第二一二回
参第一〇号
水産業を守り支えるために水産業者に対する支援に関し緊急に講ずべき措置に関する法律案
(趣旨)
第一条 この法律は、近年の生産資材等の価格の高騰に加え、国産の水産物に係る特定の国又は地域による科学的根拠に基づかない貿易に関する規制(次条及び第三条において単に「貿易に関する規制」という。)により、水産業が困難な状況に直面していることに鑑み、水産業を守り支えるために水産業者に対する支援に関し緊急に講ずべき措置について定めるものとする。
(輸出の急激な減少への対処)
第二条 政府は、貿易に関する規制による国産の水産物の輸出の急激な減少に機動的に対処するため、当該国産の水産物の一時的な保管及びそのための買取りの支援、当該国産の水産物の国内における加工体制の強化に必要な人材の確保及び設備の整備の支援その他の必要な措置を講ずるものとする。
(貿易に関する規制の撤廃)
第三条 政府は、貿易に関する規制の撤廃を図るため、当該貿易に関する規制を行う国又は地域の政府等との交渉その他の必要な措置を講ずるものとする。
(輸出の促進)
第四条 政府は、新たな海外市場の開拓等により国産の水産物の輸出の促進を図るため、海外における国産の水産物の販売を促進するための紹介及び宣伝の強化、諸外国の政府等が定める水産物に係る輸入の条件を満たすために必要な水産業者による施設及び体制の整備並びに検査の受検の支援その他の必要な措置を講ずるものとする。
(国内消費の拡大)
第五条 政府は、国産の水産物の国内における消費の拡大を図るため、その販売を促進するための多様な主体による取組の支援その他の必要な措置を講ずるものとする。
(国内外における理解の増進)
第六条 政府は、国産の水産物の安全性に関する国内外における理解の増進を図るため、科学的根拠に基づく正確な情報の提供その他の必要な措置を講ずるものとする。
(その他の水産業者に対する緊急の支援)
第七条 政府は、第二条から前条までに定めるもののほか、相談体制の整備、資金の融通の円滑化その他の水産業者を支援するために緊急に必要な措置を講ずるものとする。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。
(検討)
2 政府は、海洋環境の変化、高齢化の進展等による漁業者等水産業の担い手の減少その他の現下の水産業を取り巻く状況を踏まえ、水産業に関する施策の全般について、その実施状況の検証を行うものとする。
3 政府は、前項の検証の結果を踏まえ、海洋国日本の安全保障上も極めて重要である水産業の持続的な発展を図る観点から、漁船等の施設の整備の促進その他の安定的な漁業経営の育成、水産業を担う人材の育成及び確保、漁業、水産加工業及び水産流通業の連携の確保、漁港、漁場その他の水産業の基盤の整備、漁村の総合的な振興、国産の水産物の消費の拡大、養殖業の振興、赤潮等に係る対策その他の水産業に関する施策の在り方について検討を加え、その結果に基づいて、水産基本法(平成十三年法律第八十九号)等の見直しを含む必要な措置を講ずるものとする。
理 由
近年の生産資材等の価格の高騰に加え、国産の水産物に係る特定の国又は地域による科学的根拠に基づかない貿易に関する規制により、水産業が困難な状況に直面していることに鑑み、水産業を守り支えるために水産業者に対する支援に関し緊急に講ずべき措置について定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。