第一六九回
参第五号
標準教科用拡大図書の発行等に関する法律案
(目的)
第一条 この法律は、標準教科用拡大図書の発行について定めるとともに、標準教科用拡大図書以外の教科用拡大図書等の作成のための電磁的記録の提供について必要な措置を講ずることにより、教科用拡大図書等の供給を推進し、もって視覚障害を有する児童及び生徒の教育の機会均等に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「検定教科用図書等」とは、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第三十四条第一項(同法第四十九条、第六十二条及び第七十条第一項において準用する場合を含む。)に規定する教科用図書をいう。
2 この法律において「教科用拡大図書」とは、政令で定める程度の視覚障害(以下単に「視覚障害」という。)を有する児童及び生徒の学習の用に供するため、文字、図形等を拡大して検定教科用図書等を複製した図書をいう。
3 この法律において「教科用点字図書」とは、視覚障害を有する児童及び生徒の学習の用に供するため、点字により検定教科用図書等を複製した図書をいう。
4 この法律において「指定種目」とは、検定教科用図書等の教科ごとに分類された単位のうち文部科学大臣が指定するものをいう。
5 この法律において「標準教科用拡大図書」とは、指定種目の検定教科用図書等に係る教科用拡大図書であって、文部科学省令で定める基準に適合するものをいう。
6 この法律において「発行」とは、図書を製造供給することをいう。
7 この法律において「電磁的記録」とは、電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式(第五条第三項及び第四項において「電磁的方式」という。)で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。
(標準教科用拡大図書の需要数の報告)
第三条 市町村の教育委員会並びに学校教育法第二条第二項に規定する国立学校及び私立学校の長は、次に掲げる標準教科用拡大図書の需要数を、文部科学省令で定めるところにより、都道府県の教育委員会に報告しなければならない。
一 小学校、中学校、高等学校及び中等教育学校(学校教育法第八十一条第二項及び第三項に規定する特別支援学級(次号において単に「特別支援学級」という。)を除く。)について採択された検定教科用図書等に係る標準教科用拡大図書であって、これらの学校に在学する視覚障害を有する児童及び生徒が当該検定教科用図書等に代えて使用するもの
二 特別支援学校及び特別支援学級について学校教育法附則第九条に規定する教科用図書として採択された標準教科用拡大図書
2 都道府県の教育委員会は、前項各号に掲げる標準教科用拡大図書の都道府県内の需要数を、文部科学省令で定めるところにより、文部科学大臣に報告しなければならない。
(標準教科用拡大図書の発行等)
第四条 指定種目の検定教科用図書等の発行を担当する者であって、教科書の発行に関する臨時措置法(昭和二十三年法律第百三十二号)第八条の発行の指示(第六条第一項において単に「発行の指示」という。)を承諾したもの(以下「発行者」という。)は、文部科学省令で定めるところにより、当該指定種目の検定教科用図書等に係る標準教科用拡大図書の発行の準備をしなければならない。
2 文部科学大臣は、前条第二項の規定による報告に基づき、発行者にその発行をすべき標準教科用拡大図書の種類及び部数を通知しなければならない。
3 発行者は、前項の規定による通知を受けたときは、文部科学省令で定めるところにより、標準教科用拡大図書の発行をしなければならない。
4 発行者は、標準教科用拡大図書を各学校に供給するまで、発行の責任を負うものとする。
5 文部科学大臣は、必要に応じ、発行者に対し報告を求め、又はその業務の履行の状況を調査することができる。
(標準教科用拡大図書以外の教科用拡大図書等の作成のための電磁的記録の提供)
第五条 発行者は、文部科学省令で定めるところにより、その発行をする指定種目の検定教科用図書等に係る電磁的記録を文部科学大臣に提供しなければならない。
2 文部科学大臣は、前項の規定により提供を受けた電磁的記録を、それを適切に利用して標準教科用拡大図書以外の教科用拡大図書又は教科用点字図書を作成すると認められる者に提供するものとする。
3 発行者は、第一項の規定により文部科学大臣に電磁的記録を提供することを目的とする場合には、その発行をする指定種目の検定教科用図書等に掲載された著作物を電磁的方式により複製することができる。
4 文部科学大臣は、第二項の規定により同項に規定する者に第一項の規定により提供を受けた電磁的記録を提供することを目的とする場合には、指定種目の検定教科用図書等に掲載された著作物を電磁的方式により複製し、及びその複製物を第二項に規定する者に提供することができる。
(発行の指示の停止等)
第六条 文部科学大臣は、発行者が第四条第一項若しくは第三項又は前条第一項の規定に違反していると認めるときは、当該発行者に対し、当該違反に係る指定種目の検定教科用図書等について、その後一年間、発行の指示を行わないことができる。
2 文部科学大臣は、前項の規定に基づく処分をしたときは、文部科学省令で定めるところにより、告示しなければならない。
3 前項の告示があったときは、当該告示に係る指定種目の検定教科用図書等の採択は、当該告示に係る第一項の規定に基づく処分を受けている発行者以外の者が発行をする検定教科用図書等のうちから行わなければならない。
(国の補助)
第七条 国は、発行者に対し、政令で定めるところにより、第四条第一項の規定による標準教科用拡大図書の発行の準備に要する費用を補助する。
(事務の区分)
第八条 第三条第二項の規定により都道府県が処理することとされている事務及び同条第一項の規定により市町村が処理することとされている事務は、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務とする。
(文部科学省令への委任)
第九条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のため必要な事項は、文部科学省令で定める。
附 則
1 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行し、平成二十一年度において使用される検定教科用図書等及び標準教科用拡大図書から適用する。
2 地方自治法の一部を次のように改正する。
別表第一に次のように加える。
標準教科用拡大図書の発行等に関する法律(平成二十年法律第▼▼▼号) |
第三条第二項の規定により都道府県が処理することとされている事務及び同条第一項の規定により市町村が処理することとされている事務 |
理 由
視覚障害を有する児童及び生徒の教育の機会均等に資するため、標準教科用拡大図書の発行について定めるとともに、標準教科用拡大図書以外の教科用拡大図書等の作成のための電磁的記録の提供について必要な措置を講ずることにより、教科用拡大図書等の供給を推進する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
この法律の施行に伴い必要となる経費
この法律の施行に伴い必要となる経費は、初年度約二億円の見込みである。