衆議院

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【第168回国会】

1 内閣総理大臣の指名

第168回国会は平成19年9月10日に召集された。当初、安倍内閣の下でスタートした国会であったが、9月12日、安倍内閣総理大臣が辞意を表明、同月25日の午前に安倍内閣は総辞職した。同日午後の本院本会議において、福田康夫君を内閣総理大臣に指名するに決したが、一方参議院本会議においては、小沢一郎君が指名された。衆参の指名が異なるため、同日、両院協議会が開催されたが、意見の一致をみず、憲法第67条第2項の規定により、福田康夫君を内閣総理大臣に指名する本院の議決が国会の議決となった。

2 国務大臣の演説及び質疑

9月10日に安倍内閣総理大臣の所信表明演説が行われたが、同月12日に安倍内閣は退陣した。その後、10月1日に福田内閣総理大臣の所信表明演説が行われ、これに対して、同月3日及び4日の両日、各党の代表質問が行われた。

臨時国会冒頭の首班指名選挙(第168回国会)
臨時国会冒頭の首班指名選挙(第168回国会)

(1) 安倍内閣総理大臣の所信表明演説

(はじめに)

第168回国会の開会に当たり、新潟県中越沖地震や台風による災害により、亡くなられた方々の御冥福をお祈りするとともに、被害に遭われた方々に、心からお見舞いを申し上げます。被災者の皆様の不安の解消を第一に、復旧・復興に全力を尽くしてまいります。

先の参議院議員通常選挙は、与党にとって大変厳しい結果となりました。今回示された、国民の皆様の思いや怒りに対し、これまで十分応えきれていなかったこと、政治と行政に対する不信を招いたことについての深い反省の上に立って、今後、国政に当たっていきたいと考えております。

「ここまで厳しい民意が示されたのだから、退陣すべき」との御意見もあることは十分承知しています。

しかし、人口減少や地球規模の競争の激化、学校や家庭における教育力の低下、日本を取り巻く安全保障の環境変化、こうした時代の大きな変化に直面している我が国が、豊かな国民生活と明るい未来を手にするためには、経済・行財政の構造改革はもとより、教育再生や安全保障体制の再構築を含め、戦後長きにわたり続いてきた諸制度を原点にさかのぼって大胆に見直す改革、すなわち、戦後レジームからの脱却が、どうしても必要です。「我が国の将来のため、子どもたちのために、この改革を止めてはならない。」私は、この一心で、続投を決意しました。初心に戻り、厳しい選挙結果を踏まえた「反省」と、国民のために闘うとの「覚悟」を持って、引き続き改革に取り組むことにより、国民の皆様に対する責任を果たしてまいりたいと思います。

昨年9月の就任以来、安倍内閣は、教育基本法の改正や公務員制度改革法の成立など、新しい時代にふさわしい、新たな国家像の骨格作りを進めてきました。同時に、少子高齢化と国際化に耐えうる、たくましい経済への転換を図るべく、新成長戦略を推し進めてまいりました。景気は安定した回復軌道に乗り、雇用も拡大するなど、具体的な成果も生まれてきています。改革の基本的な方向を変えてはなりません。「ばらまき」や「護送船団」といわれた、かつての政治手法に回帰することは、絶対に許されません。

しかし、改革にはどうしても痛みが伴います。これまでも必要な対策を講じることに努めてまいりましたが、まだまだ十分ではないと思います。今後、改革を進める一方、改革の影の部分にきちんと光を当てる、優しさと温もりを感じられる政策に、全力で取り組んでまいります。

このたび、新しい国創りを再スタートさせるため、内閣改造を行いました。極めて遺憾なことですが、補助金の不正受給の問題で、閣僚の一人が辞任しました。今後こうしたことが二度と起きないよう、内閣として、補助金などの厳正な執行に万全を期してまいります。

自由民主党及び公明党の連立政権の下、「政策実行内閣」として一丸となり、地に足のついた政策を着実に進めてまいります。将来にわたり国民の皆様が安心して暮らせるよう、堂々と政策論を展開し、野党の皆様とも建設的な議論を深め、一つ一つ丁寧に答えを出していくことに最善を尽くします。

この内閣がスタートするに当たり、私は、国民の皆様との対話を、何よりも重視してまいります。私をはじめ、大臣、副大臣、政務官など70名が手分けして、全国各地に直接赴き、お年寄りや若者、中小企業などの現場の声を受け止め、きめ細やかな政策につなげてまいります。

(信頼できる年金を再構築する)

年金に対する信頼を取り戻すことは、私に課せられた重要な使命であります。まじめに保険料を払ってこられた方々に正しく年金を支払うためにあらゆる対策を講じること。原因と責任を厳しく明らかにすること。この2点を徹底して、年金記録問題を究明し、必ず解決いたします。

国民生活を支える基盤である公的年金について、国民が安心して頼れる制度とするためには、長期的な視野に立った制度設計が不可欠であり、それは政治の責任です。国会における与野党の立場を超えた議論が再開され、透明で建設的な協議が行われることが極めて重要です。

(改革の果実を地方の実感につなげる)

私は、格差や将来への不安を訴える地方の皆様の切実な声に真摯に応え、改革の果実をさらに地方の実感へとつなげるため、あらゆる努力を尽くします。

地方が自ら考え、実行することのできる体制をつくります。地方自治体への一層の権限移譲や、地方間の税収の偏りの是正といった地方税財政の改革に取り組むとともに、地方分権の総仕上げである道州制の実現に向け検討を加速します。

内閣に置かれた地域再生などの実施体制を一元化するとともに、活性化に取り組む意欲のある地域に対し、頑張る地方応援プログラム、中心市街地や公共交通の活性化などの施策を総動員して、省庁の縦割りを排し、それぞれの地域の実情に応じた支援を集中的、効果的に実施します。

地域で働く人々の生活の底上げを図るため、職業能力の向上を支援するとともに、最低賃金を引き上げます。あわせて、地域経済を支えている中小企業の生産性の引上げや、地域力再生機構の創設など地域全体の再生支援にも取り組んでまいります。

安全・安心な食を生み出す日本の農林水産業が活力を持ち続けることは、我が国の将来にとって、極めて大切なことです。「攻めの農政」を基本に、頑張る担い手への支援など、「未来につながる」政策に力を注ぐとともに、高齢者や小規模な農家の方々が抱いている不安をしっかりと受け止め、きめ細かな支援を行ってまいります。

(教育再生を具体化する)

良質で負担の少ない公教育があってこそ、子どもたちみんなが、明日へのチャンスをつかむことができます。改正教育基本法、教育再生三法の成立を受けて、いよいよ具体的に、高い学力と規範意識を身につけるための改革にのり出します。

授業時間を増やし、教科書を充実し、全国学力テストを有効に活用して、きめ細かに学力の底上げを行います。体験活動や徳育にも力を入れます。良き教師を確保するため、メリハリのある教員給与体系を実現するとともに、教員免許更新制の円滑な実施に取り組みます。事務負担を減らすことなどにより、先生が子どもたちと十分に向き合える時間を増やします。保護者の御心配や御意見に対し、専門家も参加して対応する仕組みを整えます。

(安心して暮らせる社会を実現する)

安心して暮らせる社会は、国づくりの土台です。国民の皆様が日々の暮らしの中で感じる不安に常に心を配り、迅速に対応します。

食への信頼が揺らいでいます。正しい食品表示を徹底するとともに、水際における輸入食品の監視体制を強化します。

夜間でも必要な救急医療を受けられるよう、それぞれの地域において責任を持って対応する救急の拠点病院及びネットワークの体制を確立します。地方における医師不足の解消に向け、「県境なき医師団」を速やかに派遣するとともに、地方の大学の医学部にへき地勤務枠を設けるなど、全力で取り組みます。

世界一災害に強い国づくりを進めます。学校などの公共施設や住宅の耐震化を進めるとともに、お年寄りに対する情報伝達、安否確認、救出など、いざという時に確実に機能する体制を整えます。地震発生時における原子力発電所の対応に万全を期すとともに、情報公開を徹底し、周辺住民の方々の不安を払拭します。

安心して子どもを産み育てることができる環境を作るため、多様できめ細かい保育サービスの充実や、仕事と家庭の両立に向けた働き方の見直しを推進します。

(持続的な経済成長を実現し、簡素な政府をつくる)

急激な少子高齢化や、これまで経験したことのないような人口減少という厳しい状況下にあっても、年金や介護などの制度を維持し、雇用を生み出していくためには、経済成長が不可欠であります。科学技術など、我が国がこれまで蓄えてきた力を最大限に発揮し、持続的な成長を実現します。次の時代を切り拓く新たなイノベーションを応援するとともに、日本の空の自由化をはじめ、観光、金融など、より海外に開かれた経済をつくることにより、アジアなど外国の成長や活力を日本に取り入れます。

無駄ゼロを目指す行財政改革を断固、実行します。2011年度には国と地方の基礎的財政収支を黒字化するとの目標に向け、メリハリの効いた予算編成を行い、揺るぎなく歳出・歳入一体改革の道を進みます。

行政に対する国民の皆様の信頼を取り戻すため、公務員について指摘されている悪しき体質を徹底的に拭い去り、21世紀の行政を支える新しい公務員像をつくり上げます。

歳出改革・行政改革を徹底して実施した上で、それでも対応しきれない社会保障や少子化などに伴う負担増に対しては、安定的な財源を確保し、将来世代への負担の先送りを行わないようにしなければなりません。本年秋以降、本格的な議論を行い、消費税を含む税体系の抜本的改革を実現させるべく取り組んでまいります。

(主張する外交を展開する)

私は、今後とも主張する外交を展開します。

世界の平和と安定なくして、日本の安全と繁栄はありません。米国同時多発テロで、24名もの日本人の尊い命が奪われたことを忘れてはなりません。テロとの闘いは続いています。テロ特措法に基づく海上自衛隊の活動は、諸外国が団結して行っている海上阻止活動の不可欠な基盤となっており、国際社会から高い評価を受けています。灼熱のインド洋で黙々と勤務に従事する自衛隊員こそ、世界から期待される日本の国際貢献の姿です。ここで撤退し、国際社会における責任を放棄して、本当にいいのでしょうか。引き続き活動が継続できるよう、是非とも御理解いただきたいと思います。

北朝鮮のミサイル発射や核実験声明の衝撃を忘れた方はいないでしょう。我が国を取り巻く安全保障の環境は、依然として厳しいものがあります。官邸の司令塔機能や政府の情報機能の強化をはじめ、我が国の安全保障の体制を再構築する必要があります。在日米軍の再編については、沖縄など地元の切実な声によく耳を傾け、地域の振興に全力をあげて取り組むことにより、着実に進めてまいります。

北朝鮮の拉致、核、ミサイルの問題の解決に向け、国際社会との連携を一層強化してまいります。すべての拉致被害者が帰国を果たすまで、鉄の意志で取り組んでまいります。

(環境で世界を主導する)

地球温暖化問題は、人類の生存にかかわる、世界共通の課題です。私は、ハイリゲンダム・サミットにおいて「美しい星50」を提案し、すべての主要な温暖化ガス排出国が参加できる枠組の考え方について、理解を得ました。環境に関連する技術は我が国が世界に誇るべきものです。省エネルギー技術の海外への普及促進など、環境を経済成長の制約ではなく糧とする、日本ならではの環境と経済の共存を実現します。

来年開催される北海道洞爺湖サミットで、更なる前進が得られるよう、引き続き、リーダーシップを発揮してまいります。

(むすび)

厳しい御批判をいただいた政治資金の問題につきましては、なお一層、透明性を高めていくことが不可欠です。政治資金規正法の改正に向け、各党各会派や国会において十分な御議論をいただきたいと思います。内閣としても、政治に対する国民の信頼を一刻も早く取り戻すため、全力をあげて取り組んでまいります。

国の姿、かたちを語る憲法については、国民投票法の成立により、改正に関する議論を深める環境が整いました。今後とも、国民の皆様の期待に応える議論が行われることを希望します。

本日、私は、自らの信条、思うところを、率直に述べさせていただきました。これからも、国民の皆様からの御意見を十分受け止め、政策をしっかりと説明しながら、国政に邁進してまいります。

私の目指す政治とは、我が国を取り巻く厳しい環境変化に対応しながら、日本が本来持っていて、今も生活の中に息づいている、自律の精神、他者への思いやり、温かさといった価値を守り、伸ばしていくこと。そして、国民一人一人が、日々の生活において、真の豊かさ、潤いを実感できるようにすること。すなわち、「美しい国」創りを進めていこうとするものであります。50年後、100年後のあるべき日本の姿を見据え、原点を決して忘れることなく、全身全霊をかけて、内閣総理大臣の職責を果たしていくことをお誓い申し上げます。国民の皆様並びに議員各位の御理解と御協力を、心からお願い申し上げます。

(2) 福田内閣総理大臣の所信表明演説

(はじめに)

このたび、私は、内閣総理大臣に任命されました。時代が大きな転換期を迎えている現在、政権を担うことの重大さを痛感し、身の引き締まる思いであります。日本の将来の発展と国民生活の安定を最優先に、自由民主党と公明党の連立政権の下、全力を傾けて、職責を果たしてまいります。

所信の一端を申し述べるに当たり、自由民主党総裁選挙の実施に伴い、国会運営に御迷惑をおかけしたことについて、議員各位、そして国民の皆様に対し、お詫び申し上げるとともに、今後、誠実な国会対応に努めてまいります。

(国会運営について)

先の参議院議員通常選挙の結果は、与野党が逆転するという、与党にとって大変厳しいものでありました。この状況下においては、衆議院と参議院で議決が異なる場合、国として新しい政策を進めていくことが困難になります。国民生活を守り、国家の利益を守ることこそ、政治の使命であり、私は、政権を預かる身として、野党の皆様と、重要な政策課題について、誠意をもって話し合いながら、国政を進めてまいりたいと思います。

(政治と行政に対する信頼の回復)

私は、政治と行政に対する国民の不信を率直に受け止めております。国民の皆様の信頼なくしては、どのような政策も必要な改革も実現することは不可能です。政治や行政に対する信頼を取り戻すことが、喫緊の課題です。

国民の皆様から厳しい御批判をいただいた政治資金問題につきましては、与党において、政治資金の透明性を更に高めるため、その改善に向けた考え方を取りまとめたところであります。今後、野党の皆様と十分に御議論させていただきたいと思います。まず閣僚から襟を正すべく、政治資金について、法に基づき厳正に管理を行い、問題を指摘された場合には説明責任を尽くすことができるようにするとともに、大臣規範に定められている事項の遵守はもとより、政治倫理にもとることなく、法令を遵守し、政治家の道義を守るよう、閣僚に徹底したところであります。特に、自らについては、厳しく戒めてまいります。

全体の奉仕者である公務員についても、公の立場にあることを自覚し、職務を忠実に遂行し、自己に恥じることのないようにしなければなりません。行政に対する信頼を取り戻すため、特に、各府省の幹部職員が、それぞれの職務全般を掌握し、国民の立場に立った行政を、責任をもって遂行するよう、徹底してまいります。同時に、公務員一人一人が高いモラルを維持し、能力を高め、誇りをもって職務に専念できるような総合的な制度となるように、公務員制度改革を進めてまいります。

行政の無駄や非効率を放置したままでは、次世代に負担を先送りするだけでなく、国民の皆様からの信頼を取り戻すことはできません。安定した成長を図るとともに、行政経費の絞り込み等により、2011年度には国と地方の基礎的財政収支の黒字化を確実に達成するなど、歳出・歳入一体改革を更に進めます。21世紀にふさわしい、簡素で効率的な政府を作るため、行政改革を今後とも強力に推し進めます。

歳出改革・行政改革を実施した上で、それでも対応しきれない社会保障や少子化などに伴う負担増に対しては、安定的な財源を確保し、将来世代への負担の先送りを行わないようにしなければなりません。今後、早急に、国民的な合意を目指して、本格的な議論を進め、消費税を含む税体系の抜本的改革を実現させるべく取り組んでまいります。

(信頼できる社会保障制度の整備)

年金、医療、介護、福祉といった社会保障制度は、国民の立場に立ったものでなければなりません。大変厳しい財政状況にはありますが、自立と共生の理念に基づき、将来にわたり持続可能で、お年寄りにとっても、若者にとっても、皆が安心できるものとなることが必要です。

昨今の年金をめぐる問題も国民の立場を軽視したことに大きな原因がありました。一人一人の年金記録が点検され、正しく年金が支払われることが重要であり、年金を受け取る方々の立場に立って、組織や運用の見直しなど、年金をめぐる諸問題を着実に解決してまいります。

年金制度はすべての国民に関することであり、お年寄りの生活の基盤となっているため、将来にわたり、年金が安定的に支払われていくよう、長期的な視野に立った制度設計が不可欠であります。国会における与野党の立場を超えた議論が再開され、透明で建設的な協議が行われるよう、お願いしたいと思います。

地域にお住まいの方が必要な医療を受けられないとの不安をお持ちです。小児科や産婦人科などの医師不足の解消策や、救急患者の受入れを確実に行うためのシステム作りなど救急医療の充実を図ります。障害をお持ちの方やお年寄りなど、それぞれの方が置かれている状況に十分配慮しながら、高齢者医療制度の在り方についての検討を含め、きめ細かな対応に努めてまいります。

(国民の安全・安心を重視する政治への転換)

国民生活に大きな不安をもたらした耐震偽装問題の発生を受け、安全・安心な住生活への転換を図る法改正が行われました。成熟した先進国となった我が国においては、生産第一という思考から、国民の安全・安心が重視されなければならないという時代になったと認識すべきです。政治や行政の在り方のすべてを見直し、国民の皆様が日々、安全で安心して暮らせるよう、真に消費者や生活者の視点に立った行政に発想を転換し、悪徳商法の根絶に向けた制度の整備など、消費者保護のための行政機能の強化に取り組みます。

毎日の食卓の安全・安心は、暮らしの基本です。消費者の立場に立った行政により、食品の安全・安心を守るため、正しい食品表示を徹底するとともに、輸入食品の監視体制を強化します。

今なお頻発する災害による死者の発生は、国民生活に大きな不安をもたらしています。災害が発生した場合の「犠牲者ゼロ」を目指し、対策の充実に意を用いてまいります。

(子育てを支える社会の実現)

教育は、家庭にとって極めて関心の高い問題です。学校のみならず、家庭、地域、行政が一体となって、教育の再生に取り組んでまいります。

信頼できる公教育を確立することが、まず必要です。授業時間の増加や教科書の充実などにより、子どもたちの学力を高めるとともに、体験活動や徳育にも力を入れ、自立と思いやりの精神を養います。先生が子どもたちと十分に向き合える時間を増やすとともに、メリハリのある教員給与体系の実現に取り組みます。

女性も男性もすべての個人が、喜びや責任を分かち合い、個性や能力を発揮できる「男女共同参画社会」の実現に向け、取り組みます。十分な育児休業を取り、その後も仕事を継続できるようにするなど、安心して子どもを産み育てることのできる環境を整備します。長時間労働の是正に取り組むなど、社会全体で働き方の改革を進め、仕事と家庭生活の調和を推進します。

(改革の継続と安定した成長)

これまで我が国は、経済、社会全般にわたる構造改革に取り組んでまいりました。景気は回復し、雇用は拡大するなど、一定の成果が上がってきています。しかし、我が国はなお、本格的な人口減少社会の到来、少子高齢化に伴う社会保障費の増大や、内外経済の構造的な変化、地球環境問題などの難題に直面しています。これを乗り切り、より成熟した社会をつくっていくためには、時代に適合しなくなった制度や組織を改めるなど、日本の将来を見据えた改革を進めていかなければなりません。

改革と安定した経済成長は、車の両輪であり、ともに進めてまいります。国内経済の環境変化に対応し、海外の経済との相互依存は今後とも高まります。内外投資の促進を図るとともに、成長著しいアジアの中にある強みを活かすアジア・ゲートウェイ構想を具体化し、観光立国の推進や金融の競争力強化に取り組みます。科学技術の発展に向け、戦略分野への集中的な投資を促進し、人材育成を充実するとともに、世界最先端を目指す知的財産戦略を推進します。

(いわゆる格差問題への対応)

構造改革を進める中で、格差といわれる様々な問題が生じています。私は、実態から決して目をそらさず、改革の方向性は変えずに、生じた問題には一つ一つきちんと処方箋を講じていくことに全力を注ぎます。

地方は人口が減少し、その結果、学校、病院等、暮らしを支える施設の利用が不便になるなど、魅力が薄れ、更に人口が減るという悪循環に陥っています。この構造を断ち切るには、それぞれの地方の状況に応じ、生活の維持や産業の活性化のためには何が必要かを考え、道筋をつけていかなければなりません。

内閣に置かれた地域再生などの実施体制を統合し、地方の再生に向けた戦略を一元的に立案し、実行する体制をつくり、有機的、総合的に政策を実施していきます。国と地方が定期的に意見交換を行うなど、地方の皆様の声に真剣に耳を傾け、地域力再生機構の創設等、決してばら撒きではなく、政策に工夫を重ね、丁寧に対応する、地方再生への構造改革を進めてまいります。

都会だけで国民生活が成り立つわけではありません。地方と都会がともに支え合う「共生」の考え方の下、地方が自ら考え、実行できる体制の整備に向け、地方自治体に対する一層の権限移譲を行うとともに、財政面からも地方が自立できるよう、地方税財政の改革に取り組みます。さらに、地方分権の総仕上げである道州制の実現に向け、検討を加速します。

都市については、大災害時の安全確保など、安全・安心な街づくりを目指します。

本日、郵政民営化がスタートしました。利用者の方に不便をおかけしないよう、着実に推進します。

食料の安定供給は、今も将来も極めて重要なことであり、安全・安心な食を生み出す日本の農林水産業が、活力を持ち続けることが必要です。「攻めの農政」を基本に、担い手の頑張りに応える支援を行います。高齢者や小規模な農家も安心して農業に取り組める環境を作り上げるなど、農山漁村に明るさを取り戻します。

我が国の経済成長の原動力である中小企業の多くが、景気回復の恩恵を受けられずにいます。下請取引の適正化や事業承継の円滑化、中小企業の生産性向上に向けた取組などを強力に推進し、大企業と中小企業の調和のとれた成長を図ります。

若者の非正規雇用が増加してきた状況などを踏まえ、若者たちが自らの能力を活かし、安定した仕事に就いて、将来に希望をもって暮らせるよう、正規雇用への転換促進や職業能力の向上、労働条件の改善など、働く人を大切にする施策を進めてまいります。

(これからの環境を考えた社会への転換)

地球環境問題への取組は待ったなしです。

従来の、大量生産、大量消費を良しとする社会から決別し、つくったものを世代を超えて長持ちさせて大事に使う「持続可能社会」へと舵を切り替えていかなければなりません。住宅の寿命を延ばす「200年住宅」に向けた取組は、廃棄物を減量し、資源を節約し、国民の住宅に対する負担を軽減するという点で、持続可能社会の実現に向けた具体的な政策の第一歩です。地球環境に優しく、国民負担も軽減できる暮らしへの転換という発想を、あらゆる部門で展開すべきです。

持続可能社会の実現に向け、京都議定書の目標を確実に達成するために全力を尽くすのはもちろんのこと、他国に対しても率先して、温暖化の防止に向けた働きかけを行っていかなければなりません。我が国の環境・エネルギー分野における技術は世界最高水準であり、環境問題の解決に向けて、世界をリードできる立場にあります。持続可能社会という新しい経済社会の在り方を世界に示していくためにも、来年開催される北海道洞爺湖サミットなどの場を通じ、「美しい星50」において示した、2050年までに温暖化ガスの排出量を半減させるとの目標を達成するため、主要な温暖化ガス排出国がすべて参加できる枠組みづくりに向け、具体的な取組を行ってまいります。

(平和を生み出す外交)

日米同盟の堅持と国際協調は、我が国外交の基本です。世界の平和は、国際社会が連帯して取り組まなければ実現できないものです。私は、激動する国際情勢の中で、今後の世界の行く末を見据え、我が国が国際社会の中でその国力にふさわしい責任を自覚し、国際的に信頼される国家となることを目指し、世界平和に貢献する外交を展開します。直面する喫緊の課題は、海上自衛隊のインド洋における支援活動の継続と、北朝鮮問題の早急な解決です。

テロ特措法に基づく支援活動は、テロリストの拡散を防ぐための国際社会の一致した行動であり、海上輸送に資源の多くを依存する我が国の国益に資するもので、日本が国際社会において果たすべき責任でもあります。国連をはじめ国際社会から高く評価され、具体的な継続の要望も各国からいただいています。引き続きこうした活動を継続することの必要性を、国民や国会によく説明し、御理解をいただくよう、全力を尽くします。

朝鮮半島をめぐる問題の解決は、アジアの平和と安定に不可欠です。北朝鮮の非核化に向け、六者会合などの場を通じ、国際社会との連携を一層強化してまいります。拉致問題は重大な人権問題です。すべての拉致被害者の一刻も早い帰国を実現し、「不幸な過去」を清算して日朝国交正常化を図るべく、最大限の努力を行います。

日米同盟は我が国外交の要であり、信頼関係の一層の強化に努めていきます。在日米軍の再編についても、抑止力の維持と負担軽減という考え方を踏まえ、沖縄など地元の切実な声によく耳を傾けて、地域の振興に全力をあげて取り組みながら、着実に進めてまいります。

情勢が悪化したミャンマーで、邦人の方が亡くなられたことは誠に遺憾です。成長著しいアジアですが、このような脆弱性も抱えています。日米同盟の強化とアジア外交の推進が共鳴し、すべてのアジア諸国において安定と成長が根付くよう、積極的アジア外交を進めます。

中国とは、共通の戦略的利益に立脚した互恵関係を打ち立て、ともにアジアの平和と安定に貢献してまいります。韓国とも、未来志向の信頼関係を一層強化します。さらに、ASEAN諸国など各国とも、経済連携など更なる関係強化に向けた取組を進めます。ロシアとは、領土問題の解決に向けて粘り強く取り組むとともに、両国の交流の発展に努めます。

国際社会における一層の貢献を行えるよう、国連安保理改革と我が国の常任理事国入りを目指すとともに、WTOドーハ・ラウンド交渉の早期妥結に努めてまいります。「自立と共生」の理念に基づき、地球環境や貧困といった問題に対する支援を、自助努力を基本としながら、政府開発援助などの活用により積極的に進めてまいります。

(むすび ― 自立と共生の社会に向けて)

我が国は、今、一時の景気の停滞から抜け出したとはいえ、時代の大きな変化の中で、経済、社会、国際情勢、自然環境など様々な面で、先の見えない、不確実な状況の中にあります。自分や家族、子どもの将来について、様々な不安を抱いておられる方も決して少なくないと思います。

こうした不安定な状況の中でこそ、次世代に思いを致し、守るべきものは守り、育てるべきものは育て、引き継ぐべきものは引き継ぐという大きな方針を示し、舵取りを行っていくことが、私に課された責務であると考えます。

将来のあるべき日本の姿を見据え、どのようにその姿に近づけるかを常に念頭に置きながら、国民の皆様の目線に立って、改革を続行してまいります。

改革の続行に当たって、私は、「自立と共生」を基本に、政策を実行してまいりたいと思います。老いも若きも、大企業も中小企業も、そして都市も地方も、自助努力を基本としながらも、お互いに尊重し合い、支え、助け合うことが必要であるとの考えの下、温もりのある政治を行ってまいります。その先に、若者が明日に希望を持ち、お年寄りが安心できる、「希望と安心」の国があるものと私は信じます。激しい時代の潮流を、国民の皆様方とともに乗り越え、「明日への道を一歩一歩着実に歩んでいる」ということを実感していただけるよう、持てる力のすべてを傾けて、取り組んでまいる所存であります。

国民の皆様、並びに議員各位の御理解と協力を心からお願い申し上げます。

福田内閣総理大臣の所信表明演説(第168回国会)
福田内閣総理大臣の所信表明演説(第168回国会)

(3) 国務大臣の演説に対する質疑要旨

10月1日の福田内閣総理大臣の演説に対する質疑は、同月3日に鳩山由起夫君(民主)、伊吹文明君(自民)及び長妻昭君(民主)が行い、4日には太田昭宏君(公明)、志位和夫君(共産)、照屋寛徳君(社民)及び下地幹郎君(国民)が行った。

質疑の主なものは、次のとおりである。

(政治姿勢)

[1]「参議院選挙の結果を受けての福田内閣総理大臣の基本方針」に関する質疑に対して、「国民の生活を守り、国家の利益を守ることは、与野党の立場を超えた政治の使命であり、いかに困難な状況にあっても一つ一つ誠意をもって話し合うことによって、国民のためになる結論を出していくことができると信じている」旨の答弁があった。

[2]「衆議院の解散」に関する質疑に対して、「今、政治に求められていることは、解散について云々することではなく、国民の不信の声を真摯に受け止め、国民の不安に対してきめ細かく対応していくことである」旨の答弁があった。

[3]「先の参議院選挙におけるマニフェスト」に関する質疑に対して、「これは自由民主党が国民に対して約束したものであり、その基本的な考え方について、私の理念や政策と大きく異なるものではない」旨の答弁があった。

[4]「安倍内閣が提唱していた戦後レジームからの脱却に対する評価」に関する質疑に対して、「その真意を十分に承知しているわけではないが、時代の変化を踏まえ、将来を見据えながら、見直すべきものは見直していくことは当然と考えている」旨の答弁があった。

[5]「自立と共生の外交」に関する質疑に対して、「ビジョンを持って21世紀の責任国家にふさわしい行動をとるとともに、他国そして共同体としての地球を慮るという趣旨であり、具体的には、日米同盟と国際協調とを外交の基本として、日米の信頼関係の強化、積極的なアジア外交、自助努力を基本としつつODAなどの活用による地球環境や貧困に対する積極的支援を進めていく」旨の答弁があった。

[6]「これまでの構造改革路線に対する評価」に関する質疑に対して、「景気回復、雇用拡大等の一定の成果が上がっているが、一方では、人口減少、少子高齢化、環境問題等の難題に直面しており、これらの解決のためにも改革を続行していく必要があると考えるが、その続行には、自立と共生という考え方のもとで国民の目線に立つことが必要である」旨の答弁があった。

[7]「政治資金制度の見直し」に関する質疑に対して、「政治に対する国民からの信頼を回復するため、政治資金の透明性を更に高めていかなければならず、そのためにも、民間企業の経理報告や監査の仕組みは、大いに参考にされるべきである」旨の答弁があった。

(テロ対策)

[1]「海上自衛隊の給油活動の実態」に関する質疑に対して、「法の趣旨に従って行われていることにつき、国民の理解が得られるよう情報開示に努めるべきであるが、そのことによって自衛隊及び各国の部隊の活動に支障が生じる可能性も考慮する必要があるため、各国の理解を得ながら情報開示に努めてまいりたい」旨の答弁があった。

[2]「海上自衛隊の補給活動と国連決議との関係」に関する質疑に対して、「すべての国連加盟国は、安保理決議1368号等を踏まえて国際的テロリズムの防止・抑止のために適切と認める措置を積極的に講じる立場にあり、海上自衛隊の補給活動は、まさにこれらの安保理決議を踏まえたものである。また、先般採択された安保理決議1776号では、海上阻止活動に対する各国の貢献を評価し、その継続の必要性を強調しており、これは、テロリストの拡散を防ぐための国際社会の一致した活動の重要性が改めて確認されたものと認識している」旨の答弁があった。

[3]「アフガニスタン及びイラクに対する我が国の支援策」に関する質疑に対して、「我が国は、自衛隊による補給活動や支援活動のほか、アフガニスタンに対しては政治、治安、復興等の分野で12億ドル以上、また、イラクに対しては50億ドルの経済協力を着実に実施し、復興に向けたイラク国民の取組に積極的に協力しており、今後とも、アフガニスタン及びイラクがテロの温床とならないよう、イスラム諸国も含めた国際社会と緊密に協力しながら、幅広い取組を主体的に行っていく」旨の答弁があった。

(年金問題)

[1]「年金記録問題」に関する質疑に対して、「年金記録に対する国民の不安解消のためには、国民一人一人の年金記録が点検され、正しく年金が支払われることが重要である。このため、本年7月5日に政府・与党で決定した方針に基づき、まずは、平成20年3月までを目途に、5,000万件の年金記録について名寄せを実施するとともに、記録が結びつくと思われる方に加入履歴を送付し、本人による確認を通じて記録を結びつけてまいりたい。その後、平成20年10月までを目途に、それ以外のすべての方にもお知らせをお送りし、国民一人一人の年金記録の確認を行い、また、コンピューターの記録と台帳等との計画的な突き合わせ等を計画的かつ着実に進めることで、国民の信頼を回復してまいりたい」旨の答弁があった。

[2]「保険料の流用禁止」に関する質疑に対して、「保険料は、現に年金給付及びそれに密接に関係する事業の運営費に限られており、妥当なものと考えている」旨の答弁があった。

[3]「年金の財源及び制度設計」に関する質疑に対して、「平成16年の制度改正において、長期的な給付と負担の均衡を確保し、制度を持続可能なものとするための見直しを行っており、その中で、基礎年金の国庫負担割合については、所要の安定した財源を確保するための税制の抜本的な改革を行った上で、平成21年度までに2分の1に引き上げることとしている。この法律も踏まえ、今後、早急に、本格的な議論を進め、消費税を含む税体系の抜本的改革を実現させるべく取り組むこととしている。その際には、国民の理解が進むことが重要であり、そのための努力が政府に求められているものと考えている」旨の答弁があった。

[4]「社会保険庁改革」に関する質疑に対して、「社会保険庁を廃止して、非公務員型の2つの法人に分割することとし、公的年金については日本年金機構を、健康保険については全国健康保険協会を設立することとしている。新組織では、能力と実績による人事管理を導入して職員の意識改革を図るとともに、外部委託などによるサービスの向上と事業の適正かつ効率的な実施を推進し、新組織が国民の期待する役割を果たすものとなるよう努めていく」旨の答弁があった。

(都市と地方との格差等の問題)

[1]「地域の活性化」に関する質疑に対して、「地域の活性化のためには、地方への企業立地促進、地域コミュニティーの再生、農林水産業と地元企業との連携等の方策を地域の状況に応じてきめ細かく戦略的かつ具体的に推進すること、また、そのためには、地方の切実な声にこれまで以上に耳を傾け、自立と共生という改革理念のもとに、地方と都市とがともに支え合う考え方に立つことが重要である。政府としては、地方の再生に向けた戦略を一元的に立案し実行する体制として地域活性化統合本部を設けることとしており、この体制のもとで、地域の実情に応じた支援を立案、実施するとともに、財政面からも地方が自立できるよう、地方再生への構造改革に政府をあげて取り組んでいく」旨の答弁があった。

[2]「農林業政策」に関する質疑に対して、「地域の主要産業である農林業を核に農山村の活性化を図っていくため、意欲のある担い手を支援することにより、力強い経営を育成していく。また、現場の声を真摯に受けとめながら、集落でまとまって特色ある営農を行うことへの支援をはじめ、小規模な生産者に対してもきめ細かな支援を行っていく」旨の答弁があった。

[3]「中小企業対策」に関する質疑に対して、「景気回復の中においてなお苦しい経営状態にある中小企業に対し、中小企業金融の強化、下請取引の適正化、事業承継の円滑化を推進する等のきめ細かな支援を行っていく」旨の答弁があった。

[4]「雇用の安定」に関する質疑に対して、「若者を中心とした低所得の非正規雇用が増加、固定化することには十分な注意が必要と考えており、このため、フリーター25万人常用雇用化プランの推進など正規雇用化の支援、改正パートタイム労働法に基づく均衡待遇の確保や正規雇用への転換の推進等に取り組んでいるところであり、こうした取組を通じて、働く人たちの雇用の安定と向上を図っていく。また、労働者派遣制度については、その施行状況や関係者の意見、現場の実態を踏まえ、日雇い派遣の在り方も含め、本年9月から具体的な見直しの検討を開始しており、その結果を踏まえ、適切に対応していく」旨の答弁があった。

[5]「郵政民営化の見直し」に関する質疑に対して、「郵便局のネットワークやサービスの水準などが維持され、利用者の利便に支障が生じないよう最大限努力する。なお、郵政民営化はスタートしたばかりであり、その進捗状況については、国民の利便性の視点も踏まえ、郵政民営化委員会が監視していくこととなっていることから、同委員会が監視の結果を踏まえ総合的な見直しを行うこととなる」旨の答弁があった。

(公務員制度等の改革)

[1]「公務員の再就職先のあっせん禁止」に関する質疑に対して、「各府省による再就職のあっせんは、国民からは、予算や権限を背景とした押し付け的なものと受け止められかねないことから、先の通常国会で成立した国家公務員法改正法で各府省の再就職あっせんを全面的に禁止し、中立、透明な仕組による官民人材交流センターに一元化することとした。仮に、官民人材交流センターを設けることなくあっせんを禁止し、ハローワークを利用することとした場合、公務員には身分保障が存在するため役所に残ろうとし、行政の減量や効率化を妨げる要因にもなりかねない。なお、官民人材交流センターについては、官房長官の下の有識者懇談会における検討結果を踏まえ、平成20年中に立ち上げるべく、鋭意取り組んでいく」旨の答弁があった。

[2]「独立行政法人の見直し」に関する質疑に対して、「現在101ある独立行政法人については、事業の必要性や組織の在り方について徹底的に見直し、本年中を目途に整理合理化計画を策定する」旨の答弁があった。

(歴史認識と沖縄)

[1]「沖縄の集団自決に関する教科書検定」に関する質疑に対して、「沖縄戦が住民を巻き込んだ悲惨な戦いであり、多くの人々が犠牲になったことを、今後とも学校教育においてしっかりと教えていかなければならない」とした上で、「教科書検定は審議会における専門的な審議を経て実施されるものであり、今回の検定に基づく教科書の記述が集団自決に対する軍の関与を否定するものではないと承知しているが、知事をはじめ沖縄県民の思いを重く受け止め、文部科学省においてしっかりと検討していく」旨の答弁があった。

[2]「戦争に関する記録の公開、収集、保存等」に関する質疑に対して、「先の大戦の悲惨な教訓を風化させず、二度と戦火を交えることなく、世界の平和と繁栄に貢献していく決意である」とした上で、「国立公文書館、外交史料館及び防衛研究所で保存している戦前、戦中のアジア歴史資料については、アジア歴史資料センターにおいて、インターネットを通じて利用できることとされており、今後ともその充実に努めていく。なお、歴史資料などは、今後、その収集、保存に力を入れていかなければいけないと考えている」旨の答弁があった。

[3]「新たな追悼施設の必要性」に関する質疑に対して、「この施設は、戦争で命を落とされた、民間人も含めたすべての方を追悼するものであるが、多くの国民に理解され、敬意を表されるものであることが重要である。国民世論の動向等も見きわめたい」旨の答弁があった。

[4]「沖縄における基地負担軽減」に関する質疑に対して、「今般の米軍再編は、普天間飛行場の早期移設、返還、海兵隊員約8,000名とその家族のグアムへの移転、嘉手納飛行場以南の土地の返還等を通じて沖縄の負担軽減を実施するものであり、政府としては、今後とも、地元の切実な声によく耳を傾け、地域の振興に全力をあげて取り組みながら、米軍再編を着実に進めていく」旨の答弁があった。

(対北朝鮮外交)

「対北朝鮮外交の方針」に関する質疑に対して、「日朝平壌宣言にのっとり、不幸な過去を清算し、核、拉致、ミサイル等の諸懸案を包括的に解決し、国交正常化を実現するという方針に変更はない。また、六者会合の共同声明を全体としてバランスよく実施することが重要であり、今後とも朝鮮半島の非核化と拉致問題を含む日朝関係の双方がともに前進するよう最大限の努力を行っていく」旨の答弁があった。

(その他の内政・外交上の懸案事項)

[1]「障害者自立支援法の見直し」に関する質疑に対して、「既に3年間で国費1,200億円の特別対策を講じているが、その政策効果を見極めつつ、抜本的見直しに向け、制度全体にわたる議論を行っていく」旨の答弁があった。

[2]「少子化対策」に関する質疑に対して、「安心して子どもを産み育てることができる社会とするためには、児童手当をはじめとする経済的支援に加え、ワークライフバランスの実現や多様な保育サービスの充実など、各種の取組を総合的に進めていくことが必要である。ただし、次世代育成のための費用を次世代の負担によって賄うことのないよう、財源は現時点で手当てすることが重要であり、今後、このような観点から、年末までに重点戦略を取りまとめていく」旨の答弁があった。

[3]「高齢者医療制度の見直し」に関する質疑に対して、「昨年実施した医療制度改革の理念や方向性を堅持しつつ、70歳から74歳の患者負担の引上げ及び被扶養者からの保険料徴収の凍結について、今後、予算措置も含めて十分に検討していく」旨の答弁があった。

[4]「教育再生」に関する質疑に対して、「教育は家庭にとって極めて関心の高い問題であり、学校のみならず、家庭、地域、行政が一体となって教育の再生に取り組んでいく。まず、信頼できる公教育を確立することが必要であり、教育サポート体制の推進や教育の事務負担を減らすことなどにより、教員が子どもたちと十分に向き合える時間を増やすように努めていく」旨の答弁があった。

[5]「ミャンマー情勢」に関する質疑に対して、「ミャンマーにおいて邦人が亡くなられたことは誠に遺憾であり、ミャンマー政府に抗議するとともに真相究明を求めている。ミャンマーの民主化や人権状況には強い懸念を有しており、ミャンマー政府には、対話によって事態を解決するよう、働きかけを行っている」旨の答弁があった。

そのほか、原爆症認定の見直し、肝炎対策、生活用品等の安全対策等について質疑が行われた。

3 主な議案等の審議

年月日 議案等
平成19年
9月10日
○国務大臣の演説
  • 安倍内閣総理大臣の所信表明演説
9月25日 ○内閣総理大臣の指名
  • 福田康夫君を内閣総理大臣に指名

(休憩)

  • 参議院において小沢一郎君を内閣総理大臣に指名した旨の通知受領及び内閣総理大臣の指名について両院の議決が一致しなかったため、両院協議会の開催を求められた旨の議長報告
  • 内閣総理大臣の指名両院協議会協議委員の選挙

(休憩)

  • 内閣総理大臣の指名両院協議会協議委員議長報告(成案を得ず)
  • 両院の意見が一致しないので憲法第67条第2項により、本院の指名が国会の議決となった旨の議長宣告
10月1日 ○国務大臣の演説

福田内閣総理大臣の所信表明演説
10月3日 ○国務大臣の演説に対する質疑

質疑

鳩山由紀夫君(民主)、伊吹文明君(自民)、長妻昭君(民主)

答弁

福田内閣総理大臣、町村内閣官房長官
10月4日 ○国務大臣の演説に対する質疑

質疑

太田昭宏君(公明)、志位和夫君(共産)、照屋寛徳君(社民)、下地幹郎君(国民)

答弁

福田内閣総理大臣、甘利経済産業大臣、渡海文部科学大臣、舛添厚生労働大臣
10月23日 ○趣旨説明
  • テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法案(内閣提出)
説明

町村内閣官房長官

質疑

浜田靖一君(自民)、鉢呂吉雄君(民主)、富田茂之君(公明)、赤嶺政賢君(共産)、阿部知子君(社民)、下地幹郎君(国民)

答弁

福田内閣総理大臣、町村内閣官房長官、石破防衛大臣、高村外務大臣
11月9日 ○本国会の会期を12月15日まで35日間延長するの件(議長発議)〈可決〉
11月13日 ○テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法案(内閣提出)〈可決〉

討論

田嶋要君(民主)、西村康稔君(自民)、赤嶺政賢君(共産)、谷口和史君(公明)、

阿部知子君(社民)
12月14日

○本国会の会期を平成20年1月15日まで31日間延長するの件(議長発議)〈可決〉

討論

三日月大造君(民主)、吉川貴盛君(自民)、佐々木憲昭君(共産)、日森文尋君(社民)

平成20年
1月11日
○参議院からテロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法案を否決した旨の通知受領及び返付を受けた旨の議長報告
  • 憲法第59条第2項に基づき、テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法案の本院議決案を議題とし、直ちに再議決すべしとの動議(大島理森君外103名提出)〈可決〉
討論

仙谷由人君(民主)、小坂憲次君(自民)、穀田恵二君(共産)、阿部知子君(社民)
  • テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法案、本院議決案〈出席議員の3分の2以上の多数をもって可決〉
1月15日 ○請願145件〈採択〉

衆議院
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