第二一九回
参第五号
特定秘密の保護に関する法律及び重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律の一部を改正する法律案
(特定秘密の保護に関する法律の一部改正)
第一条 特定秘密の保護に関する法律(平成二十五年法律第百八号)の一部を次のように改正する。
第一条中「漏えい」を「漏えい等」に改める。
第三条第二項第一号中「する物件」の下に「(第二十四条の三第一項において「特定秘密文書等」という。)」を加える。
第十二条第二項第一号中「事項(」の下に「評価対象者の国籍(過去に有していた国籍を含む。以下この号において同じ。)及び外国への渡航又は外国における居住の経歴その他の外国との関連性に係る事情並びに」を加え、「(過去に有していた国籍を含む。)」を削る。
第二十条中「漏えい」を「漏えい等」に改める。
第二十三条の次に次の一条を加える。
第二十三条の二 特定秘密の取扱いの業務に従事する者が、外国の利益若しくは自己の不正の利益を図る目的で、又は我が国の安全を害し、若しくは国民の生命若しくは身体に危害を及ぼすおそれがあることを知りながら、その業務により知得した特定秘密を、外国の政府、軍隊その他これに類する組織、地方公共団体若しくは政党(以下「外国政府等」という。)又は外国政府等との契約若しくは外国の法令に基づき外国政府等による情報収集活動に協力する義務を負う個人若しくは法人その他の団体(以下「情報収集義務者」という。)に漏らしたときは、一年以上の有期拘禁刑に処し、又は情状により一年以上の有期拘禁刑及び二千万円以下の罰金に処する。特定秘密の取扱いの業務に従事しなくなった後においても、同様とする。
2 第四条第五項、第九条、第十条又は第十八条第四項後段の規定により提供された特定秘密について、当該提供の目的である業務により当該特定秘密を知得した者が、外国の利益若しくは自己の不正の利益を図る目的で、又は我が国の安全を害し、若しくは国民の生命若しくは身体に危害を及ぼすおそれがあることを知りながら、これを外国政府等又は情報収集義務者に漏らしたときは、七年以下の拘禁刑に処し、又は情状により七年以下の拘禁刑及び七百万円以下の罰金に処する。第十条第一項第一号ロに規定する場合において提示された特定秘密について、当該特定秘密の提示を受けた者が、外国の利益若しくは自己の不正の利益を図る目的で、又は我が国の安全を害し、若しくは国民の生命若しくは身体に危害を及ぼすおそれがあることを知りながら、これを外国政府等又は情報収集義務者に漏らしたときも、同様とする。
3 前二項の罪の未遂は、罰する。
第二十四条第一項中「いう」の下に「。次項及び第二十四条の三第一項において同じ」を加え、同条第三項中「前二項」を「前三項」に改め、同項を同条第四項とし、同条第二項中「前項」を「前二項」に改め、同項を同条第三項とし、同条第一項の次に次の一項を加える。
2 外国の利益若しくは自己の不正の利益を図り、又は我が国の安全若しくは国民の生命若しくは身体を害すべき用途に供する目的で、人を欺き、人に暴行を加え、若しくは人を脅迫する行為により、又は財物の窃取若しくは損壊、施設への侵入、有線電気通信の傍受、不正アクセス行為その他の特定秘密を保有する者の管理を害する行為により、特定秘密を取得した者が、これを外国政府等又は情報収集義務者に漏らしたときは、一年以上の有期拘禁刑に処し、又は情状により一年以上の有期拘禁刑及び二千万円以下の罰金に処する。
第二十四条の次に次の二条を加える。
第二十四条の二 第二十三条の二第一項若しくは第二項又は前条第二項の規定の適用がある場合を除き、外国の利益若しくは自己の不正の利益を図る目的で、又は我が国の安全を害し、若しくは国民の生命若しくは身体に危害を及ぼすおそれがあることを知りながら、特定秘密を外国政府等又は情報収集義務者に漏らした者は、五年以下の拘禁刑に処し、又は情状により五年以下の拘禁刑及び五百万円以下の罰金に処する。
2 前項の罪の未遂は、罰する。
第二十四条の三 外国の利益若しくは自己の不正の利益を図り、又は我が国の安全を害し、若しくは国民の生命若しくは身体に危害を及ぼす目的で、財物の損壊、施設への侵入、不正アクセス行為その他の特定秘密を保有する者の管理を害する行為により特定秘密文書等を毀棄した者は、十年以下の拘禁刑に処し、又は情状により十年以下の拘禁刑及び千万円以下の罰金に処する。
2 前項の罪の未遂は、罰する。
3 前二項の規定は、刑法その他の罰則の適用を妨げない。
第二十五条第二項中「第二十三条第二項」の下に「又は第二十四条の二第一項」を加え、同項を同条第三項とし、同条第一項中「第二十三条第一項」の下に「、第二十三条の二第二項、第二十四条第一項」を加え、「煽(せん)動」を「煽動」に改め、同項を同条第二項とし、同条に第一項として次の一項を加える。
第二十三条の二第一項又は第二十四条第二項に規定する行為の遂行を共謀し、教唆し、又は煽(せん)動した者は、七年以下の拘禁刑に処する。
第二十六条中「若しくは第二十四条第二項」を「、第二十三条の二第三項、第二十四条第三項、第二十四条の二第二項若しくは第二十四条の三第二項」に、「若しくは第二十四条第一項」を「、第二十三条の二第一項若しくは第二項、第二十四条第一項若しくは第二項、第二十四条の二第一項若しくは第二十四条の三第一項」に改める。
第二十七条第一項中「第二十三条」の下に「及び第二十三条の二」を加え、「同条」を「これら」に改め、同条第二項中「及び第二十五条」を「から第二十五条まで」に改める。
(重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律の一部改正)
第二条 重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律(令和六年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。
第一条中「漏えい」を「漏えい等」に改める。
第三条第二項第一号中「する物件」の下に「(第二十四条の三第一項において「重要経済安保情報文書等」という。)」を加える。
第十二条第二項第一号中「事項(」の下に「評価対象者の国籍(過去に有していた国籍を含む。以下この号において同じ。)及び外国への渡航又は外国における居住の経歴その他の外国との関連性に係る事情並びに」を加え、「(過去に有していた国籍を含む。)」を削る。
第二十条中「漏えい」を「漏えい等」に改める。
第二十三条の次に次の一条を加える。
第二十三条の二 重要経済安保情報の取扱いの業務に従事する者が、外国の利益若しくは自己の不正の利益を図る目的で、又は我が国の安全を害し、若しくは国民の生命若しくは身体に危害を及ぼすおそれがあることを知りながら、その業務により知り得た重要経済安保情報を、外国の政府、軍隊その他これに類する組織、地方公共団体若しくは政党(以下「外国政府等」という。)又は外国政府等との契約若しくは外国の法令に基づき外国政府等による情報収集活動に協力する義務を負う個人若しくは法人その他の団体(以下「情報収集義務者」という。)に漏らしたときは、七年以下の拘禁刑若しくは七百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。重要経済安保情報の取扱いの業務に従事しなくなった後においても、同様とする。
2 第四条第五項、第八条、第九条、第十条第五項若しくは第六項又は第十八条第四項の規定により提示され、又は提供された重要経済安保情報について、当該提示又は提供の目的である業務により当該重要経済安保情報を知り得た者が、外国の利益若しくは自己の不正の利益を図る目的で、又は我が国の安全を害し、若しくは国民の生命若しくは身体に危害を及ぼすおそれがあることを知りながら、これを外国政府等又は情報収集義務者に漏らしたときは、五年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。第九条第一項第一号ロに規定する場合において提示された重要経済安保情報について、当該重要経済安保情報の提示を受けた者が、外国の利益若しくは自己の不正の利益を図る目的で、又は我が国の安全を害し、若しくは国民の生命若しくは身体に危害を及ぼすおそれがあることを知りながら、これを外国政府等又は情報収集義務者に漏らしたときも、同様とする。
3 前二項の罪の未遂は、罰する。
第二十四条第一項中「いう」の下に「。次項及び第二十四条の三第一項において同じ」を加え、同条第三項中「前二項」を「前三項」に改め、同項を同条第四項とし、同条第二項中「前項」を「前二項」に改め、同項を同条第三項とし、同条第一項の次に次の一項を加える。
2 外国の利益若しくは自己の不正の利益を図り、又は我が国の安全若しくは国民の生命若しくは身体を害すべき用途に供する目的で、人を欺き、人に暴行を加え、若しくは人を脅迫する行為により、又は財物の窃取若しくは損壊、施設への侵入、有線電気通信の傍受、不正アクセス行為その他の重要経済安保情報を保有する者の管理を害する行為により、重要経済安保情報を取得した者が、これを外国政府等又は情報収集義務者に漏らしたときは、七年以下の拘禁刑若しくは七百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第二十四条の次に次の二条を加える。
第二十四条の二 第二十三条の二第一項若しくは第二項又は前条第二項の規定の適用がある場合を除き、外国の利益若しくは自己の不正の利益を図る目的で、又は我が国の安全を害し、若しくは国民の生命若しくは身体に危害を及ぼすおそれがあることを知りながら、重要経済安保情報を外国政府等又は情報収集義務者に漏らした者は、三年以下の拘禁刑若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2 前項の罪の未遂は、罰する。
第二十四条の三 外国の利益若しくは自己の不正の利益を図り、又は我が国の安全を害し、若しくは国民の生命若しくは身体に危害を及ぼす目的で、財物の損壊、施設への侵入、不正アクセス行為その他の重要経済安保情報を保有する者の管理を害する行為により重要経済安保情報文書等を毀棄したときは、当該違反行為をした者は、五年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2 前項の罪の未遂は、罰する。
3 前二項の規定は、刑法その他の罰則の適用を妨げない。
第二十五条第二項中「第二十三条第二項」の下に「又は第二十四条の二第一項」を加え、同項を同条第三項とし、同条第一項中「第二十三条第一項」の下に「、第二十三条の二第二項、第二十四条第一項」を加え、「煽(せん)動」を「煽動」に改め、同項を同条第二項とし、同条に第一項として次の一項を加える。
第二十三条の二第一項又は第二十四条第二項に規定する行為の遂行を共謀し、教唆し、又は煽(せん)動した者は、五年以下の拘禁刑又は五百万円以下の罰金に処する。
第二十六条中「若しくは第二十四条第二項」を「、第二十三条の二第三項、第二十四条第三項、第二十四条の二第二項若しくは第二十四条の三第二項」に、「若しくは第二十四条第一項」を「、第二十三条の二第一項若しくは第二項、第二十四条第一項若しくは第二項、第二十四条の二第一項若しくは第二十四条の三第一項」に改める。
第二十七条第一項中「第二十三条」の下に「及び第二十三条の二」を加え、「同条」を「これら」に改め、同条第二項中「及び第二十五条」を「から第二十五条まで」に改める。
第二十八条第一項中「又は第二十四条第一項」を「、第二十三条の二第一項若しくは第三項(同条第一項に係る部分に限る。)、第二十四条第一項から第三項まで又は第二十四条の三第一項」に改める。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一 附則第三条の規定 公布の日
二 第一条中特定秘密の保護に関する法律第十二条第二項第一号の改正規定及び第二条中重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律第十二条第二項第一号の改正規定並びに次条の規定 公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日
三 附則第六条の規定 公益通報者保護法の一部を改正する法律(令和七年法律第六十二号)の施行の日
(適用区分)
第二条 第一条の規定による改正後の特定秘密の保護に関する法律第十二条第二項(同法第十五条第二項において準用する場合を含む。)の規定は、前条第二号に掲げる規定の施行の日(以下この条において「第二号施行日」という。)以後に同法第十二条第三項(同法第十五条第二項において準用する場合を含む。)の同意を得て実施する同法第十二条第一項又は第十五条第一項の適性評価(以下この項において「適性評価」という。)について適用し、第二号施行日前に得た第一条の規定による改正前の特定秘密の保護に関する法律第十二条第三項(同法第十五条第二項において準用する場合を含む。)の同意に係る適性評価については、なお従前の例による。
2 第二条の規定による改正後の重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律第十二条第二項(同法第十五条第二項において準用する場合を含む。)の規定は、第二号施行日以後に同法第十二条第三項(同法第十五条第二項において準用する場合を含む。)の同意を得て実施する同法第十二条第一項又は第十五条第一項の適性評価(以下この項において「適性評価」という。)について適用し、第二号施行日前に得た第二条の規定による改正前の重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律第十二条第三項(同法第十五条第二項において準用する場合を含む。)の同意に係る適性評価については、なお従前の例による。
(政令への委任)
第三条 前条に定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。
(適性評価の在り方に関する検討)
第四条 政府は、この法律の施行後二年を目途として、特定秘密の保護に関する法律第十二条第一項及び第十五条第一項の適性評価並びに重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律第十二条第一項及び第十五条第一項の適性評価(以下この条において「適性評価」と総称する。)が独立した公正な立場において職権を行使する機関によって実施されるとともに、特定秘密の保護に関する法律第十一条ただし書及び重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律第十一条ただし書の規定により適性評価を受けることを要しないものとされている者(内閣総理大臣を除く。)についてその任命が適性評価の結果を踏まえて行われることとなるよう、その具体的な方策について検討を行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
2 政府は、この法律の施行後二年を目途として、適性評価において、その対象となる者が所属し、又は所属していた法人その他の団体について調査を行うことの当否について検討を行い、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
(特定秘密等の漏えい等に関する犯罪の捜査のための通信の傍受に関する検討)
第五条 政府は、この法律の施行後二年を目途として、特定秘密(特定秘密の保護に関する法律第三条第一項に規定する特定秘密をいう。以下この条及び次条において同じ。)及び重要経済安保情報(重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律第三条第一項に規定する重要経済安保情報をいう。以下この条及び次条において同じ。)の漏えい若しくは取得又は特定秘密若しくは重要経済安保情報である情報を記録する文書等の毀棄に関する犯罪の捜査に当たり、当該犯罪の実行、準備又は証拠隠滅等の事後措置に関する謀議、指示その他の相互連絡その他当該犯罪の実行に関連する事項を内容とする通信について、犯罪捜査のための通信傍受に関する法律(平成十一年法律第百三十七号)の規定に基づく傍受の対象とすることについて検討を行い、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
(公益通報者の保護に関する検討)
第六条 政府は、公益通報者保護法の一部を改正する法律附則第九条の規定による検討を行うときは、特に、公益通報者保護法(平成十六年法律第百二十二号)第二条第一項に規定する公益通報に際してやむを得ず特定秘密又は重要経済安保情報を漏らした者の刑事上の責任の在り方について、これらの情報の重要性を勘案しつつ検討を行うものとする。
(国会法及び議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律の一部改正)
第七条 次に掲げる法律の規定中「特定秘密保護法第二十三条第二項」の下に「及び第二十三条の二第二項」を、「重要経済安保情報保護活用法第二十三条第二項」の下に「及び第二十三条の二第二項」を加える。
一 国会法(昭和二十二年法律第七十九号)第百二条の十五第二項及び第百二条の十七第三項
二 議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律(昭和二十二年法律第二百二十五号)第五条の三第三項
理 由
適性評価における調査項目の拡充並びに特定秘密及び重要経済安保情報を外国政府等又は外国政府等による情報収集活動に協力する義務を負うものに漏らす行為並びに特定秘密文書等及び重要経済安保情報文書等を毀棄する行為に対する罰則の整備を行う必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

