衆議院

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第一七四回

衆第二九号

   スポーツ基本法案

 スポーツ振興法(昭和三十六年法律第百四十一号)の全部を改正する。

目次

 前文

 第一章 総則(第一条−第八条)

 第二章 スポーツ基本計画等(第九条・第十条)

 第三章 基本的施策

  第一節 多様なスポーツ活動の機会の確保のための環境の整備(第十一条−第十五条)

  第二節 競技水準の向上等(第十六条−第二十三条)

  第三節 スポーツの推進のための基礎的条件の整備等(第二十四条−第三十一条)

 第四章 スポーツ推進会議(第三十二条)

 第五章 スポーツ審議会等及び体育指導委員(第三十三条・第三十四条)

 第六章 国の補助等(第三十五条−第三十七条)

 附則

 スポーツは、世界共通の人類の文化である。

 スポーツは、運動競技その他の心身の健全な発達、健康の保持増進、体力の向上、精神的な充足感の獲得、自律心その他の精神の涵養等のために個人又は集団で行われる身体活動であり、国民が生涯にわたり心身ともに健康で文化的な生活を営む上で不可欠のものである。そのため、すべての国民がその自発性の下に、各々の関心、適性等に応じて、日常的にスポーツに親しみ、スポーツを楽しみ、又はスポーツを支える活動に参画することのできる機会が確保されなければならない。

 また、スポーツの国際交流は、国際平和に大きく貢献し、国際競技大会における日本人選手の活躍は、国民に誇りと喜び、夢と感動を与え、国民の意識を高揚させるものである。スポーツの競技力の強化は、我が国の国際的地位の向上に極めて重要な役割を果たし、我が国社会に活力を生み出すとともに、国民経済の発展にも広く寄与するものである。さらに、スポーツの競技力の向上を不断に目指すことは、人間の可能性の極限を追求する有意義な営みであり、スポーツ選手の活躍は、人々のスポーツへの関心を高め、地域におけるスポーツの推進に寄与するものである。

 さらに、スポーツは、次代を担う青少年の体力の向上及び協同性、規範意識等の社会性の涵養に資するとともに、長寿社会において健康を保持増進する上で重要な役割を果たすものである。また、スポーツは、人と人との交流及び地域と地域との交流を促進し、個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現に寄与するものである。

 このような国民生活における多面にわたるスポーツの果たす役割の重要性にかんがみ、スポーツ立国を実現することは、二十一世紀の我が国の発展のために不可欠な重要課題である。ここに、スポーツ立国の実現を目指し、国家戦略として、スポーツに関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、この法律を制定する。

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、スポーツに関する施策に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務等を明らかにするとともに、スポーツに関する施策の基本となる事項を定めることにより、スポーツに関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって国民の心身の健全な発達、明るく豊かな国民生活の形成、活力ある社会の実現及び国際社会の調和ある発展に寄与することを目的とする。

 (基本理念)

第二条 スポーツに関する施策は、国民が生涯にわたり心身ともに健康で文化的な生活を営む上でスポーツは不可欠のものであるとの認識の下に、あらゆる機会とあらゆる場所において、国民が自主的にその適性及び健康状態に応じてスポーツを行うことができる機会が確保されるよう講ぜられなければならない。

2 スポーツに関する施策は、人々がその居住する地域において身近にスポーツに親しむことができるようにするとともに、スポーツ活動を通じて、当該地域におけるすべての世代の人々の交流が促進され、かつ、地域間の交流の基盤が形成されるものとなるよう講ぜられなければならない。

3 スポーツに関する施策は、我が国のスポーツ選手が国際的な競技大会等において優秀な成績を収めることができるよう、スポーツ選手の計画的な育成、指導者の養成、施設又は設備の整備、科学的な研究その他のスポーツに関する競技水準(以下単に「競技水準」という。)の向上に資する諸施策相互の有機的な連携を図りつつ、効果的に講ぜられなければならない。

4 スポーツに関する施策は、とりわけ心身の成長の過程にある青少年のスポーツ活動が、体力の向上を図り、公正さと規律を尊ぶ態度や克己心を培う等人格の形成に大きな影響を及ぼすものであり、国民の生涯にわたる健全な心と身体を培い豊かな人間性をはぐくむ基礎となるものであるとの認識の下に、学校、家庭及び地域における教育活動の相互の連携を図りながら講ぜられなければならない。

5 スポーツに関する施策は、スポーツを行う者の健康の保持増進及び安全の確保が図られるよう講ぜられなければならない。

6 スポーツに関する施策は、障害者が自主的かつ積極的にスポーツを行うことができるよう、障害の種類及び程度に応じ必要な配慮をしつつ、講ぜられなければならない。

7 スポーツに関する施策は、スポーツに係る国際的な交流を推進することにより、国際相互理解の増進及び国際平和に寄与するものとなるよう講ぜられなければならない。

8 スポーツに関する施策は、ドーピングの防止の重要性に対する国民の認識を深めるとともに、スポーツに関するあらゆる活動の公正かつ適切な実施を旨として、スポーツに対する国民の幅広い理解及び支援が得られるよう講ぜられなければならない。

 (国の責務)

第三条 国は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、スポーツに関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。

 (地方公共団体の責務)

第四条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、スポーツに関する施策に関し、国との連携を図りつつ、自主的かつ主体的に、その地域の特性に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

 (スポーツ団体の責務)

第五条 スポーツ団体(スポーツの振興のための事業を行うことを主たる目的とする団体をいう。以下同じ。)は、競技水準の向上及びスポーツの普及に果たすべき重要な役割にかんがみ、基本理念にのっとり、スポーツの推進に主体的に取り組むよう努めるものとする。

 (国民の関心及び参加の促進)

第六条 国、地方公共団体及びスポーツ団体は、国民が健やかで明るく豊かな生活を享受することができるよう、スポーツに対する国民の関心と理解を深め、スポーツ活動への国民の参加を促進するように努めなければならない。

 (関係者相互の連携及び協力)

第七条 国、地方公共団体及びスポーツ団体は、基本理念の実現を図るため、相互に連携を図りながら協力するよう努めなければならない。

 (法制上の措置等)

第八条 政府は、スポーツに関する施策を実施するため必要な法制上、財政上又は税制上の措置その他の措置を講じなければならない。

   第二章 スポーツ基本計画等

 (スポーツ基本計画)

第九条 文部科学大臣は、スポーツに関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、スポーツの推進に関する基本的な計画(以下「スポーツ基本計画」という。)を定めなければならない。

2 文部科学大臣は、スポーツ基本計画を定めようとするときは、あらかじめ、審議会等(国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第八条に規定する機関をいう。第三十七条において同じ。)で政令で定めるものの意見を聴かなければならない。

3 文部科学大臣は、スポーツ基本計画を定めようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の施策に係る事項について、第三十二条に規定するスポーツ推進会議において連絡調整を図るものとする。

 (地方スポーツ推進計画)

第十条 都道府県及び市(特別区を含む。以下同じ。)町村の教育委員会(地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和三十一年法律第百六十二号)第二十四条の二第一項の条例の定めるところによりその長がスポーツに関する事務(学校における体育に関する事務を除く。)を管理し、及び執行することとされた地方公共団体(以下「特定地方公共団体」という。)にあっては、その長)は、スポーツ基本計画を参酌して、その地方の実情に即したスポーツの推進に関する計画(以下「地方スポーツ推進計画」という。)を定めるものとする。

2 都道府県及び市町村(第三十三条第二項の規定に基づき審議会その他の合議制の機関が置かれているものに限る。)の教育委員会(当該都道府県又は当該市町村が特定地方公共団体である場合にあっては、その長)は、地方スポーツ推進計画を定めようとするときは、あらかじめ、同条第三項に規定するスポーツ審議会等の意見を聴かなければならない。

3 特定地方公共団体の長が地方スポーツ推進計画を定めようとするときは、あらかじめ、当該特定地方公共団体の教育委員会の意見を聴かなければならない。

   第三章 基本的施策

    第一節 多様なスポーツ活動の機会の確保のための環境の整備

 (地域におけるスポーツ活動への支援等)

第十一条 国及び地方公共団体は、国民がその興味又は関心に応じて身近にスポーツに親しむことができるよう、各人の需要に応じたスポーツを行う機会に係る情報の提供その他のスポーツ活動に人々が円滑に参加できるようにするための措置、スポーツ団体その他スポーツを行おうとする者の自発的な組織の活動への支援、スポーツ団体等におけるスポーツ活動が安全かつ効果的に行われるための指導者の配置への支援、住民が快適にスポーツを行うことができる施設の整備その他の必要な施策を講ずるよう努めなければならない。

 (スポーツ行事の実施及び奨励)

第十二条 地方公共団体は、広く住民が自主的かつ積極的に参加できるような運動会、競技会、体力テスト、スポーツ教室等のスポーツ行事その他各地域の固有の文化を形成するスポーツ行事を実施するように努めるとともに、団体その他の者がこれらの行事を実施するよう奨励しなければならない。

2 国は、地方公共団体に対し、前項の行事の実施に関し必要な援助を行うものとする。

 (体育の日の行事)

第十三条 国及び地方公共団体は、国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号)第二条に規定する体育の日において、国民の間に広くスポーツについての関心と理解を深め、かつ、積極的にスポーツを行う意欲を高揚するような行事を実施するとともに、この日において、広く国民があらゆる地域及び職域でそれぞれその生活の実情に即してスポーツを行うことができるような行事が実施されるよう、必要な施策を講じ、及び援助を行うものとする。

 (職場におけるスポーツの奨励)

第十四条 国及び地方公共団体は、勤労者が勤労の余暇を利用して積極的にスポーツを行うことができるようにするため、職場におけるスポーツの奨励に必要な施策を講ずるよう努めなければならない。

 (野外活動及びスポーツ・レクリエーション活動の普及奨励)

第十五条 国及び地方公共団体は、心身の健全な発達、生きがいのある豊かな生活の実現等のために行われるハイキング、サイクリング、キャンプ活動その他の野外活動及びスポーツとして行われるレクリエーション活動(以下この条において「スポーツ・レクリエーション活動」という。)を普及奨励するため、ハイキング等のためのコースの設定、キャンプ場の整備その他野外活動又はスポーツ・レクリエーション活動に要する施設又は設備の整備、地域住民の交流の場となる行事の実施その他の必要な施策を講ずるよう努めなければならない。

    第二節 競技水準の向上等

 (優秀なスポーツ選手の育成等)

第十六条 国は、優秀なスポーツ選手を育成するため、スポーツ団体が行う合宿、国際競技大会(オリンピック競技大会、パラリンピック競技大会その他の国際的な規模のスポーツの競技会をいう。以下同じ。)又は全国的な規模のスポーツの競技会への選手の派遣、優れた資質を有する青少年に対する指導その他の活動に対する支援その他必要な施策を講ずるものとする。

2 国は、優秀なスポーツの選手、指導者等が、生涯にわたり、その有する能力を幅広く社会に生かすことができるよう、社会の各分野で活躍できる知識及び技能の習得に対する支援並びに活躍できる環境の整備の促進その他の必要な施策を講ずるものとする。

 (顕彰)

第十七条 国及び地方公共団体は、スポーツの競技会において優秀な成績を収めた者及びスポーツの発展に寄与した者の顕彰に努めなければならない。

 (国民体育大会及び全国障害者スポーツ大会)

第十八条 国民体育大会は、財団法人日本体育協会(昭和二年八月八日に財団法人大日本体育協会という名称で設立された法人をいう。以下同じ。)、国及び開催地の都道府県が共同して開催するものとし、都道府県ごとに選出された選手が参加して総合的に運動競技をするものとする。

2 全国障害者スポーツ大会は、財団法人日本障害者スポーツ協会(昭和四十年五月二十四日に財団法人日本身体障害者スポーツ協会という名称で設立された法人をいう。以下同じ。)、国及び開催地の都道府県が共同して開催するものとし、都道府県又は指定都市(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市をいう。)ごとに選出された障害者が参加して総合的に運動競技をするものとする。

3 国は、国民体育大会及び全国障害者スポーツ大会の円滑な実施及び運営に資するため、これらの開催者である財団法人日本体育協会又は財団法人日本障害者スポーツ協会及び開催地の都道府県に対し、必要な援助を行うものとする。

 (国際競技大会の開催への支援等)

第十九条 国は、国際競技大会を我が国に招致し、又は我が国において開催する者に対し、当該招致又は開催が円滑になされるようにするため、国の内外の関係機関との連絡調整、援助その他の必要な施策を講ずるものとする。

2 国は、財団法人日本オリンピック委員会(平成元年八月七日に財団法人日本オリンピック委員会という名称で設立された法人をいう。)、財団法人日本障害者スポーツ協会その他のスポーツ団体が行う国際的な規模のスポーツの振興のための事業に関し必要な措置を講ずるに当たっては、当該スポーツ団体との緊密な連絡に努めるものとする。

 (高度な競技水準を有する者の活用等)

第二十条 国及び地方公共団体は、我が国における競技水準の向上及びスポーツの普及を図るため、プロスポーツ選手その他の高度な競技水準を有する者の体育の日等のスポーツ行事、学校における教育活動及びスポーツの指導者の養成のための講習会における活用その他の必要な施策を講ずるよう努めなければならない。

 (企業によるスポーツ活動の促進)

第二十一条 国は、我が国における競技水準の向上を図る上で企業のスポーツチーム等が果たす役割の重要性にかんがみ、企業によるスポーツ活動の促進のために必要な施策を講ずるものとする。

 (スポーツ産業の事業者との連携等)

第二十二条 国は、我が国におけるスポーツの普及又は競技水準の向上を図る上でスポーツ産業の事業者が果たす役割の重要性にかんがみ、スポーツ団体とスポーツ産業の事業者との連携及び協力の促進その他の必要な施策を講ずるものとする。

 (ドーピング防止活動の推進)

第二十三条 国は、スポーツにおけるドーピングの防止に関する国際規約に従ってドーピングの防止活動を実施するため、財団法人日本アンチ・ドーピング機構(平成十三年九月十六日に財団法人日本アンチ・ドーピング機構という名称で設立された法人をいう。)と連携を図りつつ、ドーピングの防止に関する教育及び啓発を行うとともに、国際的なドーピングの防止に関する機関等への支援その他の必要な施策を講ずるものとする。

2 地方公共団体及びスポーツ団体は、前項の規定により国が行うドーピングの防止活動と連携を図りつつ、住民、スポーツを行う者等に対する教育及び啓発その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

    第三節 スポーツの推進のための基礎的条件の整備等

 (指導者の養成等)

第二十四条 国及び地方公共団体は、スポーツの指導者の養成及びその資質の向上のため、系統的な指導者の養成システムの開発や活用への支援、講習会、研究集会等の開催その他の必要な施策を講ずるよう努めなければならない。

 (施設の整備等)

第二十五条 国及び地方公共団体は、国民が身近にスポーツに親しむことができるようにするとともに、競技水準の向上を図ることができるよう、スポーツ施設(スポーツの設備を含む。以下同じ。)の整備、利用者の需要に応じたスポーツ施設の運用の改善、スポーツ施設へのスポーツの指導者の配置その他の必要な施策を講ずるよう努めなければならない。

2 前項の規定によりスポーツ施設を整備するに当たっては、当該スポーツ施設の利用の実態等に応じて、安全性の確保を図るとともに、障害者等の利便性の向上を図るよう努めるものとする。

 (国際交流及び貢献の推進)

第二十六条 国及び地方公共団体は、スポーツの選手、指導者等の国際的な交流その他のスポーツに係る国際的な交流及び貢献を推進するために必要な施策を講ずることにより、我が国の競技水準の向上を図るとともに、国際相互理解の増進に努めなければならない。

 (スポーツ事故の防止)

第二十七条 国、地方公共団体及びスポーツ団体は、登山事故、水泳事故その他のスポーツ事故による外傷、障害等を防止するため、施設又は設備の整備、指導者の養成、事故防止に関する知識(スポーツ用具の適切な使用に係る知識を含む。)の普及その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。この場合において、第二十九条第一項に規定する研究の成果その他スポーツ事故の防止に係る専門家の知見を活用するよう努めるものとする。

 (スポーツに関する紛争の迅速かつ円滑な解決)

第二十八条 国は、スポーツを行う者の権利利益の保護が図られるよう、スポーツに関する紛争の仲裁又は調停を行う機関への支援その他のスポーツに関する紛争の迅速かつ円滑な解決に資するために必要な施策を講ずるものとする。

 (科学的研究の促進等)

第二十九条 国は、スポーツ団体、大学等との連携協力を図りながら、医学、歯学、生理学、心理学、力学等のスポーツに関する自然科学その他スポーツに関する経済、文化等に係る諸科学を総合して、スポーツに関する実際的、基礎的な研究を促進するよう必要な施策を講ずるものとする。

2 国は、我が国のスポーツの水準の向上を図るため、競技力の向上を図るための調査研究の成果及び取組の状況、スポーツの実施状況その他のスポーツに関する国の内外の情報の収集、整理及び活用について必要な施策を講ずるものとする。

 (学校施設の利用)

第三十条 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第二条第二項に規定する国立学校及び公立学校の設置者は、その設置する学校の教育に支障のない限り、当該学校のスポーツ施設を一般のスポーツのための利用に供するよう努めなければならない。

2 国及び地方公共団体は、前項の利用を容易にさせるため、又はその利用上の利便性の向上を図るため、当該学校のスポーツ施設の改修、照明施設の設置その他の必要な施策を講ずるよう努めなければならない。

 (学校における体育の充実)

第三十一条 国及び地方公共団体は、学校における体育が児童生徒の心身の健全な発達に資するものであり、かつ、スポーツに関する技能及び生涯にわたってスポーツに親しむ態度を養う上で重要な役割を果たすものであることにかんがみ、体育館、運動場、水泳プール、武道場その他のスポーツ施設の整備、体育に関する教員の資質の向上その他指導体制の充実、地域におけるスポーツの指導者の活用その他の必要な施策を講ずるよう努めなければならない。

   第四章 スポーツ推進会議

第三十二条 政府は、文部科学省及び厚生労働省、経済産業省、国土交通省その他の関係行政機関の職員をもって構成するスポーツ推進会議を設け、スポーツに関する施策の総合的、一体的かつ効果的な推進を図るための連絡調整を行うものとする。

   第五章 スポーツ審議会等及び体育指導委員

 (スポーツ審議会等)

第三十三条 都道府県に、スポーツの推進に関する審議会その他の合議制の機関を置くものとする。

2 市町村に、スポーツの推進に関する審議会その他の合議制の機関を置くことができる。

3 前二項の審議会その他の合議制の機関(以下「スポーツ審議会等」という。)は、第十条第二項及び第三十七条に規定するもののほか、都道府県の教育委員会若しくは知事又は市町村の教育委員会(当該市町村が特定地方公共団体である場合にあっては、市町村の教育委員会又はその長。以下この項において同じ。)の諮問に応じて、スポーツの推進に関する重要事項について調査審議し、及びこれらの事項に関して都道府県の教育委員会若しくは知事又は市町村の教育委員会に建議する。

4 スポーツ審議会等の委員は、スポーツに関する学識経験のある者の中から、教育委員会が任命する。この場合において、都道府県の教育委員会は知事の、市町村の教育委員会はその長の意見を聴かなければならない。

5 前項の規定にかかわらず、特定地方公共団体におけるスポーツ審議会等の委員の任命は、当該特定地方公共団体の教育委員会の意見を聴いて、地方公共団体の長が行う。

6 第一項から前項までに定めるもののほか、スポーツ審議会等の委員の定数、任期その他スポーツ審議会等に関し必要な事項については、条例で定める。

 (体育指導委員)

第三十四条 市町村の教育委員会(特定地方公共団体にあっては、その長)は、地域におけるスポーツの推進を図るための体制の整備に努めるとともに、社会的信望があり、スポーツに関する深い関心と理解を有し、及び次項に規定する職務を行うのに必要な熱意と能力を有する者の中から、体育指導委員を委嘱するものとする。

2 体育指導委員は、当該市町村におけるスポーツの推進のため、教育委員会規則(特定地方公共団体にあっては、地方公共団体の規則)の定めるところにより、スポーツの推進のための事業の実施に係る連絡調整並びに住民に対するスポーツの実技の指導その他スポーツに関する指導及び助言を行うものとする。

3 体育指導委員は、非常勤とする。

   第六章 国の補助等

 (国の補助)

第三十五条 国は、地方公共団体に対し、予算の範囲内において、政令で定めるところにより、次に掲げる経費について、その一部を補助する。

 一 国民体育大会及び全国障害者スポーツ大会の実施及び運営に要する経費であって、これらの開催地の都道府県において要するもの

 二 その他スポーツの推進のために地方公共団体が行う事業に要する経費であって特に必要と認められるもの

2 国は、学校法人に対し、その設置する学校のスポーツ施設の整備に要する経費について、予算の範囲内において、その一部を補助することができる。この場合においては、私立学校振興助成法(昭和五十年法律第六十一号)第十一条から第十三条までの規定の適用があるものとする。

3 国は、スポーツ団体であってその行う事業が我が国のスポーツの振興に重要な意義を有すると認められるものに対し、当該事業に関し必要な経費について、予算の範囲内において、その一部を補助することができる。

 (地方公共団体の補助)

第三十六条 地方公共団体は、スポーツ団体に対し、その行うスポーツの振興のための事業に関し必要な経費について、その一部を補助することができる。

 (審議会への諮問等)

第三十七条 国又は地方公共団体が第三十五条第三項又は前条の規定により社会教育関係団体(社会教育法(昭和二十四年法律第二百七号)第十条に規定する社会教育関係団体をいう。)であるスポーツ団体に対し補助金を交付しようとする場合には、あらかじめ、国にあっては文部科学大臣が第九条第二項の政令で定める審議会等の、地方公共団体にあっては教育委員会(特定地方公共団体におけるスポーツに関する事務(学校における体育に関する事務を除く。)に係る補助金の交付については、その長)がスポーツ審議会等の意見を聴かなければならない。この意見を聴いた場合においては、同法第十三条の規定による意見を聴くことを要しない。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

 (スポーツに関する施策を総合的に推進するための行政組織の在り方の検討)

第二条 政府は、スポーツに関する施策を総合的に推進するため、スポーツ庁の設置等行政組織の在り方について、政府の行政改革の基本方針との整合性に配慮して検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

 (スポーツの振興に関する計画に関する経過措置)

第三条 この法律の施行の際現に改正前のスポーツ振興法第四条の規定により策定されている同条第一項に規定するスポーツの振興に関する基本的計画又は同条第三項に規定するスポーツの振興に関する計画は、それぞれ改正後のスポーツ基本法第九条又は第十条の規定により策定されたスポーツ基本計画又は地方スポーツ推進計画とみなす。

 (体育指導委員に関する経過措置)

第四条 この法律の施行の際現に改正前のスポーツ振興法第十九条第一項の規定により委嘱されている体育指導委員は、改正後のスポーツ基本法第三十四条第一項の規定により委嘱された体育指導委員とみなす。

 (地方税法の一部改正)

第五条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。

  第七十五条の三第一号中「スポーツ振興法(昭和三十六年法律第百四十一号)第六条第一項」を「スポーツ基本法(平成二十二年法律第▼▼▼号)第十八条第一項」に改める。

 (放送大学学園法の一部改正)

第六条 放送大学学園法(平成十四年法律第百五十六号)の一部を次のように改正する。

  第十七条第四号中「スポーツ振興法(昭和三十六年法律第百四十一号)第二十条第二項」を「スポーツ基本法(平成二十二年法律第▼▼▼号)第三十五条第二項」に改める。

 (沖縄科学技術大学院大学学園法の一部改正)

第七条 沖縄科学技術大学院大学学園法(平成二十一年法律第七十六号)の一部を次のように改正する。

  第二十条第四号中「スポーツ振興法(昭和三十六年法律第百四十一号)第二十条第二項」を「スポーツ基本法(平成二十二年法律第▼▼▼号)第三十五条第二項」に改める。


     理 由

 スポーツに関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって国民の心身の健全な発達、明るく豊かな国民生活の形成、活力ある社会の実現及び国際社会の調和ある発展に寄与するため、スポーツに関する施策に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務等を明らかにするとともに、スポーツに関する施策の基本となる事項を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

衆議院
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