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特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第\因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法案要綱


 フィブリノゲン製剤及び血液凝固第\因子製剤にC型肝炎ウイルスが混入し、多くの方々が感染するという薬害事件が起き、感染被害者及びその遺族の方々は、長期にわたり、肉体的、精神的苦痛を強いられている。
 政府は、感染被害者の方々に甚大な被害が生じ、その被害の拡大を防止し得なかったことについての責任を認め、感染被害者及びその遺族の方々に心からおわびすべきである。さらに、今回の事件の反省を踏まえ、命の尊さを再認識し、医薬品による健康被害の再発防止に最善かつ最大の努力をしなければならない。
 もとより、医薬品を供給する企業には、製品の安全性の確保等について最善の努力を尽くす責任があり、本件においては、そのような企業の責任が問われるものである。
 C型肝炎ウイルスの感染被害を受けた方々からフィブリノゲン製剤及び血液凝固第\因子製剤の製造等を行った企業及び国に対し、損害賠償を求める訴訟が提起されたが、これまでの五つの地方裁判所の判決においては、企業及び国が責任を負うべき期間等について判断が分かれ、現行法制の下で法的責任の存否を争う訴訟による解決を図ろうとすれば、さらに長期間を要することが見込まれている。
 一般に、血液製剤は適切に使用されれば人命を救うために不可欠の製剤であるが、フィブリノゲン製剤及び血液凝固第\因子製剤によってC型肝炎ウイルスに感染した方々が、日々、症状の重篤化に対する不安を抱えながら生活を営んでいるという困難な状況に思いをいたすと、我らは、人道的観点から、早急に感染被害者の方々を投与の時期を問わず一律に救済しなければならないと考える。しかしながら、現行法制の下でこれらの製剤による感染被害者の方々の一律救済の要請にこたえるには、司法上も行政上も限界があることから、立法による解決を図ることとし、この法律を制定する。
第一 趣旨(第一条関係)
 この法律は、特定C型肝炎ウイルス感染者及びその相続人に対する給付金の支給に関し必要な事項を定めるものとすること。
第二 定義(第二条関係)
一 この法律において「特定フィブリノゲン製剤」とは、乾燥人フィブリノゲンのみを有効成分とする製剤であって、次に掲げるものをいうこと。
 1 昭和三十九年六月九日、同年十月二十四日又は昭和五十一年四月三十日に薬事法の規定による承認を受けた製剤
 2 昭和六十二年四月三十日に薬事法の規定による承認を受けた製剤(ウイルスを不活化するために加熱処理のみを行ったものに限る。)
二 この法律において「特定血液凝固第\因子製剤」とは、乾燥人血液凝固第\因子複合体を有効成分とする製剤であって、次に掲げるものをいうこと。
 1 昭和四十七年四月二十二日又は昭和五十一年十二月二十七日に薬事法の規定による承認を受けた製剤
 2 昭和六十年十二月十七日に薬事法の規定による承認を受けた製剤(ウイルスを不活化するために加熱処理のみを行ったものに限る。)
三 この法律において「特定C型肝炎ウイルス感染者」とは、特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第\因子製剤の投与(後天性の傷病に係る投与に限る。)を受けたことによってC型肝炎ウイルスに感染した者及びその者の胎内又は産道においてC型肝炎ウイルスに感染した者をいうこと。
第三 給付金
 一 給付金の支給(第三条関係)
  独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下「機構」という。)は、特定C型肝炎ウイルス感染者(特定C型肝炎ウイルス感染者がこの法律の施行前に死亡している場合にあっては、その相続人)に対し、その者の請求に基づき、医療、健康管理等に係る経済的負担を含む健康被害の救済を図るためのものとして給付金を支給すること。
二 給付金の支給手続(第四条関係)
  給付金の支給の請求をするには、当該請求をする者又はその被相続人が特定C型肝炎ウイルス感染者であること及びその者が四の1、2又は3に該当する者であることを証する確定判決又は和解、調停その他確定判決と同一の効力を有するもの(当該訴え等の相手方に国が含まれているものに限る。)の正本又は謄本を提出しなければならないこと。
三 給付金の請求期限(第五条関係)
  給付金の支給の請求は、次に掲げる日のいずれか遅い日までに行わなければならないこと。
1 この法律の施行の日から起算して五年を経過する日(2において「経過日」という。)
2 特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第\因子製剤の投与を受けたことによってC型肝炎ウイルスに感染したことを原因とする損害賠償についての訴えの提起又は和解若しくは調停の申立て(その相手方に国が含まれているものに限る。)を経過日以前にした場合における当該損害賠償についての判決が確定した日又は和解若しくは調停が成立した日から起算して一月を経過する日
四 給付金の額(第六条関係)
  給付金の額は、次に掲げる特定C型肝炎ウイルス感染者の区分に応じ、次に掲げる額とすること。
1 慢性C型肝炎が進行して、肝硬変若しくは肝がんに罹(り)患し、又は死亡した者 四千万円
2 慢性C型肝炎に罹患した者 二千万円
3 1又は2に掲げる者以外の者 千二百万円
第四 追加給付金
一 追加給付金の支給(第七条関係)
  機構は、給付金の支給を受けた特定C型肝炎ウイルス感染者であって、身体的状況が悪化したため、当該給付金の支給を受けた日から起算して十年以内に新たに第三の四の1又は2に該当するに至ったものに対し、その者の請求に基づき、医療、健康管理等に係る経済的負担を含む健康被害の救済を図るためのものとして追加給付金を支給すること。
二 追加給付金の支給手続(第八条関係)
  追加給付金の支給の請求をするには、特定C型肝炎ウイルス感染者の身体的状況が悪化したため新たに第三の四の1又は2に該当するに至ったことを証明する医師の診断書を提出しなければならないこと。
三 追加給付金の請求期限(第九条関係)
  追加給付金の支給の請求は、特定C型肝炎ウイルス感染者の身体的状況が悪化したため新たに第三の四の1又は2に該当するに至ったことを知った日から起算して三年以内に行わなければならないこと。
四 追加給付金の額(第十条関係)
  追加給付金の額は、特定C型肝炎ウイルス感染者が新たに該当するに至った第三の四の1又は2の区分に応じ、第三の四の1又は2に掲げる額から既に支給された給付金及び追加給付金の額を控除した額とすること。
第五 損害賠償がされた場合等の調整(第十一条関係)
 給付金又は追加給付金(以下「給付金等」という。)の支給と、国又は製造業者等(特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第\因子製剤について薬事法の規定による承認を受けた者又はその者の業務を承継した者をいう。以下同じ。)が損害賠償の責任を負う場合におけるその責任との調整規定を設けること。
第六 特定C型肝炎ウイルス感染者救済基金
一 基金の設置(第十四条関係)
1 機構は、給付金等の支給及びこれに附帯する業務(以下「給付金支給等業務」という。)に要する費用に充てるため、特定C型肝炎ウイルス感染者救済基金(2において「基金」という。)を設けること。
2 基金は、二により交付された資金及び四の2により納付された拠出金をもって充てるものとすること。
二 交付金(第十五条関係)
  政府は、予算の範囲内において、機構に対し、給付金支給等業務に要する費用に充てるための資金を交付するものとすること。
三 厚生労働大臣と製造業者等との協議(第十六条関係)
  厚生労働大臣は、給付金支給等業務に要する費用の負担の方法及び割合について、製造業者等と協議の上、その同意を得て、あらかじめ基準を定めるものとすること。
四 拠出金(第十七条関係)
1 機構は、給付金等を支給したときは、給付金支給等業務に要する費用に充てるため、当該支給について特定C型肝炎ウイルス感染者が投与を受けたものとされた特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第\因子製剤に係る製造業者等に、三の基準に基づき、拠出金の拠出を求めるものとすること。
2 製造業者等は、1により拠出金の拠出を求められたときは、機構に対し拠出金を納付するものとすること。
第七 施行期日等
一 施行期日(附則第一条関係)
  この法律は、公布の日から施行すること。
二 特定フィブリノゲン製剤等の納入医療機関の公表等(附則第二条関係)
  政府は、特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第\因子製剤が納入された医療機関の名称等を公表すること等により、医療機関による当該製剤の投与を受けた者の確認を促進し、当該製剤の投与を受けた者に肝炎ウイルス検査を受けることを勧奨するよう努めるとともに、給付金等の請求手続、請求期限等のこの法律の内容について国民に周知を図るものとすること。
三 給付金等の請求期限の検討(附則第三条関係)
  給付金等の請求期限については、この法律の施行後における給付金等の支給の請求の状況を勘案し、必要に応じ、検討が加えられるものとすること。
四 C型肝炎ウイルスの感染被害者に対する支援等(附則第四条関係)
  政府は、C型肝炎ウイルスの感染被害者が安心して暮らせるよう、肝炎医療の提供体制の整備、肝炎医療に係る研究の推進等必要な措置を講ずるよう努めるものとすること。
五 その他
  その他所要の規定の整備を行うこと。

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