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観光立国推進基本法案要綱

                                 
 観光は、国際平和と国民生活の安定を象徴するものであって、その発達は、恒久の平和と国際社会の相互理解の増進を念願し、健康で文化的な生活を享受しようとする我らの理想とするところである。また、観光は、国際相互理解の増進のみならず、雇用の機会の増大、地域経済の活性化等国民経済のあらゆる領域にわたりその発展に寄与するとともに、健康の増進、潤いのある豊かな生活環境の創造等を通じて国民生活の安定向上に貢献するものである。
 我らは、このような使命を有する観光が、今後、我が国において世界に例を見ない水準の少子高齢社会の到来と本格的な国際交流の進展が見込まれる中で、地域の住民が誇りと愛着を持つことのできる活力に満ちた地域社会の実現を促進し、我が国固有の文化、歴史等に関する理解を深めるものとしてその意義を一層高めるとともに、豊かな国民生活の実現と国際社会における名誉ある地位の確立に極めて重要な役割を担っていくものと確信する。
 しかるに、現状をみるに、観光がその使命を果たすことができる観光立国の実現に向けた基盤の整備及び環境の形成は、いまだ不十分な状態である。このため、我が国を来訪する外国人観光旅客数等の状況は、国際社会において我が国の占める経済的地位にふさわしいものとはなっていない。これに加え、国民のゆとりと安らぎを求める志向の高まり等を背景とした観光旅行者の需要の高度化、少人数による観光旅行の増加等観光旅行の形態の多様化、観光分野における国際競争の一層の激化等の近年の観光をめぐる諸情勢の著しい変化への的確な対応も十分に行われていない。
 これらに適切に対処し、外国人観光旅客の来訪の促進等による国際観光の振興を図りつつ、地域において国際競争力の高い観光地を形成すること等により、観光立国を実現することは、二十一世紀の我が国経済社会の発展のために不可欠な重要課題である。
 ここに、観光立国の実現に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、この法律を制定する。
第一 総則
 一 目的
   この法律は、二十一世紀の我が国経済社会の発展のために観光立国を実現することが極めて重要であることにかんがみ、観光立国の実現に関する施策に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務等を明らかにするとともに、観光立国の実現に関する施策の基本となる事項を定めることにより、観光立国の実現に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって国際相互理解の増進、国民経済の発展及び国民生活の安定向上に寄与することを目的とするものとすること。      (第一条関係)
 二 施策の基本理念
  1 観光立国の実現に関する施策は、地域の住民が誇りと愛着を持つことのできる活力に満ちた地域社会を実現して国内外からの観光旅行を促進することが、将来にわたる豊かな国民生活の実現のため特に重要であるという認識の下に講ぜられなければならないものとすること。
  2 観光立国の実現に関する施策は、観光が国際相互理解の増進とこれを通じた国際平和のために果たす役割の重要性にかんがみ、国際的視点に立って講ぜられなければならないものとすること。
  3 観光立国の実現に関する施策は、観光が余暇の有効な活用による健康的でゆとりのある生活を実現する上で果たす役割の重要性にかんがみ、国民の観光旅行の促進が図られるよう講ぜられなければならないものとすること。
  4 観光立国の実現に関する施策を講ずるに当たっては、観光産業が、国及び地域の経済社会において重要な役割を担っていることにかんがみ、国、地方公共団体、事業者、住民等による相互の連携が確保されるよう配慮されなければならないものとすること。            (第二条関係)
 三 関係者の責務等
  1 国の責務
    国は、二の施策の基本理念(2において「基本理念」という。)にのっとり、観光立国の実現に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有するものとすること。     (第三条関係)
  2 地方公共団体の責務
   イ 地方公共団体は、基本理念にのっとり、観光立国の実現に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の特性を生かした自主的な施策を策定し、及び実施する責務を有するものとすること。
   ロ 地方公共団体は、イの施策を実施するに当たっては、地方公共団体相互の広域的な連携協力に努めなければならないものとすること。                    (第四条関係)
  3 観光事業者の努力
    観光事業者は、その事業活動を行うに際しては、観光立国の実現に主体的に取り組むよう努めるものとすること。                               (第五条関係)
  4 住民の役割
    住民は、観光立国の意義に対する理解を深め、観光立国の実現に積極的な役割を果たすよう努めるものとすること。                              (第六条関係)
 四 法制上の措置等
   政府は、必要な法制上、財政上又は金融上の措置その他の措置を講じなければならないものとすること。                                     (第七条関係)
 五 年次報告等
  1 政府は、毎年、国会に、観光の状況及び観光立国の実現に関して講じた施策に関する報告を提出しなければならないものとすること。
  2 政府は、毎年、交通政策審議会の意見を聴いて、1の報告に係る観光の状況を考慮して講じようとする施策を明らかにした文書を作成し、これを国会に提出しなければならないものとすること。
  (第八条関係)
 六 交通政策審議会への諮問等
   交通政策審議会は、国土交通大臣又は関係各大臣の諮問に応じ、観光立国の実現に関する重要事項を調査審議するものとすること。                         (第九条関係)
第二 観光立国推進基本計画
 一 政府は、観光立国の実現に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、観光立国推進基本計画を定めなければならないものとすること。
 二 国土交通大臣は、交通政策審議会の意見を聴いて、観光立国推進基本計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならないものとすること。
 三 国土交通大臣は、二の閣議の決定があったときは、遅滞なく、観光立国推進基本計画を国会に報告するとともに、公表しなければならないものとすること。
 四 観光立国推進基本計画以外の国の計画は、観光立国の実現に関しては、観光立国推進基本計画を基本とするものとすること。                      (第十条及び第十一条関係)
第三 基本的施策
 一 国は、外国人観光旅客の来訪の促進による国際観光の振興を図るため必要な施策を講ずるものとすること。
 二 国は、観光分野における国際相互交流の促進による国際観光の振興を図るため必要な施策を講ずるものとすること。
 三 国は、外国人観光旅客に対する接遇の向上を図るため必要な施策を講ずるものとすること。
 四 国は、国際競争力の高い観光地の形成を図るため必要な施策を講ずるものとすること。
 五 国は、観光旅行者の国際競争力の高い観光地への来訪の促進に必要な交通施設の総合的な整備を図るため必要な施策を講ずるものとすること。
 六 国は、観光資源の活用による観光旅行者の観光地への来訪の促進を図るため必要な施策を講ずるものとすること。
 七 国は、観光地における環境及び良好な景観の保全を図るため必要な施策を講ずるものとすること。
 八 国は、観光産業の国際競争力の強化を図るため必要な施策を講ずるものとすること。
 九 国は、観光の振興に寄与する人材の育成を図るため必要な施策を講ずるものとすること。
 十 国は、観光旅行の容易化及び円滑化を図るため必要な施策を講ずるものとすること。
 十一 国は、観光旅行者の利便の増進を図るため必要な施策を講ずるものとすること。
 十二 国は、観光旅行の安全の確保を図るため必要な施策を講ずるものとすること。
 十三 国は、新たな観光旅行の分野の開拓を図るため必要な施策を講ずるものとすること。
 十四 国は、観光に関する統計の整備に必要な施策を講ずるものとすること。
                               (第十二条から第二十五条まで関係)
第四 行政機関及び団体
 一 国及び地方公共団体は、観光立国の実現に関する施策を講ずるにつき、相協力するとともに、行政組織の整備及び行政運営の改善に努めるものとすること。            (第二十六条関係)
 二 国は、観光立国の実現に関する団体の整備に必要な施策を講ずるものとすること。
                                       (第二十七条関係)
第五 施行期日等
 一 この法律は、公布の日から起算して一月を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとすること。                               (附則第一条関係)
 二 所要の経過措置等について規定するものとすること。       (附則第二条及び第三条関係)

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