第一七四回
衆第二四号
国際平和協力法案
目次
第一章 総則(第一条−第三条)
第二章 国際平和協力本部(第四条・第五条)
第三章 国際平和協力活動
第一節 通則(第六条−第九条)
第二節 国際平和協力活動の実施等(第十条−第十六条)
第三節 国際平和協力活動等従事者
第一款 職員の採用等(第十七条−第十九条)
第二款 研修等(第二十条−第二十二条)
第四節 国際平和協力活動における権限等
第一款 自衛官の権限等
第一目 安全確保活動における権限等(第二十三条−第三十条)
第二目 警護活動等における権限等(第三十一条)
第三目 船舶検査活動における権限等(第三十二条−第五十四条)
第四目 補則(第五十五条−第五十七条)
第二款 武器の使用(第五十八条−第六十一条)
第五節 物品の譲渡及び無償貸付け(第六十二条)
第四章 物資協力(第六十三条)
第五章 雑則(第六十四条・第六十五条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、国際連合を中心として国際の平和及び安全の維持に係る多様な取組が行われていることを踏まえ、国及び国民の安全を保ち我が国の繁栄を維持するためには国際の平和及び安全の確保が不可欠であるとの認識の下に、国際平和協力活動及び物資協力、これらの実施の手続その他の必要な事項を定め、国際の平和及び安全の維持に係る国際社会の取組に我が国として主体的かつ積極的に寄与することを目的とする。
(基本原則)
第二条 政府は、我が国としてこの法律に基づく国際平和協力活動及び物資協力を実施することが必要であると認める場合には、これらを適切かつ迅速に実施することにより、国際の平和及び安全の維持に係る国際社会の取組に主体的かつ積極的に寄与するものとする。
2 政府は、前項に規定する国際社会の取組が国際的協調の下に行われるよう必要な努力をするものとする。
3 国際平和協力活動は、第一号の決議若しくは要請に基づき、又は第二号の事態に際して実施するものとする。
一 第一項に規定する国際社会の取組の実施に関する次に掲げる決議又は要請
イ 国際連合の総会、安全保障理事会又は経済社会理事会の決議
ロ 次に掲げる国際機関の要請
(1)国際連合
(2)国際連合の総会によって設立された機関、国際連合の専門機関又は我が国が締結した条約その他の国際約束により設立された国際機関で政令で定めるもの
(3)国際平和協力活動に関する活動に係る実績又は専門的能力を有するものとして政令で定める国際機関
二 前号の決議又は要請がない場合における次に掲げる事態
イ 次に掲げる要請に応じ第一項に規定する国際社会の取組に寄与するため我が国が国際平和協力活動を実施することが必要であると認められる事態
(1)武力紛争の当事者(以下「紛争当事者」という。)の合意に基づく要請
(2)(1)に掲げるもののほか、国際連合加盟国その他の国の要請(当該国の領域における国際平和協力活動の実施に関するものに限る。)
ロ イに掲げるもののほか、第一項に規定する国際社会の取組に寄与するため我が国が国際平和協力活動を実施することが特に必要であると認められる事態
4 国際平和協力活動及び物資協力の実施は、国際紛争を解決する手段としての武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない。
5 国際平和協力活動の実施に際しては、我が国が締結した条約その他の国際約束及び確立された国際法規を遵守しなければならない。
6 国際平和協力活動については、我が国領域及び現に国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて当該行為が行われることがないと認められる次に掲げる地域において実施するものとする。ただし、国際平和協力本部の事務局の職員及び警察庁の職員が人道復興支援活動を実施する場合であって、小型武器を携行しないときは、この限りでない。
一 外国の領域
二 公海(海洋法に関する国際連合条約に規定する排他的経済水域を含む。以下同じ。)及びその上空
7 国際平和協力活動は、第一項に規定する国際社会の取組に係る活動を行う国際連合その他の国際機関及び国際連合加盟国その他の国(以下「国際連合等」という。)との適切な連携を図りつつ、我が国政府の指揮監督の下に実施するものとする。
8 政府は、国際平和協力活動及び物資協力の実施に当たっては、関係行政機関の専門的な知識経験を活用するとともに他の施策を適切に組み合わせ、国際の平和及び安全の維持に係る国以外の者が行う活動について留意しつつ、一体的、効果的かつ効率的にこれを行うものとする。
9 政府は、国際平和協力活動の実施に当たっては、その実施への需要、現地の治安の状況その他の当該活動を取り巻く情勢の推移を的確に把握し、その実施について必要な見直しを適切に行うものとする。
10 内閣総理大臣は、国際平和協力活動の実施に当たり、第七条第一項に規定する実施計画に基づいて、内閣を代表して行政各部を指揮監督する。
11 所管行政機関の長は、前条の目的を達成するため、国際平和協力活動の実施に関し、相互に密接な連携を確保するものとする。
12 関係行政機関の長は、前条の目的を達成するため、国際平和協力活動の実施に関し、実施行政機関の長に協力するものとする。
(定義等)
第三条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 国際平和協力活動 人道復興支援活動、停戦監視活動、安全確保活動、警護活動、船舶検査活動又は後方支援活動をいう。
二 人道復興支援活動 人道的精神に基づいて国際の平和及び安全の維持を危うくするおそれのある紛争その他の事態(以下「紛争等」という。)によって被害を受け若しくは受けるおそれがある住民その他の者(以下「被災民」という。)を救援し若しくは紛争等によって生じた被害を復旧するため、又は紛争等によって被害を受けた国の復興を支援するために我が国が実施する活動をいい、当該活動として実施される業務は、次に掲げるもの(これらの業務にそれぞれ附帯する業務を含む。)とする。
イ 医療(防疫上の措置を含む。)
ロ 被災民の捜索若しくは救出若しくは帰還の援助、被災民に対する食糧、衣料、医薬品その他の生活関連物資の配布又は被災民の収容施設の設置
ハ 被災民の生活若しくは紛争等によって被害を受けた国の復興を支援する上で必要な施設若しくは設備の復旧若しくは整備又は紛争等によって汚染その他の被害を受けた自然環境の復旧
ニ 武装解除(武器の収集については、当該武装解除の対象となる組織が同意している場合に限る。)又は武装解除がされた者に対する就業若しくは就学の支援その他の社会復帰のための措置
ホ 放棄された地雷又は不発弾による被害を防止するための措置
ヘ 議会の議員の選挙、住民投票その他これらに類する選挙若しくは投票の公正な執行の監視又はこれらの管理
ト 警察行政機関の職員に対する教育訓練、警察行政事務に関する助言若しくは指導又は警察行政事務の監視
チ トに掲げるもののほか、軍隊その他これに類する組織による次に掲げる活動に関する助言、指導又は教育訓練
(1)職員の採用、育成その他の組織及び運営に関する制度の企画及び立案
(2)派遣先国に対する外部からの武力攻撃に際しての国民の保護のための活動
(3)公共の秩序の維持のための活動
(4)天災地変その他の災害に際しての人命又は財産の保護のための活動
(5)民生の安定のための活動
リ ト及びチに掲げるもののほか、行政事務に関する助言、指導又は教育訓練
ヌ イからリまでに掲げるもののほか、輸送、保管(備蓄を含む。)、通信、建設、修理若しくは整備、補給又は消毒
ル イからヌまでに掲げる業務に類するものとして政令で定める業務
三 停戦監視活動 武力紛争の停止及びこれを維持するとの紛争当事者の間の合意の遵守の確保のために我が国が実施する活動をいい、当該活動として実施される業務は、次に掲げるもの(これらの業務にそれぞれ附帯する業務を含む。)とする。
イ 武力紛争の停止の遵守状況の監視又は紛争当事者の間で合意された軍隊その他これに類する組織の再配置若しくは撤退若しくは武装解除の履行の監視
ロ 緩衝地帯その他の武力紛争の発生の防止のために設けられた地域における駐留及び巡回
ハ 車両その他の運搬手段又は通行人による武器(武器の部品を含む。ニにおいて同じ。)の搬入又は搬出の有無の検査又は確認
ニ 放棄された武器の収集、保管又は処分
ホ 紛争当事者が行う停戦線その他これに類する境界線の設定の援助
ヘ 紛争当事者の間の捕虜の交換の援助
ト イからヘまでに掲げる業務に類するものとして政令で定める業務
四 安全確保活動 前条第一項に規定する国際社会の取組が円滑に実施されるよう、当該国際社会の取組が実施されている地域において暴力を用いて人の生命若しくは身体に危害を加え又は建造物その他の物を破壊する行為を防止するとともに、人の生命又は身体に危険を及ぼすおそれのある天災、事変等危険な事態において危害を防止することにより当該地域における安全を確保するために我が国が実施する活動をいい、当該活動の実施は、次に掲げる態様によるものとする。
イ 駐留及び巡回を行うこと。
ロ 当該行為がまさに行われようとするのを認めた場合に、その予防のために必要な措置を実施すること。
ハ 当該行為が現に行われている場合に、その行為を制止すること。
ニ 当該行為が既に行われたと認められる場合に、その再発を防止するために必要な措置を実施すること。
ホ イからニまでに掲げるもののほか、当該行為を防止するために必要な措置を実施すること。
ヘ 人の生命又は身体に危険を及ぼすおそれのある天災、事変、工作物の損壊、交通事故、危険物の爆発等危険な事態がある場合に、危害防止のために必要な措置を実施すること。
五 警護活動 国際連合事務総長若しくは前条第一項に規定する国際社会の取組が実施されている地域において国際連合事務総長の権限を行使する者若しくはこれらに準ずる者が行う要請に基づく人、施設若しくは物品(国際連合等が実施する同項に規定する国際社会の取組に係る活動の円滑な実施を確保するために我が国が必要と認めるものに限る。)の警護又は国際平和協力活動の円滑な実施を確保するために必要な政令で定める人、施設若しくは物品の警護を行うために我が国が実施する活動をいい、当該活動の実施は、次に掲げる態様によるものとする。
イ 当該人、施設又は物品(以下「警護対象」という。)に対する侵害行為がまさに行われようとするのを認めた場合に、その予防のために必要な措置を実施すること。
ロ 当該侵害行為が現に行われている場合に、その行為を制止すること。
ハ 当該侵害行為が既に行われたと認められる場合に、その再発を防止するために必要な措置を実施すること。
ニ イからハまでに掲げるもののほか、当該侵害行為を防止するために必要な措置を実施すること。
ホ 警護対象に危険を及ぼすおそれのある天災、事変、工作物の損壊、交通事故、危険物の爆発等危険な事態がある場合に、危害防止のために必要な措置を実施すること。
六 船舶検査活動 前条第一項に規定する国際社会の取組として実施される貿易その他の経済活動又は国際テロリストその他の人若しくは大量破壊兵器その他の物の移動等に係る規制措置であって我が国が参加するものの厳格な実施を確保する目的で、当該厳格な実施を確保するために必要な措置を執ることを要請する国際連合安全保障理事会の決議に基づいて、又は旗国(海洋法に関する国際連合条約第九十一条に規定するその旗を掲げる権利を有する国をいう。以下同じ。)の同意を得て、船舶(軍艦及び各国政府が所有し又は運航する船舶であって非商業的目的のみに使用されるもの(以下「軍艦等」という。)並びに軍艦等に警護されているものを除く。以下同じ。)の積荷並びに乗組員及び旅客(以下「乗組員等」という。)を検査し、確認するために我が国が実施する活動をいい、当該活動の実施は、次に掲げる態様によるものとする。
イ 船舶の航行状況を監視すること。
ロ 無線その他の通信手段を用いて、船舶の名称、船籍港、目的港又は目的地、積荷その他の必要な事項を照会すること。
ハ 当該規制措置の対象となる人又は物のうち、移動が制限されているもの(政令で指定するものに限る。以下「移動制限対象」という。)又は権限のある機関への引渡しが認められているもの(政令で指定するものに限る。以下「引渡対象」という。)を輸送しているかどうかを確かめるため、船舶の進行を停止させて立入検査をし、又は乗組員等に対して必要な質問をすること(以下「停船検査」という。)。
ニ 停船検査を行った船舶の船長又は船長に代わって船舶を指揮する者(以下「船長等」という。)に対し、我が国の港若しくは外国の港へ回航すべき旨又は航路若しくは目的港若しくは目的地を変更すべき旨を命じ、当該命令の履行を確保するために必要な監督をすること(以下「回航等の措置」という。)。
ホ 引渡対象の一時的な拘束又は保管その他船舶検査活動の目的を達するため必要な措置を行うこと。
七 後方支援活動 国際連合等が実施する前条第一項に規定する国際社会の取組に係る活動を支援するために我が国が実施する活動をいい、当該活動として実施される業務は、次に掲げるもの(これらの業務にそれぞれ附帯する業務を含む。)とする。
イ 医療、輸送、保管(備蓄を含む。)、通信、建設、修理若しくは整備、補給、空港若しくは港湾業務、基地業務、宿泊又は消毒
ロ 外国の軍隊その他これに類する組織の活動に際して行われた前条第六項に規定する行為によって遭難した戦闘参加者の捜索又は救助(救助した者の輸送を含む。)
ハ イ及びロに掲げる業務に類するものとして政令で定める業務
八 物資協力 前条第一項に規定する国際社会の取組に係る活動を実施する国際連合等に対し国際平和協力本部に属する物品を無償又は時価よりも低い対価で譲渡すること(第六十二条の規定により行うものを除く。)をいう。
九 派遣先国 国際平和協力活動が行われる外国をいう。
十 実施行政機関 国際平和協力本部、警察庁、海上保安庁及び防衛省をいう。
十一 所管行政機関 実施行政機関及び外務省をいう。
十二 関係行政機関 次に掲げる機関で政令で定めるものをいう。
イ 内閣府並びに内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四十九条第一項及び第二項に規定する機関並びに国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項に規定する機関
ロ 内閣府設置法第四十条及び第五十六条並びに国家行政組織法第八条の三に規定する特別の機関
第二章 国際平和協力本部
(設置及び所掌事務)
第四条 内閣府に、国際平和協力本部(以下「本部」という。)を置く。
2 本部は、次に掲げる事務をつかさどる。
一 国際平和協力活動の実施に関する計画(以下「実施計画」という。)の案の作成その他国際平和協力活動の企画及び立案並びに調整に関すること。
二 国際平和協力活動の実施に関する所管行政機関の連携の確保に関すること。
三 人道復興支援活動及び後方支援活動の実施に関すること(他の実施行政機関の所掌に属するものを除く。)。
四 前三号の事務に関する派遣先国における国際連合の職員その他の者との連絡に関すること。
五 国際平和協力活動の実施のための関係行政機関への要請及び国以外の者に対する協力の要請に関すること。
六 物資協力に関すること。
七 この法律に基づく国際平和協力活動、物資協力等に関する調査及び知識の普及に関すること。
八 前各号に掲げるもののほか、法令の規定により本部に属させられた事務
(組織)
第五条 本部の長は、国際平和協力本部長(以下「本部長」という。)とし、内閣総理大臣をもって充てる。
2 本部長は、本部の事務を総括し、所部の職員を指揮監督する。
3 本部に、国際平和協力副本部長(以下この条において「副本部長」という。)を置き、内閣官房長官をもって充てる。
4 副本部長は、本部長の職務を助ける。
5 本部に、国際平和協力本部員(以下この条において「本部員」という。)を置き、次に掲げる者をもって充てる。
一 所管行政機関(本部を除く。)の長
二 前号に掲げる者のほか、内閣法(昭和二十二年法律第五号)第九条の規定によりあらかじめ指定された国務大臣、関係行政機関の長及び内閣府設置法第九条第一項に規定する特命担当大臣のうちから、内閣総理大臣が任命する者
6 本部員は、本部長に対し、本部の事務に関し意見を述べることができる。
7 本部に、その事務を処理させるため、事務局を置く。
8 事務局に、事務局長その他の職員(以下「本部職員」という。)を置く。
9 事務局長は、本部長の命を受け、局務を掌理する。
10 前各項に定めるもののほか、本部の組織に関し必要な事項は、政令で定める。
第三章 国際平和協力活動
第一節 通則
(受入国等の同意)
第六条 外国の領域において実施する国際平和協力活動は、当該活動が実施される地域の属する国又は国際連合の総会若しくは安全保障理事会の決議で政令で定めるものに従って当該国において施政を行う機関の同意がなければ実施することができない。
(実施計画)
第七条 内閣総理大臣は、国際平和協力活動を実施することが必要であると認めるときは、当該国際平和協力活動を実施すること及び実施計画の案につき閣議の決定を求めなければならない。
2 実施計画に定める事項は、次のとおりとする。
一 国際平和協力活動に関する基本方針
二 国際平和協力活動の実施に関する次に掲げる事項
イ 当該国際平和協力活動に係る基本的事項
ロ 当該国際平和協力活動の種類(人道復興支援活動、停戦監視活動又は後方支援活動を実施する場合には業務の種類を含む。以下この条において同じ。)及び内容
ハ 当該国際平和協力活動を実施する区域の範囲及び当該区域の指定に関する事項
ニ 当該国際平和協力活動を行うべき期間
ホ 本部職員が当該国際平和協力活動を実施する場合における次に掲げる事項
(1)本部職員が実施する当該国際平和協力活動の種類及び内容
(2)当該国際平和協力活動を小型武器を携行する本部職員が我が国以外の領域(公海及びその上空を含む。以下同じ。)で実施する場合には、当該本部職員の規模及び構成並びに装備並びに派遣期間
ヘ 警察庁の職員が当該国際平和協力活動を実施する場合における次に掲げる事項
(1)警察庁の職員が実施する当該国際平和協力活動の種類及び内容
(2)当該国際平和協力活動を小型武器を携行する警察庁の職員が我が国以外の領域で実施する場合には、当該職員の規模及び構成並びに装備並びに派遣期間
ト 海上保安庁の船舶又は航空機を用いて当該国際平和協力活動を実施する場合における次に掲げる事項
(1)海上保安庁の船舶又は航空機を用いて実施する当該国際平和協力活動の種類及び内容
(2)当該国際平和協力活動を海上保安庁の職員が我が国以外の領域で実施する場合には、当該職員の規模及び構成並びに装備並びに派遣期間
チ 自衛隊の部隊等(自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第八条に規定する部隊等をいう。以下同じ。)又は個別派遣自衛隊員(国際平和協力活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等に所属する自衛隊員(自衛隊法第二条第五項に規定する隊員をいう。以下同じ。)以外の自衛隊員をいう。以下同じ。)が当該国際平和協力活動を実施する場合における次に掲げる事項
(1)自衛隊の部隊等又は個別派遣自衛隊員が実施する当該国際平和協力活動の種類及び内容
(2)当該国際平和協力活動(船舶検査活動を除く。)を自衛隊の部隊等又は個別派遣自衛隊員が我が国以外の領域で実施する場合には、当該自衛隊の部隊等又は当該個別派遣自衛隊員の規模及び構成並びに装備並びに派遣期間
(3)当該国際平和協力活動として自衛隊の部隊等が船舶検査活動を実施する場合には、当該自衛隊の部隊等の規模及び構成並びに装備並びに実施期間
リ 当該国際平和協力活動として国際連合等に無償又は時価よりも低い対価で譲渡するために関係行政機関がその事務又は事業の用に供し又は供していた物品以外の物品を調達する場合には、その実施に係る重要事項
ヌ 当該国際平和協力活動に従事する者の安全の確保に関する事項
ル 当該国際平和協力活動の実施に関する関係行政機関の協力に関する重要事項
ヲ その他当該国際平和協力活動の実施に関する重要事項
3 外務大臣は、国際平和協力活動を実施することが必要であると認めるときは、内閣総理大臣に対し、第一項の閣議の決定を求めるよう要請することができる。
4 第一項及び前項の規定は、実施計画の変更(国際平和協力活動の終了に係る変更を含む。)について準用する。
5 国際平和協力活動を我が国以外の領域で実施する場合には、当該活動が実施される地域の属する国(前条に規定する決議に従って当該国において施政を行う機関を含む。)及び第二条第一項に規定する国際社会の取組に係る活動を実施する国際連合等と協議して、実施する区域の範囲を定めるものとする。
(国会への報告)
第八条 内閣総理大臣は、次に掲げる事項を、遅滞なく、国会に報告しなければならない。
一 実施計画の決定又は変更があったときは、当該決定又は変更に係る実施計画の内容
二 実施計画に定める国際平和協力活動が終了したときは、当該国際平和協力活動の実施の結果
三 実施計画に定める国際平和協力活動を行う期間に係る変更があったときは、当該変更前の期間における当該国際平和協力活動の実施の状況
(国会の承認等)
第九条 内閣総理大臣は、自衛隊の部隊等が実施する国際平和協力活動(国際連合の統括の下に行われる活動のために自衛隊の部隊等が実施する人道復興支援活動及び後方支援活動を除く。)については、当該国際平和協力活動の実施前に、当該国際平和協力活動を実施することにつき国会の承認を得なければならない。ただし、国会が閉会中の場合又は衆議院が解散されている場合には、当該国際平和協力活動の実施後最初に召集される国会において、遅滞なく、その承認を求めなければならない。
2 政府は、前項ただし書の場合において不承認の議決があったとき又は国会が同項の国際平和協力活動を終了すべきことを議決したときは、遅滞なく、当該国際平和協力活動を終了させなければならない。
3 第一項の国際平和協力活動のうち、第二条第三項第一号の決議又は要請に基づかないで実施するものについては、第一項の規定による国会の承認を得た日から一年を経過する日を超えて引き続きこれを行おうとするときは、内閣総理大臣は、当該日の三十日前の日から当該日までの間に、当該活動を引き続き行うことにつき国会に付議して、その承認を求めなければならない。ただし、国会が閉会中の場合又は衆議院が解散されている場合には、その後最初に召集される国会においてその承認を求めなければならない。
4 政府は、前項の場合において不承認の議決があったときは、遅滞なく、同項の国際平和協力活動を終了させなければならない。
5 前二項の規定は、国会の承認を得て第三項の国際平和協力活動を継続した後、更に一年を超えて当該活動を引き続き行おうとする場合について準用する。
第二節 国際平和協力活動の実施等
(本部による国際平和協力活動の実施)
第十条 本部長は、実施計画に従い、国際平和協力活動について実施要領を定め、本部職員にその実施を命ずるものとする。
2 本部長は、前項の実施要領において、同項の規定により国際平和協力活動を実施する区域(以下この条において「実施区域」という。)を指定するものとする。
3 本部長は、第一項の規定による国際平和協力活動の実施に当たり本部職員の安全の確保が困難となった場合又は実施区域の全部若しくは一部がこの法律若しくは実施計画に定められた要件を満たさないものとなった場合には、速やかに、実施区域の指定を変更し、又はそこで実施されている活動の中断を命じなければならない。
4 第一項の規定により国際平和協力活動の実施を命ぜられた本部職員は、自己の生命又は身体に危険が及ぶ可能性があり、安全の確保のため必要であると判断される場合には、当該活動の実施を一時休止し又は避難するなどして当該危険を回避しつつ、所要の措置を講ずるものとする。
5 第一項の規定により行う国際平和協力活動は、人道復興支援活動又は後方支援活動とし、人道復興支援活動として行う業務は第三条第二号イからヌまで(同号チを除く。)に掲げる業務又はこれらの業務に類するものとして同号ルの政令で定める業務とし、後方支援活動として行う業務は第三条第七号イに掲げる業務(空港及び港湾業務並びに基地業務を除く。)又は同号イに掲げる業務に類するものとして同号ハの政令で定める業務とする。
(警察庁による国際平和協力活動の実施)
第十一条 警察庁長官は、実施計画に従い、国際平和協力活動について実施要領を定め、警察庁の職員にその実施を命ずるものとする。
2 前条第二項から第四項までの規定は、前項の規定による国際平和協力活動について準用する。この場合において、同条第二項及び第三項中「本部長」とあるのは「警察庁長官」と、同条第二項中「前項」とあり、並びに同条第三項及び第四項中「第一項」とあるのは「第十一条第一項」と、同条第三項及び第四項中「本部職員」とあるのは「警察庁の職員」と読み替えるものとする。
3 第一項の規定により行う国際平和協力活動は、人道復興支援活動とし、人道復興支援活動として行う業務は、第三条第二号トに掲げる業務又は当該業務に類するものとして同号ルの政令で定める業務とする。
(海上保安庁による国際平和協力活動の実施)
第十二条 海上保安庁長官は、実施計画に従い、国際平和協力活動について実施要領を定め、海上保安庁の船舶又は航空機の乗組員たる海上保安庁の職員にその実施を命ずるものとする。
2 第十条第二項から第四項までの規定は、前項の規定による国際平和協力活動について準用する。この場合において、同条第二項及び第三項中「本部長」とあるのは「海上保安庁長官」と、同条第二項中「前項」とあり、並びに同条第三項及び第四項中「第一項」とあるのは「第十二条第一項」と、同条第三項中「本部職員」とあるのは「海上保安庁の船舶又は航空機の乗組員たる海上保安庁の職員」と、同条第四項中「本部職員」とあるのは「海上保安庁の船舶又は航空機の乗組員たる海上保安庁の職員のうち海上保安庁長官が指定する者」と読み替えるものとする。
3 第一項の規定により行う国際平和協力活動は、人道復興支援活動とし、人道復興支援活動として行う業務は、第三条第二号ロ、ハ、ト、リ若しくはヌに掲げる業務又はこれらの業務に類するものとして同号ルの政令で定める業務とする。
(自衛隊による国際平和協力活動の実施)
第十三条 防衛大臣は、実施計画に従い、国際平和協力活動について実施要領を定め、これについて内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊等又は個別派遣自衛隊員にその実施を命ずるものとする。
2 防衛大臣は、前項の実施要領において、同項の規定により国際平和協力活動を実施する区域(以下この条、第四十四条、第五十一条及び第六十一条において「実施区域」という。)を指定するものとする。
3 防衛大臣は、第一項の規定により国際平和協力活動のうち船舶検査活動の実施を命ずるときは、同項の実施要領において、停船検査を実施する区域(以下「停船検査区域」という。)を指定するものとする。
4 防衛大臣は、第一項の規定による個別派遣自衛隊員による国際平和協力活動の実施に当たり個別派遣自衛隊員の安全の確保が困難となった場合又は実施区域の全部若しくは一部がこの法律若しくは実施計画に定められた要件を満たさないものとなった場合には、速やかに、実施区域の指定を変更し、又はそこで実施されている活動の中断を命じなければならない。
5 第一項の規定により国際平和協力活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の長又はその指定する者は、当該部隊等に所属する自衛隊員の生命又は身体に危険が及ぶおそれがあり、業務の遂行が困難と判断される場合には、当該活動の実施を一時休止し又は避難するなどして当該危険を回避するとともに、その状況を防衛大臣に報告し、前項の規定による命令その他の指示を待つものとする。
6 第一項の規定により国際平和協力活動の実施を命ぜられた個別派遣自衛隊員は、自己の生命又は身体に危険が及ぶ可能性があり、安全の確保のため必要であると判断される場合には、当該活動の実施を一時休止し又は避難するなどして当該危険を回避しつつ、所要の措置を講ずるものとする。
7 第一項の規定は、同項の実施要領の変更(第四項の規定により実施区域を縮小する変更を除く。)について準用する。
8 第一項の規定により自衛隊の部隊等が行う国際平和協力活動は、人道復興支援活動、停戦監視活動、安全確保活動、警護活動、船舶検査活動又は後方支援活動とし、人道復興支援活動として行う業務は、第三条第二号イからホまでに掲げる業務、同号チからヌまでに掲げる業務又はこれらの業務に類するものとして同号ルの政令で定める業務とする。
9 第一項の規定により個別派遣自衛隊員が行う国際平和協力活動は、人道復興支援活動、停戦監視活動又は後方支援活動とし、人道復興支援活動として行う業務は、第三条第二号イからホまでに掲げる業務、同号チからヌまでに掲げる業務又はこれらの業務に類するものとして同号ルの政令で定める業務とする。
10 第三条第七号ロの業務を実施する場合において、戦闘参加者以外の遭難者が在るときは、これを救助するものとする。
(活動環境整備措置)
第十四条 実施行政機関は、外国の領域において国際平和協力活動を実施するときは、当該活動が的確かつ円滑に実施できる環境を整備するため、当該活動の一環として、当該活動を実施する地域の住民との良好な関係を構築し、及び維持するために必要な措置を講ずるものとする。
(外務大臣の措置等)
第十五条 外務大臣は、実施計画に従い、国際平和協力活動の的確かつ円滑な実施に資するために必要な措置を講ずるものとする。
2 実施行政機関の長は、国際平和協力活動の的確かつ円滑な実施のため必要と認めるときは、外務大臣に対し、前項に規定する措置の実施に関し必要な要請をすることができる。
3 外務大臣は、外交政策の遂行上必要であると認めるときは、実施行政機関の長に対し、国際平和協力活動の実施について協議を求めることができる。
4 外務大臣の指定する在外公館長は、外務大臣の命を受け、第一項に規定する措置を講ずるほか、国際平和協力活動の実施のために必要な協力を行うものとする。
5 第十条第一項、第十一条第一項、第十二条第一項又は第十三条第一項の規定により、国際平和協力活動の実施を命ぜられた本部職員、警察庁の職員、海上保安庁の船舶又は航空機の乗組員たる海上保安庁の職員、自衛隊の部隊等及び個別派遣自衛隊員は、外国の領域において国際平和協力活動を実施するに当たり、外務大臣の指定する在外公館と密接に連絡を保つものとする。
(関係行政機関の協力)
第十六条 実施行政機関の長は、国際平和協力活動を実施するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、その所管に属する物品の管理換えその他の協力を要請することができる。
2 関係行政機関の長は、前項の規定による要請があったときは、その所掌事務に支障を生じない限度において、同項の協力を行うものとする。
第三節 国際平和協力活動等従事者
第一款 職員の採用等
(職員の採用)
第十七条 本部長は、第十条第五項に規定する国際平和協力活動に従事させるため、当該活動に従事することを志望する者のうちから、選考により、任期を定めて本部職員を採用することができる。
2 警察庁長官は、第十一条第三項に規定する国際平和協力活動に従事させるため、当該活動に従事することを志望する者のうちから、選考により、任期を定めて警察庁の職員を採用することができる。
3 本部長及び警察庁長官は、前二項の規定による採用に当たり、関係行政機関若しくは地方公共団体又は民間の団体の協力を得て、広く人材の確保に努めるものとする。
(関係行政機関の職員の派遣)
第十八条 本部長は、関係行政機関の長に対し、実施計画に従い、国際平和協力活動であって本部職員が行うものを実施するため必要な技術、能力等を有する職員(国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第二条第三項各号(第十六号を除く。)に掲げる者を除く。)を本部に派遣するよう要請することができる。
2 関係行政機関の長は、前項の規定による要請があったときは、その所掌事務に支障を生じない限度において、同項の職員に該当する職員を期間を定めて本部に派遣するものとする。
3 前項の規定により派遣された職員のうち自衛隊員以外の者は、従前の官職を保有したまま、同項の期間を任期として本部職員に任用されるものとする。
4 第二項の規定により派遣された自衛隊員は、同項の期間を任期として本部職員に任用されるものとし、本部職員の身分及び自衛隊員の身分を併せ有することとなるものとする。
5 第三項の規定により従前の官職を保有したまま本部職員に任用される者又は前項の規定により本部職員の身分及び自衛隊員の身分を併せ有する者は、本部長の指揮監督の下に国際平和協力活動に従事する。
6 本部長は、第二項の規定に基づき防衛大臣により派遣された本部職員(以下この条において「自衛隊派遣本部職員」という。)についてその派遣の必要がなくなった場合その他政令で定める場合には、当該自衛隊派遣本部職員の本部職員としての身分を失わせるものとする。この場合には、当該自衛隊員は、自衛隊に復帰するものとする。
7 自衛隊派遣本部職員は、自衛隊員の身分を失ったときは、同時に本部職員の身分を失うものとする。
8 第四項の規定により本部職員の身分及び自衛隊員の身分を併せ有することとなる者に対する給与等(第二十一条に規定する国際平和協力活動等手当以外の給与、災害補償及び退職手当並びに共済組合の制度をいう。)に関する法令の適用については、その者は、自衛隊のみに所属するものとみなす。
9 第四項から前項までに定めるもののほか、同項に規定する者の身分取扱いに関し必要な事項は、政令で定める。
(国家公務員法の適用除外)
第十九条 第十七条第一項の規定により採用される本部職員又は同条第二項の規定により採用される警察庁の職員については、それぞれ本部職員又は警察庁の職員になる前に、国家公務員法第百三条第一項に規定する営利企業(以下この条において「営利企業」という。)を営むことを目的とする団体の役員、顧問若しくは評議員(以下この条において「役員等」という。)の職に就き、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員等の職に就き、若しくは事業に従事し、若しくは事務を行っていた場合においても、同項及び同法第百四条の規定は、適用しない。
第二款 研修等
(研修)
第二十条 第十条第一項、第十一条第一項、第十二条第一項又は第十三条第一項の規定により、国際平和協力活動の実施を命ぜられた本部職員、警察庁の職員、海上保安庁の船舶又は航空機の乗組員たる海上保安庁の職員、自衛隊の部隊等に所属する自衛隊員及び個別派遣自衛隊員は、それぞれ実施行政機関の長が定めるところにより行われる国際平和協力活動の適切かつ効果的な実施のための研修を受けなければならない。
2 実施行政機関の長は、前項に定めるもののほか、国際平和協力活動に係る人材の育成に資するため、それぞれが実施する国際平和協力活動に従事することが見込まれる者に対し、国際平和協力活動に関する研修の実施に努めるものとする。
(国際平和協力活動等手当)
第二十一条 次に掲げる活動等に従事する者(以下「国際平和協力活動等従事者」という。)には、当該活動等が行われる地域の勤務環境及び当該活動等の特質にかんがみ、国際平和協力活動等手当を支給することができる。
一 我が国以外の領域において実施される人道復興支援活動、停戦監視活動、安全確保活動、警護活動及び後方支援活動
二 船舶検査活動
三 第七条第二項第二号ハに規定する区域の範囲又はその近傍(我が国領域を除く。)において実施される第四条第二項第一号、第二号又は第四号に掲げる事務
四 第七条第二項第二号ハに規定する区域の範囲又はその近傍(我が国領域を除く。)において実施される第十五条第一項に規定する措置
2 前項の国際平和協力活動等手当に関し必要な事項は、政令で定める。
3 内閣総理大臣は、前項の政令の制定又は改廃に際しては、人事院の意見を聴かなければならない。
(記章等)
第二十二条 国際平和協力活動、第四条第二項第一号、第二号又は第四号に掲げる事務及び第十五条第一項に規定する措置に従事する者の記章に関し必要な事項は、政令で定める。
2 国際平和協力活動及び第七条第二項第二号ハに規定する区域の範囲又はその近傍(我が国領域を除く。)において実施される第四条第二項第一号、第二号又は第四号に掲げる事務に従事する本部職員には、その職務遂行上必要な被服を支給し、又は貸与することができる。
第四節 国際平和協力活動における権限等
第一款 自衛官の権限等
第一目 安全確保活動における権限等
(質問)
第二十三条 第十三条第一項の規定により安全確保活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官であって、第三条第四号イからヘまでに掲げる態様による活動の実施を命ぜられたもの(以下「安全確保担当自衛官」という。)は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して同号に規定する行為を行い、若しくは行おうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた当該行為について、若しくは当該行為が行われようとしていることについて知っていると認められる者を停止させて質問することができる。
2 その場で前項の質問をすることが本人に対して不利であり、又は交通の妨害になると認められる場合においては、質問するため、その者に付近の他の場所に同行することを求めることができる。
(凶器の一時的な保管等)
第二十四条 安全確保担当自衛官は、凶器を携帯し、又は運搬していると疑うに足りる相当な理由のある者が、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して第三条第四号に規定する行為を行うおそれがあると認められ、かつ、権限のある機関が必要な措置を実施することが困難であると認めるときは、凶器であると疑われる物を提示させ、又はそれが隠されていると疑われる物を開示させて調べることができる。
2 安全確保担当自衛官は、凶器を携帯し、又は運搬している者が、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して第三条第四号に規定する行為を行うおそれがあると認められ、かつ、権限のある機関が必要な措置を実施することが困難であると認める場合において、その危害を防止するため必要があるときは、これを提出させて一時的に保管することができる。
3 安全確保担当自衛官は、前項の規定による保管を行った場合は、速やかに、その保管に係る凶器を権限のある機関に引き渡さなければならない。
4 前項に規定するもののほか、第二項の保管に関し必要な事項は、防衛大臣が定める。
(第三条第四号に規定する行為等の予防及び制止)
第二十五条 安全確保担当自衛官は、第三条第四号に規定する行為がまさに行われようとするのを認め、かつ、権限のある機関が必要な措置を実施することが困難であると認めるときは、その予防のため関係者に必要な警告を発し、また、もしその行為により人の生命若しくは身体に危険が及び、又は建造物その他の物に重大な損害が及ぶおそれがあって、急を要する場合においては、その行為を制止することができる。
2 安全確保担当自衛官は、当該自衛官の活動の実施に対して暴行又は脅迫による妨害が現に行われている場合であって、権限のある機関が必要な措置を実施することが困難であると認めるときは、その行為を制止することができる。
(一時的な拘束)
第二十六条 安全確保担当自衛官は、第三条第四号に規定する行為の制止又は再発の防止のため、権限のある機関が必要な措置を実施することが困難であると認めるときは、現に当該行為を行い又は現に当該行為を行い終わった者(以下この条及び第二十九条において「行為者」という。)を一時的に拘束することができる。
2 次の各号のいずれかに該当する者が、当該行為を行い終わってから間がないと明らかに認められるときは、これを行為者とみなす。
一 行為者として追呼されているとき。
二 明らかに当該行為の用に供したと思われる凶器その他の物を所持しているとき。
三 身体又は被服に当該行為の顕著な証跡があるとき。
四 誰何3 安全確保担当自衛官は、第一項の規定により行為者を拘束したときは、速やかに、当該行為者を権限のある機関に引き渡さなければならない。
(一時的な拘束の場合の凶器の検査)
第二十七条 安全確保担当自衛官は、前条第一項の規定により拘束した者については、その所持品又は身体について凶器を所持しているかどうかを調べることができる。
2 安全確保担当自衛官は、前項の規定による検査の結果、凶器を発見したときは、前条第三項の規定による引渡しの時までこれを取り上げることができる。
(避難等の措置)
第二十八条 安全確保担当自衛官は、人の生命又は身体に危険を及ぼすおそれのある天災、事変、工作物の損壊、交通事故、危険物の爆発等危険な事態があり、かつ、権限のある機関が必要な措置を実施することが困難であると認めるときは、その場に居合わせた者、その事物の管理者その他関係者に必要な警告を発し、及び特に急を要する場合においては、危害を受けるおそれのある者に対し、その場の危害を避けしめるために必要な限度でこれを引き留め、又は避難させることができる。
(立入り)
第二十九条 安全確保担当自衛官は、第二十五条第一項若しくは前条に規定する危険な事態が発生し、人の生命若しくは身体若しくは建造物その他の物に対し危害が切迫した場合において、その危害を予防し、損害の拡大を防ぎ、若しくは被害者を救助するため、又は第二十六条第一項の規定により行為者を拘束するため、やむを得ないと認め、かつ、権限のある機関が必要な措置を実施することが困難であると認めるときは、合理的に必要と判断される限度で他人の土地、建物又は船車の中に立ち入ることができる。
2 安全確保担当自衛官は、前項の規定による立入りに際しては、みだりに関係者の正当な業務を妨害してはならない。
(報告)
第三十条 安全確保担当自衛官は、第二十四条から前条までに規定する権限を行使したときは、速やかに、防衛大臣の指定する者にこれを報告しなければならない。
2 防衛大臣の指定する者は、前項の規定による報告を受けたときは、必要に応じ、関係機関への連絡その他の措置を講ずるものとする。
第二目 警護活動等における権限等
第三十一条 前目の規定は、第十三条第一項の規定により警護活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官であって、第三条第五号イからホまでに掲げる態様による活動の実施を命ぜられたもの(以下「警護担当自衛官」という。)が、警護対象を警護する場合について準用する。この場合において、第二十三条から前条までの規定中「安全確保担当自衛官」とあるのは「警護担当自衛官」と、第二十三条から第二十六条までの規定中「同号に規定する行為」とあり、及び「第三条第四号に規定する行為」とあるのは「警護対象に対する侵害行為」と、第二十五条第一項中「人の生命若しくは身体に危険が及び、又は建造物その他の物に重大な損害」とあるのは「警護対象に危険」と、第二十六条第二項第二号中「明らかに」とあるのは「盗品(警護対象である物品に限る。)又は明らかに」と、第二十八条中「人の生命又は身体」とあるのは「警護対象」と、「その場に居合わせた者」とあり、及び「危害を受けるおそれのある者」とあるのは「警護対象である人」と、第二十九条第一項中「人の生命若しくは身体若しくは建造物その他の物」とあるのは「警護対象」と、「被害者」とあるのは「被害を受けた警護対象である人」と読み替えるものとするほか、必要な読替えは、政令で定める。
2 第二十五条第二項及び前条の規定は、第十三条第一項の規定により人道復興支援活動、停戦監視活動又は後方支援活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官について準用する。この場合において、前条第一項中「第二十四条から前条まで」とあるのは、「第三十一条第二項において準用する第二十五条第二項」と読み替えるものとする。
第三目 船舶検査活動における権限等
(停船検査)
第三十二条 第十三条第一項の規定により船舶検査活動の実施を命ぜられた海上自衛隊の自衛艦その他の部隊の長(以下「艦長等」という。)は、停船検査区域を航行している船舶が移動制限対象又は引渡対象(以下「規制対象」という。)を輸送していることを疑うに足りる相当な理由があるときは、この条から第四十二条までの規定の定めるところにより、当該区域において、当該船舶について停船検査を行うことができる。
(停船命令)
第三十三条 艦長等は、停船検査を行おうとするときは、あらかじめ、無線その他の通信手段を用いて、当該船舶に対し、進行の停止を命ずるものとする。
2 艦長等は、前項の規定により進行の停止を命じた場合において、当該船舶がこれに従わないときは、接近、追尾、伴走又は進路前方における待機を行って、繰り返し進行の停止を命ずるものとする。
3 前二項の場合において、艦長等は、自衛艦旗を掲げるほか、必要に応じ、呼びかけ、信号弾及び照明弾の使用その他の適当な手段により、自己の存在を示すものとする。
(船上検査の実施)
第三十四条 艦長等は、前条第一項又は第二項の規定による命令を受けた船舶が停止したときは、海上自衛隊の三等海尉以上の自衛官を当該船舶に乗り込ませ、第三十六条から第三十八条までの規定による検査(以下「船上検査」という。)を行わせるものとする。
(船長等に対する告知)
第三十五条 前条の自衛官(以下「船上検査官」という。)は、船上検査を行う船舶に乗船したときは、その船長等に対し、船上検査を行う旨及び船上検査の手続に関し苦情があるときは艦長等に対し理由を記載した文書を提出して苦情の申出をすることができる旨を告知するものとする。
(船舶書類の検査)
第三十六条 船上検査官は、船長等に対し、次に掲げる書類(以下「船舶書類」という。)の提示を求めることができる。
一 船舶国籍証書その他の船舶の国籍を証明する書類
二 乗組員等の名簿
三 航海日誌その他の航行の状況を記録する書類
四 船荷証券その他の積荷に関する書類
(乗組員等への質問)
第三十七条 船上検査官は、必要があると認めるときは、乗組員等に質問をすることができる。
(積荷の検査等)
第三十八条 船上検査官は、前二条の規定による検査を行った場合においても、なお当該船舶が規制対象を輸送している疑いがあると認めるときは、船長等を立ち会わせて、積荷の検査その他必要な検査をすることができる。
(出入禁止)
第三十九条 船上検査官は、船上検査を行う間は、乗組員等(船長等を除く。)に対し、許可を得ないでその場所に出入りすることを禁止することができる。
(一時的な拘束)
第四十条 船上検査官は、船上検査の結果、引渡対象であると認められる乗組員等を発見した場合において、その逃走を防止することその他必要があると認めるときは、当該乗組員等を一時的に拘束することができる。
2 船上検査官は、前項の規定による乗組員等の拘束を行ったときは、直ちに、その旨を艦長等に報告しなければならない。
3 艦長等は、前項の報告を受けたときは、速やかに、当該乗組員等を権限のある機関に引き渡さなければならない。
4 第二十七条の規定は、第一項の規定により船上検査官が乗組員等を拘束した場合について準用する。この場合において、同条第一項中「前条第一項」とあるのは「第四十条第一項」と、同条第二項中「前条第三項」とあるのは「第四十条第三項」と読み替えるものとする。
(艦長等への報告)
第四十一条 船上検査官は、船上検査を行ったときは、直ちにその結果を艦長等に報告しなければならない。
(停船検査の終了)
第四十二条 艦長等は、前条の報告を受けたときは、次条第一項の規定による引渡しの求め又は第四十四条第一項若しくは第二項の規定による命令をするときを除き、速やかに、停船検査を終了しなければならない。
(引渡対象の引渡し)
第四十三条 第四十一条の報告を受けた艦長等は、当該報告に係る船舶の積荷が引渡対象であると認められ、かつ、当該積荷をその自衛艦に収容することができるときは、当該船舶の船長等に対し、当該積荷の引渡しを求めることができる。
2 艦長等は、前項の引渡しを受けたときは、調書を作成し、当該船舶の船長等に交付しなければならない。
3 艦長等は、第一項の引渡しを受けたときは、速やかに、当該積荷を権限のある機関に引き渡さなければならない。
(回航等の命令)
第四十四条 第四十一条の報告を受けた艦長等は、次の各号のいずれかに該当するときは、当該報告に係る船舶の船長等に対し、我が国の港又は実施区域内にある外国の港へ回航すべきことを命ずることができる。
一 当該船長等が前条第一項の規定による引渡対象の引渡しの求めに応じないとき。
二 当該船舶が引渡対象を輸送していると認めるとき(前条第一項の規定により引渡対象の引渡しを求めることができる場合を除く。)。
三 当該報告のほか、当該船舶の外観、航海の態様、乗組員等の異常な挙動その他周囲の事情等から判断して、なお当該船舶が引渡対象を輸送している疑いがあると認めるとき(前二号に該当するときを除く。)。
2 第四十一条の報告を受けた艦長等は、次の各号のいずれかに該当するときは、当該報告に係る船舶の船長等に対し、必要に応じ、当該船舶の航路又は目的港若しくは目的地を変更すべき旨を命ずることができる。
一 当該船舶が移動制限対象を輸送していると認めるとき。
二 当該報告のほか、当該船舶の外観、航海の態様、乗組員等の異常な挙動その他周囲の事情等から判断して、なお当該船舶が移動制限対象を輸送している疑いがあると認めるとき(前号に該当するときを除く。)。
3 艦長等は、前二項の規定による命令をしようとするときは、あらかじめ、船長等に対し、弁明を記載した文書を提出する機会を与えなければならない。
(監視措置)
第四十五条 艦長等は、前条第一項又は第二項の規定による命令をしたときは、船上検査官に、当該船舶の船舶書類及びその乗組員等又は積荷のうち規制対象であるもの(規制対象の疑いがあるものを含む。)の移動を監視するために必要な封印をさせ、又は装置を取り付けさせることができる。
(回航等監督官の派遣)
第四十六条 艦長等は、第四十四条第一項又は第二項の規定による命令をした場合であって、船長等が当該命令に従わないおそれがあるときその他必要があると認めるときは、当該命令の履行の確保に必要な監督をさせるため、海上自衛隊の三等海尉以上の自衛官を当該命令に係る船舶(以下「回航等船舶」という。)に乗り込ませることができる。
(船長等に対する告知)
第四十七条 前条の自衛官(以下「回航等監督官」という。)は、回航等船舶に乗船したときは、その船長等に対し、第四十四条第一項又は第二項の規定による命令の内容及び回航等の措置の手続に関し苦情があるときは艦長等に対し理由を記載した文書を提出して苦情の申出をすることができる旨を告知するものとする。
(回航等監督官の権限)
第四十八条 回航等監督官は、第四十四条第一項若しくは第二項の規定による命令の履行の確保又は航行の安全若しくは船内の秩序維持のため必要があると認めるときは、回航等船舶の船長等に対し、必要な措置をとるべきことを指示することができる。
2 回航等監督官は、船長等が前項の規定による指示に従わない場合において、やむを得ない必要があるときは、自ら当該指示に係る措置をとることができる。
3 艦長等は、回航等監督官に、第四十五条に規定する措置を講じさせることができる。
(一時的な拘束)
第四十九条 回航等監督官は、前条の規定によるもののほか、引渡対象であると認められる乗組員等を発見した場合において、その逃走を防止することその他必要があると認めるときは、当該乗組員等を一時的に拘束することができる。
2 第二十七条並びに第四十条第二項及び第三項の規定は、前項の規定により回航等監督官が乗組員等を拘束した場合について準用する。この場合において、第二十七条第一項中「前条第一項」とあるのは「第四十九条第一項」と、同条第二項中「前条第三項」とあるのは「第四十九条第二項において準用する第四十条第三項」と、第四十条第二項中「前項」とあるのは「第四十九条第一項」と、同条第三項中「前項」とあるのは「第四十九条第二項において準用する第四十条第二項」と読み替えるものとする。
(回航等船舶への自衛艦旗の掲揚)
第五十条 回航等監督官は、回航等船舶に、当該船舶の旗国の国旗及び自衛艦旗を掲げさせるものとする。
(引渡し)
第五十一条 艦長等は、第四十四条第一項の規定による命令をした場合において、回航等船舶が我が国の港又は実施区域内にある外国の港に到着したときは、速やかに、乗組員等又は積荷のうち引渡対象であるもの(引渡対象の疑いがあるものを含む。)を権限のある機関に引き渡さなければならない。
(妨害行為の制止)
第五十二条 第二十五条第二項の規定は、第十三条第一項の規定により船舶検査活動の実施を命ぜられた海上自衛隊の自衛艦その他の部隊の自衛官について準用する。
(報告)
第五十三条 艦長等は、停船検査を行ったとき、又は回航等の措置をとったときは、速やかに、当該停船検査又は回航等の措置に関する報告書を作成し、防衛大臣に提出しなければならない。
2 艦長等は、第四十四条第一項若しくは第二項の規定による命令をしたとき、又は船長等から第三十五条若しくは第四十七条に規定する苦情の申出があったときは、直ちにその旨を防衛大臣に報告しなければならない。
3 前条の自衛官は、同条において準用する第二十五条第二項に規定する権限を行使したときは、速やかに、艦長等にこれを報告しなければならない。
4 防衛大臣又は艦長等は、前二項の規定による報告を受けたときは、必要に応じ、関係機関への連絡その他の措置を講ずるものとする。
(艦長等の配慮義務)
第五十四条 艦長等並びに船上検査官及び回航等監督官は、停船検査を行い、又は回航等の措置をとるときは、その対象となる船舶が必要以上に予定の航路を変更することのないように配慮しなければならない。
第四目 補則
(身分証明書の提示等)
第五十五条 この款の規定により権限を行使する自衛官は、当該権限を行使する場合においては、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があるときは、緊急の場合を除いて、これを提示しなければならない。
2 この款の規定による自衛官の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(行政手続法の適用除外)
第五十六条 この款の規定による処分については、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第三章の規定は、適用しない。
(行政不服審査法による申立て)
第五十七条 この款の規定による処分については、行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)による不服申立てをすることができない。
第二款 武器の使用
(小型武器の保有)
第五十八条 本部は、国際平和協力活動に従事する本部職員の安全保持のために必要な政令で定める種類の小型武器を保有することができる。
(小型武器の貸与)
第五十九条 本部長は、第十条第一項の規定により本部職員を国際平和協力活動に従事させる場合であって、現地の治安の状況等を勘案して特に必要と認めるときには、当該本部職員が同条第二項に規定する実施区域(我が国領域を除く。)に滞在する間、前条の小型武器であって第七条第二項第二号ホ(2)の規定により実施計画に定める装備であるものを当該本部職員に貸与することができる。
2 次の各号に掲げる者は、第十一条第一項又は第十二条第一項の規定により当該各号に定める職員を国際平和協力活動に従事させる場合であって、現地の治安の状況等を勘案して特に必要と認めるときには、当該職員が第十一条第二項又は第十二条第二項において準用する第十条第二項に規定する実施区域(我が国領域を除く。)に滞在する間、小型武器(前条の政令で定める種類の小型武器に相当するものをいう。次条第一項第二号及び第三号において同じ。)であって第七条第二項第二号ヘ(2)又はト(2)の規定により実施計画に定める装備であるものを当該職員に貸与することができる。
一 警察庁長官 警察庁の職員(警察官である者を除く。次条第一項第一号において同じ。)
二 海上保安庁長官 海上保安庁の船舶又は航空機の乗組員たる海上保安庁の職員(海上保安官及び海上保安官補(以下「海上保安官等」という。)である者を除く。次条第一項第一号において同じ。)
3 小型武器を管理する責任を有する者として本部職員、警察庁の職員及び海上保安庁の職員のうちからそれぞれ本部長、警察庁長官及び海上保安庁長官により指定された者は、前二項の規定による貸与のため、小型武器を保管することができる。
4 小型武器の貸与の基準、管理等に関し必要な事項は、政令で定める。
(本部職員等による武器の使用)
第六十条 第十条第一項、第十一条第一項、第十二条第一項又は第十三条第一項の規定により、国際平和協力活動の実施を命ぜられた者であって、次の各号に掲げるものは、それぞれ、自己又は自己と共に現場に所在する他の国際平和協力活動等従事者若しくはその職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者の生命又は身体を防衛するためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で、当該各号に定める小型武器又は武器を使用することができる。ただし、刑法(明治四十年法律第四十五号)第三十六条又は第三十七条の規定に該当する場合を除いては、人に危害を与えてはならない。
一 本部職員又は警察庁の職員若しくは海上保安庁の職員 前条第一項又は第二項の規定により貸与を受けた小型武器
二 警察官 第七条第二項第二号ヘ(2)の規定により実施計画に定める装備である小型武器で、当該警察官が携帯するもの
三 海上保安官等 第七条第二項第二号ト(2)の規定により実施計画に定める装備である小型武器で、当該海上保安官等が携帯するもの
四 個別派遣自衛隊員 第七条第二項第二号チ(2)の規定により実施計画に定める装備である武器(第五十八条の政令で定める種類の小型武器に相当するものに限る。)
2 前項第三号の規定による小型武器の使用は、当該現場に上官が在るときは、その命令によらなければならない。ただし、生命又は身体に対する侵害又は危難が切迫し、当該命令を受けるいとまがないときは、この限りでない。
3 第一項第三号の規定により小型武器を使用する場合において、当該現場に在る上官は、統制を欠いた小型武器の使用によりかえって生命若しくは身体に対する危険又は事態の混乱を招くこととなることを未然に防止し、当該小型武器の使用が同項の規定に従いその目的の範囲内において適正に行われることを確保する見地から必要な命令をするものとする。
(自衛隊の部隊等の自衛官による武器の使用)
第六十一条 第十三条第一項の規定により国際平和協力活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官であって、次の各号に掲げるものは、それぞれ、当該各号に定める事態に応じ合理的に必要と判断される限度で、第七条第二項第二号チ(2)又は(3)の規定により実施計画に定める装備である武器を使用することができる。ただし、刑法第三十六条又は第三十七条の規定に該当する場合を除いては、人に危害を与えてはならない。
一 人道復興支援活動、停戦監視活動又は後方支援活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官 自己若しくは次に掲げる者の生命若しくは身体の防衛のため又は第三十一条第二項において準用する第二十五条第二項の規定による権限の行使に対する抵抗の抑止のため必要であると認める相当の理由がある場合
イ 自己と共に現場に所在する他の国際平和協力活動等従事者又はその職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者
ロ 当該部隊等に所属する自衛隊員
ハ 実施区域内に所在する者であって、当該活動の円滑な実施を確保するために必要であるとして防衛大臣が定めるもの
二 安全確保活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官 自己若しくは前号イ若しくはロに掲げる者若しくは実施区域内に所在する者(同号イ及びロに掲げる者を除く。)の生命若しくは身体の防衛のため、前款第一目の規定による権限の行使に対する抵抗の抑止のため又は第二十六条第一項の規定による一時的な拘束のため必要であると認める相当の理由がある場合
三 警護活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官 自己若しくは第一号イ若しくはロに掲げる者の生命若しくは身体若しくは警護対象の防衛のため、第三十一条第一項において準用する前款第一目の規定による権限の行使に対する抵抗の抑止のため又は同項において準用する第二十六条第一項の規定による一時的な拘束のため必要であると認める相当の理由がある場合
四 船舶検査活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官 自己若しくは第一号イ若しくはロに掲げる者若しくは実施区域内に所在する者であって当該活動の円滑な実施を確保するために必要であるとして防衛大臣が定めるものの生命若しくは身体の防衛のため、前款第三目の規定による権限の行使に対する抵抗の抑止のため又は第四十条第一項若しくは第四十九条第一項の規定による一時的な拘束のため必要であると認める相当の理由がある場合
2 第十三条第一項の規定により安全確保活動又は警護活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官であって、次の各号に掲げるものは、前項の規定により武器を使用する場合のほか、それぞれ、当該各号に定める事態に該当すると認める相当の理由があるときは、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で、第七条第二項第二号チ(2)の規定により実施計画に定める装備である武器を使用することができる。
一 安全確保活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官 次に掲げる場合
イ 多衆集合して暴行若しくは脅迫をし、又は暴行若しくは脅迫をしようとする明白な危険があり、武器を使用するほか、他にこれを鎮圧し、又は防止する適当な手段がない場合
ロ イに掲げる場合のほか、小銃、機関銃(機関けん銃を含む。)、砲、化学兵器、生物兵器その他その殺傷力がこれらに類する武器を所持し、又は所持していると疑うに足りる相当の理由のある者が暴行又は脅迫をし又はする高い蓋然性があり、武器を使用するほか、他にこれを鎮圧し、又は防止する適当な手段がない場合
二 警護活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官 警護対象が侵害を受け、又は受けようとする明白な危険があり、武器を使用するほか、他にこれを排除する適当な手段がない場合
3 第十三条第一項の規定により船舶検査活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官は、第一項の規定により武器を使用する場合のほか、艦長等が第三十三条第二項の規定に基づき当該船舶の進行の停止を繰り返し命じても乗組員等がこれに応ぜずなお当該活動の実施に抵抗し、又は逃亡しようとする場合において、当該船舶の進行を停止させるため他に手段がないと信ずるに足りる相当の理由があるときは、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で、第七条第二項第二号チ(3)の規定により実施計画に定める装備である武器を使用することができる。
4 前三項の規定により自衛官が武器を使用するには、刑法第三十六条又は第三十七条に該当する場合を除き、当該部隊指揮官の命令によらなければならない。
5 前各項に定めるもののほか、自衛隊の部隊等の自衛官による武器の使用に関し必要な事項は、防衛大臣が定める。
第五節 物品の譲渡及び無償貸付け
第六十二条 次の各号に掲げる大臣又はその委任を受けた者は、第十条第一項、第十一条第一項、第十二条第一項又は第十三条第一項の規定による国際平和協力活動の実施に際し、国際連合等から第二条第一項に規定する国際社会の取組に係る活動の用に供するため当該各号に規定する物品の譲渡又は無償貸付けを求める旨の申出があった場合において、当該活動の円滑な実施に必要であると認めるときは、その所掌事務に支障を生じない限度において、当該国際平和協力活動として当該申出に係る物品を当該国際連合等に対し無償若しくは時価よりも低い対価で譲渡し、又は無償で貸し付けることができる。
一 内閣総理大臣 本部又は警察庁に属する物品
二 国土交通大臣 海上保安庁に属する物品
三 防衛大臣 自衛隊に属する物品
第四章 物資協力
第六十三条 内閣総理大臣は、第二条第一項に規定する国際社会の取組に係る活動を実施する国際連合等から要請があった場合において当該活動の円滑な実施に必要であると認めるときは、閣議にかけて、物資協力を行うことができる。
2 外務大臣は、第二条第一項に規定する国際社会の取組に係る活動の用に供するため必要と認めるときは、内閣総理大臣に対し、前項に規定する閣議の決定を求めるよう要請することができる。
3 本部長は、物資協力のため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、その所管に属する物品の管理換えを要請することができる。
4 関係行政機関の長は、前項の規定による要請があったときは、その所掌事務に支障を生じない限度において、その所管に属する物品の管理換えを行うものとする。
第五章 雑則
(民間の協力等)
第六十四条 実施行政機関の長は、第三章の規定による措置によっては国際平和協力活動を十分に実施することができないと認めるときは、関係行政機関の長の協力を得て、物品の譲渡若しくは貸付け又は役務の提供について国以外の者に協力を求めることができる。
2 本部長は、物資協力に関し必要があると認めるときは、関係行政機関の長の協力を得て、物品の譲渡について国以外の者に協力を求めることができる。
3 政府は、前二項の規定により協力を求められた国以外の者に対し適正な対価を支払うとともに、その者が当該協力により損失を受けた場合には、その損失に関し、必要な財政上の措置を講ずるものとする。
(政令への委任)
第六十五条 この法律に特別の定めがあるもののほか、この法律の実施のための手続その他この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定める。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、別に法律で定める日から施行する。
(国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律の廃止)
第二条 国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律(平成四年法律第七十九号)は、廃止する。
(経過措置及び関係法律の整理)
第三条 前条に定めるもののほか、この法律の施行に伴い必要となる経過措置及び関係法律の整理については、別に法律で定める。
理 由
国際連合を中心として国際の平和及び安全の維持に係る多様な取組が行われていることを踏まえ、国及び国民の安全を保ち我が国の繁栄を維持するためには国際の平和及び安全の確保が不可欠であるとの認識の下に、国際の平和及び安全の維持に係る国際社会の取組に我が国として主体的かつ積極的に寄与するため、国際平和協力活動及び物資協力、これらの実施の手続その他の必要な事項を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。