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第一七〇回

参第四号

   大企業者による中小企業者に対する取引上の地位を不当に利用する行為の防止に関する法律案

 (目的)

第一条 この法律は、大企業者と中小企業者との取引に関し、大企業者の責務を明らかにするとともに、大企業者による中小企業者に対する取引上の地位を不当に利用する行為を防止することによって、大企業者と中小企業者との取引を公正なものとするとともに、中小企業者の利益を保護し、もって国民経済の健全な発達に寄与することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「中小企業者」とは、次の各号のいずれかに該当する者(次項第二号に掲げる者を除く。)をいう。

 一 資本金の額又は出資の総額が三億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が三百人以下の会社及び個人であって、製造業、運輸業その他の業種(次号から第四号までに掲げる業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの

 二 資本金の額又は出資の総額が一億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が百人以下の会社及び個人であって、卸売業に属する事業を主たる事業として営むもの

 三 資本金の額又は出資の総額が五千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が百人以下の会社及び個人であって、サービス業に属する事業を主たる事業として営むもの

 四 資本金の額又は出資の総額が五千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が五十人以下の会社及び個人であって、小売業に属する事業を主たる事業として営むもの

2 この法律において「大企業者」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。

 一 前項各号のいずれかに該当する者以外の者(会社及び個人に限る。)であって事業を営むもの

 二 前項各号のいずれかに該当する会社であって、前号に掲げる者がその会社に対し、その総株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除き、会社法(平成十七年法律第八十六号)第八百七十九条第三項の規定により議決権を有するものとみなされる株主を含む。)又は総社員の議決権の二分の一以上に相当する議決権を単独で有する関係その他その事業活動を実質的に支配することが可能なものとして政令で定める関係を持っているもの

 (大企業者の責務)

第三条 大企業者は、中小企業者との取引に際しては、自己の取引上の地位を不当に利用して当該中小企業者の利益を害することのないようにしなければならない。

2 大企業者は、継続して取引する中小企業者又は資金を融通する中小企業者に対してその取引上の地位が優越していることを利用した不当な行為が行われやすいことにかんがみ、これらの中小企業者と取引するに当たっては、取引の公正の確保に特に留意しなければならない。

 (大企業者の遵守事項)

第四条 大企業者は、その営む事業に関して、次の各号に掲げる行為をしてはならない。

 一 自己と継続して取引する中小企業者(新たに継続して取引しようとする中小企業者を含む。以下この条において「継続的関係中小企業者」という。)からの当該取引に係る商品又は役務の供給について、当該商品又は役務と同種又は類似の商品又は役務に対し通常支払われる対価に比し著しく低い対価の額を不当に定めること。

 二 正当な理由がないのに、継続的関係中小企業者から当該取引に係る商品を受領した後、当該継続的関係中小企業者に当該商品を引き取らせること。

 三 正当な理由がないのに、継続的関係中小企業者に対して、当該取引に係る商品又は役務以外の自己の指定する商品を購入させ、又は役務を利用させること。

 四 前三号に掲げる行為のほか、自己の取引上の地位を不当に利用して中小企業者の利益を害する行為として公正取引委員会が指定する行為

2 大企業者は、その営む事業に関して中小企業者と取引を行う場合には、次の各号に掲げる行為をすることによって、当該中小企業者の利益を不当に害してはならない。

 一 継続的関係中小企業者に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。

 二 前号に掲げる行為のほか、自己の取引上の地位を利用して中小企業者の利益を害するおそれのある行為として公正取引委員会が指定する行為

3 大企業者は、第一項各号に掲げる行為をした場合又は前項各号に該当する事実があると認められる場合に当該中小企業者が公正取引委員会又は中小企業庁長官に対しその事実を知らせたことを理由として、取引の数量を減じ、取引を停止し、その他不利益な取扱いをしてはならない。

 (協議及び告示)

第五条 公正取引委員会は、前条第一項第四号又は第二項第二号の規定による指定をしようとするときは、関係行政機関の長に協議しなければならない。

2 前項に規定する指定は、告示によって行う。

 (中小企業庁長官の請求)

第六条 中小企業庁長官は、大企業者が第四条第一項各号に掲げる行為をしたかどうか、大企業者について同条第二項各号に該当する事実があるかどうか又は大企業者が同条第三項に違反する行為をしているかどうかを調査し、その事実があると認めるときは、公正取引委員会に対し、この法律の規定に従い適当な措置をとるべきことを求めることができる。

 (勧告)

第七条 公正取引委員会は、大企業者が第四条第一項各号に掲げる行為をしたと認めるときは、その大企業者に対し、速やかにその供給された商品又は役務の対価の額を引き上げるべきこと、その取引に係る商品を再び引き取るべきこと、その購入させた商品を引き取るべきことその他の必要な措置をとるべきことを勧告するものとする。

2 公正取引委員会は、大企業者について第四条第二項各号に該当する事実があると認めるときは、その大企業者に対し、速やかにその中小企業者の利益を保護するため必要な措置をとるべきことを勧告するものとする。

3 公正取引委員会は、大企業者が第四条第三項に違反する行為をしていると認めるときは、その大企業者に対し、速やかにその不利益な取扱いをやめるべきことその他必要な措置をとるべきことを勧告するものとする。

 (私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律との関係)

第八条 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)第二十条の規定は、公正取引委員会が前条第一項から第三項までの規定による勧告をした場合において、大企業者がその勧告に従ったときに限り、大企業者のその勧告に係る行為については、適用しない。

 (報告及び検査)

第九条 公正取引委員会は、大企業者と中小企業者との取引を公正なものとするため必要があると認めるときは、この法律の施行に必要な限度において、大企業者若しくは中小企業者に対しその取引に関する報告をさせ、又はその職員に大企業者若しくは中小企業者の事務所若しくは事業所に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。

2 中小企業庁長官は、大企業者と中小企業者との取引に関し中小企業者の利益を保護するため特に必要があると認めるときは、この法律の施行に必要な限度において、大企業者若しくは中小企業者に対しその取引に関する報告をさせ、又はその職員に大企業者若しくは中小企業者の事務所若しくは事業所に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。

3 大企業者又は中小企業者の営む事業を所管する主務大臣は、中小企業庁長官の第六条の規定による調査に協力するため特に必要があると認めるときは、所管事業を営む大企業者若しくは中小企業者に対し報告をさせ、又はその職員にこれらの者の事務所若しくは事業所に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。

4 前三項の規定により職員が立ち入るときは、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。

5 第一項から第三項までの規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

 (他の法律の適用)

第十条 第四条第一項各号に掲げる行為、同条第二項各号に該当する事実又は同条第三項に違反する行為について下請代金支払遅延等防止法(昭和三十一年法律第百二十号)又は建設業法(昭和二十四年法律第百号)の適用があるときは、当該各法律の定めるところによる。

 (体制の強化)

第十一条 国は、第四条第一項各号に掲げる行為、同条第二項各号に該当する事実又は同条第三項に違反する行為による中小企業者の利益の侵害の防止及びその救済を図るための体制の強化に努めるものとする。

 (罰則)

第十二条 第九条第一項から第三項までの規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、五十万円以下の罰金に処する。

2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して同項の刑を科する。

   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、公布の日から起算して三十日を経過した日から施行する。

 (見直し)

2 政府は、この法律の施行後五年以内に、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な見直しを行うものとする。


     理 由

 国民経済の健全な発達に寄与するため、大企業者と中小企業者との取引に関し、大企業者の責務を明らかにするとともに、大企業者による中小企業者に対する取引上の地位を不当に利用する行為を防止することによって、大企業者と中小企業者との取引を公正なものとするとともに、中小企業者の利益を保護する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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