衆議院

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第一六四回

参第一九号

   殺虫剤等の規制等に関する法律案

目次

 第一章 総則(第一条・第二条)

 第二章 殺虫剤等の規制

  第一節 製造者等の殺虫剤等の表示(第三条)

  第二節 特定散布等の規制(第四条─第九条)

 第三章 殺虫剤等による有害な影響の低減の推進

  第一節 指針等(第十条─第十三条)

  第二節 安全な殺虫剤等の認定(第十四条)

 第四章 雑則(第十五条─第二十一条)

 第五章 罰則(第二十二条─第二十六条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、殺虫剤等の表示及び散布等について必要な規制を行うとともに、殺虫剤等による有害な影響の低減の推進に関し必要な事項を定めることにより、生活環境を保全し、国民の健康の保護に資することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「殺虫剤等」とは、殺虫剤、殺そ剤、殺菌剤、除草剤その他の薬剤(農薬取締法(昭和二十三年法律第八十二号)第二条第一項に規定する特定農薬であるものを除く。)であって散布等の方法により使用されるものとして政令で定めるものをいう。

2 この法律において「散布等」とは、散布、くん蒸、揮発性の物質の設置又は塗布その他物質を発散させる行為であって政令で定めるものをいう。

   第二章 殺虫剤等の規制

    第一節 製造者等の殺虫剤等の表示

第三条 殺虫剤等を製造し、若しくは加工し、又は輸入する者(以下「製造者等」という。)は、その製造し、若しくは加工し、又は輸入した殺虫剤等を販売し、又は授与するときは、環境省令で定めるところにより、次の事項(他の法令の規定によりその容器又は包装に次の事項に相当する事項を表示することとされている殺虫剤等にあっては、当該相当する事項に係る事項を除く。)を当該殺虫剤等の容器又は包装に表示しなければならない。

 一 製造者等の氏名又は名称及び住所

 二 種類及び名称

 三 内容量

 四 含有する成分の名称及び含有量

 五 人の健康及び生活環境に及ぼす有害な影響に関する情報

 六 保管方法及び使用方法(保管上又は使用上の注意事項を含む。)

 七 飛散の防止の方法

 八 使用期限

 九 その他環境省令で定める事項

2 殺虫剤等を販売し、又は授与する者(製造者等を除く。第十五条第一項において「販売者等」という。)は、その容器又は包装に前項の規定により表示しなければならない事項が表示されていない殺虫剤等を販売し、又は授与してはならない。

    第二節 特定散布等の規制

 (規制地域の指定)

第四条 都道府県知事は、住居、店舗又は事務所が集合している地域、病院、学校その他の多数の者が利用する施設の周辺の地域その他の人の健康を保護し、又は生活環境を保全するため過剰な殺虫剤等の散布等を抑制する必要があると認める地域を、殺虫剤等の散布等を規制する地域(以下「規制地域」という。)として指定しなければならない。

2 都道府県知事は、前項の規定により規制地域を指定しようとするときは、関係市町村長の意見を聴かなければならない。これを変更し、又は廃止しようとするときも、同様とする。

3 都道府県知事は、第一項の規定により規制地域を指定するときは、環境省令で定めるところにより、公示しなければならない。これを変更し、又は廃止するときも、同様とする。

 (規制基準の設定)

第五条 都道府県知事は、前条第一項の規定により規制地域を指定するときは、殺虫剤等の散布等について区域の区分ごとに政令で定める基準の範囲内において、当該規制地域について、区域の区分ごとに、人の健康又は生活環境に有害な影響を及ぼすおそれのあるものとして環境省令で定める殺虫剤等の散布等(以下「特定散布等」という。)を行う者が遵守すべき基準(以下「規制基準」という。)を定めなければならない。

2 市町村は、前条第一項の規定により指定された規制地域の全部又は一部について、当該地域の自然的、社会的条件に特別の事情があるため、前項の規定により定められた規制基準によっては人の健康を保護し、又は生活環境を保全することが十分でないと認めるときは、条例で、政令で定める範囲内において、同項の規制基準に代えて適用すべき規制基準を定めることができる。

3 前条第三項の規定は、第一項の規定による規制基準の設定並びにその変更及び廃止について準用する。

 (規制地域における特定散布等に係る届出及び周辺区域の居住者等への周知)

第六条 規制地域において、特定散布等を行おうとする者は、その開始の日の十四日前までに、環境省令で定めるところにより、次の事項を市町村長に届け出るとともに、当該特定散布等を行う場所及びその周辺の区域内の居住者その他の者に第一号から第六号まで及び第八号の事項を周知させるための措置を講じなければならない。ただし、法令の規定に基づき公衆衛生上の危害の発生の防止のため緊急に特定散布等を行う場合その他の緊急に特定散布等を行う必要がある場合として政令で定める場合は、この限りでない。

 一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名

 二 特定散布等を行う場所及び期間

 三 特定散布等の方法

 四 特定散布等に係る殺虫剤等の種類、名称及び量

 五 特定散布等に係る殺虫剤等が含有する成分の名称及び含有量

 六 特定散布等に係る殺虫剤等が人の健康及び生活環境に及ぼす有害な影響に関する情報

 七 特定散布等を行う場所及びその周辺の区域内の居住者その他の者への周知の方法及び時期

 八 その他環境省令で定める事項

2 前項ただし書の場合において、当該特定散布等を行った者は、環境省令で定めるところにより、当該特定散布等を開始した日から十四日以内に、同項各号の事項を市町村長に届け出るとともに、当該特定散布等を行う場所及びその周辺の区域内の居住者その他の者に同項第一号から第六号まで及び第八号の事項を周知させるための措置を講じなければならない。

3 市町村長は、前二項の届出があったときは、その旨及び当該届出に係る事項を公示しなければならない。

 (計画変更命令)

第七条 市町村長は、前条第一項の規定による届出があった場合において、その届出に係る特定散布等が当該規制地域における規制基準に適合しないと認めるときは、その届出を受理した日から十四日以内に限り、その届出をした者に対し、その届出に係る特定散布等の方法に関する計画の変更を命ずることができる。

 (特定散布等の制限)

第八条 規制地域において特定散布等を行う者は、当該規制地域における規制基準に適合しない特定散布等を行ってはならない。

 (措置命令)

第九条 市町村長は、規制地域において規制基準に適合しない特定散布等が行われたことにより人の健康及び生活環境に係る被害が生じ、又は生じるおそれがあると認めるときは、その発生又は拡大を防止するために必要な限度において、当該特定散布等を行った者に対し、当該特定散布等に係る殺虫剤等の飛散の防止、当該殺虫剤等の除去その他の必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

   第三章 殺虫剤等による有害な影響の低減の推進

    第一節 指針等

 (指針)

第十条 環境大臣は、殺虫剤等の散布等が人の健康及び生活環境に及ぼす有害な影響の低減を図るための指針を定めるものとする。

2 前項の指針においては、次の事項を定めるものとする。

 一 殺虫剤等の散布等の抑制による人の健康の保護及び生活環境の保全に関する事項

 二 事業者が行う人の健康及び生活環境に及ぼす有害な影響がより少ない殺虫剤等並びに殺虫剤等に代替するものの開発の支援に関する事項

 三 人の健康及び生活環境に及ぼす有害な影響がより少ない殺虫剤等並びに殺虫剤等に代替するものの研究開発の推進及びその成果の普及に関する事項

3 環境大臣は、第一項の指針を定め、又はこれを変更するに当たっては、あらかじめ、厚生労働大臣、農林水産大臣その他関係行政機関の長の意見を聴かなければならない。

4 環境大臣は、第一項の指針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

 (事業者の責務)

第十一条 殺虫剤等の開発を行う事業者は、人の健康及び生活環境に及ぼす有害な影響がより少ない殺虫剤等又は殺虫剤等に代替するものの開発に努めなければならない。

 (過剰な殺虫剤等の散布等の抑制)

第十二条 何人も、過剰な殺虫剤等の散布等により、人の健康及び生活環境に有害な影響を及ぼすことのないよう努めなければならない。

 (調査研究等)

第十三条 国は、殺虫剤等が人の健康及び生活環境に及ぼす有害な影響に関する調査研究の実施に努めなければならない。

2 国は、前項の調査研究の実施状況の程度に応じ、殺虫剤等の種類ごとにその散布等による人の健康及び生活環境に及ぼす有害な影響が生ずるおそれの程度を評価し、その成果を定期的に公表しなければならない。

    第二節 安全な殺虫剤等の認定

第十四条 製造者等(農薬取締法第一条の二第一項に規定する農薬に係る製造者等を除く。)は、環境省令で定めるところにより、その製造し、若しくは加工し、又は輸入する殺虫剤等が人の健康及び生活環境に有害な影響を及ぼすおそれがないものとして環境省令で定める基準に適合することについて、環境大臣の認定を受けることができる。

2 前項の認定を受けた殺虫剤等に係る製造者等は、環境省令で定めるところにより、当該認定に係る殺虫剤等の容器又は包装に当該殺虫剤等が同項の認定を受けている旨の表示をすることができる。

3 何人も、前項の場合を除くほか、同項の表示又はこれと紛らわしい表示をしてはならない。

   第四章 雑則

 (立入検査等)

第十五条 環境大臣は、製造者等又は販売者等に対し、この法律の施行に必要な限度において、当該製造者等が製造し、若しくは加工し、若しくは輸入し、若しくは当該販売者等が販売し、若しくは授与した殺虫剤等若しくはその表示に関する報告を求め、又はその職員に、当該製造者等若しくは当該販売者等の事務所若しくは事業場に立ち入り、これらの施設、帳簿、書類その他の物件を検査させ、関係者に質問させ、若しくは試験のため必要な最小限度の分量に限り当該殺虫剤等を収去させることができる。

2 市町村長は、規制地域において特定散布等を行い、若しくは行った者に対し、この法律の施行に必要な限度において、当該特定散布等の作業の状況その他必要な事項の報告を求め、又はその職員に、当該特定散布等に係る場所若しくは当該特定散布等を行い、若しくは行った者の事務所若しくは事業場に立ち入り、当該特定散布等の作業の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させ、関係者に質問させ、若しくは試験のため必要な最小限度の分量に限り当該特定散布等に係る殺虫剤等を収去させることができる。ただし、住居に立ち入る場合においては、あらかじめ、その居住者の承諾を得なければならない。

3 前二項の規定により立入検査、質問又は収去をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。

4 第一項又は第二項の規定による立入検査、質問及び収去の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

 (関係行政機関の協力)

第十六条 環境大臣は、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、殺虫剤等及びその表示に関する資料又は情報の提供、意見の開陳その他の協力を求めることができる。

2 都道府県知事は、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長又は関係地方公共団体の長に対し、殺虫剤等の散布等の状況に関する資料の送付その他の協力を求め、又は殺虫剤等の散布等が人の健康及び生活環境に及ぼす有害な影響の低減に関し、意見を述べることができる。

 (権限の委任)

第十七条 この法律に規定する環境大臣の権限は、環境省令で定めるところにより、地方環境事務所長に委任することができる。

 (政令で定める市の長による事務の処理)

第十八条 この法律の規定により都道府県知事の権限に属する事務の一部は、政令で定めるところにより、政令で定める市(特別区を含む。)の長が行うこととすることができる。

 (他の法律との関係)

第十九条 この法律の規定は、殺虫剤等の表示に係る規制又は殺虫剤等の散布等に係る規制に関する他の法律の規定の適用を妨げるものではない。

 (条例との関係)

第二十条 この法律の規定は、地方公共団体が、この法律に規定するもののほか、殺虫剤等の散布等に関し条例で必要な規制を定めることを妨げるものではない。

 (経過措置)

第二十一条 この法律の規定に基づき命令を制定し、又は改廃する場合においては、その命令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。

   第五章 罰則

第二十二条 次のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

 一 第七条の規定による命令に違反した者

 二 第八条の規定に違反した者(前号の規定に該当する者を除く。)

 三 第九条の規定による命令に違反した者

第二十三条 過失により、前条第二号の罪を犯した者は、三月以下の禁錮又は三十万円以下の罰金に処する。

第二十四条 次のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。

 一 第三条第一項の規定による表示をせず、又は虚偽の表示をした者

 二 第三条第二項の規定に違反した者

 三 第六条第一項又は第二項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者

 四 第六条第一項又は第二項の規定に違反して、特定散布等を行う場所及びその周辺の区域内の居住者その他の者に周知させるための措置を講じなかった者

第二十五条 次のいずれかに該当する者は、二十万円以下の罰金に処する。

 一 第十四条第三項の規定に違反した者

 二 第十五条第一項若しくは第二項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、同条第一項若しくは第二項の規定による検査若しくは収去を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は同条第一項若しくは第二項の規定による質問に対して、正当な理由なしに答弁せず、若しくは虚偽の答弁をした者

第二十六条 法人の代表者又は人の代理人、使用人その他の従業員が、その法人又は人の業務に関し、第二十二条から前条までの違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

 (経過措置)

第二条 この法律の施行前に製造され、若しくは加工され、又は輸入された殺虫剤等については、この法律の施行後二年間は、第三条の規定は、適用しない。

 (環境省設置法の一部改正)

第三条 環境省設置法(平成十一年法律第百一号)の一部を次のように改正する。

  第四条第二十二号中「ヨに」を「タに」に改め、同号タ中「イからヨまで」を「イからタまで」に改め、同号中タをレとし、ワからヨまでをカからタまでとし、ヲの次に次のように加える。

   ワ 殺虫剤等(殺虫剤等の規制等に関する法律(平成十八年法律第▼▼▼号)第二条第一項に規定する殺虫剤等をいう。)の表示及び散布等(同条第二項に規定する散布等をいう。)の規制並びに認定


     理 由

 生活環境を保全し、国民の健康の保護に資するため、殺虫剤等の表示及び散布等について必要な規制を行うとともに、殺虫剤等による有害な影響の低減の推進に関し必要な事項を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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