衆議院

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第一四二回

衆第三七号

   自衛隊員倫理法案

目次

 第一章 総則(第一条―第四条)

 第二章 自衛隊員倫理規程(第五条)

 第三章 贈与等の報告及び公開(第六条―第十条)

 第四章 自衛隊員倫理審査会及び懲戒手続の特例等(第十一条―第二十四条)

 第五章 倫理監督官(第二十五条)

 第六章 雑則(第二十六条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、自衛隊員が国民全体の奉仕者であってその職務は国民から負託された公務であることにかんがみ、自衛隊員の職務に係る倫理の保持に資するため必要な措置を講ずることにより、職務の執行の公正さに対する国民の疑惑や不信を招くような行為の防止を図り、もって公務に対する国民の信頼を確保することを目的とする。

 (定義等)

第二条 この法律において、「自衛隊員」とは、自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第二条第五項に規定する隊員(常勤を要しない者を除く。)をいう。

2 この法律において、「部員級以上の自衛隊員」とは、次に掲げる自衛隊員(第三号から第五号までに掲げる自衛隊員については、防衛庁の職員の給与等に関する法律(昭和二十七年法律第二百六十六号。以下「給与法」という。)第十一条の三第一項に規定する俸給の特別調整額の支給を受ける者に限る。)をいう。

 一 給与法別表第一参事官等俸給表の適用を受ける自衛隊員

 二 給与法第四条第二項の規定により一般職の職員の給与に関する法律(昭和二十五年法律第九十五号。以下「一般職給与法」という。)別表第一イ行政職俸給表Pの適用を受ける自衛隊員であって、同表の職務の級七級以上のもの

 三 給与法第四条第二項の規定により一般職給与法別表第六イ教育職俸給表Pの適用を受ける自衛隊員であって、同表の職務の級四級以上のもの

 四 給与法第四条第二項の規定により一般職給与法別表第六ロ教育職俸給表Qの適用を受ける自衛隊員であって、同表の職務の級三級以上のもの

 五 給与法第四条第二項の規定により一般職給与法別表第六ニ教育職俸給表Sの適用を受ける自衛隊員であって、同表の職務の級三級以上のもの

 六 給与法第四条第二項の規定により一般職給与法別表第七研究職俸給表の適用を受ける自衛隊員であって、同表の職務の級四級以上のもの

 七 給与法第四条第二項の規定により一般職給与法別表第八イ医療職俸給表Pの適用を受ける自衛隊員であって、同表の職務の級三級以上のもの

 八 給与法第四条第二項の規定により一般職給与法別表第八ロ医療職俸給表Qの適用を受ける自衛隊員であって、同表の職務の級六級以上のもの

 九 給与法第四条第二項の規定により一般職給与法別表第八ハ医療職俸給表Rの適用を受ける自衛隊員であって、同表の職務の級六級以上のもの

 十 給与法第四条第二項の規定により一般職給与法別表第九指定職俸給表の適用を受ける自衛隊員

 十一 給与法第四条第三項の規定により一般職の任期付研究員の採用、給与及び勤務時間の特例に関する法律(平成九年法律第六十五号)第六条第一項の俸給表に定める額の俸給を受ける自衛隊員

 十二 三等陸佐、三等海佐又は三等空佐以上の自衛隊員

3 この法律において、「本庁局長級以上の自衛隊員」とは、次に掲げる自衛隊員をいう。

 一 給与法別表第一参事官等俸給表の適用を受ける自衛隊員であって、同表の指定職の欄七号俸の俸給月額以上の俸給を受けるもの

 二 給与法第四条第二項の規定により一般職給与法別表第九指定職俸給表の適用を受ける自衛隊員であって、同表七号俸の俸給月額以上の俸給を受けるもの

 三 給与法別表第二自衛官俸給表の適用を受ける自衛隊員であって、同表の陸将、海将及び空将の欄七号俸の俸給月額以上の俸給を受けるもの

4 この法律において、「事業者等」とは、法人(法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものを含む。)その他の団体及び事業を行う個人(当該事業の利益のためにする行為を行う場合における個人に限る。)をいう。

5 この法律の規定の適用については、事業者等の利益のためにする行為を行う場合における役員、従業員、代理人その他の者は、前項の事業者等とみなす。

 (自衛隊員が遵守すべき職務に係る倫理原則)

第三条 自衛隊員は、国民全体の奉仕者であり、国民の一部に対してのみの奉仕者ではないことを自覚し、職務上知り得た情報について国民の一部に対してのみ有利な取扱いをする等国民に対し不当な差別的取扱いをしてはならず、常に公正な職務の執行に当たらなければならない。

2 自衛隊員は、常に公私の別を明らかにし、いやしくもその職務や地位を自らや自らの属する組織のための私的利益のために用いてはならない。

3 自衛隊員は、法律により与えられた権限の行使に当たっては、当該権限の行使の対象となる者からの贈与等を受けること等の国民の疑惑や不信を招くような行為をしてはならない。

 (国会報告)

第四条 内閣は、毎年、国会に、自衛隊員の職務に係る倫理の保持に関する状況及び自衛隊員の職務に係る倫理の保持に関して講じた施策に関する報告書を提出しなければならない。

   第二章 自衛隊員倫理規程

第五条 内閣は、第三条に掲げる倫理原則を踏まえ、自衛隊員の職務に係る倫理の保持を図るために必要な事項に関する政令(以下「自衛隊員倫理規程」という。)を、国家公務員倫理法(平成十年法律第▼▼▼号)第五条第一項に規定する国家公務員倫理規程に準じて定めるものとする。この場合において、自衛隊員倫理規程には、自衛隊員の職務に利害関係を有する者からの贈与等の禁止及び制限等自衛隊員の職務に利害関係を有する者との接触その他国民の疑惑や不信を招くような行為の防止に関し自衛隊員の遵守すべき事項が含まれていなければならない。

2 防衛庁長官又は防衛施設庁長官は、自衛隊員の職務に係る倫理に関する訓令を定めることができる。

3 防衛庁長官は、前項の訓令を定めるに当たっては、自衛隊員倫理審査会の意見を聴かなければならない。次項の規定による防衛施設庁長官の求めがあった場合についても、同様とする。

4 防衛施設庁長官は、第二項の訓令を定めるに当たっては、防衛庁長官に対し、自衛隊員倫理審査会の意見を聴くことを求めなければならない。

5 内閣は、自衛隊員倫理規程及び第二項の訓令の制定又は改廃があったときは、これを国会に報告しなければならない。

   第三章 贈与等の報告及び公開

 (贈与等の報告)

第六条 部員級以上の自衛隊員は、事業者等から、金銭、物品その他の財産上の利益の供与若しくは供応接待(以下「贈与等」という。)を受けたとき又は事業者等と自衛隊員の職務との関係に基づいて提供する人的役務に対する報酬として自衛隊員倫理規程で定める報酬の支払を受けたとき(当該贈与等を受けた時又は当該報酬の支払を受けた時において部員級以上の自衛隊員であった場合に限り、かつ、当該贈与等により受けた利益又は当該支払を受けた報酬の価額が一件につき五千円を超える場合に限る。)は、一月から三月まで、四月から六月まで、七月から九月まで及び十月から十二月までの各区分による期間(以下「四半期」という。)ごとに、次に掲げる事項を記載した贈与等報告書を、当該四半期の翌四半期の初日から十四日以内に、防衛庁長官(防衛施設庁の職員である自衛隊員(防衛施設庁長官及び自衛官を除く。以下同じ。)にあっては、防衛施設庁長官)に提出しなければならない。

 一 当該贈与等により受けた利益又は当該支払を受けた報酬の価額

 二 当該贈与等により利益を受け又は当該報酬の支払を受けた年月日及びその基因となった事実

 三 当該贈与等をした事業者等又は当該報酬を支払った事業者等の名称及び住所

 四 前三号に掲げるもののほか自衛隊員倫理規程で定める事項

2 防衛施設庁長官は、前項の規定により贈与等報告書の提出を受けたときは、当該贈与等報告書の写しを防衛庁長官に送付しなければならない。

3 防衛庁長官は、第一項の規定により提出を受けた贈与等報告書の写し及び前項の規定により送付を受けた贈与等報告書の写しを、自衛隊員倫理審査会に送付するものとする。

 (資産等の報告)

第七条 自衛隊員は、新たに本庁局長級以上の自衛隊員となったときは、当該自衛隊員となった日(以下「就任日」という。)において有する次の各号に掲げる資産等について、当該資産等の区分に応じ当該各号に掲げる事項を記載した資産等報告書を、就任日から六十日以内に、防衛庁長官(防衛施設庁の職員である自衛隊員にあっては、防衛施設庁長官)に提出しなければならない。

 一 土地(信託している土地(自己が帰属権利者であるものに限る。)を含む。) 所在、面積及び固定資産税の課税標準額並びに相続(被相続人からの遺贈を含む。以下同じ。)により取得した場合は、その旨

 二 建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権 当該権利の目的となっている土地の所在及び面積並びに相続により取得した場合は、その旨

 三 建物 所在、床面積及び固定資産税の課税標準額並びに相続により取得した場合は、その旨

 四 預金(当座預金及び普通預金を除く。)、貯金(普通貯金を除く。)及び郵便貯金(通常郵便貯金を除く。) 預金、貯金及び郵便貯金の額

 五 金銭信託 金銭信託の元本の額

 六 有価証券(証券取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二条第一項及び第二項に規定する有価証券に限る。) 種類及び種類ごとの価額の総額(株券等(株券(端株券を含む。)、新株引受権を表示する証券若しくは証書、転換社債券又は新株引受権付社債券をいう。次条において同じ。)にあっては、株券等の種類、銘柄、数及び価額の総額)

 七 自動車、船舶、航空機及び美術工芸品(取得価額が百万円を超えるものに限る。) 種類及び数量

 八 ゴルフ場の利用に関する権利(譲渡することができるものに限る。) ゴルフ場の名称

 九 貸付金(生計を一にする親族に対するものを除く。) 貸付金の額

 十 借入金(生計を一にする親族からのものを除く。) 借入金の額

2 本庁局長級以上の自衛隊員は、その就任日後毎年新たに有することとなった前項各号に掲げる資産等であって十二月三十一日において有するものについて、当該資産等の区分に応じ同項各号に掲げる事項を記載した資産等補充報告書を、その翌年の三月一日から同月三十一日までの間に、防衛庁長官(防衛施設庁の職員である自衛隊員にあっては、防衛施設庁長官)に提出しなければならない。

3 防衛施設庁長官は、第一項の規定により資産等報告書の提出を受けたとき又は前項の規定により資産等補充報告書の提出を受けたときは、当該資産等報告書又は当該資産等補充報告書の写しを防衛庁長官に送付しなければならない。

4 防衛庁長官は、第一項又は第二項の規定により提出を受けた資産等報告書又は資産等補充報告書の写し及び前項の規定により送付を受けた資産等報告書又は資産等補充報告書の写しを、自衛隊員倫理審査会に送付するものとする。

 (株取引等の報告)

第八条 本庁局長級以上の自衛隊員は、前年において行った株券等の取得又は譲渡(本庁局長級以上の自衛隊員である間に行ったものに限る。以下「株取引等」という。)について、当該株取引等に係る株券等の種類、銘柄、数及び対価の額並びに当該株取引等の年月日を記載した株取引等報告書を、毎年、三月一日から同月三十一日までの間に、防衛庁長官(防衛施設庁の職員である自衛隊員にあっては、防衛施設庁長官)に提出しなければならない。

2 防衛施設庁長官は、前項の株取引等報告書の提出を受けたときは、当該株取引等報告書の写しを防衛庁長官に送付しなければならない。

3 防衛庁長官は、第一項の規定により提出を受けた株取引等報告書の写し及び前項の規定により送付を受けた株取引等報告書の写しを、自衛隊員倫理審査会に送付するものとする。

 (所得等の報告)

第九条 本庁局長級以上の自衛隊員(前年一年間を通じて本庁局長級以上の自衛隊員であったものに限る。)は、次に掲げる金額及び課税価格を記載した所得等報告書を、毎年、三月一日から同月三十一日までの間に、防衛庁長官(防衛施設庁の職員である自衛隊員にあっては、防衛施設庁長官)に提出しなければならない。

 一 前年分の所得について同年分の所得税が課される場合における当該所得に係る次に掲げる金額(当該金額が百万円を超える場合にあっては、当該金額及びその基因となった事実)

  イ 総所得金額(所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第二十二条第二項に規定する総所得金額をいう。)及び山林所得金額(同条第三項に規定する山林所得金額をいう。)に係る各種所得の金額(同法第二条第一項第二十二号に規定する各種所得の金額をいう。以下同じ。)

  ロ 各種所得の金額(退職所得の金額(所得税法第三十条第二項に規定する退職所得の金額をいう。)及び山林所得の金額(同法第三十二条第三項に規定する山林所得の金額をいう。)を除く。)のうち、租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)の規定により、所得税法第二十二条の規定にかかわらず、他の所得と区分して計算される所得の金額

 二 前年中において贈与により取得した財産について同年分の贈与税が課される場合における当該財産に係る贈与税の課税価格(相続税法(昭和二十五年法律第七十三号)第二十一条の二に規定する贈与税の課税価格をいう。)

2 前項の所得等報告書の提出は、納税申告書(国税通則法(昭和三十七年法律第六十六号)第二条第六号に規定する納税申告書をいう。以下同じ。)の写しを提出することにより行うことができる。この場合において、同項第一号イ又はロに掲げる金額が百万円を超えるときは、その基因となった事実を当該納税申告書の写しに付記しなければならない。

3 防衛施設庁長官は、第一項の所得等報告書又は前項の納税申告書の写し(以下「所得等報告書等」という。)の提出を受けたときは、当該所得等報告書等の写しを防衛庁長官に送付しなければならない

4 防衛庁長官は、第一項又は第二項の規定により提出を受けた所得等報告書等の写し及び前項の規定により送付を受けた所得等報告書等の写しを、自衛隊員倫理審査会に送付するものとする。

 (報告書の保存及び閲覧)

第十条 第六条から前条までの規定により提出された贈与等報告書、資産等報告書及び資産等補充報告書、株取引等報告書並びに所得等報告書等(以下「各種報告書」という。)は、これらを受理した防衛庁長官(防衛施設庁の職員である自衛隊員が提出した各種報告書にあっては、これらを受理した防衛施設庁長官)において、これらを提出すべき期間の末日の翌日から起算して五年を経過する日まで保存しなければならない。

2 何人も、防衛庁長官又は防衛施設庁長官に対し、前項の規定により保存されている贈与等報告書(贈与等により受けた利益又は支払を受けた報酬の価額が一件につき二万円を超える部分に限る。)の閲覧を請求することができる。ただし、防衛庁長官が、自衛隊員倫理審査会の意見を聴いて、次の各号のいずれかに該当するものとしてあらかじめ認めた事項に係る部分については、この限りでない。

 一 公にすることにより、国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあるもの

 二 公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあるもの

   第四章 自衛隊員倫理審査会及び懲戒手続の特例等

 (自衛隊員倫理審査会の設置)

第十一条 自衛隊員の職務に係る倫理の保持に関する防衛庁長官の事務を補佐させるため、防衛庁本庁に、自衛隊員倫理審査会(以下「審査会」という。)を置く。

 (所掌事務及び権限等)

第十二条 審査会の所掌事務及び権限は、次のとおりとする。

 一 次に掲げる事項を調査審議し、及びこれらに関し必要と認める事項を防衛庁長官に建議すること。

  イ 自衛隊員倫理規程に関する事項

  ロ この法律又はこの法律に基づく命令(第五条第二項の規定に基づく訓令を含む。以下同じ。)に違反した場合に係る懲戒処分の基準に関する事項

  ハ 自衛隊員の職務に係る倫理の保持に関する事項に係る調査研究及び企画に関する事項

  ニ 自衛隊員の職務に係る倫理の保持のための研修に関する事項

  ホ 自衛隊員倫理規程の遵守のための体制整備に関する事項

 二 各種報告書の審査を行うこと。

 三 次条第一項、第十七条第二項及び第二十条第二項の規定により防衛庁長官の命を受けて、この法律又はこの法律に基づく命令に違反している疑いがあると思料する行為又は違反する行為について調査を行うこと。

 四 第五条第三項、第十条第二項ただし書、次条第二項及び第三項、第十五条第二項(第十六条第二項において準用する場合を含む。)、第十六条第一項、第十八条第二項、第十九条第二項、第二十一条第一項及び第二項、第二十二条並びに第二十四条の規定に基づく防衛庁長官の諮問に応じて意見を述べること。

 五 前各号に掲げるもののほか、法律又は法律に基づく命令に基づき審査会に属させられた事務及び権限

2 審査会の組織、委員その他必要な事項については、政令で定める。

 (防衛庁本庁の職員である自衛隊員に対する防衛庁長官による懲戒手続等)

第十三条 防衛庁長官は、自衛隊員(防衛施設庁の職員である自衛隊員を除く。)にこの法律又はこの法律に基づく命令に違反する行為を行った疑いがあると思料するときは、審査会に対し、当該行為に関する調査を行うよう命じなければならない。

2 防衛庁長官は、前項の調査の結果、この法律又はこの法律に基づく命令に違反する行為があることを理由として懲戒処分を行おうとするときは、審査会の意見を聴かなければならない。

3 防衛庁長官は、自衛隊員(防衛施設庁の職員である自衛隊員を除く。)にこの法律又はこの法律に基づく命令に違反する行為があることを理由として懲戒処分を行った場合において、自衛隊員の職務に係る倫理の保持を図るため特に必要があると認めるときは、審査会の意見を聴いて、当該懲戒処分の概要の公表(第七条第一項の資産等報告書及び同条第二項の資産等補充報告書中の当該懲戒処分に係る資産等並びに第八条第一項の株取引等報告書中の当該懲戒処分に係る株取引等についての部分の公表を含む。以下同じ。)をすることができる。

 (調査の端緒に係る防衛施設庁長官の報告)

第十四条 防衛施設庁長官は、防衛施設庁の職員である自衛隊員にこの法律又はこの法律に基づく命令に違反する行為を行った疑いがあると思料するときは、その旨を防衛庁長官に報告しなければならない。

 (防衛施設庁の職員である自衛隊員に対する防衛施設庁長官による調査)

第十五条 防衛施設庁長官は、防衛施設庁の職員である自衛隊員にこの法律又はこの法律に基づく命令に違反する行為を行った疑いがあると思料して当該行為に関して調査を行おうとするときは、防衛庁長官にその旨を通知しなければならない。

2 防衛庁長官は、防衛施設庁長官に対し、前項の調査の経過について、報告を求め、又は審査会の意見を聴いて、意見を述べることができる。

3 防衛施設庁長官は、第一項の調査を終了したときは、遅滞なく、防衛庁長官に対し、当該調査の結果を報告しなければならない。

 (防衛施設庁長官に対する調査の要求等)

第十六条 防衛庁長官は、防衛施設庁の職員である自衛隊員にこの法律又はこの法律に基づく命令に違反する行為を行った疑いがあると思料するときは、審査会の意見を聴いて、防衛施設庁長官に対し、当該行為に関する調査を行うよう求めることができる。

2 前条第二項及び第三項の規定は、前項の調査について準用する。

 (共同調査)

第十七条 防衛庁長官は、第十五条第二項(前条第二項において準用する場合を含む。)の規定により報告を受けた場合において必要があると認めるときは、この法律又はこの法律に基づく命令に違反する行為に関し、防衛施設庁長官と共同して調査を行うことができる。この場合においては、防衛庁長官は、防衛施設庁長官に対し、共同して調査を行う旨を通知しなければならない。

2 防衛庁長官は、前項の調査を行う場合には、審査会に対し、防衛施設庁長官と共同して当該調査を行うよう命じなければならない。

 (防衛施設庁長官による懲戒処分)

第十八条 防衛施設庁長官は、防衛施設庁の職員である自衛隊員にこの法律又はこの法律に基づく命令に違反する行為があることを理由として懲戒処分を行おうとするときは、あらかじめ、防衛庁長官の承認を得なければならない。

2 防衛庁長官は、前項の承認を行うに当たっては、審査会の意見を聴かなければならない。

 (防衛施設庁長官による懲戒処分の概要の公表)

第十九条 防衛施設庁長官は、防衛施設庁の職員である自衛隊員にこの法律又はこの法律に基づく命令に違反する行為があることを理由として懲戒処分を行った場合において、自衛隊員の職務に係る倫理の保持を図るため特に必要があると認めるときは、当該懲戒処分の概要の公表をすることができる。

2 防衛庁長官は、防衛施設庁長官が前項の懲戒処分を行った場合において、特に必要があると認めるときは、審査会の意見を聴いて、防衛施設庁長官に対し、当該懲戒処分の概要の公表について意見を述べることができる。

 (防衛施設庁の職員である自衛隊員に対する防衛庁長官による調査)

第二十条 防衛庁長官は、第十四条の報告又はその他の方法により防衛施設庁の職員である自衛隊員にこの法律又はこの法律に基づく命令に違反する行為を行った疑いがあると思料する場合であって、自衛隊員の職務に係る倫理の保持に関し特に必要があると認めるときは、当該行為に関する調査の開始を決定することができる。この場合においては、防衛庁長官は、あらかじめ、防衛施設庁長官の意見を聴かなければならない。

2 防衛庁長官は、前項の調査を行う場合には、審査会に対し、当該調査を行うよう命じなければならない。

3 防衛庁長官は、第一項の決定をしたときは、防衛施設庁長官にその旨を通知しなければならない。

4 防衛施設庁長官は、前項の通知を受けたときは、審査会が行う調査に協力しなければならない。

5 防衛施設庁長官は、第三項の通知を受けた場合において、第一項の調査の対象となっている自衛隊員に対する懲戒処分又は退職に係る処分を行おうとするときは、あらかじめ、防衛庁長官に協議しなければならない。ただし、次条第二項の規定による懲戒処分の勧告を受けたとき又は第二十三条の規定による通知を受けたときは、この限りでない。

 (懲戒処分の勧告等)

第二十一条 防衛庁長官は、前条の調査の結果、審査会の意見を聴いて、防衛施設庁長官に対し、監督上必要な措置を講ずるよう求めることができる。

2 防衛庁長官は、前条の調査の結果、防衛施設庁長官において懲戒処分を行うことが適当であると思料するときは、審査会の意見を聴いて、防衛施設庁長官に対し、懲戒処分を行うべき旨の勧告をすることができる。

3 防衛施設庁長官は、前項の勧告に係る措置について、防衛庁長官に対し、報告しなければならない。

 (防衛施設庁の職員である自衛隊員に対する防衛庁長官による懲戒処分)

第二十二条 防衛庁長官は、第二十条の調査を経て、必要があると認めるときは、自衛隊法第三十一条第一項の規定にかかわらず、審査会の意見を聴いて、当該調査の対象となっている自衛隊員に対し懲戒処分を行うことができる。

 (調査終了及び懲戒処分の通知)

第二十三条 防衛庁長官は、第二十条の調査を終了したとき又は前条の規定により懲戒処分を行ったときは、その旨及びその内容を防衛施設庁長官に通知するものとする。

 (防衛庁長官による懲戒処分の概要の公表)

第二十四条 防衛庁長官は、第二十二条の規定により懲戒処分を行った場合において、自衛隊員の職務に係る倫理の保持を図るため特に必要があると認めるときは、審査会の意見を聴いて、当該懲戒処分の概要の公表をすることができる。

   第五章 倫理監督官

第二十五条 自衛隊員の職務に係る倫理の保持を図るため、防衛庁本庁及び防衛施設庁に、それぞれ倫理監督官一人を置く。

2 倫理監督官は、自衛隊員の職務に係る倫理の保持に関し、必要な指導及び助言並びに体制の整備を行う。

3 倫理監督官は、前項に規定する職務を行うに当たっては、国家公務員倫理審査会と常に緊密な連絡を保たなければならない。

   第六章 雑則

第二十六条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施に関し必要な事項は、政令で定める。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、平成十一年四月一日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。

 一 第五章の規定 公布の日

 二 第二条第一項及び第三項、第九条並びに附則第五条の規定 平成十一年一月一日

 (経過措置)

第二条 第六条の規定は、この法律の施行の日以後に受けた贈与等又は支払を受けた報酬について適用する。

第三条 この法律の施行の日において、本庁局長級以上の自衛隊員である者は、同日において有する第七条第一項各号に掲げる資産等について、当該資産等の区分に応じ当該各号に掲げる事項を記載した資産等報告書を、同日から六十日以内に、防衛庁長官(防衛施設庁の職員である自衛隊員にあっては、防衛施設庁長官)に提出しなければならない。

2 第七条第三項及び第四項、第十条第一項、第十二条第一項第二号から第四号まで並びに第十三条から第二十四条までの規定は、前項の規定により資産等報告書が提出された場合について準用する。

第四条 第八条の規定は、この法律の施行の日以後に行った株取引等について適用する。

第五条 第九条の規定は、平成十一年分以後の所得及び同年分以後の贈与税に係る贈与について適用する。

 (自衛隊法の一部改正)

第六条 自衛隊法の一部を次のように改正する。

  第四十六条中「各号の一」を「各号のいずれか」に改め、同条第三号中「又はこの法律に基く命令」を「若しくは自衛隊員倫理法(平成十年法律第▼▼▼号)又はこれらの法律に基づく命令」に改める。

  第六十五条中「本節」の下に「又は自衛隊員倫理法」を加える。

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