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第一四六回

参第五号

   サリン等による人身被害の防止に関する法律の一部を改正する法律案

 サリン等による人身被害の防止に関する法律(平成七年法律第七十八号)の一部を次のように改正する。

 題名を次のように改める。

   サリン等による人身被害の防止等に関する法律

 題名の次に次の目次及び章名を付する。

目次

 第一章 総則(第一条・第二条)

 第二章 サリン等による人身被害の防止(第三条・第四条)

 第三章 サリン等を発散させることにより無差別大量殺人行為を行った団体の活動の規制

  第一節 指定(第五条―第八条)

  第二節 報告及び立入検査(第九条・第十条)

  第三節 指定団体の活動の規制(第十一条―第十五条)

  第四節 雑則(第十六条―第二十三条)

 第四章 罰則(第二十四条―第三十条)

 附則

   第一章 総則

 第一条中「禁止するとともに」を「禁止し」に改め、「措置等を」の下に「定めるとともに、団体の活動として役職員(代表者、主幹者その他いかなる名称であるかを問わず当該団体の事務に従事する者をいう。以下同じ。)又は構成員がサリン等を発散させることにより無差別大量殺人行為を行った団体につき、その活動状況を明らかにし又は無差別大量殺人行為の再発を防止するために必要な規制措置を」を加え、「確保を図る」を「確保に寄与する」に改める。

 第二条に次の三項を加える。

2 この法律において「無差別大量殺人行為」とは、不特定かつ多数の者を殺害すること又はその実行に着手してこれを遂げないことをいう。

3 この法律において「団体」とは、特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体又はその連合体をいう。ただし、ある団体の支部、分会その他の下部組織も、この要件に該当する場合には、これに対して、この法律による規制を行うことができるものとする。

4 この法律において「指定団体」とは、第五条の規定により指定された団体をいう。

 第三条の前に次の章名を付する。

   第二章 サリン等による人身被害の防止

 第七条中「第五条第一項」を「第二十四条第一項」に改め、同条を第二十六条とし、同条の次に次の四条を加える。

第二十七条 第十三条の規定に違反した者は、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

第二十八条 第十条第一項の規定による立入り又は検査を拒み、妨げ、又は忌避した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

第二十九条 第十五条第三項の規定に違反した者は、五十万円以下の罰金に処する。

第三十条 警察職員が前章に定める職権を濫用して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害したときは、五年以下の懲役又は禁錮に処する。

 第六条を第二十五条とし、第五条の前の見出しを削り、同条を第二十四条とし、第四条の次に次の一章及び章名を加える。

   第三章 サリン等を発散させることにより無差別大量殺人行為を行った団体の活動の規制

    第一節 指定

 (指定)

第五条 団体の役職員又は構成員が当該団体の活動としてサリン等を発散させることにより無差別大量殺人行為を行った団体が、次の各号に掲げる事項のいずれかに該当すると認められる場合には、当該団体の第十六条第二項の通報に係る事務所等の所在地を管轄する都道府県公安委員会(以下この節において「管轄公安委員会」という。)は、国家公安委員会の承認を得て、当該団体を、活動状況を明らかにする必要がある団体として指定することができる。

 一 当該無差別大量殺人行為の首謀者が当該団体の活動に影響力を有していること。

 二 当該無差別大量殺人行為に関与した者の全部又は一部が当該団体の役職員又は構成員であること。

 三 当該無差別大量殺人行為が行われた時に当該団体の役員(団体の意思決定に関与し得る者であって、当該団体の事務に従事するものをいう。以下同じ。)であった者の全部又は一部が当該団体の役員であること。

 四 前三号に掲げるもののほか、当該団体に無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があると認めるに足りる事実があること。

 (意見聴取)

第六条 管轄公安委員会は、前条の規定による指定をしようとするときは、公開による意見聴取を行わなければならない。ただし、個人の秘密の保護のためやむを得ないと認めるときは、これを公開しないことができる。

2 前項の意見聴取を行う場合において、管轄公安委員会は、指定に係る団体に対し、指定をしようとする理由並びに意見聴取の期日及び場所をその期日の七日前までに通知しなければならない。

3 前項の通知は、官報で公示して行う。この場合においては、公示した日から七日を経過した時に、当該通知が当該団体に到達したものとみなす。

4 当該団体の代表者又は主幹者の住所又は居所が知れているときは、前項の規定による公示のほか、これに通知書を送付しなければならない。

5 意見聴取に際しては、当該団体の代表者若しくは主幹者若しくはこれらに代わるべき者又はこれらの代理人(以下この条において「代表者等」という。)は、当該指定をすることについて意見を述べ、かつ、証拠書類又は証拠物(以下この条において「証拠書類等」という。)を提出することができる。

6 代表者等は、意見聴取の期日への出頭に代えて、管轄公安委員会に対し、意見聴取の期日までに陳述書及び証拠書類等を提出することができる。

7 管轄公安委員会は、代表者等が正当な理由なく意見聴取の期日に出頭せず、かつ、前項に規定する陳述書又は証拠書類等を提出しない場合には、代表者等に対し改めて意見を述べ、及び証拠書類等を提出する機会を与えることなく、意見聴取を終結することができる。

8 管轄公安委員会は、前項に規定する場合のほか、代表者等が意見聴取の期日に出頭せず、かつ、第六項に規定する陳述書又は証拠書類等を提出しない場合において、代表者等の意見聴取の期日への出頭が相当期間引き続き見込めないときは、代表者等に対し、期限を定めて陳述書及び証拠書類等の提出を求め、当該期限が到来したときに意見聴取を終結することができる。

9 前各項に定めるもののほか、第一項の意見聴取の実施について必要な事項は、国家公安委員会規則で定める。

 (指定の公示及び通知)

第七条 第五条の規定による指定は、管轄公安委員会が当該指定団体の名称その他の国家公安委員会規則で定める事項を官報で公示することにより行う。

2 第五条の規定による指定は、前項の公示の時からその効力を生ずる。

3 管轄公安委員会は、第五条の規定による指定をしたときは、当該指定団体に対し、国家公安委員会規則で定めるところにより、当該指定をした旨その他の国家公安委員会規則で定める事項を通知しなければならない。

4 第一項の規定により公示された事項に変更があったときは、管轄公安委員会は、その旨を官報により公示しなければならない。

 (指定の有効期間及び取消し)

第八条 第五条の規定による指定は、三年間その効力を有する。

2 管轄公安委員会は、前項の規定にかかわらず、指定団体が解散その他の事由により消滅したと認められるとき又は同条各号のいずれにも該当しなくなったと明らかに認められるときは、国家公安委員会の承認を得て、当該指定団体に係る指定を取り消さなければならない。

3 前条第一項から第三項までの規定は、前項の規定による指定の取消しについて準用する。

    第二節 報告及び立入検査

 (報告等)

第九条 都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)は、当該都道府県における指定団体の活動状況を明らかにするため必要があると認めるときは、国家公安委員会規則で定めるところにより、当該指定団体に対し、報告又は資料の提出を求めることができる。

 (立入検査)

第十条 公安委員会は、次の各号のいずれかに該当するときは、国家公安委員会の承認を得て、当該都道府県警察の職員に、国家公安委員会規則で定めるところにより、当該指定団体が当該都道府県において所有し又は管理する土地又は建物に立ち入らせ、設備、帳簿書類その他必要な物件を検査させることができる。

 一 指定団体が前条の規定による報告をせず、又は資料を提出しなかったとき。

 二 指定団体が前条の報告又は資料の提出について虚偽の報告をし、又は虚偽の資料の提出をしたとき。

 三 前条の規定により得た情報によっては当該指定団体の活動の状況を明らかにすることができなかった場合であって、当該指定団体の活動の状況を明らかにするため特に必要があると認めるとき。

2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証票を携帯し、関係者に提示しなければならない。

3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

    第三節 指定団体の活動の規制

 (活動の規制)

第十一条 公安委員会は、前条第一項の規定による立入検査が拒まれ、妨げられ、若しくは忌避されたとき又は指定団体に無差別大量殺人行為に及ぶ危険性が明らかに認められるときは、当該指定団体に対し、国家公安委員会の承認を得て、六月を超えない期間を定めて、当該公安委員会が管轄する都道府県の区域について、次の各号に掲げる処分の全部又は一部を行うことができる。

 一 いかなる名義をもってするかを問わず、土地又は建物を新たに取得し又は借り受けることを、地域を特定して、又は特定しないで禁止すること。

 二 当該指定団体が所有し又は管理する特定の土地又は建物(専ら居住の用に供しているものを除く。)の全部又は一部の使用を禁止すること。

 三 指定に係る無差別大量殺人行為に関与した者又は当該無差別大量殺人行為が行われた時に当該指定に係る団体の役員であった者(以下「当該無差別大量殺人行為の関与者等」という。)に、当該指定団体の活動の用に供されている土地又は建物において、当該指定団体の活動の全部又は一部に参加させ又は従事させることを禁止すること。

 四 当該指定団体に加入することを強要し、若しくは勧誘し、又は当該指定団体からの脱退を妨害することを禁止すること。

 五 金品その他の財産上の利益の贈与を受けることを禁止し、又は制限すること。

2 第六条の規定は、前項の規定による処分の手続について準用する。

 (処分の公示及び通知)

第十二条 前条第一項の規定による処分は、公安委員会が当該処分の対象となる指定団体の名称、処分の内容その他の国家公安委員会規則で定める事項を官報で公示することにより行う。

2 前条第一項の規定による処分は、前項の公示の時からその効力を生ずる。

3 公安委員会は、前条第一項の規定による処分をしたときは、当該指定団体に対し、国家公安委員会規則で定めるところにより、当該処分をした旨その他の国家公安委員会規則で定める事項を通知しなければならない。

 (役職員又は構成員等の禁止行為)

第十三条 第十一条第一項に規定する処分を受けている指定団体の役職員又は構成員は、当該指定団体の活動として、当該処分に違反する行為をしてはならない。

2 第十一条第一項に規定する処分を受けている指定団体の役職員又は構成員は、当該処分が効力を生じた後は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。

 一 当該指定団体が第十一条第一項第一号に掲げる処分を受けた場合にあっては、いかなる名義をもってするかを問わず、当該処分により取得し又は借り受けることが禁止された土地又は建物を当該指定団体の用に供する目的で取得し又は借り受けること。

 二 当該指定団体が第十一条第一項第二号に掲げる処分を受けた場合にあっては、当該指定団体の用に供する目的で当該処分により使用を禁止された土地又は建物を使用すること。

 三 当該指定団体が第十一条第一項第三号に掲げる処分を受けた場合にあっては、当該無差別大量殺人行為の関与者等に、当該処分により参加させ又は従事させることを禁止された当該指定団体の活動に参加させ又は従事させること。

 四 当該指定団体が第十一条第一項第四号に掲げる処分を受けた場合にあっては、当該処分により禁止された当該指定団体への加入を強要すること若しくは勧誘すること又は当該指定団体から脱退する行為を妨害すること。

 五 当該指定団体が第十一条第一項第五号に掲げる処分を受けた場合にあっては、当該指定団体の利益を図る目的で、当該処分により贈与を受けることが禁止された金品その他の財産上の利益を贈与の目的として受け取ること。

3 当該指定団体が第十一条第一項第三号に掲げる処分を受けている場合にあっては、当該無差別大量殺人行為の関与者等は、当該処分が効力を生じた後は、当該処分により参加させ又は従事させることを禁止された当該指定団体の活動に参加し又は従事してはならない。

 (規制処分の取消し)

第十四条 公安委員会は、第十一条第一項の規定による処分について、当該処分に基づく禁止又は制限をする必要がなくなったと認められるときは、国家公安委員会の承認を得て、これを取り消さなければならない。

2 第十二条の規定は、前項の規定による処分の取消しについて準用する。

 (土地又は建物の使用禁止に関する標章の掲示等)

第十五条 公安委員会は、第十一条第一項第二号の規定により当該指定団体が所有し又は管理する特定の土地又は建物の全部又は一部の使用を禁止する処分をしたときは、当該土地の所在する場所又は当該建物の出入口の見やすい場所に、当該指定団体が当該土地又は建物について同号の処分を受けている旨を告知する国家公安委員会規則で定める標章を掲示するものとする。

2 公安委員会は、前項の規定により標章を掲示した場合において、第十一条第一項の規定に基づいて定められた期限が経過したとき又は前条の規定により当該処分を取り消したときは、当該標章を取り除かなければならない。

3 何人も、第一項の規定により掲示した標章を損壊し、又は汚損してはならず、また、当該標章を掲示した土地若しくは建物に係る第十一条第一項の規定に基づいて定められた期限が経過した後又は前条の規定により当該処分が取り消された後でなければ、これを取り除いてはならない。

    第四節 雑則

 (公安委員会の報告等)

第十六条 公安委員会は、団体の活動として役職員又は構成員がサリン等を発散させることにより無差別大量殺人行為を行った団体の活動の状況、当該団体の事務所等(当該団体の活動の拠点となっている施設又は施設の区画された部分をいう。次項において同じ。)の所在地その他当該団体の実態を把握して、これに関する事項を国家公安委員会に報告しなければならない。

2 国家公安委員会は、前項の規定による報告に基づき、報告に係る団体の主たる事務所等と認められる事務所等を決定し、その旨を各公安委員会に通報するものとする。

3 公安委員会は、この章の規定による処分をするについて必要があるときは、官公署に対し、これらの処分をするため参考となるべき資料の閲覧又は提供その他の協力を求めることができる。

4 公安委員会は、この章の規定による処分をした場合における当該処分の内容、処分の日時その他の国家公安委員会規則で定める事項を国家公安委員会に報告しなければならない。この場合において、国家公安委員会は、当該報告に係る事項を各公安委員会に通報するものとする。

5 公安委員会は、国家公安委員会規則で定めるところにより、第九条又は第十条第一項の規定により得た指定団体に関する情報について国家公安委員会に報告しなければならない。

 (国会への報告)

第十七条 政府は、毎年一回、国会に対し、この章の規定による処分がされた場合における当該処分の内容等を報告しなければならない。

 (関係地方公共団体の長への情報提供)

第十八条 公安委員会は、関係地方公共団体の長から請求があったときは、当該請求を行った者に対して、個人の秘密又は公共の安全を害するおそれがあると認める事項を除き、当該公安委員会がこの章の規定により得た指定団体に関する情報であって、当該地方公共団体に係るものを提供するものとする。

 (行政手続法の適用除外)

第十九条 公安委員会がこの章の規定に基づいてする処分については、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第三章の規定は、適用しない。

 (不服申立て)

第二十条 公安委員会がこの章の規定に基づいてした処分に不服がある者は、国家公安委員会に審査請求をすることができる。

 (処分取消しの訴え)

第二十一条 法人でない社団又は財団でこの章の規定による処分を受けたものは、その名において処分の取消しを求める訴訟を提起することができる。

 (裁判の公示)

第二十二条 この章の規定による処分の全部又は一部が裁判所で取り消されたときは、当該処分に係る公安委員会は、その裁判を官報で公示しなければならない。

 (処分の手続に関する細則)

第二十三条 この章に規定するものを除くほか、公安委員会における手続に関する細則は、国家公安委員会規則で定める。

   第四章 罰則

   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。

 (刑事訴訟法の一部改正)

2 刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の一部を次のように改正する。

  第二百六十二条第一項中「第百九十三条乃至第百九十六条」を「第百九十三条から第百九十六条まで」に改め、「第四十五条」の下に「若しくはサリン等による人身被害の防止等に関する法律(平成七年法律第七十八号)第三十条」を加える。

 (組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部改正)

3 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成十一年法律第百三十六号)の一部を次のように改正する。

  第二条第二項第二号ニ中「サリン等による人身被害の防止に関する法律(平成七年法律第七十八号)第七条」を「サリン等による人身被害の防止等に関する法律(平成七年法律第七十八号)第二十六条」に改める。

  別表第五十三号中「サリン等による人身被害の防止に関する法律第五条(発散させる行為)又は第六条第一項から第三項まで」を「サリン等による人身被害の防止等に関する法律第二十四条(発散させる行為)又は第二十五条第一項から第三項まで」に改める。

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