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第9 第7回G8下院議長会議

1 G8下院議長会議について

(1) 概要

本件会議は、行政府のみならず議会レベルにおいても世界各国からG8各国(日、加、仏、独、伊、露、英、米)のリーダーシップが期待されている中、対外的に下院を代表する議長同士が一堂に会し、国際的諸課題への議会としての対応、各国における議会制度上の懸案事項等について、おおむね2つの議題を設定し、忌憚のない意見交換を行うものである。

(2) 経緯

本件会議の創設に関する提案は、平成7年以降、複数の議長からなされていたが、いずれも全ての議長の同意を得ることができず、実現には至らなかった。そうした中、伊`衆議院議長(肩書は当時。以下同じ。)の呼びかけにより、平成12年、ニューヨークにおけるIPU世界議長会議の機会に、本件会議の「準備会合」が開催された。同会合には、海外出張のため欠席した米国下院議長を除くG8の議長7名が出席し(日本からは綿貫衆議院議長が出席)、米国の参加を条件として、本件会議を毎年1回、G8サミットのホスト国が持ち回りで開催することについて合意がなされた。その後、平成13年のローマにおける第2回準備会合を経て、平成14年のカナダにおける第1回会議以降、毎年1回開催されている。

なお、平成19年のドイツにおける第6回会議において、欧州議会議長が恒常的なゲストとして会議に参加することが了承された。

(3) 会議の形式

会議の議題は、主催国が提案し、各国の意見を聴取して最終決定される。会議においては通常、それぞれの議題につき、導入演説及び基調演説の後、自由討議が行われる。国によっては、議長が不偏不党の立場にあることから、政治的な発言をすることができないため、各国議長は議会代表としての立場にとらわれず個人として発言する。会議は非公開であり、政治宣言等で締め括ることはしないこととなっているが、主催国の議長は通常、記者会見等において会議の総括を行っている。

2 第7回G8下院議長会議の概要

(1) 経緯

第6回会議において、河野衆議院議長は、第7回会議につき、「平和と軍縮」をテーマの一つとして、広島において秋に行う旨の提案を行い、各国議長からの賛同を得た。これを受けて、第7回会議は、河野衆議院議長が主催者となり、平成20年9月2日(火)、広島国際会議場を会場として開催された。

広島においては、広島県、広島市、地元経済界(中国経済連合会、広島商工会議所、広島経済同友会、広島県経営者協会)及び二国間友好協会(広島カナダ協会、広島日仏協会、広島日独協会、広島日伊協会、日本ユーラシア協会広島支部、広島日英協会、広島日米協会)からなる「G8下院議長会議支援推進協議会」が設置されたほか、広島市には「広島市G8下院議長会議推進本部」が設置され、日程運営等に多大なる支援を受けた。

なお、本件会議の日本開催は今回が初めてであり、かつG8の全ての下院議長が参加した初めての会議となった(ゲストである欧州議会は第一副議長が出席)。

(2) 出席者

日本国衆議院議長   河野 洋平君
カナダ連邦下院議長  ピーター・ミリケン君
フランス国民議会議長 ベルナール・アコワイエ君
ドイツ連邦議会議長   ノルベルト・ラマート君
イタリア下院議長    ジャンフランコ・フィーニ君
ロシア国家院議長    ボリス・ヴャチェスラヴォヴィッチ・グルィズロフ君
英国下院議長      マイケル・マーティン君
米国下院議長      ナンシー・ペローシ君
欧州議会第一副議長  ロディ・クラッツァ=ツァガロポウロ君(ゲスト参加)

(3) 全体日程

○8月31日(日)
 福田内閣総理大臣主催夕食会

○9月1日(月)
 河野衆議院議長主催昼食会
 天皇陛下御引見(宮中茶会)
 広島へ移動
 休憩(上田宗箇流による御手前)
 G8議長サミット記念コンサート鑑賞
 G8下院議長会議支援推進協議会主催歓迎夕食会

○9月2日(火)
 原爆死没者慰霊碑献花
 平和記念資料館視察
 G8下院議長会議(第1セッション)
 広島市主催昼食会
 G8下院議長会議(第2セッション及び第3セッション)
 共同記者会見
 厳島神社参詣
 河野衆議院議長主催夕食会

○9月3日(水)
 東京へ移動

(4) 会議日程

○第1セッション「議題1:平和と軍縮に向けた議会の役割」
【開会挨拶及び導入演説】河野衆議院議長
【基調演説】アコワイエ・フランス国民議会議長
自由討議

○第2セッション「議題2:二院制議会における意思決定」
【導入演説】河野衆議院議長
【基調演説】フィーニ・イタリア下院議長
自由討議

○第3セッション
【次回開催国挨拶】フィーニ・イタリア下院議長
各国下院議長による発言
【議題1及び議題2に係る議論の総括並びに閉会挨拶】河野衆議院議長

(5) 共同記者会見記録

河野衆議院議長:まず、本G8下院議長会議は、発足以来その内容は非公開とし、共同声明・共同宣言等は取りまとめないことをルールとしている。そのような制約の中でお話をさせていただくことをお許しいただきたい。

会議の中で、本会議の広島での開催は、「平和・軍縮」をテーマとして議論する場として極めて適切であったと評価する発言をいただいた。また、出席者全員で原爆死没者慰霊碑に献花を行った後、平和記念資料館を視察し、被爆者の体験を伺うことからこの会議が始まった。ややエモーショナルな感情を持ちながら会議が始まった面もあったが、各参加者からは核軍縮あるいは究極的な核廃絶について強い発言があった。さらに、NPT(核不拡散条約)体制の堅持やさらに一歩進んでCTBT(包括的核実験禁止条約)についても進めていく必要がある、進めようという趣旨の発言もあった。

我々は当初「核のない平和な世界を目指そう」という言葉を念頭に置いていたが、本会議が終了し、「核兵器をなくして平和な世界を作ろう」というように私の気持ちは変わった。参加者にもそのように申し上げたところである。テロリストが核兵器を手にすることへの危惧、核兵器の不拡散、当然ながら核兵器保有国の核軍縮、これらはいずれもNPTの精神でもあり、これを堅持し、なお一層強化していかなければならない。

昼食の際、我々は、本会議の1つの成果として、将来広島において「子どもサミット」が行われることを非常に強く期待するということを申し合わせた。これは広島の方々の考えを重視し、当然ながら組織や財政上の問題等も考慮する必要はあるが、こうしたことを支援する気持ちを有しているということについて賛成していただいた。

午前中の第1セッションは、フランスのアコワイエ議長のスピーチから始まり、各国参加者の非常に熱心な討議が行われた。また、終盤にはグルジア問題についての発言もあり、それぞれ各国の立場を申し述べた。特に停戦協定の遵守やグルジア領土の一体性の維持を求めるという発言が何人かからあった。その一方で、同問題の歴史的背景と同国の考え方についても熟知する必要があるとの発言もあった。

午後の第2セッションはイタリアのフィーニ議長のスピーチに始まり、二院制議会について、各国からそれぞれの制度について説明があった。今年の5月に第2セッションのテーマを設定し各国に通知したが、これを議論する前日に二院制に起因する「ねじれ」により、我が国の総理大臣が辞任するという事態に見舞われたことは、当時は全く想像もしないことであった。

技術の進歩が社会のスピード感を高めており、社会が求めるスピードに二院制が応えられるかどうかという問題もあるが、各国は歴史的経緯と長い年月を経てそれぞれ固有の二院制を形成しており、二院制の持つ様々な側面と困難性を時には上手く活用し、また、時にはブレーキとして間違いのない政治を行うよう努めているとの話を伺った。

次回の第8回下院議長会議は、来年9月を目途にイタリアのローマで開催をし、テーマについては、メンバーとなお相談をするということにして本会議を終了したところである。

外国人記者:エルサレムポスト紙では、イスラエルがイランに核攻撃を行う可能性について報道しているが、会議において本件は取り上げられたか。また、取り上げていないとすれば、その理由は何か。

河野衆議院議長:答えはノーである。各国それぞれの軍縮に向けた取組の説明があり、第2ラウンドからは、グルジア問題に関心が集まったため取り上げられることはなかった。

邦人記者:核廃絶やNPT強化にも議論が及んだとのことだが、被爆地である広島で本会議が開催されたことがこうした議論にどのような影響を与えたと考えるか。また、特に核兵器保有国の議長が資料館や被爆者の証言等に対して感想を述べる機会があったとしたらどのような感想を述べたのか。さらに自国が保有する核兵器に対して今後どのように対処していく考えであったのか。

河野衆議院議長:冒頭申し上げたが、誰がどのような発言をしたかについては言及しないこととしている。しかし、原爆慰霊碑に献花をした後、資料館を長時間視察し、館長及び被爆者である高橋氏からの証言を聞いて、参加者は非常に強い印象を受けたと語っており、先ほども申し上げたが、「平和・軍縮」の問題を議論するのにこれほどふさわしい場所はないと発言された方もいた。

1945年8月15日より前に生まれたのは、私と米英下院議長のみであり、リアルタイムでショックを受けた方はいない。また、実際に広島に来て慰霊碑に献花し、資料館を視察した方もいない。今回の視察を通じ、どれほどの強い印象、ショックを受けたかは理解できる。広島に来ていただいた意味は大きいと思っている。

我々が目指す仕事はそう簡単には成就しない。残念ではあるが現実でもあり、一歩一歩進めていかなければならない。私としては、これをきっかけとして、できるだけ多くの世界の政治的指導者が広島又は長崎を訪問し、こうした現実を見ていただきたい。そうすれば、さらに軍縮への決意や行動を持たれるに違いないと考えている。

(参考)過去のG8下院議長会議の経過

回次 開催日及び開催地 議題及び基調演説者等
1 平成14(2002)年
9月8〜10日
キングストン
(カナダ)
【議会における委員会の活性化】
基調演説:マーティン・英下院議長
【議員外交】
基調演説:綿貫衆議院議長
【民主主義とテロリズム】
基調演説:ハスタート・米下院議長
2 平成15(2003)年
9月9〜10日
パリ
(フランス)
【議会の監視能力】
基調演説:カジーニ・イタリア下院議長
【政治資金】
基調演説:ミリケン・カナダ連邦下院議長
3 平成16(2004)年
9月10〜12日
シカゴ
(米国)
【統治の継続性】
基調演説:ミリケン・カナダ連邦下院議長
【議会補佐機関の強化】
基調演説:ヘーゼルハースト・英下院副議長
4 平成17(2005)年
9月16〜18日
グラスゴー
(英国)
【新興諸国の議会及び議会制民主主義に対する支援】
 基調演説:ビュール・フランス国民議会副議長
【安全性の保持(セキュリティ)及び議会における安全性の保持の必要性と 増大する国民の議会へのアクセスの要求をどのように調和させるか】
基調演説:グルィズロフ・ロシア国家院議長
5 平成18(2006)年
9月15〜16日
サンクトペテルブルク
(ロシア)
【新たな脅威と挑戦に対処するための立法措置】
基調演説:ハスタート・米下院議長
【世界のエネルギー安全保障のための国際的な立法上の支援】
基調演説:ラマート・ドイツ連邦議会議長
6 平成19(2007)年
9月7〜9日
ベルリン
(ドイツ)
【グローバル化が進む世界における議会の重要性と議会間協力】
 導入演説:ペローシ・米下院議長
 基調演説:河野衆議院議長
 基調演説:ペテリング・欧州議会議長
【持続可能な気候変動防止とエネルギー効率の向上−各国議会の貢献】
 導入演説:ミリケン・カナダ連邦下院議長
 基調演説:アコワイエ・フランス国民議会議長

※総選挙後特別会召集前のため議長不在だった第4回会議を除き、日本は全て議長が出席。

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