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第一五一回

衆第五〇号

   芸術文化振興基本法案

目次

 前文

 第一章 総則(第一条―第六条)

 第二章 芸術文化振興基本計画(第七条)

 第三章 基本的施策(第八条―第二十条)

 附則

 芸術文化を享受し、その創造に参加し、文化的な環境の中で生きる喜びを見出すことは、人々の変わらない願いである。また、芸術文化は、人々の創造性をはぐくみ、その表現力を高めるとともに、人々の心のつながりや相互に理解し尊重し合う土壌を提供し、多様性を受け入れることができる心豊かな社会を形成するものである。更に、芸術文化は、それ自体が固有の意義と価値を有するとともに、それぞれの国やそれぞれの時代における国民共通のよりどころとして重要な意味を持ち、国際化が進展する中にあって、自己認識の基点となり、伝統を尊重する心を育てるものである。

 我々は、このような芸術文化の役割が今後においても変わることなく、心豊かな活力ある社会の形成にとって極めて重要な意義を持ち続けると確信する。

 しかるに、現状をみるに、経済的な豊かさの中にありながら、芸術文化がその役割を果たすことができるような基盤の整備及び環境の形成は十分な状態にあるとはいえない。二十一世紀を迎えた今、これまで培われてきた伝統的な芸術文化を継承し、発展させるとともに、独創性のある新たな芸術文化の創造を促進することは、我々に課された緊要な課題となっている。

 このような事態に対処して、我が国の芸術文化の振興を図るためには、自由な芸術文化活動を行う者の自主性を尊重することを旨としつつ、芸術文化を国民の身近なものとし、それを尊重し大切にするよう包括的に施策を推進していくことが不可欠である。

 ここに、芸術文化の振興についての基本理念を明らかにしてその方向を示し、芸術文化の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、この法律を制定する。

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、芸術その他の文化(以下「芸術文化」という。)が人間に多くの恵沢をもたらすものであることにかんがみ、芸術文化の振興に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、芸術文化の振興に関する施策の基本となる事項を定めることにより、芸術文化の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって国民の文化的な生活の向上を図るとともに、心豊かな活力ある社会の形成に寄与することを目的とする。

 (基本理念)

第二条 芸術文化の振興に当たっては、芸術文化に関する活動(以下「芸術文化活動」という。)を行う個人及び民間の団体の自主性が尊重されなければならない。

2 芸術文化の振興に当たっては、国民の幅広い文化的利益の享受及び芸術文化活動への参加が図られなければならない。

3 芸術文化の振興に当たっては、多様な芸術文化の保護及び発展が図られなければならない。

4 芸術文化の振興に当たっては、優れた芸術文化活動が芸術文化の普及に重要な役割を果たすことにかんがみ、我が国における芸術文化活動の水準の一層の向上が図られなければならない。

 (国の責務)

第三条 国は、前条の基本理念(次条において「基本理念」という。)にのっとり、芸術文化の振興に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。

 (地方公共団体の責務)

第四条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、芸術文化の振興に関し、国の施策に準じた施策及びその地方公共団体の区域の特性に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

 (法制上の措置等)

第五条 政府は、芸術文化の振興に関する施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。

 (年次報告等)

第六条 政府は、毎年、国会に、芸術文化の状況及び政府が講じた芸術文化の振興に関する施策についての報告を提出しなければならない。

2 政府は、毎年、前項の報告に係る芸術文化の状況を考慮して講じようとする施策を明らかにした文書を作成し、これを国会に提出しなければならない。

   第二章 芸術文化振興基本計画

第七条 政府は、芸術文化の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、芸術文化の振興に関する基本的な計画(以下この条において「芸術文化振興基本計画」という。)を定めなければならない。

2 芸術文化振興基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

 一 総合的かつ長期的に講ずべき芸術文化の振興に関する施策の大綱

 二 前号に掲げるもののほか、芸術文化の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項

3 政府は、芸術文化振興基本計画を定めようとするときは、文化審議会の意見を聴かなければならない。

4 政府は、芸術文化振興基本計画を定めたときは、遅滞なく、これを国会に報告するとともに、公表しなければならない。

5 前二項の規定は、芸術文化振興基本計画の変更について準用する。

   第三章 基本的施策

 (芸術文化活動に対する支援)

第八条 国は、芸術文化の創造活動、芸術文化の普及を図るための公演、展示等の活動その他の芸術文化活動を支援するため、財政上の援助その他の必要な施策を講ずるものとする。

 (民間の支援活動の活性化)

第九条 国は、個人又は民間の団体が芸術文化活動に対して行う支援活動の活性化を図るため、税制上の措置その他の必要な施策を講ずるように努めなければならない。

 (伝統芸術文化の継承及び発展等)

第十条 国は、我が国の伝統的な芸術文化の継承及び発展並びに文化財の保存及び活用を図るため、必要な施策を講ずるものとする。

 (地域固有芸術文化の保護及び発展)

第十一条 国は、地域の固有の芸術文化の保護及び発展を図るため、必要な施策を講ずるものとする。

 (人材の養成及び確保)

第十二条 国は、芸術文化活動を行う人材、芸術文化活動の企画等を行う人材その他の芸術文化活動を担う人材の養成及び確保のため、教育及び研修の充実、これらの人材の適切な処遇の確保その他の必要な施策を講ずるものとする。

 (基盤の整備)

第十三条 国は、芸術文化活動の基盤を整備するため、芸術文化施設の充実、芸術文化に関する総合的な情報の提供を行うシステムの構築その他の必要な施策を講ずるものとする。

 (権利の保護)

第十四条 国は、芸術文化の所産の公正な利用に留意しつつ、芸術文化の所産に係る権利の保護を図るため、必要な施策を講ずるものとする。

 (学校教育等における機会の拡大)

第十五条 国は、学校教育及び社会教育において国民が芸術文化に接することができる機会を拡大するため、必要な施策を講ずるものとする。

 (医療、福祉等の分野における活用)

第十六条 国は、医療、福祉等の分野における芸術文化の活用を図るため、必要な施策を講ずるものとする。

 (啓発活動)

第十七条 国は、芸術文化に関する国民の理解を深めるため、啓発活動その他の必要な施策を講ずるものとする。

 (国際的な交流及び協力)

第十八条 国は、芸術文化に関する国際的な交流及び協力を推進するため、芸術文化活動を行う個人及び団体の国際的な相互交流に対する支援、開発途上地域等における芸術文化の振興に関する技術協力及び資金協力その他の必要な施策を講ずるものとする。

 (地方公共団体の施策)

第十九条 地方公共団体は、第八条から前条までに定める国の施策に準じた施策及びその地方公共団体の区域の特性に応じた芸術文化の振興のために必要な施策を、これらの総合的かつ計画的な推進を図りつつ実施するものとする。

 (行政組織の整備等)

第二十条 国及び地方公共団体は、芸術文化の振興に関する施策を講ずるにつき、相協力するとともに、行政組織の整備並びに行政運営の効率化及び透明性の向上に努めるものとする。

   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、公布の日から施行する。

 (文部科学省設置法の一部改正)

2 文部科学省設置法(平成十一年法律第九十六号)の一部を次のように改正する。

  第二十九条第一項第一号及び第二号中「又は文化庁長官」を「、関係各大臣又は文化庁長官」に改め、同項第五号中「著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)」を「芸術文化振興基本法(平成十三年法律第▼▼▼号)第七条第三項、著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)」に改める。

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