第一五九回
参第二〇号
長時間にわたる時間外労働等から労働者を保護するための労働基準法及び労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案
(労働基準法の一部改正)
第一条 労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)の一部を次のように改正する。
第百七条の次に次の一条を加える。
(労働時間管理台帳)
第百七条の二 使用者は、各事業場ごとに労働時間管理台帳を調製し、各労働者について労働した日ごとに、始業及び終業の時刻、時間外及び休日の労働の時間数その他厚生労働省令で定める事項を厚生労働省令で定めるところにより記入しなければならない。
第百八条の次に次の一条を加える。
(労働者名簿等の閲覧)
第百八条の二 使用者は、労働者から、当該労働者について調製した労働者名簿、労働時間管理台帳(当該労働者に係る部分に限る。)及び賃金台帳(当該労働者に係る部分に限る。)の閲覧の請求があつたときは、その閲覧を拒んではならない。
第百九条中「労働者名簿」の下に「、労働時間管理台帳」を加える。
第百二十条第一号中「又は第百六条から第百九条まで」を「、第百六条、第百七条、第百八条の二又は第百九条」に改め、同条に次の一号を加える。
六 第百七条の二又は第百八条の規定に違反して、労働時間管理台帳若しくは賃金台帳を調製せず、又はこれらに記入すべき事項を記入せず、若しくは虚偽の記入をした者
(労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部改正)
第二条 労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法(平成四年法律第九十号)の一部を次のように改正する。
題名を次のように改める。
労働時間の短縮の促進等に関する臨時措置法
目次中「第四章 労働時間短縮実施計画(第八条―第十三条の二)」を
「 |
第四章 労働時間短縮実施計画(第八条―第十三条の二) |
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|
第四章の二 時間外労働等管理規程(第十三条の三―第十三条の六) |
」 |
に改める。
第一条中「図り」の下に「、あわせて時間外及び休日の労働の適正な管理及び削減のための措置を講じ」を加える。
第二条第一項中「休日数の段階的な増加」を「段階的な休日数の増加又は時間外労働の削減」に改め、同条に次の一項を加える。
4 事業主は、その雇用する労働者の時間外及び休日の労働(以下「時間外労働等」という。)が適正に行われるようにするため、時間外労働等の実態の把握その他の必要な措置を講ずるように努めなければならない。
第七条中「労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法」を「労働時間の短縮の促進等に関する臨時措置法」に改める。
第四章の次に次の一章を加える。
第四章の二 時間外労働等管理規程
(時間外労働等管理規程の作成等)
第十三条の三 事業主は、常時十人以上の労働者を使用する事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、時間外労働等の適正な管理及び削減のための措置に関する規程(以下「時間外労働等管理規程」という。)を作成し、厚生労働大臣に届け出なければならない。当該時間外労働等管理規程を変更したときも、同様とする。
2 時間外労働等管理規程には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 時間外労働等の実態の正確な把握のために必要な措置に関する事項
二 時間外労働等に係る割増賃金の算定及び支払に関する事項
三 時間外労働等に係る割増賃金が支払われない場合に労働者が当該割増賃金の額に加えて支払を請求することができる金額に関する事項
四 時間外労働等の適正な管理及び削減のために必要な労働者の配置等雇用管理に関する事項
3 事業主は、第一項の規定により時間外労働等管理規程を作成するに当たっては、次条第一項の規定により設置された時間外労働等管理委員会の意見を聴かなければならない。当該時間外労働等管理規程を変更するときも、同様とする。
4 事業主は、時間外労働等管理規程を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によって、労働者に周知させなければならない。
5 厚生労働大臣は、事業主が時間外労働等管理規程を適正に作成し、実施するために必要な指針を定め、これを公表するものとする。
6 厚生労働大臣は、第一項の規定により届け出られた時間外労働等管理規程が著しく不適当であると認めるときは、当該時間外労働等管理規程を作成した事業主に対してその変更を勧告することができる。
7 厚生労働大臣は、特に必要があると認めるときは、第一項の規定により時間外労働等管理規程を届け出た事業主に対して、その適正な実施に関し、勧告をすることができる。
8 厚生労働大臣は、前二項の規定による勧告を受けた事業主がこれらの勧告に従わないときは、その旨を公表することができる。
(時間外労働等管理委員会)
第十三条の四 事業主は、前条第一項に規定する事業場ごとに、時間外労働等管理規程及びその実施状況並びに時間外労働等に係る労働者の苦情を調査審議させ、事業主に対し意見を述べさせるため、時間外労働等管理委員会を設けなければならない。
2 事業主は、時間外労働等管理委員会の委員の半数については、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の推薦に基づき指名しなければならない。
(報告及び検査)
第十三条の五 厚生労働大臣は、前二条の規定の施行に必要な限度において、第十三条の三第一項の規定による時間外労働等管理規程の届出をした事業主に対し、当該時間外労働等管理規程の実施状況その他の事項について報告をさせ、又は所属の職員に、当該届出に係る事業場に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(権限の委任)
第十三条の六 第十三条の三及び前条に規定する厚生労働大臣の権限は、厚生労働省令で定めるところにより、その一部を都道府県労働局長に委任することができる。
第三十三条中「一に」を「いずれかに」に改め、第二号を第五号とし、第一号を第四号とし、同号の前に次の三号を加える。
一 第十三条の三第一項の規定に違反して時間外労働等管理規程を作成せず、又は届け出なかった者
二 第十三条の四第一項の規定に違反して時間外労働等管理委員会を設置しなかった者
三 第十三条の五第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による立入り若しくは検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは同項の規定による質問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をした者
附則第二条中「平成十八年三月三十一日」を「平成二十一年三月三十一日」に改める。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して三月を経過した日から施行する。
(経過措置)
第二条 この法律の施行の際現に常時十人以上の労働者を事業場において使用する事業主については、第二条による改正後の労働時間の短縮の促進等に関する臨時措置法第十三条の三第一項の規定は、この法律の施行の日から起算して六十日間は、適用しない。
(社会保険労務士法等の一部改正)
第三条 次に掲げる法律の規定中「労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法」を「労働時間の短縮の促進等に関する臨時措置法」に改める。
一 社会保険労務士法(昭和四十三年法律第八十九号)別表第一第二十号の十五
二 厚生労働省設置法(平成十一年法律第九十七号)第九条第一項第四号
理 由
最近の労働者をめぐる社会経済情勢にかんがみ、時間外労働等の適正な管理及び削減を図り、長時間にわたる時間外労働等から労働者を保護するため、労働時間管理台帳の調製、時間外労働等管理規程の作成、時間外労働等管理委員会の設置等必要な措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。