同議定書への復帰・参加を強く働きかけるとともに、中国及びインド、その他の途上国を含むすべての国が参加できる将来枠組みの構築に向け、国際的なリーダーシップを発揮すること。

三 国民や事業者などすべての主体が地球温暖化対策を自らの課題として認識し、対策に取り組むよう啓発活動や環境教育を一層推進すること。また、事業者や地方公共団体の温室効果ガス排出削減のための取組への支援を積極的に行うこと。

四 地球温暖化対策は、中長期にわたる対策であることにかんがみ、地球温暖化に関する科学的知見の充実、技術の開発・普及、及びそのための社会的基盤整備を進めること。

右決議する。

年金制度をはじめとする社会保障制度改革に関する決議案(長勢甚遠君外8名提出、決議第4号)[自民・民主・公明・社民提出](17.4.1)

本格的な少子高齢社会の進展の中で社会保障制度は深刻な状況にあり、年金をはじめとする社会保障制度に対する国民の不安・不信は根強いものがある。この事態をわが国社会の将来を左右する重大なことと受け止め、国民の信頼と安心を確保するための改革を実現することが政治の責任である。

この改革は一刻の猶予も許されないものである。出生率、経済財政情勢、産業構造、雇用構造など時代の大きな変化に適確に対応すべく、過去の経緯などにとらわれず、議論に必要な論点を国民に提示し、あらゆる観点からの議論を尽くし、社会保障制度改革なかんずく年金制度改革について、その実現のため全力を傾注しなければならない。

本院は、右の認識・決意にたって、国民の負託にこたえ国会の責任を果たすべく、新たに全会派参加による「両院合同会議」を設けることとする。そこでの議論は、議員間の論議を中心に各党の利害を超えて真摯に行い、すべて国民に公開するものとする。また、集中的・効率的に議論し、まず年金制度改革に関して各党が論点・目指すべき姿・施策について提起して議論を進め、今秋までに改革の方向付けを行い骨格の成案を得ることを目指すこととする。

政府は、この議論が円滑、効率的に行われるよう協力するとともに、この議論を尊重すべきである。

本院は、この議論を通じ、年金・社会保障制度改革の実現に最大限の努力を行う決意であることを全国民に表明する。

右決議する。

国連創設及びわが国の終戦・被爆60周年に当たり、更なる国際平和の構築への貢献を誓約する決議案(川崎二郎君外20名提出、決議第6号)[自民・民主・公明提出](17.8.2)

国際平和の実現は世界人類の悲願であるにもかかわらず、地球上に戦争等による惨禍が絶えない。

戦争やテロリズム、飢餓や疾病、地球環境の破壊等による人命の喪失が続き、核兵器等の大量破壊兵器の拡散も懸念される。

このような国際社会の現実の中で、本院は国際連合が創設以来60年にわたり、国際平和の維持と創造のために発揮した叡智と努力に深く敬意を表する。

われわれは、ここに10年前の「歴史を教訓に平和への決意を新たにする決議」を想起し、わが国の過去の一時期の行為がアジアをはじめとする他国民に与えた多大な苦難を深く反省し、あらためてすべての犠牲者に追悼の誠を捧げるものである。

政府は、日本国憲法の掲げる恒久平和の理念のもと、唯一の被爆国として、世界のすべての人々と手を携え、核兵器等の廃絶、あらゆる戦争の回避、世界連邦実現への道の探究など、持続可能な人類共生の未来を切り開くための最大限の努力をすべきである。

右決議する。

○否決したもの

議院運営委員長川崎二郎君解任決議案(筒井信隆君外7名提出、決議第5号)[民主・社民提出](17.6.17)

本院は、議院運営委員長川崎二郎君を解任する。

右決議する。


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