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第一六八回

参第一〇号

   刑事訴訟法の一部を改正する法律案

 刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の一部を次のように改正する。

 第百九十八条の次に次の一条を加える。

第百九十八条の二 前条第一項の取調べに際しては、被疑者の供述及び取調べの状況のすべてについて、その映像及び音声を記録媒体に記録しなければならない。この場合においては、同時に、同一の方法により二以上の記録媒体に記録するものとする。

  前項の規定により記録をした記録媒体の一については、取調べを終了したときは、速やかに、被疑者の面前において封印をしなければならない。この場合においては、当該記録媒体が同項の規定により記録をしたものであることについて、被疑者に確認を求めることができる。

  前項の確認がされたときは、同項の封印に被疑者の署名押印を求めることができる。ただし、被疑者がこれを拒絶した場合は、この限りでない。

  被疑者又はその弁護人は、第一項の規定により記録をした記録媒体(第二項の規定により封印をした記録媒体以外のものに限る。)を閲覧し、若しくは聴取し、又はその複製を作成することができる。被告人又はその弁護人についても、同様とする。

  被疑者又はその弁護人は、前項前段の規定により閲覧され、若しくは聴取され、又は複製が作成された記録媒体(以下この条において「閲覧等をされた記録媒体」という。)に係る複製等(複製その他記録の内容の全部又は一部をそのまま記録した物及び書面をいう。以下この条において同じ。)を適正に管理し、その保管をみだりに他人にゆだねてはならない。

  被疑者若しくは被疑者であつた者(被告人又は被告人であつた者を除く。)(以下この条において「被疑者等」という。)又は被疑者の弁護人若しくは弁護人であつた者(被告人の弁護人又は弁護人であつた者を除く。第九項において同じ。)は、閲覧等をされた記録媒体に係る複製等を、被疑者等の防御又はその準備に使用する目的以外の目的で、人に交付し、又は提示し、若しくは電気通信回線を通じて提供してはならない。

  前項の規定に違反した場合の措置については、被疑者等の防御をする権利を踏まえ、複製等の内容、行為の目的及び態様、関係人の名誉、その私生活又は業務の平穏を害されているかどうかその他の事情を考慮するものとする。

  被疑者等が、閲覧等をされた記録媒体に係る複製等を、被疑者等の防御又はその準備に使用する目的以外の目的で、人に交付し、又は提示し、若しくは電気通信回線を通じて提供したときは、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

  被疑者の弁護人又は弁護人であつた者が、閲覧等をされた記録媒体に係る複製等を、対価として財産上の利益その他の利益を得る目的で、人に交付し、又は提示し、若しくは電気通信回線を通じて提供したときも、前項と同様とする。

 第百九十九条第一項ただし書中「前条」を「第百九十八条」に改める。

 第二百三条に次の一項を加える。

  第百九十八条の二の規定は、第一項の規定により弁解の機会を与える場合についてこれを準用する。

 第二百四条第四項中「前条第二項の規定は、」を「第百九十八条の二の規定は第一項の規定により弁解の機会を与える場合について、前条第二項の規定は」に改め、「場合に」の下に「ついて」を加える。

 第二百五条第五項中「前条第二項」を「第百九十八条の二の規定は、第一項の規定により弁解の機会を与える場合について、前条第二項」に改め、「場合」の下に「(被疑者に弁護人があるときを除く。)」を加え、同項ただし書を削る。

 第二百八十一条の三中「与えた証拠」の下に「(第百九十八条の二第四項(第二百三条第五項、第二百四条第四項及び第二百五条第五項(第二百十一条及び第二百十六条においてこれらの規定を準用する場合を含む。)において準用する場合を含む。)の規定により閲覧され、若しくは聴取され、又は複製が作成された記録媒体を含む。次条及び第二百八十一条の五において同じ。)」を、「以下」の下に「同条までにおいて」を加え、同条に後段として次のように加える。

  当該記録媒体に係る複製等については、被告人も同様とする。

 第二百九十九条第一項中「取調」を「取調べ」に改め、「これ」の下に「(第百九十八条の二第一項(第二百三条第五項、第二百四条第四項及び第二百五条第五項(第二百十一条及び第二百十六条においてこれらの規定を準用する場合を含む。)において準用する場合を含む。第三百七条の二及び第三百十六条の十四第一号において同じ。)の規定により記録をした記録媒体にあつては、第百九十八条の二第二項(第二百三条第五項、第二百四条第四項及び第二百五条第五項(第二百十一条及び第二百十六条においてこれらの規定を準用する場合を含む。)において準用する場合を含む。第三百七条の二及び同号において同じ。)の規定により封印をした記録媒体以外の記録媒体)」を加え、同項ただし書中「但し」を「ただし」に改める。

 第三百七条の二を第三百七条の三とし、第三百七条の次に次の一条を加える。

第三百七条の二 第百九十八条の二第一項の規定により記録をした記録媒体の取調べについては、同条第二項の規定により封印をした記録媒体の封印を開封した上、これを再生するものとする。

 第三百十六条の十四第一号中「当該証拠書類又は証拠物」の下に「(第百九十八条の二第一項の規定により記録をした記録媒体にあつては、同条第二項の規定により封印をした記録媒体以外の記録媒体)」を加え、同条の次に次の一条を加える。

第三百十六条の十四の二 検察官は、その保管する当該被告事件に係る証拠の標目を記載した一覧表を作成し、前条の規定による開示をする際に、当該一覧表について、被告人又は弁護人に対し、これを閲覧する機会(弁護人に対しては、閲覧し、かつ、謄写する機会)を与える方法による開示をしなければならない。

  検察官は、前項の規定により証拠の標目を記載した一覧表の開示をするに当たり、当該一覧表に記載された者の氏名が明らかにされることにより、その者若しくはその者の親族の名誉若しくは社会生活の平穏が著しく害されるおそれがあると認めるとき、又はその者若しくはその者の親族の身体若しくは財産に害を加え若しくはこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認めるときは、弁護人に対し、その旨を告げ、その者の氏名が、被告人の防御に関し必要がある場合を除き、被告人その他の者に知られないようにすることを求めることができる。

  第二百八十一条の三前段、第二百八十一条の四及び第二百八十一条の五の規定は、検察官において第一項の規定により開示をした証拠の標目を記載した一覧表に係る複製等(複製その他当該一覧表の全部又は一部をそのまま記録した物及び書面をいう。)についてこれを準用する。

 第三百十六条の十五第一項中「前条」を「第三百十六条の十四」に改め、同条第二項第一号中「識別する」を「特定する」に改める。

 第三百十六条の二十第二項第一号中「識別する」を「特定する」に改める。

 第三百十六条の二十一第四項中「から第三百十六条の十六まで」を「、第三百十六条の十五及び第三百十六条の十六」に改める。

 第三百十六条の二十七第三項中「第一項の規定は」を「前項の規定は、」に、「、前項の規定は同条第三項の即時抗告が係属する抗告裁判所について、それぞれ」を「これを」に改め、同条第二項を削る。

 第三百二十二条第一項の次に次の一項を加える。

  前項本文に規定する書面であつて、その供述が被告人に不利益な事実の承認を内容とするものは、その供述が第百九十八条の二第一項又は第二項の規定に違反してなされた第百九十八条第一項の取調べにおいてされたものであるときは、前項本文の規定にかかわらず、これを証拠とすることができない。その供述がされた第二百三条第一項、第二百四条第一項又は第二百五条第一項(第二百十一条又は第二百十六条においてこれらの規定を準用する場合を含む。)の規定による弁解の機会において、第二百三条第五項、第二百四条第四項又は第二百五条第五項(第二百十一条又は第二百十六条においてこれらの規定を準用する場合を含む。)において準用する第百九十八条の二第一項又は第二項の規定の違反があつたときも、同様とする。

 第三百五十条の十第一項中「第三百七条」を「第三百七条の二」に改める。

   附 則

1 この法律は、公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第三百十六条の十四の次に一条を加える改正規定、第三百十六条の十五、第三百十六条の二十第二項第一号、第三百十六条の二十一第四項及び第三百十六条の二十七の改正規定並びに附則第三項の規定は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

2 公布の日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日までの間は、この法律による改正後の刑事訴訟法(以下「新法」という。)第百九十八条の二第一項中「前条第一項の取調べ」とあるのは「死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮に当たる事件についての前条第一項の取調べ(第百九十条に規定する司法警察職員として職務を行うべき者が行うものを除く。)」と、新法第二百三条第五項(新法第二百十一条及び第二百十六条において準用する場合を含む。)中「第一項の規定により弁解の機会を与える場合」とあるのは「死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮に当たる事件について第一項の規定により弁解の機会を与える場合(第百九十条に規定する司法警察職員として職務を行うべき者が行う場合を除く。)」と、新法第二百四条第四項及び第二百五条第五項(新法第二百十一条及び第二百十六条においてこれらの規定を準用する場合を含む。)中「第一項の規定により弁解の機会を与える場合について」とあるのは「死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮に当たる事件について第一項の規定により弁解の機会を与える場合について」と、財務省設置法(平成十一年法律第九十五号)第二十七条第二項中「刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の規定」とあるのは「刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の規定(同法第百九十八条の二の規定を除く。)」とする。

3 附則第一項ただし書に規定する改正規定の施行前に当該改正規定による改正前の刑事訴訟法(以下「旧法」という。)第三百十六条の二第一項の決定のあった公判前整理手続及び旧法第三百十六条の二十八第一項の決定のあった期日間整理手続については、なお従前の例による。


     理 由

 被疑者の供述及び取調べの状況の録画等を義務付ける制度を導入するとともに、公判前整理手続における検察官保管証拠の標目の一覧表の開示等を行う必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。


   この法律の施行に伴い必要となる経費

 この法律の施行に伴い必要となる経費は、約八十七億五千万円の見込みである。

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