衆議院

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14 予算委員会

【第169回国会】

(1)委員名簿(50人)

委員長逢沢 一郎君自民
理事遠藤 利明君自民理事田野瀬良太郎君自民
理事中山 成彬君自民理事増原 義剛君自民
理事森  英介君自民理事山本 幸三君自民
理事岡田 克也君民主理事前原 誠司君民主
理事富田 茂之君公明井上 喜一君自民
伊藤 公介君自民岩永 峯一君自民
臼井日出男君自民尾身 幸次君自民
大島 理森君自民大野 功統君自民
金子 一義君自民河村 建夫君自民
倉田 雅年君自民小池百合子君自民
小坂 憲次君自民佐藤 剛男君自民
斉藤斗志二君自民坂本 剛二君自民
菅原 一秀君自民杉浦 正健君自民
園田 博之君自民中馬 弘毅君自民
長勢 甚遠君自民西銘恒三郎君自民
野田  毅君自民深谷 隆司君自民
三ッ矢憲生君自民三原 朝彦君自民
武正 公一君民主中川 正春君民主
原口 一博君民主細野 豪志君民主
馬淵 澄夫君民主松本 剛明君民主
山井 和則君民主笠  浩史君民主
和田 隆志君民主渡部 恒三君民主
赤松 正雄君公明江田 康幸君公明
笠井  亮君共産阿部 知子君社民
糸川 正晃君国民

(2)予算審議の概況

[1] 平成19年度一般会計補正予算(第1号)
平成19年度特別会計補正予算(特第1号)
平成19年度政府関係機関補正予算(機第1号)

○補正予算の概要

本補正予算は、歳出面において、財政規律を緩めないとの方針の下、国民生活の安全・安心、原油価格高騰への対応等に配慮しつつ、災害対策費をはじめとして、必要性・緊急性の高い経費を計上するとともに、義務的経費の追加を行う一方、地方交付税交付金の税収減見合の減額及びその補てんを行うとともに、既定経費の節減等を行い、他方、歳入面において、租税等の収入について、当初予算に比べ、9,160億円の減収を見込むとともに、税外収入の増加を見込むこととして編成されたものである。本補正予算は、平成20年1月18日、国会に提出され、同日、予算委員会に付託された。

本補正後の平成19年度一般会計予算の総額は、当初予算に対し、歳入歳出とも、8,954億円増加して、83兆8,042億円となっている。

特別会計予算においては、国債整理基金特別会計、道路整備特別会計など17特別会計について、所要の補正を行っている。

政府関係機関予算においては、中小企業金融公庫について、所要の補正を行っている。

○審議経過

衆議院予算委員会においては、1月25日、額賀財務大臣から提案理由の説明を聴取した。

1月28日には基本的質疑が行われ、道路特定財源の在り方、食料自給率の在り方、労働者の賃金と企業収益との関係、年金記録問題、地球温暖化対策、後期高齢者医療制度問題、原油高対策等について、質疑が行われた。

1月29日には締めくくり質疑が行われ、ガソリン価格の動向、在日米軍再編問題、医療制度改革、道路特定財源の在り方、教育問題、沖縄戦教科書検定問題、年金記録問題、水道管の耐震化等について質疑を行い、質疑は終局した。

質疑終局後、討論、採決を行い、本補正予算は賛成多数で可決すべきものと議決された。

同日に開かれた本会議においても、討論、採決の結果、本補正予算は賛成多数で可決、参議院に送付された。

参議院予算委員会においては、1月29日、額賀財務大臣から趣旨説明を聴取し、同月31日、2月1日及び同月5日に質疑を行い、質疑を終局し、翌6日、討論、採決の結果、賛成少数で否決すべきものと議決された。同日に開かれた本会議においても、討論、採決の結果、賛成101、反対127で否決された。

2月6日、本補正予算が参議院で否決されたため、衆議院は、参議院から否決の通知及び本補正予算の返付を受けた後直ちに、両院協議会を開くことを求めた。両院協議会においては、衆議院側が議長を務め、各議院から議決の趣旨について説明を聴取した後、当初予算と補正予算の財政規律上の関連性、高齢者医療制度、税収見積もり、原油高対策等について種々協議が重ねられたが、意見の一致は得られず、憲法第60条第2項の規定により、衆議院の議決が国会の議決となった。

[2] 平成20年度一般会計予算
平成20年度特別会計予算
平成20年度政府関係機関予算

○予算の概要

我が国経済は、バブル経済崩壊後の長い低迷から脱却し、このところ一部に弱さが見られるものの、景気回復を続けている。一方、原油価格の高騰や海外経済の動向等の影響には留意をする必要があり、引き続き、政府・日本銀行一体となった取組を行い、物価安定の下での民間需要中心の持続的成長を図ることが必要となっている。

このような中で、平成20年度予算は、これまでの財政健全化の努力を緩めることなく、社会保障や公共事業など各分野において「基本方針2006」で定められた歳出改革を、その2年目においても着実に実現し、歳出改革路線を堅持するとの基本的考え方に立って編成され、平成20年1月18日、国会に提出され、同日、予算委員会に付託された。

一般会計予算の規模は、83兆613億円で、平成19年度当初予算額に対して、1,525億円(0.2%)の増加となっている。

歳出については、国債費及び地方交付税交付金等の経費を除いた、いわゆる一般歳出の規模は47兆2,845億円であり、平成19年度当初予算額に対して、3,061億円(0.7%)の増加となっている。

歳出の主な内容は、次のとおりである。

ア 社会保障関係費については、医師確保対策など国民生活の安全・安心に配慮した重点化を図る一方、社会保障制度の改革努力を継続し歳出の抑制を図る観点から、めり張りのきいた診療報酬・薬価等の改定、後発医薬品の使用促進、被用者保険による政管健保への支援措置等の取組を行う等とし、平成19年度当初予算額に対して、3.0%増の21兆7,824億円を計上している。

イ 文教及び科学振興費については、文教分野において、信頼できる公教育の確立に資する施策等に重点的に対応するとともに、イノベーションを通じた経済成長の源となる科学技術分野において、選択と集中の徹底を図りつつ増額する等とし、平成19年度当初予算額に対して、0.5%増の5兆3,122億円を計上している。

ウ 防衛関係費については、防衛力の近代化等を図る一方、装備品調達の一層のコスト縮減・透明化を行うとともに、在日米軍駐留経費負担や人件費等、経費を聖域なく見直す等とし、平成19年度当初予算額に対して、0.5%減の4兆7,796億円を計上している。

エ 公共事業関係費については、全体として抑制する中で、コスト構造改革や入札・契約制度改革等を徹底しつつ、地域の自立・活性化のための自主的・戦略的取組を支援する事業や、国民の安全・安心の確保に直結する事業への重点化を行う等とし、平成19年度当初予算額に対して、3.1%減の6兆7,352億円を計上している。その他施設費については、平成19年度当初予算額に対して2.7%減の6,604億円を計上しており、公共事業関係費と合わせた公共投資関係費は7兆3,956億円となっている。

オ 経済協力費については、予算の厳選・重点化等を行い、改革を継続する中で、全体のODA事業量を適切に確保する等とし、平成19年度当初予算額に対して、3.7%減の6,660億円を計上している。

カ 中小企業対策費については、中小企業の活力を高め、地域・経済の活性化を図る観点から、中小企業金融の基盤強化、下請適正取引の推進、事業承継支援、中小企業者と農林水産業者との連携に関する施策等に重点化を行う等とし、平成19年度当初予算額に対して、7.3%増の1,761億円を計上している。

キ エネルギー対策費については、特別会計改革の一環として特別会計の歳出総額を抑制するとともに、安定供給確保や地球温暖化対策への対応等に重点化を行う等とし、平成19年度当初予算額に対して、0.1%増の8,655億円を計上している。

ク 国債費については、一般会計の負担に属する国債及び借入金の償還、国債及び借入金の利子等の支払いに必要な経費と、これらの事務取扱いに必要な経費を国債整理基金特別会計へ繰り入れるものとして、平成19年度当初予算額に対して、4.0%減の20兆1,632億円を計上している。

ケ 地方財政については、国の取組と歩調を合わせて、人件費、投資的経費及び一般行政経費の各分野にわたり厳しく抑制を図るとともに、地方の安定的な財政運営に必要となる一般財源の総額を確保することとしており、一般会計の地方交付税交付金等として、平成19年度当初予算額に対して、4.6%増の15兆6,136億円を計上している。

歳入については、租税及印紙収入は、研究開発税制の拡充、情報基盤強化税制の見直し、教育訓練費に係る特別税額控除制度の見直し、関税率の改定などの税制改正を行うことにより、平成19年度当初予算額に対して、0.2%増の53兆5,540億円になると見込まれている。その他収入については、平成19年度当初予算額に対して、3.7%増の4兆1,593億円が見込まれている。

公債発行額については、平成19年度当初予算額に対して、0.3%減の25兆3,480億円を予定しており、公債依存度は30.5%となる。

特別会計及び政府関係機関予算については、事務事業の徹底した見直しを行うとともに、剰余金等を財政健全化に資するよう活用することとしている。特別会計の歳出総額は368兆4,477億円であり、このうち、会計間取引額などの重複額等を控除した歳出純計額は178兆3,394億円となっている。特別会計の数は、21であり、政府関係機関の数は9である。

財政投融資計画については、社会経済情勢に即応し、真に政策的に必要な資金需要には的確に対応しつつ、対象事業の重点化・効率化を図ることとしている。その規模は、平成19年度計画に対して、2.1%減の13兆8,689億円となっている。

○審議経過

平成20年1月18日、衆・参両院の本会議において福田内閣総理大臣の施政方針演説、額賀財務大臣の財政演説等政府4演説が行われ、これに対する各党の代表質問は、同月21日から3日間、衆・参両院の本会議で行われた。

衆議院予算委員会においては、1月25日、額賀財務大臣から提案理由の説明を聴取した。

2月7日、8日及び12日の3日間、基本的質疑が行われた。

同月7日には、財政健全化、地域活性化、経済・財政一体改革、社会保障の給付と負担の在り方、道路特定財源の在り方、救急医療体制、地球環境問題等について、質疑が行われた。

同月8日には、中国産冷凍ギョーザ問題、道路特定財源の在り方、年金記録問題、道路中期計画、携帯電話の違法・有害サイト問題、派遣労働をめぐる問題、環境問題、サブプライムローン問題等について、質疑が行われた。

同月12日には、教育問題、捜査における取調べの在り方、地球温暖化対策、道路中期計画、道路特定財源の在り方、外資受入れの在り方、在沖米海兵隊員未成年者暴行事件等について、質疑が行われた。

2月13日から19日までは、一般的質疑が行われた。

同月13日には、平成20年度予算の健全性、がん対策、道路特定財源の在り方、道路中期計画、中国産冷凍ギョーザ問題、年金記録問題、地球温暖化対策、高齢者医療制度等について、質疑が行われた。

同月14日には、労働分配率の在り方、障害者行政への取組、経済成長及び財政の中期見通し、道路中期計画、道路特定財源の在り方、年金記録問題、随意契約の在り方等について、質疑が行われた。

同月15日には、道路特定財源の在り方、捜査における取調べの在り方、国民健康保険制度、国会同意人事の在り方、道路中期計画、労働者の安全対策、在沖米海兵隊員未成年者暴行事件、自殺対策等について、質疑が行われた。

同月18日には、道路特定財源の在り方、道路中期計画、中国産冷凍ギョーザ問題、年金記録問題、在沖米海兵隊員未成年者暴行事件、格差問題等について、質疑が行われた。

同月19日には、地方道路整備臨時貸付金の貸付制度、道路中期計画、教育問題、在沖米軍問題、農業政策等について、質疑が行われた。

2月20日には、国民各界各層から意見を聴取するため、宮崎県及び茨城県においていわゆる地方公聴会(委員派遣)が開会された。

2月21日には、福田内閣総理大臣も出席して道路特定財源について集中審議が行われ、今後の道路行政の在り方、国土開発幹線自動車道建設会議の在り方、道路中期計画の事業量の積算根拠、道路中期計画における費用便益分析、道路特定財源と国土交通省関連団体との関わり方、東京湾横断道路建設事業、道路特定財源の使途の拡大等について、質疑が行われた。

2月22日には、公聴会が開会された。

2月25日には、一般的質疑が行われ、民主党マニフェストにおける政策、道路特定財源の在り方、農業政策、新型インフルエンザ対策、イージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故、地球温暖化対策、護衛艦「しらね」火災事故等について、質疑が行われた。なお、委員会前の理事会では、分科会の開会を求める与党と審議は尽くしていないとして一般的質疑・集中審議を要求する野党との合意が得られず、委員長職権で、2月27日及び28日午前に分科会を行い、分科会設置の議決については本日の委員会冒頭に行うこととした。

2月26日には、福田内閣総理大臣も出席して年金・医療等社会保障問題について集中審議が行われ、年金の財政方式の在り方、少子化対策への取組、薬害問題、年金記録問題、療養病床の再編、後期高齢者医療制度、医師不足問題、救急医療の在り方等について、質疑が行われた。

2月27日及び28日の午前には、分科会が開会された。なお、委員長職権での分科会開会に反発した民主、社民、国民は分科会を欠席した。

2月28日の午後には、福田内閣総理大臣も出席して再び道路特定財源について集中審議が行われ、道路関係業務見直しの進捗状況、道路特定財源と国土交通省関連団体との関わり方、道路特定財源の一般財源化、道路中期計画の事業量の積算根拠、道路中期計画における費用便益分析、道路事業計画と住民参加、道路整備と救急医療ネットワーク整備の在り方等について、質疑が行われた。

なお、委員会後の理事会では、翌29日の集中審議後に締めくくり質疑、採決を要求する与党と審議は尽くしていないとして参考人招致や更なる一般的質疑・集中審議を要求する野党との合意が得られず、委員長職権で、集中審議後午後5時から7時まで締めくくり質疑を行い、その後採決を行う日程が決められた。

2月29日には、福田内閣総理大臣も出席してイージス艦・沖縄問題等について集中審議が行われ、イージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故、在沖米海兵隊員未成年者暴行事件、日米地位協定の在り方、東シナ海ガス田開発問題、沖縄振興に関する予算措置等について、質疑が行われた。

同日の夕刻には、締めくくり質疑が行われ、地方における建設業の活性化、日韓FTAの推進策等について、質疑が行われた。なお、与党の質疑中、締めくくり質疑に入ることに反発した野党が退席したため、与党質疑終了後、野党欠席のまま野党の質疑時間に入った。野党の質疑時間終了後、与党から質疑終局、討論省略、採決を求める動議が提出され、採決の結果、動議のとおり決した。

平成20年度予算審査における質疑・答弁の主なものは次のとおりである。

第1に、経済財政政策について、財政健全化に向けての今後の方針についての質疑に対し、福田内閣総理大臣から、「我が国は極めて厳しい財政状況にあるが、高齢化社会がさらに進展していくことにより、さらに厳しくなるという見通しもある。そのような中、財政健全化の方針を継続し、将来世代にツケを回さないために努力をしていかなければならない。そのために、今後とも、安定した成長を図るとともに、歳出歳入の一体改革を進めていくということが必要であり、歳出全般にわたってこれまで行ってきた改革努力を決して緩めることなく、国、地方を通じ、引き続き、基本方針2006にのっとり削減を行っていかなければならないと厳しく思っている。しかし、高齢化社会に伴う社会保障等の負担増要因がある中、同時に、少子化対策という問題にも積極的に手をつけていかなければいけないという時期にあり、負担増というのは避けられない。安定した財源を確保するとともに、将来の世代に負担のツケ回しをしないために、社会保障給付、そしてまた少子化対策に要する費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合う観点から、消費税を含む税体系の抜本的な改革に取り組んでいかなければならない。そのような取組を進めることにより2011年度には国と地方を合わせた基礎的財政収支の黒字化を図りたいという考え方は変わっていない」旨の答弁があった。

第2に、道路特定財源問題について、道路特定財源の一般財源化についての質疑に対し、福田内閣総理大臣から、「ガソリンを使うユーザーが明確になっているという特色があることから、負担と給付という形でこのような制度を有効活用するということで今まで説明をしてきた。そういう説明をしてきた中で、これからどうするかというときに、ユーザーの理解を得るための努力をし、そしてまた、ユーザーの理解を得ながらその範囲を拡大していくということである。一般財源も平成20年度は増やすという方向であり、さらに今後その枠を広げていく努力をする。しかし同時に、その際、ユーザーに対する説明もしなければならない。理解を得てそういうことをしていくことになる」旨の答弁があった。

また、暫定税率の延長についての質疑に対し、福田内閣総理大臣から、「道路というのは、今の時代においては生活基盤でもあり、どのように整備していくかというのは、政治の立場において極めて大事なことである。日本全体の発展ということを考えた場合に、地域で人が少ないから、では要らないのかというようなことも含めて、大いに議論しなければならない。ましてや、今、我が国は、人口減少、高齢化というようなこともあり、そのようなことによって、国際競争力が衰える、そしてまた、住んでいる人にサービスが十分に行き渡らないということがあってはならない。今、成熟した社会になったところであるが、さらにこれを発展し、福祉を増大していくために、交通の必要性というものがいかに大事であるかということを十分考えていかなければならない。そのような観点から、今回の道路の中期計画や、来年度の予算も道路についてお示しをしている。そういうものを整備していくための負担、費用については、国民の理解を得ながら、自分の地域だけがいいということでなく、日本全体でどうなるかということも含めて考えていただかなければならない。そしてまた、これからは環境の問題、道路に関する、また自動車にまつわる費用負担というものも増えてくる要素というのはあるのだろうと思う。しかし、限られた財源の中でいかにして合理的にそれを実現していくかということも我々としては考えていかなければならない。そういうものを総合した判断の上で今回の予算を計上させていただいたところであるので、国民の理解を得られるように、我々も努力をしていかなければならない」旨の答弁があった。

第3に、年金・医療等社会保障問題について、社会保障の給付と負担の将来的な在り方についての質疑に対し、福田内閣総理大臣から、「社会保障に対する国民の関心は非常に高いと思う。年金問題の不祥事ということも社会保障に対する関心を高めたと思うが、同時に、社会の情勢が変わってきたということがある。1つは、昔の高度経済成長のような経済成長に期待があまり持てなくなってきており、期待をしても安定成長であるということである。もう1つは、高齢化の問題である。高齢化社会のなか高齢者が増えてくる状況のもと、それを支える若い人たちの数が減り、負担があまりたくさん行ってしまったら気の毒だというようなこともあるが、そのようなことも含めて社会保障というのは、大変関心を集める、言葉をかえれば、心配事になってきたと思う。この心配は将来に対する心配であり、今現在給付を受けている方々もいらっしゃるが、若い人も将来の自分たちの生活を考える上で、自分が年をとったときにどうなるかというのは大変な関心事にならざるを得ないというように思う。社会保障に対する期待が、これからは大きくなっていくということをまず考えなければならない。この社会保障について国家としてどういうものを用意すればいいのかということがあるが、アメリカのように自助努力ということでやっている低福祉・低負担という国もあるし、スウェーデンのように高福祉・高負担というような国もある。日本は、中福祉・中負担ということが言われているが、果たして将来、中福祉・中負担でやっていけるのかどうか、その中負担のサービスの中身が国民の満足できるものなのかどうかというところを国民的な議論として巻き起こしていかなければならないのではないか。今の状況では、中福祉を維持するということになれば、支え手が減るため、負担は増えざるを得ない。そこのところをどうしていくのかということを国民各層の方々に議論をしていただき、国民にも、自分たちの将来がどうなのか、どうあるべきかということをあわせ考えていただきたいと思っており、将来の安心のための議論をしていただくために国民会議を開催させていただいたということである」旨の答弁があった。

また、年金制度について国民が抱いている不安についての質疑に対し、福田内閣総理大臣から、「日本は世界に例を見ないほどの急速な少子高齢化が進んでおり、社会経済の大きな変化とともに、年金記録問題という年金制度の信頼を失わせるような不祥事もあり、若い世代の方はもちろんのこと、国民全般が年金制度の将来に対して不安を抱いている。年金制度というのは国民の老後生活を支える柱であり、特に、昨今のように、経済の成長は昔と比べて2%、3%というようなことになるので、将来の生活に不安を覚える方は多いと思う。そのような社会経済の変化の中でも持続可能で皆が安心できるものにしていくことは、年金制度の必須条件であり、平成16年の制度改正において、長期的な給付と負担の均衡を確保して、制度を将来にわたって持続可能とするための改革を行ってきた。年金制度を国民が安心できるものとしていくためには、喫緊の課題である年金記録問題の解決に全力で取り組むということが大前提である。未納、未加入の方が生じないように、きめ細かな対応を行っていかなければいけない。また、基礎年金の国庫負担割合について、所要の安定した財源を確保する税制の抜本的改革を行った上で、平成21年度までに2分の1に引き上げていくという必要がある。このような問題に真正面から取り組んで、年金制度を国民の皆様にとって確実で信頼ある制度にしていくようにしたい」旨の答弁があった。

第4に、沖縄問題について、沖縄で繰り返される米兵による暴行事件にかんがみ日米地位協定を見直す必要性についての質疑に対し、高村外務大臣から、「身柄は既に日本の警察が押さえ、検察に送致されたということであるので、地位協定の問題は、今回の事件限りのことでは生じてきていない。このような事件が多発する中でどのようにするかということであるが、95年に事件が起こったときに、運用の改善ということで対処して、起訴前であっても、凶悪事件で日本政府が日本に身柄を持つことが適当と考えるときはそれを要求するということになってきた。今まで、起訴前においてもアメリカ側からこの種の事件で4回身柄が引き渡されている。日本の捜査当局からすれば、当然のことながら、地位協定を変えて、我が方に身柄があった方がやりやすいということはあるが、これも、米軍が世界に駐留している中で、運用上にしても、身柄が起訴前に引き渡される国というのは日本だけであり、そういう意味では、地位協定の運用は日本が一番進んでいるということは客観的な事実である。我が国の主権というのはもちろんあるが、ほかの主権国家に基地を置いて米兵についての地位をどう守るかという国の立場との間で、世界的に、グローバルな、それぞれの国との関係で、おおむね地位協定自身は、NATOとアメリカの地位協定と日本とアメリカの地位協定はほとんど同じだと承知をしている。運用については日本が一番進んでいる、イギリスやドイツやあるいは韓国、そういう国よりも日本の方が有利になっているというように承知している中で、日本にとって、さらに運用を改善することによって対処する以外ないのではないか。では、この事件の発生と地位協定との因果関係があるかというと、それは、それよりも、教育プログラムだとか再発防止策だとか、そういうこととの因果関係があるのではないかと考えている」旨の答弁があった。

第5に、イージス艦問題について、イージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故への防衛省の対応についての質疑に対し、福田内閣総理大臣から、「事故が起こったことについては、これはもう全くあり得べきことでないことを起こしてしまった、そういうことについて大いに反省をしなければいけない、また当面捜査に全力を挙げるということは当然のことである。そういうことで、遭難をされた方々の御家族の気持ちなども考えながら対応してまいりたい。今回、この事故が起こった後の対応について、いろいろの批判がある。そういう対応の仕方については、情報の連絡も含めて適切でなかったということはあったのではないかと考えている。今現在、いろいろな調査、捜査をしておる最中であり、具体的なことは申し上げないが、危機管理の基本である情報連絡についても、もっとしっかりやらなければいけない。そしてまた、この情報管理体制というものを含め、今後いろいろと考えていかなければいけない。この巨大な組織を規律正しくきちんと統制していくことができるかどうか、そういうことも考えていかなければいけない。そのために、今般は防衛省改革会議というものがあるので、そこで十分議論をさせていただきたいと思う」旨の答弁があった。

第6に、中国産冷凍ギョーザ問題について、中国産冷凍ギョーザ問題を受けての消費者行政についての質疑に対し、福田内閣総理大臣から、「農薬による中毒症状が発生したという非常に不幸なことが起こったところであるが、こういうことについての反省ということを申し上げれば、国民の方から見て、問題が起こったときに一体どこに通報したらいいのか、今回も、警察に通報したということで、そういう観点から取組が始まったというが、主管官庁たる厚生労働省に連絡が行ったのは、相当遅れてからだったということがある。情報の共有という体制が整っていないということもあるし、窓口がたくさんあり、厚生労働省も関係するし警察も関係するし、また、輸入食品ということであれば農林水産省というようなことも関係するし、地方の行政組織も関係しているということで、その間、的確な対応ができないような、情報の分散したような状態ができて、政府として一丸となって取り組めるような体制がなかなかとれないのが現状だと思う。これはまさに国民の方々が迷うような体制だと思うことから、この際一斉に改めた方がいいのではないかということで、末端における縦割りを国民に押しつけるということなく国民から見て非常に使いやすい政府というものができていいのではないか、国民目線の行政の在り方ということの総点検を国民生活審議会において行っていただいている。そしてまた、それをさらに進めて、行政組織を、統一的、一元的に進めていくというための新組織をできるだけ早くつくりたいということで、具体的な方針を、消費者行政推進会議というものを立ち上げ、その設置のための議論をしていただこうと考えている。この担当大臣には岸田国務大臣に消費者行政推進担当大臣ということでお願いをしたところであり、今後は、国民生活審議会での議論も踏まえながら消費者行政推進会議において具体的な詰めをしていきたい、最終的には、本当に国民から見て、あそこに連絡すればいいんだ、こういう種類の問題はあそこに連絡すれば解決するんだ、解決の道が開けるんだということがわかりやすい、わかるような、そういう形にしてまいりたい」旨の答弁があった。

2月29日の締めくくり質疑における与党からの動議の採決の後、平成20年度予算3案はいずれも原案のとおり可決すべきものと議決された。

同日の本会議は、委員会与党単独採決に反発した民主、社民、国民の出席が得られない中で開会され、討論の後、記名採決の結果、賛成336、反対11で平成20年度予算3案は可決され、参議院に送付された。

参議院の予算委員会は、1月29日に額賀財務大臣から平成20年度予算3案の趣旨説明を聴取し、3月13日から質疑に入り、基本的質疑、一般質疑、集中審議、公聴会、委嘱審査、締めくくり質疑を行い、同月28日に質疑を終局した。その後、討論、採決の結果、平成20年度予算3案は、賛成少数で否決すべきものと議決された。同日に開かれた本会議においても、討論、採決の結果、賛成107、反対134で否決された。

3月28日、平成20年度予算3案が参議院で否決されたため、衆議院は、参議院から否決の通知及び平成20年度予算3案の返付を受けた後直ちに、両院協議会を開くことを求めた。両院協議会においては、衆議院側が議長を務め、各議院から議決の趣旨について説明を聴取した後、道路特定財源の在り方、平成20年度予算と財政健全化の関係、中小企業対策、税収見積もり等について種々協議が重ねられたが、意見の一致は得られず、憲法第60条第2項の規定により、衆議院の議決が国会の議決となった。

《議案審査一覧》

予算
件名 提出日 衆院
大臣
発言
衆院
委員会
付託日
衆院
提案
理由
衆院
委員会
質疑
衆院
委員会
議決日

結果
衆院
本会議
議決日

結果
参院
委員会名
参院
委員会
議決日

結果
参院
本会議
議決日

結果
備考
平成19年度一般会計補正予算(第1号)

平成19年度特別会計補正予算(特第1号)

平成19年度政府関係機関補正予算(機第1号)
20.1.18 1.18 1.25 1.28

1.29
1.29

可決(多)

(賛-自民・公明・国民)

(反-民主・共産・社民)
1.29

可決

予算 2.6

否決
2.6

否決

平成20年度一般会計予算

平成20年度特別会計予算

平成20年度政府関係機関予算
1.18 1.18 1.25 2.7
2.8
2.12
〜(連日)
2.15
2.18
2.19
2.20(地公)
2.21
2.22(公聴)
2.25
2.26
2.27(分科)
2.28(分科)
2.28
2.29
2.29

可決(全)

(賛-自民・公明)

(欠-民主・共産・社民・国民)
2.29

可決

予算 3.28

否決
3.28

否決

※両院協議会を開いたが、両院の意見が一致しないので、憲法第60条第2項の規定により衆議院の議決が国会の議決となった。

(3)分科会・公聴会

[1] 分科会

分科会 所管 設置日 構成 開会日
第1分科会 皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣及び内閣府所管並びに他の分科会の所管以外の事項 平成20. 2.25 分科員6人 2.27 2.28
第2分科会 総務省所管 2.25 分科員5人 2.27 2.28
第3分科会 法務省、外務省及び財務省所管 2.25 分科員4人 2.27 2.28
第4分科会 文部科学省所管 2.25 分科員4人 2.27 2.28
第5分科会 厚生労働省所管 2.25 分科員5人 2.27 2.28
第6分科会 農林水産省及び環境省所管 2.25 分科員4人 2.27 2.28
第7分科会 経済産業省所管 2.25 分科員4人 2.27 2.28
第8分科会 国土交通省所管 2.25 分科員4人 2.27 2.28

[2] 公聴会

開会承認要求日 承認日 公聴会を開いた議案 意見を聞いた問題 開会日
平成20.2.13 2.13 平成20年度一般会計予算

平成20年度特別会計予算

平成20年度政府関係機関予算
平成20年度総予算について 2.22

(4)公述人・参考人

[1] 公述人

出頭日 職業 氏名 意見を聞いた問題
平成20. 2.22 慶應義塾大学経済学部准教授 土居 丈朗君 平成20年度総予算について
構想日本代表 加藤 秀樹君
千葉商科大学学長 島田 晴雄君
奈良女子大学大学院准教授 中山  徹君
相馬市長 立谷 秀清君
慶應義塾大学大学院教授 片山 善博君
中京大学大学院教授・経済学博士 水谷 研治君
日本金融財政研究所長 菊池 英博君

[2] 参考人

出頭日 職業 氏名 審査・調査案件
平成 20.1.25 日本銀行総裁 福井  俊彦君 予算の実施状況に関する件
1.28 日本銀行総裁 福井  俊彦君 平成19年度一般会計予算

平成19年度特別会計予算

平成19年度政府関係機関予算(機第1号)
1.29 日本銀行総裁 福井  俊彦君
2. 7 日本銀行総裁 福井  俊彦君 平成20年度一般会計予算

平成20年度特別会計予算

平成20年度政府関係機関予算
独立行政法人都市再生機構理事長 小野 邦久君
2. 8 日本銀行総裁 福井  俊彦君
日本郵政株式会社取締役兼代表執行役社長 西川 善文君
2.25 日本郵政株式会社常務執行役 伊東 敏朗君

(第1分科会)

出頭日 職業 氏名 審査・調査案件
平成20.2.28 預金保険機構理事長 永田 俊一君 平成20年度一般会計予算

平成20年度特別会計予算

平成20年度政府関係機関予算

〔内閣府所管(内閣府本府、警察庁、金融庁)〕

(第2分科会)

出頭日 職業 氏名 審査・調査案件
平成20. 2.27 日本郵政株式会社常務執行役 伊東 敏朗君 平成20年度一般会計

平成20年度特別会計予算

平成20年度政府関係機関予算

(総務省所管)

(第8分科会)

出頭日 職業 氏名 審査・調査案件
平成20. 2.27 独立行政法人都市再生機構理事 尾見 博武君 平成20年度一般会計予算

平成20年度特別会計予算

平成20年度政府関係機関予算

(国土交通省所管)

[3] 意見陳述者

期日 場所 職業

氏名

意見を聴取した問題

平成
20. 2.20
宮崎県 延岡市長 首藤 正治君 平成20年度一般会計予算、平成20年度特別会計予算及び平成20年度政府関係機関予算について
九州産交運輸(株)取締役相談役((社)熊本県トラック協会長) 坂本 洋一君
延岡商工会議所会頭 清本 英男君
医療法人財団天心堂理事長 松本 文六君
茨城県 茨城県知事 橋本  昌君
連合茨城会長 児島  強君
日立市都市計画審議会会長 山本 忠安君
茨城大学人文学部教授 佐川 泰弘君

(5)委員派遣・議員海外派遣

[1] 委員派遣

派遣日 派遣地名 派遣目的 派遣委員
平成20. 2.20 第1班 宮崎県
第2班 茨城県
平成20年度一般会計予算、平成20年度特別会計予算及び平成20年度政府関係機関予算の審査 第1班15人
第2班15人

[2] 議員海外派遣

派遣議員団 派遣期間 派遣国名 派遣目的 派遣議員
衆議院中東各国政治経済事情等調査議員団 (閉会中)
平成20. 7. 1 〜 7.11
サウジアラビア、オマーン、バーレーン、アラブ首長国連邦 中東各国における政治経済事情等の実情調査 8人


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