衆議院

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第1 平成20年の国会の動き

1国会の召集及び会期

平成20年には、第169回国会(常会)及び第170回国会(臨時会)が召集された。

第169回国会は、平成20年1月18日に召集され、会期は6月15日までの150日間であったが、6日間延長され、同月21日までの156日間となった。

第170回国会は、平成20年9月24日に召集され、会期は11月30日までの68日間であったが、25日間延長され、12月25日までの93日間となった。

2国会の主な動き

(1)概況

【第169回国会(常会)】

第169回国会は、平成20年1月18日に召集された。

召集日には、本会議において、議席の指定が行われた後、災害対策特別委員会外5特別委員会が設置された。

この国会においては、揮発油税等の道路特定財源に係る暫定税率の10年間延長などを盛り込んだ税制改正関連法案、道路特定財源を平成20年度以降10年間維持することなどを内容とする道路整備費財源等特例法改正案が大きな焦点となったほか、国家公務員制度改革基本法案、在日米軍駐留経費負担特別協定、保険法案、少年法改正案、地球温暖化対策推進法改正案などの審議が行われた。

このほか、少子高齢化社会と年金制度、医療制度、介護問題などが議論され、特に平成20年4月から導入された75歳以上を対象とする後期高齢者医療制度(長寿医療制度)が大きな争点となった。また、その政策執行の財源として、消費税問題、道路特定財源の一般財源化問題などが議論されたほか、地球環境問題、所得格差拡大問題、海上自衛隊のイージス艦衝突事故問題、年金記録問題、食の安全問題などが議論された。

(施政方針演説及び代表質問)

召集日の1月18日、衆参両院の本会議において、福田内閣総理大臣の施政方針演説、高村外務大臣の外交演説、額賀財務大臣の財政演説及び大田経済財政政策担当大臣の経済演説の政府4演説が行われた。

福田内閣総理大臣は冒頭で、「与野党が信頼関係の上に立ってよく話し合い、結論を出し、国政を動かしていくことこそ、国民に対する政治の責任である」と述べ、野党の意見を積極的に取り入れながら責任ある政治を遂行していくとの姿勢を明らかにした。

次いで、国政の基本方針として、[1]国民本位の行財政への転換、[2]社会保障制度の確立と安全の確保、[3]活力ある経済社会の構築、[4]平和協力国家日本の実現、[5]低炭素社会への転換の5つを掲げて、「自立と共生」の考えを基本理念とし、国民本位の信頼される政治や行政の実現に向け、全力で邁進すると表明した。

その上で、平成20年を生活者や消費者が主役となる社会へ向けたスタートの年と位置付け、各省庁縦割りになっている消費者行政を統一的・一元的に推進するため、強い権限を持つ新組織の発足と消費者行政担当大臣を常設する考えを示した。

行財政面については、行政に対する信頼を回復するとともに、国民生活に真に必要な分野の財源を確保するため、徹底した行財政改革を断行することとし、歳出歳入一体改革を徹底して進め、2011年度には国・地方の基礎的財政収支の黒字化を確実に達成する考えを明らかにした。

さらに、道路特定財源問題については、道路の維持・補修、救急病院への交通の利便性の確保、都市部の渋滞対策などの国民生活に欠かすことのできない対策の実施や地球温暖化問題への対応を行うためにも、現行の税率を維持する必要があるとし、「これまでの特定財源の仕組みを見直し、納税者の理解を得ながら一般財源を確保する」と述べた。

公務員制度の在り方については、行政に対する信頼を取り戻すため、公務員が能力を高め、国民の立場に立ち、誇りと責任を持って職務を遂行できるよう、総合的な公務員制度改革を進めていく考えを示した。

また、年金記録問題については、行政の不手際を改めて謝罪した上で、「私の内閣で解決するよう全力を尽くしていく」と述べ、記録の解明に向けて取り組んでいく姿勢を示した。

消費税については、社会保障を持続可能な制度とするため、安定した財源を確保しなければならないとした上で、「消費税を含む税体系の抜本的改革について早期に実現を図る必要がある」と述べ、各党各会派による協議が行われることを要望した。

外交面については、「外交力の強化が不可欠である」との認識を示した上で、日米同盟と国際協調を基本に、テロとの闘いや地球温暖化、貧困などの地球規模の課題の解決に積極的に取り組み、世界の平和と発展に貢献する「平和協力国家」として、国際社会において責任ある役割を果たしていく考えを示した。

さらに、迅速かつ効果的に国際平和協力活動を実施していくため、いわゆる一般法の検討を進めていくとの考えを明らかにした。

また、地球環境問題では、我が国の省エネ技術を最大限に活用して、「世界の先例となる低炭素社会への転換を進め、国際社会を先導していく」と述べた。

憲法改正については、「すべての政党の参加の下で、幅広い合意を求めて、真摯な議論が行われることを強く期待している」と述べた。

このほか、薬害肝炎問題の総合的な対策の実施、持続的な経済成長に向けた3つの柱から成る経済成長戦略の実行や地方自治体に一層の権限移譲を行う地方分権改革の議論の加速などに取り組んでいくとの姿勢を示した。

これに対する本会議の代表質問は、1月21日及び22日の両日行われ、地方分権改革、独立行政法人改革等の構造改革、道路特定財源問題、消費税を含む税制改革、原油高騰対策を含む世界経済の動向、年金記録問題、社会保障制度改革、地球温暖化問題、アジア外交の強化などについて議論が展開された。

参議院においては、同月22日及び23日に代表質問が行われた。

(平成19年度補正予算及び平成20年度総予算審議)

原油価格高騰への対応や災害対策、高齢者医療制度の円滑導入に係る費用などの追加歳出を盛り込んだ平成19年度補正予算及び歳出改革と成長力の強化、国民の安全・安心という課題等に配慮した平成20年度総予算は、1月25日に予算委員会で提案理由の説明が行われた。

平成19年度補正予算は、同委員会の審査を経て、1月29日の本会議で可決されたが、2月6日の参議院本会議において否決された。また、平成20年度総予算は、集中審議、公聴会、分科会等を含む同委員会の審査を経て、2月29日の本会議で記名投票の結果、可決されたが、3月28日の参議院本会議において否決され、いずれも衆参両院で異なる議決となった。

このため、平成19年度補正予算及び平成20年度総予算についてそれぞれ2月6日及び3月28日に両院協議会が開かれたが、いずれも両院の意見の一致がみられなかったため、憲法第60条第2項の規定に基づき本院の議決が国会の議決となった。

(主な議案の審議)

今国会の焦点となった、揮発油税等の道路特定財源に係る暫定税率の10年間延長などを盛り込んだ所得税法等改正案及び地方税法等改正案は、それぞれ財務金融委員会及び総務委員会の審査を経て、2月29日の本会議において可決され、参議院に送付されたが、参議院において、同両法律案の取扱いをめぐって与野党の協議が整わず審議が進まなかった。

このため、揮発油税等の暫定税率が期限切れとなる3月31日、国民生活への影響を回避するため、道路特定財源諸税を除く租税特別措置の期限を5月31日まで2か月延長することなどを内容とする国民生活等の混乱を回避するための租税特別措置法改正案(財務金融委員長提出)及び国民生活等の混乱を回避するための地方税法改正案(総務委員長提出)が提出され、同日の両院本会議において可決、成立した。

その後、所得税法等改正案及び地方税法等改正案は、参議院が両法律案の送付後60日以内に議決しなかったことを受け、4月30日の本会議において憲法第59条第4項の規定に基づき参議院が否決したものとみなす議決が行われた後、憲法第59条第2項の規定により、出席議員の3分の2以上の多数をもって再可決され、成立した。

なお、3月31日で期限が切れる揮発油税等の暫定税率を5月31日まで延長するための、国民生活等の混乱を回避し、予算の円滑な執行等に資するための租税特別措置法改正案等(議員立法)が、1月29日提出され、翌30日、財務金融委員会及び総務委員会にて可決されたが、31日、両委員会において提出者からの申出により撤回が許可された。

また、道路特定財源を平成20年度以降10年間維持することなどを内容とする道路整備費財源等特例法改正案は、国土交通委員会の審査を経て、3月13日の本会議で可決され参議院に送付されたが、5月12日の参議院本会議において否決され、衆参両院で異なる議決となった。このため、同改正案は、翌13日の本会議において憲法第59条第2項の規定により、出席議員の3分の2以上の多数をもって再可決され、成立した。【詳細は、(2)財政関係(道路特定財源制度と平成20年度税制改正)参照】

国家公務員制度改革を総合的かつ集中的に推進するため、内閣に「国家公務員制度改革推進本部」を設置し、幹部職員等の人事を一元管理する組織の創設や、現行の採用試験の見直し、幹部候補育成過程の整備等を盛り込んだ国家公務員制度改革基本法案が、内閣委員会の審査を経て、5月29日の本会議で修正議決され、6月6日の参議院本会議において可決、成立した。【詳細は、(3)国家公務員制度改革関係参照】

在日米軍駐留経費の日本側負担(在日米軍基地の日本人従業員の給与や米軍家族住宅の光熱水料など)に関する特別協定を新たに3年間延長するための在日米軍駐留経費負担特別協定が、外務委員会の審査を経て、4月3日の本会議で承認されたが、4月25日の参議院本会議で不承認と議決され、衆参両院で異なる議決となった。このため、同日両院協議会が開かれたが意見の一致がみられなかったため、同条約は憲法第61条の規定に基づき本院の議決が国会の議決となった。【詳細は、(4)在日米軍駐留経費負担関係参照】

商法の保険契約に関する規定を全面的に見直し、保険契約に関する単行法を制定するとともに、共済契約を法律の対象に含め、傷害疾病保険契約の規定を新設すること等を内容とする保険法案が、法務委員会の審査を経て、4月30日の本会議で可決され、5月30日の参議院本会議において可決、成立した。【詳細は、(5)保険法関係参照】

少年審判における傍聴を犯罪被害者等に認める少年法改正案が、法務委員会の審査を経て、6月3日の本会議で修正議決され、同月11日の参議院本会議において可決、成立した。【詳細は、(6)少年法関係参照】

京都議定書の目標達成を確実にするための対策強化等を柱とした地球温暖化対策推進法改正案が、環境委員会の審査を経て、4月25日の本会議で修正議決され、6月6日の参議院本会議において可決、成立した。【詳細は、(7)地球温暖化対策関係参照】

また、新型インフルエンザの発生に備えた対策を盛り込んだ感染症予防法・検疫法改正案が、厚生労働委員会の審査を経て、4月24日の本会議で修正議決され、翌25日の参議院本会議において可決、成立した。

北朝鮮関係では、平成18年10月の北朝鮮の核実験を受けて実施中の外為法及び特定船舶入港禁止法に基づく制裁措置(北朝鮮からの輸入及び船舶の入港禁止等)について、日本人拉致問題での進展が依然みられない上、核開発問題でも「完全かつ正確な核計画の申告」が実行されていないことを踏まえ、4月22日、これら制裁措置の期限を半年間延長することを内容とする承認案件が提出された。両案件はそれぞれ、経済産業委員会及び国土交通委員会の審査を経て、ともに6月3日の本会議で承認され、同月11日の参議院本会議において承認された。

宇宙開発利用に関する施策の総合的かつ計画的な推進のため、宇宙開発利用に関する基本理念及び基本事項を定め、宇宙基本計画の作成及び宇宙開発戦略本部の新設等を柱とする宇宙基本法案(内閣委員長提出)が、5月13日の本会議で可決され、同月21日の参議院本会議において可決、成立した。

このほか、被害者参加人のための国選弁護制度を導入する犯罪被害者保護法及び総合法律支援法改正案、悪質商法の被害者に代わって消費者団体が業者の不当行為を差止請求できる「消費者団体訴訟制度」の適用範囲を拡大する消費者契約法等改正案、地域再生事業を手掛ける企業などに対する支払利息の補てん制度などを盛り込んだ地域再生法改正案、平成20年5月に起きた中国・四川大地震での教訓を受け、学校施設の耐震化を促進させる地震防災対策特別措置法改正案(文部科学委員長提出)などが成立した。

継続審査となった主な法律案としては、第166回国会に提出され継続審査となっていた厚生年金と公務員共済年金を一元化する年金一元化法案及び残業代の割増率の引上げを盛り込んだ労働基準法改正案があり、第169回国会提出法律案では、政府管掌健康保険の国庫負担を大企業の健康保険組合などに肩代わりさせる政管健保支援特例措置法案、基礎年金の国庫負担割合を引き上げる国民年金法等改正案、地域の経済で重要であるが債務超過に陥った企業を支援する地域力再生機構法案などがある。

なお、平成20年4月から導入された75歳以上を対象にした後期高齢者医療制度(長寿医療制度)について、同制度の趣旨や手続の運用、保険料の徴収等に問題が発生し、同制度の存続の是非等が議論になった。その後、同制度を来年3月末で廃止し、従来の老人保健制度に戻す後期高齢者医療制度廃止等緊急措置法案が、6月6日の参議院本会議で可決されたが、本院で継続審査となった。

また、本院で可決され参議院に送付された防衛省設置法等改正案及び児童福祉法等改正案は参議院において審査未了となった。

主な決議案としては、福田内閣信任決議案が6月11日提出され、翌12日の本会議において可決された。

(その他)

6月6日、衆参両院本会議において、アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議案及び国民読書年に関する決議案が可決された。

6月11日、参議院本会議において、内閣総理大臣福田康夫君問責決議案が可決された。

6月21日、同月14日に発生した「平成20年岩手・宮城内陸地震」の被害状況等調査のため、災害対策特別委員会による委員派遣が行われた。

(会期末)

6月13日の本会議において、今国会の会期を6月21日まで6日間延長することが議決された。

会期最終日前日の6月20日、本会議において閉会中審査の手続や請願採択等が行われ、翌21日、第169回国会は終了した。

なお、ASEAN貿易投資観光促進センター設立協定改正及び日・ASEAN包括的経済連携協定の2条約については、本院送付の日から30日目に当たる6月20日中に参議院が議決するに至らなかったので、憲法第61条の規定により衆議院の議決が国会の議決(自然承認)となった。

(成立した主な法律案等)

本国会において成立した法律案は、内閣提出法律案が63件、議員提出法律案が17件であった。前記以外の主なものとして、内閣提出法律案では、観光圏整備法案、犯罪被害者等給付金支給法改正案、義務教育標準法改正案、公害健康被害補償法改正案、電波法改正案、中小企業経営承継円滑化法案、特定電子メール送信適正化法改正案、特定商取引法等改正案等がある。

議員提出法律案では、介護従事者等人材確保法案、生物多様性基本法案、石綿健康被害救済法改正案、オウム真理教犯罪被害者等救済法案、青少年インターネット環境整備法案等がある。

条約では、日中間の捜査協力を円滑化するための日中刑事共助条約、日・ASEAN包括的経済連携協定等、16件が承認された。

(第169回国会閉会後)

7月7日から9日まで、福田内閣総理大臣が主催国議長を務める第34回主要国首脳会議(G8北海道洞爺湖サミット)が、日本(北海道)で開かれた。

また、8月31日から9月3日まで、河野衆議院議長が主催する第7回G8下院議長会議が日本(広島)で開かれた(日本では初開催)。

また9月1日、福田内閣総理大臣が辞任の意向を表明した。これを受け、自民党総裁選が行われ、9月22日、麻生太郎新総裁が選出された。

【第170回国会(臨時会)】

第170回国会は、平成20年9月24日に召集された。

召集日には、本会議において、議席の指定が行われ、会期が11月30日までの68日間と議決された後、議院運営委員長の選挙が行われ、引き続き、災害対策特別委員会が設置された。

次いで、福田内閣の総辞職に伴う、内閣総理大臣の指名の投票が行われ、記名投票の結果、麻生太郎君337、小沢一郎君117、志位和夫君9、綿貫民輔君7、福島みずほ君7、平沼赳夫君1で麻生太郎君が内閣総理大臣に指名された。

なお、参議院においては、同日、小沢一郎君が内閣総理大臣に指名されたため、両院協議会を開いて協議したが成案を得ず、憲法の規定に基づき麻生太郎君が内閣総理大臣に指名された。

同月29日、本会議において、内閣委員長外12常任委員長の辞任に伴う選挙が行われ、政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会外4特別委員会が設置された。同日、麻生内閣総理大臣の所信表明演説、中川財務大臣の財政演説が行われた。

この国会においては、平成21年1月15日に期限を迎えるインド洋での補給支援活動を1年間延長する補給支援特措法改正案、米国発の世界的金融危機に対処するため、金融機関への予防的な資本注入を可能にする金融機能強化法改正案などの審議が焦点となった。

このほか、経済対策が議論され、特に、総額2兆円の定額給付金などを柱とする追加経済対策、非正規雇用労働者の失業問題(いわゆる派遣切り)を中心とする雇用と労働環境の整備が大きな焦点になった。また、後期高齢者医療制度(長寿医療制度)の見直し、年金記録問題、いわゆる事故米の流通と食の安全、地球温暖化対策、道路特定財源の一般財源化などが議論された。

(所信表明演説及び代表質問)

9月29日、衆参両院の本会議において、麻生内閣総理大臣の所信表明演説、中川財務大臣の財政演説が行われた。

麻生内閣総理大臣は冒頭で、「日本は強くあらねばなりません」「日本は明るくなければなりません」と訴え、「日本国と日本国民の行く末に平和と安全を。人々の暮らしに落ちつきと希望を。そして子供たちの未来に夢を。私は、これらをもたらし、盤石のものとすることに本務があると深く肝に銘じ、内閣総理大臣の職務に一身をなげうって邁進する」との決意を述べた。

次いで、国会運営については、「政治とは国民の生活を守るためにある」との本旨を達成するため、与野党合意形成のルールを打ち立てるべきとの考えを示した。

その上で、緊急の課題は「日本経済の立て直しである」とし、当面は景気回復、中期的には財政再建、中長期的には改革による経済成長の3段階を踏んで臨むとの基本方針を示した。

第1段階の景気対策については、政府・与党の「安心実現のための緊急総合対策」を挙げ、物価高、景気後退の直撃を受けた人々や農林水産業・中小零細企業、雇用や医療に不安を感じる人々に安心をもたらすとともに、改革を通じて経済成長を実現すると述べた。そして、平成20年度内に定額減税を実施する考えを明らかにした。

第2段階の財政再建については、国、地方の基礎的財政収支を2011年までに黒字にする目標を立て、日本経済の持続的で安定した繁栄を基本線として財政再建に取り組む姿勢を示した。

第3段階の改革による成長については、新たな産業や技術により、新規の需要と雇用を産み出すため「新経済成長戦略」を強力に進める考えを示した上で、日本経済の立て直しに3年で大体の目途をつけるとの見通しを明らかにした。

また、年金記録問題については、手間と暇を惜しまず確かめ続けるとし、さらに年金等の社会保障財源をどう安定させるか検討を急ぐ考えを明らかにした。

後期高齢者医療制度(長寿医療制度)については、同制度に対する高齢者の納得を得られるよう、1年を目途に、必要な見直しを検討する意向を示した。

また、救急医療のたらい回し、産科や小児科の医師不足、妊娠や出産費用の不安等の解決に努めるとともに、最低賃金の引上げ、労働者派遣制度の見直しや保護者が納得する質の高い教育の実現、治安への信頼をとり戻す考えを強調した。いわゆる事故米については、事故米と知りつつ流通させた企業の責任は、断固処断されるべきとし、これを見逃した行政の責任を認めた。そして、消費者の利益を守るため、「消費者庁」を設置し、身近な相談窓口を一元化するとともに、商品に重大な事故が起きた場合、販売を禁止する権限を持たせる考えを明らかにした。

行政改革については、簡素にして国民に温かい政府をつくるため、自ら先頭に立って公務員を活用する決意を示した。

地域の再生については、地方自治体が権限と責任を持てるよう、地方分権を進め、最終的に地域主権型道州制を目指す考えを述べた。

農林水産業については、食料自給の重要さを改めて見直し、50%の自給率を目指す考えを述べた。

環境問題、とりわけ地球温暖化問題については、第1に成長と両立する低炭素社会を世界に先駆けて実現すること、第2に我が国が強みを持つ環境・エネルギー技術を育てていくこと、第3に世界で先頭を行く環境・省エネ国家として、国際的なルールづくりを主導していくことを挙げた。

外交については、日米同盟の強化を第1とし、隣国である中国・韓国やロシアをはじめアジア・太平洋の諸国と共に地域の安定と繁栄を築き、共に伸びていくとの考えを強調した。北朝鮮への対応については、朝鮮半島の安定化を心がけながら、拉致、核、ミサイル問題を包括的に解決し、不幸な過去を清算し、日朝国交正常化を図るべく、すべての拉致被害者の一刻も早い帰国の実現を図る決意を示した。

そして、海上自衛隊によるインド洋での補給支援活動については、我が国の国益のために行ってきたものであるとの考えを表明した上で、インド洋での補給支援活動を続ける考えを示した。

終わりに、与野党の政策協議を呼びかけるとともに、民主をはじめとする野党に対し国会運営への協力を要請した。

これに対する本会議の代表質問は、10月1日及び2日の両日行われ、定額減税実施と財源問題、基礎年金国庫負担の財源問題、後期高齢者医療制度(長寿医療制度)の見直し、労働法制の見直し、消費税を含む税制改革、厚生年金の標準報酬月額改ざん問題などについて議論が展開された。

参議院においては、同月2日及び3日に代表質問が行われた。

(平成20年度第1次補正予算審議)

生活者の不安の解消や住まいと防災対策など、「安心実現のための緊急総合対策」(平成20年8月29日決定)を実施するために必要な経費の追加等を盛り込んだ平成20年度第1次補正予算は、10月2日に予算委員会で提案理由の説明が行われ、同委員会の審査を経て、同月8日の本会議において可決され、同月16日の参議院本会議において可決、成立した。

(主な議案の審議)

平成21年1月15日に期限を迎えるインド洋における海上自衛隊の補給支援活動を1年間延長するための補給支援特措法改正案が、テロ・イラク特別委員会の審査を経て、10月21日の本会議で記名投票の結果、可決され、参議院に送付されたが、12月12日の参議院本会議において否決され、衆参両院で異なる議決がなされた。このため、同改正案は憲法第59条第2項の規定に基づき、同日の本会議において出席議員の3分の2以上の多数をもって再可決され、成立した。

なお、第168回国会に参議院から送付され本院で継続審査となっていたアフガニスタン復興支援特措法案(参議院提出)は、10月21日の本会議で記名投票の結果、否決された。【詳細は、(8)テロ対策関係参照】

米国発の世界的な金融危機に対処するため、平成20年4月以降も金融機関への予防的な資本注入を可能にすること等を内容とする金融機能強化法改正案が、財務金融委員会の審査を経て、11月6日の本会議で修正議決され参議院に送付された。同送付案は、12月12日の参議院本会議で修正議決され、本院に回付された。

同回付案については、同日の本会議において参議院の修正に同意しないことに決し、憲法第59条第2項の規定により、出席議員の3分の2以上の多数をもって本院の送付案が再可決され、成立した。なお、11月6日に本院から送付された保険契約者保護のための保険業法改正案は、12月12日の参議院本会議において可決、成立した。【詳細は、(9)金融危機対策関係参照】

所得税法改正法等の成立が平成20年4月1日以降となったために生じた地方税等の収入の減少を補てんするための地方税等減収補てん臨時交付金法案が、総務委員会の審査を経て、10月8日の本会議で可決され、同月16日の参議院本会議において可決、成立した。

北朝鮮関係では、外為法及び特定船舶入港禁止法に基づく制裁措置(北朝鮮からの輸入及び船舶の入港禁止等)の期限を半年間延長する4回目の承認案件が提出された。両案件は、経済産業委員会及び国土交通委員会の審査を経て、ともに11月14日の本会議で承認され、同月21日に特定船舶入港禁止法に基づく承認案件が、同月26日に外為法に基づく承認案件が、それぞれ参議院本会議において承認された。

このほか、今国会成立した主な法律案としては、銃砲や刀剣を使用した凶悪犯罪に対応し、所持の禁止の対象となる剣の範囲を拡大する等の銃砲刀剣類所持等取締法改正案、児童福祉施設内の虐待を防ぐための対策を強化する等の児童福祉法等改正案、第166回国会に提出され継続審査となっていた時間外労働に対する法定割増賃金率の引上げ等を盛り込んだ労働基準法改正案などが成立した。

継続審査となった主な法律案としては、第166回国会に提出され継続審査となっていた厚生年金と公務員共済年金を一元化する年金一元化法案、第169回国会に提出され継続審査となっていた、地域の経済で重要であるが債務超過に陥った企業を支援する地域力再生機構法案、第170回国会提出法律案では、消費者政策の一体的運用を図るための消費者庁の設置を含めた消費者庁関連3法案、日雇労働者の労働者派遣を原則として禁止する労働者派遣法改正案などがある。

なお、第169回国会に参議院から送付され、本院で継続審査となっていた、後期高齢者医療制度(長寿医療制度)を平成21年3月末で廃止し、従来の老人保健制度に戻す後期高齢者医療制度廃止等緊急措置法案(参議院提出)も継続審査となった。

決議案としては、衆議院解散要求に関する決議案が12月24日提出され、同日の本会議において否決された。

(その他)

12月24日、本会議において、第171回国会から内閣委員会の委員数(30人)を40人とする衆議院規則改正案が可決された。

(会期末)

11月28日の本会議において、今国会の会期を12月25日まで25日間延長することが議決された。

会期最終日前日の12月24日、本会議において閉会中審査の手続や請願採択等が行われ、翌25日、第170回国会は終了した。

(成立した主な法律案)

本国会において成立した法律案は、内閣提出法律案が14件、議員提出法律案が1件であった。前記以外の主なものとしては、内閣提出法律案では、長期優良住宅普及促進法案(継続)、障害者雇用促進法改正案(継続)、国籍法改正案等がある。

議員提出法律案では、国民健康保険法改正案(厚生労働委員長提出)がある。

第169回国会開会式
第169回国会開会式

(2) 財政関係(道路特定財源制度と平成20年度税制改正)

(ア 国会で議論されるに至った経緯)

(ア) 道路特定財源制度

道路特定財源制度は、揮発油税等の間接諸税の税収の全部又は一部の使途を特定し、道路を計画的に整備するための制度であり、昭和29年に導入されたものである。道路特定財源には、揮発油税、地方道路税、石油ガス税、自動車重量税(以上国税)、軽油引取税、自動車取得税(以上地方税)が充てられている。使途については、揮発油税及び石油ガス税は「道路整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」、地方道路税は「地方道路税法」、軽油引取税及び自動車取得税は「地方税法」の規定により、自動車重量税は、税創設及び運用の経緯から道路特定財源とされている。また、石油ガス税を除く各税目には、「租税特別措置法」及び「地方税法」の規定により本則税率を上回る暫定税率が課されている。

道路特定財源については、その一部を充ててきた本州四国連絡橋公団の債務返済が平成18年度で終了したことや公共事業関係費の削減等により、平成19年度から余剰財源が生じる見込みがでてきたことなどを背景に同財源の一般財源化問題などの議論が行われることとなった。

この問題について政府・与党は、平成17年12月9日、「道路特定財源の見直しに関する基本方針」を決定した。同方針では、[1]真に必要な道路は計画的に整備を進めること、[2]現行の税率水準を維持すること、[3]一般財源化を図ることを前提とし、納税者の理解を得つつ、具体案を得ることとされた。その後、「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」(行政改革推進法)及び「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」(平成18年7月閣議決定)においても、一般財源化を前提とした見直しが明記された。

これらに基づき、平成18年12月8日、政府・与党が合意した「道路特定財源の見直しに関する具体策」(以下「具体策」という。)が閣議決定された。具体策では、[1]平成19年中に、今後の具体的な道路整備の姿を示した中期的な計画を作成する、[2]平成20年度以降も現行の税率水準を維持する、[3]税収の全額を道路整備に充てることを義務付けている現在の仕組みは改めることとし、平成20年の通常国会において所要の法改正を行うなどとされた。

翌19年12月7日、政府・与党において「道路特定財源の見直しについて」が合意され、[1]道路の中期計画は今後10年間を見据えたものとし事業量は59兆円を上回らないものとする、[2]揮発油税の税収等の全額を、道路整備に充てることを義務付けている「道路整備費の財源等の特例に関する法律」の規定を改める、[3]道路歳出を上回る税収について、環境対策等の政策課題への対応も考慮して、納税者の理解の得られる歳出の範囲内で、一般財源として活用する、[4]平成20年度以降10年間、暫定税率による上乗せ分を含め、現行の税率水準を維持するなどの措置を講じることとされた。

このような経緯を経て、平成20年1月23日、道路整備費の財源等の特例に関する法律の一部を改正する法律案が国会に提出された。

一方、民主党の税制改革大綱(平成19年12月26日。以下「民主党大綱」という。)においては、自動車関係諸税のうち、特定財源に係わるものについて、地方分を含めてすべて一般財源化すること、また、暫定税率も地方分を含めてすべて廃止することなどの方針が示された。

(イ) 平成20年度税制改正

消費税を含む税体系の抜本的改革という政府の方針が掲げられている中で、平成20年度税制改正は、与党の平成20年度税制改正大綱(平成19年12月13日)において、税体系の抜本的改革に向けた橋渡しという位置付けが示された。

政府においては、平成20年1月11日、平成20年度税制改正の要綱が閣議決定され、同月23日に所得税法等の一部を改正する法律案が、同月25日に地方税法等の一部を改正する法律案が国会に提出された。

両法律案(以下「税制改正関連法案」という。)には、道路特定財源に係る暫定税率をはじめとして、平成19年度末に適用期限が到来する租税特別措置等(特定の政策目的実現のための特例)の適用期限の延長等の改正が含まれていた。

一方、民主党大綱においては、前述のとおり道路特定財源に係る暫定税率はすべて廃止するとされたほか、租税特別措置の見直しについても明記された。

このため、道路特定財源に係る暫定税率の延長問題や租税特別措置の在り方が大きな焦点となっていた。

1月29日、与党から、いわゆるセーフティーネット法案(「国民生活等の混乱を回避し、予算の円滑な執行等に資するための租税特別措置法の一部を改正する法律案」、「国民生活等の混乱を回避し、予算の円滑な執行等に資するための関税暫定措置法の一部を改正する法律案」及び「国民生活等の混乱を回避し、地方団体における予算の円滑な執行等に資するための地方税法の一部を改正する法律案」)が国会に提出され、財務金融委員会及び総務委員会に付託された。

3法律案は、税制改正関連法案を含めた歳入関連法案の審議の長期化により、法律としての施行が平成20年4月1日以後となる場合に備え、国民生活等の混乱を回避すること等の観点から、平成19年度末等に期限の到来する租税特別措置等のうち、納税義務の成立時期等に照らしてその期限を延長する必要性が認められるものに限り、暫定的に平成20年5月31日まで延長する措置を講ずるものである。なお、これらの法律案には、道路特定財源に係る暫定税率に関する規定も含まれていた。

3法律案は、1月30日、野党が強く抗議する中、両委員会において可決されたが、これを契機に国会は紛糾することとなった。

こうした事態に対し、衆参両院議長から、与野党に対してあっせんが行われた。その内容は、[1]予算及び歳入関連法案の徹底した審議を行った上で年度内に一定の結論を得る、[2]税法について各党間で合意が得られたものについては立法府において修正する、[3]これらの内容について与野党間で明確な同意が得られた場合はいわゆるセーフティーネット法案を取り下げるというものであった。このあっせんを与野党が受け入れ、3法律案は、1月31日、両委員会において撤回が許可された。

2月に入り、税制改正関連法案については、両委員会において質疑が行われ、2月29日、野党が強く反発する中、可決された。同日の本会議においては、共産を除く野党各会派が欠席する中、税制改正関連法案は可決されたが、国会は再び紛糾する事態となった。

次第に税制改正関連法案の年度内成立が不透明な状況となる中、3月27日、福田内閣総理大臣から、道路特定財源制度の廃止と平成21年度からの一般財源化、暫定税率分を含めた税率の今後の検討、道路の中期計画の見直しなどを柱とする提案が表明されたが、事態打開には至らなかった。

その後、与党から、道路特定財源に係る国税・地方税を除き、平成19年度末に期限切れを迎える租税特別措置等の一部については、現行の税法の適用期限を延長する等の提案がなされた。

この与党の提案について、同月28日、両院議長同席の下、各党間において協議が行われた結果、適用期限を2か月延長すること等について合意された。

この合意を受けて、同月31日、総務委員会から、国民生活等の混乱を回避するための地方税法の一部を改正する法律案が、財務金融委員会から、国民生活等の混乱を回避するための租税特別措置法の一部を改正する法律案がそれぞれ国会に提出された。両法律案は、道路特定財源に係る暫定税率に関する規定を除き、いわゆるセーフティーネット法案と同様の内容であった。

(イ 関連議案の概要)

(ア) 国民生活等の混乱を回避するための地方税法の一部を改正する法律案(総務委員長提出)

平成20年度の税制改正に係る地方税法等の一部を改正する法律案((イ)参照)の法律としての施行が平成20年4月1日後となる場合に備え、国民生活等の混乱を回避するための措置を講じようとするもので、その主な内容は、

 平成20年3月31日に期限の到来する地方税における非課税等特別措置のうち、当該措置に係る納税義務の成立時期等に照らしてその期限を延長する必要性が認められる自動車取得税に係る以下の措置について、その期限を暫定的に平成20年5月31日まで延長すること

  1. 過疎バスに係る非課税措置
  2. 免税点の特例措置
  3. 低燃費車に係る課税標準の特例措置
  4. 大型ディーゼル車に係る税率の特例措置

 この法律は、平成20年4月1日から施行すること。ただしcについては地方税法等の一部を改正する法律の公布の日から施行すること

 地方税法等の一部を改正する法律((イ)参照)について所要の規定の整備を行うこと

等である。

(イ) 地方税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

最近における社会経済情勢等にかんがみ、個人住民税、自動車取得税、軽油引取税等につき、所要の措置を講じようとするもので、その主な内容は、

 公益法人関係税制について、公益法人制度改革に対応した所要の改正を行うこと

 平成21年度以降の各年度分の個人住民税に係る寄附金税制について、控除対象寄附金の拡大等を図るとともに、地方公共団体に対する寄附金税制を見直すこと

 個人住民税における上場株式等に係る譲渡所得等及び配当所得の軽減税率を見直すこと

 平成21年度から、個人住民税の公的年金からの特別徴収制度を創設すること

 自動車取得税及び軽油引取税に係る税率の特例措置の適用期限を平成30年3月31日まで延長すること

 非課税等特別措置の整理合理化を行うこと

 この法律は、一部の規定を除き、平成20年4月1日から施行すること

等である。

(ウ) 国民生活等の混乱を回避するための租税特別措置法の一部を改正する法律案(財務金融委員長提出)

平成20年度の税制改正に係る所得税法等の一部を改正する法律案((エ)参照)の法律としての施行が平成20年4月1日後となる場合に備え、その際の国民生活等の混乱を回避する観点から、同年3月31日に期限の到来する租税特別措置のうち当該措置に係る納税義務の成立時期等に照らしてその期限を延長する必要性が認められるものの一部について、その期限を暫定的に同年5月31日まで延長する措置を講じようとするもので、具体的には、次に掲げる租税特別措置が対象とされた。

 特別国際金融取引勘定(オフショア勘定)において経理された預金等の利子の非課税

 外国金融機関等の債券現先取引(レポ取引)に係る利子の課税の特例

 土地の売買による所有権の移転登記等の税率の軽減等

 入国者が輸入するウイスキー等に係る酒税の税率の特例

 入国者が輸入する紙巻たばこのたばこ税の税率の特例

  特定の用途に供される揮発油に係る揮発油税及び地方道路税の免税

 特定の輸入石油製品等に係る石油石炭税の免税

(エ) 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

現下の経済・財政状況等を踏まえ、持続的な経済社会の活性化を実現する等の観点から、公益法人制度改革に対応する税制措置を講ずるとともに寄附税制の見直しを行うほか、法人関係税制、中小企業関係税制、金融・証券税制、土地・住宅税制、国際課税、道路特定財源諸税等について所要の措置を講じようとするもので、その主な内容は、

 公益社団法人、公益財団法人等について収益事業課税を適用するほか、公益社団法人及び公益財団法人が収益事業から公益目的事業の実施のために支出した金額を寄附金の額とみなすなど新たな法人類型に係る税制上の措置を講ずること

 法人関係税制について、従来の試験研究費の総額に係る税額控除制度とは別枠で追加的な税額控除制度の創設等を行うこと

 中小企業関係税制について、一定の特定中小会社に出資した場合に寄附金控除を適用する制度を創設するほか、教育訓練費に係る特別税額控除を教育訓練費が増加しない場合でも総額の一定割合を税額控除できる制度への改組等を行うこと

 金融・証券税制については、上場株式等の譲渡益・配当に係る7%軽減税率を平成20年末をもって廃止するとともに、特例措置として、2年間、譲渡益・配当のうち一定金額まで7%の税率の適用等を行うこと

 土地・住宅税制については、土地の売買に係る登録免許税の軽減税率を段階的に引き上げ、適用期限を3年延長すること及び住宅の省エネ改修促進税制(住宅ローン控除制度の特例)の創設等を行うこと

  国際課税についてはオフショア勘定及び外国金融機関等のレポ取引に係る利子の非課税措置の適用期限の撤廃等を行うこと

 道路特定財源諸税については、揮発油税等の税率の特例措置(いわゆる暫定税率)の適用期限を10年延長する措置等を行うこと

等である。

(オ) 道路整備費の財源等の特例に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

道路整備費の財源の特例措置を改めるとともに、その適用期間を10年間延長するほか、一般会計における独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構の債務の承継等の措置を講じようとするもので、その主な内容は、

 法律の題名を「道路整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」に改めること

 政府は、平成20年度以降10か年間は、毎年度、当該年度の揮発油税等の収入額の予算額等を道路整備費の財源に充てなければならないこと。ただし、その金額が当該年度の道路整備費の予算額を超えるときは、当該超える金額については、この限りでないこと

 国土交通大臣は、平成20年度以降10か年間に行うべき道路整備事業の量の案を作成して閣議の決定を求めなければならないこと

 国は、地方公共団体に対し、平成20年度以降10か年間は、毎年度、一般国道等の改築又は修繕に関する事業であって、一定の基準に適合するもののうち、当該10か年間に実施する必要があると認められる事業に要する経費の財源に充てるため、地方道路整備臨時交付金を交付すること

 国は、都道府県又は指定都市に対し、国土交通大臣が一般国道の新設又は改築を行う場合における当該都道府県又は指定都市の負担金の納付に要する費用に充てる資金の一部を、予算の範囲内において、無利子で貸し付けることができること

 政府は、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構の債務で、国土交通大臣が同意した高速道路利便増進事業(スマートインターチェンジの整備、高速道路料金の引下げ等)に関する計画に定められたものを、一般会計において承継すること

等である。

(ウ 審議経過)

(ア) 税制改正関連法案

国民生活等の混乱を回避するための地方税法の一部を改正する法律案は、平成20年3月31日、総務委員会において、同委員長から趣旨説明を聴取し、採決を行った結果、全会一致をもって起草案を成案とし、委員会提出の法律案とすることに決し、同日、提出された。

同日の本会議において、総務委員長の趣旨弁明の後、本法律案は可決された。

参議院においては、同日の本会議で可決され、成立した。

地方税法等の一部を改正する法律案は、平成20年1月25日に提出され、2月19日の本会議において趣旨説明の聴取及び質疑が行われた後、同日、総務委員会に付託された。

同委員会においては、同月21日に提案理由の説明を聴取し、質疑に入り、22日、福田内閣総理大臣に対する質疑が行われ、26日に学識経験者等4名の参考人からの意見聴取及び参考人に対する質疑が行われ、29日、質疑を終局し、採決の結果、本法律案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決された。

同日、本会議において、本法律案は可決、参議院に送付された。

本法律案の送付後60日を経過したが参議院においては議決に至らず、4月30日の本会議において憲法第59条第4項の規定に基づき参議院が否決したものとみなす議決が行われた後、憲法第59条第2項の規定により、出席議員の3分の2以上の多数をもって再可決され、成立した。

国民生活等の混乱を回避するための租税特別措置法の一部を改正する法律案は、平成20年3月31日、財務金融委員会において、同委員長から趣旨説明を聴取し、採決を行った結果、賛成多数をもって起草案を成案とし、委員会提出の法律案とすることに決し、同日、提出された。

同日の本会議において、財務金融委員長の趣旨弁明の後、本法律案は可決された。

参議院においては、同日の本会議で可決され、成立した。

所得税法等の一部を改正する法律案は、平成20年1月23日に提出され、2月19日の本会議において趣旨説明の聴取及び質疑が行われた後、同日、財務金融委員会に付託された。

同委員会においては、翌20日に提案理由の説明を聴取し、質疑に入り、同日、福田内閣総理大臣に対する質疑が行われ、26日に学識経験者4名の参考人からの意見聴取及び参考人に対する質疑が行われ、29日、質疑を終局し、採決の結果、本法律案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決された。

同日、本会議において、本法律案は可決、参議院に送付された。

本法律案の送付後60日を経過したが参議院においては議決に至らず、4月30日の本会議において憲法第59条第4項の規定に基づき参議院が否決したものとみなす議決が行われた後、憲法第59条第2項の規定により、出席議員の3分の2以上の多数をもって再可決され、成立した。

(イ) 道路整備費の財源等の特例に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

道路整備費の財源等の特例に関する法律の一部を改正する法律案は、平成20年1月23日に提出され、2月21日の本会議において趣旨説明の聴取及び質疑が行われた後、同日、国土交通委員会に付託された。

同委員会においては、翌22日、提案理由の説明を聴取し、質疑に入り、同日、福田内閣総理大臣に対する質疑が行われ、27日には、参考人からの意見聴取及び参考人に対する質疑が行われ、3月12日、質疑を終局し、討論・採決の結果、本法律案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決された。

翌13日の本会議において、本法律案は可決された。

参議院においては、5月12日の本会議で否決され、同日、衆議院に返付された。これを受けて、翌13日、本会議において、両院協議会を求める動議が否決された後、本法律案を直ちに再議決すべしとの動議が可決され、採決の結果、憲法第59条第2項の規定により、出席議員の3分の2以上の多数で再可決され、本法律案は成立した。

(エ 主な質疑事項)

税制改正関連法案に対する主な質疑事項は、[1]道路特定財源の暫定税率が廃止された場合の物価への影響及び暫定税率を維持する必要性、[2]研究開発税制及び情報基盤強化税制の特例措置による減収額及び効果、[3]証券税制が市場に与える影響、[4]租税特別措置の在り方と減税効果の実績額把握の必要性、[5]地方税に係る道路特定財源について、地方公共団体に一般財源化の自由を与えることについての国土交通大臣の見解、[6]地方税の抜本的改革の方向性等であった。

道路整備費の財源等の特例に関する法律の一部を改正する法律案に対する主な質疑事項は、[1]道路特定財源を一般財源化する必要性、[2]道路特定財源に係る暫定税率を維持する必要性、[3]道路の中期計画の妥当性等であった。

(3) 国家公務員制度改革関係

(ア 国会で議論されるに至った経緯)

(ア) 公務員制度改革の必要性

公務員制度改革は、行政ニーズに即応した人材を確保・育成し、公務員が国民全体の奉仕者として志を持って行政に専念できる環境を整備することにより、政府のパフォーマンスを高めることを目指すものである。

これまで、公務員は国民と国家の繁栄のために一定の役割を果たしてきたが、経済・社会の変化に対応して、多様性と迅速性が求められる現代において、その能力が十分に活かされているとは言い難いとの指摘がある。

一方、押し付け的あっせんによる公務員の再就職や官製談合、縦割り行政の弊害等に対する国民からの根強い批判がある。このような現状において、国民の信頼を回復し、また21世紀にふさわしい行政システムを支えるため、採用から退職にわたり、公務員の新たな人事管理システムを確立する、総合的な公務員制度改革を進めることが急務となっている。

政府においては、平成9年から総務庁(現総務省)に設置された公務員制度調査会(会長:辻村江太郎慶應義塾大学名誉教授)において、現行の国家公務員制度とその運用の在り方について全般的な検討を行うなど、今日まで、歴代内閣において公務員制度の抜本的な見直しについての検討が続けられてきた。

近年では、「行政改革大綱」(平成12年12月閣議決定)を踏まえ策定された「公務員制度改革大綱」(平成13年12月閣議決定)において、新たな公務員制度の概要が示されるとともに、国家公務員法の改正案について検討を進め、平成15年中を目標に国会に提出することとし、関係法律案の立案及び政令、各府省令等の下位法令の整備を平成17年度末までに計画的に行うこととされた。これを受け、政府においては、関係法律案の検討が進められたが、関係団体等との調整が整わず、法律案提出には至らなかった。

(イ) 「公務員制度改革について」の閣議決定

平成18年5月に、「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」(以下「行政改革推進法」という。)が成立し、この中で、[1]能力及び実績に基づく人事管理、退職管理の適正化等について、できるだけ早期に具体化のため必要な措置を講ずること、[2]公務員の労働基本権、人事院制度等について、幅広く検討すること、[3]国と民間企業との間の人事交流を促進するため必要な措置を講ずること等が定められた。

これらを受け、小泉内閣総理大臣の指示により、同年9月に「新たな公務員人事の方向性について」(試案)が中馬国務大臣において取りまとめられ、さらに、公務員制度改革の具体化に向けて、経済財政諮問会議等での議論、政府・与党内における検討を経て、平成19年4月24日、「公務員制度改革について」が閣議決定された。

「公務員制度改革について」では、[1]能力・実績主義、[2]再就職に関する規制を2本柱とする「国家公務員法等改正法案」を速やかに国会に提出するとともに、[1]専門スタッフ職の実現、[2]公募制の導入、[3]官民交流の抜本的拡大、[4]定年延長を含む採用から退職までの公務員の人事制度全般の課題について総合的・整合的な検討を進め、公務員制度の総合的な改革を推進するための基本方針を盛り込んだ「国家公務員制度改革基本法(仮称)」を平成20年の次期通常国会に向けて立案・提出することとされた。

なお、同日、「公務員制度改革について」を踏まえ、能力実績に基づく人事管理の徹底、離職後の就職に関する規制の導入、再就職等監視委員会及び官民人材交流センターの設置等を内容とする「国家公務員法等の一部を改正する法律案」が閣議決定され、同法律案は、翌25日に国会に提出され、同年6月30日に成立した。

(ウ) 公務員制度の総合的な改革に関する懇談会の開催

「公務員制度改革について」において、「総理の下に有識者からなる公務員制度に関する検討の場を設け、(中略)公務員の人事制度全般の課題について総合的・整合的な検討を進める」とされたことを受け、平成19年7月から、安倍内閣総理大臣の下に「公務員制度の総合的な改革に関する懇談会」(座長:岡村正株式会社東芝取締役会長)が開催された。

同懇談会は、同年7月から翌20年1月にかけて、「官民人材交流センターの制度設計に関する懇談会」との2回の合同会議を含む計14回の会議を重ね、同年2月5日、福田内閣総理大臣に「公務員制度の総合的な改革に関する懇談会」報告書を提出した。

同報告書においては、改革の主要項目として、[1]議院内閣制にふさわしい公務員の役割(公務員と政治家との厳格な接触ルールの確立、内閣一元管理システムの導入等)、[2]多様な能力、技術、経験を持つ人材の採用、育成、登用(キャリア・システムの廃止、幹部候補育成課程(仮称)の導入等)、[3]公務員の倫理の確立と評価の適正化、[4]国際競争力のある人材の確保と育成、[5]官民交流の促進(官民人材交流法(仮称)の制定等)、[6]働きに応じた処遇(ワーク・ライフ・バランス)、[7]国家公務員の人事管理に関する責任体制の確立(内閣人事庁(仮称)の創設等)の7点が挙げられるとともに、これらに関連する新制度の概要が示された。

また、労働基本権の付与については、行政改革推進本部専門調査会の報告を尊重し、あわせて、国における使用者機関の在り方について検討することとされた。

そして、政府において報告内容について速やかに具体化のための検討を進め、公務員制度の総合的な改革を可能なものから順次実施に移すこととされ、このため、平成21年の通常国会に内閣人事庁を設立するための法律案を提出するとともに、改革の実施に必要な関係法律案については、遅くとも平成23年の通常国会に提出し、本報告後5年以内に改革を実施することとされた。

(エ) 国家公務員制度改革基本法案の提出

政府においては、「公務員制度の総合的な改革に関する懇談会」の報告書を踏まえ、立案作業が進められ、国家公務員制度改革の基本理念及び基本方針その他の基本となる事項等を定める国家公務員制度改革基本法案は、平成20年4月4日に閣議決定され、同日、国会に提出された。

(イ 関連議案の概要)

国家公務員制度改革基本法案(内閣提出)

国家公務員一人ひとりが、その能力を高めつつ、国民の立場に立ち、責任を自覚し、誇りを持って職務を遂行することとするための国家公務員制度改革について、その基本理念及び基本方針その他の基本となる事項を定めるとともに、国家公務員制度改革推進本部を設置することにより、これを総合的に推進しようとするもので、その主な内容は次のとおりである。

(ア) 基本理念

国家公務員制度改革は、[1]議院内閣制の下、国家公務員がその役割を適切に果たすこと、[2]多様な能力及び経験を持つ人材を登用し、及び育成すること等を基本として行われるものとすること

(イ) 改革の実施及び目標時期等

政府は、(ウ)の基本方針に基づき、国家公務員制度改革を行うものとし、このために必要な措置については、この法律の施行後5年以内を、また、必要となる法制上の措置については、この法律の施行後3年以内を、それぞれ目途として講ずるものとすること

(ウ) 国家公務員制度改革の基本方針

a 議院内閣制の下での国家公務員の役割等
  1. 政府は、議院内閣制の下、国家公務員が内閣、内閣総理大臣及び各大臣を補佐する役割を適切に果たすこととするため、各府省に、国会議員への政策の説明その他の政務に関し、大臣を補佐する職(以下「政務専門官」という。)を置くとともに、政務専門官以外の職員が国会議員に接触することに関し、大臣の指示を必要とするなど、大臣による指揮監督をより効果的なものとするための規律を設けること等の措置を講ずるものとすること
  2. 政府は、職員の育成及び活用を府省横断的に行うとともに、幹部職員及び管理職員について、適切な人事管理を徹底するため、総合職試験の合格者からの採用及びこれに伴う各府省への配置の調整等の事務を内閣人事庁において一元的に行うこととするための措置を講ずるものとすること
b 多様な人材の登用等
  1. 政府は、採用試験について、多様かつ優秀な人材を登用するため、現行の採用試験を抜本的に見直し、採用試験の種類として、総合職試験、一般職試験、専門職試験を設けるとともに、これにあわせ、採用試験の区分として、院卒者試験、中途採用試験を設けること等の措置を講ずるものとすること
  2. 政府は、管理職員の職責を担うにふさわしい能力及び経験を有する職員を総合的かつ計画的に育成するための仕組み(幹部候補育成課程)を整備するものとすること
c 官民の人材交流の推進等

政府は、官民の人材交流を推進するとともに、官民の人材の流動性を高めるため、現行の制度を抜本的に見直し、官民交流法に規定する人事交流について、その透明性を確保しつつ、手続の簡素化及び対象の拡大等を行うこと等の措置を講ずるものとすること

d 国際競争力の高い人材の確保と育成

政府は、国際社会の中で国益を全うし得る高い能力を有する人材を確保し、及び育成するため、国際対応に重点を置いた採用を行うための措置等を講ずるものとすること

e 職員の倫理の確立及び信賞必罰の徹底

政府は、職員の倫理の確立及び信賞必罰の徹底のため、人事評価については、国民の立場に立ち職務を遂行する態度その他の職業倫理を評価の基準として行うものとすること等の措置等を講ずるものとすること

f 能力及び実績に応じた処遇の徹底等

政府は、職員が意欲と誇りを持って働くことを可能とするため、将来における定年の引上げについて検討すること等の措置を講ずるものとすること

g 内閣人事庁の設置

政府は、内閣人事庁を設置するものとし、このために必要な法制上の措置について、この法律の施行後1年以内を目途として講ずるものとすること

h 労働基本権

政府は、国家公務員の労働基本権の在り方については、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示してその理解を得ることが必要不可欠であることを勘案して検討すること

(エ) 国家公務員制度改革推進本部の設置

国家公務員制度改革を総合的かつ集中的に推進するため、内閣に、内閣総理大臣を本部長とする国家公務員制度改革推進本部を置くこと

(ウ 審議経過)

国家公務員制度改革基本法案は、5月9日の本会議において趣旨説明の聴取及び質疑が行われ、同日、内閣委員会に付託された。

同委員会においては、同日、提案理由の説明を聴取した後、14日から質疑に入り、22日に参考人からの意見聴取及び参考人に対する質疑が行われた。

28日には、自民、民主及び公明の三会派共同提案による修正案が提出された。同修正案の主な内容は、[1]幹部職員等の人事管理の内閣による一元化を明確化するための措置を講ずること、[2]政務専門官を置く旨の規定及びその他の職員の国会議員への接触制限に関する規定を削除し、政官関係の透明化を含めた政策の立案等の責任の明確化等に関する措置を講ずること、[3]定年を段階的に65歳に引き上げることについて検討すること、[4]内閣人事庁の設置に代えて、内閣官房に内閣人事局を置くこと、[5]労働基本権に関する規定を改めること等であった。

同日、修正案提出者から趣旨の説明を聴取した後、原案及び修正案を一括して質疑を行い、質疑を終局した。次いで、討論・採決の結果、修正案及び修正部分を除く原案は、いずれも賛成多数をもって可決され、修正議決すべきものと議決された。

翌29日の本会議において、本法律案は修正議決された。

参議院においては、6月6日の本会議で可決され、成立した。

(エ 主な質疑事項)

国家公務員制度改革基本法案(原案)に対する主な質疑事項は、[1]政官接触の集中管理に伴う議員活動への影響、[2]内閣人事庁の権限及び各府省との関係、[3]幹部職員の所属を明確にする必要性、[4]官民交流の透明性を確保する必要性、[5]幹部候補育成課程対象者の選抜方法、[6]早期退職勧奨慣行の是正に向けた取組状況、[7]国家公務員制度改革推進本部事務局の組織及びメンバー構成等であった。 また、修正案に対する主な質疑事項は、[1]職員が国会議員と接触した場合に作成する記録の内容、[2]定年引上げによる高齢公務員に対する給与抑制の可能性、[3]自律的労使関係制度の具体的内容等であった。

(4) 在日米軍駐留経費負担関係

(ア 国会で議論されるに至った経緯)

(ア) 日米地位協定による経費負担

我が国に駐留する合衆国軍隊を維持することに伴う経費(在日米軍駐留経費)は、昭和35年、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」(日米安全保障条約)第6条に基づき、我が国と米国との間で締結した「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定」(以下「日米地位協定」という。)により、日米両国で負担することになっている。

日米地位協定第24条は、「日本国に合衆国軍隊を維持することに伴うすべての経費は、第2項に規定するところにより日本国が負担すべきものを除くほか、この協定の存続期間中日本国に負担をかけないで合衆国が負担する」(第1項)こととする一方で、「日本国は、第2条及び第3条に定めるすべての施設及び区域並びに路線権を合衆国に負担をかけないで提供する」(第2項)旨規定しており、我が国は、在日米軍の施設・区域に係る国有地の提供、公有・私有地の借料等の負担をしている。

昭和40年代後半以降、石油ショックによる我が国の物価や賃金の高騰、変動相場制への移行による円高ドル安などの国際経済情勢の変動に伴い、米側が負担する労務費が増大し、在日米軍労働者の給与改定の実施が遅れるなど、在日米軍労働者の労働条件や生活の安定に影響を及ぼすようになった。

このような状況を踏まえ、昭和52年12月、日米合同委員会において、従来米側がすべて負担していた在日米軍労働者の給与その他の雇用に要する経費(労務費)のうち、福利費、管理費について、日本側が日米地位協定の範囲内として負担することが合意され、昭和53年度から、これらの労務費について我が国が負担することになった(いわゆる「思いやり予算」)。これらの経費は、米軍が在日米軍労働者を使用するのに直接必要な経費でなく、米側が負担することが日米地位協定上の義務とは必ずしも考えられないと整理された結果、我が国が雇用主の立場で円滑な労使関係を維持し、雇用関係を安定的なものにするために負担することとしたものである。

昭和54年からは、日米地位協定の範囲内で、日本側の自主的判断により負担できる経費について具体的に検討を行った結果、在日米軍労働者の格差給、語学手当等の労務費、提供施設整備費も我が国が負担することになった。

(イ) 特別協定による経費負担

昭和60年のプラザ合意以降、急激な円高ドル安が進み、米側の駐留経費が一層圧迫されるようになった。これに伴い、人員整理など在日米軍労働者の雇用の安定が損なわれ、ひいては米軍の効果的な活動にも影響するおそれが生じた。

このような状況を踏まえ、我が国は、日米地位協定第24条において米側に負担義務のある経費の一部を日本側で負担するため、昭和62年、暫定的、限定的、特例的な措置として、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第24条についての特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定」(以下「特別協定」という。)が初めて締結された。特別協定は、経費負担の原則を定めた日米地位協定の特則であり、これにより、日米地位協定の範囲外である在日米軍労働者の住居手当、退職手当等の8手当に係る労務費の2分の1を限度として我が国が負担することになった。

昭和63年には、更なる円高ドル安の進展により従前にも増して米側の駐留経費が圧迫されたことから、特別協定の改正議定書が締結され、8手当に係る労務費の2分の1の負担限度をなくし、全部又は一部を我が国が負担することになった。

平成3年に締結された特別協定からは、基本給等の労務費及び米軍の調達する光熱水料の全部又は一部を我が国が負担することになった。当初、基本給等の労務費及び米軍の調達する光熱水料の経費負担は、日米間で負担割合が定められていたが、日本側負担割合を段階的に引き上げた結果、平成7年度以降は、上限労働者数と光熱水料の上限調達量を定めた上で、その範囲内の全額を我が国が負担することになった。

平成8年締結の特別協定からは、日本側の要請により米軍の訓練を他の施設・区域を使用するよう変更する場合には、その変更に伴って追加的に必要となる経費(訓練移転費)を我が国が負担することになった。

平成13年締結の特別協定からは、経費負担の一定の節約、合理化を図る米側の節約努力が協定本文に明記されることになった。

平成18年締結の特別協定は、直近の特別協定の主な内容は引き継ぎつつ、在日米軍再編の結果を見極めることが困難であるとの事情から有効期間が従来のような5年間ではなく2年間とされた。

(ウ) 新たな特別協定

平成18年締結の特別協定は平成20年3月31日限りで効力を失うことから、我が国政府は、日米両国を取り巻く諸情勢に留意し、日本国に合衆国軍隊を維持することに伴う経費の日本側による負担を図り、日本国にある合衆国軍隊の効果的な活動を確保するため、アメリカ合衆国政府と協議しつつ、検討を行った。その結果、平成19年12月12日、平成20年度以降を対象とする新たな特別協定について、日本側負担の内容と水準に関する最終的な合意に達したので、平成20年1月25日、東京において署名が行われた。

なお、本協定の日米協議において、我が国は、現下の厳しい財政事情等を踏まえ、労務費や光熱水料等の経費負担について米側に大幅な削減を求めたが、結果としてほぼ現状維持の削減幅(平成21年度及び平成22年度の光熱水料について平成19年度比約1.5%減(計8億円減))にとどまったとされる。

政府は、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第24条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件を平成20年2月5日、国会に提出した。

(イ 関連条約の概要)

日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第24条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件

本協定は、日米両国を取り巻く諸情勢に留意し、日本国に合衆国軍隊を維持することに伴う経費負担の原則を定める日米地位協定第24条についての新たな特別措置を定めるもので、その主な内容は、

 我が国は、平成20年から22年までの日本国の会計年度において、日本国に雇用されて合衆国軍隊等のために労務に服する労働者に対する基本給等一定の給与の支払に要する経費並びに合衆国軍隊等が公用のため調達する電気等及び暖房用等燃料に係る料金又は代金の支払に要する経費の全部又は一部を負担すること

 我が国は、日本国政府の要請に基づき、アメリカ合衆国が合衆国軍隊の行う訓練の全部又は一部を他の施設及び区域を使用するよう変更する場合には、その変更に伴って追加的に必要となる経費の全部又は一部を負担すること

 アメリカ合衆国は、前記a及びbの経費の節約に一層努めること

 我が国は、毎会計年度、負担する経費の具体的金額を決定し、当該決定をアメリカ合衆国に対し速やかに通報すること

 日米両国は、この協定の実施に関するすべての事項につき、日米合同委員会を通じて協議することができること

  本協定は、平成23年3月31日まで効力を有すること

なお、関連の合意された議事録では、本協定第1条に掲げる給与には、昭和62年1月30日に署名された日米地位協定第24条についての特別措置協定の効力発生前に、既に日本国による負担の対象となっていた部分を含まないことが確認されている。

また、関連の書簡では、本協定第5条に規定する具体的金額の決定についての日本国政府の方針等が表明されており、この中で、日本国は、光熱水料等に関し、概算要求額の算定の際、施設・区域の外側にある住宅のための予想調達量に係る経費を算入しないこと等を明らかにしている。

(ウ 審議経過)

本件は、平成20年2月5日に衆議院に提出され、3月18日の本会議において趣旨説明の聴取及び質疑が行われた後、同日、外務委員会に付託された。

同委員会において、翌19日、提案理由の説明を聴取し、26日に質疑に入り、4月2日、質疑を終局し、討論・採決の結果、本件は、賛成多数をもって承認すべきものと議決された。

翌3日の本会議において、本件は承認すると議決され、同日、参議院に送付された。

参議院においては、4月25日の本会議で、本件は賛成少数により承認しないと議決された。

同日、国会法第85条第1項の規定により、衆議院から参議院に対して両院協議会を開くことを請求した。同日開かれた両院協議会において成案は得られず、憲法第61条の規定により、本院の議決が国会の議決となった。

なお、条約について、参議院において承認しないと議決されたこと及び両院協議会が開かれたことは、いずれも日本国憲法下で初めてのことである。

(エ 主な質疑事項)

主な質疑事項は、[1]我が国の米軍駐留経費負担額が他の受入国と比較して突出している理由、[2]日米地位協定の抜本的な見直しの必要性、[3]駐留軍等労働者数の決定過程及び我が国の関与の仕方とその妥当性、[4]米軍駐留経費負担額の見直しの必要性、[5]本協定署名に至る交渉の妥当性、[6]本協定が国会承認を得られない場合の影響、[7]米軍側の光熱水料等駐留経費の節約状況、[8]日米合同委員会施設分科委員会における米国側の光熱水料等の節約努力に係る具体的な取組、[9]在日米軍再編に係る経費の総額、[10]基地内娯楽施設の労働者の経費を我が国が負担する妥当性、[11]今後の米軍移転先における娯楽施設の整備を負担する妥当性、[12]駐留軍等労働者による日本政府への訴訟に対し敗訴した事件の概要及び訴訟に係る原告の人数等であった。

(5) 保険法関係

(ア 国会で議論されるに至った経緯)

保険契約に適用される私法上の規定は、商法の中に置かれてきたが、明治32年の商法制定後、明治44年に一部改正がされただけで、その後の著しい社会経済情勢の変化にもかかわらず、100年近くもの間、一度も実質改正が行われなかった。

このため、現代社会において重要性を増している傷害・疾病保険契約や、自動車保険に代表される責任保険契約に関する規定を欠いている等の問題点が指摘されていた。

このような状況の下、保険契約について、保険者、保険契約者等の関係者間におけるルールを現代社会に合った適切なものとする必要があるとして、平成18年9月6日、杉浦法務大臣は、法制審議会に対し、保険法の見直しに関する諮問を行った。

法制審議会は、この諮問を受けて、保険法部会を設置して検討を行った。そして、同部会での結論を受けて、平成20年2月13日、法制審議会は、「保険法の見直しに関する要綱」を決定し、鳩山法務大臣に答申した。

政府は、上記の答申に基づき、法律案の立案作業を行い、同年3月5日、保険法案及び保険法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案を国会に提出した。

(イ 関連議案の概要)

(ア) 保険法案(内閣提出)

保険契約に関する法制を現代の社会経済に的確に対応したものとするため、商法の保険契約に関する規定を全面的に見直して、保険契約に関する単行法を制定するとともに、国民に理解しやすい法制とするため、表記を現代用語化しようとするもので、その主な内容は、

 保険契約と同等の内容を有する共済契約を保険法の適用の対象に含めるものとすること

 損害保険及び生命保険のほかに、傷害疾病保険に関する規定を新設するものとすること

 保険契約者等は保険者から質問された事項について告知すれば足りるものとするとともに、保険募集人による告知妨害等があった場合の規定を新設するものとすること

 保険金の支払時期についての規定を新設し、保険者が適正な保険金の支払のための不可欠な調査を行うために客観的に必要な期間が経過した後は、保険者は遅滞の責任を負うものとすること

 c及びdの規定等に反する特約で保険契約者等に不利なものを無効とする片面的強行規定を導入するものとすること

  責任保険契約について、被保険者が倒産した場合でも保険金から優先的に被害の回復を受けられるようにするため、被害者に、保険給付を請求する権利について特別の先取特権を付与するものとすること

 生命保険契約の保険金受取人の変更の意思表示の相手方が保険者であること及び遺言による保険金受取人の変更が可能であることについて、明文の規定を設けるものとすること

 片仮名文語体の表記を平仮名口語体に改めるものとすること

等である。

(イ) 保険法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案(内閣提出)

保険法の施行に伴い、商法、自動車損害賠償保障法その他の13の関係法律に所要の整備を加えるとともに、所要の経過措置を定めようとするものである。

(ウ 審議経過)

保険法案及び保険法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案は、平成20年3月5日に提出され、4月7日、法務委員会に付託された。

同委員会においては、11日、提案理由の説明を聴取し、15日から質疑に入った。22日には、参考人からの意見聴取及び参考人に対する質疑が行われた。25日、質疑を終局し、採決の結果、両法律案は、いずれも全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決された。なお、両法律案に対して、附帯決議が付された。

30日の本会議において、両法律案は、いずれも可決された。

参議院においては、5月30日の本会議で、両法律案は、いずれも可決され、成立した。

(エ 主な質疑事項)

両法律案に対する主な質疑事項は、[1]保険法案の成立により共済契約と保険契約の監督権限が一元化されるおそれ、[2]免責事由に関する保険者の挙証責任の内容、[3]保険給付の履行期を具体的な日数で定める必要性、[4]保険法案における保険金不払い問題対策、[5]保険媒介者の告知妨害等が告知義務違反を理由とする保険者の解除権に及ぼす効果、[6]解除の原因となる「契約の存続を困難とする重大な事由」の具体的内容、[7]保険法案における保険金殺人等のモラルリスク対策、[8]未成年者を対象とする生命保険契約の保険金額を制限しなかった理由、[9]団体生命保険における被保険者の同意の取得方法を明確化する必要性、[10]生命保険契約及び傷害疾病定額保険契約において金銭給付以外に現物給付を取り入れなかった理由等であった。

(6) 少年法関係

(ア 国会で議論されるに至った経緯)

(ア) 平成12年の少年法改正

平成12年当時、少年による凶悪重大犯罪の発生が社会問題となっており、少年審判手続において、被害者やその遺族に対する配慮を充実することは重要であると考えられるようになっていた。

そのため、同年に、被害者等に対する配慮を充実する制度の導入などを柱とする「少年法等の一部を改正する法律案」が議員立法として提出され成立した。

これにより導入された被害者等に対する配慮を充実する制度の内容は、[1]少年保護事件の被害者等による記録の閲覧・謄写、[2]被害者等の申出による意見聴取、[3]被害者等に対する少年審判の結果等の通知であった。

なお、「法律の施行後5年を経過した場合において、その施行状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その検討の結果に基づいて法制の整備その他の所要の措置を講ずること」等を内容とする規定を附則に加える修正が、参議院において行われた。

(イ) 犯罪被害者等基本法の成立

平成16年、「犯罪被害者等の多くは、これまでその権利が尊重されてきたとは言いがたいばかりか、十分な支援を受けられず、社会において孤立することを余儀なくされている」として、犯罪被害者等のための施策を総合的かつ計画的に推進するため、「犯罪被害者等基本法」が制定された。

同法は、その基本理念として、「すべて犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する」(第3条第1項)と規定している。また、「政府は、犯罪被害者等のための施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、『犯罪被害者等基本計画』を定めなければならない」(第8条)と規定している。

(ウ) 犯罪被害者等基本計画の策定

犯罪被害者等基本法に基づき、政府は、平成17年12月に犯罪被害者等基本計画を策定した。

同計画は、犯罪被害者等の刑事手続への関与拡充への取組について、「刑事司法は犯罪被害者等のためにもあり、このことは、少年保護事件であっても何ら変わりはない。そのため、『事件の当事者』である犯罪被害者等が、刑事に関する手続や少年保護事件に関する手続に適切に関与できるよう、その機会を拡充する取組を行わなければならない」としている。

具体的には、今後講じていく施策として、法務省は、平成12年の少年法改正法の施行(平成13年4月)後5年を経過した場合に行う検討において、少年審判の傍聴の可否を含め、犯罪被害者等の意見・要望を踏まえた検討を行い、その結論に従った施策を実施することとしている。

(エ) 国会への法律案の提出等

犯罪被害者等基本計画を受け、法務省は、被害者など関係各方面の意見や要望を踏まえて検討した結果、少年審判における犯罪被害者等の権利利益の一層の保護等を図るため、早急に法整備を行う必要があるとして、「被害者等による少年審判の傍聴」や「被害者等による記録の閲覧及び謄写の範囲の拡大」などを内容とする要綱(骨子)を平成19年11月29日に法制審議会に諮問した。

法制審議会は、要綱(骨子)について、主に少年法(犯罪被害者関係)部会で議論を行った結果、平成20年2月13日に要綱(骨子)を原案のとおり採択し、直ちに鳩山法務大臣に答申した。

これを受け、政府は、平成20年3月7日、少年法の一部を改正する法律案を国会に提出した。

(イ 関連議案の概要)

少年法の一部を改正する法律案(内閣提出)

犯罪被害者等基本法等を踏まえ、少年審判における犯罪被害者等の権利利益の一層の保護等を図るため、少年法を改正し、所要の法整備を行おうとするもので、その主な内容は、

 殺人事件等一定の重大事件の被害者等が少年審判を傍聴することができる制度を創設すること

 被害者等による記録の閲覧及び謄写の範囲を拡大すること

 被害者の心身に重大な故障がある場合における被害者の配偶者等についても、被害者等の申出による意見の聴取の対象者とすること

 成人の刑事事件に関し、児童福祉法違反の罪等に係る第一審の裁判権を、家庭裁判所から地方裁判所等に移管すること

等である。

(ウ 審議経過)

少年法の一部を改正する法律案は、平成20年3月7日に提出され、5月22日の本会議において趣旨説明の聴取及び質疑が行われた後、同日、法務委員会に付託された。

同委員会においては、翌23日、提案理由の説明を聴取した後、27日、質疑に入った。30日には参考人から意見を聴取した。

同日、本法律案に対し、自民、民主及び公明から、[1]少年審判の傍聴の許否の判断基準として、「少年の健全な育成を妨げるおそれがないこと」を明示すること、[2]傍聴を許す際に、弁護士である付添人の意見を聴かなければならないものとすること、意見を聴く際に少年に弁護士である付添人がないときは原則として国選付添人を付すること、[3]12歳未満の触法少年に係る事件の審判を傍聴の対象から除外すること、12歳以上の触法少年に係る事件の審判の傍聴の許否の判断に当たっては、触法少年の特性を考慮しなければならないものとすること、[4]家庭裁判所は、被害者等から申出がある場合において、少年の健全な育成を妨げるおそれがなく相当と認めるときは、その申出をした者に対し、審判の状況を説明するものとすること、[5]施行後3年を経過した場合における検討規定を設けること等を内容とする修正案が提出された。

同日、修正案の提出者から趣旨の説明を聴取し、原案及び修正案に対する質疑が行われた後、質疑を終局し、討論・採決の結果、修正案及び修正部分を除く原案は、いずれも賛成多数をもって可決され、本法律案は修正議決すべきものと議決された。なお、本法律案に対し、附帯決議が付された。

6月3日の本会議において、本法律案は修正議決された。

参議院においては、6月11日の本会議で可決され、成立した。

(エ 主な質疑事項)

主な質疑事項は、[1]被害者等に少年審判の傍聴を認めることが少年の健全な育成に与える影響、[2]傍聴により被害者等が二次被害を受けるおそれ、[3]触法少年に係る事件の審判も傍聴の対象としたことの妥当性、[4]裁判所が傍聴の許否の判断の際に付添人等の意見を聴取する必要性、[5]傍聴が行われる事件で少年に付添人がない場合に国選付添人を付する必要性、[6]現行の審判廷の構造が傍聴制度に適さないおそれ、[7]モニター傍聴を認める必要性、[8]少年審判を傍聴した者等の守秘義務を担保する措置の必要性、[9]少年のプライバシーに関する記録を閲覧及び謄写の対象から除外する必要性、[10]修正案において触法少年のうち12歳未満の少年に係る事件を傍聴の対象から除外した理由等であった。

(7) 地球温暖化対策関係

(ア 国会で議論されるに至った経緯)

(ア) 気候変動枠組条約及び京都議定書の採択

近年、地球的規模の最重要課題の一つとなっている地球温暖化問題に対処するため、平成4年に、温室効果ガスの濃度を安定化させることを目的とした気候変動枠組条約が採択され、その後、平成9年に、同条約を具体化し、先進国に対し国ごとの数値目標を定めて温室効果ガスの排出削減を義務付けること等を内容とする京都議定書が採択された。同議定書により、我が国には平成2(1990)年を基準年として温室効果ガスの排出量を第1約束期間(平成20(2008)〜平成24(2012)年)内に6%削減するという法的拘束力のある目標が義務付けられている。

(イ) 地球温暖化対策推進法の制定と京都議定書目標達成計画の策定

京都議定書採択の翌10年、我が国において、専ら地球温暖化防止を目的とする世界最初の法律として「地球温暖化対策の推進に関する法律」(以下「地球温暖化対策推進法」という。)が制定された。

また、平成17年2月に京都議定書が発効したことを機に、平成10年に策定されそれまで我が国の地球温暖化対策の柱とされてきた地球温暖化対策推進大綱の見直しが行われ、平成17年4月に地球温暖化対策推進法に基づく京都議定書目標達成計画が新たに閣議決定された。同計画は、京都議定書の我が国の6%削減目標の達成に向けた具体的対策の全体像を示すもので、同計画中にはCO2等6種類の温室効果ガス別に目標並びに対策及びその実施スケジュールを明記するとともに、個々の対策についての我が国全体における数量目標、排出削減見込量及び対策を推進するための施策が盛り込まれた。

(ウ) 我が国の温室効果ガス排出状況

我が国の平成18(2006)年度の温室効果ガス総排出量は、13億4,000万t(CO2換算)であり、京都議定書の基準年(原則平成2(1990)年)の総排出量である12億6,100万tを7,900万t(6.2%)上回っている。そのため、我が国が第1約束期間内に削減目標を達成するためには、合計で12.2%(削減目標の6%+超過分の6.2%)の温室効果ガスを削減しなければならない状況となっている。

このうち、我が国の温室効果ガス総排出量の9割以上を占めるCO2について、基準年と比較した部門別排出状況をみてみると、工場等の産業部門のCO2排出量は4億6,000万tで2,200万t(4.6%)減少しているものの、自動車・船舶等の運輸部門は2億5,400万tで3,630万t(16.7%)増加、商業・サービス・事業所等の業務その他部門は2億2,900万tで6,490万t(39.5%)増加、家庭部門は1億6,600万tで3,830万t(30.0%)増加するなど、特に、業務部門・家庭部門におけるCO2排出量の増加が顕著となっている。

(エ) 京都議定書目標達成計画の見直し

京都議定書目標達成計画においては、第1約束期間が始まる前年の平成19(2007)年度に同計画の定量的な評価・見直しを行い、第1約束期間において必要な対策・施策を平成20(2008)年度から講ずるものとするとされていたことから、中央環境審議会(環境省)と産業構造審議会(経済産業省)の合同会合においてその評価・見直しが行われ、平成20年2月に、その基本的な方向性についての最終報告が取りまとめられた。

同最終報告においては、現行の削減対策がすべて実現されたとしてもなお、平成22(2010)年度において2,200万〜3,600万t(基準年度総排出量比1.7〜2.8%)の削減不足が生じるとし、6%削減目標達成のためには、対策・施策の追加・強化を適切に行う必要があるとされた。特に、排出量の伸びが著しい業務部門・家庭部門の対策については、抜本的に強化することが必要であるとされ、さらに、個別部門対策を超え、また、短期的視点のみならず中長期的な観点も踏まえた上で、国民全体が総力を挙げて温室効果ガスを削減するよう、ライフスタイル・ビジネススタイルの変革等を促すような対策の強化も視野において考える必要があると指摘されている。

そして、翌3月、この最終報告等を踏まえ、目標達成計画が閣議決定により全面改定された。

(オ) 法律案の提出

 以上のような経緯を踏まえ、我が国において排出量が伸び続けている業務部門・家庭部門への対策を抜本的に強化することが必要であることから、京都議定書の6%削減目標の達成を確実にするために必要な諸施策の導入を図る地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案が、政府から国会に提出された。

(イ 関連議案の概要)

地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

京都議定書における温室効果ガスの排出量を削減する約束を確実に履行するため、また、地球温暖化対策の一層の推進を図るため、事業者の排出抑制等に関する指針を策定するとともに、地方公共団体実行計画の策定事項を追加し、あわせて、植林事業から生ずる認証された排出削減量に係る国際的な決定により求められる措置を義務付ける等の所要の改正を行おうとするもので、その主な内容は、

 温室効果ガス算定・報告・公表制度について、事業所単位から事業者単位・フランチャイズチェーン単位による排出量の算定・報告に変更することとし、また、内訳として、これまで報告のあった一定規模以上の事業所についてはその排出量も報告しなければならないこととすること

 国は、事業者が自主的に行う京都メカニズムクレジットの取得及び政府への移転、国内における他者の排出抑制への協力等を促進するよう配慮すること

 事業者は、事業活動に伴う排出の抑制等のために必要な措置及び情報提供等国民の取組に寄与する措置等を講ずるよう努めなければならないこととし、それに資するよう主務大臣(環境大臣、経済産業大臣及び事業所管大臣)は、排出抑制等指針を策定すること

 排出抑制等指針において、国民の日常生活における温室効果ガス排出抑制の努力及びそれを支援する者の在り方等について具体的に明らかにすること

 クリーン開発メカニズム(以下「CDM」という。)事業により発行されるクレジットのうち、新規植林・再植林CDM事業から発生するクレジットに係る国際合意上の補てん義務について、国内法上、当該義務の主体、履行方法等の補てん手続を定めることとすること

 地方公共団体実行計画の中で、都道府県、指定都市、中核市及び特例市(以下「都道府県等」という。)は、その区域の自然的社会的条件に応じて、温室効果ガスの排出の抑制等のための施策について定めることとすること

現行の都道府県に加え、指定都市、中核市及び特例市においても地球温暖化防止活動推進センターを指定すること並びに地球温暖化防止活動推進員を委嘱することを可能とすること。また、地方公共団体実行計画の達成のために都道府県等が行う施策に対して、都道府県等の地球温暖化防止活動推進センターは必要な協力をすること

等である。

(ウ 審議経過)

地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案は、平成20年3月7日に提出され、4月10日の本会議において趣旨説明の聴取及び質疑が行われた後、同日、環境委員会に付託された。

同委員会においては、翌11日、提案理由の説明を聴取し、15日から質疑に入った。22日には、参考人からの意見聴取及び参考人に対する質疑が行われ、25日、質疑終局後、自民、民主及び公明の共同提案により、同法律案に対して、CO2の排出量の「見える化」を進めるため、エネルギー供給事業者は、一般消費者に対し供給したエネルギーの使用に伴うCO2の排出量の把握に必要な情報を提供するよう努めなければならないものとすること等を内容とする修正案が提出され、趣旨説明を聴取した。

次いで採決の結果、修正案及び修正部分を除く原案は、いずれも全会一致をもって可決され、本法律案は修正議決すべきものと議決された。なお、本法律案に対し、附帯決議が付された。

同日の本会議において、本法律案は修正議決された。

参議院においては、6月6日の本会議で可決され、成立した。

(エ 主な質疑事項)

主な質疑事項は、[1]京都議定書上の我が国の温室効果ガス削減目標を達成するために本改正案が果たす役割、[2]温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度における事業所ごとの排出量を開示請求を待たずに公表する必要性、[3]地方公共団体実行計画の策定及び地球温暖化防止活動推進員の委嘱の権限を一定規模以上の自治体に限定した理由、[4]温暖化防止のための自治体間の創意工夫による競争を促し、その努力を評価する具体的取組を行う必要性、[5]家庭部門におけるCO2の見える化を図る制度を導入する必要性、[6]有価証券報告書にCO2排出量や削減対策の記載を義務付ける必要性、[7]我が国の温室効果ガスの中長期削減目標を示す必要性、[8]環境税を我が国でも導入する必要性、[9]自然エネルギーの導入が我が国で進まない理由、[10]我が国の優れた省エネ技術を世界の温暖化対策に活用するための具体的方策等であった。

(8) テロ対策関係

(ア 国会で議論されるに至った経緯)

平成13年9月11日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法(以下「テロ対策特措法」という。)は、平成13年9月11日の米国における同時多発テロを契機として、国際的なテロリズムの防止・根絶のための国際社会の取組に積極的かつ主体的に寄与し、我が国を含む国際社会の平和及び安全の確保に資する目的で、平成13年10月29日に成立、11月2日に公布、施行された。その後、テロによる脅威の除去のための諸外国の活動が継続していることを踏まえ、平成15年10月には2年間、平成17年及び平成18年の10月にはそれぞれ1年間延長された。

同法は、平成19年11月1日をもって期限を迎える見通しとなったため、国際的なテロリズムの防止・根絶のための国際社会の取組に引き続き寄与し、我が国を含む国際社会の平和及び安全の確保に資することを目的として、活動内容を補給支援活動のみに限定したテロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法案が10月17日、1年間の時限立法として、第168回国会に提出された。同法律案は、平成20年1月11日、参議院本会議で否決されたが、憲法第59条第2項により、同日、衆議院本会議において再び可決され、成立した。

テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法は平成21年1月16日に失効するため、政府は同法を1年間延長するテロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法の一部を改正する法律案を、平成20年9月29日、第170回国会に提出した。

なお、民主は、第168回国会の平成19年12月21日に、テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法案の対案として、自衛隊の活動を民生活動に限定した国際的なテロリズムの防止及び根絶のためのアフガニスタン復興支援等に関する特別措置法案を参議院に提出した。参議院は同法律案を平成20年1月11日に可決し、同日、衆議院に送付した。衆議院では会期末の同月15日、これを継続審査とした。

(イ 関連議案の概要)

(ア) テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法に基づき我が国が実施する措置を引き続き実施し、もって我が国を含む国際社会の平和及び安全の確保に資するため、所要の改正を行おうとするもので、その内容は、

 テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法の期限を1年間延長すること

 この法律は、公布の日から施行すること

である。

(イ) 国際的なテロリズムの防止及び根絶のためのアフガニスタン復興支援等に関する特別措置法案(参議院提出)

平成13年9月11日にアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃に関連して採択された国際連合安全保障理事会決議第1659号を踏まえ、アフガニスタンの復興の支援を通じて国際的なテロリズムの防止及び根絶のための国際社会の取組に寄与しようとするもので、その主な内容は、

 政府は、治安分野改革支援活動又は人道復興支援活動(以下「アフガニスタン復興支援活動」という。)のほか、国際社会の協力を求めつつ、アフガニスタンにおける武装集団が行っている武器を用いた不法な抗争を停止し、及びその停止を維持する旨のアフガニスタン政府と当該武装集団等との間の合意(以下「抗争停止合意」という。)の形成の支援その他アフガニスタンの国内における安全及び安定の回復に資するための措置を講ずるものとすること

 アフガニスタン復興支援活動は、武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならないこと

 人道復興支援活動は、抗争停止合意が成立している地域等で実施されるものとし、自衛隊の部隊等が実施する活動は、同活動に限るものとすること

 内閣総理大臣は、アフガニスタン復興支援活動のいずれかを実施することが必要であると認めるときは、基本計画の案につき閣議の決定を求めるものとし、基本計画に定められた自衛隊の部隊等が実施するアフガニスタン復興支援活動については、その実施前に国会の承認を得なければならないこと

 アフガニスタン復興支援活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官は、自己若しくは自己と共に現場に所在する他の自衛隊員等若しくはその職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者の生命若しくは身体を防衛するため又は当該アフガニスタン復興支援活動の実施に対する抵抗を抑止するために、一定の要件に従って武器を使用することができること

 アフガニスタン復興支援活動の迅速かつ円滑な実施を図り、アフガニスタンの人間の安全保障に寄与するため、内閣府に、アフガニスタン人間の安全保障センターを置くこと

 国際的なテロリズムの防止及び根絶のための国際社会の取組に積極的かつ主導的に寄与することを含む我が国の安全保障の原則に関する基本的な法制の整備が速やかに行われるものとし、当該法制の整備において、日本国憲法の下での自衛権の発動に関する基本原則及び国際連合憲章第7章の集団安全保障措置等に係る我が国の対応措置に関する基本原則が定められるものとすること

 この法律は、公布の日から起算して1月を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること

等である。

(ウ 審議経過)

国際的なテロリズムの防止及び根絶のためのアフガニスタン復興支援等に関する特別措置法案(参議院提出)は、第168回国会の平成19年12月21日に提出され、平成20年1月11日の参議院本会議で可決された。衆議院では、同月15日、継続審査とされ、第169回国会でも同様に継続審査とされた。第170回国会では、9月29日にテロ・イラク特別委員会に付託された。

テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)は、第170回国会の平成20年9月29日に提出され、10月8日にテロ・イラク特別委員会に付託された。

同委員会においては、10月10日、両法律案について提案理由の説明を聴取し、同月17日、麻生内閣総理大臣の出席を求め質疑を行った。同月20日、質疑を終局し、討論・採決の結果、参議院提出の法律案は賛成少数をもって否決すべきものと議決し、内閣提出の法律案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した。

翌21日の本会議において、両法律案について討論の後に記名投票が行われた結果、参議院提出の法律案は否決され、内閣提出の法律案は可決された。

参議院において、内閣提出の法律案は、12月12日の本会議で否決され、同日、衆議院に返付された。これを受けて、同日、本会議において、まず、本法律案の再議決を求める動議が提出され、討論・採決の結果、賛成多数で可決された。続いて、本法律案の採決が記名投票により行われた結果、出席議員の3分の2以上の多数で再び可決され、憲法第59条第2項により、本法律案は成立した。

(エ 主な質疑事項)

主な質疑事項は、テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)については、[1]テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法を延長する必要性、[2]インド洋での補給支援活動の合憲性に関する内閣総理大臣の見解、[3]補給支援活動と国連決議との関係に関する外務大臣の見解、[4]補給支援活動の継続以外に国際社会から評価を得られる具体的な支援策を検討する必要性、[5]国民に対する十分かつ丁寧な説明の必要性に対する内閣官房長官、外務大臣及び防衛大臣の見解、[6]補給支援活動から撤退した場合の国際社会の反応及び影響に関する外務大臣の見解、[7]補給支援活動を終了できる時期についての外務大臣の見解、[8]我が国の補給支援活動に対する諸外国からの評価に関する外務大臣の見解、[9]我が国が補給した燃料が別の作戦のために転用される可能性、[10]補給支援活動における燃料の転用疑惑を招かないための運用上の具体策等であった。

国際的なテロリズムの防止及び根絶のためのアフガニスタン復興支援等に関する特別措置法案(参議院提出)については、[1]同法律案が成立した場合にアフガニスタンで行おうとする活動内容、[2]同法律案とこれまでの憲法解釈の関係、[3]同法律案に対する内閣総理大臣の所見、[4]同法律案におけるアフガニスタン支援の実効性に関する発議者の見解、[5]アフガニスタンの現状では人道復興支援活動を実施し得る地域がないとする同法律案の妥当性に関する発議者の認識、[6]同法律案における自衛隊の活動要件を満たす地域の有無、[7]人道復興支援活動が実施される抗争停止合意地域の「抗争停止合意」の当事者、[8]現状のアフガニスタンにおける抗争停止合意地域の有無、[9]同法律案が成立した場合の同法の有効期間である1年以内に抗争停止合意ができる可能性に対する発議者の見解、[10]同法律案における「アフガニスタン復興支援活動の実施に対する抵抗を抑止するためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合」の具体的事例等であった。

「アフガニスタン情勢」については、[1]アフガニスタンの治安が改善されない原因に対する内閣総理大臣の見解、[2]平成13年以降のアフガニスタンにおけるテロや戦闘による民間人及び多国籍軍兵士の死亡者数、[3]アフガニスタン政府とタリバーンとの和解交渉に関する日本政府の把握状況、[4]米国及びNATOが行っている軍事活動の出口戦略に対する内閣官房長官の見解、[5]米国が我が国に対しアフガニスタン軍事費の一部負担を要請したとの報道の真偽、[6]民間人を巻き込む人道上問題がある空爆を中止するよう米国等に申し入れる必要性、[7]アフガニスタンにおけるNGOの取組に対する外務大臣の評価、[8]米国発の金融危機が米国のイラク・アフガニスタン政策に与える影響、[9]アフガニスタンの警察改革の現状に対する我が国の評価、[10]アフガニスタンへの民生支援の中でも教育支援に重点を置く必要性等であった。

また、議論は最近国際的な課題となっている「ソマリア沖・アデン湾の海賊対策」にも及び、これについては、[1]海賊の脅威が拡大しているソマリア沖・アデン湾の周辺海域において我が国が果たすべき役割に関する内閣総理大臣の見解、[2]海賊が多発しているソマリア沖・アデン湾の周辺海域において現行法下で我が国が警戒監視活動を行うことの可否、[3]ソマリア沖・アデン湾の周辺海域において海上警備行動を発令することの可否、[4]海賊対策に係るODAの現状と今後の対応、[5]海賊対策に関する政策協議に対する発議者の見解、[6]EUと協力した海賊取締のための自衛隊艦船派遣に対する防衛大臣の見解、[7]海上阻止活動(OEF−MIO)の海賊対策への効果に対する外務大臣の見解、[8]ソマリア沖・アデン湾の周辺海域において海上輸送の安全確保のために海上保安庁が行うことができる措置、[9]関係国へ海上保安庁で使用していた巡視船の贈与を検討する必要性、[10]我が国の船舶が海賊被害を受けていることに対する内閣総理大臣の認識等であった。

(9) 金融危機対策関係

(ア 国会で議論されるに至った経緯)

(ア) 世界金融危機の発生と我が国の対応

平成19(2007)年来、米国では、サブプライムローンと呼ばれる信用力の低い借り手に対する住宅ローン問題が拡大を続け、平成20(2008)年秋には米国証券大手リーマン・ブラザーズの破綻を契機に世界規模の金融危機となった。震源地である米国では、相次ぐ大手金融機関の経営悪化や破綻による危機的状況を受けて、総合的な金融安定化法(2008年緊急経済安定化法)が同年10月3日に成立した。しかし、同法による金融安定化策の実効性に対する厳しい評価から、株価の下落は止まらず、世界株安が引き起こされるに至った。

この世界金融危機に対処するため、日米欧の7か国(G7)財務相・中央銀行総裁会議(於:ワシントン)は、同月10日、公的資金による資本増強など5項目を盛り込んだ異例の「行動計画」を発表した。また、同会議に出席した中川財務・金融担当大臣は、同月14日、「G7行動計画を具体化するための措置の一環として、地域金融の円滑化の観点から、金融機能強化法の強化・活用により、地域金融機関による中小企業金融の円滑化を図ることを早急に検討する。また、保険契約者保護を目的とした生命保険会社のセーフティーネットについて、平成21年4月以降も政府補助を引き続き可能とする措置を検討する」旨を大臣談話において発表した。

これに伴い、金融機能の強化のための特別措置に関する法律(以下「金融機能強化法」という。)の強化・活用((イ)参照)に関する所要の措置を講ずる金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案と、生命保険会社のセーフティーネット((ウ)参照)に関する所要の措置を講ずる保険業法の一部を改正する法律案が、平成20年10月24日、国会に提出された。

(イ) 金融機能強化法の強化・活用

金融機能強化法とは、主要行に比べ不良債権処理の遅れが目立つ地域金融機関(地方銀行、信用金庫、信用組合等)を念頭に、経営基盤強化のための時限的な公的資本注入スキームを定めるもので、平成16年6月に制定された。同法に基づく資本注入の申請期限は平成20年3月末までとされ、2兆円の政府保証枠が設けられたが、適用例は2件にとどまった。申請期限の到来を控え、期限の延長の要否が議論となったが、最終的に延長は見送られ、同法に基づく資本注入の申請期限は終了した。しかし、地域金融機関の経営環境は、長期の景気低迷による地方経済の根深い疲弊のため、資金需要が乏しい上に、サブプライムローン問題の余波による企業倒産の増加等、依然として厳しい状況にあった。このため、今般の世界金融危機に伴う地域金融機関の経営環境の更なる悪化が、中小企業の資金繰りに影響を与えることが懸念された。このような背景もあり、G7後の中川財務・金融担当大臣談話において、金融機能強化法の強化・活用により、地域金融機関による中小企業金融の円滑化を図ることを早急に検討することが示された。

(ウ) 生命保険会社のセーフティーネット

生命保険会社のセーフティーネットとしては、保険業法に基づく生命保険契約者保護機構(国内で事業を行うすべての生命保険会社が加入)による資金援助スキームがあり、その財源は、加入会社が事業年度ごとに納付する負担金で賄うこととされている。しかし、平成11年6月の東邦生命の破綻以降、短期間に生命保険会社の破綻が相次いだことから、平成12年の保険業法改正により、加入会社の負担分を増やすとともに、当該負担が一定額を超えた場合に、政府補助を可能とする措置が導入された。当該措置は、平成17年度まで継続したが、政府補助が発動された例はなかった。また、生命保険会社の破綻の一段落や運用環境等の改善もあり、平成17年の保険業法改正により、平成18年度からは原則として加入会社の負担金により財源を賄う制度に戻った。ただしその際、平成18年度から20年度までの加入会社の破綻については、当面、政府補助の仕組みを存置することとされた。その期限である平成20年度末を前に、米国では、サブプライムローン問題で経営難に陥った保険会社大手AIGについて、国内外への影響を考慮し、政府による救済策が採られた。我が国においても、平成20年10月10日に、中堅生命保険会社の大和生命保険が、世界金融危機による株価下落の影響を受け、更生特例法の適用を申請し破綻した。このような背景もあり、世界金融危機が今後国内の生命保険会社に与える影響を勘案し、G7後の中川財務・金融担当大臣談話において、生命保険会社のセーフティーネットについて、平成21年4月以降も政府補助を引き続き可能とする措置を検討することが表明された。

(イ 関連議案の概要)

(ア) 金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

金融機関等をめぐる情勢の変化に対応して金融機能の強化等を図るため、金融機関等の資本の増強等に関する特別の措置を講じ、金融機関等の業務の健全かつ効率的な運営及び地域における経済の活性化を期するもので、その主な内容は、

a 国による株式等の引受け等に係る申込みの期限の延長

国が金融機関等の自己資本の充実のために行う株式等の引受け等に係る申込みの期限を平成24年3月31日まで延長すること

b 国による株式等の引受け等の要件等の修正
  1. 経営強化計画に記載が義務付けられている事項の一つである「信用供与の円滑化等地域経済の活性化に資する方策」を「中小規模の事業者に対する信用供与の円滑化等地域経済の活性化に資する方策」とすること
  2. 経営強化計画に記載が義務付けられている事項から、経営強化計画の終期において、経営の改善の目標が達成されない場合における経営責任の明確化に関する事項及び自己資本の基準に適合していない金融機関等が株式等の引受け等の決定を受けた場合における経営責任及び株主責任の明確化に関する事項を削除すること
  3. 株式等の引受け等の要件の一つである「地域における金融の円滑化が見込まれること」を「地域における中小規模の事業者に対する金融の円滑化が見込まれること」とするとともに、当該要件から、経営基盤の安定のための措置に係るものを削除すること

 協同組織中央金融機関等(全国を地区とする信用金庫連合会、信用協同組合連合会及び労働金庫連合会並びに農林中央金庫をいう。)に対する資本の増強に関する特別措置を新設すること

 この法律は、公布の日から起算して2月を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること

等である。

(イ) 保険業法の一部を改正する法律案(内閣提出)

最近における保険業を取り巻く経済社会情勢の変化を踏まえ、保険契約者等の保護を図り、保険業に対する信頼性を維持するため、政府による補助を可能とする規定を延長するものであり、その内容は、

a 政府補助の特例措置の延長

平成21年3月末までに破綻した場合の生命保険契約者保護機構が行う資金援助等に関しては政府補助の特例措置が設けられており、当該政府補助の特例措置を3年間延長すること(平成21年4月から平成24年3月末までの破綻に対応)

b 施行期日等
  1. この法律は、公布の日から施行すること
  2. 政府は、この法律の施行後3年以内に、生命保険契約者保護機構に対する政府の補助及び同機構による資金援助等の保険契約者等の保護のための特別の措置等に係る制度等の実施状況、同機構の財務の状況、保険会社の経営の健全性の状況等を勘案し、同機構の資金援助等に要する費用に係る負担の在り方、政府の補助に係る規定の継続の必要性等について検討を行い、適切な見直しを行うものとすること

である。

(ウ 審議経過)

金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案は、平成20年10月24日に提出され、同月28日の本会議において趣旨説明の聴取及び質疑が行われた後、同日、財務金融委員会に付託された。

同委員会においては、翌29日に提案理由の説明を聴取し、質疑に入り、31日に4名の参考人からの意見聴取及び参考人に対する質疑が、11月5日に麻生内閣総理大臣に対する質疑が行われた。同日、質疑終局後、自民及び公明の共同提案により、[1]経営強化計画の記載事項である「責任ある経営体制の確立に関する事項」に「従前の経営体制の見直しに関する事項」が含まれることを明確にすること、[2]協同組織金融機能強化方針の記載事項として、「協同組織中央金融機関等における従前の経営体制の見直しその他の責任ある経営体制の確立に関する事項」を追加すること、[3]協定銀行が優先出資の引受け等を行った協同組織中央金融機関等による協同組織金融機能強化方針に関する主務大臣への報告事項のうち、特別関係協同組織金融機関等の名称についても主務大臣による公表事項とすることを内容とする修正案が提出され、趣旨説明を聴取し、討論・採決の結果、本法律案は賛成多数をもって修正議決すべきものと議決された。なお、本法律案に対して、附帯決議が付された。

同月6日、本会議において、本法律案は修正議決された。

参議院においては、12月12日の本会議で、[1]金融機能強化法の目的規定を改め、中小規模の事業者に対する金融の円滑化等による地域における経済の活性化を期すものとすること、[2]一の地方公共団体がその総株主の議決権の100分の50を超える議決権を保有する銀行については、金融機能強化法における「金融機関等」に該当する「銀行」から除き、同法を適用しないことを内容とする修正議決がなされ、同日、衆議院に回付された。これを受けて、同日、本会議において、参議院の修正に同意しないとの議決が行われた後、本院議決案を直ちに再議決すべしとの動議が可決され、憲法第59条第2項の規定により、出席議員の3分の2以上の多数で衆議院議決案が再可決され、本法律案は成立した。

保険業法の一部を改正する法律案は、平成20年10月24日に提出され、同月28日の本会議において趣旨説明の聴取及び質疑が行われた後、同日、財務金融委員会に付託された。

同委員会においては、翌29日に提案理由の説明を聴取し、質疑に入り、31日に4名の参考人からの意見聴取及び参考人に対する質疑が、11月5日に麻生内閣総理大臣に対する質疑が行われた。同日、質疑を終局し、討論・採決の結果、本法律案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決された。

同月6日、本会議において、本法律案は可決された。

参議院においては、12月12日の本会議で可決され、成立した。

(エ 主な質疑事項)

金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案及び保険業法の一部を改正する法律案に対する主な質疑事項は、[1]世界金融危機の背景と我が国への影響、[2]中小企業金融における貸し渋り・貸しはがし等の実状、[3]中小企業の資金繰り円滑化に対する改正案の実効性、[4]資本注入に当たっての経営責任明確化の必要性、[5]協同組織中央金融機関等を介した資本注入の枠組みに農林中央金庫及び農協系統金融機関を加えることの妥当性、[6]協同組織中央金融機関等を介して資本注入した協同組織金融機関等の個別名公表の必要性、[7]新銀行東京が資本注入の対象となり得ることの問題性等であった。

3 国政選挙結果

(1) 平成20年4月統一補欠選挙

平成20年4月27日、衆議院山口県第2区において補欠選挙(4月15日告示)が行われた。選挙結果は次のとおりである。

なお、参議院議員の補欠選挙は、補欠選挙の対象となる欠員がないため実施されなかった。

衆・山口県第2区(福田良彦君20. 1.22辞職)
立候補者数 2人 投票率 69.00%
当選人 平岡 秀夫君(民主党)

(2) 平成20年10月統一補欠選挙

衆議院議員及び参議院議員の補欠選挙は、補欠選挙の対象となる欠員がないため実施されなかった。

衆議院
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